説明

ドアロック装置

【課題】カバーを閉じても再度、開くことができると共に、搬送時のカバーの突出量を抑制でき、搬送効率を向上することができるドアロック装置を提供する。
【解決手段】ストライカを係脱可能なラッチ機構と、ラッチ機構のアンロック位置と、ロック位置とに切替可能なロック機構と有し、ロック機構を配設する第1ケース部材11と、第1ケース部材11を被覆する第2ケース部材31とからなるハウジングと、ハウジング内において、第1ケース部材11に設けられた連動レバー65,72と、連動レバー65,72の端部をハウジングの外側に露出させる第2ケース部材31に設けられた開口部32,33と、開口部32,33を開閉可能にハウジングに装着されたカバー101とを備えたドアロック装置において、カバー101が、ハウジングとカバー101に設けられた仮保持手段23,109により、ハウジングに対して傾倒した仮保持位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに装着されるドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、車体に固定された略U字形状をなすストライカに係脱可能に係止するドアロック装置が配設されている。このドアロック装置は、ハウジング内に、ストライカを係止するラッチ機構と、該ラッチ機構によるストライカの係止を解除するロック機構とを備えている。また、ハウジングにはロック機構を構成する連動レバーが配設されており、この連動レバーにケーブルまたはロッドにより連結されたインナーハンドルを操作することにより、ラッチ機構によるストライカの係止を解除していた。また、近年は盗難防止および防水性を確保するためにラッチ機構、ロック機構および電動アクチュエータなどを1つの閉鎖ハウジング内に収容保持するようにしたものがあるが、このような構造の場合、ケーブルなどを閉鎖ハウジング内の連動レバーに連結するために、閉鎖ハウジングに連動レバーを外部に露出させる開口部を設ける必要がある。ハウジングにロック機構およびラッチ機構を組み付け、ハウジングを車両組立工場など別の場所に搬送してから、開口部から露出する連動レバーにケーブルまたはロッドを接続し、開口部をカバーで閉鎖している。
【0003】
特許文献1には、ハウジング本体にカバー部を一体的に形成し、このカバー部によりハウジング本体に形成された開口部を開閉可能とするドアロック装置が記載されている。具体的には、カバー部が開口部を閉じた状態では、カバー部に設けられた弾性掛止フックとストッパ突起とが、ハウジング本来に設けられた弾性掛止片を狭持し、弾性掛止片を弾性掛止フックから外れ難くしている。また、開口部よりも内側にアウターケーブルが配設されているので、カバー部が開口部を開いた状態で、アウターケーブルを連動レバーに接続する必要がある。
【0004】
前記ドアロック装置では、一旦、カバー部が開口部を閉じると、開くのが難しいという問題があった。従って、ロック機構およびラッチ機構を組み付けた状態でハウジングを車両組立工場などに搬送する場合には、カバー部を開放した状態で搬送する必要があった。しかし、これでは、ハウジングからカバー部が突出しドアロック装置の外形が大きくなり、ハウジングを搬送する際の搬送効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−129813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、カバーを閉じても再度、開くことができると共に、搬送時のカバーの突出量を抑制でき、搬送効率を向上することができるドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のドアロック装置は、
ストライカを係脱可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除可能なアンロック位置と、前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除不可能なロック位置とに切替可能なロック機構と有し、
前記ロック機構を配設する第1ケース部材と、前記第1ケース部材を被覆する第2ケース部材とからなるハウジングと、
前記ハウジング内において、回動可能に支持された連動レバーと、
前記連動レバーの端部を前記ハウジングの外側に露出させる前記ハウジングに設けられた開口部と、
前記開口部を開閉可能に前記ハウジングに装着されたカバーとを備えたドアロック装置において、
前記カバーが、前記ハウジングとカバーに設けられた仮保持手段により、前記ハウジングに対して傾倒した仮保持位置に保持されたものである。
【0008】
