説明

ドクターブレード

ドクターブレードは、凹版の表面からインクと被覆物を調量するためのものであって、平坦な細長いベース本体(1a)と、ベース本体(1a)の長手方向側面の一方に形成された作業エッジ(5)を備えたブレード領域(1c)とを具備する。ブレード領域(1c)は、少なくとも一部がプラスチック材料(3,4)から形成されているが、作業エッジ(5)はプラスチック材料(3,4)によって形成されている。ベース本体(1a)は補強されたプラスチック材料(2,3,4)から形成されている。ベース本体(1a)の対向する主外側面は、第1材料から形成されたプラスチック層(3,4)で形成され、第1材料よりも高い剛性を持つ第2材料から形成された少なくとも1つの内側層(2)が前記プラスチック層(3,4)間に設けられている。ドクターブレード(1)は、それゆえ異なる剛性の構成部品を組み込むが、プラスチック製の作業エッジ(5)が設けられている。このドクターブレード(1)は、剛性であると同時に非磨耗性である。摩耗くずは媒体に対して有害ではなく、ドクターブレード(1)は密閉性能を具備する。ドクターブレード(1)の主外側面はプラスチック材料によって構成されているという事実によって、ドクターブレード(1)は発錆や酸化を受けにくく、かつ使用者への安全性が高められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドクターブレードに関し、このドクターブレードは、特に、凹版の表面からインクと被覆物を調量するためのもので、平坦な細長いベース本体と、ベース本体の長手方向側面の一方に形成された作業エッジを持つブレード領域とを有する。本発明は、更に、ドクターブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷産業において、ドクターブレードは、例えば、印刷シリンダーの表面から、特に凹版の表面からインクと被覆物を調量するために用いられる。シリンダーの凹んだセルがインクで覆われた後、余分なインクが印刷ニップに達する前に、ブレードによってそれを拭い取る必要がある。ドクターブレードの正しい使用は、グラビア印刷とフレキソ印刷に欠くことができないものである。
【0003】
ドクターブレードは消耗品である。それらは、定期的に交換される。それゆえ、ドクターブレードは、費用効率的であり、かつそれらの取扱いができるだけ安全であることが望ましい。
【0004】
今日、ドクターブレードは主に二つの構成、すなわち、金属製と高分子(非金属)製で形成されている。金属製ブレードは、一般に炭素鋼製であり、以下の利点を示す。
― それらは、薄い断片において優れた剛性を持つ。
― もし厳しい寸法公差が維持されなければならないとしても、それらは製造が容易である。
― それらは、非常に薄いエッジを支えることができる。
― それらは、清浄なドクタリング(鋭く清浄な拭い取り)を行う。
― それらは、優れた平坦さを持つ。そして、
― それらは、いかなる復元効果も示さない。
【0005】
しかしながら、非金属製ブレードと比較して、金属製ブレードはまた以下の不利な点を持つ。
― ドクタリングされる表面とそれらとの摩擦はより高い。
― それらは対向する表面に対して摩耗性である。
― それらは摩耗すると鋭いエッジを形成し、危険を及ぼす可能性のある尖端になる。
― それらは酸化し、それゆえ錆を発生させる。
― ドクターブレードの摩耗による破片は媒体を汚染する。
― それらは、内部及びそれ自体のいかなる密閉性(sealing property)も持たない。そして、
― 材料は容易に利用できない。
【0006】
したがって、非金属製ブレードは以下の利点を示す。
― ドクタリングされる表面とのそれらの摩擦性は低い。
― それらは、金属製ブレードより安全である。
― それらは、摩耗しても鋭いエッジを形成しない。
― それらは、摩耗性ではない。
― それらは、それらの破片が媒体に対して有害ではない。
― 材料は、在庫して容易に利用できる。
― 材料は本質的に密閉性を持つ。そして、
― 酸化することがない。
【0007】
しかし、非金属製ドクターブレードは不利な特性をも持つ。
― それらは、鋼よりも高価である。
― それらは、薄い断片において剛性を有する構成単位として劣り、ドクタリング工程の正確な制御を妨げるブレードの変形につながる。
