説明

ドラムフィーダ

【課題】エーゼのような細長い棒状の部材を堆積した状態で収納したドラムから、その部材を効率的かつ確実に1本ずつ取り出すことができるドラムフィーダを提供すること。
【解決手段】外周に2以上の開口部3を持つ回転自在なドラム1と、ドラム1の外周面と対面する湾曲面を持つ部材ガイド5とを備え、ドラム1内に棒状の部材4を収納するドラムフィーダであって、開口部3のドラム回転方向後方側に、部材受け面と部材フィード面とを備えた部材収容部6を設け、前記部材受け面はドラム外側を向いてドラム回転方向へ突き出し、かつ前記部材フィード面と交わる位置から0〜15度の角度でドラム内側へ向かい、そのドラム回転方向の長さは部材4の長幅に対し0.7〜1.5倍とし、前記部材フィード面はドラム回転方向を向き、前記部材受け面と交わる位置が前記湾曲面からドラム半径方向へ部材4の短幅に対し1〜1.5倍となるように設けたドラムフィーダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体接種に用いる白金耳や使い捨て型の樹脂製エーゼ等の細長い棒状の部材をドラムに収納し、このドラムから前記部材を1本ずつ取り出すドラムフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の臨床検査において、通称シャーレ又はペトリ皿の底面に薄く寒天、ゼラチン等の固形培地を充填し、その表面に被験菌株の細胞含有物を塗布し、目的によって定まる特定の環境において繁殖させることが行われている。
【0003】
この被験菌株の細胞含有物を塗布する際に用いられるものが白金耳等であり、別名エーゼと称される細長い棒状の部材である。上記の臨床検査において被験菌株を自動塗布する場合、多数のエーゼをあらかじめ手作業にて1本ずつ自立させるセット作業が行われており、この自立したエーゼをロボット等の搬送手段で把持して、エーゼ端の球状や線状の部分を使用してシャーレ等の固形培地の表面に被験菌株を塗布する。
【0004】
このようにエーゼを取り扱う場合、これを1本ずつ取り出す作業が必要となるが、この作業を自動化する方案として参考になる機構を備えたものとして、特許文献1にパーツをドラムの回転により整列させ、別に設けたドラムに個別受け取りポケットを設けて要求された間隔で外部に供給する整列・供給装置が開示されている。
【0005】
この特許文献1に開示された整列・供給装置は、整列供給部とパーツ収納部を別体としており、小物部品を投入当初の塊状態をほぐしながら、概ね回転軸方向に沿う姿勢に予備設定する回転ドラムと、この回転ドラムに連結して個別整送装置とを備える。この個別整送装置には、個別整列ドラムの周面に個別受取ポケットが形成され、このポケット部のまわりに受入案内面と、ドラム回転方向後方側に持ち上げ板と、ドラム回転方向前方側に断面R形状の姿勢選別板が形成され、前記持ち上げ板の根元周面部位に逆送阻止部が形成され、個別整列ドラムの外側ほぼ下半周部に個別受取ポケットをカバーする支承案内板が張設されている。この構成により、小物部品等の被搬送体は、個別受取ポケットに送り込まれ、持ち上げ板と支承案内板とに保持され、次の個別受け渡しシュートまで搬送される。
【0006】
しかし、特許文献1の整列・供給装置では、最初の受取・漸出ゾーンから最終の適量規制ゾーンといくつものゾーンを経て、小物部品が整列、個別に取り出されるため、設置スペースが大きくなるという問題はある。
【0007】
また、本発明者が特許文献1の整列・供給装置を使用してエーゼを1本ずつに取り出せるかテストしたところ、エーゼが細長い棒状で軽量の部材であることから、個別受取ポケットに複数本のエーゼが入り込み、そのまま重なった状態で個別受け渡しシュートへ排出されたり、個別受け渡しシュート上のエーゼが後から排出されたものに押されて同様に重なったりして、エーゼを1本ずつ安定して取り出すことができなかった。
【0008】
一方、ドラム内にエーゼ収納してドラムを停止状態から回転させると、ドラム内部において、ドラム内で静止して下側に溜まっていたエーゼはドラムの回転に伴い、ドラム内周面との摩擦抵抗によりドラムの回転方向へ持ち上げられ、その先行したものが上死点に達すると順次下方へ転がることで全体としてみかけの流動性が生じる。そこで、ドラムの外周1箇所にエーゼの取り出し口として開口部を設けると共にこの開口部にエーゼを取り出すための爪部を設け、ドラムを回転させて開口部が鉛直方向上側に達したときに、爪部上のエーゼを取り出す機構を検討したが、単に爪部を設けるだけでは、エーゼを1本ずつ取り出すことは困難であり、また開口部が1箇所では、ドラム1回転毎に1本のエーゼしか取り出せないのでサイクルタイムが長くなるという問題があった。
