説明

トンネル内レール敷設装置

【課題】
トンネル内での人力運搬作業や補修工事に伴い必要とされるレール敷設作業や各種の資材の運搬回数及び重複作業を削減すると共に省力化を図り、作業効率を向上させて安全な作業を実現したトンネル内レール敷設装置を提供する。
【解決手段】
枕木付レール運搬台車A、Aは基台19を備え、その前・後端部及び/又は左・右端部の上面には4個のH型鋼又は四角柱等でなる前方の吊上げ用柱23、23及び後方の吊上げ用柱24、24を立設・固定している。そして、該4個の吊上げ用柱23〜24の上端の相互間は、H型鋼や角柱等でなる吊上げ用切梁25、25を橋架・固定している。そして、枕木付レール18を前記基台19の上面に積載している。後方の枕木付レール運搬台車Aに連結された駆動車両Bにより両方の枕木付レール運搬台車A、AはトンネルCの底面C1に敷設された枕木付レール18上を前進又は後退する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕木付レールを該枕木付レール搬送台車により順次かつ一連にトンネル内に容易に敷設するトンネル内レール敷設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先づ、従来の技術の一つの例として、特開平5−171603号公開特許公報に開示されたものがある。図16(a)、(c)に基づきこれについて説明すれば、シールド掘進機1の前端部のカッターディスク2を回転させてトンネル3を掘削した後、その後方に複数のセグメントピース4を円筒状に組み付けることによりセグメント壁4aを構築し、構築されたセグメント壁4aから反力をとってシールド掘進機1を前進させながらトンネル3を掘削するものである。シールド掘進機1の後方には、一定の距離をおいて後方台車5が連結されており、この後方台車5はシールド掘進機1の前進に伴って前進する。したがって、セグメント壁4a内には、後方台車5や搬入台車を走行させるための軌道を、順次前方へ敷設する。この軌道は、H型鋼からなる複数本の枕木6が、トンネル3の幅方向に一定の間隔で設置され、それらの枕木6上に直交して複数本のレール7、7を一定の間隔で設置したうえ、敷設済みのレール7と連結され、かつ枕木6上に固定されて構成される。複数本のレール7、7のうち、図16(b)に示すように外側の一対が後方台車5の走行に使用され、内側の一対が搬入台車の走行に使用される。後方台車5は、門型をなし、その中央部分の空間5Aを搬入台車が走行する。また、後方台車5の上面の中央には、上部軌道としてのホイストレール8が前方へ張出させて取り付けられている。ここで軌道敷設装置は、軌道を構成する枕木6とレール7をトンネル3内の所定位置に設置する設置装置9と、トンネル3内に設置済みの枕木6上に固定されたレール7に対し、その端部に続けて枕木6上に設置されたレール7aを連結する連結装置と前記枕木6上に設置されたレール7aを枕木6上に固定する固定装置とを搭載した敷設台車10と、複数本の枕木6及び複数本のレール7を軌道の敷設位置近くまで搬入する搬入台車とから構成される。
【0003】
次に、従来の技術の他の例として、特開平8−158800号公開特許公報に開示されたものがある。図17に基づきこれについて説明すれば、シールドマシンにより構築されたセグメント11のトンネル12内には、シールドマシンに牽引される後方支援台車13が走行自在に設けられている。後方支援台車13は、シールドマシンの運転室となるものであり、トンネル12内に敷設された走行レール14上を走行する。上記後方支援台車13の下方が開放されたコ字状に形成されており、そのフレーム13aの内部にトンネル12の後方から進行してきた搬入台車15を収容する。つまり、後方支援台車13の走行レール14の内側に、搬入台車15の走行レール14aが敷設されている。搬入台車15には、セグメント11や資機材16が積載される。搬入台車15は二両編成になっており、各台車15には所定数個のセグメント11が載せられている。これらセグメント11はシールドマシンの1リング分のセグメントとなり、地上のクレーンによってストックヤードから搬入台車15ごと自動搬送され、エレベータによって立坑内に自動搬入されて空の搬入台車15と入れ替えられる。この入れ替えは、トンネル12内に敷設された走行レール14aが一部複線化された部分で行う。つまり、空の搬入台車15を複線化部分に一時待機させておき、セグメント11が積載された搬入台車15の通過を待つようにする。複線化部分を通過したセグメント11が載せられた搬入台車15は、トンネル12内の走行レール14a上を走行して後方支援台車13側へ向かう。後方支援台車13内に収容された搬入台車15上のセグメント11は、後方支援台車13内に設けられた伸縮フォークに載せ換えられる。伸縮フォークは、搬入台車15上にトンネル12の長手方向に沿って縦置きされたセグメント11の底面の前後端部を支えるべく、各台車15に設けられている。各伸縮フォークは、後方支援台車13のフレーム13aに昇降自在に設けられた昇降ブラケット17に取り付けられている。後方支援台車13のフレーム13aには各台車15の前後を挟むように垂直柱が立設されており、これら垂直柱に昇降ブラケット17が昇降自在に係合されている。
【特許文献1】特開平5−171603号公開特許公報
【特許文献2】特開平8−158800号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、叙上の構成であるので次の課題が存在している。
すなわち、従来の技術の一つの例によれば、シールド掘進機1の前進によりシールド工事を行なうと共にトンネル3を掘削した後に後方台車5及び搬入台車を走行するために軌道を構成する枕木6と複数本のレール7、7を敷設する軌道敷設装置に係るものであって、シールド工事の装置と軌道敷設装置が一体化した技術である。
そして、上述したように軌道を構成する枕木6とレール7をトンネル3内の所定位置に設置する設置装置9と、トンネル3内に設置済みの枕木6上に固定されたレール7に対し、その端部に続けて枕木6上に設置されたレール7aを連結する連結装置と前記枕木6上に設置されたレール7aを枕木6上に固定する固定装置とを搭載した敷設台車10と、複数本の枕木6及び複数本のレール7を軌道の敷設位置近くまで搬入する搬入台車とからなり、前記後方台車5と、搬入台車とが必須の構成であるうえに前記複数本のレール7、7が後方台車用のレールと搬入台車用のレールとを区別して敷設する構成であり、大規模な新規のトンネル掘削工事やシールド工事を施工するには適しているが、トンネル内の補修工事等には施工工数・費用や工事終了後の各資材等の撤収工数・費用に関して工数増大や高価になることに鑑み種々の問題点が存在した。
【0005】
従来の技術の他の例によれば、シールドマシンに牽引される後方支援台車13にセグメント等を収容するようにしたセグメント等の搬入装置であり、後方支援台車13に走行レール14、14a及び枕木等の資材を仮置する技術である。
そして、前記従来の技術の一つの例と同じように後方支援台車13と搬入台車15が必須の構成であるうえに伸縮フォーク18も備える必要があり、トンネル内補修工事も可能であるが、補修施工工事及び補修工事終了後の各種資材の撤収作業に関して工数や作業量の増大化と補修施工費用の高額化を余儀なくされ実施・実現をするに隘路があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトンネル内レール敷設装置は、トンネル内での人力運搬作業や補修工事に伴い必要とされるレール敷設作業や各種の資材の運搬回数及び重複作業を削減すると共に省力化を図り、作業効率を向上させて安全な作業を実現したトンネル内レール敷設装置を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立する。