説明

ドアロック装置

【課題】アンロック時オープンレバーがポールの軸部と確実に係合し、ポールを回動させてラッチを確実に外すことができるドアロック装置を提供すること。
【解決手段】オープンレバー5がポール4の係合部41を囲むように係合する係合手段51をもつようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを車両ボディに閉鎖状態で保持するドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、ドアを閉めることでラッチとポールを噛み合わせた状態とした後、ロッキングレバーを回動操作してポールのスライダを摺動させオープンレバーがポールに対して相対回転(オープンレバーを回動操作してもポールと係合できない所謂空振り回転)状態とするドアロック装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平02−96077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のドアロック装置では、ロックとアンロックを成立させるためにアウターレバーの案内支持部にポールと連動するリフトレバーと係合するレリーズブッシュを有するスライダが摺動可能に保持されている。そして、ロック時には、ロッキングレバーの操作でレリーズブッシュがリフトレバーと係合する位置から外され、アウターレバーを操作してもリフトレバーがレリーズブッシュを空振りしてドアを開状態とすることがなく乗員の安全が確保される。
【0004】
アンロック時は、ロッキングレバーの操作でレリーズブッシュがリフトレバーと係合する位置に戻される。その状態でアウターレバーを回動操作すると、リフトレバーがレリーズブッシュと係合してその操作力でポールが回動してラッチが外れて開状態になる。
【0005】
オープンレバー(アウターレバー或いはアウターレバーと連動するインナーレバー)を操作してドアを開状態にするには、オープンレバーとレリーズブッシュが確実に係合して操作力がポールに伝達される必要がある。しかし、上記ドアロック装置では、オープンレバーとレリーズブッシュの係合が機械的な形状寸法精度及び位置決め精度に依存していたために、形状のばらつきや位置決めのばらつきで当たり面が傾いたり、入力のポイントがずれたりしてレリーズブッシュがオープンレバーから逃げてしまい操作力が伝達しなくなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、アンロック時オープンレバーがポールのレリーズブッシュと確実に係合し、ポールを回動させてラッチを確実に外すことができるドアロック装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のドアロック装置は、ドア側に固定されるベースと、前記ベースに第1ピンにより回動可能に枢支され車体側に固定されたストライカと係合して前記ドアを閉状態に保持するラッチと、前記ベースに第2ピンにより回動可能に枢支され前記ドアの閉状態における前記ラッチの閉鎖位置において前記ラッチと係合して前記ラッチの回動を規制するポールと、前記ベースに前記第2ピンにより回動可能に枢支され前記ポールを前記ラッチと係脱させるべく回転操作可能なオープンレバーと、を有し、前記ポールは前記第2ピンと交差する方向に延び端部側に前記オープンレバーと係合する係合部をもつアーム部を備え、前記オープンレバーは前記ポールの係合部と該係合部を囲むように係合する係合手段をもつ、ことを特徴としている。
【0008】
オープンレバーがポールの係合部と該係合部を囲むように係合する係合手段をもつので、オープンレバーがポールと確実に係合してオープンレバーの操作力でポールを回動させ確実にラッチを外すことができる。
【0009】
また、前記本発明のドアロック装置において、前記ポールの前記係合部は、円柱状係合部であり、前記オープンレバーの前記係合手段は、前記円柱状係合部の外周面と包接する凹面をもつとよい。
【0010】
こうすることで、オープンレバーがポールと一層確実に係合してオープンレバーの操作力でポールを回動させ一層確実にラッチを外すことができる。
【0011】
また、前記係合部は前記アーム部に摺動可能に保持され、前記オープンレバーの前記係合手段は、前記係合部の前記第2ピン側への摺動変位を抑制する抑制部材をもつとよい。
【0012】
こうすることで、ストライカがラッチと噛み合わないドア開放中に係合部が第2ピン側に摺動変位することを抑制することができる。その結果、ロッキングレバーの回動を阻止し、ロックを作動させないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
オープンレバーがポールの係合部と該係合部を囲むように係合する係合手段をもつので、オープンレバーがポールと確実に係合してオープンレバーの操作力がポールに伝達され、確実にラッチを外すことができる。その結果、ドア開放不良を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最良の形態のドアロック装置を図1〜図7を用いて説明する。図1はドアが閉状態(ストライカとラッチが噛み合った状態)でのドアロック装置の平面図、図2はドアが閉状態でのドアロック装置の正面側斜視図、図3は裏面側斜視図、図4はベースとサブベース間のハウジングを非表示にした正面側斜視図、図5はドアロック装置の分解斜視図、図6は図4におけるG−G線断面図、図7はドアが開状態(ストライカとラッチが噛み合わない状態)でのドアロック装置の正面側斜視図である。