上記構成により、カバーを備えたドアロック装置を搬送する際、カバーを仮保持位置に保持することでハウジングからのカバーの突出量を抑制することができる。従って、ドアロック装置の外形を小さくし、運搬時の搬送効率を高めることができる。
【0009】
前記カバーは前記仮保持位置において、前記開口部を被覆することが好ましい。
これにより、カバーを仮保持位置に保持している間、開口部から埃などの異物がハウジングの内部に侵入するのを防止することができる。
【0010】
前記カバーを、前記連動レバーに接続される操作伝達部材を組み付ける開放位置と、前記仮保持位置と、前記開口部を閉塞し前記ハウジングに固定される固定位置との間を回動可能に設けることが好ましい。
これにより、仮保持位置にあるカバーを開放位置まで回動するだけで、容易に連動レバーに操作伝達部材を接続することができる。また、開放位置にあるカバーを固定位置まで回動し、カバーをハウジングに対し閉塞して固定することができる。
【0011】
前記仮保持位置を、前記開放位置と前記固定位置との間に設けることが好ましい。
また、前記仮保持手段を、前記ハウジングとカバーの外周縁部に突出するように設けることが好ましい。
これにより、ハウジング本体にカバーを仮保持する部材を設ける必要がなく、ハウジングの設計の自由度を向上することができる。
【0012】
前記仮保持手段は、前記第1ケース部材に形成された係合突出部と、前記カバーに形成された係合凸部とからなり、
前記係合突出部は、外側に形成され前記係合凸部を仮保持位置に案内する第1傾斜面と、内側に形成され前記仮保持位置において前記係合凸部と係合する第2傾斜面および第3傾斜面からなる係合凹部とを有し、
前記係合凸部は、前記第3傾斜面と係合する凸部側第1傾斜面と、前記第2傾斜面と係合する凸部側第2傾斜面とを有することが好ましい。
【0013】
仮保持手段の係合突出部と係合凸部とが係合することでカバーを仮保持位置に保持するので、カバーをがたつくことなくハウジングに保持することができる。
【0014】
前記仮保持手段は、前記カバーに形成された弾性腕部を更に備え、
前記カバーを前記仮保持位置から開放位置まで回動する際、前記第2傾斜面と凸部側第2傾斜面とが摺接し、前記弾性腕部が弾性変形することにより、前記係合凹部と係合凸部との係合が解除されることが好ましい。
従って、カバーを仮保持位置から開放位置まで容易に回動することができる。
【0015】
前記カバーを前記仮保持位置から固定位置まで回動する際、前記第3傾斜面と凸部側第1傾斜面とが摺接し、前記弾性腕部が弾性変形することにより、前記係合凹部と係合凸部との係合が解除されることが好ましい。
従って、カバーを開放位置から仮保持位置を介して固定位置まで容易に回動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドアロック装置によれば、カバーを備えたドアロック装置を搬送する際、カバーをハウジングに対して傾倒した仮保持位置に保持することでハウジングからのカバーの突出量を抑制することができる。従って、ドアロック装置の外形を小さくし、運搬時の搬送効率を高めることができる。また、カバーは仮保持位置から、連動レバーに接続される操作伝達部材を組み付ける開放位置まで回動するので、容易に連動レバーに操作伝達部材を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るドアロック装置がアンロック状態にある状態を示す正面図。
【図2】本発明の実施形態に係るドアロック装置がロック状態にある状態を示す正面図。
【図3】(A)は(B)のA−A線断面図、(B)は図1の第1ケース部材のロック機構配設部を示す正面図。
【図4】図3(B)の係合突出部の部分拡大斜視図。
【図5】図1の第1ケース部材に第2ケース部材を組み付け、各連結部にケーブルを接続した状態を示す正面図。
【図6】ドアロック装置のラッチ機構を示し、(A)はドア開放状態を示す側面図、(B)はドア閉塞状態を示す側面図。
【図7】第2ケース部材にカバーを組み付けた状態を示す正面図。
【図8】(A)は図7のカバーの正面図、(B)は(A)のb−b線断面図。
【図9】図8(A)のc−c線拡大断面図。
【図10】(A)は図7のカバーが仮保持位置にある状態のa−a線断面図、(B)は(A)の仮保持手段の部分拡大断面図。
【図11】図7のカバーが開放位置にある状態を示す正面図。
【図12】図11のd−d線断面図。
【図13】図7のカバーが固定位置にある状態を示す正面図。
【図14】(A)は図13のe−e線拡大断面図、(B)は図13のf−f線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアロック装置を示す。このドアロック装置は、車両の開閉可能なドアに装着され、車体に配設したストライカ1(図6参照)に係脱可能に係止するものである。このドアロック装置は、ストライカ1に係止するラッチ機構と、該ラッチ機構によるストライカ1の係止状態を解除可能にアンロックまたは解除不可能にロックするロック機構とが配設されている。
