説明

ドラフト装置のトップローラのためのダブルディスクシール

ドラフト装置のトップローラのためのダブルディスクシールであって、軸(6)の端部に各1つのローラボディ(2)が回転可能に支承されており、シールディスク(25)が、シールするために滑りの無い狭いシールギャップをローラボディ(2)に対して形成している。シールディスク(25)は、少なくとも1つのアングルリング(24)を形成する支持部材によって軸方向で支持される。この支持部材(24)は、シールディスク(25)とローラボディ(2)との間の外側に位置する各シールギャップに別のシールギャップ(19,20)が前置されているように構成されている。本発明によるダブルディスクシールによって、製作及び組込みに関する手間並びにエラーの発生が減少され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式のドラフト装置のトップローラのためのダブルディスクシールに関する。
【0002】
紡績機のドラフト装置に設けられたツイントップローラ又はツイン押圧ローラにおいて、一般に転がり軸受けを有するローラケーシングの内室は周辺空気からの繊維浮遊物に対してシールされ、このことは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4039804号明細書又はドイツ連邦共和国特許第19509055号明細書から公知である。これらの明細書に示されたシールは、両側にフランジを備えた一体のU字形スリーブから成っている。当該の公知のシールはそのシール作用を、一方ではフランジによって形成された、外輪孔に対する2つのシールギャップから得て、他方では外側に位置するシールギャップを通って侵入した繊維及び汚染粒子を集めることができ且つ内側に位置するシールギャップを通って更に転がり軸受けに侵入することを防ぐ両フランジ間の中空室によって得る。このようなシールは、簡単且つ廉価に製作されて組み込まれる。組込みは、自動化された組込み装置によって実施可能である。
【0003】
打抜き加工技術的な理由から、両フランジの内の一方のフランジの直径は、他方のフランジの直径よりも僅かに小さくカットしなければならない。このことは、異なるシールギャップ幅を生ぜしめる。直径製作時の製作誤差及び孔とフランジとの間の偏心の可能性に基づいて、ローラケーシングの孔におけるフランジの接触を確実に防止し延いては滑りの無いシールを保証するためには、一般にシールギャップにおける安全増大要素が考慮される。従って、繊維浮遊物及びダストによって極端に負荷される環境では、比較的大きなシールギャップによってシール作用が損なわれており、スリーブのフランジによって形成された中空室内に、ローラケーシングの回転がやや妨げられるか又は許容不能に制動される多くの汚れが集まるということが時々起こり得る。
【0004】
本発明の上位概念を形成するドイツ連邦共和国特許出願公開第1510922号明細書には、軸方向でばね弾性的に圧力負荷されるシールディスクを備えたシールが記載されており、この場合、内側のセンタリングされた支持ディスクに、外側のセンタリングされたシールディスクが大きなインナギャップを備えて続いている。軸方向で付与される圧力によって、半径方向で運動するシールディスクが位置固定される。このようにして、シールディスクとローラケーシングとの間に極端に小さなシールギャップが得られる。
【0005】
但し、このようなシールは若干数の構成部材から成っている。自動組込みのためには手間のかかる組込み装置が必要であり、この場合、自動組込みの欠陥性は高められている。このことは、上で述べた一体のU字形スリーブを使用する場合よりも著しく高いコストを生ぜしめる。シールディスクは、軸方向で緊締ばねの小さな力によってしか支持されておらず、軸方向でややシールの内側に向かって運動される恐れがある。このことは不都合な作用を伴って、特に軸における巻付きが生じた場合に発生する。この場合、せき止められた繊維による圧力は、外側に向かって周辺空気に対して配置されたシールディスクのシール機能が持続的に損なわれるように大きくなる恐れがある。シールディスクがセンタリングされた位置から押し出されて、シールディスクの傾斜によりトップローラが制動される恐れがある。シールディスクに集まる浮遊繊維によっても機能を損なわれる恐れがある。前掲のドイツ連邦共和国特許出願公開第1510922号明細書に示されたシールのこれらの欠点を伴った構成は、実地において有利ではないと判ったので達成されてもいない。
【0006】
本発明の課題は、トップローラのための改善されたダブルディスクシールを提供することである。
【0007】
この課題は、本発明に基づいて請求項1の特徴部に記載の構成を有する装置によって解決される。
【0008】
この装置の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0009】
外側に位置するシールギャップに前置された別のシールギャップを備えた本発明によるダブルディスクシールでは、巻付きに際して外部からシールディスクに作用する軸方向力による機能妨害が生じない。ダブルディスクシールは、簡単に自動組込みされる。これにより、ダブルディスクシールの製作も組込みも廉価に実施され得る。ダブルディスクシールの側方の規定された向きは、組込みにおいては必要ない。軸の両端部で同一構成のダブルディスクシールをそれぞれ使用することができる。これにより、本発明によるダブルディスクシールでは、異なる構成の製作及び保管は不要である。
【0010】
請求項6記載の支持部材は、単一の構成でしか製作する必要がない。このことは、本発明によるダブルディスクシールのために必要且つ製作されるべき様々な構成部材の数を減少させる。
【0011】