【0015】
ドアロック装置1は、ドア側に固定されるベース2と、ベース2に第1ピン9aにより回動可能に枢支され車体側に固定されたストライカと係合して前記ドアを閉状態に保持するラッチ3と、ベース2に第2ピン9bにより回動可能に枢支されドアの閉状態におけるラッチ3の閉鎖位置においてラッチ3と係合してラッチ3の回動を規制するポール4と、ベース2に第2ピン9bにより回動可能に枢支されポール4をラッチ3と係脱させるべく回転操作可能なオープンレバー5と、を有し、ポール4は第2ピン9bと交差する方向に延び端部側にオープンレバー5と係合する係合部41をもつアーム部42を備え、オープンレバー5はポール4の係合部41と係合部41を囲むように係合する係合手段51をもつ。
【0016】
ベース2にはドアの閉操作により車体に固定されたストライカが嵌挿可能な嵌挿溝21が形成されている(図5参照。)。ベース2の上方には第1ピン9aと第2ピン9bとでL字上のサブベース6が支持されている(図4、5参照。)。 ベース2とサブベース6との間にはラッチ3が第1ピン9aにより回動可能に枢支されている(図4参照。)。このラッチ3には、ストライカの嵌挿溝21への嵌挿によりストライカと係合可能な係合溝31及びストライカと係合溝31との係合状態つまりドアの閉状態を設定する爪部32とがそれぞれ形成されている。第1ピン9a回りには一端がラッチ3に係止され、他端がハウジング10に係止されたラッチスプリング(不図示)が配設されており、ラッチ3を矢印A(図4参照。)方向に常時付勢している。
【0017】
ベース2とサブベース6との間にはポール4が第2ピン9bにより回動可能に枢支されている(図4、5参照。)。このポール4にはドアの閉状態においてラッチ3の爪部32と係合可能な爪部43が形成されており、この爪部43と爪部32との係合によりラッチスプリングの付勢力に抗してラッチ3の回動を規制している。
【0018】
第2ピン9bの回りには、一端がポール4に係止され他端がハウジング10に係止されたポールスプリング12が配設されており、ポール4を矢印B(図4参照。)方向つまり爪部32と爪部43との係合を保持する方向に常時付勢している。
【0019】
ポール4には、アーム部42が形成されている。このアーム部42の端部側にはオープンレバー5と係合する係合部41が摺動可能に保持されている。この係合部41は、スライダ412と軸部(円筒状係合部)411とを有している。
【0020】
サブベース6には、オープンレバー5が第2ピン9bにより回動可能に枢支されている。このオープンレバー5には、アーム部52が形成されている。このアーム部52の端部にはポール4の軸部411と係合する係合手段51(後に詳述する。)が形成されている。オープンレバー5の一端とハウジング10との間にはスプリング11が配設されており、オープンレバー5を矢印C(図1参照。)方向に常時付勢している。
【0021】
サブベース6の立壁61には、インサイドレバー8が回動可能に枢支されており、このインサイドレバー8は、オープンレバー5の他端と係合している。
【0022】
また、立壁61には、ロッキングレバー7が回動可能に枢支されている。ロッキングレバー7には、第2ピン9bを中心とした円弧形状の長穴71が形成されており、この長穴71には、ポール4の軸部411が係合している。
【0023】
次に、ポール4の係合部41と係合するオープンレバー5の係合手段51を、主に図3、4、6を参照しながら説明する。
【0024】
図3に示すように、オープンレバー5のアーム部52の端部が第2ピンの軸と直交する面内で主分岐部511と副分岐部512とに分かれて係合手段51を形成している。主分岐部511には、第2ピン9bの軸の回りの回転面に直交する、断面が略コの字状の当接面511aが形成されている。当接面511aは、第2ピン9bの中心Oを中心とする前記長穴71の中心線71a(当接面511aの第2ピン9b回りの回転軌道である。図6a参照。)の接線と直交する主当接面511bと、外側に開いた副当接面511cとを備えている。副分岐部512は、第2ピン9bの軸と平行な方向に折れ曲がり、軸部411と当接する当接面512aを形成している。
【0025】
次に、最良の形態のドアロック装置の動作を説明する。
【0026】
図1〜図4は、ストライカとラッチ3とが噛み合いロッキングレバー7がアンロック状態(ドア閉鎖で且つアンロック状態)にあり、ポール4の軸部411がオープンレバー5の回転軌道71a(図6a参照。)上にある。従って、図1〜図4は、ポール4とオープンレバー5とが一体回転可能且つストライカとラッチ3とが係合状態で爪部32と爪部43とが係合状態つまりドアが開操作によりドアを開状態にすることができる状態でのドアの閉状態を表している。この状態において、インサイドレバー8を矢印D(図2、4参照。)方向に回動操作すると、インサイドレバー8とオープンレバー5の他端との係合により、オープンレバー5は、スプリング11の付勢力に抗して矢印C’(図2参照。)方向に回動する。このオープンレバー5の回動により、オープンレバー5の係合手段511の当接面511aが図6a、bに示すように、ポール4の軸部411と係合して軸部411を矢印C’方向に、スプリング12の付勢力に抗して回動させる。これにより、ラッチ3の爪部32とポール4の爪部43との係合が解除され、ドアが開可能状態になり、ドアを開操作することにより、ラッチ3のスプリングの付勢力によりラッチ3が矢印A方向に回動すると共に、ストライカが係合溝31、嵌挿溝21より離脱してドアが開状態となる。