【0009】
また、サイクルタイムを短くするために開口部を2箇所以上に設けると、1回の取り出しに対してドラムの回転角度が少なくなるため、上記みかけの流動性が悪化し、また、ドラムの上側に位置する開口部からエーゼを取り出す際にドラムの回転を停止しているときに、ドラムの下側の位置する開口部にエーゼが埋まり、厚く堆積したエーゼの塊から1本のみを安定して取り出すことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−020116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明が解決しようとする課題は、エーゼのような細長い棒状の部材を堆積した状態で収納したドラムから、その部材を効率的かつ確実に1本ずつ取り出すことができるドラムフィーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のドラムフィーダは、外周に2以上の開口部を持つ回転自在なドラムと、このドラムの外周面と対面する湾曲面を持ち鉛直方向上側に部材取り出し用の切欠き箇所を設けた部材ガイドとを備え、前記ドラム内に長手方向に対する直角断面が略長方形又は略楕円形である棒状の部材を収納し、前記ドラムを回転させ鉛直方向上側に達した前記開口部から前記部材を1本ずつ取り出し可能とするドラムフィーダであって、前記開口部のドラム回転方向後方側に、部材受け面と部材フィード面とを備えた部材収容部を前記ドラムと一体的に設け、前記部材受け面は、ドラム外側を向いてドラム回転方向へ突き出し、かつ、前記部材フィード面と交わる位置から0〜15度の角度でドラム内側へ向かい、そのドラム回転方向の長さは前記部材の前記直角断面の長幅に対し0.7〜1.5倍とし、前記部材フィード面は、ドラム回転方向を向き、前記部材受け面と交わる位置が前記湾曲面からドラム半径方向へ前記部材の前記直角断面の短幅に対し1〜1.5倍となるように設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドラムの開口部に設けた部材収容部の形状及び寸法関係を上記のように特定したことで、ドラムを1回転未満で回転させるという条件下で、ドラム内に収納された棒状の部材のみかけの流動性が悪く堆積した状態であっても、棒状の部材をドラムから1本ずつ安定して取り出すことができる。すなわち、外周に2以上の開口部を持つドラムを使用して、各開口部から棒状の部材を1本ずつ安定して取り出すことができるので、棒状の部材の取り出しを効率的かつ確実に行うことができ、取り出しのサイクルタイムも短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のドラムフィーダの概略斜視図である。
【図2】図1のドラムストッカーのA−A断面図であり、(a)はドラム回転前の部材を収納した状態を示し、(b)はドラムの回転中を示し、ドラムの回転に伴う部材の挙動を示す。
【図3】本発明のドラムフィーダの部材収容部周辺の部分正面断面図を示す。
【図4】本発明のドラムフィーダによる部材取り出し過程を示す説明図であり、(a)はドラムフィーダの部材収容部周辺と部材との関係を示し、(b)はドラムフィーダの部材収容部に部材が侵入した状態を示し、(c)はドラムフィーダの回転により部材収容部がその頂部近傍に達した取り出し直前の状態を示す。
【図5】本発明で使用する細長い棒状の部材の一例である使い捨て型の樹脂製エーゼを示し、(a)はその側面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図6】部材収容部の他の実施形態を示す部分正面断面図である。
【図7】本発明のドラムスフィーダの他の実施形態を示す部分正面断面図であり、(a)は3個の開口部を設けたドラムフィーダを示し、(b)は4個の開口部を設けたドラムフィーダを示し、(c)は5個の開口部を設けたドラムフィーダを示す。
【図8】部材収容部のさらに他の実施形態を示す部分正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に本願発明のドラムストッカーを示す。ドラム1は回転軸2で回転自在に支えられている。この回転軸2は図示しないドラム回転用のモータ(駆動機構)に接続され、プログラムの命令によって一方向へ指示された角度分だけ回転する。
【0016】
