説明

ドット形成方法及びドット形成装置

【課題】 媒体に十分密着したドットを形成する
【解決手段】 媒体の表面に光透過層を形成することと、前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成することと、前記ドット及び光透過層に光を照射することと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドット形成方法及びドット形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の光により硬化するインクを用いて、インク非吸収性材料面に印刷をする方法が提案されている。このような印刷方法において、光硬化性記録用インクの組成物中に界面活性剤を含有させ表面張力を調整することで、インクを塗り重ねてもはじきが発生せず、良好なカラー画像を形成する方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−181801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光硬化性インクを用いたインクジェット記録方式において、媒体上に形成されたインクドットに光を照射すると、ドットは光が当たった表面から硬化していく。
【0005】
しかし、この方法では、ドットと媒体との界面部(ドットの下面部)が硬化するのは硬化過程の最後である。そのため、完全に光硬化する前、若しくは光硬化が不十分な場合には、ドットは媒体と十分密着せず、形成された位置からずれたり、ドットの面積が広がり続けたり、ドット間でインクの混合が生じたりするといった問題があった。
本発明は、媒体に十分密着したドットを形成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体の表面に光透過層を形成することと、前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成することと、前記ドット及び光透過層に光を照射することと、を有するドット形成方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは第1実施形態の印刷領域周辺を示す概略図である。
【図3】レーザー光源を使用した場合の光の反射の様子を示す説明図である。
【図4】通常の光硬化の様子を示す説明図である。
【図5】本発明における光硬化の様子を示す説明図である。
【図6】図6Aは形成されたドットを上方向から見たときの概略図であり、図6Bは図6AのA-A断面を示す概略図である。
【図7】図7Aは格子状に形成されたドットの隙間を示す概略図であり、図7Bは千鳥格子状に形成されたドットの隙間を示す概略図である。
【図8】第2実施形態における光硬化の様子を示す説明図である。
【図9】第2実施形態の印刷領域周辺を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
媒体の表面に光透過層を形成することと、前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成することと、前記ドット及び光透過層に光を照射することと、を有するドット形成方法が明らかとなる。
このようなドット形成方法によれば、媒体(光透過層)に十分密着したドットを形成することができる。
【0010】
かかるドット形成方法であって、前記光透過層の厚さが、照射される光の波長よりも大きいことが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、確実に光透過層に光を入射させ、反射させることができる。
【0011】
かかるドット形成方法であって、前記照射される光が拡散光であることが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、光は光透過層に斜めに入射するため、その反射光によりドットの下面部に光を当てることができる。
【0012】
かかるドット形成方法であって、ドット外周上に他のドットと接触しない部分を有することが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、ドットと他のドットとの間に隙間が生じることから、ドットだけでなく光透過層にも光を照射することができる。
【0013】
かかるドット形成方法であって、互いに隣接する複数のドットで囲まれる部分に隙間が存在することが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、ドットの周囲に存在する隙間から光透過層に入射する光がより均一になり、反射光をドット下面部に当てやすくなる。
【0014】
かかるドット形成方法であって、前記光透過層を、光が照射されると硬化する液体によって形成し、前記光透過層が仮硬化されている状態で、前記ドットを形成することが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、一連のインクジェット記録動作中で、媒体に光透過層を形成することができる。
【0015】
かかるドット形成方法であって、前記媒体の前記光透過層の下に背景色層を形成することが望ましい。
このようなドット形成方法によれば、媒体が透明であることや媒体の色に関わらず、光を反射させ、また、反射光の強さを変えることができる。
【0016】
また、媒体の表面に光透過層を形成する光透過層形成部と、前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成するドット形成部と、前記ドット及び光透過層に光を照射する照射部と、を備えるドット形成装置が明らかとなる。
