説明

トンネル合流部およびトンネル合流部の構築方法

【課題】トンネル合流部等において本線トンネルとランプトンネルを連通させる場合において、トンネルの合流部に必要な最低限の用地内で構築することができ、施工性に優れるトンネル合流部およびトンネル合流部の構築方法を提供する。
【解決手段】階段状に拡幅量を増やして、拡幅部7eを設ける。拡幅部7eはパイプルーフ発進基地11となる。パイプルーフ発進基地11から本線シールドトンネル1の略軸方向へ向けて発進されたパイプ17は、末広がり状に設けられ、パイプルーフ13が構築される。パイプルーフ13で囲まれた領域を止水領域25としてトンネル躯体29を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを拡幅して設けられるトンネル合流部およびトンネル合流部の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの合流部等の構築のため、本線トンネルにランプトンネルを連通させる方法としては、地上から立坑をトンネルまで設け、立坑によってトンネル同士の連通工事を行っている。しかし、この方法では、合流部の地上に作業基地が設置できる場合は良いが、地上部に構造物等がある場合には、トンネルの合流部を構築することができない。
【0003】
また、トンネル合流部の構築には多くの時間を要するため、地上での作業基地の設置によって、作業基地設置周辺の交通等へ大きな影響を与える。このため、本線トンネルに併設するランプトンネルを設け、双方のトンネルを地下で連通するトンネル合流部の構築方法が採用されている。
【0004】
図10は、本線シールドトンネル41にランプシールドトンネル43が併設され、本線シールドトンネル41及びランプシールドトンネル43をつなげることで、合流部45を設けた状態を示す図である。本線シールドトンネル41とランプシールドトンネル43との接合は、双方のトンネルの接合部位に止水のために薬液注入等を行い、各トンネル内部から掘削及び山留め等を行い、コンクリート等を打設することで行われる。
【0005】
このようなトンネル合流部を地下で構築する方法としては、例えば、本線トンネルとランプ部トンネルとを貫通する複数のパイプを設置してパイプルーフを形成し、パイプルーフで囲まれた地盤を掘削し、パイプルーフの内側を覆工してトンネル合流部を構築するトンネル合流部の構築方法がある(特許文献1)。
【0006】
また、ランプシールドから複数のルーフシールドを発進させて、合流部を取り囲むようにルーフシールドトンネルを設け、ルーフシールド内部より周囲地山を改良して、合流部を構築するトンネル工法がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−353264号公報
【特許文献2】特開2006−70530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1による合流部の構築方法では、図10に示すような余掘り部47が形成されるため、本来の合流部として必要な用地に加えて、余分な用地買収が必要となるという問題がある。また、合流部全長に渡って、本線トンネルとランプ部トンネルの間にパイプルーフを構築する必要があることから、パイプ本数が多く、施工に時間を要するという問題がある。
【0008】
特許文献2のトンネル工法では、ランプシールドの外周よりランプシールドと垂直な方向へルーフシールドを発進させ、ルーフシールドの進路をランプシールド軸方向へ曲げながらルーフシールドトンネルを構築するが、ルーフシールドの旋回半径には限界があるため、必要以上に大きな範囲のルーフシールドトンネルを構築することとなり、更に、前述したような余掘り部47が形成されるため、合流部として必要な用地を超えて、用地買収が必要となるという問題がある。また、複数のルーフシールドの旋回を精度良く、正確に制御することが困難であるという問題がある。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、トンネル合流部等において本線トンネルとランプトンネルを連通させる場合において、トンネルの合流部に必要な最低限の用地内でトンネルの合流部を構築することができ、施工性に優れるトンネル合流部およびトンネル合流部の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、第1のトンネルと、前記第1のトンネルに設けられ、徐々に拡幅量が大きくなるように階段状に設けられた拡幅部と、前記拡幅部から前記第1のトンネルの略軸方向へ向けて末広がり状に設けられたパイプルーフと、前記パイプルーフで囲まれた領域に設けられ、前記拡幅部とつなげられた躯体と、前記躯体につなげられ、前記第1のトンネルに併設される第2のトンネルと、を具備することを特徴とするトンネル合流部である。