【0020】
ロック機構を構成する各部品を配設する第1ケース部材11は、図3(A)に示すように、ロック機構配設部12とラッチ機構配設部17とを備えた平面視L字形状のものである。ロック機構配設部12には、図3(B)に示すように、後述するロックプレート57および連動レバーであるインナーレバー72を回動可能に軸着する支持軸である取付軸部13a,13bが設けられている。また、図中、ロックプレート57の取付軸部13aの右側および上方には、後述するキーリンク77を保持するため鉛直方向に2つのキーリンク保持溝18が形成されている。インナーレバー72の取付軸部13bの周りには、取付軸部13bと同心円上に周壁19が形成されている。また、取付軸部13bの左側部には、後述するノブレバー65を回動可能に配設するための軸穴14が設けられている。この軸穴14の更に上部左側には、駆動モータ配設部15とカム部材配設部16とが設けられている。そして、第1ケース部材11の下縁部11aと周壁19との間には、インナーレバー72が係合する第1保持部21と第2保持部22とが段状に第1ケース部材11に一体成形されている。これにより、インナーレバー72の保持位置を変更することができる。
【0021】
第1ケース部材11の下縁には、後述する本発明に係るカバー101を仮保持する係合突出部23が斜め下方に向かって突設されている。係合突出部23は、図4に示すように、中央に形成され図中斜め手前側に向かって突出する中央突出部24と、この中央突出部24の両側に形成され図中斜め奥側に向かって突出する側方突出部25とから構成されている。中央突出部24は、手前側に第1傾斜面26を、奥側に第2傾斜面27をそれぞれ有している。側方突出部25は、手前側に第3傾斜面28を有している。第1傾斜面26と第3傾斜面28とは平行に位置し、第2傾斜面27は、第1傾斜面26と第3傾斜面28とにほぼ直交している。前記第2傾斜面27と第3傾斜面28とは、カバー101を仮保持する係合凹部29を構成している。
【0022】
図5は、第1ケース部材11と共にハウジングを構成する第2ケース部材31を示し、第1ケース部材11のロック機構配設部12に装着されている。第2ケース部材31には、ノブレバー65のノブレバー側連結部67が貫通して外側に突出する第1開口部32と、インナーレバー72のインナーハンドル連結部74が貫通して外側に突出する第2開口部33とが形成されている。
【0023】
また、第2ケース部材31の中央には、貫通孔35を有し、カバー101を回動可能に支持するカバー支持部36が設けられている。第1開口部32の両側と第2開口部33の右側にはそれぞれ、図中手前側に向かって突出する3カ所のカバー固定用突起37が形成されている。このカバー固定用突起37にはそれぞれ、カバー101の爪部104が係止するカバー固定用段部37aが形成されている(図14(B)参照)。カバー支持部36の斜め下方には、手前側に向かって立ち上がる立壁34が設けられており、カバー101を第2ケース部材31に取り付けると、カバー101の外周縁部と立壁34とが合致する。この立壁34には後述するインナードア側アウターケーブル80およびノブレバー側アウターケーブル68を固定する、断面視が湾曲に凹んだアウターケーブル固定部38が形成されている。
【0024】
第1ケース部材11のラッチ機構配設部17に装着されるサブケース41は、ラッチ機構配設部17に配置されるラッチ機構のフェンスブロック42の側を覆っている。図6(A)および図6(B)に示すように、このフェンスブロック42には、ストライカ1を挿通する空間となる挿通凹部43が、ラッチ機構配設部17に向けて窪むように設けられている。この挿通凹部43の上側には、ラッチ機構を構成するフォーク47が取付部44に回動可能に装着されている。挿通凹部43の下側には、クロー48が取付部45に回動可能に装着されている。取付部45の左側には、クロー48の操作受部48bを挿通してラッチ機構配設部17内に突出させる挿通孔46が設けられている。
【0025】
そして、ラッチ機構は、ストライカ1を係脱可能に係止するフォーク47と、該フォーク47に係合してフォーク47がストライカ1を保持した状態を維持するクロー48とを備えている。このラッチ機構は、ドアの閉じ力に伴うストライカ1の押圧で図6(A)から図6(B)に示すように、フォーク47が反時計回りに回動する。そして、クロー48の係止部48aがフォーク47に係止することにより、フォーク47によるストライカ1の係止状態を維持する。この状態で、クロー48の操作受部48bが上向きに作動されると、クロー48が時計回りに回動されることにより、フォーク47とクロー48の係止が解除される。その結果、フォーク47が図示しないスプリングの付勢力で図6(A)に示す開放位置に回動し、ストライカ1の係止を解除する。