【0027】
ラッチ3がA方向に回動すると、それに連動してポール4がB方向(図4参照。)に回動して、図7に示すように軸部411が係合手段51の当接面512aに対向するようになる。この状態で、ロッキングレバー7をE方向に回動しようとしても軸部411が当接面512aに当接するので、ロッキングレバー7の回動操作が阻止される。
【0028】
また、図1〜図4の状態において、ロッキングレバー7を矢印E(図2、4参照。)方向に回動操作すると、ポール4の軸部411と長穴71との係合により、スライダ412が矢印F(図2、3参照。)方向に摺動する。これにより、軸部411がオープンレバー5の回動軌道71aから外れ、オープンレバー5を矢印C’方向に回動操作しても、ラッチ3の爪部32とポール4の爪部43との係合を解除できないロック状態となる。すなわち、この状態でインサイドレバー8を回動操作しても、オープンレバー5の回動がポール4には伝達されず、ドアを開操作してもドアは開状態とはならない。
【0029】
次に、ロック状態からアンロック状態に変更してオープンレバー5の回動により、オープンレバー5の係合手段511がポール4の軸部411と係合してポール4を回動させる動作を図6を参照して詳述する。
【0030】
ロッキングレバー7がアンロック状態(図1〜図4に示すドアロック装置)の場合、ポール4の軸部411がオープンレバー5の回転軌道71a(図6a参照。)上にある。この状態でのオープンレバー5の回動により、オープンレバー5の係合手段511の当接面511aが図6a、bに示すように、ポール4の軸部411と係合して軸部411を矢印C’方向に、スプリング12の付勢力に抗して回動させる。このとき、軸部411が回転軌道71a上に正確に位置しておれば、図6bに示すように、当接面511bが軸部411と当接してオープンレバー5の操作力がポール4に伝達される。関連部品(ポール4、オープンレバー5、ロッキングレバー7等)の寸法精度や組付けのばらつき等で軸部411が回転軌道71aから外れても、当接面511aが回転軌道71aの接線と直交する主当接面511bと、外側に開いた副当接面511cとを備えているので、軸部411の外周面と包接して確実に操作力をポール4に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るドアロック装置(ドア閉状態)の平面図である。
【図2】本発明に係るドアロック装置(ドア閉状態)の正面側斜視図である。
【図3】本発明に係るドアロック装置(ドア閉状態)の裏面側斜視図である。
【図4】図2においてハウジングを非表示にしたドアロック装置の正面側斜視図である。
【図5】本発明に係るドアロック装置の分解斜視図である。
【図6】図4におけるG−G線断面図である。
【図7】本発明に係るドアロック装置(ドア開状態)の正面側斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・・・・・・・ドアロック装置
2・・・・・・・・・ベース
3・・・・・・・・・ラッチ
4・・・・・・・・・ポール
41・・・・・・・係合部
411・・・・円柱状係合部(軸部)
42・・・・・・・アーム部
5・・・・・・・・・オープンレバー
51・・・・・・・係合手段
511a・・・ 当接面(凹面)
512a・・・ 抑制部材
52・・・・・・・アーム部
9a ・・・・・・・・第1ピン
9b・・・・・・・・ 第2ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア側に固定されるベースと、
前記ベースに第1ピンにより回動可能に枢支され車体側に固定されたストライカと係合して前記ドアを閉状態に保持するラッチと、
前記ベースに第2ピンにより回動可能に枢支され前記ドアの閉状態における前記ラッチの閉鎖位置において前記ラッチと係合して前記ラッチの回動を規制するポールと、
前記ベースに前記第2ピンにより回動可能に枢支され前記ポールを前記ラッチと係脱させるべく回転操作可能なオープンレバーと、を有し、
前記ポールは前記第2ピンと交差する方向に延び端部側に前記オープンレバーと係合する係合部をもつアーム部を備え、
前記オープンレバーは前記ポールの係合部と該係合部を囲むように係合する係合手段をもつ、ことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
前記ポールの前記係合部は、円柱状係合部であり、前記オープンレバーの前記係合手段は、前記円柱状係合部の外周面と包接する凹面をもつ請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記係合部は前記アーム部に摺動可能に保持され、前記係合手段は、前記係合部の前記第2ピン側への摺動を抑制する抑制部材を有する請求項1又は2に記載のドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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