説明

トンネル掘進工事用探査機

【課題】シールド機や推進機によるトンネルの掘進工事は、効率の良さから近年多く行われているが、掘進経路上に予期せぬ障害物が出現した場合には、障害物の大きさや性質などその実態を調査しなければならず、その際に障害物の鮮明な画像を得ることは容易ではなかった。
【構成】先端が隔壁によって閉塞されている細長い円筒状をなした本体の隔壁に高圧水噴射ノズル、地盤改良用薬液吐出口、泥水吸引口、カメラ用透明窓をそれぞれ設け、本体内に配設されている高圧水供給管、地盤改良用薬液供給管、泥水吸引管にそれぞれ接続すると共に、カメラ用透明窓を通して本体内のTVカメラで外部を撮影出来る様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトンネル掘進工事用探査機、詳しくは、シールド機や推進工法用推進機を用いたトンネル掘進工事の際などに、地中の状況を画像によって視覚的に確認出来るトンネル掘進工事用探査機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド機や推進工法用推進機などのトンネル掘進用機械を用いたトンネルの掘進工事は、作業能率の良さから近年大いに実施されている。なお、推進工法とは、先端に刃口部を有する管状をした推進機を地中において推進させ、これに管を次々とつないで地下埋設管を地中に敷設して行く工法であり、道路や鉄道の下を横断する比較的小径のトンネル構築の際などに多く用いられている。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地中には埋設物などの未知の障害物が存在していることがあり、シールド機や推進機などによるトンネル掘進作業中に、掘進予定経路上に未知の障害物が立ちはだかった場合には、掘進作業を一旦中止し、何らかの手段によって障害物の大きさ、材質、種類等その実態を調査し、その調査結果に基づいて、その後の掘進作業の進め方を決め直すことが行われている。
【0004】
トンネル掘進工事を実施する際には、トンネル敷設予定経路に地下埋設物がないか、事前に十分調査を行うのが普通であるが、事前調査には自ずと限界があり、掘進工事中に未知の障害物に遭遇することも多く、その場合には、上述の通り、調査の為に一旦掘進工事を中断しなければならず、工事の円滑な進捗に重大な影響を与えていた。そして、この障害物の調査は、地表から障害物に向かって縦坑を掘り進めて障害物を直接目で確かめたり、その一部をサンプルとして採取したり、障害物に向かって電磁波を照射することなどによって行われているが、前者の場合には、その実施に多大な労力及び資材を必要とすると共に、地下トンネルや埋設物が錯綜混在している市街地などでは実施不可能な場合もあった。
【0005】
一方、後者の場合には、シールド機や推進機などの先端に発振器を位置させ、これから障害物に向かって電磁波を発射する様にすれば、比較的スムーズに調査を実施出来、市街地などでも調査可能であるという長所があるが、精密高価な電子機器を用意する必要があり、データの解析にも経験と熟練が必要で、現在の技術レベルでは障害物の鮮明な画像を得ることも出来ない為、前者に比べてコスト的、精度的に問題があると言わざるを得なかった。
【0006】
本発明者は、シールド機や推進機を用いたトンネル掘進工事の際の障害物の調査についての上記問題点を解決すべく研究を行った結果、従来の電磁波による調査とほぼ同じ程度の手軽さで障害物の鮮明な画像を得ることが出来る便利なトンネル掘進工事用探査機を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先端が隔壁2によって閉塞されている細長い円筒状をなした本体1の前記隔壁2に高圧水噴射ノズル4、地盤改良用薬液吐出口5、泥水吸引口6、カメラ用透明窓7をそれぞれ設け、本体1内に配設されている高圧水供給管8、地盤改良用薬液供給管9、泥水吸引管10にそれぞれ接続すると共に、カメラ用透明窓7を通して本体1内のTVカメラ20で外部を撮影出来る様にすることにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
このトンネル掘進工事用探査機はシールド機や推進機の先端刃口部13に形成されている汎用の機器取付用バルブ17に挿入可能な細長い外形をなしており、トンネルの掘進工事の途中で未知の障害物12に遭遇したときは、これをシールド機や推進機の先端刃口部13に装着し、これを操作すれば、障害物12の鮮明な画像を簡単に得ることが出来る。又、それ自体コンパクトな機器であり、各種トンネルや埋設物が錯綜混在している市街地などでも容易に障害物12に接近させることが可能で、状況によってはシールド機や推進機に装着せず、地表面18から直接障害物12に向けて接近させても良く、応用範囲が広く、極めて高い実用的価値を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