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設した吊上げ用柱と、該吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定された吊上げ用切梁と、該吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記吊上げ用切梁の前後間及び該吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能な吊ビーム部材と、該吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に於いて、前記懸垂トロリ部材は、I型鋼で形成された前記吊ビーム部材の下端縁に前・後進滑動自在に係止する走行ガイドと、該走行ガイドに吊下げられたレバーブロック付吊ロープと、該レバーブロック付吊ロープにより前記枕木付レールを吊上げる枕木付レール吊治具とで構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明に於いて、前記係止・保持部材は、内部空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した単一又は複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明に於いて、前記係止・保持部材は、側面略コ字形を対向して形成した空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した互に対向配置して構成した複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体に於ける各個の隣接部位の上又は下面及び左又は右側面に当接・配置する当て板と、該当て板の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能なI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置され、長さ方向の中間位置又は端部に於ける上・下端縁の垂直中間位置を凹凸状に形成すると共に前記長さ方向の中間位置又は端部の上・下端縁を中央を頂点として略山形状に傾斜させたI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼の垂直中間位置に形成した凹凸状部位の両側面に当接しかつ前記吊ビーム部材を折曲・分離可能とする楕円形貫通孔の所望数個を穿孔してなる止め板と、該I型鋼に於ける長さ方向の中間位置または端部の上端縁及び又は下端縁の上面にその端部を固定し、前記吊ビーム部材を折曲可能にガイドする複数個のガイド板と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明によれば、請求項1、2、3、4、5又は6記載の発明に於いて、前記吊ビーム部材は前端及び/又は後端に伸縮自在のパイプサポートを設置したことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明によれば、前記請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車は駆動車両により前進・後退させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の構成を有するので次の効果がある。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設した吊上げ用柱と、該吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定された吊上げ用切梁と、該吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記吊上げ用切梁の前後間及び該吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能な吊ビーム部材と、該吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、トンネル内に於いて補修工事をする際に必要な資材、例えば、枕木やレール等を積載し、トンネル内の補修工事の進行程度に応じてトンネルの底面に枕木付レールを順次かつ一連に敷設することができしかも単一の運搬台車に当該枕木付レールを極めて簡易かつ容易な作業でもって基台上から吊上げかつトンネル底面まで吊下げることのできる構造を設置したのでトンネル内の補修工事工数が大幅に削減でき、工期の短縮化と工事費用の低減化が図れると共に補修工事完了後は、叙上の運搬台車の組立構造物を容易に解体でき該運搬台車の収納を容易化するという著大な効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、前記懸垂トロリ部材は、I型鋼で形成された前記吊ビーム部材の下端縁に前・後進滑動自在に係止する走行ガイドと、該走行ガイドに吊下げられたレバーブロック付吊ロープと、該レバーブロック付吊ロープにより前記枕木付レールを吊上げる枕木付レール吊治具とで構成されることを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、運搬台車の基台上に積載した枕木付レールはレバーブロック付吊ロープ及び枕木付レール吊治具により極めて容易に引掛けることができ、吊ビーム部材に吊上げかつ吊下げると共に走行ガイドにより運搬台車の前方に吊ビーム部材でもって円滑かつ迅速に搬送することができ作業効率を向上させる効果がある。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、前記係止・保持部材は、内部空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した単一又は複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、固定金具が吊上げ用切梁の下端縁と吊ビーム部材の上端縁を複数のボルト等の緊締部材で容易に係脱自在かつ吊ビーム部材自体を移動自在に固定でき併せて単一の一体形成物として構成することができ、製作性が極めて高い特徴を備えると共に前記吊上げ用切梁と吊ビーム部材を容易に分離し解体を簡易・迅速に行なえるという効果がある。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、前記係止・保持部材は、側面略コ字形を対向して形成した空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した互に対向配置して構成した複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体に於ける各個の隣接部位の上又は下面及び左又は右側面に当接・配置する当て板と、該当て板の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1及び3記載の発明の効果に加えて、当て板により上記略矩形枠体の全体寸法を調整することができ、該略矩形枠体による吊上げ用切梁と吊ビーム部材との連結を強固なものにし、併せて重量や寸法形状の異なる各種の吊ビーム部材に適合させることができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能なI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、吊上げ用柱及び吊上げ用切梁をH型鋼に構成すると共に吊ビーム部材をI型鋼にそれぞれ構成したので軽量化を図るうえに強度を高めると共に解体を容易にするのでトンネル内の補修工事の着手から完了までの工期及び工費を大幅に削減する効果がある。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置され、長さ方向の中間位置又は端部に於ける上・下端縁の垂直中間位置を凹凸状に形成すると共に前記長さ方向の中間位置又は端部の上・下端縁を中央を頂点として略山形状に傾斜させたI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼の垂直中間位置に形成した凹凸状部位の両側面に当接しかつ前記吊ビーム部材を折曲・分離可能とする楕円形貫通孔の所望数個を穿孔してなる止め板と、該I型鋼に於ける長さ方向の中間位置または端部の上端縁及び又は下端縁の上面にその端部を固定し、前記吊ビーム部材を折曲可能にガイドする複数個のガイド板と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1及び5記載の発明の効果に加えて、吊ビーム部材の長さ方向の中間位置から所望角度例えば20°ないし40°程度を折曲し又は方向傾斜させトンネル内の掘削進路の傾度や補修部位に応じて当該枕木付レール運搬台車を前進させることができると共に該吊ビーム部材を分離させて長さを短縮し、該枕木付レール運搬台車の長さ寸法や吊上げ用柱の前・後間の長さに応じて吊ビーム部材の長さを設定することができるという効果がある。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、前記吊ビーム部材は前端及び/又は後端に伸縮自在のパイプサポートを設置したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車を提供する。