【0017】
===第1実施形態===
第1実施形態では、ドットを形成する記録装置としてラインプリンター(プリンター1)を例に挙げて説明する。
【0018】
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構造を示すブロック図である。
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体に文字や画像を記録(印刷)する記録装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0019】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
そして、コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
なお、「記録装置」とは、媒体に文字や画像を記録する装置を意味し、例えばプリンター1が該当する。
【0020】
本実施形態のプリンター1は、紫外線(以下、UV)を照射することによって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、UVインクとして、透明インク(CL)及び、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のカラーインクを用いて印刷を行う。
【0021】
本実施形態のプリンター1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づいて各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0022】
<搬送ユニット>
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bと、ベルト24とを有する(図2A、図2B)。不図示の搬送モータが回転すると、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙ローラー(不図示)によって給紙された媒体は、ベルト24によって印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。印刷可能な領域を通過した紙Sはベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の紙Sはベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0023】
<ヘッドユニット>
ヘッドユニット30は、媒体にUVインクを吐出するためのものである。なお、本実施形態ではUVインクとして、光透過層を形成するための透明インクと、画像を形成するためのカラーインクを用いる。
ヘッドユニット30は搬送中の媒体に対して各インクを吐出することによってドットを形成し、画像を媒体に印刷する。本実施形態のプリンター1はラインプリンターであり、ヘッドユニット30の各ヘッドは媒体幅分のドットを一度に形成することができる。なお、図2A及び図2Bでは、搬送方向の上流側から順に、透明なUVインクを吐出する透明インクヘッドCL、ブラックのUVインクを吐出するブラックインクヘッドK、シアンのUVインクを吐出するシアンインクヘッドC、マゼンダのUVインクを吐出するマゼンダインクヘッドM、及び、イエローのUVインクを吐出するイエローインクヘッドYの各ヘッドが設けられている。以下、透明インクを吐出するヘッドのことを透明インク用ヘッドといい、カラーインクを吐出するヘッドのことをカラーインク用ヘッドともいう。
【0024】
<照射ユニット>
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクのドット(インクドット)に向けてUVを照射するものである。ヘッドユニット30の各ヘッドにより媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からUVの照射を受けることにより硬化する。
照射ユニット40は仮硬化用照射部41、及び本硬化用照射部42を備えている。
仮硬化用照射部41は、形成されたドットを仮硬化させるためのUVを照射する。仮硬化とは、形成されたドット同士が接触してにじむのを防止するために行う硬化のことをいう。さらに、本実施形態においては、ドットと光透過層との界面部分(ドットの下面部分)を硬化させ、カラードットを光透過層に十分密着させるために行う硬化のこともいう。
光透過層及びドット界面部の硬化の詳細については後で説明する。
【0025】
本実施形態において、仮硬化用照射部41は、UV照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備える。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
仮硬化用照射部41は、ヘッドユニット30の透明インク用ヘッド、及びKCMY各カラーインク用ヘッドの搬送方向の下流側にそれぞれ設けられる(図2A、図2B)。
【0026】
仮硬化用照射部41の媒体幅方向の長さは媒体幅以上である。
【0027】
本実施形態における照射光は拡散光であることが要求される。図3に示すように、光透過層へ入射する光が媒体面と鉛直な成分のみを有する場合、その反射光も鉛直な成分のみを有するため、ドットと光透過層との界面部(ドットの下面部)には当たらない。そのため、ドットの下面部は硬化せず、光透過層上にドットを密着させることはできないからである。したがって、本実施形態では光透過層に斜めに入射する成分を有する光が必要であり、レーザーのように指向性が高い光は光源として適さない。
