説明

ドラム回転装置

【課題】省エネルギで、且つ、エンジン騒音の発生を抑制することが可能なドラム回転装置を提供することである。
【解決手段】ミキサ車のドラムDを回転駆動する二段階に容量可変の油圧モータMと、油圧モータMに圧油を供給する油圧ポンプPと、油圧モータMの傾転角を変更する変更機構Tと、エンジン回転速度を調節する調節レバーLとを備えたドラム回転装置1において、変更機構Tは、信号線30を介して信号源Batからの信号が入力されると油圧モータMの容量を小さくするように設定され、信号線30の途中に、調節レバーLがエンジン回転速度を低中速度域に調節する範囲内にある場合に閉じるように設定される第一スイッチ31と、油圧ポンプPの吐出圧力が所定の閾値より高いと閉じるように設定される第二スイッチ32とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミキサ車のドラムの回転を制御するドラム回転制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサ車と称されるアジテータトラックにあっては、一般的には、コンクリートプラントで製造されるコンクリートを、打設現場まで運搬するために、架台に回転自在に搭載されるドラムを備えている。
【0003】
このドラムは、筒状のドラムシェルと、ドラムシェル内面に外周部が固定される螺旋状のブレードを備え、同じく、ミキサ車に搭載されるドラム回転装置によって駆動される。ドラム回転装置は、ミキサ車のエンジンによって駆動される油圧ポンプと、当該油圧ポンプから送られる圧油によって回転せしめられる油圧モータとを備え、油圧モータの出力軸を上記ドラムに連結している。
【0004】
そして、ドラム内にコンクリートを投入する場合には、ドラムを順回転させるようにしてブレードでコンクリートをドラムの奥へと送りこむようにし、反対に、ドラム内からコンクリートを排出する場合には、ドラムを逆回転させるようにしてブレードでコンクリートをドラム開口端へ押し戻して排出するようにする。また、コンクリート中のモルタルに砂利等の骨材を均一に分散させる等のためコンクリートを混練する場合には、ドラムを順回転させてドラム内のコンクリートをブレードで攪拌するようにする。
【0005】
これらの作業は、オペレータがミキサ車の運転室内で行うこともできるが、ドラムの回転状況を確認しつつ作業を行う必要があるため、ドラム回転装置は、ミキサ車の後方にドラムの回転速度(単位時間当たりの回転数)を調節する調節レバーを備えていて、オペレータがこの調節レバーを操作することでドラムの回転速度を調節することができるようになっている。
【0006】
調節レバーは、詳しくは、エンジンの回転速度を調節するガバナに連結されていて、調節レバーでエンジンの回転速度を調節すると、エンジンにPTO(Power Take Off)を介して接続された油圧ポンプの回転速度もエンジンの回転速度に比例して調節される。油圧ポンプの吐出流量は回転速度に比例し、油圧モータの回転速度は油圧ポンプの吐出流量に比例するので、上記調節レバーの操作で、エンジン回転速度を高めると油圧モータの回転速度もこれに比例して上昇し、反対に、エンジン回転速度を低下させると油圧モータの回転速度もこれに比例して低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平07−4158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、コンクリート粘度が比較的低い場合、ドラムを回転させるトルクは小さくて済むことから、油圧ポンプの吐出圧力も小さくて済むので、その分、油圧モータの容量を小さくすれば、ドラムを高速回転させるにあたって油圧ポンプを高速回転させるに及ばないのであるが、上述したように従来のドラム回転装置にあっては、ドラムの回転速度とエンジンの回転速度が一対一の関係にあって、ドラムを高速回転させたい場合には、エンジンの回転速度も高速とするほかない。
【0009】
そのため、従来のドラム回転装置にあっては、ドラムを高速回転させるに当たって、エンジンの回転速度を常に高速にしなければならないので、無駄にエネルギを消費するとともに、エンジン騒音が発生する。
【0010】
