説明

ドラムフィルタ装置及び、これに使用されるフィルタ面部材、並びに該フィルタ面部材の交換方法

【課題】 フィルタ面部材8を装着するための構造を簡易化して、フィルタ面部材8の脱着が簡易迅速に行えるようにする。
【解決手段】 一定距離を置いて対向状且つ同体状に位置決めされた一対の側面部材7a、7bを備え、これら一対の側面部材7a、7bの外周縁に形成された環状嵌合溝g5、g5内に、撓曲可能な一枚のフィルタ面部材8のうちその幅方向j1で対向した両端縁8a、8bの全長箇所を摺動可能且つ密状に嵌合させる共に、前記フィルタ面部材8のうちその長手方向j2で対向した両端縁8c、8dを間隔調整部材15を介して密状且つ分離可能に結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削加工のさいに生成される切粉と潤滑剤としてのクーラントとの混濁液を濾過して浄化クーラントを抽出するドラムフィルタ装置、及び、これに使用されるフィルタ面部材、並びに該フィルタ面部材の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のドラムフィルタ装置は、濾過分別取出装置の濾過要部として使用されるものであり、該濾過分別取出装置は金属切削加工などで生成された切粉などの固形物と、潤滑及び冷却剤としてのクーラントなどである液状物とからなる混濁液が連続的に投入されることにより、該懸濁液をドラムフィルタ装置により効率的に浄化液状物と固形物に分離させて、それぞれを別な場所へ連続的に取り出すように機能するものである。
【0003】
さらに具体的に説明すると、ドラムフィルタ装置は懸濁液の投入される懸濁液貯留槽内にその外周壁面部の中心線が水平となるように且つ該中心線回りの回転駆動可能なように設置されると共に、懸濁液貯留槽の内方と前記外周壁面部の内方空間とがフィルタ面部材でのみ液通過可能なように区分され、ドラムフィルタ装置の外周壁面部の下部に存在したフィルタ面部材が懸濁液中に浸され、フィルタ面部材を透過した浄化液状物が前記外周壁面部の内方へ経て浄化液槽内に流入する。フィルタ面部材を透過しない固形物は懸濁液貯留槽内に堆積し、他のコンベア手段により外方へ搬出される。
【特許文献1】特許第2904334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来のドラムフィルタ装置にあっては、外周壁面部に透孔を形成して、これにフィルタ面部材を固定する構成となされているため、該装置の外周面部の面積に対するフィルタ面部材の有効濾過面積の割合が一定程度以下に制限されて濾過処理の効率化が抑制されると共に、フィルタ面部材を装着するための構造が複雑化し、フィルタ面部材の脱着に容易でない。
【0005】
本発明は、例えば金属切削加工などのさいに生成される切粉と、潤滑剤及び又は冷却剤としてのクーラントとの混濁液から切粉の除去された浄化クーラントを抽出する場合などにおいて、上記した種々の問題点を解消させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るドラムフィルタ装置は、一定距離を置いて対向する側面部材を備え、前記側面部材の外周縁に形成された環状嵌合溝内に、撓曲可能な一枚のフィルタ面部材のうちその幅方向で対向した両端縁の全長箇所を摺動可能且つ密状に嵌合させると共に、前記フィルタ面部材のうちその長手方向で対向した両端縁を間隔調整部材を介して密状に結合させたことを特徴とするものである。
【0007】
この発明によれば、側面部材の外周縁の略全周箇所間にフィルタ面部材が装着されるようになるため、ドラムフィルタ装置の外周面部の面積に対するフィルタ面部材の有効濾過面積の割合が従来よりも大きくなり、濾過処理効率が向上するものとなる。
また側面部材の外周縁長さやフィルタ面部材の長手方向寸法の製作誤差やフィルタ面部材の長期使用による伸縮変形による寸法誤差が生じたときにも、間隔調整部材の厚さ方向寸法を大小に変化させることにより、フィルタ面部材の幅方向で対向した両端縁は側面部材の環状嵌合溝に正確に適合した密状に嵌合されるのであり、この結果、側面部材上におけるフィルタ面部材のシール性が確保され、予定された濾過性能が確保される。
【0008】