ダブルディスクシールを予め組み込まれる構成群としてまず最初に、軸に設けられたローラボディが転がり軸受けの転がり部材を充填するために傾動され得る程度に軸に被せ嵌め、転がり軸受けの完成に次いで当該構成群を使用位置まで押し戻す組込みは、シールディスクも支持部材も、組込み時に問題が発生すること無く狭いシールギャップを形成するということを可能にする。構成群を形成するためのプレ組込みも、軸への組込みも自動化され得るので、迅速且つ廉価に実施され得る。
【0012】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0013】
図1に示したツイントップローラ1は2つのローラボディ2,3を有しており、これらのローラボディ2,3は、転がり軸受け4,5によって一貫して延びる共通の軸6に支承されている。この軸6には凹部8が形成されており、この凹部8において軸6は汎用のホルダによって保持される。各ローラボディ2,3の内室は、それぞれ本発明によるダブルディスクシール7,7Aによって、汚染に対してシールされている。
【0014】
図2には、ローラボディ2と軸6との間で作用するダブルディスクシール7が拡大されて示されている。シールディスク9のための支持部材はアングルリング10として形成されており、この場合、ディスク状の部分11はシールディスク9のためのストッパとして働く。アングルリング10のスリーブ状の部分12はストッパ面13を有しており、このストッパ面13に沿って、ディスク14として構成された支持部材が挿入され且つかしめ締結によって位置固定されている。ディスク14はシールディスク15のためのストッパを形成している。シールディスク9及びシールディスク15の構成は同一である。これらのシールディスク9,15は、コイルばね16によって押圧力を以て軸方向で負荷される。この場合、シールディスク9はアングルリング10のディスク状の部分11に向かって押圧され、シールディスク15はディスク14に向かって押圧される。このばね力が、シールディスク9,15をそれぞれ所要のセンタリングされた使用位置に位置固定するが、新規の軽いセンタリングはいつでも可能である。コイルばね16は丸形線材から製作されており、この場合、このコイルばね16の線材直径と巻条数とは、当該コイルばね16の長さが圧着される両シールディスク9,15間の間隔よりもやや短くなるように予負荷可能であるように選択されている。コイルばね16の内径は、このコイルばね16がアングルリング10のスリーブ状の部分12に対して僅かな半径方向遊びしか有していないように選択されている。このようにして、ばね巻条はほぼ隙間無しの表面を形成しており、これにより、組込みが容易になる。シールディスク9,15はローラボディ2と相俟って、それぞれ非常に狭いシールギャップ17,18を形成している。ディスク14の外径及びアングルリング10のディスク状の部分11の外径は、シールディスク9,15の外径よりも少しだけ小さい。例えばローラボディ2は16.18mmの内径を有しているのに対して、シールディスク9,15の外径はそれぞれ16.15mmであり、ディスク14及びディスク状の部分11の外径は、それぞれ15.97mmである。これにより、ディスク14とディスク状の部分11との間の別のシールギャップ19,20もやはり狭く、軸6における巻付きに際して、ダブルディスクシール7のシール機能が持続的に損なわれるということを防止する。アングルリング10は内径の各端部にそれぞれ面取り部21,22を有している。面取り部22は、主としてディスク14のかしめ締結に際して形成される。面取り部21,22は、ダブルディスクシール7を軸6に圧着する際のセンタリングを容易にする。
【0015】
ダブルディスクシール7を組み込むためには、シールディスク9、コイルばね16及びシールディスク15が順次アングルリング10のスリーブ状の部分12に被せ嵌められ、次いで、ディスク14がストッパ面13に接合されて、かしめ締結によって位置固定される。このようにして得られた構成群は軸6に圧着されて、ローラボディ2が軸6の端部域で転がり軸受け4の球を充填するために傾動可能な程度に、凹部8に向かって押しずらされる。
【0016】
転がり軸受け4を組み込んだ後で、構成群として形成されたダブルディスクシール7は軸6の端部の方向若しくはローラボディ2の方向で、使用位置に到達してシール機能を発揮することができるまで押し戻される。全ての組込みステップは、自動化された1組込み手順で実施可能である。
【0017】
ダブルディスクシール7は、前記構成群を向きを決めずに、即ち、向きを特定すること無く組み込むことができるように構成されている。ダブルディスクシール7及びダブルディスクシール7Aの構成は、図2及び図3に示したように同一である。ダブルディスクシール7が図1では軸6の左側の端部に組み込まれているのに対して、構成の同じダブルディスクシール7Aは、軸6の右側の端部においてローラボディ3に組み込まれている。本発明による同一構成のシール機能及び利点は、両位置においてフルに利用可能である。
【0018】
図4には、ダブルディスクシール23を備えた択一的な実施例が示されている。予め組み込まれる構成群を形成するためには、アングルリング24のスリーブ状の部分にシールディスク25が被せ嵌められている。このように装着された2つのアングルリング24は、弾性プラスチックから成る結合スリーブ26に鏡像的に圧入され、その結果、当該アングルリング24のスリーブ状の部分が結合スリーブ26内で互いに突き合わさるように保持される。結合スリーブ26は両端部にばねアーム27を有している。結合スリーブ26は、ばねアーム27と一緒に一体で廉価に射出成形工具において製作され得、これにより、所要の個別部品数及び組込み手間を減少させる。構成群として予め組み込まれたダブルディスクシール23は、軸方向で対称的に形成されている。
【0019】