【0028】
本硬化用照射部42は、媒体上に形成されたドットを本硬化させるためのUVを照射する。本実施形態において本硬化とは、ドットを完全に固化させるために行う硬化のことである。
本硬化用照射部42は、UV照射の光源として、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を備えている。
本硬化用照射部42は、搬送方向の最も下流側に位置する仮硬化用照射部41の下流側に設けられる(図2A、図2B)。仮硬化用照射部41によって仮硬化され、光透過層上に密着したカラーインクドットを完全に固化させるためである。
本硬化用照射部42の媒体幅方向の長さは媒体幅以上である。
【0029】
なお、透明インク用ヘッド及び、透明インクドットを硬化させるために設置される仮硬化用照射部41をまとめて光透過層形成部という(図2A、図2B)。同様に、KCMYの各色カラーインク用ヘッドと、カラーインクドットを硬化させるために設置される照射部41、42をまとめてドット形成部という(図2A、図2B)。
また、光透過層形成部とドット形成部は、必ずしも図2Aのように同一の搬送ライン上に並んでいる必要はなく、光透過層形成工程とドット形成工程を異なる搬送ラインで行うことも可能である(図2B)。
【0030】
<検出器群>
検出器群50には、ロータリー式エンコーダー(不図示)や、紙検出センサー(不図示)などが含まれる。ロータリー式エンコーダーは上流側搬送ローラー23Aや下流側搬送ローラー23Bの回転量を検出する。ロータリー式エンコーダーの検出結果に基づいて媒体の搬送量を検出することができる。紙検出センサーは給紙中の媒体の先端の位置を検出する。
【0031】
<コントローラー>
コントローラー60は、プリンター制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60はインターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62はプリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63はCPU62のプログラムを格納する領域や作業領域を確保するためのものであり、RAM・EEPROM等の記憶素子を有する。
CPU62はメモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0032】
<印刷動作について>
プリンター1がコンピューター110から印刷データを受信すると、コントローラー60は、まず、搬送ユニット20によって給紙ローラー(不図示)を回転させ、印刷すべき媒体をベルト24上に送る。媒体はベルト24上を一定速度で停まることなく搬送され、ヘッドユニット30、照射ユニット40の各ユニットを通過する。
【0033】
具体的には、まず、ヘッドユニット30の透明インク用ヘッドCLから透明インクを吐出させ、媒体上に透明インクドットの層を形成する。そして、照射ユニット40の仮硬化用照射部41からUVを照射して透明インクドットを硬化させ、媒体表面に光透過層を形成する。光透過層は、カラーインクドットとのはじきを防止するために、カラーインク吐出の前には完全に硬化させない方が望ましい。なお、仮硬化用照射部41の照射エネルギーは、本硬化用照射部42の照射エネルギーよりも小さく設定されている。すなわち、媒体の被照射面における単位面積当たりの照射強度と照射時間の積が小さく設定されている。さらに、各仮硬化用照射部41のうち、光透過層形成部の仮硬化用照射部41よりも、ドット形成部の仮硬化用照射部41の照射エネルギーをより小さく設定することもできる。ドット形成部の仮硬化用照射においては、光透過層で反射した照射光も利用して効率よい硬化が可能であるため、少ないエネルギーで硬化できるからである。
また、本硬化用照射部42の照射エネルギーは、照射後の印刷物が利用に供されるのに適切な程度にインクが硬化されているよう設定されている。
【0034】
次に、カラーインク用ヘッドからカラーインクを吐出させ、前記光透過層の上にカラーインクドットを形成した後、照射ユニット40の仮硬化用照射部41からUVを照射する。これにより、カラーインクドットの表面を仮硬化させ、ドット同士のにじみを防止すると同時に、光透過層に入射した光の反射光によりドットと光透過層との界面部(ドットの下面部)を硬化させ、ドットを光透過層に密着させる。
この動作をKCMY各色について繰り返した後、本硬化用照射部42からUVを照射して、各色カラードットを完全に硬化させる。こうして媒体に画像が印刷される。
最後にコントローラー60は、画像の印刷が終了した媒体を排紙する。
【0035】
<ドットと光透過層の界面部の硬化について>
図4に、比較例として、光硬化性インクを用いた通常のインクジェット印刷におけるドット硬化の様子を示す。
媒体上に形成されたドットに対して、照射ユニット40の仮硬化用照射部41からUVが照射されると、UVに曝された部分のドット表面が硬化する。この時、ドット内部はまだ硬化していないが、外部表面が硬化しているので、形成されたドットの形状は保たれる。しかし、ドットと媒体との界面(ドットの下面部)は硬化していないため、ドットと媒体との密着度は低く、本硬化前であれば、ドットの位置がずれてしまう可能性もある。
【0036】
次に、図5に示す実施形態について説明する。実施形態において、ドットは媒体上に直接形成されるのではなく、媒体の表面に形成された光透過層の上に形成される。
