説明

ドラフト装置及びドラフト装置ユニット

【課題】ドラフトローラユニットの位置調整を容易にする。
【解決手段】支持部材と、支持部材によって支持されている2つのボトムローラ及び2つのモータユニット52によって構成されているドラフトローラユニット30a、30bは、フレーム40の水平面に対して60°程度傾斜した傾斜面41a上に配置されている。フレーム40には、脚部42の左右両端部から左右方向外側に延びた軸42aに回動自在に支持された回動部材46と回動部材46を付勢するねじりバネとからなるバランス機構43が設けられており、ドラフトローラユニット30a、30bは、支持部材に設けられた接触部64において、バランス機構43により、傾斜面41aに沿って上向き(自重による移動方向と反対方向)に付勢されることで、傾斜面41aに沿って下方に滑動してしまわないようバランスが取られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライバを延伸しつつ搬送するドラフト装置、及び、ドラフト装置を複数備えたドラフト装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のドラフト装置においては、4対のドラフトローラ(バックローラ、サードローラ、ミドルローラ及びフロントローラ)によってスライバを延伸させるとともに繊維束にして紡績部に搬送している。また、これら4対のドラフトローラを構成する4つのボトムローラは、傾斜面上に配置された支持部材に回転自在に支持されることで傾斜面の傾斜方向に沿って配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、このようなドラフト装置においては、スライバの繊維の長さ等に応じて、ドラフトローラ同士の間隔を変更する必要があり、このとき、ボトムローラについては、支持部材をその傾斜面に沿って移動させることにより、その位置を変更する。
【0005】
しかしながら、ボトムローラは金属材料により構成されていることが多く、ボトムローラを含めた支持部材の重量はかなり大きいため、支持部材を傾斜面に沿って移動させるには大きな力を必要とし、ボトムローラの位置変更の作業は困難なものとなる。特に、ドラフト装置を前後方向に関してコンパクトにするために、支持部材が配置される傾斜面の水平面に対する傾斜角度を大きくしている場合、支持部材が複数のドラフト装置のボトムローラ、あるいは、ボトムローラを駆動するためのモータを支持している場合などには、支持部材を移動させるのに必要な力が特に大きくなり、ボトムローラの位置変更の作業は特に困難なものとなる。
【0006】
本発明の目的は、ドラフトローラの位置変更を容易に行うことが可能なドラフト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るドラフト装置は、傾斜したフレーム上に位置調整自在に設置されたドラフトローラユニットにおいて、該ドラフトローラユニットの自重による移動方向と反対方向に該ドラフトローラユニットを付勢するようにしたバランス機構を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明によると、傾斜したフレーム上に位置調整自在に設置されたドラフトローラユニットが、バランス機構によって、自重による移動方向と反対方向に付勢されているため、ドラフトローラユニットの重量が大きい場合や、フレームの水平面に対する傾斜角度が大きい場合でも、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【0009】
第2の発明に係るドラフト装置は、第1の発明に係るドラフト装置において、スライバを延伸する複数のドラフトローラと、前記複数のドラフトローラを構成する1つのドラフトローラ、及び、前記1つのドラフトローラを支持する支持部材を備えた前記ドラフトローラユニットと、前記ドラフトローラユニットが取り付けられる前記フレームと、前記ドラフトローラユニットを前記フレームに固定する固定部材とを備え、前記フレームは、前記ドラフトローラユニットが配置される傾斜面を有し、前記ドラフトローラユニットは、前記固定部材によるフレームへの固定が解除された状態で、前記傾斜面に沿って移動可能となっていることで位置調整自在となっており、さらに、前記フレームには、前記傾斜面に配置された前記ドラフトローラユニットを、自重による移動方向と反対方向に付勢する前記バランス機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、ドラフトローラユニットをフレームの傾斜面に沿って移動させて位置調整することにより、スライバの繊維の種類に応じて、ドラフトローラユニットの間隔を調整することができる。
【0011】
このとき、ドラフトローラユニットの重量が大きい場合や傾斜面の傾斜角度が急である場合などには、ドラフトローラユニットを傾斜面に沿って移動させるのに大きな力を必要とするため、上記ドラフトローラユニットの位置調整の作業は困難なものとなる。
【0012】
しかしながら、本発明では、フレームに、ドラフトローラユニットを自重による移動方向と反対方向に付勢するバランス機構が設けられているため、ドラフトローラユニットを移動させるのに必要な力がバランス機構による付勢力の分だけ小さくなり、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【0013】
第3の発明に係るドラフト装置は、第2の発明に係るドラフト装置において、前記バランス機構が、前記フレームに支持されたバネと、前記ドラフトローラユニットの下方に配置されており、前記バネに付勢されることで、前記ドラフトローラユニットに押し付けられる押し付け部材とを有していることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、バネと押し付け部材とによって、バランス機構を容易に形成することができる。
【0015】