― それらは、平坦さが劣り、波状になりやすい。
― それらは、好ましいエッジを製作することにおいて、更なる製造問題を導く。
― それらは、薄いエッジをうまく支えることができない。
― 材料の要求厚さのために、清浄なドクタリングが制限される。
― 材料は復元力を保持する。
【0008】
金属製ブレードを使用する主な理由は、それらの剛性と平坦さである。しかしながら、金属製ブレードの使用は、ブレード自体の摩耗とドクタリングされる表面の摩耗とを我慢するだけでなく、安全性の問題も我慢することを意味する。それに相応して、非金属製ブレードの使用者は、作業エッジの低剛性と劣る平坦さに我慢しながら、安全性と低摩耗性に主眼をおく。
【0009】
実施される作業次第で、金属製または非金属製のドクターブレードが選択される。それゆえ、実施される特定の作業を仮定して金属製または非金属製のブレードが柔軟に使用されるように、金属製と非金属製ブレードの両方を収容するためのブレードホルダーを改良することが提案されてきた。
【0010】
最近の開発と設計は、ブレードに被覆を施すとともに、巻の表面を異なる材料(クロムとセラミック)で製造することによって、両タイプのブレードの不利な点をいくつか克服しようとしてきた。これらの対策は、構成要素の寿命を延ばすとともに、摩擦の数値を低下させることができる。添加物もまた、ブレードの潤滑性特性と酸化防止特性のために媒体に導入されてきた。
【0011】
例えば、特許文献1には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、長鎖アクリル基を含有する高分子、ポリオレフィン、アルキド樹脂、シェラック、フッ素を含有するシリコーンなどのような撥インキ材料からなる薄い被覆物によって被覆されたブレードが記載されている。
【0012】
さらに、プラスチック材料からだけでなく金属からの両方で製作された構造要素を含む、いくつかのドクターブレードの設計が提案されてきた。
【0013】
特許文献2には、プラスチックのクラッドを有する金属製ドクターブレードを備えたドクターブレード装置が記載されている。クラッドは、ドクターブレードの外側の表面を構成し、ベース本体領域においてドクターブレードに堅固に結合されている。ドクターブレードがドクターブレードホルダーにクランプされる前は、クラッドは主に、使用者がブレードを印刷機に取付けることだけでなく、ドクターブレードを保護するための包装の役割をする。ドクターブレードがドクターブレードホルダーにクランプされた後、金属製の作業エッジの被覆物を取るために、クラッドの除去可能な部分は除去される。ドクターブレードの操作の間、クラッドの残っている部分はドクターブレードの振動を減衰するのに役立つ。
【0014】
特許文献3には、グラビア印刷のシリンダーまたは版のためのドクターブレードが記載されている。ドクターブレードは、合成樹脂またはセルロース誘導物質のようなプラスチック材料によって作業エッジを特徴づける。ドクターブレード全体はプラスチック材料によって製造してもよいが、そのプラスチック材料は作業エッジの短い間隔で金属補強材を用いて補強されることが有利である。金属補強材は、プラスチックのブレード本体の主外側面の一面上に設けられた金属層である。
【0015】
しかしながら、これらの設計は金属製及び/又は非金属製ドクターブレードの、特定の不利な点のいくつかをそれぞれに緩和するだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平4−296556号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第2823603号明細書