【0026】
また、第1ケース部材11に組み付けるロック機構は、図1および図2に示すように、クロー48の操作受部48bに係止してクロー45を係止解除方向に作動させるためのリンク50と、該リンク50によるクロー48の作動を可能または不可能とするためのロックプレート57とを備えている。
【0027】
リンク50は、インナーレバー72またはアウターレバー86の作動力を下端の受動部51で受けることにより、上方向に移動する。図1に示すアンロック位置では、略中央の操作部53がクローの操作受部48bに係合して、クロー48を係止解除方向に作動させる。そのため、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除できる。また、リンク50は、上方のロックプレート連結部54がロックプレート57に連結され、このロックプレート57の回動によりアンロック位置およびロック位置に移動される。図2に示すロック位置では、操作部53がクロー48の操作受部48bと係合不可能な位置に離間する。このため、アウターレバー86またはインナーレバー72によって上方向に移動されても、クロー48を係止解除方向に作動できない。よって、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除できない。
【0028】
インナーレバー(連動レバー)72は、ドアの車内側に設けたインナードアハンドル(図示せず)に連結されるとともに、リンク50の受動部51に係合され、該リンク50をクロー48の操作受部48bの側に向けて作動(スライド)させる。このインナーレバー72は、第1ケース部材11の取付軸部13bに回動可能に取り付けられる取付部73を備えている。インナーレバー72は、取付部73の周りに設けられた弾性部材であるコイルスプリング71により時計方向に付勢されている。インナーレバー72の端部には、図5に示すように、インナーハンドル連結部74が設けられている。このインナーハンドル連結部74は、第2ケース部材31の第2開口部33から第2ケース部材31の外側に突出するように延び、操作伝達部材であるインナードアケーブル76に連結されている。インナードアケーブル76は、他端側がインナードアハンドルに連結され、チューブ状に形成されたインナードア側アウターケーブル80内に移動可能に配置されている。インナードア側アウターケーブル80の端部は第2ケース部材31のアウターケーブル固定部38に固定されている。また、インナーレバー72には、組付状態で取付部73を中心とする回転軌跡上にリンク50の受動部51が位置するように、略J字形状をなすリンク作動部75が設けられている。
【0029】
このインナーレバー72は、インナードアハンドルが操作されると、第2ケース部材31から外側へ突出したインナーハンドル連結部74がインナードアケーブル76により左向きに引っ張られ、取付軸部13b周りに反時計方向に回動する。この結果、インナーレバー72が反時計回りに回動することにより、下端のリンク作動部75がリンク50の受動部51に係合し、リンク50を上向きに移動させる。
【0030】
アウターレバー86は公知のレバーであり、第1ケース部材11を貫通して内外に延び、回動可能に取り付けられている。ドアの車外側に設けたアウターハンドル(図示せず)が操作されると、受動部51内に連結される先端のリンク連結部88が上向きに移動することにより、リンク50を上向きに移動させる。
【0031】
ロックプレート57は、第1ケース部材11の取付軸部13aに回動可能に取り付けられている。このロックプレート57は、後述するキースイッチレバー83またはノブレバー65によって時計回りに回動させることにより、下端に設けられたリンク係着部61が左側に移動し、リンク50をアンロック位置からロック位置へ移動させる。また、反時計回りに回動されることにより、リンク係着部61が右側へ移動し、リンク50をロック位置からアンロック位置へ移動させる。なお、ロックプレート57は、キースイッチレバー83によるアンロック作動を突出したアンロック作動受動部64で受け、キースイッチレバー83によるロック作動を右側縁部で受ける。また、ノブレバー65によるアンロック作動およびロック作動を、リンク係着部61と逆側に位置するノブレバー係着部63で受ける。
【0032】