ばねアーム27のばね力によって、シールディスク25はそれぞれ軸方向で、ストッパとして作用するアングルリング24のディスク状の部分に向かって押圧され、そこでシフト可能に位置固定される。構成群として組み込まれたこのダブルディスクシール23も、図1〜図3に示したダブルディスクシール7,7Aと同様に、向きを決めずに軸6に組み込まれてよい。両アングルリング24は、ローラボディ2,3と協働して別の狭いシールギャップ19,20を形成するように構成されている。
【0020】
ダブルディスクシール23及び転がり軸受け4,5の組込みは、ダブルディスクシール7,7Aの場合と同様に行われる。アングルリング24は、薄板から非切削式で廉価に製作され得る。ダブルディスクシール23を組み込むためには、アングルリング24,シールディスク25及び結合スリーブ26、即ち3つの異なる部材だけを製作して保管しておけばよい。このことは著しいコスト節約を生ぜしめる。
【0021】
ダブルディスクシール23の構成群をU字形に形成することによって、このダブルディスクシール23は、前掲のドイツ連邦共和国特許第19509055号明細書から公知の一体的なU字形のスリーブシールと同じ組込み装置によって、自動的に軸6に組み込まれる。
【0022】
本発明は、説明した実施例に限定されるものではない。特にアングルリング及びばね部材の構成に関しては、本発明の枠内で別の構成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ローラボディにそれぞれ本発明によるダブルディスクシールを有しているツイントップローラを部分的に断面して示した図である。
【図2】図1に示した部分Yの拡大断面図である。
【図3】図1に示した部分Zの拡大断面図である。
【図4】アングルリングとして形成された2つの支持部材を備えたダブルディスクシールの構成の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフト装置のトップローラのためのダブルディスクシールであって、軸の端部に各1つのローラボディが回転可能に支承されており、シールディスクが、シールするために滑りの無い狭いシールギャップをローラボディに対して形成し且つ少なくとも部分的にディスク形の支持部材によって軸方向で支持されるように形成且つ配置されており、アングルリングとして構成された支持部材が設けられており、該支持部材のスリーブ状の部分が軸に被せ嵌められており、両シールディスクを押し離してそれぞれ支持部材に押しつけるばね部材が設けられている形式のものにおいて、
シールディスク(9,15,25)とローラボディ(2,3)との間のシールギャップ(17,18)に、別のシールギャップ(19,20)が前置されているように支持部材(10,14,24)が構成されていることを特徴とする、ドラフト装置のトップローラのためのダブルディスクシール。
【請求項2】
別のシールギャップ(19,20)が、支持部材(10,14,24)とローラボディ(2,3)との間に形成されている、請求項1記載のダブルディスクシール。
【請求項3】
支持部材(10,14,24)の最大直径と、シールディスク(9,15,25)の最大直径との差が0.5mmよりも小である、請求項1又は2記載のダブルディスクシール。
【請求項4】
支持部材の最大直径と、シールディスク(9,15,25)の最大直径との差が0.2mmよりも小である、請求項3記載のダブルディスクシール。
【請求項5】
ばね部材がコイルばね(16)である、請求項1記載のダブルディスクシール。
【請求項6】
ダブルディスクシール(23)が2つの支持部材を有しており、これらの両支持部材がアングルリング(10)として構成されており、該アングルリングのスリーブ状の部分がそれぞれ鏡像的に軸に相対するように被せ嵌められて、アングルリングのディスク形の部分がそれぞれ外側に位置し且つ両シールディスク(25)がディスク形の部分の間に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のダブルディスクシール。
【請求項7】
支持部材のスリーブ状の部分が、結合スリーブ(26)に圧入されており且つ両シールディスク(25)と、少なくとも1つのばね部材と一緒に予め組み込まれる1構成群を形成している、請求項6記載のダブルディスクシール。
【請求項8】
ばね部材が結合スリーブ(26)のばねアーム(27)によって形成されており、結合スリーブ(26)が弾性的なプラスチックから成っている、請求項7記載のダブルディスクシール。
【請求項9】
アングルリング(24)が非切削式で薄板から成形されている、請求項6又は7記載のダブルディスクシール。
【請求項10】
ダブルディスクシール(7,7A,23)を構成群として、まず最初に軸(6)に設けられたローラボディ(2,3)が転がり軸受け(4,5)の転がり部材を充填するために傾動され得る程度に軸に被せ嵌め、次いで当該構成群を使用位置まで押し戻すことを特徴とする、請求項1記載のダブルディスクシールの組込み法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−507415(P2006−507415A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548811(P2004−548811)
【出願日】平成15年10月25日(2003.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012023
【国際公開番号】WO2004/042127
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505009715)テクスパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【Fターム(参考)】