説明

ドライブレコーダ、ドライブレコーダシステム、ドライブレコーダの制御方法およびプログラム

【課題】事故発生や犯罪発生などの状況に応じて、ユーザが証拠データの保全処理を指示することができるドライブレコーダ等を提供する。
【解決手段】少なくとも車両外部を撮像する複数の撮像手段400と、複数の撮像手段400により撮像した複数の映像信号に基づいて、複数の動画データを生成する動画データ生成手段150と、動画データを記憶部17に記録する記録手段170と、イベントの発生を検知するイベント発生検知手段130と、所定の操作を行うための処理指定スイッチ51と、を備え、イベント発生検知手段130がイベントの発生を検知した時、処理指定スイッチ51の操作方法に応じて、複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定し、当該決定に基づいて、動画データを送信するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両に搭載されて用いられるドライブレコーダ、ドライブレコーダシステム、ドライブレコーダの制御方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事故発生時における事故原因究明を目的として、事故発生前後における車両外部の撮像データを記録するドライブレコーダが知られている。例えば、特許文献1に記載のドライブレコーダは、撮像データをMRAM等の不揮発性メモリに保存し、事故発生の検知に伴うデータ保持要求により、保存フラグをオンにすることで、事故発生時におけるデータ消失を防止する。
【0003】
一方、ドライブレコーダの機能の一つとして、盗難等の車内の異常を検知し、車両内部の撮像データを記録する、いわゆる盗難防止機能が知られている(例えば、非特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−69936号公報
【非特許文献1】http://blog.livedoor.jp/drive_recorder/archives/23116.html 「ドライブレコーダー交通の理不尽から身を守る知識と装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のドライブレコーダは、大事故によって車両が焼損したような場合には、MRAM自体も焼損するため、結果的に動画データが消失してしまうといった問題がある。つまり、事故発生時における事故原因究明のための証拠データとして動画データを記録しているにも拘らず、事故によってその証拠データが消失してしまうといった、本末転倒な事態が予想される。また、非特許文献1に記載のドライブレコーダにおいても、犯罪者によってドライブレコーダが破壊されてしまい、証拠データが喪失してしまうことが想定できる。しかしながら、そういった犯罪者による暴挙に対して何ら対策が成されていないのが現状である。
【0005】
また、一般的に、車両の内・外部を撮像して証拠データを保全する場合、事故記録を目的とした場合は車両外部の撮像データが重要となり、盗難等の犯罪記録を目的とした場合は車両内部の撮像データが重要となる。すなわち、事故発生時と犯罪発生時とでは、重要な証拠データの種類が異なる。ところが、車両の内・外部を撮像する機能を有するドライブレコーダは、いずれの場合においても、証拠データとして、車両外部および車両内部の撮像データを保全するため、証拠データを再生した場合、証拠データとしての価値が低いデータが多く含まれていることがあった。
【0006】
本発明は、事故発生や犯罪発生などの状況に応じて、ユーザが証拠データの保全処理を指示することができるドライブレコーダ、ドライブレコーダシステム、ドライブレコーダの制御方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドライブレコーダは、少なくとも車両外部を撮像する複数の撮像手段と、複数の撮像手段により撮像した複数の映像信号に基づいて、複数の動画データを生成する動画データ生成手段と、動画データを格納しておくための記憶部と、動画データを記憶部に記録する記録手段と、イベントの発生を検知するイベント発生検知手段と、所定の操作を行うための操作部と、イベント発生検知手段がイベントの発生を検知した時、操作部による操作方法に応じて、複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定する統括制御手段と、統括制御手段の決定に基づいて、動画データを外部装置に送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のドライブレコーダの制御方法は、車両に搭載されて用いられるドライブレコーダの制御方法であって、ドライブレコーダが、少なくとも車両外部を撮像する撮像ステップと、撮像した映像信号から動画データを生成し、記憶部に記録する記録ステップと、イベントの発生を検知するイベント発生検知ステップと、イベントの発生を検知した時、操作部による操作方法に応じて、複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定し、当該決定に基づいて、動画データを外部装置に送信する送信ステップと、を実行することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、操作部による操作方法に応じて複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定するため、ユーザが事故発生や犯罪発生などの状況に応じて証拠データの保全処理を指示することができる。例えば、操作部がスイッチである場合、車両が大きな衝撃を受けたときに、ユーザが“事故”に対応したスイッチを押下すると、イベント種別が“事故”であると判別し、事故発生時から遡った順序で動画データを送信することで、事故原因究明に重要な動画データを保全することができる。また、生成した動画データは、装置内部に格納しておくのではなく、外部装置に送信するため、事故発生によって火災が発生した場合や犯罪者によって装置が破壊されてしまったような場合でも、それ以前に送信処理を終えることで、確実に証拠データを保全することができる。
なお、操作部による操作は、イベント発生前に行われても良いし、イベント発生後に行われても良い。
【0010】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、複数の映像信号または複数の動画データから、複数の静止画像データを生成する静止画像データ生成手段をさらに備え、統括制御手段は、操作部による操作方法に応じて、複数の動画データおよび複数の静止画像データの中から対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定し、当該決定に基づいて、送信手段に、動画データおよび静止画像データの少なくとも一方を送信させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、動画データだけでなく静止画データも、証拠データとして保全するため、証拠データのデータ数が増えることにより、事故原因の究明や犯罪者の特定等に有用である。