第4の発明に係るドラフト装置は、第3の発明に係るドラフト装置において、前記バネの付勢力が、前記ドラフトローラユニットの重量と釣り合う付勢力であることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、バネの付勢力がドラフトローラユニットの重量と釣り合う付勢力であるため、作業者が傾斜面に沿って加えた力が、ほぼ全てドラフトローラユニットの移動に作用することとなり、ドラフトローラユニットの位置調整が簡単になる。
【0017】
第5の発明に係るドラフト装置は、第3又は第4発明に係るドラフト装置において、前記バネが、ねじりバネであって、前記押し付け部材は、前記ねじりバネによって、その軸を中心として回動する方向に付勢されており、前記傾斜面上に前記ドラフトローラユニットが配置されていない状態で、前記付勢部材により付勢された前記押し付け部材が、前記ドラフトローラユニットを押し付け可能な位置からさらに移動してしまうのを規制する規制手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0018】
バネがねじりバネである場合には、傾斜面にドラフトローラユニットが配置されていない状態で、ねじりバネに付勢されている押し付け部材が、ドラフトローラユニットに押し付け可能な位置からさらに移動してしまう場合があり、このような場合には、傾斜面にドラフトローラユニットを配置する直前に、押し付け部材を、ねじりバネの付勢力に逆らってドラフトローラユニットに押し付け可能な位置まで移動させる必要がある。
【0019】
しかしながら、本発明では、ねじりバネに付勢された押し付け部材が、規制部材によって、ドラフトローラユニットに押し付け可能な位置からさらに移動してしまうのが規制されているため、ドラフトローラユニットを傾斜面上に配置する前に、押し付け部材を、ねじりバネの付勢力に逆らってドラフトローラユニットに押し付け可能な位置まで移動させる作業を行う必要がなく、支持部材を傾斜面上に配置するのが容易になる。
【0020】
第6の発明に係るドラフト装置は、第1〜第5のいずれかの発明に記載のドラフト装置において、前記ドラフトローラユニットが、前記支持部材によって支持されており、前記ドラフトローラを駆動するモータをさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
ドラフトローラユニットは、ドラフトローラを駆動するためのモータを備えている場合、さらに重量が大きくなる。しかしながら、このような場合でも、支持部材がバランス機構により自重による移動方向と反対方向に付勢されているので、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【0022】
第7の発明に係るドラフト装置は、第1〜第6のいずれかの発明に係るドラフト装置において、前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度は、前記バランス機構がないとした場合に、前記フレームに対する固定が解除された前記ドラフトローラユニットが、自重によって前記傾斜面に沿って滑動するような角度であることを特徴とする。
【0023】
傾斜面が、ドラフトローラユニットが自重によって滑動してしまう程度、水平面に対して大きく傾斜している場合、ドラフトローラユニットを移動させる際やフレームに固定させる際に、ドラフトローラユニットが傾斜面に沿って滑動しようとするため、ドラフトローラユニットの位置調整を行いにくい。しかしながら、本発明では、このような場合でも、ドラフトローラユニットは、バランス機構により自重による移動方向と反対方向に付勢されているため、自重により傾斜面に沿って滑動しにくく、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【0024】
第8の発明に係るドラフト装置は、第7の発明に係るドラフト装置において、前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が45°〜80°程度であることを特徴とする。
【0025】
傾斜面が水平面に対して45°〜80°程度傾斜するようにすればドラフト装置を前後方向に関してコンパクトにすることができるが、この場合にも、ドラフトローラユニットが傾斜面に沿って滑動しようとするため、ドラフトローラユニットの位置調整の作業を行いにくい。しかしながら、本発明では、このような場合でも、ドラフトローラユニットは、バランス機構により自重による移動方向と反対方向に付勢されているため、自重で傾斜面に沿って滑動しにくく、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【0026】
第9の発明に係るドラフト装置ユニットは、第1〜第8のいずれかの発明に係るドラフト装置を複数備えたドラフト装置ユニットであって、前記ドラフトローラユニットが、各ドラフト装置における前記1つのドラフトローラからなる複数のドラフトローラを備えていることを特徴とする。
【0027】
ドラフトローラユニットは、複数のドラフトローラを備えている場合、その重量が大きなものとなる。しかしながら、このような場合でも、ドラフトローラユニットがバランス機構により自重による移動方向と反対方向に付勢されているので、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、傾斜したフレーム上に位置調整自在に設置されたドラフトローラユニットが、バランス機構によって、自重による移動方向と反対方向に付勢されているため、ドラフトローラユニットの重量が大きい場合や、フレームの水平面に対する傾斜角度が大きい場合でも、ドラフトローラユニットの位置調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る紡績機を正面から見た概略構成図である。
【図2】図1のドラフト装置及びその周辺の部分を側方から見た概略構成図ある。
【図3】図2のドラフト装置の正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3を矢印Vの方向から見た図である。