キースイッチレバー83は、ドアの車外側に露出するように配設したシリンダ錠(図示せず)にキーリンク77を介して連結され、第1ケース部材11の取付軸部13aに、ロックプレート57とともに回動可能に取り付けられている。このキースイッチレバー83は、楕円形の挿通孔を有する連結部84を備えており、この連結部84がキーリンク77の下端に形成された下側円形突起部78と係合している。キーリンク77は、キーリンク保持溝18に上下方向に移動可能に保持されており、上端には上側円形突起部79が設けられている。この上側円形突起部79は、シリンダ錠に従動して時計方向または反時計方向に軸81回りに回動するキーロータ82aの楕円形挿通孔82bと係合している。キーロータ82aの回動により、キーリンク77を介してキースイッチレバー83が時計回りに回動されると、ロックプレート57を介してリンク50をロック位置に移動させる。また、キースイッチレバー83が反時計回りに回動されることにより、ロックプレート57を介してリンク50をアンロック位置に回動させる。
【0033】
ノブレバー(連動レバー)65は、第1ケース部材11の軸穴14に回動可能に軸着されている。ノブレバー65の一端には、図5に示すように、ノブレバー側連結部67が設けられており、このノブレバー側連結部67は、第2ケース部材31の第1開口部32から第2ケース部材31の外側に突出するように延び、操作伝達部材であるノブレバーケーブル66に連結されている。ノブレバーケーブル66は、他端側がロックノブ(図示せず)に連結され、チューブ状に形成されたノブレバー側アウターケーブル68内に移動可能に配置されている。ノブレバー側アウターケーブル68の端部は第2ケース部材31のアウターケーブル固定部38に固定されている。ノブレバー65の他端にはロックプレート係着部69が設けられており、ロックプレート57のノブレバー係着部63に係合されている。そして、ロックノブの操作に連動してロックプレート57を作動させ、リンク50をロック位置またはアンロック位置に移動させる。具体的には、ノブレバー65はノブレバーケーブル66によって反時計回りに回動されることにより、先端のロックプレート係着部69がロックプレート57をロック位置に回動させる。また、時計回りに回動されることにより、ロックプレート係着部69がロックプレート57をアンロック位置に回動させる。さらに、軸穴14の上方には、背部に位置するカム部材92のカム溝94に係合するカム受部70が突設されている。
【0034】
カム部材92に隣接する駆動モータ90は、出力軸91を介してカム部材92を正転または逆転させる。このカム部材92は、ノブレバー65のカム受部70と対向するように回転可能に配設されている。カム部材92において、ノブレバー65の側に対向する上面側には、中心側から外周部に向けて中心からの距離が徐々に広がるようにカム溝94が凹設されている。そして、このカム部材92は、カム受部70が中心側に移動するように回転されることにより、ノブレバー65およびロックプレート57を介してリンク50をロック作動させ、カム受部70が外周側に移動するように回転されることにより、ノブレバー65およびロックプレート57を介してリンク50をアンロック作動させるように構成している。
【0035】
本発明のカバー101は、図7に示すように、第2ケース部材31にカバー支持部36周りに回動可能に取り付けられている。カバー101は第2ケース部材31に対し閉塞した状態で、第1開口部32と第2開口部33とを覆う本体102を備えている。図8(A)および図8(B)に示すように、本体102には、取付軸部13bに合致する有底の円形凹部103が形成されている。また、本体102の外周縁部には、外方に向かって突出する3カ所の爪部104が設けられている。本体102の上縁には、上方に向かって延びる一対の腕部106が設けられている。この腕部106の先端に内方に向かって形成された軸部107が、前記カバー支持部36の貫通孔35と嵌合する。本体102の下縁には、下方に向かって延びる仮係合部109が設けられている。この仮係合部109と第1ケース部材11の係合突出部23とが仮保持手段を構成している。図9および図10(A)に示すように、仮係合部109は第1カバー部材11に向かって水平方向に延びる弾性腕部111と、この弾性腕部111の端部から上方に突起する係合凸部112とを備えている。係合凸部112の上端には、図10(B)に示すように、第1ケース部材11の係合凹部29に係止する凸部側第1傾斜面113と、凸部側第2傾斜面114とが形成されている。
【0036】
次に、第2ケース部材31へのカバー101の組付について説明する。
【0037】