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、省エネルギで、且つ、エンジン騒音の発生を抑制することが可能なドラム回転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、ミキサ車に回転自在に搭載されてドラムを回転駆動する二段階に容量可変の油圧モータと、ミキサ車のエンジンによって駆動されて油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、油圧モータの傾転角を変更する変更機構と、エンジン回転速度を調節する調節レバーとを備えたドラム回転装置において、変更機構は、信号線を介して信号源からの信号が入力されると油圧モータの容量を小さくするように設定され、信号線の途中に第一スイッチと第二スイッチとを設け、第一スイッチは、調節レバーがエンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度からドラム回転速度上限に対応する上限回転速度より低い所定回転速度までに調節する範囲内にある場合に閉じるように設定され、第二スイッチは、油圧ポンプの吐出圧力が所定の閾値以下であると閉じるように設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート粘度が低い場合に油圧モータの容量を小さくして、エンジン回転速度を高速回転させずとも油圧モータを高速回転させることができ、エンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度から所定回転速度までの範囲に収めて高速回転させることなく、ドラムの回転速度を許容される上限回転速度とすることができるので、エネルギ消費を低減できるとともにエンジンの発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態におけるドラム回転装置のシステム図である。
【図2】一実施の形態のドラム回転装置の動作モードを説明する図である。
【図3】一実施の形態の一変形例におけるドラム回転装置のシステム図である。
【図4】一実施の形態の一変形例におけるドラム回転装置のソレノイドの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態におけるドラム回転装置1は、図1に示すように、基本的には、図外のミキサ車に回転自在に搭載されてドラムDを回転駆動する二段階に容量可変の油圧モータMと、ミキサ車のエンジンEによって駆動されて油圧モータMに圧油を供給する油圧ポンプPと、油圧モータMの斜板17の傾転角を変更する変更機構Tと、エンジン回転速度を調節する調節レバーLとを備えている。
【0015】
油圧ポンプPは、ミキサ車のエンジンEに、PTOを介して接続されており、該エンジンEのクランクシャフトの回転運動が伝達されて回転駆動される。油圧ポンプPは、エンジンEの回転速度に応じた回転速度で駆動し、ループ状の管路10を介して油圧モータMへ圧油を供給する。
【0016】
管路10の途中には、方向切換弁11が設けられており、この方向切換弁11は、油圧ポンプPの吐出した圧油を油圧ポンプPの吸入口へ戻すアンロードポジション11aと、油圧モータMを順方向へ回転させるように管路10へ圧油を供給する連通ポジション11bと、油圧モータMを逆方向へ回転させるように管路10へ圧油を供給する連通ポジション11cとを備えており、切換レバー11dの操作によって各ポジションへ切換え可能とされている。
【0017】
また、管路10の途中には、油圧モータMに並列される、リリーフ管路12が設けられており、このリリーフ管路12の途中には、管路10側の圧力がリリーフ圧となると開弁するリリーフ弁13,14が設けられており、リリーフ管路12の途中であってリリーフ弁13,14の間はタンク15に接続されている。つまり、管路10内の圧力がリリーフ圧以上となると、リリーフ弁13,14が開弁して圧力をタンク15へ逃がしてドラム回転装置1における油圧回路を保護するようになっている。
【0018】
なお、ドラム回転装置1における油圧回路では、油圧ポンプPのほかに、チャージポンプ16を備えており、このチャージポンプ16は、タンク15から作動油を吸い込んで管路10へ圧油を供給するようになっており、油圧ポンプPを補助して油圧ポンプPの回転速度が低くても吐出流量が不足しないように、管路10へ安定的に圧油を供給する。
【0019】