【図6】(a)が図3のVI−VI線断面図であり、(b)が(a)からドラフトローラユニットを取り外した状態を示す図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】一変形例の図6(a)相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態に係る紡績機を正面から見た概略構成図である。なお、以下では、各図に示すように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向を規定して説明を行う。図1に示すように、紡績機1においては、多数の紡績ユニット2が図1の左右方向に配列されている。各紡績ユニット2は、ドラフト装置3、紡績装置4、糸送り装置5、糸欠陥検出装置6、糸継装置7、巻取装置8などを備えている。
【0032】
ドラフト装置3は、上方から送られてくるスライバSを延伸させつつ繊維束にして紡績装置4に搬送する。紡績装置4は、ドラフト装置3から搬送されてきた繊維束を空気紡績して糸Yにする。糸送り装置5は、紡績装置4において紡績された糸Yを巻取装置8に送る。糸欠陥検出装置6は、巻取装置8に送られる糸Yの糸欠陥を検出する。糸継装置7は、糸欠陥検出装置6により糸欠陥が検出されたときに、糸欠陥のある部分を切断して除去するとともに糸欠陥を除去した糸Yの糸継を行う。巻取装置8は糸送り装置5により送られてきた糸Yをボビンに巻き取ってパッケージにする。
【0033】
次に、ドラフト装置3について詳細に説明する。図2は図1のドラフト装置3及びその周辺の概略構成図である。図2に示すように、ドラフト装置3は、互いに対向して配置されたトップローラとボトムローラとからなる4対のドラフトローラを備えている。
【0034】
より詳細に説明すると、ドラフト装置3は、バックローラ11、サードローラ12、ミドルローラ13及びフロントローラ14の4対のドラフトローラを備えている。バックローラ11は、バックトップローラ11aとバックボトムローラ11bとからなる。サードローラ12は、サードトップローラ12aとサードボトムローラ12bとからなる。ミドルローラ13は、エプロンベルト19aが装架されたミドルトップローラ11aと、エプロンベルト19bが装架されたミドルボトムローラ13bとからなる。フロントローラ14は、フロントトップローラ14aとフロントボトムローラ14bとからなる。ここで、ボトムローラ11b〜14bは、金属材料からなり、モータなどによって駆動される。一方、トップローラ11a〜14aは、少なくともその外周面が樹脂材料からなり、モータには接続されておらず、ボトムローラ11b〜14bの回転に追従して回転する。
【0035】
そして、これら4対のドラフトローラ11〜14は、対応するトップローラ11a〜14aとボトムローラ11b〜14bが上下方向に対向している。また、これら4対のドラフトローラ11〜14は、スライバSの搬送方向上流側からこの順に、水平面に対して傾斜した方向に沿って配列されている。ここで、ドラフトローラ11〜14の配列方向の水平面に対する傾斜角度αは60°程度となっている。そして、このようにドラフトローラ11〜14の配列方向が、水平面に対して大きく傾斜していることにより、ドラフト装置3を前後方向に関してコンパクトにすることができる。
【0036】
そして、以上のような構成を有するドラフト装置3においては、トップローラ11a〜14aとボトムローラ11b〜14bとによりスライバSを挟んだ状態で、これら4対のドラフトローラ11〜14を互いに異なる回転速度で回転させることにより、スライバSを延伸して繊維束にしたうえで紡績装置4に搬送する。なお、このとき、スライバSは、例えば、バックローラ11とサードローラ12との間で2〜4倍程度に延伸され、さらに、サードローラ12とミドルローラ13との間で、1.5〜3倍程度に延伸される。
【0037】
ここで、上記4つのボトムローラ11b〜14bのうち、バックボトムローラ11b及びサードボトムローラ12bは、それぞれ、以下に説明するドラフトローラユニット30a、30bを構成している。
【0038】
次に、バックボトムローラ11b及びサードボトムローラ12bをそれぞれ備えるドラフトローラユニット30a、30bについて説明する。図3はドラフトローラユニット30a、30b、及び、これらが取り付けられるフレーム40の正面図である。図4は図3のIV−IV線断面図である。図5は、図3を矢印Vの方向から見た図である。図6(a)は、図3のVI−VI線断面図である。図6(b)は、図6(a)からドラフトローラユニット30a、30bを取り外した状態を示す図である。図7は図3のVII−VII線断面図である。
【0039】
図3〜図7に示すように、ドラフトローラユニット30a、30bは、フレーム40に取り付けられている。フレーム40は、取り付け板41、2つの脚部42、4つのバランス機構43、及び、2つの連結部材44を備えている。
【0040】
取り付け板41は、金属材料などからなる略長方形状の板状体であり、その上面が、水平面に対して傾斜した傾斜面41aとなっている。ここで、傾斜面41aの水平面に対する傾斜角度αは、ドラフトローラ11〜14の配列方向の水平面に対する傾斜角度とほぼ同じ60°程度となっている。そして、後述するように、傾斜面41a上にドラフトローラユニット30a、30bが配置される。また、取り付け板41は、その左右両端部に、それぞれ、傾斜面41aの傾斜方向に長い貫通孔41c、41dが形成されている。また2つの貫通孔41c及び貫通孔41dのうち、上方に位置する貫通孔41cの傾斜面41aの傾斜方向に関する長さd1は、下方に位置する貫通孔41dの当該方向に関する長さd2よりも長くなっている。
【0041】
2つの脚部42は、取り付け板41の傾斜面41aと反対側の面の左右両端よりも若干内側の部分に固定されており、取り付け板41を支持している。また、2つの脚部42がこのように配置されていることにより、取り付け板41の左右両端部は、脚部42よりも外側に張り出した張出部41bとなっている。そして、上記貫通孔41c、41dは、張出部41bに形成されている。
【0042】
