説明

ドットパタ―ン出力装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はベクトルデータに基づいて、ドットパターンを出力するドットパターン出力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、文字記号情報と、図形情報とを一枚の記録紙上に表わすことがしばしば望まれる。この場合の図形情報としては、一般図形のみならず、枠線、罫線等の他、商標等の予め定められた特定のパターンのフォーム情報が含まれる。この様な場合予め図形、例えばフォーム等が記録されている記録紙上に文字記号情報の記録を行う方法が考えられる。しかしながら、この方法では、多数の図形、例えばフォームの種類に合った多種類の記録紙を予め準備しなければならない。その為、保管すべき記録紙の種類が増加せざるを得ず、又、フォームが変わる毎にいちいち記録紙を交換する手間が必要となる欠点があった。
【0003】また、例えば電子計算機の出力に、予め文字情報に加えて、特殊記号が連続したものとみなしたフォーム情報を定義しておいて、文字情報と図形情報とを一つの記録紙に記録する方法もある。この場合、図形情報はそれぞれ別個に処理され、定義されたフォーム情報が順次に記録されるようになっている。このように、図形情報を特殊記号が連続したフォーム情報とみなすことにより、ハードウエアが大型複雑とはならないので、そのコストは比較的安価であると共にデータ転送時間が短くてすむといった利点がある。しかしながら、あらゆる図形をフォーム情報とみなすためのソフトウエアが膨大となり、またそのために使用可能な電子計算機が自ずと制限されてしまうといった欠点がある。
【0004】
【目的】本発明の目的は、ベクトルデータに対応するドットパターンの生成の処理に並行して、次の出力すべきドットパターンに対応するベクトルデータを読み出しておくことにより、高速な出力処理を行えるドットパターン出力装置を提供することにある。
【0005】
【実施例】以下図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0006】図1は、本発明による記録装置が応用され得るレーザビーム形記録装置の構成を示す斜視図である。図において、レーザ発生器1から発生されるレーザビームLは、印加電気信号に応じて透過光量が制御される光変調器2を介して回転多面鏡3に照射される。この回転多面鏡3はモータ4により、一定速度で矢印Rの方向に駆動されて回転している。そのため、回転多面鏡3によって反射されたビームは、1つの直線上を繰り返し走査する如く偏向される。この反射ビームはレンズ5で収束された後、感光性ドラム6の表面上に照射される。
【0007】したがって、光変調器2に、変調信号として、例えば画像信号を与えると共に、モータ4を駆動し、そして感光性ドラム6をS方向に駆動することにより、ドラム6の表面上には所望の画像を得ることができる。
【0008】なお、感光性ドラム6はセレンあるいは硫化カドミウム等よりなる光導電性物質を表面に形成している。ビーム照射による静電潜像を形成して、トナーによりこれを現像する。しかる後、普通紙に転写し、さらに定着を行うことによって、普通紙上に印刷された画像を得ることができる。
【0009】このような印刷プロセスは、電子写真において既に広く知られているものであるから、その詳細は省略する。
【0010】図2は本発明による記録装置に用いられる信号形成回路の一具体例を示すブロック図である。この信号形成回路によって得られる電気信号を変調信号として、図1に示したレーザビーム形記録装置の光変調器2に印加する。それにより、文字情報と図形情報とを含む静電潜像が感光性ドラム6の表面上に形成されることとなる。
【0011】図2において、文字処理部20は、文字情報の読み取りおよび処理に関する系である。また、図形処理部25は、図形情報の読み取りおよび処理に関する系である。これら文字処理部20と図形処理部25とはそれぞれ独立に動作しており、単にその出力が加算されるのみであるから、両処理部では全く別個のコードを用いることもでき、また混合使用が可能である。
【0012】インターフェース装置27には、例えば電子計算機等の情報源(図示せず)から、EBICDIC,ASCII等のコード信号で表される記録すべき文字情報および図形情報が入力される。
【0013】このように入力された文字情報の記録について説明する。第1記憶装置31は、例えば、大容量のシフトレジスタあるいはランダムアクセスメモリで構成でき、所定の記憶容量、例えば、A4の記録紙1頁に相当する情報(約9Kバイト)を記憶するに十分なる記憶容量を有するものとする。この記憶装置31に、インターフェース装置27を介して、文字情報のみが順次記憶される。