そして、油圧モータMは、斜板17の傾転角が二段階に切換可能とされた容量可変型の油圧モータとされており、斜板17が図示した状態では、容量が大きく、斜板17が図1中反時計回りに回転すると容量が小さくなるようになっている。すなわち、油圧モータMは、油圧ポンプPの吐出流量が変わらなければ、容量を小さくすると回転速度が高くなり、容量を大きくすれば回転速度が低くなるようになっている。
【0020】
油圧モータMの斜板17の傾転角を変更する変更機構Tは、斜板17にそれぞれ連結される一対のシリンダ18,19と、シリンダ18,19を圧縮方向へ附勢するばね20と、シリンダ18,19への圧油の供給とシリンダ18,19から作動油の排出を選択的に切換える切換弁21と、切換弁21を切換動作させる制御弁22とを備えて構成されている。
【0021】
シリンダ18,19は、符示はしないが、それぞれ、シリンダと、シリンダに挿入されるピストンと、ピストンと斜板17とを連結するロッドとを備えており、シリンダ18,19から作動油が排出される状態であると、ばね20の附勢力によって、シリンダ18,19が収縮状態となって斜板17が図1に示した位置に位置決められ、油圧モータMの容量は、大きくなる。反対に、シリンダ18,19内に圧油が供給されて伸長作動すると斜板17を図1中反時計回りに押圧して油圧モータMの傾転角が変更されて油圧モータMの容量が小さくなるようになっている。つまり、油圧モータMは、変更機構Tによって、二段階に容量が変化する容量可変油圧モータとされている。
【0022】
切換弁21は、管路10の途中であって油圧モータMの上流から圧油をシリンダ18,19のいずれか一方へ供給する供給ポジション21bと、シリンダ18,19内をタンク15へ連通する排出ポジション21cとを備えた弁体21aと、排出ポジション21cを採るように弁体21aを附勢するばね21dとを備え、制御弁22からの油圧によって切換動作するようになっている。すなわち、制御弁22からパイロット圧が供給されると弁体21aが押圧されてばね21dが縮むので、切換弁21は、供給ポジション21bを採って、シリンダ18,19のうちいずれか一方を伸長動作させて、油圧モータMの容量を小さくし、反対に、制御弁22からの油圧が途絶えるとばね21dによって弁体21aが附勢されるので、切換弁21は、排出ポジション21cを採り、シリンダ18,19をタンク15へ連通するのでばね20の附勢力で斜板17は、押圧されて油圧モータMの容量を大きくする傾転角を採ることになる。
【0023】
制御弁22は、この場合、チャージポンプ16から供給される油圧をパイロット圧としてパイロット通路23を介して切換弁21へ供給し、切換弁21を供給ポジション21bへ切換えるオンポジション22bと、切換弁21にパイロット圧を作用させないようにパイロット通路23をタンク15へ連通するオフポジション22cとを備えた弁体22aと、オフポジション22cを採るように弁体22aを附勢するばね22dと、通電時にばね22dに対向した附勢力を発揮して弁体22aをオンポジション22bへ切換える弁駆動用ソレノイド22eとから構成された電磁弁とされている。
【0024】
そして、上記した弁駆動用ソレノイド22eは、信号線30を介して電源Batに接続されており、信号線30から信号が入力される、つまりこの場合、通電されると、制御弁22がオンポジション22bへ切換って、切換弁21が供給ポジション21bに切換り、油圧モータMの斜板17の傾転角が変更されて容量を小さくする。他方、弁駆動用ソレノイド22eへ信号の入力がないと、つまりこの場合、通電されないと、制御弁22がオフポジション22cへ切換って、切換弁21が排出ポジション21cに切換り、油圧モータMの斜板17の傾転角が変更されて容量が大きくなる。
【0025】
上記したように、変更機構Tは、信号源としての電源Batからの信号が入力されると油圧モータMの容量を小さくし、電源Batからの信号の入力がないと油圧モータMの容量を大きくするようになっている。
【0026】
つづいて、エンジンEの回転速度は、ガバナGによって調節されるようになっており、このガバナGのガバナレバー3がリンク機構4を介してミキサ車に揺動自在に取り付けた調節レバーLに連結されている。この調節レバーLを操作することで、エンジンEの回転運動が伝達される油圧ポンプPの回転速度を調節することができる。
【0027】