4つのバランス機構43は、後述するように、傾斜面41aに沿ったドラフトローラユニット30a、30bの移動を容易にするために、ドラフトローラユニット30a、30bを付勢してバランスを取るためのものであり、それぞれ、回動部材46とねじりバネ47とからなる。回動部材46は、略円柱形状の部材であり、脚部42に設けられた4本の軸42aに回動自在に支持されている。ここで、4本の軸42aは、2つの脚部42の左右両端部に2本ずつ、傾斜面41aの傾斜方向に沿って配列されているとともに、脚部42から左右方向の外側に向けて突出している。また、回動部材46の先端部には、回動部材46の径方向に突出した押し付け部46aが設けられている。押し付け部46aは、ドラフトローラユニット30a、30bの下方に配置されており、後述するようにドラフトローラユニット30a、30bの接触部64に押し付けられる。
【0043】
ねじりバネ47は、回動部材46に挿通されており、その一端が、脚部42に固定されているとともに、他端が押し付け部46aに固定されている。これにより、回動部材46は、ねじりバネ47により、その周方向に付勢されている。
【0044】
2つの連結部材44は、傾斜面41aと平行に延びて、各脚部42に設けられた2本の軸42aの先端部同士をそれぞれ連結する部材であり、2本の軸42aは連結部材44に互いに連結されていることによりその強度が高くなっている。また、連結部材44には、その途中の部分に、傾斜面41aと直交する方向に傾斜面41aに向かって延びているとともにその先端部において左右方向に関する内側に折れ曲がった2つの規制部44aが設けられている。折れ曲がった規制部44aの先端部分は、図6(b)に示すように、傾斜面41a上にドラフトローラユニット30a、30bが配置されていない状態で、押し付け部46aに接触しており、これにより、ねじりバネ47に付勢された回動部材46が、図6(b)に示す、押し付け部46aが規制部44aに接触した位置からさらに回動してしまうのが規制され、この位置に保持されている。
【0045】
ドラフトローラユニット30aは、支持部材51、隣接する2つのドラフト装置3を構成する2つのバックボトムローラ11b、及び、2つのモータユニット52を備えている。
【0046】
支持部材51は、基部61、4つのローラ支持部62、4つのモータ支持部63及び2つの接触部64を有している。基部61は、傾斜面41a上に配置されているとともに、左右両側に取り付け板41よりも外側まで延びており、左右方向に長尺となっている。また、基部61の貫通孔41cと対向する部分には、それぞれ、略円形の貫通孔61aが形成されており、貫通孔61a及び上述の貫通孔41cには、貫通孔61a側から、これらを貫通するようにボルト71が挿通されている。また、ボルト71には、その下側の端部にナット72が取り付けられている。
【0047】
これにより、ボルト71を締めると、ボルト71とナット72とにより、ドラフトローラユニット30aが取り付け板41(フレーム40)に固定される。一方、ボルト71を緩めると、ボルト71とナット72とによる、ドラフトローラユニット30aの取り付け板41への固定が解除されて、ドラフトローラユニット30aが、貫通孔61aが貫通孔41cに対向する範囲内で、傾斜面41aに沿って移動可能となる。なお、本実施の形態では、ボルト71とナット72とを合わせたものが、本発明に係る固定部材に相当する。
【0048】
また、張出部41bの下面には、張出部41bとの間でナット72を挟むよう配置されているとともに、傾斜面41aの傾斜方向に延びたナット支持部材73が配置されている。また、ナット72は、図4の紙面垂直方向から見て、その左右両端部が下方に折れ曲がった略コの字形状になっており、ボルト71を回したときに、コの字の両端に位置する折れ曲がった部分がナット支持部材73に引っかかることで、ボルト71と一緒に回転してしまわないようになっている。これにより、ボルト71を回すだけで、ボルト71を締めたり緩めたりすることが可能となっている。
【0049】
また、ナット72が略コの字になっていることにより、ドラフトローラユニット30aの交換時など、ボルト71をナット72から完全に抜いた場合でも、ナット72は、ナット支持部材73から抜け落ちず、ナット支持部材73に支持された状態に保持される。
【0050】
2つのローラ支持部62は、左右方向に関して取り付け板41よりも外側に位置する、基部61の左右両端部に設けられている。各ローラ支持部62は、それぞれ、傾斜面41aと直交するように、基部61から前上方に突出しているとともに、互いに対向した一対の突出部62aによって構成されている。突出部62aには、その先端部に左右方向に延びた貫通孔62bが形成されており、貫通孔62bにバックボトムローラ11bの回転軸11b1が挿通されることにより、バックボトムローラ11bの両端部がローラ支持部62に回転自在に支持されている。
【0051】
また、バックボトムローラ11bの回転軸11b1は、一対の突出部62aのうち左右方向に関する外側の突出部62aを貫通して延びており、その先端部にはプーリ74が取り付けられている。
【0052】
なお、本実施の形態では、このように、基部61の左右両端部にそれぞれローラ支持部62が設けられており、これら2つのローラ支持部62に、それぞれ、バックボトムローラ11bが支持されているが、これら2つのバックボトムローラ11bは、互いに隣接する2つの紡績ユニット2のドラフト装置3を構成するものである。また、これら2つのドラフト装置3を合わせたものが、本発明に係るドラフト装置ユニットに相当する。
【0053】
2つのモータ支持部63は、左右方向に関して取り付け板41よりも外側に位置する、基部61の左右両端部に設けられている。モータ支持部63は、それぞれ、基部61から、傾斜面41aとほぼ平行に、後上方に突出しているとともに互いに対向した2つの突出部63aによって構成されている。
【0054】
モータユニット52は、略直方体形状を有しており、その内部に、バックボトムローラ11bを駆動するためのモータ75が配置されているとともに、その左右方向に関する外側の端部に、モータ75の回転軸75aに接続されたプーリ76が配置されている。プーリ74及びプーリ76には、無端状のベルト77が巻き掛けられており、これにより、モータ75を回転させると、プーリ76が回転し、その回転がベルト77を介してプーリ74に伝達されて、バックボトムローラ11bが回転する。
