説明

トンネル掘削機とこのトンネル掘削機によるトンネル掘削方法

【課題】管路を形成しながら所定長のトンネルの掘削後、容易に回収することができるトンネル掘削機の提供。
【解決手段】小径カッタヘッド4aを構成しているスポーク体4a1に外周側スポーク体4b1を継ぎ足すことによって外殻体1の前方地盤を全面的に掘削することができる大径のカッタヘッドとし、外周側スポーク体4b1を取り外すことによって掘削機本体Aと一体に管路P内を通じて発進立坑側に回収可能な小径のカッタヘッド4aとなるようにし、トンネル掘削終了後、上記カッタヘッド4の径を縮小させると共に、掘削機本体Aの内殻体2の後端部と縮小したカッタヘッド4の下周部とにガイドローラ6a、6bを装着し、これらのガイドローラ6a、6bによってカッタヘッド4を備えた掘削機本体Aを安定的に支持しながら管路上を転動させて回収、撤去するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中にトンネルを掘削しながら管路を形成したのち、該管路内を通じて撤去、回収し、再使用を可能にしたトンネル掘削機と、このトンネル掘削機によるトンネル掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に管路を形成するための推進工法やシールド工法によるトンネル築造工事においては、発進立坑側からトンネル掘削機を到達立坑に向かって掘進させ、一定長のトンネルを掘削する毎に該トンネル掘削機に後続させて一定長の埋設管を順次、継ぎ足すことにより管路を形成しており、到達立坑に達したトンネル掘削機は、通常、該到達立坑内から地上に回収しているが、到達側に既存の人孔が設けられている等の事情によって到達立坑が設けられていない場合や、或いは到達立坑を通じて回収できない場合には、掘削終了後にトンネル掘削機を解体してトンネル内を通じて発進立坑側に撤去、回収しなければならず、その撤去、回収作業に著しい手間と労力を要するといった問題点がある。
【0003】
このため、特許文献1に記載されているように、地中にトンネルを掘削しながら該トンネル内に管路を形成していくトンネル掘削機において、上記管路の内外径と略同一の内外径を有し且つその後端面を管路の前端面に連結、支持させている外筒体と、この外管体内に引き出し可能に配設された掘削機本体とからなり、この掘削機本体は、外管体と略同一長さを有すると共にその前後端の外周部を外筒体の前端面と該外筒体の後端部内周面とにそれぞれ着脱自在に係止させ且つ外周面の前後部複数箇所に外筒体の前後部内周面にそれぞれ摺接させたガイドローラを装着している内筒体と、この内筒体の前部に一体に設けた隔壁に回転自在に支持され且つ上記管路の内径よりも小径となるように縮径可能なカッタヘッドと、このカッタヘッドの駆動手段と、カッタヘッドによって掘削された掘削土砂の排出手段とを備えてなるトンネル掘削機が開発された。
【0004】
そして、このトンネル掘削機によってトンネルを掘削する場合には、発進立坑側からの推進力を管路から外管体を介してこの外管体に係止している内管体に伝達しながらカッタヘッドによって前方の地盤を掘進させ、所定長さまでトンネルを掘削すると、上記掘削土砂排出手段を管路内を通じて回収、撤去すると共に該カッタヘッドを上記内管体の径以下にまで縮径させ、且つ外筒体に対する内筒体の係止を解いたのち、外筒体を掘削壁面に埋め殺し状態に残置させた状態で掘削機本体を後方に牽引し、ガイドローラによって掘削機本体を支持させながら管路内を通じて回収、撤去している。
【特許文献1】特許第2038809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のトンネル掘削機では、掘削機本体における内筒体の外周面前後部にガイドローラを装着してこれらのガイドローラにより掘削機本体を支持させながら回収するように構成しているため、胴長の長い内筒体の場合には前端側に重量の大きいカッタヘッドを配設しているにもかかわらず、前後のガイドローラに無理な負荷が殆どかかることなく比較的安定した状態で管路上を転動させながら掘削機本体を回収することができるが、軽量化による搬送性や方向制御の容易性等を可能にするために、内筒体の胴長を短くすると、当然のことながら前後ガイドローラ間の距離が縮小して前端側に配設しているカッタヘッドの大きな重量により掘削機本体の重心が内筒体の前端側に大きく偏位して前後ガイドローラによる掘削機本体の支持が極めて不安定となり、回収時に管路の内周面を損傷させる虞れがあるばかりでなく、転倒する虞れも生じて危険であるといった問題点がある。