【特許文献3】米国特許第2052679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、最初に述べた技術分野に関するドクターブレード、すなわち金属製と非金属製のドクターブレード両方の不利な点を低減もしくは解決するとともに、両方の利点を併せ持つドクターブレードを創造することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は請求項1の特徴によって特定される。本発明によれば、ブレード領域は少なくとも一部はプラスチック材料で形成され、作業エッジ、すなわちドクタリングされる表面と接触しているドクターブレードの領域はプラスチック材料で形成されるのに対して、ベース本体は補強されたプラスチック材料で形成される。ベース本体の対向する主外側面は、第1材料から形成されたプラスチック層で構成され、少なくとも内側の1層は、前記プラスチック層間に設けられる第1材料よりも高い剛性を持つ第2材料から形成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るドクターブレードの横断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るドクターブレードの横断面図である。
【図3A】本発明のドクターブレードの製造方法を説明するための概略図である。
【図3B】本発明のドクターブレードの製造方法を説明するための概略図である。
【図3C】本発明のドクターブレードの製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のドクターブレードは、それゆえ異なる剛性の構成部品を組み込むが、プラスチック製の作業エッジが設けられている。剛性のある内側層は、ドクターブレードの芯部を構成するもので、プラスチック層間に収容され、ドクターブレードの外側表面はプラスチック材料によって構成されている。それによって、ドクターブレードは、剛性と耐磨耗性を同時に有するように形成されている。摩耗くずは媒体に対して有害ではなく、ドクターブレードは密閉性能を有している。ドクターブレードの主外側面はプラスチック材料によって構成されているという事実によって、ドクターブレードは発錆や酸化を受けにくく、かつ使用者への安全性が高められている。
【0021】
内側層は、例えば、鋼から形成された金属製であることが好ましい。あるいは、内側層は、例えば、ガラスファイバや炭素繊維のような非金属製の剛性のある材料から製造してもよい。
【0022】
前記ブレード領域の厚さは、ベース本体の厚さよりも小さいことが好ましい。このことは、平坦なブレード領域を持つ剛性のあるドクターブレードを提供することを考慮している。
【0023】
ブレード領域全体は、プラスチック材料から形成されることが有利である。すなわち、内側層は作業エッジまで延出はしていないがドクターブレード領域が存在し、全体がプラスチック材料からなる作業エッジに近接している。このことは、公知の非金属製作業エッジの利点を全て持ち、公知の非金属製ドクターブレードの作業エッジのように形成し、かつ製造してもよい非金属製作業エッジを提供することを考慮している。
【0024】
あるいは、内側層は実質的に作業エッジの領域内に延出している。すなわち、作業エッジは剛性のある内側層のそれぞれの領域によって直接支えられるプラスチック材料によって構成されている。ブレード領域は、ドクターブレードが摩耗した後でさえも、作業エッジが常にプラスチック材料によって構成されるように形成されている。
【0025】
内側層は、プラスチック層に堅固に固着されていることが好ましい。このことは、ドクターブレードの高耐久性だけでなく高剛性も可能にする。堅固に固着されるために、外側のプラスチック表面に作用する全ての力が剛性のあるベース本体に伝達される。あるいは、内側層はプラスチック層に固着されないが、プラスチック層の配置のためにプラスチック層の中に保持されている。すなわち、中にベース本体が保持される保持空間が形成されるように、プラスチック層は形成されている。プラスチック層に対して内側層を堅固に固着するとともに、例えば、プラスチック層の保持部を組み込むドクターブレードを製造することが可能である。
【0026】
内側層をプラスチック層に堅固に固着するために、これらの要素は共に密着されていることが好ましい。このことは、層間に大きな付着物の表面を有することを可能にし、それゆえ、1つの層から他の層に伝達される力を最適に分配することを可能にすることを考慮している。例えば、蟻継ほぞ形と相互作用するよう嵌合面に対応した金属製ベース本体の構造だけでなく、リベットまたはプラスチック層のような代替の固着手段を使用してもよい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、プラスチック層は作業ブレードに隣接するベース本体の長手方向側面にかけて突出し、プラスチック層の突出領域は共に接合されている。このことは、金属製のベース本体だけでなく、プラスチックのブレード領域を持つドクターブレードを容易に製造することを可能にする。
