説明

ドライアイ障害およびブドウ膜炎を処置するための方法

ドライアイ障害およびブドウ膜炎の処置のための5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸およびアナログの局所使用が、開示される。本発明はまた、ドライアイおよびブドウ膜炎を処置するための方法に関する。本発明の方法に従って、5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸またはアナログが、患者に投与される。5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸またはアナログは、好ましくは、患者の眼に局所的に投薬される眼科用組成物において投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイ障害の処置に関し、具体的には、哺乳動物におけるドライアイおよびブドウ膜炎を処置するための5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸およびそのアナログの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ドライアイ(これはまた、乾性角結膜炎として総称的に公知である)は、毎年数百万人の米国人が罹患する一般的眼科障害である。この状態は、受胎能停止後のホルモン変化が原因で、閉経後の女性の間で特に広まる。ドライアイは、種々の重篤度で個体を冒し得る。軽度の症例において、患者は、眼瞼と眼の表面との間にある小さい塊によってしばしば引き起こされるような、灼熱感、乾燥した感覚、および持続的刺激を経験し得る。重篤な症例において、視力が、実質的に損なわれ得る。他の疾患(例えば、シェーグレン病および眼瘢痕性類天疱瘡)が、ドライアイ合併症を示す。
【0003】
ドライアイは、多数の無関係の病因から生じ得るようであるが、この合併症のすべての症状は、露出した外部表面の脱水および上記で概説される症状のうちの多くをもたらす共通の影響(これは、眼球前方の涙液膜の破壊である)を共有する(非特許文献1)。
【0004】
開業医は、ドライアイの処置に対して、いくつかのアプローチを採用している。一般的なあるアプローチは、一日中ずっと点眼されるいわゆる人工涙を使用して、眼の涙液膜を補完して安定化させることであった。他のアプローチは、涙代用物を提供するかまたは内因性涙産生の刺激を提供する、眼挿入物の使用を包含する。
【0005】
その涙代用アプローチの例は、緩衝化等張性生理食塩水溶液、溶液をより粘性にしてそれにより眼から容易には流れないようにする水溶性ポリマーを含有する水溶液の使用を包含する。涙再形成もまた、涙液膜の1つ以上の成分(例えば、リン脂質および油)を提供することによって試みられる。リン脂質組成物は、ドライアイを処置する際に有用であることが示されている。例えば、非特許文献2および非特許文献3を参照のこと。ドライアイの処置のためのリン脂質組成物の例は、特許文献1(Shahら)、特許文献2(Packman)、特許文献3(Shively)、特許文献4(Holly)、特許文献5(Holly)、特許文献6(Glonek)、特許文献7(Gresselら)、特許文献8(Korbら)、特許文献9(Glonekら)、特許文献10(Korbら)および特許文献11(Glonekら)に開示される。特許文献12(Mautoneら)は、リン脂質、噴霧剤および活性物質を含むリン脂質薬物送達系を開示する。
【0006】
別のアプローチは、人工涙の代わりに、潤滑物質の提供に関する。例えば、特許文献13(Guo)は、潤滑するリポソームベースの組成物の使用を開示し、特許文献14(Huら)は、ドライアイを処置するためのグリセリンおよびプロピレングリコールを含む組成物を開示する。
【0007】
これらのアプローチはいくらかの成功を達成しているが、それにもかかわらず、ドライアイの処置における問題が、残っている。涙代用物の使用は、一時的には効果的であるが、一般に、患者の起きている時間にわたって、度重なる適用を必要とする。患者が、その日にわたって10〜20回人工涙液を適用しなければならないことは、珍しくない。このような試みは、厄介で時間がかかるだけでなく、非常に費用がかかる可能性もある。屈折矯正手術に関連するドライアイの一過性の症状は、いくつかの症例において、手術後、6週間〜6ヶ月以上続くことが報告されている。
【0008】
主に、ドライアイに関連する症状の緩和に向けられる努力とは別に、ドライアイ状態の処置に関する方法および組成物もまた、探求されている。例えば、特許文献15(Lubkin)は、閉経後の女性のドライアイ状態を処置するための性ステロイド(例えば、抱合卵胞ホルモン)の使用を開示し;特許文献16(MacKeen)は、眼球前方の涙液膜産生を刺激するための細かく分割されたカルシウムイオン組成物の使用を開示し;特許文献17(Gresselら)は、眼球組織正常化のための1つ以上のレチノイドの極微細粒子の使用を開示する。
【0009】
いくつかの最近の文献の報告は、ドライアイ症候群を罹患する患者が、関連する眼球組織(例えば、涙腺およびマイボーム腺)において過剰な炎症の顕著な特徴を、偏って示すことを示唆する。ドライアイ患者を処置するための種々の化合物(例えば、ステロイド[例えば、特許文献18;非特許文献4;Pflugfelderら、特許文献19]、サイトカイン放出インヒビター(Yanni,J.M.ら、特許文献20)、シクロスポリンA[非特許文献5]、および15−HETE(Yanniら、特許文献21))の使用が、開示されている。
【0010】
ブドウ膜炎は、通常、前眼構造に限定される眼球内の炎症状態であり、局所的なコルチコステロイドで管理され得る。炎症プロセスは、レンズの後ろ側に広がり得、毛様体輪、硝子体腔、脈絡膜、網膜に影響を与え得る。これらの中間および後部の発現は、比較的まれであるが、視覚の病的状態に不釣り合いに寄与し、そして深刻な治療困難性を示す。全身のコルチコステロイドは、最も視力を脅かすブドウ膜炎のための処置の第1のラインの構成要素となる。これらの長期の使用は、一般的でかつ消耗性の副作用により制限される。ステロイド使用の減少を可能にする第2のラインの因子(例えば、シクロスポリンおよびアザチオプリン)は、代替のアプローチを提供する。あいにく、これらの使用は、狭い治療領域および重大な副作用によって、頻繁に制限される。
【0011】
Leeらは、化合物1および化合物2が、リポキシンAと同じくらい強力に好中球のLTB誘導性化学走性を阻害することを開示した[非特許文献6]。リポキシンAおよびその特定のアナログは、抗炎症性因子であることが報告されている(例えば、Serhanら、特許文献22を参照のこと)。特定のリポキシンアナログは、ドライアイを処置するために、特許請求されている(Gamacheら、特許文献23)。しかしながら、本発明者らの最善の見解によると、本発明の化合物は、ドライアイまたはブドウ膜炎を処置するために記載されていない。
【0012】
【化6】