【0011】
第1の発明によれば、拡幅量の小さい範囲はトンネルを階段状に直接拡幅し、また、拡幅量が大きくなる範囲は、拡幅部からパイプルーフをトンネルの略軸方向へ発進させて、トンネルの合流部の形状に沿って末広がり状に設けるため、トンネル合流部に必要な最低限の用地内で構築が可能なトンネル合流部を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、第1のトンネルを設ける工程(a)と、前記第1のトンネルに拡幅部を設ける工程(b)と、前記拡幅部から、前記第1のトンネルの略軸方向へパイプルーフを設ける工程(c)と、前記パイプルーフにより周囲地山に止水部を形成する工程(d)と、前記止水部に囲まれた止水領域内に躯体を設ける工程(e)と、前記躯体に第2のトンネルをつなげる工程(f)と、を具備することを特徴とするトンネル合流部の構築方法である。
【0013】
前記工程(c)では、前記パイプルーフは、前記拡幅部より末広がり状に設けられ、また、前記工程(b)では、隣接する前記拡幅部に対して徐々に拡幅量が大きくなるように拡幅施工を繰り返し、前記拡幅部が階段状に設けられてもよい。
【0014】
前記工程(c)では、前記パイプルーフの上方末端におけるパイプ同士の距離は、前記パイプルーフの下方末端におけるパイプ同士の距離よりも小さくしてもよい。また、前記工程(b)では、前記第1のトンネル内に前記拡幅部を仕切る柱が設けられてもよく、更に、前記工程(e)では、前記躯体の末端部には仮壁が設けられてもよい。
【0015】
第2の発明によれば、拡幅量の小さい範囲はトンネルを階段状に直接拡幅し、拡幅量が大きくなる範囲は、拡幅部からパイプルーフをトンネルの略軸方向へ発進させて、トンネルの合流部の形状に沿って末広がり状に設けるため、トンネル合流部に必要な最低限の用地内で構築が可能であり、また、上方のパイプ間隔を下方のパイプ間隔よりも狭くすることで、上方からの土圧に耐えうるパイプルーフを構築することができ、更に拡幅部を仕切る柱を設け、パイプルーフ施工後に合流側のトンネルが接続されるため、合流側のトンネルの構築と同時に本線トンネル側の工事を行うことができると共に、トンネル合流部の構築中においても、本線トンネルを使用することができるトンネル合流部の構築方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トンネル合流部等において本線トンネルとランプトンネルを連通させる場合において、トンネルの合流部に必要な最低限の用地内でトンネルの合流部を構築することができ、施工性に優れるトンネル合流部およびトンネル合流部の構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1から図9は、本実施の形態に係るトンネル合流部の構築工程を示す図である。
【0018】
まず、図1に示すように、本線シールドトンネル1に拡幅部7aが設けられる。図1(a)は、本線シールドトンネル1に拡幅部7aが設けられた状態を示す平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。図1(b)に示すように、本線シールドトンネル1は図示しないシールド機によって構築される。
【0019】
本線シールドトンネル1に拡幅部7aを設ける方法は以下の通りである。まず、本線シールドトンネル1内より拡幅を行う領域に止水部9aが施され、地盤が掘削される。止水部9aは、例えば薬液注入や凍結管等によって設けることができる。次いで、拡幅部7aに該当する拡幅部セグメント5aが拡幅方向へ移動される。図1(c)に示すように、本線シールドトンネル1と拡幅部セグメント5aとの間には、拡幅部セグメント5aの移動量に対応した幅を有する拡幅セグメント3aが設置される。
【0020】
なお、拡幅部セグメント5aは、本線シールドトンネル1に使用されていたセグメントを移動して利用するのではなく、新たに拡幅部7a用のセグメントを設置しても良い。また、拡幅部セグメント5aの移動時には、本線シールドトンネル1内には、必要に応じて図示しない支保工やジャッキ等が設けられる。また、例えば、特開2006−348678に開示されたトンネル構築方法を用いて、拡幅部7aを設けてもよい。
【0021】
次に、図2に示すように、拡幅工事を繰り返し、階段状に拡幅量を増やして、拡幅部7eが設けられる。図2(a)は、階段状に拡幅部7eが設けられた状態の本線シールド1の平面図、図2(b)は図2(a)のC−C断面図、図2(c)は図2(a)のD−D断面図である。
【0022】
階段状に拡幅部7aから拡幅部7eを設ける方法は以下の通りである。まず、拡幅部セグメント5aにより構築された拡幅部7aから、拡幅部7b構築予定部に図示を省略した止水部が設けられ、地盤が掘削される。次いで、掘削部に拡幅部セグメント5bが移動され、移動量に応じた拡幅セグメント3bが設置され、拡幅部7bが設けられる。