このような構成としたので、請求項1、2、3、4、5又は6記載の発明の効果に加えて、伸縮自在のパイプサポートにより枕木付レールを懸垂トロリ部材で搬送する際、運搬台車の前方に配置した吊ビーム部材の前方へ傾斜や該運搬台車の前方への傾斜を防止し、該運搬台車による枕木付レールの敷設作業を円滑化する効果がある。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、前記請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車は駆動車両により前進・後退させることを特徴とするトンネル内レール敷設装置を提供する。
このような構成としたので、トンネル内に於いて補修工事をする際に必要な資材、例えば、枕木やレール等を前記枕木付レール運搬台車に積載し、トンネル内の補修工事の進行程度に応じてトンネルの底面に枕木付レールを順次かつ一連に敷設することができしかも単一の運搬台車でもって当該枕木付レールを極めて簡易かつ容易な作業によりトンネル底面まで吊下げることのできる装置を有したのでトンネル内の補修工事工数が大幅に削減でき、工期の短縮化と工事費用の低減化が図れるという著大な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るトンネル内レール敷設装置の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るトンネル内レール敷設装置を示す好適な実施の形態の一例であって、運搬台車によるトンネル内の底面上に枕木付レールを敷設する状態を示す垂直断面図である。図2は、前記図1の矢視F−F線方向から見たときの垂直断面図である。図3は、基台上に立設・固定される各吊上げ用柱と該吊上げ用柱の上端に固定される吊上げ用切梁の構造例を示す斜視図である。
【0025】
本発明に係るトンネル内レール敷設装置は大概して枕木付レール運搬台車Aと、該枕木付レール運搬台車Aに連結され、枕木付レール運搬台車Aを前進又は後退させる駆動車両Bとで構成される。
【0026】
先づ、本発明に係る枕木付レール運搬台車Aについて図1等に基づき詳細に説明する。
A、Aは枕木付レール運搬台車であり、図1では2台設置した構成例を示している。前方及び後方の該枕木付レール運搬台車A、Aは、補修用資材の一種である枕木付レール18を積載する荷台としての基台19と、該基台19の下部に設置された車輪固定部材20と、該車輪固定部材20の前後の左右に配置された例えば4個の車輪21、21、21、21とを備えている。そして、該4つの車輪21〜21は図2に示すように前記車輪固定部材20の下面の前・後に水平配置した車軸22、22の両端に固定され、その回転力で該枕木付レール運搬台車A、Aを前進・後退させる。
また、前記基台19は例えば略矩形状の金属製又は非金属製の板部材等で構成され、その前・後端部及び/又は左・右端部の上面には所望数の例えば4個のH型鋼又は四角柱等でなる前方の吊上げ用柱23、23及び後方の吊上げ用柱24、24を溶接手段やボルトの打込み等により立設・固定している。そして、該4個の吊上げ用柱23〜24の上端の相互間は図3に示すように例えばH型鋼や角柱等でなる吊上げ用切梁25、25を溶接手段やボルトの打込み等により橋架・固定している。
【0027】
前記枕木付レール運搬台車A、Aは基台19を備え、例えば図1に示すように、それぞれ7個の枕木付レール18を前記基台19の上面に積載している。そして、後方の枕木付レール運搬台車A、Aに連結された駆動車両Bにより両方の枕木付レール運搬台車A、AはトンネルCの底面C1に敷設された枕木付レール18上を矢印D方向又は矢印E方向に前進又は後退する。尚、本発明は前記枕木付レール18を枕木とレールに分離した構成であって、それぞれ別個に前記枕木付レール運搬台車A、Aに積載するものにも適用される。
また、図1に於いて後方の枕木付レール運搬台車A、Aは該枕木付レール18を積載する役目を有するのみであり、前記4個の吊上げ用柱23〜24を設置していない例を示してある。また、前記駆動車両Bは図1に示すようにモータ車や電気自動車その他各種の汎用されている小型車両で構成され、駆動部36、本体部37及び該本体部37の下部に配置した車輪38でなる。
【0028】
前記前方の枕木付レール運搬台車Aに於ける基台19の前端部19a及び後端部19bの上面に立設・固定した吊上げ用柱23、23及び24、24の上端に橋架・固定された前方及び後方の吊上げ用切梁25〜25の下端縁25a、25aには、図3に示すように吊ビーム部材26を係止しかつ該吊ビーム部材26を吊下げるフック体や矩形枠体等でなる所定の構造を有する係止・保持部材27、27が複数列若しくは所望数個を配設されている。該係止・保持部材27、27は前記吊ビーム部材26を前方・後方及び左・右移動自在とする構成であれば、前記例示した構造以外のものでもよくまた該吊ビーム部材26の重量に対して支承しかつ保持できる金属又は非金属材料で作製する。
【0029】
ここで、前記吊ビーム部材26は、例えば、I型鋼で構成されいわゆるトロリ用Iビームであって、図3に示すように前記前方の吊上げ用切梁25の下端縁25a及び前記枕木付レール運搬台車Aの長さ方向に前記後方の吊上げ用切梁25の下端縁25aに連結する際、少なくとも1本、必要に応じて所望数本を橋架状に前記係止・保持部材27、27により配置・固定する。
尚、図2に於いて、29、29は斜材であり必ずしも設ける必要はないが、前記左・右の吊上げ用柱23、24及び23、24と吊上げ用切梁25、25間の連結部位の隅であってその両者間に固定され、その強度を高める。
また、図中、30は坑内照明器具、31は分電盤、33は電話線等であり、トンネルC内の補修工事の際に使用するトンネル内設備である。
【0030】
次に、トンネルCの底面C1に敷設する資材としての枕木付レール18を積載した基台19からトンネルCの底面C1に搬送するための懸垂トロリ部材について図4等に基づき説明する。
該懸垂トロリ部材32は大概すれば、前記吊ビーム部材26に前進・後退滑動自在に係止する走行ガイド32Aと、該走行ガイド32Aに連結しかつ長さを制御するレバーブロックを備えた吊ロープ32Bと、該吊ロープ32Bに連結されかつ枕木付レール18を吊上げる枕木付レール把持部32Cとで構成される。前記走行ガイド32Aは、滑車32A1、32A1と、滑車固定板32A2、32A2と、ロープ係止板32A3とで構成され、例えばI型鋼でなる吊ビーム部材26の上端縁26aから垂直面部26cを経て成形された下端縁26bの上面に係止されかつ該垂直面部26cを介在して対向配置した滑車32A1、32A1を備えている。そして、該滑車32A1、32A1は滑車固定板32A2、32A2に回転自在に回転軸等で固定されると共に該滑車固定板32A2、32A2の相互間は係止片32aを有するロープ係止板32A3の両端を溶接又はビス等で固定している。
【0031】
前記吊ロープ32Bは、走行ガイド32Aのロープ係止板32A3の係止片32aに引掛けられかつロープ32bの上端に連結された上フック部32B1と、ロープ32bの下端に連結された下フック部32B2と、ロープ32bの中間位置に装着した手巻きクレーン32B3とで構成されている。該下フック部32B2は、前記枕木付レール把持部32Cの連結バー32C1に係止される。そして、上記手巻きクレーン32B3のレバー32cを作業員が回動操作することによりロープ32bの長さを調整しながら該枕木付レール18を枕木付レール運搬台車Aから積出しかつ搬送し、トンネルCの底面C1上に敷設する。
【0032】
前記枕木付レール把持部32Cは、前記連結バー32C1と該連結バー32C1の両端に装着しかつ枕木付レール18のレール18aを把持する対向爪32C2と、該連結バー32C1の両端間に略三角形枠体を構成して張設された張力バネ32C3とを備えている。そして、該枕木付レール把持部32Cは、前記吊ロープ32Bの下フック部32B2に連結され吊下げられており、それぞれの対向爪32C2、32C2の一方、他方間に装着されたバネ32C5を圧縮することにより軸を中心として対向爪32C2、32C2の一方、他方の先端部分32C4、32C4を開放しかつ係止し圧縮開放することによりこの先端部分32C4、32C4が復帰し枕木付レール18のレール18aのくびれ部分を把持する。前記手巻きクレーン32B3を操作し、該枕木付レール18を枕木付レール運搬台車Aの基台19上面から吊上げれば該連結バー32C1の両端が弛みながら該枕木付レール18は引上げられるが張力バネ32C3の反力により該連結バー32C1の弛みは軽減される。