ドラム1の外周には2個以上(図1では2個)の開口部3を設けている。また、ドラム1の長手方向の寸法は収納する細長い棒状の部材4の長さに対し余裕を持たせた寸法としている。また、ドラム1が回転しているときに、部材4が設置面側(図1では下側)を向いた開口部3から外に流れ出てしまわないように、ドラム1の外周面と対面する湾曲面を持つ部材ガイド5がドラム1の外周面に沿って配置され、開口部3から流れ出ようとする部材4を支えている。図1では、部材ガイド5はドラム1の長さ寸法の三分の二程度の長さとし、中央部に配置している。また、部材ガイド5には、ドラム1の開口部3が頂上部(鉛直方向上側)に達したとき、その開口部3から部材4を取り出すことができるように、鉛直方向上側に、開口部3のドラム周方向の幅より多少広めとした切欠き箇所が設けられている。なお、部材ガイド5は、ドラムの長手方向(軸方向)全体ではなく、細長い棒状の部材4を安定して支持できる間隔を維持できる範囲内で複数に分割して設けることで、ドラムフィーダ全体の軽量化を図ることができる。また、本発明のドラムフィーダにおいては、後述するようにドラム1と部材ガイド5との寸法関係が重要であるので、その寸法関係を確実に維持するには、ドラム1と部材ガイド5は図1に示すように一体的に設けることが好ましい。
【0017】
この本発明のドラムフィーダの上方には挟持手段を持った部材搬送手段9が配置されており、ドラム1の開口部3が頂上部に達したとき、ドラム1の回転を一旦停止させて、部材搬送手段9を降下させ、その開口部3の中央部分に形成した切り欠き部90において部材搬送手段9の挟持手段で部材4を挟んだ後、別の場所(例えば、検体塗り広げ位置)へ搬送する。
【0018】
図2は図1のA−A断面図である。図2(a)に示すように、ドラム1内部に部材4が収納されている。部材4は予め作業者が部材ガイド5の切欠き箇所に位置するドラム1の開口部3からその内部に入れたものである。
【0019】
なお、本発明のドラムフィーダによる部材の取り出し作業を効率的に行うには、予備のドラムフィーダを準備し、そのドラムフィーダに事前に部材を入れておき、図1に示すドラムフィーダの使用が終了したら、すぐに交換できるようにドラム1の回転軸2はドラム1の駆動機構であるモータの軸と着脱可能に設けることが好ましい。
【0020】
図2(b)に示すように、部材4はドラムストッカー1の回転に伴いその内周面との抵抗によりその回転方向に持ち上げられ、塊状態にあったそれぞれの部材4の上死点に来たものがドラム1の下方へ崩れ落ちる。本発明では複数の開口部3を設けたので、1回あたりの取り出しにつき、ドラム1は360度を開口部3の数で割った角度で回ることになり、上述したみかけの流動性の悪化、若しくは、部材4がドラム下方にきた開口部3を埋めて厚く堆積した状態となる。本発明のドラムフィーダは後述するように開口部3に部材収容部を設け、その構成に工夫を施すことでこの問題を解決している。なお、開口部3の数を増やすことで、ドラム1回転あたりの取り出しの回数を増やすことができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0021】
ドラム1の外周に3個以上の開口部3(3a〜3e)を配置した例を図7に示している。図に示すように開口部3の数を増やせば、部材4の取り出しのサイクルタイムを短くすることができるが、後述するように多く設けた場合は、別の問題が生じる。
【0022】
本発明のドラムフィーダでは、図3に示すように、ドラム1の開口部3のドラム回転方向後方側に開口部3の周方向においてその一部を覆うように爪部60を設け、この爪部60にドラム1の外側を向く部材受け面7を形成し、それに連なる部材フィード面8をドラム1の回転方向に面して設け、それらで囲まれた領域を部材収容部6とした。なお、本実施形態では、爪部60は部材4の長さ寸法の三分の二程度の間隔で一対配置している。
【0023】
部材受け面7は部材フィード面8と交わる位置H1から0〜15度の角度Aでドラム1の内側へ向かうように設けている(角度Aの起点となる直線は位置H1における接線である。)。これにより、図4(a)に示すように、ドラム1の開口部3と部材ガイド5とに空隙部を形成し、図4(b)に示すように、部材ガイド5に接触している部材4は他の部材4・・ともどもドラム1の回転に伴って持ち上げられると部材受け面7の先端周辺に接触し、他の部材4・・の重みも受けている部材4をドラム1外側へ押しながら、部材4の向きを整え、この部材4は部材フィード面8側へ押され、最終的に部材受け面7と部材ガイド5及び部材フィード面8に囲まれた領域内、すなわち、部材収容部6に部材4が1本だけ収容される。この収まった部材4は他の部材4・・から様々な力を受けるが、部材受け面7がドラム1の内方向きの角度を有しているので、ドラム1の回転中は常に部材4を部材ガイド5の湾曲面に押し付ける力が発生し、部材収納部6内に収まった部材4の挙動が安定する。この状態を維持したまま、収まった部材4は部材ガイド5の湾曲面に沿って、図4(c)に示す部材ガイド5に切欠き箇所がある鉛直方向上側まで送り出され、一対の爪部60、60で支持された部材4が露出し部材受け面7上に載った状態が保持される。