【0023】
以上の作業を繰り返し、拡幅部セグメント5の移動量、即ち拡幅量を増やしながら拡幅部7c、7dが設けられる。図2(b)に示すように拡幅部7dが構築されると、拡幅部7dから止水部9bが設けられ、拡幅部セグメント5eを拡幅方向への移動後、拡幅セグメント3eが設置され、拡幅部7eが設けられる。
【0024】
拡幅部7eは後述するパイプルーフ発進基地11となる。また、パイプルーフ発進基地11と本線シールドトンネル1内を仕切るように中柱15が設けられる。中柱15によって、パイプルーフ発進基地11と本線シールドトンネル1内が仕切られるため、以後の工事の際には、本線シールドトンネル1内では別の工事を同時進行で行なうことが可能であり、さらに、車両等の通行を開始することもできる。
【0025】
このようにして、拡幅部7aから拡幅部7eが階段状に拡幅量を大きくしながら構築される。なお、このような拡幅方法では、拡幅量には限界がある。従って、トンネル合流部全長に渡って、上記の方法を繰り返して本線シールドトンネル1の拡幅を行うことはできない。
【0026】
前述した拡幅方法でパイプルーフ発進基地11が設けられると、次に、パイプルーフ発進基地11からパイプルーフ13を設ける。図3は、パイプルーフ発進基地11からパイプルーフ13が設けられた状態を示す図で、図3(a)は、本線シールド1の平面図、図3(b)は、図3(a)のE−E断面図、図3(c)は図3(a)のF方向矢視図である。ここで、パイプルーフ13とは、複数のパイプ17によって構成され、互いに併設されたパイプ17全体をいう。
【0027】
パイプルーフ発進基地11は、本線シールドトンネル1の略軸方向へ向けて、パイプルーフ13を発進させる。図3(b)に示すように、パイプルーフ発進基地11における、パイプルーフ13を構成する複数のパイプ17の端部は、拡幅部セグメント5eの内周面に沿って略等間隔に配置される。パイプルーフ発進基地11から本線シールドトンネル1の略軸方向へ向けて発進されたパイプ17は、図3(c)に示すように、各パイプ17同士の間隔が広がるように、即ち末広がり状に設けられ、パイプルーフ13が構築される。即ち、パイプルーフ末端部23におけるパイプ17同士の間隔は、パイプルーフ発進基地11におけるパイプ17同士の間隔よりも、概ね大きくなる。
【0028】
なお、パイプルーフ末端部23におけるパイプ17同士の間隔は、等間隔ではない。即ち、パイプルーフ13上部に位置する上方パイプ間距離19は、パイプルーフ13下部に位置する下方パイプ間距離21よりもパイプ17同士の中心距離が小さい。これは、パイプルーフ13上方には、上部からの大きな土圧か加わるため、土圧に対抗しうるだけの強度が必要なためである。
【0029】
パイプルーフ末端部23におけるパイプルーフ13によって囲まれる領域は、後述するランプシールドトンネル35の大きさによって決定される。即ち、パイプルーフ13により囲まれた領域が、ランプシールドトンネル35と接合できるように、パイプルーフ13の末広がり形状を決定する必要がある。
【0030】
次に、図4に示すように、パイプルーフ13から周囲の地盤に止水部9cが設けられ、また、本線シールドトンネル1内より、止水部9d、9e、9fが設けられる。図4(a)は、本線シールドトンネル1の平面図、図4(b)は図4(a)のG―G断面図である。
【0031】
止水部9cは、パイプルーフ13を構成する各パイプ17内より周囲の地盤に対して薬液注入等により設けられる。また、本線シールドトンネル1の上下部には、本線シールドトンネル1内部より止水部9d、9eが設けられる。また、パイプルーフ末端部23には、本線シールドトンネル1内部より止水部9fが設けられる。従って、止水部9c、9d、9e、9fに囲まれた止水領域25は、外部の地盤から水が浸入することがない。
【0032】
ここで、パイプルーフ13の周囲に設けられた止水部9cは、各パイプ17から薬液注入等により設けられるが、各パイプ17により設けられた止水部9cは切れ目無く設けられる必要がある。即ち、止水部9cに止水効果のない隙間が生じると、そこから水が浸入し、以後の施工の妨げとなる。従って、パイプ17同士の間隔は、前述のランプシールドトンネル35との接合領域を確保すると共に、止水部9cが不連続とならないように決定しなければならない。
【0033】
例えば、パイプ17から行った薬液注入の止水効果が、パイプ17を中心として直径2mの範囲まで及ぶ場合は、隣り合うパイプ17同士の中心距離は2m以内としなければならない。即ち、パイプ17同士の中心距離が2mを超えると、隣り合うパイプ17同士の間に止水効果の無い部分が生じる。従って、パイプルーフ13を構成するパイプ17間距離は、パイプルーフ13を末広がり状にして、少なくともランプシールドトンネル35との接合領域を確保できるだけのパイプ17間距離を確保する必要があると共に、連続した止水部9cを得ることができる範囲内のパイプ17間距離とする必要がある。