本発明に係るドラムフィルタ装置に使用されるフィルタ面部材は、一定距離を置いて対向する側面部材の各外周縁の全長箇所間に密状に巻き付けられるものであって、幅方向で対向した両端縁の全長箇所が前記一対の側面部材の外周縁に形成された環状嵌合溝内に摺動可能に且つ密状に且つ幅方向への抜け出しの規制された状態に嵌合され、且つ、長手方向で対向した両端縁には前記側面部材の半径方向外側へ突出され雌雄の関係で結合される一対のフランジ部が設けられ、各フランジ部は前記半径方向及び前記幅方向に沿った第1面部と、前記外周縁及び前記幅方向に沿った第2面部とを具備したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材の交換方法は、ドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材を交換するさい、前記周方向一定範囲箇所を取り外した状態とし、既に前記環状嵌合溝内に嵌合されている使用済みのフィルタ面部材の何れか一方のフランジ部と、次に使用されるフィルタ面部材のフランジ部のうち前記一方のフランジ部と雌雄の関係をなす1つのフランジ部とを、クリップ部材を介して正対状に結合させ、その後、前記使用済みのフィルタ面部材を前記環状嵌合溝内から前記長手方向に沿って引き出すように実施することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明によれば、ドラムフィルタ装置の外周面部の面積に対するフィルタ面部材の有効濾過面の面積の割合を従来よりも大きくなして濾過処理効率を向上させることができるのであり、また単一のフィルタ面部材のうちその幅方向で対向した両端部が一対の環状嵌合溝内に嵌合されることで装着状態となされるため、従来に較べて、フィルタ面部材を装着するための構造が簡易になると共にフィルタ面部材の脱着処理が簡易迅速に行えるようになる。
【0011】
さらには、側面部材の外周縁長さやフィルタ面部材の長手方向寸法の誤差やフィルタ面部材の長期使用による伸縮変形による寸法誤差が生じたときにも、間隔調整部材の厚さを大小に変化させることにより、フィルタ面部材の幅方向で対向した両端縁は側面部材の環状嵌合溝に正確に適合した密状に嵌合されるのであり、この結果、側面部材上におけるフィルタ面部材のシール性が確保され、予定された濾過性能が確保されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るドラムフィルタ装置を具備した濾過分別取出装置の概要を示す斜視説明図である。
【0013】
1は基台を兼用した方形容器である。該方形容器1の内方には該容器1内を3つの区画1A、1B、1Cに仕切る左右一対の起立仕切板2a、2bが前後方向aに沿って固設されている。一対の起立仕切板2a、2bの前部には中央の区画1Aを前方へ液密状に延長した前上がり状の傾斜案内路3が形成されており、該傾斜案内経路3は各起立仕切板2a、2bの前部下縁を傾斜状の平板4で結合している。このさい、区画1Aは単独の液密状容器あるが、区画1B及び区画1Cは傾斜案内経路3の最下部前側箇所b1で連通している。
【0014】
方形容器1内の各起立仕切板2a、2bの前後方向aの中央部c1、c2間に本実施例に係るドラムフィルタ装置5が左右向き中心軸をなす固定状支持管6を介して回転可能に装設されている。そしてドラムフィルタ装置5が起立支持板2bに正対した箇所であって固定状支持管6よりも下方側となる箇所には略半円状の透孔d2が形成されている。
【0015】
次にドラムフィルタ装置5の詳細について図2乃至図5をも参照して説明する。
図2及び図3はドラムフィルタ装置5の斜視図及び縦断面図、図4はドラムフィルタ装置5の一部材を示す側面図、図5はドラムフィルタ装置5の一部を示す断面図である。
【0016】
ドラムフィルタ装置5は側面視円形状の左右対向した側面部材7a、7bと、これら側面部材7a、7bの外周縁の全周囲箇所間に装着されたフィルタ面部材8とからなっている。側面部材7bはスプロケット部材9bを備えており、一方、側面部材7aはスプロケット部材9bの歯の底の位置に対応する半径を持つ円板状部材9aを有している。側面部材7a、bの両者にスプロケットを設けないのは、コスト低減の目的であり、両者をスプロケット部材としても良いものである。側面部材7a、7bの中心位置には、固定状支持管6を内挿される段付円筒形状のベアリングハウジング10a、10bが固設されると共に、側面部材7a、7bの内側面にベアリングハウジング10a、10bと同心状に形成された外周縁e1、e1を有する環状部材11a、11bが固設されるほか、側面部材7a、7bの外側面には環状シール部12a、12bがベアリングハウジング10a、10bと同心状に固設されている。
【0017】