【0055】
また、モータユニット52には、その前上端部における左右両端部に、それぞれ、突出部63aと左右に隣接する位置まで前上方に突出した支持部52aが設けられている。そして、支持部52aが、それぞれ、突出部63aにより軸63bを中心として揺動自在に支持されている。
【0056】
さらに、モータユニット52には、その後上端部における左右両端部に、それぞれ、傾斜面41aとほぼ平行に延びたバネ取り付け部52bが設けられており、バネ取り付け部52bの先端部に引っ張りバネ78の一端が取り付けられている。また、この引っ張りバネ78の他端は、突出部63aの、支持部52aを支持している軸63bよりもさらに先端に近い部分に取り付けられている。
【0057】
そして、モータユニット52は、引っ張りバネ78に引っ張られることで、軸63bを中心に、プーリ76がプーリ74から離れる方向(図5の方向から見て時計回り方向)に揺動し、これにより、プーリ74、76に巻き掛けられたベルト77が弛まないようになっている。
【0058】
接触部64は、基部61の、左右方向に関して取り付け板41よりも若干外側の部分における下面から、傾斜面41aと直交する方向に延びており、傾斜面41aの傾斜方向に関する下側の面が回動部材46の押し付け部46aと接触している。これにより、ドラフトローラユニット30aは、接触部64において、バランス機構43によって、傾斜面41aに沿って上向き(自重による移動方向と反対方向)に付勢されている。そして、ドラフトローラユニット30aは、バランス機構43に付勢されることで、自重により傾斜面41aに沿って下方に滑動しないようにバランスが取られている。
【0059】
なお、上述したように、押し付け部46aは、傾斜面41a上にドラフトローラユニット30a、30bが配置されていない状態で、規制部44aによりその移動が規制されて図6(b)に示す位置に保持されているが、この位置は、傾斜面41a上にドラフトローラユニット30a、30bが配置されたときに、接触部64と接触可能な位置(ドラフトローラユニット30a、30bに押し付け可能な位置)となっている。
【0060】
ドラフトローラユニット30bは、ドラフトローラユニット30aと同様の構成を有するものであり、傾斜面41aのドラフトローラユニット30aが配置されている部分よりも下側の部分に配置されている。ここで、ドラフトローラユニット30bは、ドラフトローラユニット30aと同じ種類の部品を用いて形成されたものであり、傾斜面41aに配置される向きがドラフトローラユニット30aとは逆になっている。
【0061】
そして、ドラフトローラユニット30a下側に配置されたドラフトローラユニット30bにおいては、ボルト71が、貫通孔61a側から、貫通孔61aと貫通孔41dとを貫通するように挿通されており、ボルト71を締めると、ボルト71とナット72とにより、ドラフトローラユニット30bが取り付け板41(フレーム40)に固定され、ボルト71を緩めると、ボルト71とナット72とによる、ドラフトローラユニット30bの取り付け板41への固定が解除されて、ドラフトローラユニット30bが、貫通孔61aが貫通孔41dに対向する範囲内で傾斜面41aに沿って移動可能となる。
【0062】
ここで、上述したように、貫通孔41dの長さd2は、貫通孔41cの長さd1よりも短くなっているので、ドラフトローラユニット30bの移動可能範囲は、ドラフトローラユニット30aの移動可能範囲よりも狭くなっている。
【0063】
また、ドラフトローラユニット30bおいては、ローラ支持部62を構成する突出部62aの貫通孔62bにサードボトムローラ12bの回転軸12b1が挿通されることにより、サードボトムローラ12bがローラ支持部62に回転自在に支持されている。
【0064】
さらに、ドラフトローラユニット30aと向きが逆に配置されたドラフトローラユニット30bにおいては、モータ支持部63の突出部63aが、ドラフトローラユニット30aとは逆に、基部61から前下方に突出している。これにより、ドラフトローラユニット30aにおいては、傾斜面41aの傾斜方向に関して、突出部63aが、ドラフトローラユニット30bと反対側に突出しているとともに、突出部63aに支持されるモータユニット52もドラフトローラユニット30bと反対側に配置される。一方、ドラフトローラユニット30bにおいては、傾斜面41aの傾斜方向に関して、突出部63aが、ドラフトローラユニット30aと反対側に突出しているとともに、突出部63aに支持されるモータユニット52もドラフトローラユニット30aと反対側に配置される。したがって、ドラフトローラユニット30aとドラフトローラユニット30bとの間に突出部63aやモータユニット52がなく、バックボトムローラ11bとサードボトムローラ12bとを、傾斜面41aの傾斜方向に関して近づけて配置することが可能となる。
【0065】
ここで、ドラフト装置3においては、スライバSを安定して搬送させるために、スライバSの繊維の長さが長いときほど、傾斜面41aの傾斜方向に関するバックローラ11とサードローラ12との間隔、及び、サードローラ12とミドルローラ13との間隔を大きくする必要がある。なお、ミドルローラ13とフロントローラ14との間では、スライバSは、エプロンベルト19a、19bに挟まれた状態で搬送されるため、スライバSの繊維の長さに関わらず安定して搬送することができ、ローラの間隔を変更する必要がない。
【0066】
そのため、本実施の形態では、上述したように、ドラフトローラユニット30a、30bが傾斜面41aに沿って移動可能となっており、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って移動させることにより、バックローラ11とサードローラ12との間隔、及び、サードローラ12とミドルローラ13との間隔を変更することができるようになっている。
【0067】
ここで、スライバSの繊維の長さが短い場合には、バックボトムローラ11bとサードボトムローラ12bとの間隔、及び、サードボトムローラ12bとミドルボトムローラ13bとの間隔をともに小さくし、スライバSの繊維の長さが短い場合には、バックボトムローラ11bとサードボトムローラ12bとの間隔、及び、サードボトムローラ12bとミドルボトムローラ13bとの間隔をともに大きくすることとなる。