【0006】
従って、上記のような構成を有するトンネル掘削機では、内外筒体の胴長を短くして軽量化や方向制御の容易性を図ることが困難であると共に、取扱性や搬送性等においても問題点が生じることになる。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、軽量化による搬送性や方向制御の容易性等を可能にすると共に、前端側に重量の大なるカッタヘッドを設けているにもかかわらず、安定した状態で円滑に回収し得るトンネル掘削機と、このトンネル掘削機によるトンネル掘削方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のトンネル掘削機は、請求項1に記載したように、トンネルを掘削しながら該トンネル内に管路を形成していくと共に所定長のトンネルの掘削後、上記管路内を通じて後方に回収されるトンネル掘削機であって、管路の前方側に配設されてその外径が管路の外径と略同径に形成された外殻体と、この外殻体内に配設された掘削機本体と、掘削土砂の排出手段とを備え、上記掘削機本体は、上記管路よりも小径に形成され且つ上記外筒体内に後方に向かって引き出し可能に連結、支持されている内殻体と、この内殻体に一体に設けている隔壁に回転自在に支持されて上記外殻体の前方地盤を掘削し、回収時には外径を管路の内径よりも小径に縮小可能にしたカッタヘッドと、隔壁の後面に装着されているカッタヘッドの駆動部とを備えてなり、この掘削機本体の回収時に、縮径したカッタヘッドの外周部と内殻体とに管路上を転動するガイドローラを装着するように構成している。
【0009】
このように構成したトンネル掘削機において、請求項2に係る発明は、上記内殻体をその長さが外殻体の前部の長さに略等しい短尺筒形状に形成されてあり、その外周面を外殻体の前部内周面に後方に向かって引き出し可能に内嵌させ、後端を外殻体の長さ方向の中央部内周面に取り外し可能に固着した推力伝達部材に受止させていると共にその後端部にガイドローラを装着可能に構成している。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記トンネル掘削機を使用したトンネル掘削方法であって、トンネル内に形成される管路の前端に外殻体を配設すると共にこの外殻体内に掘削機本体の内殻体を引き出し可能に連結、支持させ、この掘削機本体を外殻体と一体的に推進させながら該掘削機本体内の隔壁に回転自在に支持された縮径可能なカッタヘッドによって外殻体の前方地盤を掘削することによりトンネルを掘進すると共に掘削されたトンネル内に管路を形成して行き、所定長のトンネルの掘削終了後、外殻体に対する掘削機本体の内殻体の連結を解くと共に内殻体の後端部に上記管路上を転動可能な後部ガイドローラを装着し、さらに、上記カッタヘッドの径を縮小させてその縮小したカッタヘッドの外周端に上記管路上を転動可能な前部ガイドローラを装着し、しかるのち、これらの前後ガイドローラにより掘削機本体を支持させながら管路内を通じて該掘削機本体を後方に回収することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載のトンネル掘削方法において、外殻体の外径を管路の外径に略等しく且つ内径を少なくともその前部が管路の内径よりも小径に形成されていて、この前部内に掘削機本体の内殻体を後方に向かって引き出し可能に支持させていると共に、該掘削機本体の内殻体の後端を外殻体の長さ方向の中央部内周面に取り外し可能に固着した推力伝達部材に受止された状態で、管路側からの推進力を外殻体からこの推力伝達部材を介して掘削機本体に伝達しながら掘進し、所定長のトンネルの掘削終了後、上記推進伝達部材を取り外すことによって外殻体の中央部内周面に空間部を設け、この空間部を利用して上記内殻体の後端に上記管路上を転動可能な取付け位置となるように後部ガイドローラを装着したのち、掘削機本体を後退させてこの後部ガイドローラを管路の前端部上に位置させると共に縮径したカッタヘッドを上記凹所上に位置させ、この