スプロケット部材9bは図4に示すように外周囲に一定ピッチで噛合歯f1を形成された外側リング部f2とベアリングハウジング10bを固設された内側リング部f3とは複数のアーム部f4で結合されており、外側リング部f2と内側リング部f3との間において、クーラントを通す貫通孔としている。ベアリングハウジング10bは内孔の左右方向中央にボールベアリング13を嵌着されると共に該ボールベアリング13の左右両側にオイルシール14bを嵌着されている。ボールベアリング13は固定状支持管6に外嵌されてドラムフィルタ装置5を回転可能とするものであり、またオイルシール14bはベアリングハウジング10b内にクーラントが侵入するのを防止するものである。
【0018】
円板状部材9aはスプロケット部材9bと異なり、噛合歯f1が存在せず、また、クーラントを通す貫通孔も存在しない。図3に示すように、ベアリングハウジング10aは内孔の左右方向中央にボールベアリング13を嵌着されると共に該ボールベアリング13の左右両側にオイルシール14aを嵌着されている。
【0019】
環状部材11a、11bは図5に示すように環状本体部g1と、これの基礎外周面g2の全周囲範囲を覆うように環状に配列される2つ乃至4つの円弧状帯板g3と、各円弧状帯板g3を環状本体部g1に固定させるためのネジ部材g4とからなっている。各環状部材11a、11bの外周縁には環状本体部g1及び円弧状帯板g3で囲まれ内側面に環状に開口されている環状嵌合溝g5が形成されている。本実施例においては、2枚の円弧状帯板g3が装着されており、1枚は120度の範囲で環状本体部g1をカバーし、他の一枚は240度の範囲で環状本体部g1をカバーすることにより、360度全周を覆っている。
【0020】
図5に、各環状嵌合溝g5の詳細を示す。各環状本体部g1は、その基礎外周面g2にこれよりも小径となされた第1溝用外周面g6、該第1溝用外周面g6に連続してこれよりもさらに小径となされた第2溝用外周面g7を有する。これら第1溝用外周面g6及び第2溝用外周面g7の径方向外側を覆うように円弧状帯板g3を基礎外周面g2にネジ部材g4を介して固定する。これにより、環状嵌合溝g5は、挿入溝部g51と係止溝部g52とを具備する。
【0021】
円弧状帯板g3は、120度の1枚を環状本体部g1から取り外すことで、環状嵌合溝g5の半径方向外側の壁面部の周方向一定範囲箇所が脱着可能となる。4枚の円弧状帯板g3で、環状本体部g1を取り囲んでいるときには、1枚を取り外すことで、環状嵌合溝g5は固定状支持管6を中心とした90度範囲で半径方向外側の壁面部が取り外されて開放され、3枚の円弧状帯板g3のときには、120度の該開放範囲の端部に周方向へ向かう開口が形成された状態となる。いずれにしても、取り外す円弧状帯板g3は、180度よりも小さい角度としている。この理由は後で述べる。
【0022】
各環状シール部12a、12bは側面部材7a、7bの外側面にこれと同心状に固定された支持環部材h1と、これの外周面に外嵌状に固定されたゴム材又は合成樹脂材などからなる環状弾性部材h2とからなっている。環状弾性部材h2は支持環部材h1に止着された基礎部h20を具備し、該基礎部h20から舌状部h21が斜め外方へ突出している。
【0023】
次にフィルタ面部材8について説明する。図6はフィルタ面部材8を示す図、図7はフィルタ面部材8の一部を示す断面図、図8はフィルタ面部材8の斜視部である。
フィルタ面部材8は、全体がプラスチックなどの合成樹脂材で射出成形された方形薄厚濾過体であり、幅方向j1で対向した一対の端縁8a、8bが肉厚とされて左右の側面部材7a、7bの環状嵌合溝g5内に嵌合ように形成されている。長手方向j2で対向した一対の端縁8c、8dが肉厚とされていてこれら端縁8c、8dに雌雄の関係となるフランジ部8e、8fが張出状に形成されている。長手方向j2の一定間隔毎に幅方向j1の梁部8gが形成され且つ幅方向j1の一定間隔毎の位置にも長手方向j2の梁部8hを形成して各端縁を結び、端縁で囲まれた領域を複数区画に分割して全体の剛性を増大させている。該フィルタ面部材8において四周囲の端縁8a、8b、8c、8dと梁部8g、8hを除いた箇所が濾過目を有する有効濾過面8iである。このさい、図8に示すように梁部8gと梁部8hの交叉結合箇所や、梁部8g、8hと有効濾過面8iとの結合箇所は、形状の不連続点が形成されないように円弧面8jで円滑に連続されている。有効濾過面8iを構成する縦横の編み目は、長手方向j2及び幅方向j1に夫々平行である。
【0024】