【特許文献1】米国特許第4,131,651号明細書
【特許文献2】米国特許第4,370,325号明細書
【特許文献3】米国特許第4,409,205号明細書
【特許文献4】米国特許第4,744,980号明細書
【特許文献5】米国特許第4,883,658号明細書
【特許文献6】米国特許第4,914,088号明細書
【特許文献7】米国特許第5,075,104号明細書
【特許文献8】米国特許第5,278,151号明細書
【特許文献9】米国特許第5,294,607号明細書
【特許文献10】米国特許第5,371,108号明細書
【特許文献11】米国特許第5,578,586号明細書
【特許文献12】米国特許第5,174,988号明細書
【特許文献13】米国特許第4,818,537号明細書
【特許文献14】米国特許第5,800,807号明細書
【特許文献15】米国特許第5,041,434号明細書
【特許文献16】米国特許第5,290,572号明細書
【特許文献17】米国特許第4,966,773号明細書
【特許文献18】米国特許第5,958,912号明細書
【特許文献19】米国特許第6,153,607号明細書
【特許文献20】国際公開第0003705 A1号パンフレット
【特許文献21】米国特許第5,696,166号明細書
【特許文献22】米国特許第5,441,951号明細書
【特許文献23】米国特許第6,645,978 B1号明細書
【非特許文献1】Lemp,Report of the National Eye Institute/Industry Workshop on Clinical Trials in Dye Eyes,「The CLAO Journal」,(1995),volume 21,number 4,pages 221〜231
【非特許文献2】McCulley and Shine,Tear film structure and dry eye,「Contactologia」(1998)volume 20(4),pages 145〜49
【非特許文献3】Shine and McCulley,Keratoconjunctivitis sicca associated with meibomian secretion polar lipid abnormality,「Archives of Ophthalmology」(1998)volume 116(7),pages 849〜52
【非特許文献4】Marshら,Topical nonpreserved methylprednisolone therapy for keratoconjunctivitis sicca in Sjogren syndrome,Ophthalmology(1999)106(4),811〜816
【非特許文献5】Tauber,Lacrimal Gland,Tear Film,and Dry Eyes Syndromes 2,「J.Adv.Exp.Med.Biol.」(1998),438,969
【非特許文献6】Leeら,Biochemical and Biophysical Research Communications(1991),180(3),1416〜21
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ドライアイおよびブドウ膜炎を処置するための方法に関する。本発明の方法に従って、5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸またはアナログが、患者に投与される。5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸またはアナログは、好ましくは、患者の眼に局所的に投薬される眼科用組成物において投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
他に示されない限り、全ての成分の量は、%(w/v)に基づいて示される。
【0015】
本発明の方法に従って、式Iの化合物
【0016】
【化7−1】