【0028】
突出部、すなわち接合されたプラスチック層は、作業エッジを備えたブレード領域を構成することが好ましい。それによって、ドクターブレード全体は実質的に3つの構成材から組み立てられている。すなわち、内側本体の長さよりも大きく、かつ、内側本体の対向する主表面の両面に同一の広がりを持って設けられたベース領域を持った同じ長さの2つのプラスチック層だけでなく、細長い剛性のある内側本体(芯部)から組み立てられ、プラスチック層の領域が内側本体の長手方向側面に突出するように組み立てられている。プラスチック層の突出領域が接合された後、ブレード領域にプラスチック製の作業エッジが研削によって容易に形成される。
【0029】
前記プラスチック層は、延伸されたポリエステルのフィルムから構成されることが有利である。適切な厚さに相当するフィルムは、商業的に比較的低コストで利用可能である。それらは寸法的に安定性し、高引張り強度を示し、かつ特に積層されることに好適である。
【0030】
あるいは、例えば、繊維(炭素またはガラス繊維など)で強化されたプラスチック材料など、他のプラスチック材料が用いられる。
【0031】
各プラスチック層の厚さは、総計が少なくとも内側層の厚さに達することが好ましい。プラスチック層は、単に金属芯材の被覆であるだけでなく、それら自体が構成要素である。各プラスチック層の厚さは、0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましく、0.15〜0.4mmの範囲であることがより好ましい。一方、内側層の厚さは、0.05〜0.3mmであることが好ましく、0.1〜0.25mmの範囲であることがより好ましい。これらの層の厚さは、平坦なだけでなく同時に剛性のあるドクターブレードの創造を可能にすることを考慮している。もし、ブレード領域が2つの接合されたプラスチック層で構成されるならば、定められた厚さは、凹版の表面からインクと被覆物を調量するのに最適な操作性能を持つ作業エッジの形成を可能にすることを考慮している。
【0032】
特別な目的として、層の厚さの比率だけでなく層の厚さを変化させることが可能である。
【0033】
本発明に係るドクターブレードは、以下の工程によって製造することができる。
a) 少なくとも1つの内側層を持つ平坦な細長い芯材を設け、
b) プラスチック層が芯材の長手方向側面に突出するように、2つのプラスチック層を芯材の対向する主表面に配置し、
c) プラスチック層を芯材に堅固に固着させ、
d) プラスチック層を突出領域において共に固着させる。
【0034】
前記芯材は、剛性を増した単一の要素によって構成してもよく、芯材に更なる機械的安定性を与える少なくとも1つの強化された層を含む複合要素によって構成してもよい。
【0035】
プラスチック層と内側層(または芯材)は、共に積層されていることが好ましい。すなわち、工程c)とd)は積層工程によって実施される。すなわち、固着層は層間に設けられ、続いて、圧力と熱を用いて層が共に接合される。これは、好ましくは、一組の熱した圧板、熱した圧延機、及び/又は近くに熱源を持つ圧延機を介して、非積層材を通過させることによって行なわれる。積層法は、高生産率を考慮するとともに隣接層を堅固に固着することを考慮した費用効率的な工程である。
【0036】
あるいは、相互に固着される表面に塗布可能な噴霧接着剤またはエポキシ樹脂、または加圧オートクレーブ技術が使用されてもよい。
【0037】
他の有利な実施形態及び特徴の組み合わせは、後述の詳細な説明と請求項全体から現れる。
【0038】
図中、同じ構成材には同じ参照符号が与えられる。
【0039】
図1は、本発明の第1実施形態に係るドクターブレードの横断面を図示し、ドクターブレードの長手方向に直交する平面に沿っている。図は概略であり、寸法は縮小比ではない。ドクターブレード1は、芯材2の両側に配置されたプラスチック層3,4だけでなく、鋼から形成された芯材2を具備している。芯材2は細長い形状であり、その長さはドクターブレード1自体の長さに相当する。ドクターブレード1は、それが使用される機械に適応したある一定の長さ、または(例えば、100m巻)望ましい長さに切断するために固定の長さで設けられる。