調節レバーLは、途中に、当該調節レバーの回転方向に沿う円弧状の被検知板5を備えており、図1に示したところでは走行モードに位置しており、図示した位置から、左方向へ回転させると、順に、不感帯域a、アイドリング状態の回転速度から所定回転速度までの低中速度域b、所定回転速度域を超えドラム回転速度上限に対応する上限回転速度までの高速度域cへと、エンジン回転速度を調節することができるようになっている。油圧ポンプPは、上記したPTOを介してエンジンEの回転運動が伝達されるので、エンジン回転速度を速めれば、油圧ポンプPもこれに応じて回転速度も速くなって吐出流量が多くなり、油圧モータMの容量が変わらなければ油圧モータMの回転速度も速くなる。逆に、エンジン回転速度を遅くすれば、同様に、油圧ポンプPの吐出流量も減少し、油圧モータMの容量が変わらなければ油圧モータMの回転速度も遅くなる。
【0028】
なお、調節レバーLが走行モードにある場合には、ガバナGより上位の図示しない電子ガバナによってエンジン回転速度が制御されるようになっている。また、調節レバーLが低中速度域bの範囲内にある場合、調節レバーLの位置で、アイドリング状態における回転速度から所定回転速度、たとえば、1250rpm程度までの範囲でエンジン回転速度を調節可能とされており、また、調節レバーLが高速度域cの範囲内にある場合、調節レバーLの位置で、所定回転速度以上であってドラム回転速度上限に対応する上限回転速度、たとえば、1250rpm〜2500rpmまでの範囲でエンジン回転速度を調節することが可能とされている。なお、ドラム回転速度上限については、18rpm程度であり、油圧モータMの容量を大きくした状態で、ドラム回転速度18rpmを実現するエンジン回転速度に設定すればよいが、ミキサ車に一般的に多く使用されているディーゼルエンジンの場合、1500rpm〜2500rpmの回転速度域で比較的大きなトルクの発生が見込めてドラム回転速度を高速回転させるのに向くとともに、上限回転速度をあまり高く設定すると騒音が過大となることから、上記高速度域cの範囲を1250rpm〜2500rpmに設定しているが、上記に限定されるものではない。また、所定回転速度は、上記した上限回転速度より低い速度であって、上限回転速度との兼ね合いで任意に設定することができるが、エンジンEの騒音が問題とならない程度の回転速度に設定される。
【0029】
戻って、信号線30の途中には、第一スイッチとしての近接スイッチ31と、第二スイッチとしてのリレースイッチ32とが設けてある。なお、第一スイッチとしての近接スイッチ31と、第二スイッチとしてのリレースイッチ32とを信号線30に設置する順番は図と逆でもよい。近接スイッチ31は、調節レバーLが低中速度域bの範囲にある際に、被検知板5に対向して被検知板5の接近を検知するセンサ部31aと、センサ部31bによって被検知板5の接近が検知されるとオン状態となって閉じるスイッチ部31bとを備えている。つまり、調節レバーLがエンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度から所定回転速度までに調節する範囲にある際に、オン状態となる。なお、被検知板5が金属である場合、近接スイッチ31としては、誘導型、静電容量型、超音波型や光電型等の近接スイッチを用いればよく、被検知板5が非金属である場合には、静電容量型、超音波型や光電型等の近接スイッチを用いればよい。
【0030】
また、油圧ポンプPの吐出圧力を検知するために、管路10の途中であって油圧ポンプPと方向切換弁11との間には、圧力センサ33が設けられている。この圧力センサ33は、油圧ポンプPの吐出圧力に応じた電圧を出力する。さらに、この圧力センサ33の出力した圧力が所定の閾値以下となると上記リレースイッチ32へ通電するアンプ34を設けてある。リレースイッチ32は、アンプ34からの通電を受けてオン状態となって閉じ、通電がないとオフ状態となって開くようになっている。すなわち、第二スイッチとしてのリレースイッチ32は、油圧ポンプPの吐出圧力が所定の閾値以下であると閉じるようになっている。
【0031】