位置で該カッタヘッドの外周端に前部ガイドローラを装着したのち、これらの前後ガイドローラを管路上で転動させながら掘削機本体を回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトンネル掘削機及びこのトンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法によれば、トンネル掘削時には、管路の前端面に接続した外殻体に作用する推進力をこの外殻体内に配設されている掘削機本体に内殻体を介して確実に伝達させながらカッタヘッドにより外殻体の前方地盤を円滑に掘進させることができるのは勿論、所定長のトンネルの掘削後に上記掘削機本体を回収する際には、上記カッタヘッドの外径を管路や外殻体の内径よりも小径となるよう縮小させて、その縮小した外周部にガイドローラを装着するように構成しているので、このガイドローラを前側にして内殻体に後部ガイドローラを装着することにより、内殻体の前方側に重量の大きい上記カッタヘッドを配設しているにもかかわらず、これらの前後ガイドローラによって掘削機本体を安定した状態で支持させることができ、管路の内周面を損傷させることなく、掘削機本体を円滑に回収、撤去することができるものであり、その上、掘削機本体が転倒する虞れもないので、回収作業や再度使用する際の搬送作業等を比較的安全に且つ容易に行うことができる。
【0013】
このように、カッタヘッドを前部ガイドローラによって直接的に支持させるので、内殻体が短尺であっても前後ガイドローラによって掘削機本体全体を安定した状態で支持させることができ、従って、外殻体もこの内殻体の長さに応じて短くすることができ、そのため、外殻体の外周面と掘削地盤との間に裏込み材を注入した時に、管路の外周面にまで該裏込み材を短時間で到達させることができて管路の外周地盤の早期安定を図ることができると共に、外殻体の後部側を支点として外殻体の前部とこの外殻体の前部に内嵌状態で配設している短尺な内殻体とを一体的に円滑且つ大きく屈折させることが可能となり、方向制御も容易に且つ正確に行うことができるものであり、さらに、掘削機本体の軽量化を図ることができて搬送等の取扱性が容易となるものである。
【0014】
また、外殻体と掘削機本体の内殻体とは、請求項2及び請求項4に記載したように、内殻体をその長さが外殻体の前部の長さに略等しい短尺筒形状に形成していると共にこの内殻体の後端を外殻体の長さ方向の中央部内周面に固着した推力伝達部材に受止させた構造としているので、外殻体に作用する推進力をこの推力伝達部材を介して内殻体に確実に伝達しながらトンネルを掘進していくことができる。
【0015】
その上、所定長のトンネルの掘削終了後、上記推進伝達部材を取り外すことによって外殻体の中央部内周面に空間部を設け、この空間部を利用して上記内殻体の後端に上記管路上を転動可能な取付け位置となるように後部ガイドローラを装着するものであるから、掘削機本体を移動させることなく簡単且つ正確に後部ガイドローラの装着作業が行えるものであり、さらに、この後部ガイドローラの装着後、掘削機本体を後退させて該後部ガイドローラを管路の前端部上に位置させると共に縮径したカッタヘッドを上記凹所上に位置させ、この位置で該カッタヘッドの外周端に前部ガイドローラを装着するので、内殻体が外殻体の前部の長さに相当する短い長さであり、且つ、その前端開口部に重量の大なるカッタヘッドを配設しているにも拘らず、前後ガイドローラの装着作業が簡単且つ正確に行うことができると共に、これらの前後ガイドローラを無理なく確実に管路上に設置させることができて掘削機本体を能率よく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は推進工法によってトンネルTを掘削しながらそのトンネルT内に管体pを推進、埋設することにより管路Pを形成していくトンネル掘削機の簡略縦断側面図であって、外径が全長に亘って形成すべき管路Pの外径に略等しく、内径がその少なくとも前部(前半部)を管路Pの内径よりも僅かに小径に形成されている一定長さを有する外殻体1と、この外殻体1内に配設された掘削機本体Aと、掘削機本体Aによって掘削された土砂を排出する排出手段Bとを備えている。
【0017】