【0068】
一方、サードボトムローラ12bをミドルボトムローラ13bに近づけるようにドラフトローラユニット30bを移動させた場合、サードボトムローラ12bはバックボトムローラ11bから離れる方向に移動することとなるため、バックボトムローラ11bをサードボトムローラ12bに近づけるためには、ドラフトローラユニット30aをドラフトローラユニット30bよりも大きく移動させる必要がある。
【0069】
逆に、サードボトムローラ12bをミドルボトムローラ13bから遠ざけるようにドラフトローラユニット30bを移動させた場合、サードボトムローラ12bはバックボトムローラ11bに近づく方向に移動することとなるため、バックボトムローラ11bをサードボトムローラ12bから遠ざけるためには、ドラフトローラユニット30aをドラフトローラユニット30bよりも大きく移動させる必要がある。
【0070】
以上のことから、上記ローラの間隔を変更する際には、バックボトムローラ11b(ドラフトローラユニット30a)を、サードボトムローラ12b(ドラフトローラユニット30b)よりも大きく移動させることとなる。そのため、本実施の形態では、上述したように、貫通孔41cの長さd1を貫通孔41dの長さd2よりも長くすることで、ドラフトローラユニット30aの移動可能範囲を、ドラフトローラユニット30bの移動可能範囲よりも広くしている。
【0071】
そして、このように、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って移動させれば、バックボトムローラ11bとサードボトムローラ12bとの間隔、及び、サードボトムローラ12bとミドルボトムローラ13bとの間隔を変更することは可能である。しかしながら、本実施の形態では、ドラフトローラユニット30a、30bが、それぞれ、ボトムローラ11b、12b及びこれらを支持する支持部材51に加えて、ボトムローラ11b、12bを駆動するためのモータユニット52を備えており、その重量が大きなものとなっている。さらに、ドラフトローラユニット30a、30bは、それぞれ、2つのドラフト装置3の、ドラフトローラ11b、12b及びモータユニット52を備えているため、その重量はさらに大きなものとなっている。加えて、本実施の形態では、傾斜面41aが水平面に対して60°程度傾斜しており、傾斜面41aの水平面に対する傾斜角度αが大きくなっている。
【0072】
このため、ドラフトローラの間隔を変更する際には、上述したように重量の大きいドラフトローラユニット30a、30bを、水平面に対する傾斜角度の大きい傾斜面41aに沿って移動させる必要があり、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って上方に移動させる際には、ドラフトローラユニット30a、30bに大きな力を加えて移動させることとなり、下方に移動させる際には、ドラフトローラユニット30a、30bを大きな力で支えながら移動させることとなる。その結果、ドラフトローラユニット30a、30bを移動させるのが困難になる。
【0073】
特に、本実施の形態では、傾斜面41aの水平面に対する傾斜角度αが大きく(60°程度)なっているため、バランス機構43がないとすると、ドラフトローラユニット30a、30bが自重によって傾斜面41aに沿って下方に滑動してしまい、ドラフトローラユニット30a、30bを移動させるのはさらに困難なものとなる。
【0074】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、ドラフトローラユニット30a、30bが、バランス機構43によって傾斜面41aに沿って上向きに付勢されており、これにより、ドラフトローラユニット30a、30bは、自重によって傾斜面41aに沿って下方に滑動しないようにバランスが取られている。
【0075】
したがって、バランス機構43による付勢力の分だけ、ドラフトローラユニット30a、30bを移動させるのに必要な力が小さくなり、ドラフトローラユニット30a、30bを容易に移動させることができる。
【0076】
このとき、バランス機構43においては、回動部材46やねじりバネ47などを、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って上向きに付勢する力の大きさが、ドラフトローラユニット30a、30bが自重によって傾斜面41aに沿って下方に滑動しようとする力の大きさと同程度となるようなものとすることが好ましい。すなわち、バランス機構43による付勢力が、ドラフトローラユニット30a、30bの重力と釣り合う付勢力であることが好ましい。
【0077】
このようにすれば、ドラフトローラユニット30a、30bに自重により作用する力と、バランス機構43がドラフトローラユニット30a、30bを付勢する付勢力とが釣り合い、作業者がドラフトローラユニット30a、30bに、傾斜面41aと平行に加えた力がほぼ全てドラフトローラユニット30a、30bの移動に作用するため、ドラフトローラユニット30a、30bの移動が容易になる。さらに、ドラフトローラユニット30a、30bを移動させて位置を決定した後、ボルト71を締めて取り付け板41に固定する作業を容易に行うことができる。
【0078】
また、ドラフトローラユニット30a、30bの位置調整は、より詳細には、ドラフトローラユニット30a、30bをそれぞれ構成する2つの基部61の間に、繊維の種類に応じた長さを有するスペーサを挟み込んだ状態で、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って移動させることによって行うが、このような場合でも、ドラフトローラユニット30a、30bを容易に移動させることができるため、ドラフトローラユニット30a、30bの位置調整を容易に行うことができる。
【0079】