【0034】
なお、パイプ17から薬液注入を行う場合、通常、地盤に薬液注入を行うための穴がパイプ17へ設けられる。図5は、図4(a)におけるN部拡大図であり、パイプ17に設けられた穴24を示す図である。前述の通り、パイプ17は互いに末広がり状に設けられ、パイプ間距離がパイプ末端部23においては大きくなるため、確実に止水効果を得るために、薬液注入を行うための穴24のピッチは、パイプルーフ末端部23へ行くにつれて狭くなる。
【0035】
即ち、図5に示すように、パイプルーフ末端部23におけるパイプ17の穴24のピッチである末端部穴ピッチ26は、パイプルーフ発進基地11側の穴24のピッチである根本部穴ピッチ28よりも狭く設定される。従って、パイプ17同士の距離が大きくなるパイプルーフ末端部23では、穴24のピッチが狭くなり、確実に薬液注入を行うことができると共に、パイプルーフ発進基地11近傍は、パイプ17同士の距離が小さいため、薬液注入を行う穴24のピッチを大きくしても十分な止水効果を得ることができる。
【0036】
次に、図6に示すように止水領域25に、トンネル躯体29が設けられる。図6は止水領域25にトンネル躯体29を設けられた状態を示す図で、図6(a)は本線シールドトンネル1の平面図、図6(b)は図6(a)のH−H断面図である。なお、図6(a)は、パイプルーフ13を透視した図である。
【0037】
前述の通り、止水部9c、9d、9e、9fに囲まれた止水領域25は外部の地山から水の浸入がない。従って、本線シールドトンネル1内部より、止水領域25内の地盤を掘削すると共に、止水領域25の外周部のパイプルーフ13に沿って、C字状にトンネル躯体29が設けられる。トンネル躯体29は例えばNATM(New Austrian Tunneling Method)工法などにより行うことができる。トンネル躯体29の端部は、本線シールドトンネル1の上下と接合される。
【0038】
トンネル躯体29が構築され、トンネル躯体29と本線シールドトンネル1とが接合されると、止水領域25に面していた撤去セグメント27が撤去される。即ち、本線シールドトンネル1とトンネル躯体29により形成された空間とがつなげられる。パイプルーフ末端部23におけるトンネル躯体29の端部は止水部9fで止水される。
【0039】
また、トンネル躯体29のもう一方の端部は、パイプルーフ発進基地11における拡幅部セグメント5eとつなげられる。即ち、トンネル躯体29は、本線シールドトンネル1の側方から本線シールドトンネル1を拡幅するようにつなげられると共に、端部が本線シールドトンネル1の拡幅部7eと接合される。ここで、パイプルーフ13は末広がり状に設けられているため、トンネル躯体29もパイプルーフ13に沿って末広がり状に設けられる。
【0040】
次に、図7に示すように、パイプルーフ末端部23に仮壁31が設けられる。図7は仮壁31が設けられた状態を示す図で、図7(a)は本線シールドトンネル1の平面図、図7(b)は図7(a)のI−I断面図である。なお、図7(a)において、パイプルーフ13及び止水部9の図示は省略した。
【0041】
仮壁31は後述するランプシールドトンネル35が到達するまでの間、トンネル躯体29内に水や土砂が浸入することを防ぐために設けられた仮の壁体である。仮壁31はパイプルーフ末端部23側のコンクリート躯体19の端部に蓋をするように三日月状に設けられる。即ち、仮壁31は、トンネル躯体29の端部と接合され、更にパイプルーフ末端部23における本線シールドトンネル1の外周面に接合される。
【0042】
なお、仮壁31は、例えばコンクリートやモルタル、または繊維強化ボードなどが使用できる。また、ランプシールドトンネル35が直近まで施工されている場合や、止水部9によって確実に止水され土砂等の浸入がない場合には、仮壁31を設けなくても良い。
【0043】
次に、図8に示すようにシールド機33によって、ランプシールドトンネル35が設けられる。図8は本線シールドトンネル1にランプシールドトンネル35が併設された状態を示す図で、図8(a)は本線シールドトンネル1の平面図、図8(b)は図8(a)のJ−J断面図である。なお、図8(a)において、パイプルーフ13及び止水部9の図示は省略し、図8(b)において仮壁31の図示を省略した。
【0044】
シールド機33は、本線シールドトンネル1に平行に、ランプシールドトンネル35を構築しながら、矢印K方向へ進行し、ランプシールドトンネル35は、トンネル躯体29に設けられた仮壁31に向けて構築される。前述の通り、末広がり状に設けられたトンネル躯体29は、パイプルーフ末端部23において最も大きな断面形状を形成する。従って、図8(b)に示すように、パイプルーフ末端部23におけるトンネル躯体29の端部は、ランプシールドトンネル35と接合可能な領域を有している。