上記掘削機本体Aは、上記管路Pの内径よりも小径に形成されていると共にその外周面を外殻体1の前部内周面に摺接させて後方へ引き出し可能に内嵌、支持されている短尺筒形状の内殻体2と、この内殻体2の長さ方向の中央部内周面に外周面を固着させている隔離3と、この隔壁3の中央部に回転軸5を回転自在に支持させているカッタヘッド4とを備えてなり、このカッタヘッド4はトンネル掘削時にはその外径を外殻体1の外径に略等しくし、掘削機本体Aの回収時にはその外径を管路Pの内径よりも小径に縮小可能に形成されていると共に、その縮径したカッタヘッドの外周部にガイドローラ6a(図5、図6に示す)を装着可能に構成している。
【0018】
詳しくは、このカッタヘッド4は図1、図2に示すように、その回転軸5の前端を内殻体2の前端から前方に突出させていると共にこの回転軸5の前端から該回転軸5に対して直交する方向(外径方向)に向かって、長さが内殻体2の半径よりも短い複数本(図においては4本)のスポーク体4a1 を放射状に突設し、これらのスポーク体4a1 の前面両側部と中央部とに長さ方向に所定間隔毎に前方に向かって複数本のカッタビット4a2 を突設することによって掘削径が内殻体2の内径よりも小径のカッタヘッド部4aを形成してあり、この小径カッタヘッド4aの全てのスポーク体4a1 の外端面を円形リング体4cの内周面四方部分に一体に固着してこの円形リング体4cによって隣接するスポーク体4a1 、4a1 の外端面間を一体に連結させている。そして、掘削機本体Aの回収時に、この円形リング体4cの外周面に前部ガイドローラ6aを装着させるように構成している。
【0019】
さらに、上記各スポーク体4a1 の外端面に、前面両側部と中央部とに複数本のカッタビット4b2 を突設している短尺の外周側スポーク体4b1 を継ぎ足すことによって、掘削径が上記外殻体1の外径に達する大径カッタヘッド部4bを形成している。これらのスポーク体4b1 はその内端面を上記円形リング体4cの外周面にボルト・ナットにより着脱自在に固着するように構成している。一方、上記前部ガイドローラ6aは、図5、図6に示すように、このガイドローラ6aを回転自在に軸支している軸受け7aの内端に固着した台座板7bを円形リング体4cの外周面の所望位置に設置し、この台座板7bと対向させて円形リング体4cの内周面に連結板片7cを当てがった状態にしてこれらの台座板7bと連結板片7cの両側端部間をボルト・ナット7dによりリング体4cを挟着した状態で着脱自在に固着している。このように、ガイドローラ6aをリング体4cに装着するようにしているので、任意の位置に配設することができる。
【0020】
なお、このカッタヘッド4においては、小径カッタヘッド4aを構成しているスポーク体4a1 に外周側スポーク体4b1 を継ぎ足すことによって外殻体1の前方地盤を全面的に掘削することができる大径のカッタヘッドとし、外周側スポーク体4b1 を取り外すことによって掘削機本体Aと一体に管路P内を通じて発進立坑側に回収可能な小径のカッタヘッド4aとなるようにしてカッタヘッド4を小径に縮小可能としているが、上記スポーク体4a1 を中空に形成してこの中空スポーク体内に外側スポーク体を出没自在に収納し、中空スポーク内に設けているジャッキによって中空スポーク体から突出させるように構成しておいてもよい。また、このように外径が縮小可能なスポークタイプのカッタヘッドに形成することなく、面板形状のカッタ板の外周部を着脱自在な部分に形成してその部分を取付けている場合には、カッタ板を外殻体1の外径に略等しい外径とし、取り外した場合には、管路P内を通じて撤去可能な径となるように構成しておいてもよい。
【0021】
上記カッタヘッド4における小径カッタヘッド部4aを形成している各スポーク体4a1 の後面外周部に、後方に向かってアーム部材17を突設し、これらのアーム部材17の後端を円環状枠材18によって一体に連結して該円環状枠体18を上記隔壁3の前面外周部から前方に突出している円筒形状の支持フレーム19の内周面に回転自在に支持させてあり、さらに、この円環状枠体18の後端面に内歯車20を固着している一方、上記隔壁3の後面外周部に駆動モータ21を装着してこの駆動モータ21の回転軸に固着している小歯車22を上記内歯車20に噛合させ、駆動モータ21によってカッタヘッド4を回転させるように構成している。
【0022】