を含む組成物は、それを必要とする哺乳動物に局所的に投与され、
ここで、式Iの化合物において、
は、C、COR、CONR、CHOR、またはCHNRであり、Rは、H、C1〜6直鎖アルキルもしくはC1〜6分枝アルキル、C3〜6シクロアルキル、またはフェニルであるか、または
は、式COのカルボン酸塩であり、Rは、Li、Na、K、もしくは式NR10111213のアンモニウム部分であり;
、Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、もしくはOCであり、但し、R、Rのうちの多くとも1つだけが、OH、COH、もしくはOCであり;
は、H、C(O)R14、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルであり;
、Rは、独立して、H、C(O)R14、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、もしくはOCであり、但し、R、Rのうちの多くとも1つだけが、OH、COH、もしくはOCであり;
、R、Rは、独立して、H、CH、C、C(O)R14、もしくはCO15であるか;または
とRとが一緒になってカルボニル基(C=O)を構成するか、またはRとRとが一緒になってカルボニル基(C=O)を構成して、それによって環状カーボネートを形成するか;または
ORとRとが一緒になって、環状エステル(ラクトン)を形成し;
10〜R13は、独立して、HもしくはC1〜6アルキルであり、各アルキル基は、必要に応じて、OH置換基もしくはOCH置換基を保有し;
14は、H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルであり;
15は、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルであり;そして
【0017】
【化7−2】

は、OR置換基が、R絶対配置またはS絶対配置:
【0018】
【化8】

を提供するために配置され得ることを示す。
【0019】
式Iの好ましい化合物は、
は、C、COR、もしくはCHORであり;
Rは、H、Na、NH、CH、C、n−C、もしくはi−Cであり;
は、H、COCH、もしくはCHであり;そして
、R、Rは、独立して、H、CH、CHCOであるか;あるいは
とRとが一緒になってカルボニル基(C=O)を構成するか、またはRとRとが一緒になってカルボニル基(C=O)を構成して、それによって環状カーボネートを形成するか;あるいは
ORとRとが一緒になって、環状エステル(ラクトン)を形成する、化合物である。
【0020】
特に、化合物1および2が好ましい。式Iの化合物1は、Biomol Research Laboratories,Plymouth Meeting,PAから市販される。式Iの他の化合物は、Leeら、Biochemical and Biophysical Research Communications 1991,180(3),1416−21に記載されるように調製され得る。
【0021】
【化9】