【0045】
図9は、ランプシールドトンネル35がトンネル躯体29とつなげられた状態を示す図で、図9(a)は本線シールド1の平面図、図9(b)は図9(a)のL−L断面図、図9(c)は図9(a)のM−M断面図である。なお、図9(a)において、パイプルーフ13の図示は省略した。
【0046】
ランプシールドトンネル35は、シールド機33によって、仮壁31を貫通してトンネル躯体29とつなげられる。即ち、ランプシールドトンネル35は、トンネル躯体29を介して、本線シールドトンネル1とつなげられる。
【0047】
図9(b)に示すように、トンネル躯体29との接合部よりも手前側ではランプシールドトンネル35と本線シールドトンネル1は独立したトンネルであり、それぞれのトンネル内部に図示を省略した道路等が施工される。ランプシールドトンネル35とトンネル躯体29との接合部では、ランプシールドトンネル35と本線シールドトンネル1とが空間的につなげられる。トンネル躯体29内では、ランプシールドトンネル35はトンネル形状では存在せず、図9(c)に示すように、トンネル躯体29と本線シールドトンネル1とがつなげられる。
【0048】
即ち、本実施の形態にかかるトンネル合流部は、以下のように構成される。それぞれ別々にトンネルを構成し、併設されたランプシールドトンネル35と本線シールドトンネル1は、パイプルーフ末端部23近傍でトンネル躯体29を介してつなげられる。トンネル躯体29は、ランプシールドトンネル35との接合部から、拡幅部7e(パイプルーフ発進基地11)との接合部に向けて徐々に幅が狭められる。
【0049】
更に、拡幅部7eから拡幅部7aへは階段状に本線シールドトンネル1の幅が狭められ、本線シールドトンネル1本来の幅となる。従って、ランプシールドトンネル35を通行する車両等は、トンネル躯体29及び拡幅部7で徐々に本線シールドトンネル1と合流することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態にかかるトンネル合流部の構築方法によれば、トンネル合流部を地中において施工することができるため、地上の構造物等に影響を受けずにトンネル合流部を構築することができる。また、階段状に設けられた拡幅部7および末広がり形状に設けられたトンネル躯体29によって、トンネルの合流部の傾斜に沿った形状で、トンネル合流部を構築することができるため、余分な範囲の掘削等が必要なく、また、余分な用地買収も必要が無いため、効率が良い。
【0051】
また、パイプルーフ末端部23におけるパイプ17間距離は、パイプルーフ13上部の上方パイプ間距離19をパイプルーフ13下部の下方パイプ間距離21よりも小さくしたことで、上部からの土圧や水の浸入に対して対抗するだけの強度や止水を行うことができ、施工性が良い。
【0052】
パイプルーフ13は、本線シールドトンネル1に設けられた拡幅部7から本線シールドトンネル1の略軸方向へ向けて発進されるため、パイプルーフ13を湾曲させる必要が無く、施工性に優れ、また、パイプルーフ13を本線シールドトンネル1に垂直に発進させる場合と比べて、パイプルーフ13の旋回半径による工事領域の増大がなく、このため、最小限の工事範囲でトンネル合流部を構築することができる。
【0053】
また、パイプルーフ発進基地11と本線シールドトンネル1とが中柱15によって仕切られるため、トンネル躯体29等の構築時にも、本線シールドトンネル1内で別の工事を並行して行うことができ、また、本線シールドトンネル1を開通し、車両等の通行を開始することもできる。
【0054】
更に、ランプシールドトンネル35の構築を待たずに同時に合流部の構築を行うことができるため、ランプシールドトンネル35が構築されるのを待つ必要が無く、仮壁31を設けたため、ランプシールドトンネル35が到達するまでの間に、トンネル躯体29内に、土砂や水の浸入がない。仮壁31はシールド機33によって容易に貫通することができるため、撤去する必要もない。従って、施工性に優れ、工期短縮が可能なトンネル合流部の構築方法を得ることができる。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、拡幅部7は、7aから7eまでの5段階としたが、5段階に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本線シールドトンネル1に拡幅部7aを設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図。
【図2】本線シールドトンネル1に階段状に拡幅部7aから拡幅部7eを設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図。