一方、上記外殻体1は、外径が全長に亘って管路Pの外径に略等しい径に形成された一定長さの外筒部1aと、この外筒部1aの前部内に内方に一定間隔を存した状態で配設されてその前後端を円環形状の連結板1c、1dによって外筒部1aの前端部内周面と中央部内周面とに一体に固着してなる内筒部1bとからなり、この内筒部1bは、外殻体1の前部(前半部)に略等しい長さ、即ち、外筒部1aの長さの略1/2程度の長さに形成されていると共にその内径を管路Pの内径よりも僅かに小径に形成している。なお、外筒部1aの後部(後半部)を前半部に対して一体に連続させておいてもよいが、図においては、前半部に対して分断されている。
【0023】
さらに、外殻体1の長さ方向の中央部に固着している上記後側の円環形状の連結板1dに後続して外筒部1aの分断されている後半部の前端部内に推力伝達部材8を配設し、この推力伝達部材8を介して管路P側からの推進力を掘削機本体A側に伝達するように構成している。詳しくは、この推力伝達部材8は厚みが外殻体1の内外筒部1a、1b間の厚みに等しい中空環形状の基台部8aとこの基台部8aの内周面の数カ所に着脱自在に固着された断面L字状の伝達部8bとからなり、基台部8aはその前端面を上記後側の連結板1dの後面に当接させた状態で切り離し可能に連結させていると共にその外周端面を外殻体1の外筒体1における分断した後半部の前端部内周面に溶接等により一体に固着してあり、上記伝達部8bの垂直板部8b' を掘削機本体Aの内殻体2の後端部内周面に一体に固着している連結環部2aの後面に当接させてボルト・ナット等により切り離し可能に連結している。なお、基台部8aと伝達部8bとを一体に形成して基台部8aを外筒体1の内周面中央部、即ち、外筒体1の後半部の前端部内周面に切り離し可能に固着させておいてもよい。
【0024】
この推力伝達部材8の後方側、即ち、外筒部1aの後半部には上記内筒部1bが存在しなくて外筒部1aの後部内周面が露出した空間部9が設けられてあり、この空間部9に周方向に所定間隔毎に、例えば、四方に方向制御ジャッキ10が配設されている。そして、これらの方向制御ジャッキ10の前端は、上記推力伝達部材8の基台部後面に後方に向かって突設しているブラケット11a に軸12a によって回動自在に連結している一方、後端は管路Pを形成している最前側の管体pの前端面に固着した短管13の前端に突設しているブラケット11b に軸12b によって回動自在に連結している。従って、外殻体1の後端はこれらの方向制御ジャッキ10を介して管路Pの前端に連結、支持させている。さらに、上記短管13の外周部から前方に向かって一定長さの支持環部13a を突設してこの支持環部13a 上にシール材16を介して外殻体1の上記外筒部1aの後端部内周面を屈折自在に嵌合させている。
【0025】
また、上記カッタヘッド4の後面と隔壁3の前面間の空間部を、カッタヘッド4によって掘削された土砂を取り込んで一旦滞留させておく土砂室14に形成していると共に隔壁3の下部にはこの土砂室14の下端部内に臨ませている土砂取込み口15を設けてあり、この土砂取込み口15にスクリューコンベアからなる上記土砂排出手段Bの前端開口部を貫通状態に接続して、土砂室14からこの土砂排出手段Bを通じて掘削土砂を後方に排出するように構成している。さらに、上記外殻体1の前端部に掘削地盤側に開口した裏込材注入管23を配設してあり、この裏込材注入管23に掘削機本体A内から供給ホース24を通じて裏込材を供給するように構成している。
【0026】
次に、以上のように構成したトンネル掘削機によって地中に管路Pを施工するには、まず、このトンネル掘削機を発進立坑(図示せず)内に設置すると共に一定長のヒューム管等からなる管体pを方向制御ジャッキ10を介して接続する。この状態にして駆動モータ21を駆動してカッタヘッド4を回転させると共に管体aの後端面を発進立坑内に配設している複数本の推進ジャッキよりなる推進手段によって押し進めてトンネルを掘進する。
【0027】
そして、トンネル掘削機が発進立坑から地中内に一定長推進すると、管体pの後端に次の管体pの前端を接続させ、この管体pの後端を上記推進手段によって押し進めて、先頭の管体pに該管体pに後続させながらトンネル掘削機をさらにトンネル計画線に沿って掘進させ、以下、トンネル掘削機によって一定長のトンネルが掘削される毎に発進立坑側において管体pを順次、継ぎ足しながら押し進めて管路Pを形成していく。
