説明

ドットラインプリンタ

【課題】
本発明は、インクリボンの局所的なインク含浸量の不均一に起因する濃淡ムラを低減して、ドットラインプリンタの印刷品質を向上させる。
【解決手段】
印刷区間での印刷密度によりリボンモータの速度を可変とし、印刷密度が低い場合はリボンモータの速度を遅く、印刷密度が高い場合はリボンモータの速度を速くすることで、インクリボンのインク含浸量の局所的なムラの発生を抑えて印刷の濃淡ムラを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリボンモータの回転速度を印刷密度により可変とするリボン制御を備えたドットラインプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術について図2、3を用いて説明する。図2、3に示すように、ドットラインプリンタでは一定周期で桁方向に往復移動するシャトル機構部により図示していないハンマピンを有するハンマ機構部1が桁方向に往復移動している。この往復運動には、ハンマ機構部1が移動しながらハンマピンの印字力を保持するプラテン12に対してインクリボン13、印字用紙11を挟んだ状態でハンマピンを駆動して印字用紙11にインクリボン13のインクを転写する印刷区間と、印刷区間が終了してハンマ機構部1の移動方向が逆転する反転区間とがあり、反転区間において紙送りモータ8を駆動力としてハンマ機構部1の上方に配置されているトラクタ7によって印字用紙11を次の印刷位置まで桁と垂直方向に搬送すると同時に、次の印刷区間での印刷データがセットされ、シャトル機構部に付設されているエンコーダ6の信号をもとに印刷区間において所定の位置でハンマピンが駆動されるようになっている。また、インクリボン13は、エンドレスのテープ状で、リボンローラ10で巻き取られながら継続的に周回している。
通常、インクリボン13は印刷区間の印刷ドット数に関わらず所定の速度で搬送されているため、一時的に印刷ドット数の多い印刷区間が存在した場合には、インクリボン13のインク含浸量が局所的に少なくなり、周回して再度、インクリボン13の同じ場所を使用したときに、他の場所に比べて転写濃度が薄くなる濃淡ムラが発生する場合があった。
そのため、リボン速度を常時監視して、所定の値より小さくなった場合に印刷を停止したり(例えば、特許文献1参照)、インクリボンへの負荷変動に対し、リボン速度の切替えタイミングを変更して印字不良の低減を図る(例えば、特許文献2参照)などが行われている。
【0003】
【特許文献1】特許公開平10−6609号公報
【特許文献2】特許公開2006−168287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、一時的に印刷密度の高い印刷区間が存在すると、インクリボンのインク含浸量が局所的に少なくなり、周回して再度インクリボンの同じ場所を使用したときに他の場所に比べてインクの濃度が薄くなる濃淡ムラが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に対し、本発明によるドットラインプリンタは、複数個の印字ハンマを有するハンマ機構部と、ハンマ機構部を桁方向に往復動させるシャトル機構部と、印字用紙を桁方向と垂直に送る紙送り機構部と、リボンカセット内に折り畳み状態で収納されハンマピン前面に沿って桁方向に走行するエンドレステープ状のインクリボンとインクリボンを搬送するローラと、ローラを駆動するためのリボンモータと、前記シャトル機構部を移動させる過程で印字ハンマの駆動回数とタイミングを直前のシャトル機構部の移動方向が逆転する反転区間において上位装置から受信したデータより生成するマイクロコンピュータとを備え、前記マイクロコンピュータにより生成されたタイミングに従いハンマピンを適時駆動しながら反転区間でハンマピンの上流側または下流側に配置されたトラクタにより次の印刷位置まで印字用紙を搬送することで、連続的にドットマトリックスの形で文字、図形等を印刷するドットプリンタであって、反転区間内において前記マイクロコンピュータにより生成された印字ハンマの駆動回数により前記リボンモータの回転速度を変化させることを特徴とする。
また、印字ハンマの駆動回数が増大するに従いリボンモータの回転速度が速くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドットラインプリンタでは、インクリボンのインク含浸量の局所的なムラの発生を抑えて印刷の濃淡ムラを低減させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。まず、本発明のドットラインプリンタの構成について説明する。図2において、図示していないハンマピンが搭載されているハンマ機構部1は、滑り軸受けを有するブッシュ2を介して2本のクランクアーム3からなるシャトル機構部に連結され、クランクアーム3の回転中心に配置されたシャトルモータ4が一定速度で回転駆動されることで往復移動している。なお、他方のクランクアーム3はカウンタウェイト5と連結しておりカウンタウェイト5をハンマ機構部1と逆位相で往復移動するようにすることで機器振動の低減を図っている。