【0040】
前記芯材2の幅(すなわち、ドクターブレードの主平面に沿って、長手方向に直交する長さ)は約40mmであり、その厚さは約0.15mmである。プラスチック層3,4は、芯材2,12の長さに相当する長さ、すなわちドクターブレード1全体の長さに相当する長さを持つ。それらの幅は約45mmであり、すなわち芯材2の幅よりわずかに大きい。プラスチック層3,4は、延伸されたポリエステルから製造されたフォイルによって構成されている。対向しかつ芯材2に面しているそれらの内側には、フォイルに固着性の被覆物3a,4aが設けられている。プラスチック層3,4の厚さは約0.18mmであり、被覆物3a,4aの厚さは約0.05mmである。それゆえ、ドクターブレードの厚さは、ベース本体1aの領域内を基準として約0.61mmである。
【0041】
前記プラスチック層3,4の幅に沿って、それらは芯材2の長手方向側面の両面に突出している。層3,4の突出している部分は、芯材2の両側に相互に接合されている。プラスチック層3,4が相互にだけでなく芯材2に接合されていることは、ドクターブレード1の他の要素と共に積層工程(以下、及び図3A〜Cを参照)を経た固着性の被覆物3a,4aによって可能になる。
【0042】
前記芯材2の一方の側には、斜めに形成された作業エッジ5を示す薄板領域1cが形成されるように、プラスチック層3,4が設けられている。この目的のために、薄板領域1cの厚さ(エッジの厚さ)は、総計が約0.30mmとなるように、プラスチック層3の厚さが先頭の部分において相当に低減されている。もう一方のプラスチック層4は、もう一方の層3と接触する表面で幅が最大になるように面取りされている。斜めに形成された作業エッジ5とドクターブレード1の主平面との成す角度は約50°である。薄板領域1cの幅(エッジの幅)は、総計が約1.5mmに相当する。要約すると、ドクターブレード1は異なる厚さの3つの領域を特徴とする。すなわち、2つのプラスチック層の間に挟まれた金属層を備えるとともに第1厚さを持つベース本体1aと、2つの隣接するプラスチック層によって構成されるとともに第1厚さよりも薄い第2厚さを持つベース本体1aに隣接する転移領域1bと、複数層のうちの一層分の厚さが減少しかつ隣接する2つのプラスチック層によってさらに構成された薄板領域1cとを具備している。第3厚さを有する薄板領域1cにおいては、第2厚さよりも更に薄くなっている。
【0043】
図2は、本発明の第2実施形態に係るドクターブレードの横断面を示す。また、図は概略であり、寸法は縮小比ではない。第2実施形態の基本的な構造は、図1に関連した上述の第1実施形態に対応する。第2実施形態の同様な構成材は、図1の参照数字に10だけ増加させた対応する参照数字によって示す。
【0044】
前記ドクターブレード11は、芯材12の両側に配置された2つのプラスチック層13,14とともに、鋼で形成された芯材12を具備している。芯材12は細長い形状を持ち、その長さはドクターブレード11自体の長さに相当する。芯材12の幅(すなわち、ドクターブレードの主平面に沿って長手方向に直交する長さ)は約40mmであり、その厚さは約0.15mmである。プラスチック層13,14の長さは、芯材12の長さに相当し、すなわちドクターブレード11全体の長さに相当する。それらの幅は約45mmであり、すなわち芯材12の幅よりわずかに大きい。プラスチック層13,14は、延伸されたポリエステルから製造されたフォイルによって構成されている。対向しかつ芯材12に面しているそれらの内側には、フォイルに固着性の被覆物13a,14aが設けられている。プラスチック層13,14の厚さは約0.18mmであり、被覆物13a,14aの厚さは約0.05mmである。それゆえ、ドクターブレードの厚さは、ベース本体11aの領域内を基準として約0.61mmである。
【0045】
前記プラスチック層13,14の幅に沿って、それらは芯材12の長手方向側面の両面に突出している。一方で、層13,14の突出している部分は、芯材12の両側に相互に接合されている。プラスチック層13,14を相互にだけでなく芯材12に接合することは、ドクターブレード11の他の要素と共に積層工程(以下、及び図3A〜Cを参照)を経た固着性の被覆物13a,14aによってもたらされる。
【0046】