なお、油圧ポンプPの吐出圧力は、ドラムDを回転させる際のトルクに比例するが、ドラムD内のコンクリートの粘度が低いとドラムDを回転させるのに要するトルクが小さくなる。つまり、油圧ポンプPの吐出圧力の大きさによって、ドラムD内のコンクリートのおおよその粘度の見当がつき、粘度が低い場合には、ドラムDを回転させるのに要するトルクは小さくなるので、油圧ポンプPの吐出流量を大きくせずに油圧モータMの容量を小さくして油圧モータMの回転速度を高くすることができる。したがって、コンクリートの粘度が、油圧モータMの容量を小さくして油圧モータMを高速回転しても差し支えないような値である場合には、油圧モータMの容量を小さくしてもよいので、この発明では、これを判断するために油圧ポンプPの吐出圧力と所定の閾値とを比較するようにしている。したがって、所定の閾値は、油圧モータMの容量を小さくして油圧モータMを高速回転しても差し支えないようなコンクリート粘度である場合の油圧ポンプPの吐出圧力を基準として定めればよく、この実施の形態では、具体的には、9MPaとしている。
【0032】
つまり、この実施の形態のドラム回転装置1では、調節レバーLがエンジン回転速度をアイドリング状態における回転速度から所定回転速度の範囲内で調節する位置にあって近接スイッチ31がオン状態となり、圧力センサ33で検知した油圧ポンプPの吐出圧力が所定の閾値以下である場合にリレースイッチ32がオン状態となり、信号線30を介して制御弁22へ信号源である電源Batからの信号が入力されて、油圧モータMの斜板17の傾転角が油圧モータMの容量を小さくするように制御されることになる。
【0033】
したがって、この実施の形態のドラム回転装置1の動作モードは、図2に示したように、調節レバーLの位置が低中速度域bにあって、コンクリート粘度が低い場合には、油圧モータMの容量が小さくなり、エンジン回転速度を高速回転させずとも油圧モータMを高速回転させることができる。この動作モードでは、調節レバーLの位置を低中速度域bに保ったまま、つまり、エンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度から所定回転速度までの範囲に収めて高速回転させることなく、ドラムDの回転速度を許容される上限回転速度とすることができるので、エネルギ消費を低減できるとともにエンジンEの発生する騒音を抑制することができる。
【0034】
また、コンクリート粘度が高い場合には、油圧モータMの容量を小さくすると、油圧ポンプPの吐出圧力がリリーフ圧を超えるなどして、充分な圧力を油圧モータMへ送ることができなくなる等、ドラムDを回転駆動するにはトルク不足を招くので、この場合は、油圧モータMの容量を小さくせずに、充分なトルクを確保して、ドラムDの回転不良の発生を防止できる。
【0035】
なお、この実施の形態では、コンクリート粘度が低くとも、調節レバーLが所定回転速度を超えて高速度域cの範囲に位置せしめられる場合には、エンジン回転速度が高速となり、油圧モータMの容量を小さくしたままでは、ドラムDの回転速度が許容される上限速度を上まってしまい、適切にコンクリートの混練、排出、投入作業を行えなくなる場合があるので、油圧モータMの容量を大きくして、ドラムDの回転速度が過剰となることを防止することができる。
【0036】
また、上記したところでは、アンプ34は、圧力センサ33が所定の閾値以下の圧力を検知するとリレースイッチ32へ電力供給してリレースイッチ32をオンさせるようにしているが、リレースイッチ32が電力供給時にオフ動作する場合には、圧力センサ33が所定の閾値を超える圧力を検知するとリレースイッチ32へ電力供給するように設定されてもよい。また、使用環境が苛酷であるミキサ車で調節レバーLの位置によって第一スイッチが開閉するようにするため、近接スイッチ31を用いているが、調節レバーLの位置が低中速度域bに位置しているときにオン動作するスイッチを用いればよいので、第一スイッチは近接スイッチに限定されるものではなく、また、ガバナGのガバナレバー3やリンク機構4の位置によってオンオフ動作するように設定されてもよく、第二スイッチについてもリレースイッチに限定されるものではない。
【0037】
つぎに、一実施の形態の一変形例におけるドラム回転装置40について説明する。このドラム回転装置40は、コンクリート粘度が低い場合に、調節レバーLの操作を制限して、エンジン回転数が所定回転速度を超える高速となる範囲へ調節レバーLを操作できないようにした点で、上記した一実施の形態のドラム回転装置1と異なる。具体的には、図3に示すように、上記した一実施の形態のドラム回転装置1の構成に、伸縮可能な自己保持型のソレノイドSと、このソレノイドSによって駆動されるストッパ41と、信号線30から分岐する第一コイル励磁線42および第二コイル励磁線43と、第二コイル励磁線43の途中に設けた第三スイッチとしてのリレースイッチ44とを追加して設けている。
【0038】
