説明

トンネル補強構造

【課題】トンネルのコンクリート製内壁部に対する、トンネル上部の地盤やその上の構造物からの重圧と、トンネル側面からの土圧を低減することができるとともに、トンネル内の振動の外部への伝播を抑制することができ、さらに、透水・排水に優れた効果を奏するトンネル補強構造を提供する。
【解決手段】鉄道または道路用のトンネルを補強するトンネル補強構造において、該トンネル1のコンクリート製内壁部2と地盤3との間に破砕ゴム片11の層10が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道または道路用のトンネル補強構造に関し、詳しくは、トンネルのコンクリート製内壁部に対する、トンネル上部の地盤やその上の構造物からの重圧と、トンネル側面からの土圧を低減することができるとともに、トンネル内の振動の外部への伝播を抑制することができ、さらに、透水・排水に優れた効果を奏するトンネル補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に構造物等を有することを想定した場合の従来のトンネル構築工法にあっては、トンネル上部の地盤および直上の構造物を支えるため、またトンネル側面からの土圧を支えるため、コンクリート製内壁部を厚く強固にする必要があった。また、コンクリート製内壁部は地盤に直接接触するため、トンネル内の振動がトンネル上部の地盤および直上の構造物へ伝播するのを抑制するためにもそのようにする必要があった。
【0003】
その一方で、トンネル内の通過車両による騒音や振動が地上に伝播するのを防止するための種々の取り組みが報告されている。そのような取り組みの中で、道路トンネル内のコンクリート舗装版を囲むように、コンクリート舗装版とその下方の路盤との間、並びにコンクリート舗装とその側方の構造物との間にそれぞれ緩衝材を介在させた道路トンネルの防振構造が報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−82605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、これまでの従来のトンネル構築工法にあっては、コンクリート製内壁部を所定以上に厚く強固にする必要があったが、また、雨水等による浸透水の排水が容易ではないため、排水によるコンクリートの劣化が懸念された。
【0005】
また、従来提案された特許文献1記載の道路トンネルの防振構造等においては、トンネル内の振動等が地上まで伝わるのを抑制でき、また、騒音もある程度低減することはできたが、地上の構造物等からトンネルのコンクリート製内壁部を補強するものではなかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、トンネルのコンクリート製内壁部に対する、トンネル上部の地盤やその上の構造物からの重圧と、トンネル側面からの土圧を低減することができるとともに、トンネル内の振動の外部への伝播を抑制することができ、さらに、透水・排水に優れた効果を奏するトンネル補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
近年、廃タイヤ破砕片(シュレッズ、タイヤチップ、カット品)を、その優れた機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等の特性を活かし、盛土、道路の路床等の基礎部分に軽量土、透水性材料、振動低減材料として用いることが米国を中心に普及しつつあり、廃タイヤの再利用方法の2割近くを占めるまでに急成長している。本発明者は、かかる地盤材料の軽量、高透水性等の優れた機能に着目して上記課題を解決するために鋭意検討した結果、破砕ゴム片をトンネルの補強構造に採用することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のトンネル補強構造は、鉄道または道路用のトンネルを補強するトンネル補強構造において、該トンネルのコンクリート製内壁部と地盤との間に破砕ゴム片の層が配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のトンネル補強構造においては、前記破砕ゴム片が廃タイヤの破砕片であることが好ましく、また前記破砕ゴム片の層の厚みが300〜2000mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトンネル補強構造によれば、トンネルのコンクリート製内壁部に対する、トンネル上部の地盤やその上の構造物からの重圧と、トンネル側面からの土圧を低減することができる。また、トンネル内で発生する車両等による振動の外部への伝播を抑制することもできる。さらに、破砕ゴム片の層により透水・排水に優れた効果を奏する。このため、従来に比べて強度の低いコンクリート製内壁部の設計が可能となる。さらにまた、廃タイヤの破砕タイヤゴム片を用いることにより環境に対しても配慮がなされるとともに、製造コストの軽減も実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適実施形態について説明する。