尚、枕木付レール18が枕木18bとレール18aと分離して搬送する場合に於いては、例えば、特に枕木18bの側面又は一部に被係止凹陥を形成し、この被係止凹陥に前記対向爪32C2、32C2の一方、他方を係止する。
【0033】
次に、本発明に係るトンネル内レール敷設装置の実施の形態に於ける動作や操作手順等を図5、図6に基づいて説明する。
図5(a)ないし(c)はトンネルCの内部に進入する前に於ける前述した前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aと、この後方の枕木付レール運搬台車Aに連結された駆動車両Bとを示すトンネル内レール敷設装置の垂直断面図であって構成例である。
図6(a)ないし(c)は、前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aから懸垂トロリ部材により枕木付レール18を吊上げかつ吊下す状態を示す垂直断面図である。
【0034】
前記2台の枕木付レール運搬台車A、Aが補修工事を必要とするトンネルC内に進入する前は、図5(a)に示す当該2台の枕木付レール運搬台車A、Aに於ける基台19の上面には枕木付レール18を積載していない状態から図5(b)に示すように、該2台の枕木付レール運搬台車A、Aに枕木付レール18を例えば、それぞれ7個を積載する。かかる図(b)に示す状態で当該トンネルCの入口(開口)部分C2付近まで前記駆動車両Bにより運送する。この際、前方の枕木付レール運搬台車Aに於ける基台19の前端部19a及び後端部19bの上面には図3に示すように4つの吊上げ用柱23〜24を立設・固定してあり、また該吊上げ用柱23、23間及び該吊上げ用柱24、24間の上端に橋架・固定された前方及び後方の吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aには係止・保持部材27、27により前方の枕木付レール運搬台車Aの左右間に単一又は複数本の吊ビーム部材26、26、26が該前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方にそれぞれ配備している。
【0035】
ここで、図5中、26d及び26eは前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の前端及び後端に装着・設置された伸縮自在のパイプサポートであり、基台19の上面に積載した枕木付レール18を前述した懸垂トロリ部材32により吊上げ、前記上方及び前方の吊ビーム部材26、26を経由して移動する際、前方の吊ビーム部材26が該枕木付レール18の荷重により大きく傾斜することにより搬送不能又は移動不能になることを防止するための部材である。
尚、後方の枕木付レール運搬台車Aも前記前方の枕木付レール運搬台車Aと同様に吊上げ用柱や吊上げ用切梁を配置・固定してもよい。
【0036】
前記2台の枕木付レール運搬台車A、Aへ所望数の枕木付レール18の積載作業が完了すれば、図5(b)に示すように駆動車両Bにより、該2台の枕木付レール運搬台車A、Aは工事を必要とするトンネルCの現地、すなわちトンネルCの入口(開口)部分C2まで移動される。作業員は、前方の吊ビーム部材26の前端に於ける前記パイプサポート26dを図5(b)に示すように、矢印Gに示すように回転駆動し、さらに図5(c)に示すように該パイプサポート26dの先端を伸張させて、トンネルCの底面C1に当接する。かかるパイプサポート26dにより前方の吊ビーム部材26の前端又は前方部分は支持される。
【0037】
尚、前記2台の枕木付レール運搬台車A、AをトンネルCの入口(開口)部分C2まで移動する際は、図5(a)に示すように枕木付レール18のない状態で大地R上に枕木付レール運搬台車A、Aを走行させてもよく、また、図5(b)に示すように枕木付レール18を予め大地Rに敷設し、この枕木付レール18上に枕木付レール運搬台車A、Aを走行させてもよい。
【0038】
次に作業員は図4に示す懸垂トロリ部材32を使用して、前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aに積載された枕木付レール18の吊上げかつ前方の枕木付レール運搬台車Aの前方部分に於けるトンネルC内の底面C1に吊下して敷設する。
そして、図5(a)に示すように予め上方の前記吊ビーム部材26の下端縁26bには前述した前記懸垂トロリ部材31の走行ガイド32Aが滑動自在に係止している。そこで、当該作業員は該走行ガイド32Aのロープ係止板32A3の係止片32aに吊ロープ32Bの上フック部32B1を引掛ける。また、下フック部32B2はすでに連結バー32C1に係止されており、当該作業員は枕木付レール把持部32Cに於ける連結バー32C1の左側及び右側(両端)にある対向爪32C2、32C2を圧縮して回動しかつバネ32C5を圧縮させて該左側及び右側(両端)にある対向爪32C2、32C2の先端部分32C4、32C4を開放する。
【0039】
そこで、前記基台19の上面に積載された枕木付レール18の最上位にある該枕木付レール18のレール18aを両端の対向爪32C2、32C2の該先端部分32C4、32C4間に挿入する。然るに、バネ32C5、32C5の復元力で該枕木付レール18のレール18aは両端の対向爪32C2、32C2により挾着・把持される。そして、作業員は前記手巻きクレーン32B3を巻回操作し、該枕木付レール18を所定位置まで吊上げ、前記懸垂トロリ部材32のロープ32b又は手巻きクレーン32B3を図6(a)に示すように前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、すなわち矢印H1方向に押込む。
【0040】
而して、ロープ32bに連結された走行ガイド32Aの滑車32A1、32A1が上方の吊ビーム部材26の下端縁26bから前方の吊ビーム部材26の下端縁26bのそれぞれの上面を回転しながら移動する。前記走行ガイド32Aを前方の吊ビーム部材26の所定位置まで移動したとき、停止させ前記手巻きクレーン32B3を操作し、前記枕木付レール18を図6(b)、(c)の矢印H2方向で示すように吊下しトンネルC内の底面C1上に敷設する。
以下作業員による同様な動作や作用で前方の枕木付レール運搬台車Aの最下位にある枕木付レール18まで順次にトンネルC内の底面C1に敷設する。このとき、前に敷設された枕木付レール18のレール18aの上を該前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aが駆動車両Bにより前方に走行しながら該枕木付レール18のトンネルC内の底面C1への敷設動作を行なう。そして、該前方の枕木付レール運搬台車Aに積載された枕木付レール18の敷設が完了すれば、同様な動作や作用で、後方の枕木付レール運搬台車Aに積載された枕木付レール18のトンネルC内の底面C1への敷設動作を行なう。
【0041】
かくして、トンネルC内の補修工事部位まで所望長の枕木付レール18を順次にトンネルC内の底面C1へと敷設を行なうことができる。
枕木付レール18は、補修工事の資材の一種であるが本発明はこれに限定せず、枕木やレール単独の部材を分離して搬送することもできる。また、当該前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aに補修工事に必要とされる接着剤や工具等各種の資材をも同様に搬送できる。
【0042】
尚、トンネルC内の補修工事が完了すれば、前述した逆の動作、作用で枕木付レール18をトンネルC内の底面C1から吊上げかつ前方及び後方枕木付レール運搬台車A、Aの基台19の上面に再び積載し、収納して該前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aを前記駆動車両BによりトンネルCから後退又は退出させることができる。また、枕木付レール18をトンネルCの底面C1から吊上げ後方の枕木付レール運搬台車Aの基台19に収納するときは、図6(c)に示すように後方の吊ビーム部材26の後端に於けるパイプサポート26eの先端を前述のパイプサポート26dと同様に伸張させてトンネルCの底面C1に当接し、枕木付レール18の荷重を支持する。
また、前述の構成及び動作や作用はすべて作業員によるところであるが、これを該トンネルCの現地から遠隔地である外部にマイクロコンピュータ等による制御装置(図示せず)を設置し、無人化により枕木付レール18をトンネルC内の底面C1へ敷設することが可能である。
【実施例1】
【0043】
次に、本発明に係るトンネル内レール敷設装置に適用する枕木付レール運搬台車に於ける前記吊上げ用切梁と前記吊ビーム部材を固定・配備する構造の実施例1について図7ないし図9に基づき説明する。