【0028】
推進手段による推進力は管体pから方向制御ジャッキ10を介して外殻体1に伝達され、さらに、外殻体1の内周面に固着している推力伝達部材8を介してこの推力伝達部材8の伝達部8bと連結している掘削機本体A側の内殻体2の連結環部2aに伝達され、掘削機本体Aはカッタヘッド4を切羽地盤に押し付けながら掘削する。カッタヘッド4によって掘削された土砂は土砂室14内に取り込み、土砂排出手段Bによって発進立坑側に排出する。なお、トンネルTの掘進中において、トンネル掘削機の方向を修正したり曲線トンネル部を掘削する場合には、方向制御ジャッキ10を作動させて先頭の管体pに対して外殻体1と一体に掘削機本体Aを所定方向に屈折させることにより行う。
【0029】
次いで、このトンネル掘削機によって所定長のトンネルを掘削して到達立坑Cに連通した管路Pを形成したのち、このトンネル掘削機の掘削機本体Aを発進立坑側に撤去、回収する方法について説明する。トンネル掘削機が到達立坑Cに達すると、まず、トンネル掘削機後方に配設された駆動ユニット台車や裏込み注入台車等の後続台車を管路Pの内底部に敷設された軌条上(図示せず)を移動させながら発進立坑側に回収する。次に、スクリューコンベアからなる土砂排出手段Bを隔壁3から取り外して管路P内を通じて発進立坑側に回収、撤去する(図3参照)。この土砂排出手段Bの回収作業は、管路Pの内底部に予め配設された上記後続台車移動用の軌条上を走行する台車上に載せて行うことができる。また、この軌条を撤去した後に管路Pの内底面上を走行するローラ台車上に載せて行ってもよい。そうすることにより、移動空間が広く取れ、搬送性がよくなる。
【0030】
さらに、カッタヘッド4をその外径が管路Pの内径よりも小径となるように縮小させる。この際、カッタヘッド4はジャッキによってその外径を拡縮可能に形成している場合には、ジャッキにより縮小させればよいが、小径カッタヘッド4aを構成しているスポーク体4a1 に外周側スポーク体4b1 を継ぎ足してなるカッタヘッド4の場合には、その外周側スポーク体4b1 を取り外すことにより縮径させ、取り外した外周側スポーク体4b1 を隔壁3に設けている出入口(図示せず)を通じて管路P内に搬入して発進立坑側に回収するか、或いは、到達立坑内から地上側に回収する。
【0031】
また、到達立坑C内には外殻体1が突入した状態となっているので、内外筒部1a、1bからなる外殻体1の前半部における上周部を外筒体1aの後半部から切り離して到達立坑C内から地上側に回収、撤去する。なお、到達立坑Cが存在しなく、所定長までトンネルを掘削したのち、掘削機本体Aを発進立坑側に回収する場合には、外殻体1全体を管路Pを構成している管体pと共にトンネルの覆工体として残置させておく。この場合には、外殻体1の外筒体1aは前後に分断しておく必要はない。
【0032】
さらに、外殻体1の外筒部後半部内面上の上記空間部9内に配設されている方向制御ジャッキ10を取り外して撤去すると共に、外殻体1に対する掘削機本体Aの切り離し作業を行う。この作業は、まず、掘削機本体Aの内殻体2における後端連結環部2aと連結している推力伝達部材8を撤去する。この作業は、推力伝達部材8の伝達部8bと上記連結環部2aとの連結、及び該伝達部8bと推力伝達部材8の基台部8aとの連結を解いて伝達部8bを撤去したのち、基台部8aを溶断等によって外殻体1における外筒部1aの内周面から切り離して撤去する。この推力伝達部材8の撤去によって掘削機本体Aの上記連結環部2aの後方側に上記空間部9の前端側に連通した空間部9aが形成されるので、この空間部9aを利用して該連結環部2aの後端面に後部ガイドローラ6bの装着作業を行うと共に上記空間部9内の上下部における外筒部1aの後半部内周面に接してガイド台板24a 、24b を敷設、固定する。
【0033】
これらの上下ガイド台板24a 、24b は長さが上記空間部9の長さに等しく且つ外殻体1の周方向に円弧状に湾曲した一定幅を有する矩形状板からなり、外筒部1aの後半上下部における内周面に接して敷設した場合、その内周面が管路Pにおける最前端の管体pの上下部内周面に面一状に連続する厚みに形成されている。また、下側のガイド台板24b には、その上面(内周面)の幅方向及び長さ方向の中間部に、外殻体1の前部内周面に支持されている掘削機本体Aの内殻体2の外周面とガイド台板24b の内周面との間隔幅に等しい厚みを有する小幅のスペーサ部材25が設置されている。なお、このスペーサ部材25もその上下面を幅方向に円弧状に湾曲した湾曲面に形成されている。