フィルタ面部材8の各部について説明すると、幅方向j1で対向した左右の端縁8a、8bは対称構造である。図7Aを参照して代表的に右側の端縁8bを説明すると、環状嵌合溝g5の挿入溝部g51に嵌挿される挿入面部k1と、これの先端に形成されていて環状嵌合溝g5の係止溝部g52に嵌合される係止突条部k2とを備えるほか、係止突条部k1の外側面の長手方向j2の略全長箇所に図7A中の上下方向へ自在に塑性変形する突起片k3を形成されている。円弧状帯板g3が外れた部分における係止溝部g52内に係止突条部k1を押し込んだときに、突起片k3は、側面部材7a、7bの半径外方へ押し曲げられて半径面部g53(図5)に弾圧されて、係止突条部k1と環状本体部g1との間をシールする。係止突条部k1は、係止溝部g52にゆとりを持って係止されるものであるので、係止突条部k1が濾過ドラム内外のシール作用を果たすのである。
【0025】
長手方向j2で対向した両端縁8c、8dのうち一方の端縁8cに形成された雄側のフランジ部8eは、図7Bに示すように、長手方向j2に沿った衝接周方向平面k4を有する雄板部k5と、長手方向j2及び幅方向j1に直交した平面からなる衝接径方向前面k6を具備した本体板部k7とを備えている。そして、他方の端縁8dに形成された雌側のフランジ部8fは、図7Cに示すように、長手方向j2に沿った衝接周方向平面k8を有する雌板部k9と、長手方向j2及び幅方向j1に直交した平面からなる衝接径方向前面k10を具備した本体板部k11とを備えている。以後、衝接径方向前面k6、k10は第1面部と、そして衝接周方向平面k4、k8は第2面部と呼称するものとする。
【0026】
上記したフィルタ面部材8を、環状部材の外周縁に対して装着する方法を説明する。図9は環状部材g1の外周縁にフィルタ面部材8を巻き付けた状態を示す側面視説明図、図10は雌雄のフランジ部8e、8fを結合した状態を示す断面図である。
【0027】
フィルタ面部材8の交換は、方形容器1の各区画1A、1B、1Cに懸濁液を充填させたままで行われる。図11に示すように、懸濁液は固定状支持管6までの水位があり、ドラムフィルタ装置5の半分まで漬かっている状態である。
【0028】
フィルタ面部材8を左右の側面部材7a、7bの環状嵌合溝g5、g5に嵌着するさいは、環状本体部g1、g1からネジ部材g4及び円弧状帯板g3を取り外して行う。まず、各側面部材7a、7b上の同じ位置に存在した左右各側の1つの円弧状帯板g3を取り外す。円弧状帯板g3は、120度範囲で取り外され、懸濁液の水面上に環状嵌合溝g5、g5を周方向へ向けて開口する。
【0029】
次に使用済みのフィルタ面部材8の一方のフランジ部8eと、次に使用されるフィルタ面部材8のフランジ部8e、8fのうち前記一方のフランジ部8eと雌雄の関係をなす1つのフランジ部8fとを、クリップ部材16を介して正対状に結合させ、その後、使用済みのフィルタ面部材8を環状嵌合溝g5、g5内から長手方向j2に沿って引き出すようにする。これに代えて、使用済みのフィルタ面部材8の他方のフランジ部8fに次に使用されるフィルタ面部材8の他方のフランジ部8eをクリップ部材16を介して結合させて前とは逆方へ引き出すようにしてもよい。このようにすれば、次に使用されるフィルタ面部材8が使用済みのフィルタ面部材8により引き移動される
【0030】
円弧状帯板g3を取り外した際の開口が、180度よりも大きいと、懸濁液の水面下に開口の一部が没し、ドラムフィルタ装置5の内部が外部の懸濁液により汚染されることになる。しかしながら、本実施例によれば、フィルタ面部材8を交換している最中においても、ドラムフィルタ装置5の内外はシール状態を維持することができる。方形容器1から懸濁液を抜き取る作業を省くことができるので、装置の停止時間を極めて短くかることができる。
【0031】
このように巻き付けて適当に緊張されたフィルタ面部材8の雌雄のフランジ部8e、8fは、フィルタ面部材8の全長が環状嵌合溝g5のそれに較べて僅かに短いため、少し離間した状態となるが、これらフランジ部8e、8gの第1面部k6、k10同士の間と第2面部k4、k8同士の間とに、間隔調整部材及びシール部材として機能するゴム質材からなる弾性パッキン15を密状に介在させる。ここにおいて、弾性パッキン15は側面視L字形の単一状として、第1面部k6、k10同士の間と第2面部k4、k8同士の間とに連続して配置するのがよい。
【0032】