【0044】
図7は、前方の枕木付レール運搬台車Aの基台19の前後及び/又は左右に立設した吊上げ用柱23〜24の上端に橋架・固定された吊上げ用切梁25、25と、該吊上げ用切梁25、25の前後間であって、該吊上げ用柱23、23間及び該吊上げ用柱24、24間に前後・左右に移設又は移動可能に吊ビーム部材26を配置・固定する係止・保持部材27の一例を示した斜視図である。また、図8は、図7の矢視I方向から見た拡大正面図である。また、図9は、前記図7の矢視J−J線方向に切断した拡大断面図である。
【0045】
27は係止・保持部材の一例であって、当実施例1では複数すなわち4つの略矩形枠体27Aないし27Dを組合せて一つの組になる機能及び構造物を構成する。該係止・保持部材27の略矩形枠体27Aは、略矩形上部27A1及び略矩形下部27A2と、該略矩形上部27A1、略矩形下部27A2間に形成した側面略コ字形空間部27A3と、該略矩形上部27A1及び略矩形下部27A2を連結して形成された断面が略矩形状を有する柱27A4とを形成している。そして、前記係止・保持部材27の略矩形枠体27Bないし27Dも前記略矩形枠体27Aと同一の構成を有している。
【0046】
前記略矩形枠体27Aの後方側、すなわち前記略矩形上部27A1の対向面27A5を前記吊上げ用切梁25の上端縁25bと連なり成形された垂直面部25cを介在させて、前記略矩形枠体27Cの前方側、すなわち前記矩形上部27C1の対向面27C5に対向配置する。同様に、前記略矩形枠体27Bと前記略矩形枠体27Dを対向配置する。この場合、前記側面略コ字形空間部27A3、27B3、27C3及び27D3には、前記吊上げ用切梁25の下端縁25aと、この吊上げ用切梁25の下端縁25aの下面に配置された前記吊ビーム部材26の上端縁26aを介装配置してある。
【0047】
そして、図7に示すように、前記略矩形枠体27A、27Bの各矩形上部27A1、27B1に於ける隣接部位の上面27A6、27B6には所定の厚さを有する薄板状の金属板又は非金属板でなる当て板27Eを当接・配置し、それぞれをボルト、ナット又はアンカーボルト等で構成する例えば4つの緊締部品27Fで加締め固定される。具体的には、例えば該当て板27Eに所定数の貫通孔(図示せず)及び各矩形上部27A1、27B1に貫通孔27Gを穿孔し、この当て板27Eの貫通孔と、これに合致する矩形上部27A1、27B1の貫通孔27Gにボルト等を上方からねじ込み挿入し、ナットで締め付ける。この際、緊締部品27Fとしてのボルト先端部27F1のすべては図8、図9に示すように、前記吊上げ用切梁25の下端縁25aの上面を圧着する。従って、該下端縁25aは吊ビーム部材26の上端縁26aの上面と挾圧・保持される。
【0048】
さらに、前記略矩形枠体27C、27Dの各矩形上部27C1、27D1に於ける隣接部位の上面27C6、27D6には、前記と同一の構成を有する当て板27Eを当接・配備し、それぞれ同一手法でかつ同一の緊締部品27Fで加締め固定される。尚、必ずしも必要でないが前記略矩形枠体27A、27C及び27B、27Dの各矩形下部27A2、27C2及び27B2、27D2に於ける隣接部位の下面27A7、27C7及び27B7、27D7にも前記と同一の構成及び手法で当て板27Eを当接・配置しかつ緊締部品27Fで加締め固定してもよい(図示せず)。
【0049】
そして、図8に示すように前記略矩形枠体27A、27Cの下部27A2、27C2に於ける隣接部位の左側面a、c及び/又は図9に示すように前記略矩形枠体27B、27Dの下部27B2、27D2に於ける隣接部位の右側面b、dに前記と同一の構成および手法で当て板27Kを当接・配置すると共に例えば4つの緊締部品27Fで加締め固定する。この場合、該緊締部品27Fとしてのボルト27Fの先端部27F1は、前記略矩形枠体の各下部27A2ないし27D2を隣接・固定すればよく、ねじ込み挿入に当り、図9に示すようにその肉厚部分を貫通しない構成である。
而して、例えば4つの矩形枠体27Aないし27Dを隣接・固定しかつ組合せて一つの組を構成してなる係止・保持部材27はそれぞれが互いに堅固に固定される。尚、該係止・保持部材27は略中央部分に互いに側面略コ字形空間部27A3〜27D3に相当する空間部を形成することにより単一部材で構成してもよい。
【0050】
次に、本発明に係るトンネル内レール敷設装置に適用する枕木付レール運搬台車に於ける前記吊上げ用切梁と前記吊ビーム部材を固定配備する構造の実施例1について吊ビーム部材26の固定方法や手順を説明する。
前述したように例えば、吊ビーム部材26は前記前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方(後方の枕木付レール運搬台車Aの上方に相当する)にそれぞれ配備する。そして、前記吊ビーム部材26は図3等に示すように、前方の枕木付レール運搬台車Aに於ける吊上げ用柱23、23間及び吊上げ用柱24、24間の各上端に橋架・固定された前方及び後方の吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aの左右長の適宜位置であって、該枕木付レール運搬台車Aの長さ方向に設定し、前記係止・保持部材27により固定する。該吊ビーム部材26は実験例又は試算例によれば、長さ約5(m)程度のものを複数本用意し、これらを前記前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方であって、吊上げ用切梁25、25の左右間の略中央部すなわち吊上げ用柱23〜24の左・右側から約1.5(m)程度の位置に該係止・保持部材27により固定する。
【0051】
先づ、前記前方及び後方の係止・保持部材27、27は、前述したように前記吊上げ用切梁25、25の下端縁25a及び前記吊ビーム部材26の上端縁26aが側面略コ字形空間部27A3〜27D3内に該吊ビーム部材26が左・右及び前方・後方(前方の枕木付レール運搬台車Aの長さ方向)に移動自在な状態で介装配置されている。そして、該吊ビーム部材26を位置決めをする前には作業員は、前記略矩形上部27A1ないし27D1に当て板27E、27Eを介してねじ込みかつ挿入した緊締部品27F、27Fの例えば合計8個のボルトの先端部27F1〜27F1のいずれも前記吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aの上面まで進入しない状態を保持し、さらに、ねじ込み操作をしない。
一方、前記略矩形下部27A2ないし27D2の左側又は右側面aないしdに当接する当て板27K、27Kに於いては、作業員は前記緊締部品27F〜27Fのボルト等をいずれもねじ込みかつ挿入を完了する。
【0052】
そこで、吊上げ用切梁25、25に於ける前記吊ビーム部材26の位置決めを確定すれば、作業員は前記当て板27E、27Eを介して前記略矩形上部27A1ないし27D1内にねじ込みかつ挿入された緊締部品27F〜27Fの例えばボルトの先端部27F1〜27F1のすべてをさらにねじ込みかつ進入させると共に前記吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aの上面に接触させて該下端縁25a、25aを押込みかつ圧着させる。
而して、前記吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aが吊ビーム部材26の上端縁26aに堅固に挾圧・保持される。
【0053】
尚、トンネルC内の補修工事方式や前記吊ビーム部材26又は前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aの設計仕様等の変更に際して、前記吊ビーム部材26の固定・配備の態様を変えるときは、前記略矩形上部27A1ないし27D1にねじ込まれた緊締部品27Fを解放し、前述した手順の逆操作により前方、上方及び後方の前記吊ビーム部材26を前記吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aに対して前・後及び左・右に移動自在とし、新たに位置決めを設定し、該吊ビーム部材26の固定・配置を行なうことができる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明に係るトンネル内レール敷設装置に適用する枕木付レール運搬台車に於ける前方の吊上げ用柱23、23間及び後方の吊上げ用柱24、24に収納する吊ビーム部材の設置状態である実施例2について図10、図11等に基づき説明する。
【0055】