【0034】
一方、上記後部ガイドローラ6bは軸受け26の先端に回転自在に軸支されてあり、この軸受け26の前端面を上記連結環部2aの後端面にボルト等によって固着することより、取付けられる。この際、ガイドローラ6bがガイド台板24b 上から管路P上を転動可能な高さ位置に配設されるように装着する。ガイドローラ6a、6bは、それぞれ2個宛装着され、下側のガイドローラ6b、6bの装着位置は、下側ガイド台板24b の両側部上を上記スペーサ部材25を挟むようにして転動し得る位置であり、上側のガイドローラ6b、6bはこの下側ガイドローラ6b、6b間と周方向に同一間隔を存した位置であって、上側ガイド台板24a の両側部上を転動可能な位置である。なお、掘削機本体Aを支持するのは、下側の一対のガイドローラ6b、6bであるので、上側のガイドローラ6b、6bやそのガイド台板24a は必ずしも設けておく必要はない。
【0035】
こうして、掘削機本体Aの内殻体2の後端部に後部ガイドローラ6b、6bを装着したのち、掘削機本体Aに牽引用ロープ(図示せず)を連結して後方に牽引し、掘削機本体Aの後端部を支持しているこれらの後部ガイドローラ6b、6bを図4に示すようにガイド台板24b の両側部上を転動させて図5に示すように管路Pの前端部上にまで移動させ、カッタヘッド4(縮径した小径カッタヘッド部4a)が推力伝達部材8の撤去後の上記空間部9a上に達した時に一旦停止させる。
【0036】
この時、掘削機本体Aの内殻体2の前端部がこの内殻体2を受止している外殻体1の前半部内周面から後方に離脱しているので、重量の大なるカッタヘッド部4aの荷重によって掘削機本体Aが上記後部ガイドローラ6b、6bを支点として下方に傾倒しようとするが、掘削機本体Aを後退させて後部ガイドローラ6b、6bをスペーサ部材25の両側方から後方に通過させると共に、削機本体Aの内殻体2の前端部が外殻体1上から後方に離脱した後は、このスペーサ部材25の上面に掘削機本体Aの内殻体2の下周面が摺動しながら受止された状態となり、カッタヘッド部4aが空間部9a上に達しても、掘削機本体Aの内殻体2の前後部はスペーサ部材25と後部ガイドローラ6b、6bによって安定的に支持され、カッタヘッド部4aの重量によっても傾倒する虞れはない。
【0037】
このカッタヘッド部4aが上記空間部9a上に達すると、その位置で該空間部9aを利用してカッタヘッド部4aの円形リング体4cの上周部と下周部との外周面に周方向に上記後部ガイドローラ6b、6bと同一間隔を存してそれぞれ一対の前部ガイドローラ6a、6aを装着する。この装着は、上述したように、ローラの軸受け7aの内端に固着した台座板7bを円形リング体4cの外周面の所定位置に当てがうと共にこの台座板7bと対向させて円形リング体4cの内周面に連結板片7cを当てがった状態にしてこれらの台座板7bと連結板片7cの両側端部間をボルト・ナット7dにより固着することによって行われる。
【0038】
こうして、前部ガイドローラ6a、6aを装着したのち、掘削機本体Aを後方に牽引すると、掘削機本体Aを支持している前後ガイドローラ6a、6bが図7に示すように管路P上を転動しながら発進立坑側に向かって後退し、発進立坑内を通じて回収、撤去される。なお、この掘削機本体Aは次のトンネル施工時に、その前後ガイドローラ6a、6bを取り外したのち、外殻体1内に組み込んで再び使用される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】トンネル掘削機の縦断側面図。
【図2】カッタヘッドの正面図。
【図3】到達立坑に到達した後のトンネル掘削機の縦断側面図。
【図4】掘削機本体の後退開始途中の状態を示す縦断側面図。
【図5】掘削機本体を所定長、後退させた位置で停止させた状態の縦断側面図。
【図6】後部ガイドローラの装着状態を示す正面図。
【図7】掘削機本体を回収している状態の縦断側面図。
【符号の説明】
【0040】
P 管路
A 掘削機本体
1 外殻体
2 内殻体