【図3】パイプルーフ発進基地11からパイプルーフ13を設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のE−E断面図、(c)は(a)のF方向矢視図。
【図4】パイプルーフ13および本線シールドトンネル1から止水部9を設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のG−G断面図。
【図5】図4(a)N部拡大図であり、パイプ17の末端部穴ピッチ26および根元部穴ピッチ28を示した図。
【図6】止水領域25にトンネル躯体29を設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のH−H断面図。
【図7】パイプルーフ末端部23に仮壁31を設けた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のI−I断面図
【図8】シールド機33によってランプシールドトンネル35を構築した状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のJ−J断面図。
【図9】ランプシールドトンネル35とトンネル躯体29がつなげられた状態を示す図で、(a)は本線シールドトンネル1の平面図、(b)は(a)のL−L断面図、(c)は(a)のM−M断面図。
【図10】従来のトンネル合流部を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1………本線シールドトンネル
3………拡幅セグメント
5………拡幅部セグメント
7………拡幅部
9………止水部
11………パイプルーフ発進基地
13………パイプルーフ
15………中柱
17………パイプ
19………上方パイプ間距離
21………下方パイプ間距離
23………パイプルーフ末端部
24………穴
25………止水領域
26………末端部穴ピッチ
27………撤去セグメント
28………根本部穴ピッチ
29………トンネル躯体
31………仮壁
33………シールド機
35………ランプシールドトンネル
41………本線シールドトンネル
43………ランプシールドトンネル
45………合流部
47………余掘り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトンネルと、
前記第1のトンネルに設けられ、徐々に拡幅量が大きくなるように階段状に設けられた拡幅部と、
前記拡幅部から前記第1のトンネルの略軸方向へ向けて末広がり状に設けられたパイプルーフと、
前記パイプルーフで囲まれた領域に設けられ、前記拡幅部とつなげられた躯体と、
前記躯体につなげられ、前記第1のトンネルに併設される第2のトンネルと、
を具備することを特徴とするトンネル合流部。
【請求項2】
第1のトンネルを設ける工程(a)と、
前記第1のトンネルに拡幅部を設ける工程(b)と、
前記拡幅部から、前記第1のトンネルの略軸方向へパイプルーフを設ける工程(c)と、
前記パイプルーフにより周囲地山に止水部を形成する工程(d)と、
前記止水部に囲まれた止水領域内に躯体を設ける工程(e)と、
前記躯体に第2のトンネルをつなげる工程(f)と、
を具備することを特徴とするトンネル合流部の構築方法。
【請求項3】
前記工程(c)では、前記パイプルーフは、前記拡幅部より末広がり状に設けられることを特徴とする請求項2記載のトンネル合流部の構築方法。
【請求項4】
前記工程(b)では、隣接する前記拡幅部に対して徐々に拡幅量が大きくなるように拡幅施工を繰り返し、前記拡幅部が階段状に設けられることを特徴とする請求項2または請求項3記載のトンネル合流部の構築方法。
【請求項5】
前記工程(c)では、前記パイプルーフの上方末端におけるパイプ同士の距離は、前記パイプルーフの下方末端におけるパイプ同士の距離よりも小さいことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のトンネル合流部の構築方法。
【請求項6】
前記工程(b)では、前記第1のトンネル内に前記拡幅部を仕切る柱が設けられることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載のトンネル合流部の構築方法。
【請求項7】
前記工程(e)では、前記躯体の末端部には仮壁が設けられることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載のトンネル合流部の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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