また、支持部材51の接触部64に押し付けられる押し付け部46aを有する回動部材46と、回動部材46を付勢するねじりバネ47とにより、ドラフトローラユニット30a、30bを付勢するためのバランス機構43を容易に形成することができる。
【0080】
また、ねじりバネ47によって付勢された回動部材46は、傾斜面41a上にドラフトローラユニット30a、30bが配置されていない状態で、押し付け部46aが規制部44aの先端部に接触した位置に保持されることで、この位置からさらに移動してしまうことが規制され、回動部材46がこの位置にあれば、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに配置したときに、接触部64が押し付け部46aに接触する。したがって、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに配置する前に、回動部材46を、押し付け部46aが接触部64に接触可能となる位置まで、ねじりバネ47の付勢力に逆らって移動させる必要がなく、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに配置する作業が容易になる。
【0081】
なお、ボトムローラ11b、12bの位置変更に合わせて、トップローラ11a、12aについても位置の変更を行う必要があるが、少なくとも外周面が樹脂材料からなるトップローラは、金属材料からなるボトムローラに比べて軽量であり、また、トップローラは、ボトムローラの回転に追従して回転する従動ローラであり、図示しないトップローラを支持するための部材に、モータが支持されていることもないので、ボトムローラに比べてその位置変更を容易に行うことができる。
【0082】
次に本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0083】
上述の実施の形態では、ドラフトローラユニット30a、30bが、それぞれ、2つのドラフト装置3のボトムローラ11b、12b及びモータユニット52を備えていたが、これには限られない。ドラフトローラユニット30a、30bが、それぞれ、1つあるいは3つ以上のドラフト装置3の、ボトムローラ11b、12bとモータユニット52を備えていてもよい。
【0084】
また、上述の実施の形態では、ドラフトローラユニット30a、30bが、それぞれ、ボトムローラ11b、12bを駆動するためのモータユニット52を備えていたが、モータユニット52は、ドラフトローラユニット30a、30bとは別に設けられていてもよい。
【0085】
また、上述の実施の形態では、傾斜面41aの水平面に対する傾斜角度αが60°程度となっていたが、傾斜面41aの傾斜角度αはこれには限られず、0°<α≦90°の範囲にあればよいが、ドラフト装置3を前後方向に関してコンパクトにするためには、傾斜角度αを、45°〜80°程度とすることが好ましい。
【0086】
さらにこのとき、傾斜面41aの水平面に対する傾斜角度αは、バランス機構43がないとした場合に、傾斜面41a上に配置されたドラフトローラユニット30a、30bが、自重によって傾斜面41aに沿って下方に滑動するような角度であることには限られず、ドラフトローラユニット30a、30bが滑動しないような角度であってもよい。
【0087】
これらの場合でも、上述の実施の形態と同様、バランス機構43がドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って上向き(ドラフトローラユニット30a、30bの自重による移動方向と反対方向)に付勢している分だけ、ドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って移動させるのに必要な力が小さくなるため、ドラフトローラユニット30a、30bの位置調整を容易に行うことができる。
【0088】
また、上述の実施の形態では、ドラフトローラユニット30a、30bを付勢するためのバランス機構43が、回動部材46とねじりバネ47とよって構成されているとともに、押し付け部46aが規制部44aに接触することで、傾斜面41aにドラフトローラユニット30a、30bが配置されていない状態で、回動部材46が、押し付け部46aがドラフトローラユニット30a、30bの接触部64と接触可能な位置に保持されていたが、回動部材46の移動を規制する規制手段の構成は、回動部材46の移動を規制することができるものであれば、2つの軸42bを連結する連結部材44に設けられた規制部44aであることには限られない
【0089】
さらには、規制部44aは設けられていなくてもよい。この場合には、傾斜面41aにドラフトローラユニット30a、30bが配置されていない状態で、押し付け部46aが接触部64と接触可能な位置にはないが、傾斜面41aにドラフトローラユニット30a、30bが配置する直前に、回動部材46を、押し付け部46aが接触部64と接触可能な位置まで、ねじりバネ47の付勢力に逆らって移動させるなどすればよい。
【0090】
また、バランス機構は、回動部材46とねじりバネ47とによって構成されたものには限られず、例えば、傾斜面41aの傾斜方向と平行に延びた圧縮バネと、圧縮バネの上端部に設けられた接触部64に押し付けられる押し付け部からなるものなどであってもよい。さらには、バランス機構はバネを用いて形成されたものであることには限られず、例えば、シリンダなどによって形成されたものであってもよい。
【0091】
また、上述の実施の形態では、バランス機構43が、ドラフトローラユニット30a、30bを下方から付勢することで、ドラフトローラユニット30aが自重により傾斜面41aに沿って下方に滑動しないようにバランスを取るものであった、バランス機構は、ドラフトローラユニット30a、30bを下方から付勢するものには限られない。
【0092】