前記2台の枕木付レール運搬台車A、Aが補修工事を必要とするトンネルC内に進入する前は、図5(a)に示す当該2台の枕木付レール運搬台車A、Aに於ける基台19の上面には枕木付レール18を積載していない状態から図5(b)に示すように、該2台の枕木付レール運搬台車A、Aに枕木付レール18を例えば、それぞれ7個を積載する。かかる図(b)に示す状態で当該トンネルCの入口(開口)部分C2付近まで前記駆動車両Bにより運送する。この際、前方の枕木付レール運搬台車Aに於ける基台19の前端部19a及び後端部19bの上面には図3に示すように4つの吊上げ用柱23〜24を立設・固定してあり、また該吊上げ用柱23、23間及び該吊上げ用柱24、24間の上端に橋架・固定された前方及び後方の吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aには係止・保持部材27、27により前方の枕木付レール運搬台車Aの左右間に単一又は複数本の吊ビーム部材26、26、26が該前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方にそれぞれ配備する。
【0056】
ここに於いて、図3に示すように例えば前記前方及び後方の吊上げ用切梁25、25の下端縁25a、25aは前記係止・保持部材27、27により前記吊ビーム部材26の長さ方向略中間部位を固定・配置している。前記吊ビーム部材26は、図3に示すように前方の吊上げ用切梁25と、後方の吊上げ用切梁25との中間位置P点で別異の吊ビーム部材26を連結し、全体として一連に該吊ビーム部材26を前記前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方に固定・配置する。
【0057】
図10は例えば、約5(m)の所定長でなる2本の吊ビーム部材26、26を前記前方及び後方の吊上げ用切梁25、25に懸架した構成例を示す図であって、補修工事前に際し、前方の枕木付レール運搬台車AをトンネルCの現地まで運送するときに於ける吊ビーム部材26、26や補修工事完了後際し、前方の枕木付レール運搬台車Aを当該トンネルCから退出したときに於ける吊ビーム部材26、26の収納状態である。
【0058】
28は懸架部材であり、上方係止部28aと下方保持部28bとで構成されている。前記懸架部材28は、図10のM部分を拡大した図面であって、矢印L方向から見た図11(a)に示す左側面図から分るように略逆L字形状でなると共に矢印N方向から見た図11(b)に示す正面図から分るように略矩形箱状でなる。
【0059】
前記懸架部材28は例えば、1本の金属製板片又は金属製丸棒を折曲・加工し、上方係止部28a及びこの上方係止部28aに連なる下方保持部28cを構成する。該上方係止部28aは左右対称に2個で一組を形成し、その先端部分に鉤28cを一体成形する。また、該下方保持部28bは左右対称に2個でなる垂直部分と、この2個の垂直部分の下端を相互連結する水平部分28dとで一体成形される。そして、図10に示すように例えば、2本の吊ビーム部材26、26をトンネルCに於ける現地まで枕木付レール運搬台車Aにより運送するときは、予め後方及び前方に配置した懸架部材28、28の上方係止部28aが後方及び前方の吊上げ用切梁25、25の上端縁25b、25bの上面を囲むようにして、その先端部分の鉤28cを該上端縁25b、25bに掛止めてあり、右側の吊ビーム部材26の後端部分26fを及び左側の吊ビーム部材26の前端部分26gをそれぞれ後方及び前方に配置した懸架部材28、28の下方保持部28b、28b内、すなわち該下方保持部28b、28bの水平部分28d、28dに係入する。
【0060】
而して、前記左側及び右側の吊ビーム部材26、26は前方及び後方の吊上げ用切梁25、25に吊下げて収納することができる。このとき、前記右側の吊ビーム部材26の前端部分26h及び左側の吊ビーム部材26の後端部分26iはそれぞれ前述した係止・保持部材27、27により前記前方及び後方の吊上げ用切梁25、25に固定・配置されているので、いわゆる両端サポートとしての機能を有し該左・右側の吊ビーム部材26、26が傾斜し、かつ転倒する惧れもない。
【0061】
さらに、本発明に於ける実施例2について重要なことは、トンネルC内の補修工事に於ける施工等又はトンネルC内へ前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aの進入に際し、前述した複数本の吊ビーム部材26〜26を一連にかつ前方の枕木付レール運搬台車Aの前方、上方及び後方に連結するときは、例えば、右側の吊ビーム部材26を矢印P1方向に及び左側の吊ビーム部材26を矢印P2方向にそれぞれ適宜長をスライドさせ、該右側吊ビーム部材26の後端部分26fと左側吊ビーム部材26の前端部分26gとを図13等で示すように所定の金属製又は非金属製等でなる例えば矩形状の薄板でなる止め板34等で連結する。該右側吊ビーム部材26等で後端部分26fと左側吊ビーム部材26の前端部分26gの連結操作を完了すれば、前記両方の懸架部材28、28を前方及び後方の吊上げ用切梁25、25から離脱し、これを収納する。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明に係るトンネル内レール敷設装置に適用する枕木付レール運搬台車の前方、上方及び後方に固定・配置される各吊ビーム部材を折曲しかつ分離する構造の実施例3について図12ないし図15等に基づき説明する。
【0063】
本発明に係るトンネル内レール敷設装置は、前述したように前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aに積載された枕木付レール18を懸垂トロリ部材32により前方及び後方の吊ビーム部材26、26を前方及び後方に滑動させてトンネルC内の底面C1へ敷設する必要がある。このため、トンネルCの形状や構造等に合せて該吊ビーム部材26、26の長さや傾きを適宜変更して設計仕様を構成する。かかる点に立脚して例えば図3に示すような前方の吊上げ用切梁25と後方の吊上げ用切梁25の中間位置P点に於いて前方及び後方の吊ビーム部材26、26を連結することや、図15に示すように前方の吊ビーム部材26を後方の吊ビーム部材26から折曲すること、つまり所定角度α(°)を傾斜させ、前記中間位置P点又は前方、後方吊ビーム部材26自体に別の中継点を設け分割、分離し、前方、後方吊ビーム部材26、26の全長を短く設定し小型の枕木付レール運搬台車A等に適合させる。
【0064】
図12は、前方の吊ビーム部材26の後端部分26Aと後方の吊ビーム部材26の前端部分26Bを連結する例を示す平面図である。図13は図12の矢視Q−Q線方向から見た側面図である。図14は図12の矢視S−S線方向から見た垂直断面図である。図15は、後方の吊ビーム部材26から所定角度α(°)を傾斜させて前方の吊ビーム部材26へ連結する例を示す平面図である。
【0065】
前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の上端縁26a、26aの後端面26a3及び前端面26a4をそれぞれ該上端縁26a、26aの中央、すなわち左右中心点P3から互に略山形状に所定角度β(°)に傾斜させている。この所定角度β(°)は、トンネルCの坑内がカーブしてあるとき前記前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aをカーブさせて進行するに際して前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の上端縁26a、26aの幅長が例えば、100(mm)程度のとき、約5(°)ないし10(°)に設定すれば前記懸垂トロリ部材32を前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26を円滑に滑動させるに好適なことが判明した。
【0066】
前記前方の吊ビーム部材26の後端部分26Aの上面26A1には断面形状が例えば矩形状であって所定長さを有する単一又は複数(実施例3では2個)の第1ガイド板26a1を溶接手段やボルトのねじ込み等によりその一端を固定している。また、同様に、前記後方の吊ビーム部材26の前端部分26Bの上面26B1にも前記前方の吊ビーム部材26に固定された第1ガイド板26a1と同一の構成及び同一の個数の第1ガイド板26a2を同一手段や手法で固定している。該第1ガイド板26a1、26a2の自由端はそれぞれ対向する後方及び前方の吊ビーム部材26、26の上端縁26a、26aの回動動作を許容すべく設定している。
【0067】