光透過層上に形成されたドットは、比較例の場合と同様に、仮硬化用照射部41から照射されたUVにより表面が硬化される。さらに、図5の場合では、仮硬化用照射部41から照射されたUVの一部は、光透過層内に入射する。入射したUVは光透過層内を進み、媒体面で反射し、再び光透過層内を進み、ドットと光透過層との界面(ドットの下面部)に当たる。これにより、ドットの下面部が光硬化され、該ドットは光透過層に密着する。
【0037】
実施形態では、ドットだけではなく光透過層の表面にもUVが照射される必要がある。光透過層がドットで埋め尽くされている状態では、UVが光透過層に入射しないため、ドットと光透過層との界面部にも当たらず、該界面部を硬化させることができないからである。
【0038】
ここで、鉛直上方(照射ユニット側)から、媒体に形成されたドットを見た場合、ドットの外周上に他のドットと接触しない部分を有するならば、UVを光透過層へ入射させることができる。ドットの外径が最大となる平面においては、隣接するドット同士が接触する可能性が最も高くなる。したがって、図6Aに示すように、ドットの外周部に他のドットとの非接触部分が一箇所でもあれば、その部分と他のドットとの間には隙間が存在することになる。このような隙間があれば、図6Bのように、照射されたUVの一部はその隙間を通って必ず光透過層へと入射する。
【0039】
さらに、UVをなるべく均一に光透過層に入射させ、ドットの界面部に当てるためには、互いに隣接する複数のドットで囲まれる部分に、UVが通過するための隙間が存在すればよい。例えば、格子状にドットが形成される場合(図7A)は、隣接する4つのドットに囲まれる領域に隙間ができる。UVがその隙間を通過して光透過層へと入射すれば、媒体面で反射したUVによりドットと光透過層との界面部を硬化させることができる。同様に、ドットが千鳥格子に形成される場合(図7B)は、隣接する3つのドットで囲まれる領域に隙間が存在すれば、UVが光透過層に入射する。
【0040】
<光透過層について>
光透過層は、仮硬化用照射部41から照射されたUVを反射させ、反射光を光透過層上に形成されたドットの下面部に当てることにより、ドットの下面部を仮硬化させる。
本実施形態において、光透過層は媒体表面に透明インクを吐出し、硬化させることにより形成される。光透過層上にカラーインクドットを形成することから、カラーインク用ヘッドからカラーインクを吐出する前に、仮硬化用照射部41により、透明インクドットを硬化させ、光透過層を形成しておく。この場合、透明インクによるカラーインクのはじきを防止するため、透明インクドットを本硬化させない方が望ましい。
【0041】
光透過層はUV等の光を入射させ、反射させる必要がある。そのため、光透過層の厚さtは、入射光の波長λよりも大きくする必要がある(t>λ)。
例えば、UVの波長を395nmとすると、光透過層の厚さは395nmよりも大きくなければならない。さらにこの場合、入射光をより効率的に反射させるためには、光透過層は10μm以上の厚さであることが望ましい。
【0042】
また、光透過層はなるべく平滑であるほうがよい。光透過層の表面に大きな起伏があったり、光透過層の厚さが不均一であったりすると、入射光や反射光に乱れが生じ、ドットと光透過層との界面部に当たる光も不均一なものとなる。この場合、該界面部の硬化度にむらが生じ、光透過層と十分密着していないドットが発生するおそれがある。したがって、透明インクドットの形成後しばらく時間をおいて、透明インク層が平滑になってから硬化させることが望ましい。
【0043】
===第2実施形態===
第2実施形態では、図8に示すように、光透過層と媒体との間に背景色層を形成する。背景色層は、光透過層を通過してきたUVを反射させ、カラードットの下面部に当てるUVの強さを変えることで、ドットの硬化度を調整する機能を有する。背景色層形成以外の動作やプリンターの構成に関しては実施形態1と同様である。
【0044】
本実施形態は、媒体が光を反射させにくい性質を有する場合に特に有効である。例えば、媒体が透明である場合、実施形態1の方法では、光透過層を通ったUVは媒体面で反射することなくそのまま媒体をすり抜けてしまう。これでは、反射光によりドット下面部を硬化させることはできず、ドットの十分な密着性は得られない。これに対して、本実施形態であれば、背景色層により必ずUVを反射させることができる。
【0045】
<印刷動作について>
図9に第2実施形態の印刷領域周辺の外略図を示す。本実施形態では、光透過層形成部の搬送方向上流側に背景色層形成部を有する。背景色層形成部は、背景色インク用ヘッドB及び仮硬化用照射部41からなる。
背景色インク用ヘッドBは、背景色用UVインクを媒体上に吐出してドットを形成する。続いて、仮硬化用照射部41からUVを照射して背景色層を形成する。背景色層形成後は、第1実施形態と同じ操作により、光透過層を形成し、カラードットを形成する。背景色層は、前述の光透過層と同様の理由により、光透過層形成用の透明インクを吐出する前に硬化しておくが、背景色層による透明インクのはじきを防止するため、完全に硬化させない方が望ましい。
なお、背景色層形成部は、光透過層形成部及びドット形成部と同一の搬送ラインに設置する必要はなく、背景色層形成工程を他の工程と分けて行うことも可能である。
【0046】
<背景色用インクについて>
背景色層は光透過層の下に形成されることで、UVの反射面となり、また、下地としての役割も果たす。したがって、背景色層を形成するUVインクの色を適当に選択することで、背景色層がない場合とは異なる効果が得られる。