【0014】次いで、記録紙への記録の開始が指示されると、記憶装置31に記憶された文字情報の読み出しが指示されることとなり、この記憶装置31から読み出しが開始される。このようにして読み出された文字情報は、文字発生器33に供給される。また、文字を形成する走査線番号を計数する走査線計数器35から走査信号37が、文字発生器33に供給される。それにより、走査信号37で指定される文字の指定走査線上のドット出力を、並列の複数ビットとして表すドット信号39が、シフトレジスタ41に供給される。
【0015】いま、図3に示す如く、文字Aが9本の走査線によって描かれるものとする。Aのコード信号がまず入力され、そして第1走査線という情報が文字発生器33に印加される。すると、文字発生器33からは7ビットで0011100のドット信号39が並列的に発生され、7ビット以上を有するシフトレジスタ41の記憶要素にそのまま記憶される。
【0016】そこで、図1にて示した記録媒体(感光性ドラム6)上を走査するビームと同期して、クロック発生器43から一定周波数のクロック信号45がシフトレジスタ41に供給される。これにより、図3に示す如く、C1,C2,C3,…と順次にドット出力が得られる。
【0017】このようにしてある文字のある走査線に関するドット出力の読み出しが終了したならば、記憶装置31に次の文字の読み出しを指示し、そして読み出された文字情報を文字発生器33に印加する。なお、走査線番号はビームが1つの走査を完了するまでは変化していないので、前の文字の場合と同じ走査線番号を表す走査信号37が印加される。図3に示した文字Aの場合と同様に、シフトレジスタ41に並列7ビットのドット信号39が供給され、クロック信号45に応じて順次に読み出される。
【0018】このようにしてある行の情報の読み出しが完了したならば、次の行を構成する文字情報の読み出しを繰り返す。ただし、この場合は第2番目の走査線に関する読み出しであるので、走査線計数器35からは第2走査線を示す走査信号37が文字発生器33に印加される。
【0019】図3に示す文字は9走査線により構成されている例であるから、1行の走査に基づく読み出しを9回繰り返すことにより、文字を構成する全ての記録情報の読み出しが完了する。なお、走査線計数器35は、ある行についての記録情報の読み出しが完了する毎にリセットされて、走査信号37によって表される走査線番号は更新される。
【0020】次いで、図形情報の記録のための図形処理系統について説明する。図形処理部25内の第2記憶装置51は、例えば大容量のシフトレジスタまたはランダムアクセスメモリで構成でき、所定の記憶容量、例えばベクトル本数5,000本程度に相当する情報(約32Kバイト)を記録するのに十分な容量を有するものとする。
【0021】インターフェース装置27で得られるEBICDIC,ASCII等のコード信号から文字情報を除去したコード信号、つまり図形情報が第2記憶装置51に順次に記憶される。なお、この図形情報は通常コード化されたベクトルデータとなっている。
【0022】図4は、例えば電子計算機から入力されるコード列の一例を示す構成図である。これによってコード化されたベクトルデータを示す。例えば、指定可能な点がX方向,Y方向共に4096点であれば、コード信号が例えばASCIIコードである場合、入力されるコード列は図4に示す如く、5バイトのデータ列からなる。この5バイトのコード列によって始点が指定され、次の5バイトのコード列によって終点が指定されて、1本のベクトルを描くことができる。
【0023】再度図2を参照するに、記録媒体への記録の開始が指示されて、記憶装置51からの図形情報の読み出しが制御器53によって命令されることとなり、記憶装置51からの読み出しが開始される。このようにして読み出された図形情報は、コード解読器55および第1レジスタ部57にそれぞれ供給される。コード解読器55は、図4に示した各バイトのタグビットまたはコード信号中の機能コード(図示せず)を参照して、始点(X1 ,Y1 )のデータをレジスタ部57のX1レジスタ571,Y1レジスタ573に格納する。次の5バイトの終点(X2 ,Y2 )のデータを、X2レジスタ575,Y2レジスタ577にそれぞれ格納する。記録用紙を領域毎に分割したi−1,i,i+1領域を図5に示す。従って、ベクトルデータの終点データの最後のバイトが格納された時点において、そのベクトルが図5に示すi領域を含んでいるか否かの判定が比較器59にて行われる。図5の「ロ」に示されるベクトルのように、記録する必要のあるi領域を含まない場合、制御器53によって、終点データがレジスタ部57内のX2レジスタ575,Y2レジスタ577からそれぞれX1レジスタ571,Y1レジスタ573に移動する。そして、X1レジスタ571,Y1レジスタ573に以前に格納されていた始点データを除去し、記憶装置51から次のデータ列をX2レジスタ575,Y2レジスタ577に格納する。すなわち、i領域に相当する記録要素への記録動作は行われない。