図1に、本発明のトンネル補強構造の模式的正面図を示す。図示するトンネル補強構造は、地上に構造物を有するトンネル1において、該トンネル1のコンクリート製内壁部2と地盤3との間に、廃タイヤの破砕ゴム片11からなる破砕ゴム片層10が形成されている。
【0012】
トンネル1を構成するコンクリート製内壁部2は、断面逆U字形状を呈しているが、これに限定されるものではなく、逆V字形状、アーチ型等であってもよい。内壁部2と地盤3との間に破砕ゴム片層10を配置させることにより、コンクリート製内壁部2に対するトンネル上部の地盤やその上の構造物からの重圧と、トンネル側面からの土圧とを低減するとともに、トンネル内の振動の外部への伝播を抑制する。また、破砕ゴム片層10は透水・排水に優れた効果を奏することから、コンクリート製内壁部2に対する劣化防止効果も有する。その結果、従来に比べて厚さの薄いコンクリート製内壁部の設計が可能となる。
【0013】
破砕ゴム片層10を構成する破砕ゴム片11は、廃タイヤをカットもしくは破砕して得られる破砕片で、例えば、10mm〜300mm、好ましくは20〜100mmのサイズのランダム破砕品の使用が好適である。また、ギロチンカッターにより1/16、1/32等に裁断した俗称カット品と呼ばれる扇形の均一形状破砕品も大型サイズチップとして使用することができる。
【0014】
材料的にはスチールコード入りのもの、或いはゴムのみよりなるゴムチップいずれも使用が可能である。なお、タイヤ破砕片のサイズが10mmより小さいと、破砕ゴム片11間の空隙が減少し透水性が低下し、また破砕工程が長くなり経済性に欠ける。一方、300mmを超えると施工性が低下し、また施工後の圧縮沈下が懸念される。
【0015】
破砕ゴム片層10の厚みは、トンネルの規模や周囲の地盤状況により適宜選定し得るが、概ね300〜2000mmであることが好ましい。2000mmを超えると、施工後の圧縮沈下等の問題が懸念され、一方、300mm未満であると、土圧低減等の本発明の所期の効果が十分に得られなくなる。
【0016】
図示する本発明のトンネル補強構造においては、破砕ゴム片層10はコンクリート製内壁部2の上面4および両側面5に同程度の厚さで配置されているが、例えば、コンクリート製内壁部2の上面4に厚く配置することにより、コンクリート製内壁部2に対するトンネル上部からの重量をより効果的に軽減することができる。また、破砕ゴム片層10をコンクリート製内壁部2の側面5に厚く配置することにより、コンクリート製内壁部2に対するトンネル側面5からの土圧をより効果的に低減できる。
【0017】
上述のようにして、コンクリート製内壁部2の外周を破砕ゴム片11で覆うことで、コンクリート製内壁部2の厚さ、ひいては強度を従来よりも低減させても従来と同程度の強度を有するトンネル1の設計が可能となり、また、車両等による振動Bの構造物Aへの伝播を抑制でき、さらに、破砕ゴム片11の透水・排水効果により、コンクリートの水による劣化の遅延も期待できる。さらにまた、破砕ゴム片11として廃タイヤを用いることにより環境への配慮および製造コストの軽減も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトンネル補強構造の正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 トンネル
2 コンクリート製内壁部
3 地盤
4 上面
5 側面
10 破砕ゴム片層
11 破砕ゴム片
A 構造物
B 振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道または道路用のトンネルを補強するトンネル補強構造において、該トンネルのコンクリート製内壁部と地盤との間に破砕ゴム片の層が配置されていることを特徴とするトンネル補強構造。
【請求項2】
前記破砕ゴム片が廃タイヤの破砕片である請求項1記載のトンネル補強構造。
【請求項3】
前記破砕ゴム片の層の厚みが300〜2000mmである請求項1または2記載のトンネル補強構造。

【図1】
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【公開番号】特開2009−97246(P2009−97246A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270486(P2007−270486)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】