本発明のカバー101は、ロック機構、ラッチ機構を取り付けた第1ケース部材11に第2ケース部材31を組み付けた後、第2ケース部材31に取り付ける。具体的には、腕部106を外方に撓ませて軸部107をカバー支持部36の挿通孔35に嵌合させる。このとき、カバー101は、後述する仮保持位置と開放位置との間にある。次に、カバー101をカバー支持部36周りに第2ケース部材31に対し閉塞する方向に回動させると、図10(B)の2点鎖線に示すように、仮係合部109の凸部側第1傾斜面113が係合突出部23の第1傾斜面26に摺接する。すると、弾性腕部111が弾性変形し、係合凸部112が中央突出部24を乗り越える。そして、弾性腕部111の弾性復元力により、カバー101は、係合凸部112が第1ケース部材11の係合凹部29に係合する仮保持位置に保持される。このとき、係合凸部112の凸部側第1傾斜面113が係合凹部29の第3傾斜面28に、凸部側第2傾斜面114が第2傾斜面27に係止している。また、弾性腕部111の弾性復元力により、係合凸部112が係合凹部29に向かって押し付けられているので、カバー101が第1ケース部材11にがたつくことなく保持される。カバー101を、第1ケース部材11から突出する係合突出部23を介してハウジングに仮保持するため、ハウジング本体にカバー101を仮保持する部材を設ける必要がなく、ハウジングの設計の自由度を向上することができる。
【0038】
上記状態で、ハウジングをトラックなどで車両組立工場などの別の場所に搬送する。このとき、カバー101を第2ケース部材31に対して傾倒した仮保持位置に保持した状態で搬送するので、ハウジングからのカバー101の突出量を抑制することができる。従って、ドアロック装置の外形を小さくし、運搬時の搬送効率を高めることができる。また、カバー101を仮保持位置に保持すると、カバー101は第2ケース部材31に対し閉塞するので、第1開口部32および第2開口部33から埃などの異物がハウジングの内部に侵入するのを防止することができる。
【0039】
ハウジングを別の場所に搬送した後、カバー101を仮保持位置から第2ケース部材31に対し開放する方向に回動させる。このとき、凸部側第2傾斜面114が第2傾斜面27と摺接し、弾性腕部111が弾性変形する。そして、係合凸部112が中央突出部24を乗り越えて、係合凹部29と係合凸部112との係合が解除される。すなわち、カバー101を回転操作するだけで係合凸部112と係合凹部29との係合を開放位置方向に解除できる。従って、カバー101を仮保持位置から第2ケース部材31に対し略垂直な開放位置まで容易に回動することができる。カバー101を図11および図12に示す開放位置まで回動すると、ノブレバー側連結部67にノブレバーケーブル66を、インナーハンドル連結部74にインナードアケーブル76をそれぞれ連結する。そして、ノブレバー側アウターケーブル68とインナードア側アウターケーブル80とをアウターケーブル固定部38に差し込む。以上により、仮保持位置にあるカバー101を開放位置まで回動するだけで、容易にノブレバー65とインナーレバー72にケーブル66,76を接続することができる。
【0040】
開放位置にあるカバー101を第2ケース部材31に対し閉塞する方向に回動させると、カバー101はまず、仮保持位置で係合凹部29と係合凸部112とが係合する。更にカバー101を回動させると、凸部側第1傾斜面113と第3傾斜面28とが摺接し、弾性腕部111が弾性変形することにより、弾性凸部112が側方突出部25を乗り越える。これにより、係合凹部29と係合凸部112との係合が解除する。そして、カバー101は、図13および図14(A)に示す、第2ケース部材31に固定される固定位置まで回動する。従って、カバー101の回転操作のみによって、カバー101を開放位置から仮保持位置を介して固定位置まで容易に回動することができる。この固定位置では、代表的に図14(B)に示すように、第2ケース部材31のカバー固定用段部37aとカバー101の爪部104とが係合して、カバー101は第2ケース部材31に固定され容易に取り外すことができない。また、この固定位置では、カバー101と第2ケース部材31とがノブレバー側アウターケーブル68とインナードア側アウターケーブル80とを狭持し固定するので、これらアウターケーブル68,80がアウターケーブル固定部38から離脱するのを防止することができる。
【0041】
なお、本発明のドアロック装置は、前記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【0042】
前記実施形態では、第1ケース部材11の係合突出部23およびカバー101の仮係合部109をハウジングの下縁に設けたが、カバー101を仮保持することができる限り、配設位置は特に限定されない。また、第1ケース部材11に係合突出部23を、カバー101に仮係合部109をそれぞれ設けたが、第1ケース部材11とカバー101とが係合する限り、係合突出部23および仮係合部109の形状は特に限定されない。例えば、本実施形態においては、係合突出部23および仮係合部109の各傾斜面26、27、28、113、114を平面にて形成しているが、各傾斜面26、27、28、113、114を円弧状面、または、球面にて形成してもよい。また、第2ケース部材31に係合突出部23を設け、カバー101を第2ケース部材31に仮保持するようにしてもよい。この場合でも、係合突出部23および仮係合部109の配置位置は特に限定されず、第2ケース部材31とカバー101とが係合する限り、係合突出部23および仮係合部109の形状は特に限定されない。本実施形態においては、開口部32、33、およびカバー支持部36を第2ケース部材31に設けているが、開口部32、33、およびカバー支持部36を第1ケース部材31に設けるようにしてもよい。