【0012】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、複数の撮像手段は、車両外部を撮像する外部撮像手段と、車両内部を撮像する内部撮像手段と、を含み、操作部は、1のスイッチを含み、統括制御手段は、スイッチの押下回数に応じて、外部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータを、内部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータよりも優先して送信するか、内部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータを、外部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータよりも優先して送信するかを決定することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、スイッチの押下回数に応じて、保全処理を指示することができるため、操作が容易であり、ひいては誤操作を軽減できる。この場合、例えばスイッチを1回押下した場合は、イベント種別が事故発生であるものとして、車両外部を撮像した映像信号に基づくデータを優先して送信し、スイッチを2回押下した場合は、イベント種別が車両内部における盗難等の犯罪の発生であるものとして、車両内部を撮像した映像信号に基づくデータを優先して送信するなどの利用方法が考えられる。これにより、車両の内・外部における情報記録に対応できると共に、イベントの種別(例えば、“事故”か“犯罪”)に応じて適切な証拠データを保全することができる。
【0014】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、送信対象となるデータに、動画データおよび静止画像データが含まれる場合、統括制御手段は、送信手段に、動画データよりも、静止画像データを優先して送信させることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、静止画像データを優先して外部装置に送信するため、証拠データの消失のリスクを軽減することができる。これは、静止画像データは、動画データと比べてデータ量が小さく、短時間で送信できるため、車両が炎上したような場合でも、ドライブレコーダが焼損してしまう前に送信を終えることができる可能性が高いからである。つまり、少なくとも静止画像データだけでも外部装置に保存しておく可能性が高くため、事故等による証拠データの消失のリスクを最小限に留めることができる。
【0016】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、イベント発生検知手段がイベントの発生を検知した時、送信対象となるデータを、着脱式のメモリデバイスに保存する保存手段をさらに備えたことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、送信対象となるデータ(動画データおよび静止画像データの少なくとも一方)を、外部装置に送信するだけでなく、着脱式のメモリデバイスに保存するため、証拠保全をより確実に行うことができる。
【0018】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、統括制御手段は、送信手段に、送信対象となるデータと共に、撮像手段の識別情報、操作部の操作内容、撮像手段による撮像時の時刻情報、GPSによる車両の位置情報、速度情報、エアバックの作動情報、方向指示器のオン/オフ情報、ブレーキ圧情報、ハンドル舵角情報、のうち1以上を含む車両情報を送信させることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、事故原因の究明や犯罪場所や時刻の特定に必要と考えられる車両情報についても、重要な証拠データとして保全することができる。なお、「撮像手段の識別情報」とは、撮像手段を特定するための情報を指し、送信対象となるデータを撮像した撮像手段の識別情報を、外部装置に送信することが好ましい。この構成によれば、撮像位置等を特定でき、事故原因の究明等に役立てることができる。
【0020】
上記に記載のドライブレコーダにおいて、動画データには、音声データが含まれることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、事故原因の究明や犯罪状況の特定に必要と考えられる音声データも、動画データの一部として保存しておくことができる。
【0022】
本発明のドライブレコーダシステムは、上記に記載のドライブレコーダと、外部装置として機能するネットワークデバイスと、から成ることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、事故発生や犯罪発生などの状況に応じて、ユーザが証拠データの保全処理を指示することができるドライブレコーダシステムを構築することができる。
【0024】
本発明のプログラムは、コンピュータに、上記に記載のドライブレコーダの制御方法における各ステップを実行させるためのものであることを特徴とする。
【0025】
このプログラムを用いた制御により、事故発生や犯罪発生などの状況に応じて、ユーザが証拠データの保全処理を指示することができるドライブレコーダを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るドライブレコーダ、ドライブレコーダシステム、ドライブレコーダの制御方法およびプログラムについて説明する。図1は、ドライブレコーダシステムSYのシステム構成図である。同図に示すように、ドライブレコーダシステムSYは、不図示の車両(自動車)に搭載されるドライブレコーダ10と、ドライブレコーダ10の所有者や管理者であるユーザがドライブレコーダ10に記録された各種データを視聴するためのパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する)30と、ドライブレコーダ10から送信された各種データを受信および保存するネットワークデバイス40(外部装置)と、により構成されている。
【0027】
ドライブレコーダ10は、通信処理部11、表示部12、操作部13、GPS(Global Positioning System)受信機14、RTC(Real Time Clock)15、加速度センサ16、記憶部17、映像/音声信号処理部18、中央制御部19、着脱式メモリデバイス22、カメラモジュール23(カメラモジュールA23a,カメラモジュールB23b)、マイクロフォン24(マイクロフォンA24a,マイクロフォンB24b)および電源ユニット25を備えている。
【0028】
通信処理部11は、無線信号を送受信するためのアンテナ21を有し、ネットワークデバイス40と無線ネットワーク47を介して通信を行う。表示部12は、不図示のディスプレイおよびインジケータ(LED)から成り、ネットワークデバイス40との通信動作、着脱式メモリデバイス22への書き込み動作などドライブレコーダ10の動作状況を表示する。操作部13は、ドライブレコーダ10に記録された各種データを保全する保全処理を指定するための処理指定スイッチ51の他、電源スイッチのON/OFF操作および着脱式メモリデバイス22の取り出し操作、ネットワークデバイス40との通信動作や着脱式メモリデバイス22への書き込み動作を強制的に実行させるための操作を行うための各種スイッチ(図示省略)を有している。本実施形態では、保全処理として、事故発生時における保全処理を想定してプログラミングされた第1記録データ送信・保存処理(図4参照)と、盗難等の犯罪発生時における保全処理を想定してプログラミングされた第2記録データ送信・保存処理(図6参照)と、のいずれかを指定可能となっている。
【0029】
GPS受信機14は、複数の衛星の軌道と、衛星に搭載された原子時計からの時刻のデータを含む電波信号を受け取るためのものである。中央制御部19は、受信した電波信号の時間差からそれぞれの衛星との相対的な距離差を算出し、その算出結果に基づいて現在位置を特定する。RTC(Real Time Clock)15は、計時専用チップであり、中央制御部19はこれを用いることによってカレンダ機能や時計機能を実現する。加速度センサ16は、車両の移動方向や加速度(速度)を検出するためのものである。中央制御部19は、この加速度センサ16による衝撃レベルの検出によって、事故発生や犯罪発生(イベントの発生)を検知することができる。
【0030】
カメラモジュール23は、車両外部を撮像するカメラモジュールA23a(外部撮像手段)と、車両内部を撮像するカメラモジュールB23b(内部撮像手段)と、があり、いずれも動画データおよび静止画像データ(以下、両者を合わせて「記録データ」(請求項におけるデータ)と称する)の元となる映像信号を得るためのものである。なお、カメラモジュールA23aおよびカメラモジュールB23bは、それぞれが複数のカメラモジュールを有する構成としても良い。例えば、車両外部を撮像するカメラモジュールA23aは、車両前方左部、車両前方右部、車両前方中央部をそれぞれ撮像する3つのカメラモジュールから成り、車両前方を広く(広角範囲で)撮像できることが好ましい。また、車両後方も撮像できるように、設置数を増やしても良い。一方、車両内部を撮像するカメラモジュールB23bは、車両前方左部(右ハンドル車の場合の助手席付近)、車両前方右部(右ハンドル車の場合の運転席付近)、車両後方部(後部座席付近)をそれぞれ撮像する3つのカメラモジュールから成り、車内全体をくまなく撮像できることが好ましい。
【0031】
マイクロフォン24は、車両外部に取り付けられたマイクロフォンA24aと、車両内部に取り付けられたマイクロフォンB24bと、があり、いずれも動画データに含まれる音声データの元となる音声信号を得るためのものである。マイクロフォンA24aは、カメラモジュールA23aに近接して設けられ、マイクロフォンB24bは、カメラモジュールB23bに近接して設けられている。
【0032】
映像/音声信号処理部18は、カメラモジュール23から取得した映像信号、およびマイクロフォン24から取得した音声信号を処理するためのものであり、アナログ信号処理部、A/D変換部、画像処理部、圧縮処理部等を含むものである。電源ユニット25は、車両のバッテリーと接続され、当該バッテリーからの電力供給を受けて充電される充電池(図示省略)を有している。これにより、事故発生時や停車時など車両からの電力供給が受けられない状況でも、記録データの取得を続行できるようになっている。
【0033】
記憶部17は、記録データおよびこれに付帯される情報(車両情報)を格納するためのものである。動画データと静止画像データは、それぞれ周期的に格納される。つまり、各データの蓄積量が所定量に達した場合、最も古いデータを消去して最新のデータを書き込む。着脱式メモリデバイス22は、メモリカード等の記録媒体によって実現されるものであり、ドライブレコーダ10にはこれを着脱するためのメモリスロット(図示省略)が設けられている。当該着脱式メモリデバイス22には、中央制御部19からの指令に基づいてイベント発生前後の記録データが書き込まれる。
【0034】
中央制御部19は、CPU26、ROM27およびRAM28を有し、ドライブレコーダ10全体を制御する。ROM27は、CPU26が各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。また、RAM28は、CPU26が各種処理を実行する際の作業領域として利用される。CPU26は、上記の各構成要素を制御する他、映像/音声信号処理部18から出力される記録データの中から、操作部13の操作に基づいて送信対象となるデータと、その送信順序とを決定し、当該送信対象となるデータをネットワークデバイス40に送信したり着脱式メモリデバイス22に保存したりするための制御を行なう。また、CPU26は、この記録データに、当該記録データの元となる映像信号を取得したカメラモジュール23a,23bの識別情報、記録データを保全するきっかけとなった操作部13の操作内容、GPS受信機14、RTC15および加速度センサ16から得られる各種情報を、車両情報として付帯する。なお、記録データに付帯する車両情報は、その記録データの撮像時に得られた情報である。また、カメラモジュール23a,23bの識別情報は、ネットワークデバイス40やPC30で容易にカメラモジュール23a,23bの設置場所が把握できるように、「車両外部」や「車両内部」などのテキストデータ(または「設置場所を表す記号)として送信されることが好ましい。
【0035】
一方、PC30は、メモリスロット31、解析アプリケーション32およびディスプレイ33の他、一般的なパーソナルコンピュータに搭載されるハードウェア構成を備えている。メモリスロット31は、上記の着脱式メモリデバイス22を読み取るためのものである。解析アプリケーション32は、ドライブレコーダ10の付属品として提供されるものであり、着脱式メモリデバイス22に保存されている記録データおよび車両情報を読み出して各種解析を行うと共に、読み出したこれらの記録データおよび車両情報、並びに解析結果を、ディスプレイ33上に表示させる。
【0036】
ネットワークデバイス40は、無線ネットワーク47、中継局42および通信ネットワーク44を介してドライブレコーダ10と接続されていると共に、ネットワークストレージ41を備えている。中継局42は、ドライブレコーダ10のアンテナ21と無線信号の送受信を行うためのアンテナ43を有しており、道路上を走行する車両(ドライブレコーダ10)と通信が途絶えないように、道路近辺に多数設置されている。また、ネットワークストレージ41は、ドライブレコーダ10から送信されたイベント発生前後の記録データおよび車両情報を保存しておくためのものである。ネットワークデバイス40は、ドライブレコーダ10から記録データを受信すると、まず付帯された車両情報に基づいて事故や犯罪の発生時刻や場所を特定する。ネットワークデバイス40の管理者は、これを確認して、警察に連絡したり、怪我人がいることが想定される場合には、救急車を手配したり等の作業を行う。
【0037】
次に、図2を参照し、ドライブレコーダ10の機能構成(図示一点鎖線部)について説明する。ドライブレコーダ10は、機能構成として、統括制御手段100、位置情報取得手段110、時刻情報取得手段120、イベント発生検知手段130、撮像制御手段140、動画データ生成手段150、静止画像データ生成手段160、記録手段170、読み出し手段180、保存手段190、保護手段200、第1の送信手段210および第2の送信手段220を備えている。
【0038】
統括制御手段100は、上記の各手段と接続され、これらを統括的に制御する。また、統括制御手段100は、処理指定スイッチ51の操作に基づくON/OFF信号を取得し、処理指定スイッチ51の押下回数に基づいてイベント種別(“事故”または“犯罪”)を決定し、当該イベント種別に応じた保全処理を実行する。具体的には、処理指定スイッチ51が1回押下された場合は、イベント種別を“事故”と判別し、第1記録データ送信・保存処理を実行する。また、処理指定スイッチ51が2回押下された場合は、イベント種別を“犯罪”と判別し、第2記録データ送信・保存処理を実行する。
【0039】
位置情報取得手段110は、GPS受信機14によって得られる位置情報を取得する。時刻情報取得手段120は、RTC15によって得られる時刻情報を取得する。イベント発生検知手段130は、加速度センサ16が検出した衝撃レベルや、マイクロフォンA24aおよびマイクロフォンB24bが得た衝撃音を取得し、事故や犯罪等のイベントの発生を検知するものである。本実施形態では、このイベント発生の検知をトリガとして、記録データの保全処理(第1記録データ送信・保存処理または第2記録データ送信・保存処理)を実行する。
【0040】
撮像制御手段140は、車両外部に向けられたカメラモジュールA23aおよび車両内部に向けられたカメラモジュールB23bを制御して、映像信号を取得する。カメラモジュールA23aは、走行時および停車時における車両外部を撮像する。また、カメラモジュールB23bは、走行時および停車時における車両内部を撮像する。請求項における「複数の撮像手段」とは、これらカメラモジュールA23aおよびカメラモジュールB23bを指す(参照番号400)。また、撮像制御手段140は、映像信号と共に、車両内部を録音するマイクロフォンA24aおよび車両内部を録音するマイクロフォンB24bから得られる音声信号も同時に取得する。
【0041】
なお、統括制御手段100は、処理指定スイッチ51の押下回数に基づいてイベント種別を“事故”と判別した場合、少なくともカメラモジュールA23aにより撮像した映像信号に基づくデータ(以下、「外部記録データ」と称する)を送信対象として決定する。また、処理指定スイッチ51の押下回数に基づいてイベント種別を“犯罪”と判別した場合、少なくともカメラモジュールB23bにより撮像した映像信号に基づくデータ(以下、「内部記録データ」と称する)を送信対象として決定する。さらに、統括制御手段100は、これら送信対象となる記録データの送信順序を決定する。具体的には、イベント種別を“事故”と判別した場合、内部記録データよりも外部記録データを優先し、イベント種別を“犯罪”と判別した場合、外部記録データよりも内部記録データを優先して送信手段210,220に送信させる。
【0042】
動画データ生成手段150は、撮像制御手段140の制御によって撮像された映像信号および音声信号に基づいて動画データを生成する。具体的には、カメラモジュールA23aとカメラモジュールB23bの2つのカメラモジュールにより得られた映像信号毎に、所定時間ごとに区切った映像信号および音声信号に基づいて、複数の動画データファイルを生成する。なお、カメラモジュールA23aにより撮像した映像信号に基づいて生成された動画データファイルを、以下「外部動画データファイル」と称する。また、カメラモジュールB23bにより撮像した映像信号に基づいて生成された動画データファイルを、以下「内部動画データファイル」と称する。
【0043】
静止画像データ生成手段160は、撮像制御手段140によって撮像した映像信号に基づいて、所定時間間隔の複数の静止画像から成る静止画像データを生成する。勿論、動画データ生成手段150により生成された動画データファイルから複数の静止画を抽出することによって、静止画像データを生成するようにしても良い。なお、カメラモジュールA23aにより撮像した映像信号に基づいて生成された静止画像データを、以下「外部静止画像データ」と称する。また、カメラモジュールB23bにより撮像した映像信号に基づいて生成された静止画像データを、以下「内部静止画像データ」と称する。
【0044】
記録手段170は、動画データ生成手段150および静止画像データ生成手段160によって生成された動画データファイルおよび静止画像データを、記憶部17に記録する。また、これら動画データファイルおよび静止画像データには、それぞれの撮像時において、撮像しているカメラモジュール23a,23bを識別するための識別情報、位置情報取得手段110の取得結果および時刻情報取得手段120の取得結果等によって得られる車両情報を関連付けて記録する。また、車両情報には、記録データ保全処理を実行するトリガとなった操作部13の操作内容(処理指定スイッチ51の押下の有無や押下回数など)も含まれる。
【0045】
読み出し手段180は、イベント発生検知手段130によりイベント発生を検知した時、統括制御手段100により送信対象として決定された記録データ、およびその記録データに関連付けられた車両情報を記憶部17から読み出す。保存手段190は、読み出し手段180により記憶部17から読み出したイベント発生前後の記録データおよび車両情報を着脱式メモリデバイス22に保存する。保護手段200は、着脱式メモリデバイス22に保存した保存データの消去を防止するものであり、具体的にはパスワードによるロックを指す。
【0046】
第1の送信手段210は、読み出し手段180により読み出した送信対象となる静止画像データおよび車両情報を、通信処理部11を介してネットワークデバイス40に送信する。また、第2の送信手段220は、読み出し手段180により読み出した送信対象となる動画データファイル(音声データを含む)および車両情報を、通信処理部11を介してネットワークデバイス40に送信する。第2の送信手段220は、第1の送信手段210による送信終了後に送信処理を開始する。なお、第1の送信手段210および第2の送信手段220は、記録データ送信時に、ドライブレコーダ10の装置IDを付加して送信する。これにより、ネットワークデバイス40において、どの車両に事故または犯罪が発生したかを特定することができる。また、第1の送信手段210および第2の送信手段220は、複数の記録データ(複数の静止画像データおよび複数の動画データファイル)を、イベント発生時から遡った順序で送信する。つまり、より重要と思われる証拠データを優先的に送信する。また、第2の送信手段220は、イベント発生前の複数の動画データファイルを送信した後、さらにイベント発生後の複数の動画データファイルを送信する。
【0047】
次に、図3のフローチャートを参照し、ドライブレコーダ10の動作(メイン処理)について説明する。なお、以下の説明において、フローチャートの主体は、CPU26(統括制御手段100)であるものとする。CPU26は、ユーザによる電源ON操作等にしたがって、カメラモジュール23a,23bおよびマイクロフォン24a,24b用いた撮像を開始し、当該撮像に伴って記録データの生成および記録を開始する(S01)。その後、イベントの発生を検知すると(S02:Yes)、その検知結果に基づいてイベントの種別を判別する(S03)。
【0048】
ここで、処理指定スイッチ51が押下されたか否かを判別し(S03)、押下された場合は、さらに処理指定スイッチ51の押下回数が1回または2回のいずであるかを判別する(S04)。ここで、押下回数「2回」とは、連続して押下された回数を指すものであり、所定時間以上の時間を空けて2回押下された場合(例えば、所定時間が2秒の場合、1回押下後さらに3秒後に1回押下された場合)、押下回数は「1回」と看做される。また、3回以上連続して押下された場合は、「2回」と看做す。
【0049】
処理指定スイッチ51の押下回数が1回であった場合は(S04:1回)、第1記録データ送信・保存処理を実行する(S05,図4および図5参照)。また、処理指定スイッチ51の押下回数が2回であった場合は(S04:2回)、第2記録データ送信・保存処理を実行する(S06,図6および図7参照)。さらに、イベント発生後(S02:Yesと判定した後)、所定時間が経過しても処理指定スイッチ51が押下されなかった場合は(S03:No,S07:Yes)、第2記録データ送信・保存処理を実行する(S06)。
【0050】
すなわち、ユーザは、事故発生時においては、処理指定スイッチ51を1回押下すればよく、犯罪発生時においては、処理指定スイッチ51を2回押下すればよい。また、事故の損害が大きい場合や、犯罪者によって操作が妨げられている場合など、処理指定スイッチ51を押下できない場合は、自動的に第2記録データ送信・保存処理が実行される。なお、詳細については後述するが、第2記録データ送信・保存処理は、第1記録データ送信・保存処理と記録データの送信順序や送信対象となる記録データが異なるものの、最終的に保全される全記録データには、第1記録データ送信・保存処理において保全される全ての記録データを含む。したがって、事故発生時に処理指定スイッチ51を押下できないことによって、第2記録データ送信・保存処理が実行された場合でも、証拠データが不足すると言うことはない。
【0051】
一方、記録データの記録開始から、予め設定された所定時間が経過してもイベントが発生しない場合は(S02:No,S08:Yes)、記憶部17内の古い記録データ(静止画像データおよび動画データファイル)を消去して(S09)、新しい記録データを記録する(S10)。つまり、S08〜S10は、イベント発生を検知しない限り、記録データの記録をループ式に実行することを意味する。
【0052】
次に、図4および図5を参照し、事故発生時において実行される第1記録データ送信・保存処理について説明する。処理指定スイッチ51が1回押下された場合(図3のフローチャートのS04:1回)、まず記憶部17に格納されている外部静止画像データを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S51)。
【0053】
外部静止画像データの送信および保存を終えると、続いて記憶部17に格納されている外部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S52)。なお、S51およびS52で送信および保存される各データは、事故発生時以前のものであり、事故発生時から遡った順序で送信および保存される。また、送信処理および保存処理は並行して行う。さらに、S51およびS52を実行している間、記録データの生成処理および記録処理も続行する。
【0054】
続いて、RTC15の計時結果に基づき、イベントが発生した時点(図3のS02:Yesと判定した時点)から、予め設定した所定時間を経過したか否かを判別する(S53)。所定時間は、事故発生後の記録が十分と考えられる時間(15秒〜30秒程度)であることが好ましい。所定時間が経過すると(S53:Yes)、記録データの生成および記録を停止し(S54)、事故発生後に記憶部17に記録された外部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S55)。さらに、事故発生後に記憶部17に記録された内部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S56)。内部動画データファイルを送信対象とするのは、事故発生後の車内被害状況を記録しておくためである。
【0055】
事故発生後の各動画データファイルについては、時系列にしたがって(古いものから)順に送信および保存する。なお、イベント発生後(図3のS02:Yesの判定後)については、静止画像データの生成、記録を省略し、動画データファイルのみ生成、記録するようにしても良い。また、S53において判別基準となる「所定時間」は、図3のS08の判別基準である「所定時間」と、同じ時間であっても良いし、異なる時間であっても良い。
【0056】
図5は、第1記録データ送信・保存処理における記録データの送信・保存順序を示す図である。同図では、時間が右側に向かって進行していることを示している。ここで、時点(0)とは、イベント発生時(事故発生時)を意味し、括弧内の数値は、マイナスであればイベント発生前のそれぞれの時点を示し数値(絶対値)が大きいほどイベント発生時点から過去に遡り、プラスであればイベント発生後のそれぞれの時点を示し数値が大きいほどイベント発生時点からより長く経過していることを意味する。
【0057】
同図に示すように、第1記録データ送信・保存処理では、記憶部17に記憶された記録データの中から、事故発生前の外部静止画像データ、事故発生前後の動画データファイル、および事故発生後の動画データファイルを抽出して(送信対象として)送信および保存する。送信と保存の手順は同じである。なお、同図のように、静止画像データおよび動画データファイルが区切られている場合、「記憶部17に記憶された記録データ」とは、時間(−4)〜(+4)における8つの外部静止画像データ、4つの外部動画データファイル、8つの内部静止画像データ、4つの内部動画データファイル(合計24の記録データ)を指す。本例では、この中から丸付き数字1〜10で示す記録データを送信対象とする。
【0058】
例えば、外部静止画像データの場合、丸付き数字1〜4で示すように、時間(−1)〜(0)における外部静止画像データ、時間(−2)〜(−1)における外部静止画像データ、時間(−3)〜(−2)における外部静止画像データ、時間(−4)〜(−3)における外部静止画像データの順序である。
【0059】
外部静止画像データの次は、外部動画データファイルを送信および保存する。その順序は、丸付き数字5〜8で示すように、時間(−2)〜(0)における外部動画データファイル、時間(−4)〜(−2)における外部動画データファイル、時間(0)〜(+2)における外部動画データファイル、時間(+2)〜(+4)における外部動画データファイルの順序である。但し、丸付き数字7,8で示す外部動画データファイル(時間(0)〜(+2)および時間(+2)〜(+4)における外部動画データファイル)は、事故発生後のデータであるため、イベント発生から所定時間を待って送信される(図4のフローチャートのS53〜S55参照)。
【0060】
外部動画データファイルの次は、内部動画データファイルを送信および保存する。その順序は、丸付き数字9,10で示すように、時間(0)〜(+2)における内部動画データファイル、時間(+2)〜(+4)における内部動画データファイルの順序である。
【0061】
このように、事故発生の場合は、内部記録データよりも外部記録データが重要となるため、外部記録データを優先して送信する。また、事故発生前の外部記録データについては、動画データファイルよりも静止画像データを優先して送信することで、車両が焼損してしまうような大事故にあった場合でも、確実に証拠データを保全することができる。これは、静止画像データが、動画データファイルに比べてデータ容量が小さく、その読み出しや送信・保存に要する時間が短いためである。また、静止画像データおよび動画データファイルは、いずれも所定時間毎に区切って、複数の単位で送信するため、データを分散させることができ、データ消失のリスクを軽減できる。また、事故発生前の外部記録データについては、事故発生時から遡った順序で送信するため、事故原因の究明に重要と思われるデータ順に、すなわちより効率的に、データを保存することができる。さらに、事故の程度が大きくなく、十分にデータを送信・保存する時間がある場合は、事故発生後の外部動画データファイルおよび内部動画データファイルも送信・保存するため、証拠データとしての価値を損ねることがない。
【0062】
次に、図6および図7を参照し、犯罪発生時(処理指定スイッチ51の非操作時を含む)において実行される第2記録データ送信・保存処理について説明する。処理指定スイッチ51が2回押下された場合(図3のフローチャートのS04:2回)またはイベント発生後所定時間が経過しても処理指定スイッチ51が押下されなかった場合(S07:Yes)、まず記憶部17に格納されている内部静止画像データを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S61)。
【0063】
内部静止画像データの送信および保存を終えると、続いて記憶部17に格納されている外部静止画像データを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S62)。さらに、各静止画像データの送信および保存を終えると、記憶部17に格納されている内部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S63)。また、内部動画データファイルの送信および保存を終えると、記憶部17に格納されている外部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S64)。なお、S61ないしS64で送信および保存される各データは、犯罪発生時以前のものであり、犯罪発生時から遡った順序で送信および保存される。また、送信処理および保存処理は並行して行う。さらに、S61ないしS64を実行している間、記録データの生成処理および記録処理も続行する。
【0064】
続いて、RTC15の計時結果に基づき、イベントが発生した時点(図3のS02:Yesと判定した時点)から、予め設定した所定時間を経過したか否かを判別する(S65)。所定時間は、犯罪発生後の記録が十分と考えられる時間(15秒〜30秒程度)であることが好ましい。所定時間が経過すると(S65:Yes)、記録データの生成および記録を停止し(S66)、犯罪発生後に記憶部17に記録された内部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S67)。さらに、犯罪発生後に記憶部17に記録された外部動画データファイルを読み出して、ネットワークデバイス40に送信すると共に、着脱式メモリデバイス22に保存する(S68)。なお、犯罪発生前後において外部記録データを送信対象とするのは(S62,S64,S68)、犯罪者が近づいてくる様子や逃亡する様子を記録しておくためである。
【0065】
犯罪発生後の各動画データファイルについては、事故発生時と同様に、時系列にしたがって(古いものから)順に送信および保存する。なお、イベント発生後(図3のS02:Yesの判定後)については、静止画像データの生成、記録を省略し、動画データファイルのみ生成、記録するようにしても良い。また、S65において判別基準となる「所定時間」は、図3のS08の「所定時間」や、事故発生時における「所定時間」(図4のS53)と、同じ時間であっても良いし、異なる時間であっても良い。
【0066】
図7は、第2記録データ送信・保存処理における記録データの送信・保存順序を示す図である。ここでは、記憶部17内に格納される記録データのうち、送信対象となる記録データのみを示している。同図に示すように、第2記録データ送信・保存処理では、犯罪発生前の外部静止画像データおよび内部静止画像データ、犯罪発生前後の外部動画データファイルおよび内部動画データファイルを送信および保存する。送信と保存の手順は同じである。
【0067】
犯罪が発生すると、まず丸付き数字1〜4で示すように、内部静止画像データを送信および保存する。その順序は、時間(−1)〜(0)における内部静止画像データ、時間(−2)〜(−1)における内部静止画像データ、時間(−3)〜(−2)における内部静止画像データ、時間(−4)〜(−3)における内部静止画像データの順序である。内部静止画像データの次は、外部静止画像データを送信および保存する。その順序は、丸付き数字5〜8で示すように、時間(−1)〜(0)における外部静止画像データ、時間(−2)〜(−1)における外部静止画像データ、時間(−3)〜(−2)における外部静止画像データ、時間(−4)〜(−3)における外部静止画像データの順序である。
【0068】
外部静止画像データの次は、犯罪発生前の内部動画データファイルを送信および保存する。その順序は、丸付き数字9,10で示すように、時間(−2)〜(0)における内部動画データファイル、時間(−4)〜(−2)における内部動画データファイル、の順序である。また、犯罪発生前の内部動画データファイルの次は、犯罪発生前の外部動画データファイルを送信および保存する。その順序は、丸付き数字11,12で示すように、時間(−2)〜(0)における外部動画データファイル、時間(−4)〜(−2)における外部動画データファイル、の順序である。さらに、犯罪発生から所定時間が経過すると、丸付き数字13,14で示すように、時間(0)〜(+2)における内部動画データファイル、時間(+2)〜(+4)における内部動画データファイル、の順序で内部動画データファイルを送信および保存する。さらにその後、丸付き数字15,16で示すように、時間(0)〜(+2)における外部動画データファイル、時間(+2)〜(+4)における外部動画データファイル、の順序で外部動画データファイルを送信および保存する。
【0069】
このように、犯罪発生の場合は、外部記録データよりも内部記録データが重要となるため、外部静止画像データよりも内部静止画像データを、また外部動画データファイルよりも内部動画データファイルを優先して送信する。また、犯罪発生前の外部記録データについては、犯罪発生時と同様に、動画データファイルよりも静止画像データを優先して送信することで、犯罪者によって装置が破壊されてしまった場合でも、確実に証拠データを保全することができる。また、犯罪発生前の外部記録データについては、犯罪発生時から遡った順序で送信するため、犯罪記録に重要と思われるデータ順に、すなわちより効率的に、データを保存することができる。さらに、犯罪者がドライブレコーダ10の存在に気づかず、十分にデータを送信・保存する時間がある場合は、犯罪発生後の内部動画データファイルおよび外部動画データファイルも送信・保存するため、さらに多くの証拠データを保全することができる。
【0070】
なお、図5および図7では、静止画像データを区切る所定時間間隔よりも、動画データファイルを区切る所定時間間隔が長い場合を例示したが、その間隔は任意であり、動画データファイルを区切る所定時間間隔を静止画像データより短くしても良い。また、静止画像データおよび動画データファイルを、それぞれ同一間隔で区切る場合を例示したが、送信順序に従って間隔を広くしていくなど、同一間隔でなくても良い。
【0071】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、操作部13による操作方法に応じて、複数の記録データの中から送信対象となる記録データおよびその送信順序を決定するため、“事故”や“犯罪”などの状況に見合った最適な証拠データを保全することができる。また、生成した記録データは、ドライブレコーダ10内部に格納しておくのではなく、ネットワークデバイス40に送信するため、事故発生によって火災が発生した場合や犯罪者によってドライブレコーダ10が破壊されてしまったような場合でも、それ以前に送信処理を終えることで、確実に証拠データを保全することができる。
【0072】
また、動画データと比べてデータ量が小さく、短時間で送信できる静止画像データを、動画データよりも優先して送信するため、少なくとも静止画像データだけはネットワークストレージ41に保存しておくことができ、事故火災等による証拠データの消失のリスクを最小限に留めることができる。また、静止画像データの送信終了後には動画データファイルも送信するため、証拠データの有用性を損なうことがなく、確実性と有用性とを兼ね備えた証拠保全を行うことができる。
【0073】
また、静止画像データおよび動画データファイルは、ネットワークデバイス40に送信するだけでなく、着脱式メモリデバイス22に保存するため、万が一送信処理時にエラーが発生した場合でも、証拠保全を行うことができる。
【0074】
なお、上記の実施形態では、例えば第1記録データ送信・保存処理の場合、事故発生前の外部静止画像データ、事故発生前後の動画データファイル、および事故発生後の動画データファイルを送信および保存するものとしたが、図5の例に示したように、事故発生前後に生成した全ての記録データ(事故発生前については、(−4)〜(0)までの記録データ、事故発生後については、(0)〜(+4)までの記録データ)を送信および保存する必要はない。すなわち、図8に示すように、外部静止画像データについては、丸付き数字1,2で示すように、時間(−1)〜(0)における外部静止画像データと、時間(−3)〜(−2)における外部静止画像データを送信対象としても良い。言い換えれば、事故発生前の外部静止画像データのうち、時間(−2)〜(−1)における外部静止画像データと、時間(−4)〜(−3)における外部静止画像データを送信対象としなくても良い。また、事故発生後に送信および保存する内部動画データファイルについても、丸付き数字7で示すように、時間(0)〜(+2)における内部動画データファイルのみを送信するようにしても良い。すなわち、第1記録データ送信・保存処理を、図5に示した送信パターンではなく、図8にて丸付き数字1〜7に示す順序で実行することも可能である。
【0075】
なお、このように送信対象となるデータを間引きするか否かについては、加速度センサ16の検出結果から事故の衝撃が小さい場合に間引きするなど、事故の衝撃度等に応じて制御可能である。また、第2記録データ送信・保存処理についても、図7に示した送信パターンに限定されるものではない。
【0076】
また、上記の実施形態では、処理指定スイッチ51の押下回数に応じて、第1記録データ送信・保存処理を実行するか、第2記録データ送信・保存処理を実行するかを決定するものとしたが、これらの保全処理を指定するための操作方法は任意である。例えば、図9(a)に示すように、スイッチの押下回数と、スイッチ操作の有無によって保全処理を指定しても良い。この場合、スイッチが1回押下された場合は、第1記録データ送信・保存処理を実行し、スイッチが2回押下された場合は、第2記録データ送信・保存処理を実行し、さらにイベント発生後所定時間スイッチが操作されなかった場合は、第1記録データ送信・保存処理および第2記録データ送信・保存処理とは、送信対象となる記録データや送信順序が異なる第3記録データ送信・保存処理を実行する、などの制御が考えられる。また、応用例として、スイッチが3回以上押下された場合も、第1記録データ送信・保存処理〜第3記録データ送信・保存処理とは異なる、第4記録データ送信・保存処理を実行するようにしても良い。
【0077】
また、図9(b)に示すように、スイッチ操作の有無のみによって保全処理を指定しても良い。この場合、スイッチが押下された場合は、第1記録データ送信・保存処理を実行し、所定時間スイッチが操作されなかった場合は、第2記録データ送信・保存処理を実行する、などの制御が考えられる。また、図9(c)に示すように、スイッチの押下時間によって保全処理を指定しても良い。この場合、スイッチの押下時間(長押し時間)が所定時間Tよりも短い場合は、第1記録データ送信・保存処理を実行し、所定時間T以上の場合は、第2記録データ送信・保存処理を実行する、などの制御が考えられる。
【0078】
また、操作子についても、処理指定スイッチ51として設けるのではなく、他の機能設定を目的として設置されたスイッチやボタンを兼用しても良い。例えば、図9(d)に示すように、スイッチの種類によって保全処理を指定しても良い。この場合、電源スイッチであるAスイッチが長押しされた場合は、第1記録データ送信・保存処理を実行し、保全処理を強制実行させるためのスイッチであるBスイッチが長押しされた場合は、第2記録データ送信・保存処理を実行する、などの制御が考えられる。また、図9(e)に示すように、操作部13を音声操作可能な構成とすれば、「どろぼう」や「助けて」などの車内内部における音声取得に伴って第2記録データ送信・保存処理を実行し、イベント発生後所定時間音声取得なしの場合、第1記録データ送信・保存処理を実行する、などの制御が考えられる。
【0079】
また、上記の実施形態では、イベント発生後に、処理指定スイッチ51を操作するものとしたが、イベント発生前に処理指定スイッチ51を用いて、保全処理を設定しておくようにしても良い。この場合、ドライブレコーダ10は、処理指定スイッチ51による保全処理の設定値を装置内部に記憶しておき、イベント発生時に、その記憶された設定値を参照し、その参照結果に基づいて、保全処理を実行する。利用方法としては、車が停車している間は、事故が起きる可能性が低いため、第2録データ送信・保存処理に設定しておく、などが考えられる。この構成によれば、イベント発生時に慌てて操作する必要がないため、誤操作を防止できる。
【0080】
また、車が停車中であるのか、走行中であるのかの走行状況と、操作部13の操作内容と、に応じて保全処理を実行するようにしても良い。利用方法としては、停車中に処理指定スイッチ51が押下された場合、第2録データ送信・保存処理を実行し、走行中に処理指定スイッチ51が押下された場合、第1録データ送信・保存処理を実行する、などが考えられる。この構成によれば、操作内容が統一されるため、操作が容易である。
【0081】
また、上記の実施形態では、通常時において記録データ(静止画像データおよび動画データファイル)を生成し、記憶部17に記録するものとしたが(図3のフローチャートのS01参照)、通常時は動画データファイルだけ生成して記憶部17に記録し、イベント発生時に静止画像データを生成するようにしても良い。この場合、通常時において動画データファイルの生成、記録を実行し、イベント発生を検知すると、動画データファイルの生成、記録を一旦中断する。そして、動画データファイルの生成、記録を中断した状態で、記憶部17内に記録されている動画データファイルから静止画像データを生成して、当該静止画像データの送信処理および保存処理を行い、その後動画データファイル(イベント発生前)の送信処理および保存処理を行うことが好ましい。この構成によれば、通常時において静止画像データを生成する必要がないため、制御負荷を軽減できると共に、静止画像データを格納しておくための記憶部17の容量を必要としない。また、イベント発生時は、静止画像データを生成する必要があるため制御負荷が大きくなるが、動画データファイルの生成/記録を一旦停止することで、制御負荷の増大を軽減でき、ひいては記録データの送信処理および保存処理を迅速に行うことができる。
【0082】
また、上記の実施形態では、例えば第1記録データ送信・保存処理の場合、事故発生前の全ての静止画像データの送信終了後、事故発生後の動画データファイルを送信・保存するものとしたが、事故発生から所定時間前までの静止画像データを送信後、同じく事故発生から所定時間前までの動画データファイルを送信し、その後さらに遡った時点の静止画像データおよび動画データファイルを送信するようにしても良い。
【0083】
また、記録データと共に送信・保存する車両情報は、送信対象となる記録データを撮像した撮像手段400の識別情報と、操作部13の操作内容と、GPS受信機14から得られる位置情報と、RTC15から得られる時刻情報と、加速度センサ16から得られる速度情報と、を含むものとしたが、その他、車両に搭載されたエアバックの作動情報、方向指示器のオン/オフ情報、ブレーキ圧情報、ハンドル舵角情報等を含めるようにしても良い。
【0084】
また、上記の実施形態では、加速度センサ16およびマイクロフォン24から得られる情報に基づいて、イベント発生を検知するものとしたが、車両のボンネットフードの衝撃検出や、エアバッグの作動検出によって、事故発生を検知するようにしても良い。また、イベント種別としては、事故発生や犯罪発生のみならず、暴風による車体の揺れなどの自然災害を検知したり、犯罪種別(例えば、車両盗難、車両内部に搭載されたオーディオ機器等の盗難、運転席における暴行、助手席における暴行、後部座席における暴行など)を特定するようにしても良い。また、犯罪種別に応じても、送信対象となるデータの抽出や送信順序を変更するようにしても良い。例えば、車内を撮像するカメラモジュールが複数存在する場合は、処理指定スイッチ51の押下回数で暴行が行なわれた座席を指定し、その座席に応じて、送信対象となるデータの抽出や送信順序を変更しても良い。
【0085】
また、ネットワークデバイス40と無線通信を行うための通信処理部11として、携帯電話(図示省略)を利用するようにしてもよい。この場合、携帯電話を、ドライブモード時においてのみ通信処理部11として機能できるように構成すれば、運転時における通話や電子メールの操作を禁止することができ、ユーザの安全面において好ましい。
【0086】
また、上記の実施形態に示した、ドライブレコーダ10の各構成要素をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピュータを、ドライブレコーダ10の各手段として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1実施形態に係るドライブレコーダシステムのシステム構成図である。
【図2】ドライブレコーダのブロック図である。
【図3】ドライブレコーダの動作<メイン処理>を示すフローチャートである。
【図4】ドライブレコーダの動作<第1記録データ送信・保存処理>を示すフローチャートである。
【図5】第1記録データ送信・保存処理における記録データの送信・保存順序を示す図である。
【図6】ドライブレコーダの動作<第2記録データ送信・保存処理>を示すフローチャートである。
【図7】第2記録データ送信・保存処理における記録データの送信・保存順序を示す図である。
【図8】第1記録データ送信・保存処理における記録データの送信・保存順序の他の例を示す図である。
【図9】保全処理の指定操作方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0088】
10…ドライブレコーダ 11…通信処理部 13…操作部 14…GPS受信機 15…RTC 16…加速度センサ 17…記憶部 18…映像/音声信号処理部 19…中央制御部 22…着脱式メモリデバイス 23a…カメラモジュールA 23b…カメラモジュールB 24a…マイクロフォンA 24b…マイクロフォンB 30…パーソナルコンピュータ 40…ネットワークデバイス 41…ネットワークストレージ 51…処理指定スイッチ 130…イベント発生検知手段 140…撮像制御手段 400…撮像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両外部を撮像する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段により撮像した複数の映像信号に基づいて、複数の動画データを生成する動画データ生成手段と、
前記動画データを格納しておくための記憶部と、
前記動画データを前記記憶部に記録する記録手段と、
イベントの発生を検知するイベント発生検知手段と、
所定の操作を行うための操作部と、
前記イベント発生検知手段が前記イベントの発生を検知した時、前記操作部による操作方法に応じて、前記複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定する統括制御手段と、
前記統括制御手段の決定に基づいて、前記動画データを外部装置に送信する送信手段と、を備えたことを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記複数の映像信号または前記複数の動画データから、複数の静止画像データを生成する静止画像データ生成手段をさらに備え、
前記統括制御手段は、前記操作部による操作方法に応じて、前記複数の動画データおよび前記複数の静止画像データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定し、当該決定に基づいて、前記送信手段に、前記動画データおよび前記静止画像データの少なくとも一方を送信させることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記複数の撮像手段は、前記車両外部を撮像する外部撮像手段と、車両内部を撮像する内部撮像手段と、を含み、
前記操作部は、1のスイッチを含み、
前記統括制御手段は、前記スイッチの押下回数に応じて、前記外部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータを、前記内部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータよりも優先して送信するか、前記内部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータを、前記外部撮像手段により撮像した映像信号に基づくデータよりも優先して送信するかを決定することを特徴とする請求項2に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記送信対象となるデータに、前記動画データおよび前記静止画像データが含まれる場合、
前記統括制御手段は、前記送信手段に、前記動画データよりも、前記静止画像データを優先して送信させることを特徴とする請求項2または3に記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記イベント発生検知手段が前記イベントの発生を検知した時、前記送信対象となるデータを、着脱式のメモリデバイスに保存する保存手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
前記統括制御手段は、前記送信手段に、前記送信対象となるデータと共に、前記撮像手段の識別情報、前記操作部の操作内容、前記撮像手段による撮像時の時刻情報、GPSによる前記車両の位置情報、速度情報、エアバックの作動情報、方向指示器のオン/オフ情報、ブレーキ圧情報、ハンドル舵角情報、のうち1以上を含む車両情報を送信させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のドライブレコーダ。
【請求項7】
前記動画データには、音声データが含まれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のドライブレコーダ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のドライブレコーダと、
前記外部装置として機能するネットワークデバイスと、から成ることを特徴とするドライブレコーダシステム。
【請求項9】
車両に搭載されて用いられるドライブレコーダの制御方法であって、
前記ドライブレコーダが、
少なくとも車両外部を撮像する撮像ステップと、
撮像した映像信号から動画データを生成し、記憶部に記録する記録ステップと、
イベントの発生を検知するイベント発生検知ステップと、
前記イベントの発生を検知した時、操作部による操作方法に応じて、前記複数の動画データの中から送信対象となるデータおよびその送信順序のうち少なくとも一方を決定し、当該決定に基づいて、前記動画データを外部装置に送信する送信ステップと、を実行することを特徴とするドライブレコーダの制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載のドライブレコーダの制御方法における各ステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−93254(P2009−93254A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260629(P2007−260629)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】