この後、図3及び図10に示すように、複数のクリップ部材16を幅方向j1上の複数位置のそれぞれにて雌雄のフランジ部8e、8fの本体板部k7、k11間に外嵌させる。クリップ部材16はバネ鋼などの金属板を屈曲したもので、一対の開閉操作部16a、16a、一対の押圧部16b、16b、及び、これら押圧部16b、16bを結合した結合部16cを具備している。これにより、各押圧部16b、16bがその対応する本体板部k7、k11の背面の図7に示す凹み部m1、m2に圧接して一対の本体板部k7、k11を近接させ、弾性パッキン15を挟圧した状態で一対の本体板部k7、k11を密状に結合させる。この後、先に取り外した左右の円弧状帯板g3、g3を元の状態に固定させる。円弧状帯板g3は雌雄のフランジ部8e、8fの第2面部k4、k8同士を近接させるように押圧するため、雄板部k5と雌板部k9とは特に幅方向j1の各端部8a、8b近傍において弾性パッキン15を挟圧する状態の密状に衝接されると共に、弾性パッキン15と突起片k3とが共働することにより左右の側面部材7a、7bとフィルタ面部材8との接合箇所のシール性が良好に保持される。
【0033】
図12に、他の実施形態におけるフィルタ面部材を示す。図12Aのフィルタ面部材は、図6の有効濾過面8iの編み目の方向を変更したものであり、他の構成は同じである。相違は、梁部8g、8hの延在方向に対して縦或いは横の編み目が交差するような方向の編み目とした有効濾過面8kを有している点である。図6のフィルタ面部材の縦横の編み目は長手方向j2及び幅方向j1に夫々平行であって、梁部8g、8hの方向と一致しているため、縦方向或いは横方向に折れ曲がりやすいものである。一方、図12Aに示したフィルタ面部材によれば、有効濾過面8iの編み目が梁部8g、8hの方向と交差するものとなっているため、有効濾過面8iの編み目を強度向上に寄与させることができる。
【0034】
図12Bのフィルタ面部材は、隣同士の端縁(例えば8a、8b)に対して、交差する方向に延在して接続する梁部8m、8nを設けて合成を高めたものである。梁部8m、8n同士もその延在方向は互いに交差している。このフィルタ面部材においては、有効濾過面8iを構成する縦横の編み目は、長手方向j2及び幅方向j1に夫々平行となっていて、梁部8m、8nの延在方向と交差する方向となっている。有効濾過面8iを構成する網は縦横いずれかの編み目の方向に平行なロール材料から裁断される。このフィルタ面部材は、図12Aのもののように網の目による剛性を求める必要が無いため、端縁8a、8b、8c、8dの方向とを一致させて、製造し易くしている。
【0035】
図12Cのフィルタ面部材は、端縁で囲まれた領域をハニカム構造の区画に分割して合成を高めたものである。有効濾過面8jを構成する縦横の編み目は、長手方向j2及び幅方向j1に夫々平行となっている。上記図12に示したフィルタ面部材は、いずれも有効濾過面を構成する網に対してプラスチックなどの合成樹脂材で射出成形して端縁および梁部を一体成型された方形薄厚濾過体である。
【0036】
次にドラムフィルタ装置の周辺構造について図1−3などを参照して説明する。
固定状支持管6は左右の端部に結合用フランジ部材17a、17b(図3)を固着されている。一方、左右の起立仕切板2a、2b(図1)の固定状支持管6装着位置には該支持管6を脱着するための縦溝n1が形成されており、固定状支持管6はこれら縦溝n1、n1を通じて配置され結合用フランジ部材17a、17bをその対応する起立仕切板2a、2bにボルトで固定されている。起立仕切板2a、2bの内面には円板18a、bが固定状支持管6に外嵌されている。起立仕切板2bの透孔d2と円板18bの透孔d4とは連通状態とされる。左右の環状弾性部材h2、h2の舌状部h21、h21のそれぞれはその対応する側の円板18a、18bの内側面の径方向外側となる環状箇所に適当圧力で当接されていて、区画1A内に貯留された被処理液をシールする。
【0037】
固定状支持管6は、長さ途中に2つの液噴射ノズル19a、19bが設けられると共に左端開口6aに図示しない送液手段を介して側方の区画1B内に貯留された浄化液が供給されている。固定状支持管6の右端が閉鎖状態であり、内方に供給された液を2つの液噴射ノズル19a、19bから噴射させてフィルタ面部材8の内面に吹き当てる。
【0038】
区画1A内のうちドラムフィルタ装置5よりも手前側となる範囲内には被処理物投入領域p1が設定されている。該被処理物投入領域p1に投入された被処理液に混入した固形物は固形物搬送手段により区画1A内の水平な底面上及び傾斜案内路4を経て方形容器1の前側へ落下する。
【0039】