また、図13に示すように、前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の下端縁26b、26bの後端面26b1及び前端面26b2は前述した前方及び後方の吊ビーム部材26、26の後端面26a3及び前端面26a4に設定した傾斜角度β(°)と一致しており、それぞれ該下端縁26b、26bの左右中心点P3から互に所定角度β(°)に傾斜させている。前記前方の吊ビーム部材26の後端部分に於ける下端縁26bの上面26b3には、図12の破線で示すように例えば矩形状であって薄板状の所定幅長及び所定長を有する単一又は複数(実施例3では1個)の第2ガイド板26b4を溶接手段かボルトねじ込み等によりその一端を固定している。また、同様に前記後方の吊ビーム部材26の前端部分に於ける下端縁26bにも同一の構成及び同一の個数の第2ガイド板26b4を同一手段や手法で固定している。該第2ガイド板26b4、26b4の自由端はそれぞれ対向する前方及び後方の吊ビーム部材26、26の下端縁26b、26bの回動動作を許容すべく設定している。
【0068】
また、前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26に於ける上端縁26a、26a及び下端縁26b、26bの垂直中間位置としての垂直面部26cの衝合部分に該前方及び後方の吊ビーム部材26、26が噛合い係合しかつ、後方の吊ビーム部材26から前方の吊ビーム部材26を図15に示すように、所定角度α(°)を傾斜させ折曲可能となるように凹凸状部26c1を形成する。この凹凸状26c1は、前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の両者の上部から下部に一連に成形しており、一方(前方の吊ビーム部材26)が凹状に形成すれば、これに係合する他方(後方の吊ビーム部材26)が凸状に形成する。
【0069】
次に、図12に示す構成例は、前方の吊ビーム部材26と後方の吊ビーム部材26を折曲させることなく直線状に連結した状態を示すものである。そこで、作業員により前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の垂直面部26c、26cの衝合部分26j、26jの両側面に所定長かつ所定幅長を有する板状の止め板34を挾持させ、ボルト、ナット又はアンカーボルト等の各種の複数個でなる緊締部品35で固定する。
【0070】
ここで、詳しくは、前記止め板34は図13に示すように上、下幅の略中央部分であって、前端から後端に渉り、互に所定間幅を有して所望数個例えば、4個の楕円形貫通孔34aを一連に形成している。そして、該止め板34は、前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の垂直面部26c、26cの左・右(両)側面に当接すると共に予め該垂直面部26c、26cに前記緊締部品35のボルト等が挿入可能となる貫通小孔(図示せず)を穿孔しており、この貫通小孔と前記楕円形貫通孔34aを合致させたうえで、前記緊締部品35のボルト等をねじ込みかつ加締め固定する。かくして、図14に示すように前方及び後方の吊ビーム部材26、26の連結操作が完了する。
【0071】
図15に示すように、後方の吊ビーム部材26から前方の吊ビーム部材26を所定角度α(°)に折曲配置したときは、前記前方及び後方の吊ビーム部材26、26の後端面26a1及び前端面26a2が右側が衝合し、その左側は前記所定角度α(°)と同一値の開放角度β1(°)を有する。この開放角度β1(°)は前記山形状に形成した所定角度βの2倍となる。そして、後方の吊ビーム部材26から前方の吊ビーム部材26を所定角度α(°)に折曲配置したときは、前記止め板34が略ヘ字状に形成してなり図15に示すように、前述した吊ビーム部材26、26の垂直面部26c、26cの両側面にそれぞれ当接させて、貫通小孔と前記楕円形貫通孔34aを合致させたうえで、前記緊締部品35のボルト等をねじ込みかつ加締め固定する。かくして、図14に示すように前方及び後方の吊ビーム部材26、26の連結操作が完了する。
尚、前記止め板34は、前記所定角度α(°)に適応して形状や構造を変更した各種のものを用意してこれを前記垂直面部26c、26cに緊締部品35により当接しかつ加締め固定する。
【0072】
また、前記所定角度α(°)は理論上最大値として90(°)すなわち、直角に設定できるがトンネルCの形状構造に適応させ、前方及び後方の枕木付レール運搬台車A、Aが円滑に走行可能となる例えば20(°)ないし40(°)程度が好適となる。また、前記前方の吊ビーム部材26や後方の吊ビーム部材26を枕木付レール運搬台車Aの長さに応じて短小なものに設定すること、また、多数固を一連に連結構成することもでき、さらに、補修工事の方式等により前記前方の吊ビーム部材26や後方の吊ビーム部材26を分離・分割することができる。
尚、当実施例3による本発明に係るトンネル内レール敷設装置の動作や操作手順等は実施の形態の説明で述べたので省略する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係るトンネル内レール敷設装置を示す好適な実施の形態の一例であって、運搬台車によるトンネル内の底面上に枕木付レールを敷設する状態を示す垂直断面図である。
【図2】図1の矢視F−F線方向から見たときの垂直断面図である。
【図3】本発明に係る枕木付レール運搬台車の基台上に立設・固定される各吊上げ用柱と該吊上げ用柱の上端に固定される吊上げ用切梁の構造例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るトンネル内レール敷設装置に使用する懸垂トロリ部材の構成例を示す正面図である。
【図5】本発明に係るトンネル内レール敷設装置の実施の形態に於ける動作や操作手順等を示す垂直断面図であって、(a)は2台の枕木付レール運搬台車がトンネル内に進入する前の状態を示している。(b)は2台の枕木付レール運搬台車がトンネルの入口付近まで運送した状態を示している。(c)は2台の枕木付レール運搬台車がトンネルの入口付近まで運送した状態であって、前端のパイプサポートをトンネル底面に立設した状態を示している。
【図6】本発明に係るトンネル内レール敷設装置の実施の形態に於ける動作や操作手順等であって、枕木付レールを敷設する動作を示す垂直断面図であり、(a)は懸垂トロリ部材により枕木付レールを吊上げた状態を示している。(b)は該枕木付レールを敷設するために吊下げた状態を示している。(c)は該枕木付レールをトンネル底面に敷設した状態を示している。
【図7】本発明に係るトンネル内レール敷設装置に適用するものであって、吊ビーム部材を配置・固定する係止・保持部材の構成例を示す斜視図である。
【図8】図7の矢視I方向から見た拡大正面図である。
【図9】図7の矢視J−J線方向から見た拡大断面図である。
【図10】本発明に係る2本の吊ビーム部材を前方及び後方の吊上げ用切梁に懸架した構成例を示す図である。
【図11】図10のM部分を拡大した図面であって、(a)は矢視L方向から見た左側面図である。(b)は矢印N方向から見た正面図である。
【図12】本発明に係る前方の吊ビーム部材の後端部分と後方の吊ビーム部材の前端部分を連結する例を示す平面図である。
【図13】図12の矢視Q−Q線方向から見た側面図である。
【図14】図12の矢視S−S線方向から見た垂直断面図である。
【図15】本発明に係る後方の吊ビーム部材から所定角度α(°)を傾斜させて前方の吊ビーム部材へ連結する例を示す平面図である。
【図16】従来の技術に於ける軌道敷設装置の一つの例を示す構成図である。
【図17】従来の技術に於けるセグメント等の搬入装置の他の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0074】
18 枕木付レール
18a レール
18b 枕木
19 枕木付レール運搬台車の基台
19a 枕木付レール運搬台車の基台の前端部
19b 枕木付レール運搬台車の基台の後端部
20 枕木付レール運搬台車の車輪固定部材
21 枕木付レール運搬台車の車輪
22 枕木付レール運搬台車の車軸
23 前方の吊上げ用柱
24 後方の吊上げ用柱
25 吊上げ用切梁
25a 吊上げ用切梁の下端縁
25b 吊上げ用切梁の上端縁
25c 吊上げ用切梁の垂直面部
26 前方、後方の吊ビーム部材
26a 前方、後方の吊ビーム部材の上端縁
26b 前方、後方の吊ビーム部材の下端縁
26b1 前方の吊ビーム部材の下端縁の後端面
26b2 後方の吊ビーム部材の下端縁の前端面
26b3 前方の吊ビーム部材の後端部分の下端縁の上面
26b4 前方、後方の吊ビーム部材の下端縁の第2ガイド板