ソレノイドSは、図4に示すように、ソレノイド本体50と、ストッパ41を保持してソレノイド本体50に軸方向移動可能に挿入されるプランジャ51と、ソレノイド本体50に取り付けられてプランジャ51の両端の外周側にそれぞれ設けた第一コイル52および第二コイル53とを備えており、第一コイル52を励磁するとプランジャ51が第一コイル52の電磁力によって吸引されて図4中破線で示すように、ソレノイド本体50からストッパ41が外方へ向けて突出して伸長し、第二コイル53を励磁するとプランジャ51が第二コイル53の電磁力によって吸引されてストッパ41が図4中実線で示すように、ソレノイド本体50内へ引き込まれて収縮するようになっている。また、第一コイル52および第二コイル53へ通電しない状態では、図示しない磁石によって、プランジャ51は、そのままの位置に保持されるようになっていて、ソレノイドSは、自己保持型ソレノイドとされている。
【0039】
そして、このソレノイドSは、図3および図4に示すように、調整レバーLの揺動範囲であって、ストッパ41がソレノイド本体50から突出する伸長した状態となると、調整レバーLがエンジン回転速度を所定回転速度とする位置にてストッパ41が調整レバーLの図3中左側面に当接する位置に設けられている。したがって、ソレノイドSが伸長した状態では、調節レバーLを低中速度域bから高速度域cの範囲へ図3中時計回りに操作しようとしても、調節レバーLにストッパ41が衝合して、調節レバーLを高速度域c側へ操作できないように移動を制限できるようになっている。これに対して、ソレノイドSが収縮状態であってストッパ41が図4中実線で示すように、ソレノイド本体50内へ引き込まれた状態となると、調節レバーLはストッパ41によって揺動を全く制限されない状態となるので、調節レバーLを揺動可能範囲内の全ての位置へ操作可能となる。
【0040】
また、第一コイル52の一端は接地されており、他端は、信号線30の途中であって、第一スイッチとしての近接スイッチ31と第二スイッチとしてのリレースイッチ32よりも下流となる制御弁22側から分岐される第一コイル励磁線42に接続されている。他方、第二コイル53も一端が設置されるとともに、他端は、信号線30の途中であって、第一スイッチとしての近接スイッチ31と第二スイッチとしてのリレースイッチ32よりも上流となる電源Bat側から分岐される第二コイル励磁線43に接続されている。
【0041】
さらに、第二コイル励磁線43の途中には、第三スイッチとしてのリレースイッチ44が設けられており、このリレースイッチ44は、圧力センサ33の出力した圧力が所定の閾値以下となる際に電力供給するアンプ34に接続されており、アンプ34からの通電があるとオフ状態となって開き、通電がないとオン状態となって閉じるようになっている。つまり、動作としては、第二スイッチとしてのリレースイッチ32と逆の動作をするようになっている。なお、上記したように圧力センサ33が検知した圧力が所定の閾値を超える場合に、アンプ34がリレースイッチ32へ通電するように設定されていて、リレースイッチ32が電力供給時にオフ動作する場合には、リレースイッチ44は通電時にオン動作するように設定されてもよい。
【0042】
よって、調節レバーLを走行モードから不感帯域aを超えてアイドリング状態の回転速度から所定回転速度までの低中速度域bへ操作していくと、圧力センサ33で検知した圧力が所定の閾値以下である場合には、第三スイッチであるリレースイッチ44がオフされて第二コイル53が励磁されず、第二スイッチであるリレースイッチ32がオンされるとともに近接スイッチ31がオンされるのでとなって第一コイル52が励磁される。すると、ソレノイドSは、伸長してストッパ41は調節レバーLの高速度域cへの操作が制限されるので、エンジン回転速度は、この場合、所定回転速度以下に制限される。また、この場合、リレースイッチ32と近接スイッチ31とがともにオンされるので、一実施の形態のドラム回転装置1と同様に制御弁22へ通電が行われて油圧モータMの容量は小さくされる。一実施の形態のドラム回転装置1と同様に油圧モータMの容量は大きくされる。つまり、この場合には、圧力センサ33で検知した圧力が所定の閾値以下であってコンクリート粘度が低い状態であり、一実施の形態のドラム回転装置1と同様に、調節レバーLの位置を低中速度域bに保ったまま、つまり、エンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度から所定回転速度までの範囲に収めて高速回転させることなく、ドラムDの回転速度を許容される上限回転速度とすることができ、エネルギ消費を低減できるとともにエンジンEの発生する騒音を抑制することができる。