4 カッタヘッド
6a、6b 前後ガイドローラ
8 推力伝達部材
9、9a 空間部
10 方向制御ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを掘削しながら該トンネル内に管路を形成していくと共に所定長のトンネルの掘削後、上記管路内を通じて後方に回収されるトンネル掘削機であって、管路の前方側に配設されてその外径が管路の外径と略同形に形成される外殻体と、この外殻体内に配設された掘削機本体と、掘削土砂の排出手段とを備え、上記掘削機本体は、上記管路よりも小径に形成され且つ上記外筒体内に後方に向かって引き出し可能に連結、支持されている内殻体と、この内殻体に一体に設けている隔壁に回転自在に支持されて上記外殻体の前方地盤を掘削し、回収時には外径を管路の内径よりも小径に縮小可能にしたカッタヘッドと、隔壁の後面に装着されているカッタヘッドの駆動部とを備えてなり、この掘削機本体の回収時に、縮径したカッタヘッドの外周部と内殻体とに管路上を転動するガイドローラを装着するように構成したことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
内殻体は、その長さが外殻体の前部の長さに略等しい短尺筒形状に形成されてあり、その外周面を外殻体の前部内周面に後方に向かって引き出し可能に内嵌させ、後端を外殻体の長さ方向の中央部内周面に取り外し可能に固着した推力伝達部材に受止させていると共にその後端部にガイドローラを装着可能に構成していることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
トンネル内に形成される管路の前端に外殻体を配設すると共にこの外殻体内に掘削機本体の内殻体を引き出し可能に連結、支持させ、この掘削機本体を外殻体と一体的に推進させながら該掘削機本体内の隔壁に回転自在に支持された縮径可能なカッタヘッドによって外殻体の前方地盤を掘削することによりトンネルを掘進すると共に掘削されたトンネル内に管路を形成して行き、所定長のトンネルの掘削終了後、外殻体に対する掘削機本体の内殻体の連結を解くと共に内殻体の後端部に上記管路上を転動可能な後部ガイドローラを装着し、さらに、上記カッタヘッドの径を縮小させてその縮小したカッタヘッドの外周端に上記管路上を転動可能な前部ガイドローラを装着し、しかるのち、これらの前後ガイドローラにより掘削機本体を支持させながら管路内を通じて該掘削機本体を後方に回収することを特徴とするトンネル掘削方法。
【請求項4】
外殻体の外径を管路の外径に略等しく且つ内径を少なくともその前部が管路の内径よりも小径に形成されていて、この前部内に掘削機本体の内殻体を後方に向かって引き出し可能に支持させていると共に、該掘削機本体の内殻体の後端を外殻体の長さ方向の中央部内周面に取り外し可能に固着した推力伝達部材に受止された状態で、管路側からの推進力を外殻体からこの推力伝達部材を介して掘削機本体に伝達しながら掘進し、所定長のトンネルの掘削終了後、上記推進伝達部材を取り外すことによって外殻体の中央部内周面に空間部を設け、この空間部を利用して上記内殻体の後端に上記管路上を転動可能な取付け位置となるように後部ガイドローラを装着したのち、掘削機本体を後退させてこの後部ガイドローラを管路の前端部上に位置させると共に縮径したカッタヘッドを上記凹所上に位置させ、この位置で該カッタヘッドの外周端に前部ガイドローラを装着したのち、これらの前後ガイドローラを管路上で転動させながら掘削機本体を回収することを特徴とする請求項3に記載のトンネル掘削方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−70871(P2007−70871A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258659(P2005−258659)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年7月5日 有限会社日本プロジェクト・リサーチ発行の「第29回『最新の推進工法施工技術』講習会テキスト“新しい領域を切り開く”推進工法最新技術」に発表
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】