固形物搬送手段は、区画1A内の最も手前側の左右箇所に回転可能に支持された水平回転軸20に固定された一対の案内スプロケット21、21を設けると共に、傾斜案内経路4内の最も前側の左右箇所にも回転可能に支持された水平駆動軸22に固定された駆動スプロケット23、23を設け、左右各側のこれら案内スプロケット21と駆動スプロケット23に無端状チェーン24を掛け回し、左右の無端状チェーン24、24の前後方向一定ピッチ箇所に掻き上げ板27を固定させた構成である。これら無端状チェーン24、24の曲がり箇所には、チェーン案内部材25、26を起立仕切板2a、2bを介して固設し、ドラムフィルター装置5の上面側に各無端状チェーン24、24を案内している。ドラムフィルター装置5の上面側に案内された無端状チェーン24の上張り部のうち、右側の無端状チェーン24はスプロケット部材9bの上部に噛合させ、左側の無端状チェーン24は、ドラムフィルター装置5の円板状部材9aの上を滑るものとなっている。
【0040】
駆動スプロケット23、23が図示しない駆動装置で回転駆動されることにより、無端状チェーン24、24の下張り部が前方へ移動され、掻き上げ板27が無端状チェーン24、24と同体状に移動されると共に右側の無端状チェーン24に連動してドラムフィルタ装置5が固定状支持管6回りの一定方向へ回動される。したがって、固形物は被処理物投入領域p1に投入されてそれが一定程度に堆積すると、掻き上げ板27がこれを水平な底面及び傾斜案内経路4上を掻き移動させ出口3aから落下させるように機能する。
なお、図1において図示省略したが、左右の起立仕切板2a、2bの上縁間にはカバー板が設けられる。
【0041】
上記した濾過分別取出装置は、マシニングセンタなどから排出される切粉及びクーラント(水又は切削油など)からなる懸濁液を処理する場合に使用して有益である。この使用においては、被処理物投入領域p1に切粉及びクーラントが投入され、これにより、被処理物投入領域p1の底面上には比較的密度の大きい切粉が連続的に堆積していき、クーラントや微細切粉の混合された懸濁液は区画1A内のドラムフィルタ装置5の内方を除く全域に貯留される。
【0042】
その一方では駆動スプロケット23、23が回転駆動されるのであり、これにより掻き上げ板27が区画1A内に堆積した切粉を区画1A内の底面上及び傾斜案内経路4上を掻き移動させて方形容器1の前外方へ落下させると共にドラムフィルタ装置5を固定状支持管6回りへ回動させる。
【0043】
ドラムフィルタ装置5は回動されながら、フィルタ面部材8の有効濾過面8iを介して区画1A内の懸濁液をフィルタ面部材8の内方側へ透過させる。これにより懸濁液中の切粉はフィルタ面部材8の外面側に付着するように取り除かれ、フィルタ面部材8の内方には浄化された状態のクーラントが流入する。こうして流入した浄化クーラントは側面部材7bの透孔、円板18bの透孔d4、及び起立仕切板2bの透孔d2を通じて区画1A内の懸濁液が混入することなく側方の区画1B、1C内に流入し貯留される。
【0044】
区画1B、1C内に貯留した浄化クーラントは再びマシニングセンタなどに供給されて使用される。一方では図示しない送液手段を介して固定状支持管6内に供給され2つの液噴射ノズル19a、19bから噴射される。これら液噴射ノズル19a、19bから噴射された浄化クーラントは回転駆動されるドラムフィルタ装置5のフィルタ面部材8の内面に連続的に吹き当てられる。これにより、フィルタ面部材8の有効濾過面8iは区画1A内で懸濁液に浸漬してない状態の下で逆洗され、効果的にその目詰まり物が除去される。したがって、ドラムフィルタ装置5は人為的な洗浄をしなくても長期に亘って計画通りの濾過能力を発揮する。
【0045】
次に上記実施形態の特徴点について説明する。
a:単一のフィルタ面部材8を左右一対の側面部材7a、7bの外周縁の環状嵌合溝g5、g5の略全長範囲に嵌合させると共にフィルタ面部材8の長手方向j2で対向した両端縁8c、8dのそれぞれに設けたフランジ部8e、8f同士を弾性パッキン15を挟み付けた状態で結合させる構成は、ドラムフィルタ装置5の外周面部に比較的広い有効濾過面8iを形成することができて効率的な濾過分離が行えるのであり、また環状嵌合溝g5、g5の側面部材7a、7b周方向の全長やフィルタ面部材8の長手方向j2の寸法に製作誤差が生じても弾性パッキン15の厚さを調整することで環状嵌合溝g5、g5にシール性の損なわれることなくフィルタ面部材8を装着することが可能となる。
【0046】