シールド機や推進機の先端刃口部13に形成されている汎用の機器取付用バルブ17に挿入出来る細長い筒状をなした本体1の前面に高水圧噴射ノズル4、地盤改良用薬液吐出口5、泥水吸引口6、カメラ用透明窓7を設け、それ自体で水力掘進、地盤改良、掘削土砂の吸引を行う様になっていると共に、カメラ用透明窓7を通して本体内のTVカメラ20で障害物の画像を得られる様になっている点に最大の特徴が存在する。
【実施例1】
【0010】
図1はこの発明に係るトンネル掘進工事用探査機の一実施例の斜視図である。図中1はこのトンネル掘進工事用探査機の本体であり、堅牢な金属を素材とし、シールド機や推進機の先端刃口部13に形成されている汎用の機器取付用バルブ17に挿入可能な細長い円筒状をなしており、その前方側先端は堅牢な隔壁2によって閉塞されている。そして、この隔壁2の外縁には複数の掘進用硬質チップ3が間隔をあけて固着されており、本体1に回転運動を付与しながら前方に押圧することにより、地中において掘進することが出来る様になっている。又、この本体1は同径のエクステンションチューブ19をその後端に継ぎ足すことにより、その全長を任意に延長出来る様になっている。
【0011】
一方、この隔壁2には、その表裏を貫いて高圧水噴射ノズル4、地盤改良用薬液吐出口5、泥水吸引口6、カメラ用透明窓7がそれぞれ取付けられている。なお、この実施例においては、高圧水噴射ノズル4は等間隔で3個設けられているが、必ずしも3個に限る必要はなく、必要に応じてほかの個数であっても良い。同様に、この実施例においては、瞬結及び中結タイプの地盤改良用薬液を併用する複相式注入法を用いているので、地盤改良用薬液吐出口5は2個設けられているが、用いるべき地盤改良用薬液に応じて地盤改良用薬液吐出口5の数が決定されることはもちろんである。なお、前述のカメラ用透明窓7は常時取付けるのではなく、通常はゴム製などの盲蓋で閉塞しておき、必要に応じてこの盲蓋に代えて取付ける様にしても良い。ちなみに、この実施例において、本体1の外径は48.6mm、内径は38.6mm、メガネ用透明窓7の径は18.7mm、泥水吸引口6の径は13.00mmである。
【0012】
一方、本体1の内側空間内には、前記高圧水噴射ノズル4、地盤改良用薬液吐出口5、泥水吸引口6にそれぞれ接続された高圧水供給管8、地盤改良用薬液供給管9、泥水吸引管10が配設されており、それぞれ図示せざる高圧水供給装置、地盤改良用薬液供給装置から高圧水及び地盤改良用薬液の供給及び泥水吸引装置による泥水の吸引が行われる様になっている。
【0013】
又、カメラ用透明窓7の内側にはCCDカメラなどの小型のTVカメラ20が前記カメラ用透明窓7を通して前方側を撮影出来る様に装着されている。なお、このTVカメラ20は必ずしも常時装着しておく必要は必ずしもなく、必要なときに装着する様にしても良い。又、この本体1は図示せざる回転手段によって回転運動を行うと共に前後進する様になっている。
【0014】
次に、この実施例の使用方法について説明する。シールド機や推進機によるトンネル掘進作業中に掘進経路上に未知の障害物12が出現し、掘進作業が滞ったときは、掘進作業を一時中止し、作業中のシールド機あるいは推進機を一旦後退させる。この状態で、図2に示す様に、このシールド機や推進機の先端刃口部13に設けられている汎用の機器取付用バルブ17に本体1を挿入し、図示せざる駆動手段によって、本体1を回転させつつ、高圧水噴射ノズル4から高圧水を前方に向かって噴射させながら障害物12方向へ向かって本体1を前進させ、障害物12付近の地山掘削を行う。なお、この際、本体1の後端に適宜エクステンションチューブ19を継ぎ足して本体1先端が障害物12近傍に届く様にする。そして、この高圧水による地山掘削の後、地山掘削によって生じた土砂を含んだ泥水を泥水吸引口6から吸引し、しかる後に図3に示す様に、地盤改良用薬液吐出口5から地盤改良用薬液を吐出させ、障害物12近傍に地盤改良された区域21を形成し、再度高圧水噴射ノズル4から高圧水を噴射して、カメラ用透明窓7前面の土砂を切削し、泥水吸引口6からその際に生じた土砂を含んだ泥水を吸引排出して障害物12近傍に空間15を形成して、障害物12の一部をこの空間15内に露出させ、この状態でカメラ用透明窓7からTVカメラ20によって障害物12を撮影して、障害物12の画像を得る。そして、この画像を解析することにより障害物12の大きさや種類等を判別し、その処理方法などの検討資料として用いる。