一変形例では、図8に示すように、バランス機構43(図3参照)の代わりに、バランス機構80が設けられている。バランス機構80は、フレーム40に支持された2つの滑車81a、81bに掛けられたワイヤ82の一端にドラフトローラユニット30a、30bと接続されているとともに、ワイヤ82の他端にドラフトローラユニット30a、30bとほぼ同じ重量の錘83が接続された構成となっている。そして、これにより、ドラフトローラユニット30a、30bは、ワイヤ82を介して錘83に傾斜面41aに沿って上向き(自重による移動方向と反対方向)に引っ張られており(付勢されており)、この場合でも、ドラフトローラユニット30a、30bは、バランス機構80に引っ張られることで、自重により傾斜面41aに沿って下方に滑動しないようバランスが取られている。
【0093】
また、上述の実施の形態では、バックローラ11とサードローラ12との間、及び、サードローラ12とミドルローラ13の間の2箇所においてスライバSを延伸しており、スライバSの繊維の長さに応じてこれらのドラフトローラの間隔を変更する必要があったため、バックボトムローラ11b及びサードボトムローラ12bをそれぞれ備えた2つのドラフトローラユニット30a、30bを傾斜面41aに沿って移動可能としていたが、これには限られない。
【0094】
例えば、スライバSを1箇所においてのみ延伸させる場合には、1つのドラフトローラユニットのみが傾斜面41aに沿って移動可能となっていてもよい。
【0095】
あるいは、スライバSを3箇所以上において延伸させる場合には、3つ以上のボトムローラがドラフトローラユニットを構成しており、これら3つ以上のドラフトローラユニットが傾斜面41aに沿って移動可能となっていてもよい。
【0096】
また、上述の実施の形態では、スライバSが上方から下方に向けて走行するドラフト装置3に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、上述の実施の形態とは逆に、スライバSが下方から上方に向けて走行するドラフト装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
3 ドラフト装置
11 バックローラ
11b バックボトムローラ
12 サードローラ
12b サードボトムローラ
13 ミドルローラ
14 フロントローラ
30a、30b ドラフトローラユニット
40 フレーム
41a 傾斜面
43 バランス機構
45 規制部
46 回動部材
46a 押し付け部
47 ねじりバネ
51 支持部材
52 モータユニット
71 ボルト
75 モータ
80 バランス機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜したフレーム上に位置調整自在に設置されたドラフトローラユニットにおいて、該ドラフトローラユニットの自重による移動方向と反対方向に該ドラフトローラユニットを付勢するようにしたバランス機構を設けたことを特徴とするドラフト装置。
【請求項2】
スライバを延伸する複数のドラフトローラと、
前記複数のドラフトローラを構成する1つのドラフトローラ、及び、前記1つのドラフトローラを支持する支持部材を備えた前記ドラフトローラユニットと、
前記ドラフトローラユニットが取り付けられる前記フレームと、
前記ドラフトローラユニットを前記フレームに固定する固定部材とを備え、
前記フレームは、前記ドラフトローラユニットが配置される傾斜面を有し、
前記ドラフトローラユニットは、前記固定部材によるフレームへの固定が解除された状態で、前記傾斜面に沿って移動可能となっていることで位置調整自在となっており、
さらに、
前記フレームには、前記傾斜面に配置された前記ドラフトローラユニットを、自重による移動方向と反対方向に付勢する前記バランス機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラフト装置。
【請求項3】
前記バランス機構が、
前記フレームに支持されたバネと、
前記ドラフトローラユニットの下方に配置されており、前記バネに付勢されることで、前記ドラフトローラユニットに押し付けられる押し付け部材とを有していることを特徴とする請求項2に記載のドラフト装置。
【請求項4】
前記バネの付勢力が、前記ドラフトローラユニットの重量と釣り合う付勢力であることを特徴とする請求項3に記載のドラフト装置。
【請求項5】
前記バネが、ねじりバネであって、
前記押し付け部材は、前記ねじりバネによって付勢されており、
前記傾斜面上に前記ドラフトローラユニットが配置されていない状態で、前記ねじりバネによって付勢された前記押し付け部材が、前記ドラフトローラユニットを押し付け可能な位置からさらに移動してしまうのを規制する規制手段をさらに備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載のドラフト装置。
【請求項6】
前記ドラフトローラユニットが、前記支持部材によって支持されており、前記ドラフトローラを駆動するモータをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドラフト装置。
【請求項7】
前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度は、前記バランス機構がないとした場合に、前記フレームに対する固定が解除された前記ドラフトローラユニットが、自重によって前記傾斜面に沿って滑動するような角度であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のドラフト装置。
【請求項8】
前記傾斜面の水平面に対する傾斜角度が45°〜80°であることを特徴とする請求項5に記載のドラフト装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のドラフト装置を複数備えたドラフト装置ユニットであって、
前記ドラフトローラユニットが、各ドラフト装置における前記1つのドラフトローラからなる複数のドラフトローラを備えていることを特徴とするドラフト装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231427(P2011−231427A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101619(P2010−101619)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】