b:雌雄のフランジ部8e、8fの第1面部k6、k10同士の間と第2面部k4、k8同士の間とに側面視L字形となされた単一状の弾性パッキン15を挟み付けるようにした構成は、左右の側面部材7a、7bの外周縁の環状嵌合溝g5、g5にフィルタ面部材8を係着した状態において、フィルタ面部材8のフランジ部8e、8f周辺についての側面部材7a、7b周方向及び径方向のシール性を確保することができて、ドラムフィルタ装置5におけるフィルタ面部材8を境界とした内外間の有害な液漏れを阻止することができる。
【0047】
c:フィルタ面部材8の幅方向j1で対向した両端縁8a、8bのそれぞれの全長箇所に環状嵌合溝g5、g5の内面に圧接される弾性変形可能な突起片k3を設けた構成は、端縁8a、8bと側面部材7a、7bの外周縁の嵌合箇所のシール性を確保することができる。
【0048】
d:フィルタ面部材8の長手方向j2の梁部8hと幅方向j1の梁部8gの存在は、フィルタ面部材8の剛性を増大させ、ドラムフィルタ装置5の使用中におけるフィルタ面部材8のバタツキを抑制することができる。このさい、梁部8g、8hと有効濾過面8iとの結合箇所に形状の不連続点ができないように梁部8g、8hの高さを幅外側へ向け円弧状に漸減させて梁部8g、8hと有効濾過面8iとを急激な段差の生じないように結合させると共に長手方向j2の梁部8hと幅方向j2の梁部8gとの交叉箇所も形状の不連続点ができないように円弧面8jを介して結合させるのがよいのであり、これにより梁部8g、8hと有効濾過面8iとの結合箇所や梁部8g、8h同士の交叉箇所は使用時の振動による疲労破壊を効果的に抑制される。
【0049】
e:側面部材7a、7bの外周縁の環状嵌合溝g5、g5の径方向外側の壁面部を複数の円弧状帯板g3をネジ部材g4で固定することにより形成した構成は、ドラムフィルタ装置5が固定状支持管6回りの任意位置にあっても、ドラムフィルタ装置5を大きく回転させないで、1つの円弧状帯板g3を取り外すことができ、この状態の下で、使用済みのフィルタ面部材8を引き抜き、次に使用されるフィルタ面部材8を、側面部材7a、7b周方向へ向けて開放された左右の環状嵌合溝g5、g5内に押し込むなどして滑り込ませることで、フィルタ面部材8の交換装着が簡易迅速に行える。
【0050】
f:ドラムフィルタ装置5の使用済みのフィルタ面部材8を区画内の被処理液を抜き取ることなく簡便に交換することができる。被処理液をそのままの状態とすることは、装置の稼働率を格段に向上させる。また、次に使用されるフィルタ面部材8が使用済みのフィルタ面部材8により引き移動されるため次に使用されるフィルタ面部材8は押し込み操作による場合よりも左右の環状嵌合溝g5、g5内に円滑に嵌合されるものとなる。
【0051】
上記した実施形態では、ドラムフィルタ装置5は切粉及びクーラントからなる懸濁液の濾過分離に使用されたがこれに限定するものではなく、種々の懸濁液の濾過分離に使用して差し支えないものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るドラムフィルタ装置を具備した濾過分別取出装置の概要を示す斜視説明図である。
【図2】上記ドラムフィルタ装置の斜視図である。
【図3】上記ドラムフィルタ装置の断面図である。
【図4】上記ドラムフィルタ装置のスプロケット部材を示す側面図である。
【図5】上記ドラムフィルタ装置の環状部材周辺を示す断面図である。
【図6】上記ドラムフィルタ装置のフィルタ面部材を示しAは平面図で、Bは側面図で、Cは正面図である。
【図7】上記フィルタ面部材の各部を示し、Aは図6のX−X部の断面図で、Bは雄側のフランジ部の断面図で、Cは雌側のフランジ部の断面図である。
【図8】上記フィルタ面部材の外側表面を示す斜視図である。
【図9】上記ドラムフィルタ装置の側面部材の外周縁にフィルタ面部材を巻き付けた状態を示す側面視説明図である。
【図10】上記ドラムフィルタ装置の雌雄のフランジ部を結合した状態を示す断面図である。
【図11】ドラムフィルタ装置のフィルタ面部材を交換する様子を示す側面視説明図である。
【図12】他のフィルタ面部材を示す図である
【符号の説明】
【0053】
7a 側面部材
7b 側面部材
8 フィルタ面部材
8a 幅方向で対向した端縁
8b 幅方向で対向した端縁
8c 長手方向で対向した端縁
8d 長手方向で対向した端縁
8e フランジ部
8f フランジ部
15 間隔調整部材(弾性パッキン)
16 クリップ部材
g5 環状嵌合溝
j1 幅方向
j2 長手方向
k3 突起片
k4 第2面部
k6 第1面部
k8 第2面部