【0024】
上記部材受け面7の角度Aが、0度未満、つまりドラム回転方向の接線よりドラム外側へ向かう面であると、部材4を部材受け面7と部材ガイド5に挟まれた部材収容部6の領域に取り込めても、部材4を部材ガイド5に押し付ける力が発生せず、部材4の挙動が安定せず、ドラム1の回転抵抗が増大する。また、角度Aが15度を超えると、部材収容部6の入口が大きくなりすぎ、部材4が2本以上取り込まれて、ドラム1と部材ガイド5との間で摩擦抵抗が生じ、ドラム1の回転を阻害する恐れがあり、また、部材収容部6に収めた部材4の姿勢を安定させることができない。
【0025】
部材受け面7の長さL(図3参照)は、部材4の直角断面の長幅(図5参照)に対し、0.7〜1.5倍とする。部材受け面7の長さLが部材4の長幅の0.7倍未満であると、ドラム1が部材取り出し位置で停止した際、部材受け面7上の部材4がドラム1内に落下する恐れがある。また、1.5倍を超えると2本乗ってしまう恐れがあり、また、部材収容部6に複数の部材4が詰まり、ドラム1の回転を阻害する恐れがある。
【0026】
また、部材受け面7の長さLを上記のように設定することで、上述の部材受け面7の角度の作用と相まって、確実に部材4の向きを整え、部材収容部6に部材4を1本のみ取り込むことができる。そして、図4(c)に示すように、ドラム1が部材取り出し位置で停止した際の部材収容部6に収まった部材4の近傍の部材4、あるいは図2(b)に示す回転方向の持ち上げ位置の最上部を越えた部材4であって一緒に持ち上げられた部材4はドラム1内に再度戻り、部材受け面7に載った1本だけを開口部3に残こすことができる。
【0027】
ここで、ドラム1の部材取り出し位置は、部材受け面7が水平、若しくは水平に対し部材受け面7の先端が上向きになる位置とする。この位置でドラム1が停止し、上述のとおり部材搬送手段9が降下し、切り欠き部90に進入して爪部60に支持された部材4を把持し、上昇して次の作業位置へ移動する。
【0028】
なお、部材受け面7に複数の凹凸を設けてドラム1が停止した際に部材受け面7に載った部材4が落ちることを抑制するようにしても良い。そうするとドラム1の部材取り出し位置にある程度の幅を持たすことができるので、ドラム1の回転制御が行いやすくなる。部材受け面7に凹凸に設けた場合は、その複数の凸部の頂点を結んで部材受け面7の角度や位置の起点とする。
【0029】
さらに、本発明では、部材受け面7と部材フィード面8が交わる位置H1(図3参照)が、部材ガイド5の湾曲面(内周面)からドラム1半径方向へ部材4の直角断面の短幅(図5参照)の1〜1.5倍になるように、部材フィード面8を設ける。言い換えれば、部材ガイド5の湾曲面(内周面)から位置H1までの距離H(図3参照)が、部材4の短幅の1〜1.5倍になるように部材フィード面8を設ける。
【0030】
これにより、部材4が部材ガイド5から受ける摩擦力で部材受け面7から受ける反力を得ることができ、部材収容部6に取り込んだ1本の部材4を保持し、部材取り出し位置まで安定して送り出すことができる。
【0031】
距離Hが部材4の短幅の1倍未満であると、部材ガイド5の先行部はドラム1の内方向きの角度を有していることから、部材4が部材フィード面8方向へ押し込まれて詰まり、ドラム1の回転負荷が増大してドラム1を回すモータが故障する恐れがある。
【0032】
また、距離Hが部材4の短幅の1.5倍を超えると、部材受け面7からの反力が十分得られず、部材4が部材収容部6において暴れて向きを変え、部材収容部6の爪部60と部材ガイド5の間に詰まる恐れがある。ここで、距離Hが部材4の短幅の1倍あるいは1.5倍とは、部材4が使い捨て型の樹脂製エーゼのように弾性変形を伴う場合、短幅に対して5%の誤差は含むものである。
【0033】
部材フィード面8はドラム1の回転方向前方を向く面である。また、図8に示すように、部材受け面7と交わる位置は、部材フィード面8の最大径部10とドラム1中心を結んだ直線に対し、ドラム1の回転方向後側へ部材4の長幅の0.2倍以下の幅W内に収まるようにすることが好ましい。これにより、取り込んだ部材4の姿勢がより安定し、部材4の送りが確実となる。