【0043】
第2ケース部材31のカバー固定用突起37およびカバー101の爪部104に関しては、カバー101を第2ケース部材31に固定することができる限り、形状、配設場所は特に限定されない。また、本実施形態においては、仮保持位置を、カバー101が第2ケース部材31の外面に対しておよそ6°傾斜した位置(図10(A)に示す位置)としているが、この傾斜角度は任意に設定可能であり、カバー101と第2ケース部材31とが平行になる位置を仮保持位置として設定してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ストライカ
11 第1ケース部材(ハウジング)
23 係合突出部(仮保持手段)
26 第1傾斜面
27 第2傾斜面
28 第3傾斜面
29 係合凹部
31 第2ケース部材(ハウジング)
32 第1開口部
33 第2開口部
65 ノブレバー(連動レバー)
66 ノブレバーケーブル(操作伝達部材)
72 インナーレバー(連動レバー)
76 インナードアケーブル(操作伝達部材)
101 カバー
109 仮係合部(仮保持手段)
111 弾性腕部
112 係合凸部
113 凸部側第1傾斜面
114 凸部側第1傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを係脱可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除可能なアンロック位置と、前記ラッチ機構による前記ストライカの係止を解除不可能なロック位置とに切替可能なロック機構と有し、
前記ロック機構を配設する第1ケース部材と、前記第1ケース部材を被覆する第2ケース部材とからなるハウジングと、
前記ハウジング内において、回動可能に支持された連動レバーと、
前記連動レバーの端部を前記ハウジングの外側に露出させる前記ハウジングに設けられた開口部と、
前記開口部を開閉可能に前記ハウジングに装着されたカバーとを備えたドアロック装置において、
前記カバーが、前記ハウジングとカバーに設けられた仮保持手段により、前記ハウジングに対して傾倒した仮保持位置に保持されたことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
前記カバーは前記仮保持位置において、前記開口部を被覆することを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記カバーを、前記連動レバーに接続される操作伝達部材を組み付ける開放位置と、前記仮保持位置と、前記開口部を閉塞し前記ハウジングに固定される固定位置との間を回動可能に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のドアロック装置。
【請求項4】
前記仮保持位置を、前記開放位置と前記固定位置との間に設けたことを特徴とする請求項3に記載のドアロック装置。
【請求項5】
前記仮保持手段を、前記ハウジングとカバーの外周縁部から突出するように設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドアロック装置。
【請求項6】
前記仮保持手段は、前記第1ケース部材に形成された係合突出部と、前記カバーに形成された係合凸部とからなり、
前記係合突出部は、外側に形成され前記係合凸部を仮保持位置に案内する第1傾斜面と、内側に形成され前記仮保持位置において前記係合凸部と係合する第2傾斜面および第3傾斜面からなる係合凹部とを有し、
前記係合凸部は、前記第3傾斜面と係合する凸部側第1傾斜面と、前記第2傾斜面と係合する凸部側第2傾斜面とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のドアロック装置。
【請求項7】
前記仮保持手段は、前記カバーに形成された弾性腕部を更に備え、
前記カバーを仮保持位置から前記開放位置まで回動する際、前記第2傾斜面と凸部側第2傾斜面とが摺接し、前記弾性腕部が弾性変形することにより、前記係合凹部と係合凸部との係合が解除されることを特徴とする請求項6に記載のドアロック装置。
【請求項8】
前記カバーを仮保持位置から前記固定位置まで回動する際、前記第3傾斜面と凸部側第1傾斜面とが摺接し、前記弾性腕部が弾性変形することにより、前記係合凹部と係合凸部との係合が解除されることを特徴とする請求項6または7に記載のドアロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate