説明

ドライブ装置の調整装置

【課題】調整値の変更前後における出力波形の差異を容易に把握することができ、出力波形の比較にかかる手間を低減できるドライブ装置の調整装置を提供する。
【解決手段】ドライブ装置の調整装置において、テストバイアスにテストステップを加えた入力を調整対象であるドライブ装置に与えて出力されたフィードバック波形を採取する波形データ採取部と、前記採取されたフィードバック波形のデータを、前記採取された順序で保持する波形キューと、フィードバック波形が前記採取された時に調整対象に設定されている調整値の情報を、前記採取された順序で保持する調整値キューと、テストステップ波形及び波形キューのフィードバック波形を、重ね合わせ、かつ、それぞれ区別可能に表示可能であるとともに、調整値キューの調整値の情報を、フィードバック波形のそれぞれと対応させて表示可能である表示部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドライブ装置の調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライブ装置における入力に対する出力の調整(応答調整)は、ドライブ装置への入力値に一定のテストバイアスをかけた上で、さらにテストステップを与えた場合の応答出力を観察して、応答を変化させる各種の調整値を調整していくことにより行われている。この調整の対象となるドライブ装置の入力値及び出力値には、例えば、入力電流値に対する出力電流値や入力された電動機への速度指令に対する速度の出力等が挙げられる。なお、ドライブ装置とは、電動機や油圧ジャッキ等の駆動制御を行うためのインバータ等からなる制御系を構成する一装置である。
【0003】
具体的には、例えば図8に示すように、入力波形として所定のステップ量を有する矩形波であるテストステップを与え、出力されるフィードバック波形のオーバーシュート/アンダーシュートの有無や立ち上がりの応答時間(例えば立ち上がり始めてからステップ量の95%の値に達するまでの時間)等を確認する。そして、確認した内容に基づいて、調整が必要な場合には比例ゲイン等の調整値を変化させて調整する。
【0004】
この従来のドライブ装置の応答調整においては、まず、調整を行う作業者がテストステップを調整対象のドライブ装置に入力する。すると、調整装置の表示画面に入力したテストステップの波形が表示される。また、このテストステップの入力を受けてドライブ装置からはフィードバック波形が出力される。このフィードバック波形も調整装置の表示画面に表示される。これらのテストステップ波形及びフィードバック波形は調整装置の表示画面にそれぞれ別々に表示される。作業者はこれらのテストステップ波形とフィードバック波形とを画面上で1つに重ね合わせて比較する。この際、比較が容易となるように表示されている各波形の表示スケールを調整する。
【0005】
このようにしてテストステップ波形とフィードバック波形とを重ね合わせたものが、図9に示す3つのグラフのうちの1つに相当する。作業者は調整値を変化させながら、異なる調整値のフィードバック波形を複数採取する。そして、図9に例示するように2、3個程度の波形グラフ(テストステップ波形とフィードバック波形との重ね合わせ)を調整装置の表示画面上に並べて比較検討し、最適と思われる調整値を決定する。なお、各波形の比較・確認は、例えば、目視やカーソルを用いて行う。
【0006】
このような制御系のフィードバックシステムの調整値の調整を行う調整装置としては、図8及び図9で説明したものの他、出力値等に基づいて制御性能を判定し、この判定した制御性能が制御仕様を満たすように調整値の調整を自動的に行うものや(例えば、特許文献1参照)、出力値の誤差が所定範囲となるように現場計器を自動調整した上で、制御装置の試験調整を自動実行するものが従来において知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−091211号公報
【特許文献2】特開2002−244721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示された従来における調整装置は、予め定量的に定められた基準値に従って制御装置(ドライブ装置)の調整値を自動的に調整するものである。このため、調整値の変更前後のフィードバック波形を作業員が直接的に確認しながら調整値を調整するこができず、きめ細かな調整値の調整が行いにくいという課題がある。
【0009】
これに対し、図8及び図9を参照して説明した従来のドライブ装置調整装置においては、調整値の変更前後のフィードバック波形を作業員が直接に確認しながら調整値を調整することができる。
【0010】
しかしながら、この図8及び図9に示すような従来のドライブ装置調整装置においては、調整値を変更する度に、出力されるフィードバック波形を調整装置に取り込み、グラフのスケールを調整してテストステップ波形と重ね合わせた上で、複数のグラフを調整装置の表示画面上に並べなければならない。このため、複数のフィードバック波形の比較を行うために煩雑な手間がかかり、調整作業にかかる時間が長くなってしまうという課題がある。
【0011】
また、作業員は、表示画面上に並べられた複数のフィードバック波形を見比べて最適な調整値を判断することとなるため、複数のフィードバック波形の微妙な違いを確認することが困難であり、判定精度が低くなってしまうという課題もある。
【0012】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、調整値の変更前後における出力波形の微妙な差異を作業者が容易に把握することができ、出力波形の比較にかかる手間を低減することが可能なドライブ装置の調整装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るドライブ装置の調整装置においては、一定のテストバイアスに所定のステップ高さ及び所定のステップ幅のテストステップを加えた入力を、調整対象であるドライブ装置に与え、前記調整対象から出力されたフィードバック波形を採取する波形データ採取部と、前記採取された前記フィードバック波形のデータを、前記採取された順序で保持する波形キューと、前記フィードバック波形が前記採取された時に前記調整対象に設定されている調整値の情報を、前記採取された順序で保持する調整値キューと、前記テストステップの波形及び前記波形キューに保持された前記フィードバック波形を、重ね合わせ、かつ、それぞれ区別可能に表示可能であるとともに、前記調整値キューに保持された前記調整値の情報を、前記フィードバック波形のそれぞれと対応させて表示可能である表示部と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るドライブ装置の調整装置においては、調整値の変更前後における出力波形の差異を作業者が容易に把握することができ、出力波形の比較にかかる手間を低減することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の波形キューの動作を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の調整値キューの動作を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の画面表示例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置のグラフスケールを調整する様子を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の表示グラフに各波形を配置する様子を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るドライブ調整装置の処理を示すフロー図である。
【図8】テストステップ波形及びフィードバック波形を説明する図である。
【図9】従来の調整値の調整時における各フィードバック波形を比較する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0017】
実施の形態1.
図1から図7は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はドライブ調整装置の全体構成を示すブロック図、図2はドライブ調整装置の波形キューの動作を説明する図、図3はドライブ調整装置の調整値キューの動作を説明する図、図4はドライブ調整装置の画面表示例を示す図、図5はドライブ調整装置のグラフスケールを調整する様子を説明する図、図6はドライブ調整装置の表示グラフに各波形を配置する様子を説明する図、図7はドライブ調整装置の処理を示すフロー図である。
【0018】
図1において、1は、調整値の調整対象であるドライブ装置である。このドライブ装置は、電動機や油圧ジャッキ等の制御対象機器の駆動制御を行うためのインバータ等からなる制御系を構成する一装置である。すなわち、調整対象1であるドライブ装置は、制御指令信号の入力を受け、この入力された制御指令に従って制御対象機器を動作制御するための信号を制御対象機器へと出力する。この調整対象1であるドライブ装置の入力に対する出力応答は、比例ゲイン等の各種の調整値を適宜変更することで調整することができる。
【0019】
2は、この調整対象1の調整値の調整を行うための調整装置本体である。この調整装置本体2には、一定のテストバイアスに所定のステップ高さ及び所定のステップ幅のテストステップを加えた波形を調整対象1へと入力し、この入力したテストステップに応じて調整対象1から出力されたフィードバック波形を採取する波形データ採取部3が備えられている(テストバイアスとテストステップについては図8も参照)。なお、ここでは例えば、テストバイアスを調整対象1への入力の最大値の80%程度とし、テストステップのステップ量(高さ)を同5%程度とする。
【0020】
調整対象1の調整値の調整作業を行う調整員は、調整装置本体2に対して所望する調整値を入力する。波形データ採取部3は、入力された調整値を調整対象1に設定する。また、調整員は、波形データ採取部3から調整対象1へと入力するテストステップ波形のステップ量についても、その値を指定することができる。そして、調整員がステップ開始指示を与えると、波形データ採取部3は指定されたステップ量のテストステップ波形を生成して、調整対象1へと入力する。
【0021】
調整対象1は入力されたテストステップ波形に応じ、設定された調整値に従って、フィードバック波形を出力する。この調整対象1から出力されたフィードバック波形は、調整装置本体2の波形データ採取部3によって採取される。
【0022】
波形データ採取部3によって採取されたフィードバック波形データは、調整装置本体2の備える波形キュー4へと送られる。この波形キュー4は、波形データ採取部3から送られたフィードバック波形データを、最新のものから所定の個数だけ保持するものである。
【0023】
この波形キュー4は、既に所定の個数の上限一杯のフィードバック波形データを保持している状態で、新たなフィードバック波形データが波形データ採取部3から送られてきた場合には、保持しているフィードバック波形データのうち最も古いものを破棄した上で、送られてきた最新のフィードバック波形データを記憶し、差し引きで所定の個数のフィードバック波形データが保持された状態を維持する。なお、ここでは、この波形キュー4におけるフィードバック波形データの保持上限数である所定の個数を3とする。
【0024】
また、さらに、この波形キュー4は、波形データ採取部3により生成され調整対象1に入力されたテストステップ波形についても最新のものを1個、フィードバック波形とは別に記憶保持している。この波形キュー4におけるテストステップ波形及びフィードバック波形の保持の様子を図2に示す。
【0025】
調整員により調整装置本体2に入力された調整値の値は、波形データ採取部3を経由して調整対象1に設定されるとともに、調整装置本体2の備える調整値キュー5へも送られる。この調整値キュー5は、調整員により入力された調整値を、最新のものから所定の個数だけ保持するものである。この調整値キュー5における調整値の保持上限数である所定の個数は、先の波形キュー4における波形データの保持上限数である所定の個数と同一に設定される。すなわち、ここでは、この調整値キュー5における調整値の保持上限数である所定の個数も3に設定されている。
【0026】
そして、調整値キュー5は、既に所定の個数の上限一杯の調整値を保持している状態で、新たな調整値が調整員により入力された場合には、保持している調整値うち最も古いものを破棄した上で、入力された最新の調整値を記憶し、差し引きで所定の個数の調整値が保持された状態を維持する。この調整値キュー5における調整値の保持の様子を図3に示す。この図3の例では、調整値キュー5には既にゲイン(G)の値として170、200及び180の3つの値が保持された状態で調整員によりゲインの値として190が入力され、最も古い170の値が破棄されて代わりにこの入力された190の値が調整値キュー5に保持される様子が示されている。
【0027】
なお、調整対象1の調整値が複数種類ある場合には、これら複数種の調整値を1セットとして、前記所定の個数のセット数だけ、調整値キュー5に保持される。従って、この際、これら複数種の調整値のうちの少なくとも一種が異なる値に設定されると、従前のものとは異なるセットになったとして扱う。
【0028】
波形キュー4に保持されているテストステップ波形、及び、同じく波形キュー4に保持されている最大で前記所定の個数(ここでは3個)のフィードバック波形、並びに、調整値キュー5に保持されている同じく最大で前記所定の個数の調整値は、調整装置本体2が備えるグラフ表示部6に表示される。
【0029】
このグラフ表示部6における表示内容の例を図4に示す。このように、グラフ表示部6には、テストステップ波形(実線)と3個のフィードバック波形(点線、一点鎖線及び二点鎖線)とが、常に1画面上の1つのグラフ内に重ねて表示されている。この際、表示される4つの波形の表示態様は、各々が互いに区別可能なように、例えば、図4に示すように線種をそれぞれ異なるものとしたり、表示色や表示濃度をそれぞれ異なるものとしたりされている。
【0030】
また、表示されている3つのフィードバック波形については、それぞれのフィードバック波形が得られた際に設定されていた調整値の値が、凡例として表示されている(図4の右上部分参照)。そして、この凡例における各調整値の表示態様は、対応するフィードバック波形の表示態様と同一のものとされており、対応するフィードバック波形と調整値とが一目で判別できるようになっている。
【0031】
このように、各波形は、線種や表示色、表示濃度等によって互いに区別可能にグラフ表示部6に表示されている。このため、調整値を変化させた結果、フィードバック波形が前回や前々回の採取時のものとどのように変化したかを把握することが容易になる。フィードバック波形が目的とするものでなかった場合に、調整値をどのように変更したらよいかの検討を容易に行うことが可能となる。
【0032】
このようなグラフ表示部6における表示内容は、表示制御部7により制御されている。この表示制御部7は、波形キュー4や調整値キュー5に保持されているデータを基に、グラフ表示部6に図4のようなグラフを表示する機能を有しているが、特に、グラフ高さ判断部7a、並びに、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bを備えている。
【0033】
グラフ高さ判断部7aは、グラフ表示部6に表示する各波形グラフの高さを判断して、各波形グラフの縦スケールを決定するものである。このグラフ高さ判断部7aによる各波形グラフの高さの判断においては、まず、全ての波形グラフを総合した場合の最大値と最小値を求める。そして、図5に示す、グラフ表示部6の表示領域の上縁から波形グラフの最大値までの距離A、及び、表示領域の下縁から波形グラフの最小値までの距離Bが、それぞれ適切な所定の範囲内に収まるように、各波形グラフの縦スケールを決定する。
【0034】
ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bは、各波形の開始点すなわち立ち上がり点を判断するものである。また、このステップ開始点及びグラフ幅判断部7bは、テストステップの立ち上がりから立ち下がりまでの時間すなわちステップ幅(グラフ幅)を判断して、各波形グラフの横スケールの決定も行う。このステップ開始点及びグラフ幅判断部7bにおけるテストステップの開始点(立ち上がり点)及びテストステップのステップ幅(グラフ幅)の判断は、基本的には調整対象1の調整前に調整員により入力された採取時間に基づいて行われる。
【0035】
すなわち、調整員は、調整作業に先立って調整対象1に与えるテストステップのステップ量を決定して調整装置本体2に入力するとともに、ステップの立ち上がりまでの時間(開始時間)及びステップが立ち上がってから立ち下がるまでの時間を決め、採取時間として調整装置本体2に入力している。そして、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bは、この入力された採取時間に基づいてテストステップの開始点(立ち上がり点)及びテストステップのステップ幅(グラフ幅)を判断する。
【0036】
そして、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bは、こうして判断したテストステップの開始点(立ち上がり点)及びテストステップのステップ幅(グラフ幅)に基づいて、図5に示す、グラフ表示部6の表示領域の左縁からテストステップの開始点までの距離C、及び、表示領域の右縁からテストステップの立ち下がり点までの距離Dが、それぞれ適切な所定の範囲内に収まるように、表示する波形グラフの横スケールを決定する。
【0037】
表示制御部7は、グラフ高さ判断部7a、並びに、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bにおいて以上のようにして決定された表示位置及び縦横のスケールに従って、テストステップ波形及び各フィードバック波形のグラフをグラフ表示部6に表示する。この表示は、前述したように、これらのグラフ波形は重ね合わされて1つのグラフ内において行われる。この際、図6に示すように、各波形グラフの重ね合わせは、各波形の開始点(立ち上がり点)を基準として各波形の開始点が一致するように配置されて行われる。
【0038】
なお、テストステップの採取時間は調整に先立って予め定め、調整中には原則として変更しないため、どのフィードバック波形に対しても、テストステップ波形に対する開始点の位置関係は共通のものとなる。
【0039】
また、この重ね合わせの順序については、まず、比較の基準とするテストステップ波形を一番下(後ろ)に配置し、このテストステップ波形の上(手前)側に、波形キュー4に保持されている各フィードバック波形を、古いものから新しいものの順に下(後ろ)から上(手前)へと順番に並ぶように重ね合わせられる。このように、最も新しいフィードバック波形が最も上(手前)となるように重ね合わせることで、最後に採取したフィードバック波形が理想の波形であるかどうかを確認しやすくすることができる。
【0040】
なお、ここでは、重ね合わせの順序として最新のフィードバック波形が一番上(手前)側に配置されるようにしたが、この順序に固定されるものではなく、他の順序としたり、あるいは、調整員が必要に応じて適宜変更できるようにしてもよい。また、この際、レイヤの概念を導入して、各波形毎にレイヤを設け、これらのレイヤの順番を入れ換えることにより各波形の重ね合わせる順序を変更したり、レイヤの表示/非表示を切り換えることにより表示する波形を選択できるようにしてもよい。
【0041】
このようにして、表示制御部7の備えるグラフ高さ判断部7a、並びに、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bにおいて、グラフ表示部6に表示する波形グラフの表示位置を適切に自動的に調節し、調整員が容易に波形の比較を行うことができるようにするとともに、グラフ表示部6に各フィードバック波形の調整値の凡例を表示するためのスペースを確保している。
【0042】
図7のフロー図は、この実施の形態におけるドライブ調整装置の処理を示すものである。
まず、ステップS1において、一定のテストバイアスを与えて調整対象1であるドライブ装置を運転する。また、調整員は、このテストバイアスに対して追加するテストステップのステップ量や採取時間(ステップの立ち上がりと立ち下がりの時間)を設定入力する。調整員によりステップ量及び採取時間が調整装置本体2に入力されると、ステップS2において、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bは、ステップ開始点及びグラフの幅を決定する。
【0043】
次に、ステップS3において、調整員は、調整対象1に設定する調整値の確認又は変更を行い、調整装置本体2に対してステップ開始を指示する。すると、ステップS4へと移り、調整装置本体2は波形データ採取部3から調整対象1へとテストステップを入力し、調整対象1から出力されたフィードバック波形を採取する。
【0044】
続くステップS5において、波形データ採取部3はステップS4で採取したフィードバック波形を波形キュー4へと送る。波形キュー4は、送られてきた波形データを自身に格納する。この際、波形キュー4に既に上限(所定の個数)分の波形データが保持されていた場合には、最古の波形データを破棄した上で、送られてきた最新の波形データを保持する。
【0045】
また、同様に、ステップS6において、調整値キュー5に波形採取時の調整値情報が保持される。すなわち、調整員により入力された調整値は調整値キュー5へと送られ、調整値キュー5は、送られてきた調整値データを自身に格納する。この際、調整値キュー5に既に上限(所定の個数)分の調整値データが保持されていた場合には、最古の調整値データを破棄した上で、送られてきた最新の調整値データを保持する。
【0046】
次に、ステップS7へと進み、表示制御部7のグラフ高さ判断部7aは、現在波形キュー4に保持されている全ての波形データの中から最大値及び最小値を取り出し、当該最大値及び最小値に基づいてグラフ表示部6に表示するグラフの高さ(縦スケール)を決定する。なお、波形キュー4にフィードバック波形が1つも保持されていない状態でのフィードバック波形の初回採取時には、当該波形の最大値及び最小値からグラフの高さを決定することになる。
【0047】
そして、続くステップS8において、グラフ表示部6は、グラフ高さ判断部7aにより決定したグラフの高さや、ステップ開始点及びグラフ幅判断部7bにより決定したグラフの幅等に基づいて、波形キュー4内の波形データ及び調整値キュー5内の調整値データの表示位置を決定してグラフ表示部6に表示する。
【0048】
フィードバック波形の初回採取時には、波形キュー4にフィードバック波形が1つしか保持されていないため、グラフ表示部6にはテストステップ波形と1つのフィードバック波形とが重ね合わされた状態で表示される。そして、フィードバック波形を採取する度に重ねて表示される波形が増えていき、表示されるフィードバック波形が上限である所定の個数(ここでは3)に達した後は、新しくフィードバック波形を採取すると最古のフィードバック波形が波形キュー4から削除されてグラフ表示部6に表示されなくなる。
【0049】
ステップS8で各波形が調整装置本体2のグラフ表示部6に表示されると、ステップS9において、調整員は表示された各波形のグラフを確認し、フィードバック波形が目的とする理想の形状であれば現在の調整値にて調整対象1の調整を終了する。一方、フィードバック波形が目的とする理想の形状でなければステップS3へと戻り再び調整値を変更してステップ開始指示を入力し、波形を採取して調整を続ける。
【0050】
以上のように構成されたドライブ装置の調整装置は、一定のテストバイアスに所定のステップ高さ及び所定のステップ幅のテストステップを加えた入力を、調整対象であるドライブ装置に与え、調整対象から出力されたフィードバック波形を採取する波形データ採取部と、この採取されたフィードバック波形のデータを、採取された順序で保持する波形キューと、フィードバック波形が採取された時に調整対象に設定されている調整値の情報を、採取された順序で保持する調整値キューと、テストステップ波形及び波形キューに保持されたフィードバック波形を、重ね合わせ、かつ、それぞれ区別可能に表示可能であるとともに、調整値キューに保持された調整値の情報を、フィードバック波形のそれぞれと対応させて表示可能である表示部と、を備えたものである。
【0051】
このため、異なる調整値により得られた複数のフィードバック波形を常に1画面上の1つのグラフ内に重ねて表示でき、波形比較が容易になり、調整員による波形比較の判定精度向上や時間短縮が期待できる。また、表示するグラフ画面が1つだけで良いことからディスプレイ上の表示スペースの節約も図ることができる。
【0052】
なお、以上は、調整対象1であるドライブ装置を調整するため専用の調整装置本体2を用意することを想定して説明してきたが、以上において説明した機能を実現するための情報処理を、パーソナルコンピュータ等の電子計算機において実行することにより、調整装置本体2を構成するようにすることも可能である。その際には、調整装置本体2に必要な機能を実現するための情報処理の手続を規定し、当該情報処理を電子計算機において実行させるためのプログラムを作成しておくこととなる。
【符号の説明】
【0053】
1 調整対象
2 調整装置本体
3 波形データ採取部
4 波形キュー
5 調整値キュー
6 グラフ表示部
7 表示制御部
7a グラフ高さ判断部
7b ステップ開始点及びグラフ幅判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定のテストバイアスに所定のステップ高さ及び所定のステップ幅のテストステップを加えた入力を、調整対象であるドライブ装置に与え、前記調整対象から出力されたフィードバック波形を採取する波形データ採取部と、
前記採取された前記フィードバック波形のデータを、前記採取された順序で保持する波形キューと、
前記フィードバック波形が前記採取された時に前記調整対象に設定されている調整値の情報を、前記採取された順序で保持する調整値キューと、
前記テストステップの波形及び前記波形キューに保持された前記フィードバック波形を、重ね合わせ、かつ、それぞれ区別可能に表示可能であるとともに、前記調整値キューに保持された前記調整値の情報を、前記フィードバック波形のそれぞれと対応させて表示可能である表示部と、を備えたことを特徴とするドライブ装置の調整装置。
【請求項2】
前記波形キュー及び前記調整値キューは、それぞれ前記フィードバック波形のデータ及び前記調整値の情報を、最新のものから所定の個数を上限として保持することを特徴とする請求項1に記載のドライブ装置の調整装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記テストステップの波形を最も下に配置し、当該テストステップの波形の上に前記波形キューに保持されている各前記フィードバック波形を、古いものから新しいものの順に下から上へと順番に並ぶように重ね合わせて表示することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のドライブ装置の調整装置。
【請求項4】
前記表示部に表示される前記テストステップの波形及び前記フィードバック波形の全ての波形グラフのうちの最大値及び最小値に基づいて、グラフの縦スケールを決定するグラフ高さ判断部と、
前記テストステップの波形の立ち上がり点及び立ち下がり点から、グラフの横スケールを決定するグラフ幅判断部と、備え、
前記表示部は、前記グラフ高さ判断部及び前記グラフ幅判断部により決定されたスケールに従って決められた表示位置に、前記テストステップの波形及び前記フィードバック波形を表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のドライブ装置の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256145(P2012−256145A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128001(P2011−128001)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】