【実施例】
【0022】
(実施例1:ドライアイのウサギモデルにおける化合物1の保護効果)
化合物1を、ドライアイのウサギモデルにおいて評価した。ニュージーランド白ウサギ(約2.5kg;Myrtle’s Rabbitry,Thompson Station,TNから得た)を無作為に選び、1μM、10μMまたは100μMの濃度にて0.064%/BSS(登録商標)中で処方される50μlの化合物1、あるいは0.064%/BSS(登録商標)ビヒクルのいずれかで1日に2回、局所的に投与した。24時間後、ウサギを、塩酸ケタミン(30mg/kg)およびキシラジン(6mg/kg)の皮下投与によって麻酔し、各ウサギにコンコナビリン(Conconavilin)A(ConA)(300μg/30μl)または生理食塩水(30μl)の両側性の注射を与えた。環境容器(20〜30%の湿度、75℃)中に意識のある動物を配置することによって、涙腺注射の1日後に乾燥を開始した。環境への曝露の72時間後、動物を、角膜のメチレンブルー色素への曝露に対する角膜染色(より少ない染色は角膜へのより少ない損傷を示す)について評価した。このウサギを、塩酸ケタミン(30mg/kg)およびキシラジン(6mg/kg)の皮下投与によって麻酔した。縫合糸を、各々上側眼瞼および下側眼瞼に入れ、持ち上げて角膜/結膜コップを形成させた。メチレンブルー色素(1mL、蒸留水中1%)を5分間カップに添加し、200mLのBSS(登録商標)を用いた洗浄によって過剰に除去した。次いで、反対側の眼を、同じ手順を使用して染色した。ウサギを、染色手順の後すぐに安楽死させて、両眼を摘出した。角膜を分離して、角膜の9.5mmパンチを2mLのアセトン/飽和硫酸ナトリウム(7:3v/v)中に一晩置いた。抽出された色素の濃度を、λ=660ナノメートル(A660)にてその吸光度を測定することによって、分光光度的に決定した。阻害パーセントを、{1−[(A660試験項目−A660標準)/(A660BSS−A660標準)]}×100として計算し、ここで、A660試験項目は、化合物1を投与されたConA注射された眼由来の色素の吸光度であり、A660標準は、生理食塩水注射された眼由来の色素の吸光度であり、A660BSSは、0.064%エタノール/BSS(登録商標)溶液ビヒクルを投与されたConA注射された眼における色素の吸光度である。染色のより高い阻害パーセントは、損傷からの角膜のより十分な保護を示す。
【0023】
第2群の動物を、各動物の涙崩壊(tear breakup)時間(TBUT)を測定することによって、涙液膜の質について評価した。ウサギの眼球の損傷を誘導するために、上記のような同じ実験プロトコルを使用して、5μLのフルオレセインナトリウムを盲嚢に注入して、涙液膜内のフルオレセインを分散させるために、手で眼瞼をまばたきすることによって、TBUTを毎日決定した。細隙灯観察の下で、眼を開けたままにし、それによって、1つ以上の黒色の斑点または線条が、前角膜涙液膜において現れる時間を記録した。このウサギを、ConA注射後3日に安楽死させた。より高いTBUT値は、より良い涙液膜の質および眼球の損傷からのより十分な保護を示す。TBUTデータは、基準線の%として表され、TBUTの基準線は、生理食塩水注射されて、ビヒクル処理された眼について観察されるものである。
【0024】
角膜染色の阻害%およびTBUTデータを以下の表1に示し、ConA注射された眼の15S−HETE(Biomol Research Laboratories,Plymouth Meeting,PA)処理を、ポジティブコントロールとして使用した。
【0025】
【表1】