26c 前方、後方の吊ビーム部材の垂直面部
26c1 前方、後方の吊ビーム部材の垂直面部の凹凸状部
26d 前方、後方の吊ビーム部材の前端のパイプサポート
26e 前方、後方の吊ビーム部材の後端のパイプサポート
26f 右側の吊ビーム部材の後端部分
26g 左側の吊ビーム部材の前端部分
26h 右側の吊ビーム部材の前端部分
26i 左側の吊ビーム部材の後端部分
26j 前方及び後方の吊ビーム部材の衝合部分
26A 前方の吊ビーム部材の後端部分
26A1 前方の吊ビーム部材の後端部分の上面
26B 後方の吊ビーム部材の前端部分
26B1 後方の吊ビーム部材の前端部分の上面
26a1 前方の吊ビーム部材の後端部分の上面の第1ガイド板
26a2 後方の吊ビーム部材の前端部分の上面の第1ガイド板
26a3 前方の吊ビーム部材の後端面
26a4 後方の吊ビーム部材の前端面
27 係止・保持部材
27A〜27D 係止・保持部材の略矩形枠体
27A1〜27D1 係止・保持部材の略矩形枠体の略矩形上部
27A2〜27D2 係止・保持部材の略矩形枠体の略矩形下部
27A3〜27D3 係止・保持部材の略矩形枠体の略コ字形空間部
27A4〜27D4 係止・保持部材の略矩形枠体の柱
27A5〜27D5 係止・保持部材の略矩形枠体の略矩形上部の対向面
27A6〜27D6 係止・保持部材の略矩形枠体の略矩形上部の隣接部分の上面
27A7〜27D7 係止・保持部材の略矩形枠体の略矩形下部の隣接部分の下面
27E 係止・保持部材の当て板
27F 緊締部品
27F1 緊締部品のボルトの先端部
27G 略矩形枠体の略矩形上部の貫通孔
a 略矩形枠体の下部の隣接部位の左側面
c 略矩形枠体の下部の隣接部位の左側面
b 略矩形枠体の下部の隣接部位の右側面
d 略矩形枠体の下部の隣接部位の右側面
27K 係止・保持部材の当て板
28 懸架部材
28a 懸架部材の上方係止部
28b 懸架部材の下方保持部
28c 懸架部材の鉤
28d 懸架部材の水平部分
29 斜材
30 坑内照明器具
31 分電盤
32 懸垂トロリ部材
32A 懸垂トロリ部材の走行ガイド
32A1 懸垂トロリ部材の走行ガイドの滑車
32A2 懸垂トロリ部材の走行ガイドの滑車固定板
32A3 懸垂トロリ部材の走行ガイドのロープ係止板
32a 懸垂トロリ部材の走行ガイドのロープ係止板の係止片
32B 懸垂トロリ部材の吊ロープ
32b 懸垂トロリ部材の吊ロープのロープ
32B1 懸垂トロリ部材の吊ロープの上フック部
32B2 懸垂トロリ部材の吊ロープの下フック部
32B3 懸垂トロリ部材の手巻きクレーン
32c懸垂トロリ部材の手巻きクレーンのレバー
32C 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部
32C1 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部の連結バー
32C2 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部の対向爪
32C3 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部の張力バネ
32C4 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部の対向爪の先端部分
32C5 懸垂トロリ部材の枕木付レール把持部の対向爪のバネ
33 電話線
34 止め板
34a 止め板の楕円形貫通孔
35 止め板の緊締部品
36 駆動車両の駆動部
37 駆動車両の本体部
38 駆動車両の車輪
A 前方の枕木付レール運搬台車(後方の枕木付レール運搬台車)
B 駆動車両
C トンネル
C1 トンネルの底面
C2 トンネルの入口(開口)部分
R 大地
α 傾斜した所定角度(°)
β 吊ビーム部材の前・後端面の傾斜角度(°)
β1 前方の吊ビーム部材の後端面と後方の吊ビーム部材の前端面が衝合した際に於ける開放角度(°)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設した吊上げ用柱と、該吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定された吊上げ用切梁と、該吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記吊上げ用切梁の前後間及び該吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能な吊ビーム部材と、該吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項2】
前記懸垂トロリ部材は、I型鋼で形成された前記吊ビーム部材の下端縁に前・後進滑動自在に係止する走行ガイドと、該走行ガイドに吊下げられたレバーブロック付吊ロープと、該レバーブロック付吊ロープにより前記枕木付レールを吊上げる枕木付レール吊治具とで構成されることを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項3】
前記係止・保持部材は、内部空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した単一又は複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項4】
前記係止・保持部材は、側面略コ字形を対向して形成した空間内にI型鋼で形成された前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を介装した互に対向配置して構成した複数で一つの組になる略矩形枠体と、該略矩形枠体に於ける各個の隣接部位の上又は下面及び左又は右側面に当接・配置する当て板と、該当て板の上面から嵌入して前記空間内の前記吊上げ用切梁の下端縁及び前記吊ビーム部材の上端縁を挾圧・保持する複数の緊締部材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項5】
所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置された折曲・分離可能なI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項6】
所望数の枕木付レールを積載した基台と、該基台の前後及び/又は左右に立設したH型鋼でなる吊上げ用柱と、該H型鋼でなる吊上げ用柱の左右の上端毎に橋架・固定されたH型鋼でなる吊上げ用切梁と、該H型鋼でなる吊上げ用切梁に対して係止・保持部材により前後・左右に移動可能に固定しかつ前記H型鋼でなる吊上げ用切梁の前後間及び該H型鋼でなる吊上げ用切梁の前方又は後方に延在配置され、長さ方向の中間位置又は端部に於ける上・下端縁の垂直中間位置を凹凸状に形成すると共に前記長さ方向の中間位置又は端部の上・下端縁を中央を頂点として略山形状に傾斜させたI型鋼でなる吊ビーム部材と、該I型鋼の垂直中間位置に形成した凹凸状部位の両側面に当接しかつ前記吊ビーム部材を折曲・分離可能とする楕円形貫通孔の所望数個を穿孔してなる止め板と、該I型鋼に於ける長さ方向の中間位置または端部の上端縁及び又は下端縁の上面にその端部を固定し、前記吊ビーム部材を折曲可能にガイドする複数個のガイド板と、該I型鋼でなる吊ビーム部材に前・後進滑動自在に係止され前記枕木付レールをトンネル底面に順次かつ一連に敷設する懸垂トロリ部材とを有したことを特徴とするトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項7】
前記吊ビーム部材は前端及び/又は後端に伸縮自在のパイプサポートを設置したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車。
【請求項8】
前記請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のトンネル内に於ける枕木付レール運搬台車は駆動車両により前進・後退させることを特徴とするトンネル内レール敷設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−348576(P2006−348576A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175882(P2005−175882)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(502171242)株式会社 地巧社 (3)
【Fターム(参考)】