【0024】また、レジスタ部57に格納されたデータで表されるベクトルが、図5の「イ」、「ハ」のようにi領域を含む場合、直線補間器61,63の動作状態を示すフラグ保持器65内のビジーフラグを調べ、そのビジーフラグが動作状態ならば制御器53が待機状態となり、記憶装置51からの読み出しが中止される。ところでビジーフラグが非動作状態を示しているならば、制御器53は、レジスタ部57の内容を、第2レジスタ部67に移し、そしてフラグ保持器65にビジーフラグを立てる。これにより、両直線補間器61,63の動作が開始されるのだが、レジスタ部57に格納されたデータで表されるベクトルが、図5の「ロ」のようにi領域を含まない場合は、記憶装置51から次のデータ列の読み出し動作が開始される。以上の動作が順次繰り返される。コード解読器55が読み出されたデータの中からデータ終了コードを検出したならば、制御器53によって記憶装置51からの図形情報の読み出しの終了を指令すると共に、記憶装置51の最初のデータを再度読み出し可能なように準備する。
【0025】走査線計数器35がi+1領域を指示すると、制御器53は再び記憶装置51からの図形情報の読み出しの開始を指令する。
【0026】ところで、i領域を含むベクトルデータが第1レジスタ部57から第2レジスタ部67に格納された後、制御器53から直線補間器61,63に動作の開始が指示される。すると、X直線補間器61の出力パルスは、第2レジスタ部67のXレジスタ671とX可逆計数器673とにそれぞれ格納されているデータの大領を判別する大小判別器69の出力に従い、X可逆計数器673の計数状態を最高速度で増加あるいは減少させる。
【0027】なお、両直線補間器61,63は、例えばデジタル形微分解析器で構成できる。そのように構成された一方のY直線補間器63の出力パルスは、大小判別器26の出力に従い、第2レジスタ部67のY可逆計数器677の計数状態を最高速度で増加あるいは減少させる。それにより、Y可逆計数器677の出力によって表されるベクトルのY方向の位置がi領域内に入ると、領域判別器73が動作する。そして、両直線補間器61,63に入力されているクロック信号75は、記憶要素への記憶動作をするため計数器77によりカウントダウンされる。なお、計数器77からの出力信号の周波数は、両記憶装置81,83をアクセスするに適した周波数に決められる。
【0028】第2レジスタ部67のX可逆計数器673,Y可逆計数器677の出力により指定される記録位置に相当する記憶装置81,83のうちいずれか一方の記憶要素への記憶動作が行われる。つまり、記憶制御器85により、レジスタ部67のドット制御レジスタ679に格納されていた、例えば直線,ドット,ダッシュの情報内容に応じて、ベクトルデータがドットに分解され、切り換えスイッチ86を介して指定される記憶装置に書き込まれる。このように記憶要素に記憶動作が必要なときに演算速度を変えることにより、取り扱えるベクトル本数を増加させることができる。
【0029】Y可逆計数器677の出力が、i領域から、加算でi+1領域あるいは減算でi−1領域を指示すると、領域判別器73により切換スイッチ87が作動される。そのため、両直線補間器61,63の演算が中止し、そしてフラグ保持器65のビジーフラグがリセットされる。
【0030】また、Y可逆計数器677がi領域内にあっても、Xレジスタ671とX可逆計数器673,Yレジスタ675とY可逆計数器677の数値内容がそれぞれ等しくなると、両大小判別器69,26によって両直線補間器61,63の演算動作が中止され、そしてフラグ保持器65のビジーフラグがリセットされる。
【0031】記憶装置81および83は、その一方が書き込み動作を行っているとき、他方は読み出し動作を行う。両記憶装置81,83は記憶装置51に格納されるベクトルデータを処理するのに十分な時間に対応する記憶容量を有する。例えば、ほぼ走査線数64〜128ライン分に相当する画像記憶容量とする。
【0032】両記憶装置81,83から読み出されたドット信号は、切換スイッチ89を介して、シフトレジスタ91に並列的に供給される。なお、シフトレジスタ91はシフトレジスタ41と同様な構成である。したがって、クロック発生器43からクロック信号をシフトパルスとして、シフトレジスタ91に印加することにより、文字情報系統で説明したのと同様にして、図形情報のドット信号が順次得られる。このような動作を走査線計数器35の指示によって領域毎に繰り返す。つまり、N分割された領域を有する記録紙ならば、N回同一動作を繰り返すことによりベクトルデータの処理が可能となる。