(実施例2:ブドウ膜炎のウサギモデルにおける化合物1の保護効果)
化合物1を、内毒素により誘発されたブドウ膜炎のモデルにおけるラットの眼の中への好中球流入を抑制するその能力について評価した。この化合物を、参照化合物として役立つ同じビヒクル中に処方される眼病用の懸濁液ビヒクル、およびデキサメタゾン(Sigma−Aldrich Company,St.Louis,MO)において0.01%w/v、0.1%w/v、1.0%w/vの濃度にて調製した。ブドウ膜炎を、雌性Lewisラット(1群あたり5匹)の右側後部足における内毒素(0.1mL生理食塩水中に200μg)の足底下(subplantar)注射によって誘発させた。試験化合物のビヒクル(5μL)を、内毒素注射時、およびその4時間後に再び、実験動物の各々の眼に局所的に投与した。内毒素注射から24時間後、動物をCO吸入によって屠殺して、総眼球好中球(PMN)含有量を、ミエロペルオキシダーゼ活性の決定によって間接的に評価した。次いで、各群における眼球のPMN含有量を、Dunnet検定を使用してビヒクル処理された群において観察されたものと比較した。その結果を、以下の表2に示す。
【0026】
【表2】

本発明の方法に従って、式Iの化合物は、局所的な眼球投与のために、薬学的に受容可能なキャリア中で投与される。この組成物は、当該分野で公知の方法に従って、処方される。この組成物は、1つ以上の式Iの化合物を含んでもよい。従って、この組成物は、式Iの化合物以外の第2の薬物を含み得る。
【0027】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量の式Iの化合物を含む。本明細書中に使用される場合、「薬学的に有効な量」とは、ブドウ膜炎またはドライアイの症状を軽減または除去するのに十分な量を意味する。概して、本発明の組成物は、ドライアイを処置するために0.00001%〜0.01%の式Iの化合物、およびブドウ膜炎を処理するために0.01%〜3%の式1の化合物を含む。好ましくは、本発明の組成物は、ドライアイを処置するために0.00003%〜0.001%の式Iの化合物、およびブドウ膜炎を処置するために0.1%〜1%の式1の化合物を含む。
【0028】
本発明に従って投与される組成物は、種々の他の成分もまた含有し得、このような成分としては、界面活性剤、張度調整剤、緩衝剤、防腐剤、共溶媒、および増粘剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
種々の張度調整剤が、眼科用組成物に対して、組成物の張度を好ましくは天然の涙の張度に調整するために使用され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロースおよび/またはマンニトールが、生理学的な張度に近づけるために組成物に加えられ得る。このような張度調整剤の量は、それが加えられる特定の薬剤に依存して変動する。しかし一般的には、この組成物は最終的な組成物が眼が受容可能な重量オスモル濃度(一般的に、約150〜450mOsm、好ましくは250〜350mOsm)を有するようにさせるのに十分な量の張度調整剤を有する。
【0030】
適切な緩衝剤系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酪酸ナトリウムまたはホウ酸)が、保存条件下でのpH変動を防ぐために組成物に加えられ得る。その具体的な濃度は、使用される薬剤に依存して変動する。しかし好ましくは、標的pHをpH5.5〜8の範囲内に維持するように選択される。
【0031】
潤滑させるか、「湿らせ」るか、内因性の涙の粘稠度に近づけるか、天然の涙の形成を助けるか、または別の方法で、眼への投与によってドライアイ症状およびドライアイ状態を一時的に緩和するように指定される他の化合物は、当該分野において公知であり、かつ本発明の組成物中に含有され得る。このような化合物は、組成物の粘度を高め、そしてこのような化合物としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:モノマー性ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール);ポリマー性ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、デキストラン(例えば、デキストラン70));水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);およびビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンおよびカーバメート(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974P))。
【0032】
局所眼科用製品は、一般的には複数用量形態でパッケージングされている。防腐剤が、使用の間の微生物混入を防ぐために、通常必要とされる。適切な防腐剤としては、以下が挙げられる:塩化ベンズアルコニウム、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1、または当業者に公知の他の薬剤。このような防腐剤は、代表的に、0.001%w/v〜1.0%w/vのレベルで使用される。本発明の単位用量組成物は滅菌されるが、一般的には防腐剤を含有せず、保存されない。
【0033】
一般的に、このような組成物の1〜2滴が、1日あたり1回〜何回となく投与される。
【0034】
代表的な点眼処方物を、ドライアイを処置するためのものは以下の実施例3に、ブドウ膜炎を処置するためのものは実施例4に提供する。
【0035】
【表3】