前記芯材12の一方の側には、プラスチック層13,14の両方が面取りされ、楔形の作業エッジ15が形成されている。楔角は約30°に相当する。要約すると、ドクターブレード11は様々な厚さを持ちながら、2つのプラスチック層の間に挟まれた金属製の層を備えたベース本体11aと、2つの隣接するプラスチック層によって構成されかつベース本体11aの厚さよりも薄い厚さを持つとともにベース本体11aに隣接する転移領域11bと、2つのプラスチック層によって再び構成された面取りエッジ領域11cとを特徴として持っている。
【0047】
図3A〜Cは、上記で説明した第2実施形態を例として考慮しながら、本発明のドクターブレードの製造方法を概略的に説明するものである。最初に、図3Aに示すように、細長い金属製の芯材12は、2つのプラスチックフォイル(層13,14)の間に挟まれる。それらの内側層には、芯材12に面しながら、フォイルに固着性の層13a,14aが形成されている。フォイルの幅は芯材12の幅より大きく、層13,14はそれらが芯材12の長手方向側面に突出するように配置される。
【0048】
次に、前記プラスチック層13,14だけでなく、芯材12も共に積層されている。それらは、一組の熱した圧板、熱した圧延機、及び/又は近くに熱源を備えた圧延機に通される。輸送速度は、0.35kg/cmの圧力において、1分当たり30cmに相当する。温度は積層される層の寸法にだけでなく、用いる材料にも適応させる。例えば、約150℃にすればよい。積層工程において、固着性の層13a,14aを備えた内側層が相互に大きな領域で接触するまで、層13,14両方の突出部分は相互に接近するように対称的に変形される(図3B参照)。積層工程において、層13,14はそれによって相互にだけでなく、芯材12にも堅固に固着される。
【0049】
最後に、2つのプラスチック層13,14によって構成され、積層化された被加工物の外側部分の一部は研削によって加工される。楔形の作業エッジ15が形成されるように、プラスチック層13,14は両方とも面取りされる(図3C参照)。研削(または先鋭化)工程の結果、印刷シリンダーに対して安定して当接するように完全にまっすぐで平滑な作業エッジが得られる。
【0050】
上記の記載は、本発明に係るドクターブレードの単に2つの例に関連するものである。しかしながら、これらの例の文脈におけるものとは違った、ドクターブレードの様々な性質または形態を選択してもよい。例えば、相対的な寸法だけでなく完全な寸法(幅、厚さなど)は、特定の利用に適応するように変えてもよい。ドクターブレードの形状、特にエッジ領域の形状は、具体的な利用に同様に適応してもよい。同様に、ドクターブレードの内部及び外部構成材の双方のための材料は、異なるように選択してもよい。用いられる材料及びそれらの寸法に基づいて、上述の積層工程を特徴づける変数が使用されるべきである。プラスチック層を芯材及び相互に接着する別のタイプの工程を用いることも可能である。
【0051】
2つのプラスチック層は、例えば、層の1つの密度または硬さが、他の層のそれぞれの変数とは異なって選択される場合、異なる材料で構成してもよい。さらに、追加されたプラスチックまたは金属製の層を用いることも可能であり、特に、ベース本体の領域において用いることも可能である。
【0052】
要約すると、本発明は金属製及び非金属製ドクターブレード両方の不利な点を低減または解決しながら、両方の利点を合わせ持つドクターブレードを創造することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,11 ・・・ドクターブレード
1a,11a ・・・ベース本体
1b,11b ・・・転移領域
1c,11c ・・・ブレード領域
2,12 ・・・芯材
3,4,13,14 ・・・プラスチック層
5,15 ・・・作業エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な細長いベース本体(1a;11a)と、
前記ベース本体(1a;11a)の長手方向側面の一方に形成された作業エッジ(5;15)を備えたブレード領域(1c;11c)と、
少なくとも一部がプラスチック材料(3,4;13,14)から形成されたブレード領域(1c;11c)と、
プラスチック材料(3,4;13,14)によって形成された作業エッジ(5;15)と、