【0033】したがって、両記憶装置31,51にそれぞれ情報が記憶された状態で、文字処理部20および図形処理部25を同時に読み出し駆動することにより、シフトレジスタ41には文字情報のドット信号が、そしてシフトレジスタ91には図形情報のドット信号がそれぞれ同時に得られる。これら両ドット信号を混合器93によって混合した後、例えば図1に示した光変調器2のドライバ95に供給する。それにより両ドット信号に応じてレーザビームLが変調される結果、記録媒体たる感光性ドラム6の表面上には、文字情報と図形情報とが同時に潜像を形成するので、これら両情報が同時に記録され得る。
【0034】なお、開閉スイッチ101,103を、シフトレジスタ41と混合器93との間、シフトレジスタ91と混合器93との間にそれぞれ設けることにより、スイッチ101を開放して図形情報のみ、またスイッチ103を開放して文字情報のみ記録することもできる。
【0035】上述した実施例においては、レーザビームにより記録媒体上を走査して行う記録装置に関して説明したが、本発明はかかる記録装置に限られることなく、CRTプリンタ,マルチスタイラスプリンタ,ドットマトリックスプリンタ等の記録装置にも応用可能である。その場合、それらプリンタ等に整合するように、図2のドライバ95を構成すればよい。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ベクトルデータに対応するドットパターンの生成の処理に並行して、次の出力すべきドットパターンに対応するベクトルデータを読み出しておくことにより、高速な出力処理を行えるドットパターン出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーザビーム形記録装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明における信号形成回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】記録パターンの説明図である。
【図4】電子計算機から入力されるコード列の説明図である。
【図5】記録用紙の分割とベクトルとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 レーザ発生器
2 光変調器
3 回転多面鏡
6 感光性ドラム
20 文字処理部
25 図形処理部
31,51,81,83 記憶装置
33 文字発生器
57,67 レジスタ部
61,63 直線補間器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 出力すべき図形を表す順位づけられた開始点および終了点を表す座標点データを含むベクトルデータを記憶する第1記憶手段と、前記第1記憶手段から読み出される1つの図形を表すベクトルデータを記憶する第2記憶手段と、前記第2記憶手段に記憶されたベクトルデータに対応するドットパターンを、複数の走査線番号に対応する出力領域に出力すべきか否かを前記ベクトルデータの座標点データと前記出力領域の走査線番号とに基づいて判定する判定手段と、前記判定手段によって出力すべきと判定されたベクトルデータを記憶する第3記憶手段と、前記第3記憶手段に記憶されたベクトルデータに基づき直線補間を行いドットパターンを生成する生成手段と、前記生成手段により生成されるドットパターンの内、前記出力領域に対応する部分であるか否かを前記ドットパターンの座標点データと前記出力領域の走査線番号とに基づいて判別する判別手段と、前記判別手段により対応する部分であると判別されたドットパターンを記憶する第4記憶手段と、前記第4記憶手段に記憶されたドットパターンを出力する出力手段と、前記第1記憶手段からのベクトルデータの読み出しを制御する制御手段であって、前記生成手段による1つの図形を表すベクトルデータに対応するドットパターンの生成の処理と並行して、前記判定手段が出力すべきと判定しない場合、次のベクトルデータを前記第1記憶手段から読み出す制御手段とを有することを特徴とするドットパターン出力装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【特許番号】第2505362号
【登録日】平成8年(1996)4月2日
【発行日】平成8年(1996)6月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−31904
【分割の表示】特願昭55−125314の分割
【出願日】昭和55年(1980)9月11日
【公開番号】特開平6−43855
【公開日】平成6年(1994)2月18日
【審判番号】平7−4492
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開昭55−33203(JP,A)
【文献】特開昭51−62617(JP,A)