例えば、背景色層に白のUVインクを用いれば、媒体の色に関わらず、良好な反射光を得ることができ、さらに、光透過層の上に形成されるカラーインクドットの発色を良くすることもできる。
また、背景色層に光の反射率が高いメタリック系UVインクを用いれば、UVを直接媒体で反射させたときよりも強い反射光を得ることができる。これにより、カラーインクドットと光透過層との界面部の硬化度をより高くすることが可能となり、より強く、カラーインクドットを光透過層へ密着させることができる。
UVの反射光を均一にするために、背景色層はなるべく平滑な面であることが望ましい。一方、背景色層内部にはUVが入射しないため、背景色層の厚さはUVの波長とは無関係に決めることができる。
【0047】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0048】
<記録装置について>
前述の実施形態では、媒体に十分密着したドットを形成する装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体噴射記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、ラインプリンターに限らず、ヘッドユニットを取り付けたキャリッジが移動することにより印刷を行うようなシリアルプリンターを使用しても良い。
【0049】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから吐出していた。しかし、噴射する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の電磁波(例えば赤外線や可視光線など)の照射を受けることによって硬化するものであってもよい。この場合、仮硬化用照射部及び本硬化用照射部から、その液体を硬化させるための電磁波(赤外線や可視光線など)を照射するようにすればよい。
また、カラーインクの色数、カラーインク用ヘッドの配置の順番等も前述の実施形態のものには限られない。
【0050】
<光透過層について>
前述の実施形態では、媒体上に透明インクを吐出することにより、光透過層を形成していたが、光透過層の形成方法はこれに限られない。例えば、ビニルやプラスチック等の透明なフィルムを媒体に貼ることで光透過層を形成してもよいし、透明インクや熱硬化性樹脂などをローラーで媒体に塗布する方法でもよい。ただし、光透過層はUV等の光を透過させることを前提としているため、UVによる劣化が著しい物質は使用することができない。
また、光透過層を形成する透明インクは完全な無色透明でなくてもよい。光を入射させ、反射光によりドット下面部を硬化させることができるのであれば、半透明や、色が付いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 プリンター 20 搬送ユニット、
23A 上流側搬送ローラー、 23B下流側搬送ローラー、
24 ベルト、 30 ヘッドユニット、40 照射ユニット、
41 仮硬化用照射部、 42 本硬化用照射部、
50 検出器群、 60 コントローラー、 61 インターフェース部、
62 CPU、 63 メモリー、 64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の表面に光透過層を形成することと、
前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成することと、
前記ドット及び光透過層に光を照射することと、
を有するドット形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のドット形成方法であって、
前記光透過層の厚さが、照射される光の波長よりも大きいことを特徴とするドット形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドット形成方法であって、
前記照射される光が拡散光であることを特徴とするドット形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のドット形成方法であって、
ドットの外周上に、他のドットと接触しない部分を有することを特徴とするドット形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載のドット形成方法であって、
互いに隣接する複数のドットで囲まれる部分に隙間が存在することを特徴とするドット形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のドット形成方法であって、
前記光透過層を、光が照射されると硬化する液体によって形成し、前記光透過層が仮硬化されている状態で、前記ドットを形成することを特徴とするドット形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のドット形成方法であって、
前記媒体の前記光透過層の下に背景色層を形成するドット形成方法。
【請求項8】
媒体の表面に光透過層を形成する光透過層形成部と、
前記光透過層上に、光が照射されると硬化する液体でドットを形成するドット形成部と、
前記ドット及び光透過層に光を照射する照射部と、
を備えるドット形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−221497(P2010−221497A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70611(P2009−70611)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】