シャトルモータ4の回転軸には、ハンマ機構部1の位置を検知するためにスリットが設けられたエンコーダ6が付設されており、スリットの1箇所を他と異なるスリット幅とすることで、幅の異なるスリットが通過してからの経過時間とスリット数によりハンマ機構部1の位置および移動方向を認知することができるようになっている。
また、図3において、エンドレステープ状のインクリボン13は、リボンカセット9に収納されていて、その一部がリボンガイド14を経由してハンマ機構部1とプラテン12の間を通り、図示していないリボンモータを駆動源とするリボンローラ10により巻き取られながら周回している。
通常、ドットラインプリンタでは反転区間において、次の印刷区間での印刷データがセットされ、印刷区間で印刷データに従った印刷が行なわれる。また、リボンローラ10により搬送されるインクリボン13の速度は、反転区間でセットされる印刷データの印刷密度とは無関係に所定の速度となっている。
しかし、上記制御では、一時的に印刷密度の高い印刷区間が存在した場合、インクリボン13のインク含浸量が局所的に少なくなり、周回して再度インクリボン13の同じ場所を使用したときに他の場所に比べてインクの転写濃度が薄くなる濃淡ムラが発生する。このため、図1に示す本発明のドットラインプリンタの制御では、反転区間にセットされる印刷データの印刷密度によりインクリボン13の搬送速度を選択するようになっている。
具体的には、1〜5%、6〜10%、11〜15%、16〜25%の4段階の印刷密度に分けられ、夫々、50mm/s、75mm/s、100mm/s、125mm/sのインクリボン13の搬送速度が割り当てられている。なお、上記速度は、ハンマ機構部1の移動速度とインクリボン13の速度が継続的に一致することがなく、かつ、ハンマ機後部1の構成およびインクリボン13の搬送経路により機種毎に実験的に決められる速度である。また、25%以上の印刷密度の場合は複数回に分けて印刷を行なうことで、各々の印刷区間の印刷密度に対応したインクリボン13の周回速度を選択する制御としている。
したがって、本発明によれば、高印刷密度の印字を行なう場合に、インクリボン13が多く搬送される際の局所的なインク含浸量のムラを低減できるため、濃淡ムラが低減され、従来機器と同じ部品構成で製造原価を上げることなく印刷品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例における印刷密度とインクリボン搬送速度を示す図
【図2】本発明及び従来技術で用いられるドットラインプリンタの概略構成を示す図
【図3】本発明及び従来技術で用いられるドットラインプリンタの構成を示す図
【符号の説明】
【0009】
1はハンマ機構部、2はブッシュ、3はクランクアーム、4はシャトルモータ、
5はカウンタウェイト、6はエンコーダ、7はトラクタ、8は紙送りモータ、
9はリボンカセット、10はリボンローラ、11は印字用紙、12はプラテン、
13はインクリボン、14はリボンガイドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印字ハンマを有するハンマ機構部と、ハンマ機構部を桁方向に往復動させるシャトル機構部と、印字用紙を桁方向と垂直に送る紙送り機構部と、リボンカセット内に折り畳み状態で収納されハンマピン前面に沿って桁方向に走行するエンドレステープ状のインクリボンとインクリボンを搬送するローラと、ローラを駆動するためのリボンモータと、前記シャトル機構部を移動させる過程で印字ハンマの駆動回数とタイミングを直前のシャトル機構部の移動方向が逆転する反転区間において上位装置から受信したデータより生成するマイクロコンピュータとを備え、前記マイクロコンピュータにより生成されたタイミングに従いハンマピンを適時駆動しながら反転区間でハンマピンの上流側または下流側に配置されたトラクタにより次の印刷位置まで印字用紙を搬送することで、連続的にドットマトリックスの形で文字、図形等を印刷するドットラインプリンタであって、反転区間内において前記マイクロコンピュータにより生成された印字ハンマの駆動回数により前記リボンモータの回転速度を変化させることを特徴とするドットラインプリンタ。
【請求項2】
前記請求項1記載のドットラインプリンタであって、印字ハンマの駆動回数が増大するに従いリボンモータの回転速度が速くなることを特徴とするドットラインプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−119757(P2009−119757A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297374(P2007−297374)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】