本発明は特定の好ましい実施形態を参照することによって説明された;しかし、本発明がその特有の特徴または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態またはバリエーションにおいて具体化され得ることが理解されるべきである。したがって上記の実施形態は、全ての局面において例示的であるとみなされるべきであり、限定的であるとみなされるべきではなく、本発明の範囲は、前出の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるドライアイまたはブドウ膜炎の処置のための方法であって、該方法は、
該哺乳動物の眼に対して、薬学的に受容可能なキャリアと薬学的に有効な量の式Iの化合物
【化1】

とを含む組成物を局所投与する工程;
を包含し、該式Iの化合物において、
は、C、COR、CONR、CHOR、またはCHNRであり、Rは、H、C1〜6直鎖アルキルもしくはC1〜6分枝アルキル、C3〜6シクロアルキル、またはフェニルであるか、または
は、式COのカルボン酸塩であり、Rは、Li、Na、K、もしくは式NR10111213のアンモニウム部分であり;
、Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、もしくはOCであり、但し、R、Rのうちの多くとも1つだけが、OH、COH、もしくはOCであり;
は、H、C(O)R14、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルであり;
、Rは、独立して、H、C(O)R14、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、もしくはOCであり、但し、R、Rのうちの多くとも1つだけが、OH、COH、もしくはOCであり;
、R、Rは、独立して、H、CH、C、C(O)R14、もしくはCO15であるか、または
とRとが一緒になってカルボニル基を構成するか、またはRとRとが一緒になってカルボニル基を構成するか、またはORとRとが一緒になって、環状エステルを形成し;
10、R11、R12、R13は、独立して、HもしくはC1〜6アルキルであり、各アルキル基は、必要に応じて、OH置換基もしくはOCH置換基を保有し;
14は、H、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルであり;そして
15は、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、ベンジル、もしくはフェニルである、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記式Iの化合物について、
は、C、COR、もしくはCHORであり;
Rは、H、Na、NH、CH、C、n−C、もしくはi−Cであり;
は、H、COCH、もしくはCHであり;そして
、R、Rは、独立して、H、CH、CHCOであるか、
とRとが一緒になってカルボニル基を構成するか、またはRとRとが一緒になってカルボニル基を構成するか、またはORとRとが一緒になって、環状エステルを形成する、
方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記式Iの化合物は、構成
【化2】

を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記式Iの化合物は、構成
【化3】

を有する、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記式Iの化合物は、ブドウ膜炎を処置するために使用される、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記式Iの化合物は、ドライアイを処置するために使用される、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記化合物は、
【化4】

からなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記化合物は、
【化5】

からなる群より選択される、方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、前記薬学的に有効な量は、0.1%(重量/体積)〜1%(重量/体積)である、方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記薬学的に有効な量は、0.00003%(重量/体積)〜0.001%(重量/体積)である、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記薬学的に受容可能なキャリアは、界面活性剤、張度調整剤、緩衝剤、防腐剤、共溶媒、および増粘剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記薬学的に受容可能なキャリアは、界面活性剤、張度調整剤、緩衝剤、防腐剤、共溶媒、および増粘剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む、方法。

【公表番号】特表2007−537282(P2007−537282A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513361(P2007−513361)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/016646
【国際公開番号】WO2005/112905
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】