【0034】
次に、本発明のドラムフィーダの動きについて図4を用いて説明する。図4(a)は、2個の開口部3を持つドラム1が取り出し位置で停止している位置から動き出した直後の図である。このときにドラム1の開口部3に設けた部材収容部6の部材受け面7の先端付近で、ドラム1に収納されている部材4が整流(向きがばらばらの部材4を部材受け面7の先端付近で捕らえ、部材4の向きを整える)され、その後、部材受け面7あるいは部材フィード面8と部材ガイド5の湾曲面とで部材4を保持する。図4(b)はその後約40度回転した状態を示した図であり、図4(c)はドラム1が180度回転して部材取り出し位置で停止した状態を示した図である。図4(b)において、部材4を保持した状態を維持してドラム1の回転に伴い鉛直方向上側へ導く。その後、図4(c)のように、開口部3がドラムフィーダの設置面に対して鉛直方向上側を向く位置に来たときには、鉛直方向上側に導かれた多数の部材4のうち、部材フィード面8に接する1本だけが部材受け面7上に残留し、他の部材4はドラム1内へ落下する。この状態で、ハンドチャック等を備えた部材搬送手段9(図1参照、駆動装置等は図示していない。)で部材受け面7上に残った部材4を取り、部材4を次工程へ搬送する。
【0035】
図5(a)は、部材4の一例である使い捨て型の樹脂製エーゼを示す側面図である。このエーゼは、図5(b)に示すように、主要な胴部40の長手方向の直角断面が略長方形(角落し、若しくは角部を丸めた形状)を有している。よって、図2、図4においては部材4を略長方形として示している。なお、本発明において部材4の直角断面は略楕円形であっても良い。直角断面が略楕円形の場合、その直角断面の長幅とは略楕円の長軸長さを意味し。短幅とはその短軸長さを意味する。
【0036】
また、本発明の部材受け面7や部材フィード面8は平面で設けるのが簡単で良いが、ドラム回転軌跡の外へ向かって凸曲面であると、部材受け面7の先端と基端の径の差が大きくなり、多数の部材4を整流しやすく、かつ、取り込んだ際に保持しやすい。なお、この場合、図3に示す角度Aは、位置H1と部材受け面7の先端を結んだ直線によって規定する。
【0037】
さらに、図1〜図4では、部材フィード面8をドラム1の開口部3の1辺(ドラム1の胴部の厚み部分)を利用して設けたが、図6や図8に示す爪部61、62のように部材受け面7と同一部品で設けることも、本発明の範疇であることは言うまでもない。
【0038】
また、上述の部材ガイド5の湾曲面(内周面)に硬質プラスチックなどの低抵抗の部材を貼ることも好ましい。これにより、部材4に対するすべりを向上させてドラム1の回転抵抗を低減させることができる。
【実施例1】
【0039】
本発明の効果を検証するため、本発明例1〜9、比較例1〜6として、部材受け面7の角度と長さ、部材受け面7と部材フィード面8の交わる位置H1(距離H)が表1に示すもので、開口部3の数が2個のドラムフィーダをそれぞれ作製し、部材取り出し実験に供した。ここで、部材4としては図5に示した使い捨て型の樹脂製エーゼ(以下、単に「エーゼ」という。)を使用した。その長幅は3mm、短幅は2mmで角に曲面取りがなされている。
【0040】
実験条件は、エーゼをドラム1内に300本収納し、1回の取り出しにつき、ドラム1は360度を開口部3の数で割った角度、つまり180度毎で回す。ドラム1の回転と停止はドラム1の回転軸2に接続したエンコーダ式のモータにプログラムによる指令を送り行った。これを300回行い、取り出しミスの有無を確認した。これを3セット繰り返した結果を表1に示す。また、ドラム回転の阻害がされてないかをドラム回転用のモータの電流値の昇降を指標にして観察した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、本発明例1〜9は3セット、合計900本とも1本ずつ取り出せ、取り出しミスがなく安定していた。本発明例1、4、9は100回に数回程度モータの電流値が2割前後上がることがあったが、取り出しミスはなかった。電流値上昇はドラム1の回転抵抗が増加したためであるが、その原因は、本発明例1では部材収容部6がエーゼを取り込むまでの部材受け面7とエーゼの擦過の増加、本発明例4、9ではエーゼの姿勢が部材収容部6で安定しなかったためと考えられる。
【0043】