【0015】
なお、一般的に、多くのシールド機や推進機の先端刃口部13には汎用の機器取付用バルブ17が設けられているので、あらためて機器取付用バルブ17を設ける必要はないが、もし、この機器取付用バルブ17がない場合には、掘進工事に先立って、シールド機や推進機の先端刃口部13に本体1装着用のバルブを形成しておけば良い。
【0016】
次に、図5及び図6はこのトンネル掘進工事用探査機の他の用法を示したものであり、この用法においては、地表面18から障害物12に向けて本体1を垂直に位置させ、高圧水による水力掘削と泥水吸引を行うと共に、地盤改良用薬液の注入による地盤改良を行った後、TVカメラ前面の土砂を排除し、空間15を形成し、障害物12のTVカメラ20による撮影を行う。
【0017】
以上、述べた通り、この発明に係るトンネル掘進工事用探査機はシールド機や推進機の先端刃口部12に形成されている機器取付用バルブ17に挿入可能な細長い外形をなしており、トンネルの掘進工事の途中で未知の障害物12に遭遇したときは、これをシールド機や推進機の先端刃口部13に装着し、これを操作すれば、障害物12の鮮明な画像を簡単に得ることが出来る。又、それ自体、細長いコンパクトな機器であり、各種トンネルや埋設物が錯綜混在している市街地などでも容易に障害物に接近させることが可能で、状況によってはシールド機に装着せず、地表面18から直接障害物12に向けて接近させることも出来、応用範囲が広く、極めて高い実用的価値を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
大小を問わず、各種トンネル掘進工事の際に、大いに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るトンネル掘進工事用探査機の一実施例の斜視図。
【図2】本体1をシールド機あるいは推進機の先端刃口部13の機器取付用バルブ17に挿入した状態の側面図。
【図3】同じく、本体1を障害物12近傍まで掘進させた状態の側面図。
【図4】同じく、障害物12近傍を地盤改良し、空間15を形成し、撮影可能状態にした側面図。
【図5】本体1を地表面18から直接障害物12近傍まで掘進させた状態の側面図。
【図6】同じく、障害物12近傍を地盤改良し、空間15を形成し、撮影可能状態にした側面図。
【符号の説明】
【0020】
1 本体
2 隔壁
3 掘進用硬質チップ
4 高圧水噴射ノズル
5 地盤改良用薬液吐出口
6 泥水吸引口
7 カメラ用透明窓
8 高圧水供給管
9 地盤改良用薬液供給管
10 泥水吸引管
12 障害物
13 先端刃口部
15 空間
17 機器取付用バルブ
18 地表面
19 エクステンションチューブ
20 TVカメラ
21 地盤改良された区域




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が隔壁によって閉塞されている細長い円筒状をなした本体の前記隔壁に高圧水噴射ノズル、地盤改良用薬液吐出口、泥水吸引口、カメラ用透明窓がそれぞれ設けられており、本体内に配設されている高圧水供給管、地盤改良用薬液供給管、泥水吸引管にそれぞれ接続されていると共に、カメラ用透明窓を通して本体内のTVカメラで外部を撮影出来る様になっていることを特徴とするトンネル掘進工事用探査機。
【請求項2】
本体の外径が、シールド機や推進機の先端刃口部に形成されている汎用の機器取付用バルブに挿入可能な寸法であることを特徴とする請求項1記載のトンネル掘進工事用探査機。
【請求項3】
隔壁の外縁に複数の掘進用硬質チップが固定されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル掘進工事用探査機。
【請求項4】
本体が、同径のエクステンションチューブを継ぎ足すことにより延長自在になっていることを特徴とする請求項1記載のトンネル掘進工事用探査機。
【請求項5】
カメラ用透明窓が取りはずし自在で、通常はゴム製の盲蓋に代えられていることを特徴とする請求項1記載のトンネル掘進工事用探査機。








【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−50754(P2008−50754A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224997(P2006−224997)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(506263387)特定非営利活動法人マイクロサンプリング調査会 (2)
【Fターム(参考)】