補強されたプラスチック材料(2,3,4;12,13,14)によって形成されたベース本体(1a;1a)とを具備し、凹版の表面からインクと被覆物を調量するためのドクターブレードであって、
前記ベース本体(1a;11a)の対向する主外側面は、第1材料から形成されたプラスチック層(3,4;13,14)と、前記プラスチック層(3,4;13,14)間に設けられた第1材料よりも高い剛性を持つ第2材料から形成された少なくとも1つの内側層(2;12)とによって構成されていることを特徴とするドクターブレード(1;11)。
【請求項2】
前記第2材料が金属製である請求項1に記載のドクターブレード。
【請求項3】
前記ブレード領域(1c;11c)の厚さがベース本体(1a;11a)の厚さよりも薄い請求項1または2に記載のドクターブレード。
【請求項4】
前記ブレード領域(1c;11c)全体がプラスチック材料(3,4;13,14)によって形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のドクターブレード。
【請求項5】
前記内側層(2;12)がプラスチック層(3,4;13,14)に堅固に固着されている請求項1から4のいずれか一項に記載のドクターブレード。
【請求項6】
前記プラスチック層(3,4;13,14)が内側層(2;12)に堅固に固着されている請求項5に記載のドクターブレード。
【請求項7】
前記プラスチック層(3,4;13,14)と内側層(2;12)とが共に積層されている請求項6に記載のドクターブレード。
【請求項8】
前記プラスチック層(3,4;13,14)が作業エッジ(5;15)に隣接するベース本体(1a;11a)の長手方向側面に突出し、かつ、プラスチック層(3,4;13,14)が突出領域において共に接合されている請求項1から7のいずれか一項に記載のドクターブレード。
【請求項9】
前記接合されたプラスチック層(3,4;13,14)は、作業エッジ(5;15)を備えたブレード領域(1c;11c)を構成する請求項8に記載のドクターブレード。
【請求項10】
プラスチック層(3,4;13,14)は延伸されたポリエステルから構成される請求項1から9のいずれか一項に記載のドクターブレード。
【請求項11】
各プラスチック層(3,4;13,14)の厚さは、総計が少なくとも内側層(2;12)の厚さに達する請求項1から10のいずれか一項に記載のドクターブレード。
【請求項12】
前記各プラスチック層(3,4;13,14)の厚さが0.1〜0.5mmの範囲であり、好ましくは0.15〜0.4mmの範囲であり、かつ、内側層(2;12)の厚さが0.05〜0.3mmの範囲であり、好ましくは0.1〜0.25mmの範囲である請求項11に記載のドクターブレード。
【請求項13】
a) 少なくとも1つの内側層を持つ平坦で細長い芯材(2;12)を設ける工程と、
b) プラスチック層(3,4;13,14)が芯材(2;12)の長手方向側面に突出するように、2つのプラスチック層(3,4;13,14)を芯材(2;12)の対向する主表面に配置する工程と、
c) プラスチック層(3,4;13,14)を芯材(2;12)に堅固に固着させる工程と、
d) プラスチック層(3,4;13,14)を突出領域において共に固着させる工程と、
を具備するドクターブレード(1)の製造方法。
【請求項14】
プラスチック層(3,4;13,14)は、積層法によって共に接合されるとともに、芯材(2;12)に固着される請求項13に記載のドクターブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2010−501376(P2010−501376A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525883(P2009−525883)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000467
【国際公開番号】WO2008/025172
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509058324)デートワイラー・スイステック・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】