一方、比較例1は、10回目で部材受け面7にエーゼが載ってないことがあり、その後も頻発した。比較例2は、23回目で部材受け面7にエーゼが2本同時載った状態で送り出されてきた。また、比較例3は、1回目からドラム1が取り出し位置に停止したときに部材受け面7からエーゼが落ちてしまった。比較例4は5回目でエーゼが2本載った状態で送り出され、また、40回目で複数のエーゼが部材ガイド5との隙間に詰まりドラム1が停止した。比較例5は送り出し自体はできたものの、部材ガイド5とエーゼの擦れが強く、ドラム1の回転に負荷がかかったため実験を中止した。比較例6は15回目で複数のエーゼが部材ガイド5との隙間に詰まりドラム1の回転に負荷がかかったため実験を中止した。
【0044】
以上より、本発明のドラムフィーダによれば、エーゼを的確に部材収容部6に取り込み、送り出すことができることが分かった。さらに、部材受け面7の角度Aは5度〜10度がさらに好ましく、部材受け面7と部材フィード面8の交わる位置H1(距離H)はエーゼの短幅の1〜1.2倍がさらに好ましい範囲ということが分かった。
【実施例2】
【0045】
本発明例10〜12として、上記本発明例6と同様の仕様で開口部3の数が表2に示すものをそれぞれ用意し、実施例1と同様の試験に供した。
【0046】
【表2】

本発明例10〜12は取り出しミスは起こらなかったが、表2に示すように、本発明例12は他の本発明例に比べ、若干モータの電流値が高く、回転抵抗が大きいと推察された。これは、開口部の数が多く、エーゼと部材ガイド5の湾曲面及び部材受け面7との擦過抵抗が大きくなったためと考えられる。したがって、開口部の数は4以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のドラムフィーダは、白金耳や使い捨て型の樹脂製エーゼのほか、その他の細長い棒状の部材の収納及び取り出しに利用可能である。例えば、長さが120〜200mm、直角断面の長幅及び短幅が2〜6mm程度の棒状の部材であれば、本発明のドラムフィーダは問題なく使用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ドラム
2 回転軸
3、3a〜3e 開口部 90 切欠き部
4 部材 40 胴部
5 部材ガイド
6 部材収容部 60、61、62 爪部
7 部材受け面
8 部材フィード面
9 部材搬送手段
A 部材受け面の角度
L 部材受け面の長さ
H1 交わる位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に2以上の開口部を持つ回転自在なドラムと、このドラムの外周面と対面する湾曲面を持ち鉛直方向上側に部材取り出し用の切欠き箇所を設けた部材ガイドとを備え、前記ドラム内に長手方向に対する直角断面が略長方形又は略楕円形である棒状の部材を収納し、前記ドラムを回転させ鉛直方向上側に達した前記開口部から前記部材を1本ずつ取り出し可能とするドラムフィーダであって、
前記開口部のドラム回転方向後方側に、部材受け面と部材フィード面とを備えた部材収容部を前記ドラムと一体的に設け、
前記部材受け面は、ドラム外側を向いてドラム回転方向へ突き出し、かつ、前記部材フィード面と交わる位置から0〜15度の角度でドラム内側へ向かい、そのドラム回転方向の長さは前記部材の前記直角断面の長幅に対し0.7〜1.5倍とし、
前記部材フィード面は、ドラム回転方向を向き、前記部材受け面と交わる位置が前記湾曲面からドラム半径方向へ前記部材の前記直角断面の短幅に対し1〜1.5倍となるように設けたドラムフィーダ。
【請求項2】
前記部材が、使い捨て型の樹脂製エーゼ又は白金耳である請求項1に記載のドラムフィーダ。
【請求項3】
前記開口部の数が2〜4である請求項1又は2に記載のドラムフィーダ。
【請求項4】
前記部材受け面の、前記部材フィード面と交わる位置からドラム内側へ向かう角度が5〜10度であり、前記部材フィード面の前記部材受け面と交わる位置が前記湾曲面からドラム半径方向へ前記部材の前記直角断面の短幅に対し1〜1.2倍の位置にある請求項1〜3のいずれかに記載のドラムフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−222072(P2010−222072A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68448(P2009−68448)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000159618)吉川工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】