k10 第1面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定距離を置いて対向する側面部材を備え、前記各側面部材の外周縁に形成された環状嵌合溝内に、撓曲可能な一枚のフィルタ面部材のうちその幅方向で対向した両端縁の全長箇所を摺動可能且つ密状に嵌合させると共に、前記フィルタ面部材のうちその長手方向で対向した両端縁を間隔調整部材を介して密状に結合させたことを特徴とするドラムフィルタ装置。
【請求項2】
一定距離を置いて対向する側面部材を備え、前記各側面部材の外周縁に形成された環状嵌合溝内に、撓曲可能なフィルタ面部材のうちその幅方向で対向した両端縁の全長箇所を摺動可能且つ密状に嵌合させると共に、このように嵌合されたフィルタ面部材のうちその長手方向で対向した両端縁に、前記側面部材の半径方向外側へ突出された一対のフランジ部を設け、各フランジ部は前記半径方向及び前記幅方向に沿った第1面部と、前記外周縁及び前記幅方向に沿った第2面部とを具備し、各フランジ部の第1面部同士の間と、第2面部同士の間との双方にパッキンが密状に介在された状態で前記一対のフランジ部に跨るようにクリップ部材が外嵌された構成を特徴とするドラムフィルタ装置。
【請求項3】
前記各側面部材の環状嵌合溝の半径方向外側の壁面部の周方向箇所は、部分的に脱着可能であって、前記脱着箇所が前記側面部材から離脱された状態では、前記フィルタ面部材が前記環状嵌合溝の周方向へ向かう開口が露出することを特徴とする請求項1又は2記載のドラムフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ面部材のうちその幅方向で対向した両端縁の略全長箇所に前記環状嵌合溝の内面に圧接される弾性突起片を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のドラムフィルタ装置。
【請求項5】
一定距離を置いて対向する側面部材の各外周縁の全長箇所間に密状に巻き付けられるものであって、幅方向で対向した両端縁の全長箇所が前記各側面部材の外周縁に形成された環状嵌合溝内に摺動可能に且つ密状に且つ幅方向への抜け出しの規制された状態に嵌合され、且つ、長手方向で対向した両端縁には前記側面部材の半径方向外側へ突出され雌雄の関係で結合される一対のフランジ部が設けられ、各フランジ部は前記半径方向及び前記幅方向に沿った第1面部と、前記外周縁及び前記幅方向に沿った第2面部とを具備したことを特徴とするドラムフィルタ装置に使用されるフィルタ面部材。
【請求項6】
請求項5のフィルタ面部材において、縦横の編み目状の有効濾過面と、互いに交差する方向に延在した梁部とを有し、前記縦横の編み目は前記互いに交差する梁部の延在方向に対して交差する方向に延在していることを特徴とするドラムフィルタ装置に使用されるフィルタ面部材。
【請求項7】
請求項3記載のドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材を交換するさい、前記周方向一定範囲箇所を取り外した状態とし、既に前記環状嵌合溝内に嵌合されている使用済みのフィルタ面部材の何れか一方のフランジ部と、次に使用されるフィルタ面部材のフランジ部のうち前記一方のフランジ部と雌雄の関係をなす1つのフランジ部とを、前記クリップ部材を介して正対状に結合させ、その後、前記使用済みのフィルタ面部材を前記環状嵌合溝内から前記長手方向に沿って引き出すことを特徴とするドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材の交換方法。
【請求項8】
請求項3記載のドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材を交換するさい、前記周方向一定範囲箇所を取り外した状態とし、前記各側面部材の環状嵌合溝内に嵌合されている使用済みのフィルタ面部材を前記長手方向へ引き出した後、次に使用されるフィルタ面部材のうちその幅方向上で対向した両端縁を、その対応する前記環状嵌合溝内に滑り込ませるように嵌合させることを特徴とするドラムフィルタ装置におけるフィルタ面部材の交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−226492(P2009−226492A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70970(P2008−70970)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】