【0043】
そして、さらに、この実施の形態では、コンクリート粘度が低い場合には、ストッパ41が調節レバーLの揺動を制限して、エンジン回転速度を所定回転速度を超える回転速度とする範囲へ調節レバーLが位置することを阻止するので、オペレータが調節レバーLに対して誤ってエンジン回転速度を高速とする操作を行ってもストッパ41によってこれを阻止でき、エネルギ消費の低減とエンジンEの騒音の抑制を確実なものとすることができる。
【0044】
他方、圧力センサ33で検知した圧力が所定の閾値を超えている場合には、第三スイッチであるリレースイッチ44がオンされて第二コイル53が励磁され、第二スイッチであるリレースイッチ32がオフとなって第一コイル52は励磁されないので、ソレノイドSは、収縮してストッパ41は調節レバーLの揺動を妨げない。この場合は、リレースイッチ32がオフ状態とされるので、制御弁22への通電も行われないため、一実施の形態のドラム回転装置1と同様に油圧モータMの容量は大きくされる。つまり、この場合には、圧力センサ33で検知した圧力が所定の閾値を超えていてコンクリート粘度が高い状態であるから、調節レバーLの揺動操作を制限せず、油圧モータMの容量を大きくすることで、充分なトルクを確保して、ドラムDの回転不良の発生を防止する。
【0045】
なお、一実施の形態と同様に、第一スイッチには近接スイッチ31以外のスイッチを利用することも可能であり、第二スイッチおよび第三スイッチについてもリレースイッチ以外のスイッチを用いることも可能である。
【0046】
また、上記した各実施の形態における変更機構Tは、上記した構成に限定されるものでははく、信号の入力時に油圧モータMの容量を小さくするように斜板17の傾転角を変更できるものであればよいので、たとえば、電動アクチュエータを用いてもよい。
【0047】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のミキサ車のドラムを回転駆動するドラム回転装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,40 ドラム回転装置
3 ガバナレバー
4 リンク機構
5 被検知板
10 管路
11 方向切換弁
11a 方向切換弁におけるアンロードポジション
11b,11c 方向切換弁における連通ポジション
11d 方向切換弁における切換レバー
12 リリーフ管路
13,14 リリーフ弁
15 タンク
16 チャージポンプ
17 斜板
18,19 シリンダ
20 ばね
21 切換弁
21a 切換弁における弁体
21b 切換弁における供給ポジション
21c 切換弁における排出ポジション
21d 切換弁におけるばね
22 制御弁
22a 制御弁における弁体
22b 制御弁におけるオンポジション
22c 制御弁におけるオフポジション
22d 制御弁におけるばね
22e 制御弁における弁駆動用ソレノイド
23 パイロット通路
30 信号線
31 第一スイッチとしての近接スイッチ
31a センサ部
31b スイッチ部
32 第二スイッチとしてのリレースイッチ
33 圧力センサ
34 アンプ
41 ストッパ
42 第一コイル励磁線
43 第二コイル励磁線
44 第三スイッチとしてリレースイッチ
50 ソレノイドにおけるソレノイド本体
51 ソレノイドにおけるプランジャ
52 ソレノイドにおける第一コイル
53 ソレノイドにおける第二コイル
Bat 信号源としての電源
D ドラム
E エンジン
G ガバナ
L 調節レバー
M 油圧モータ
P 油圧ポンプ
S ソレノイド
T 変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車に回転自在に搭載されてドラムを回転駆動する二段階に容量可変の油圧モータと、ミキサ車のエンジンによって駆動されて油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、油圧モータの傾転角を変更する変更機構と、エンジン回転速度を調節する調節レバーとを備えたドラム回転装置において、変更機構は、信号線を介して信号源からの信号が入力されると油圧モータの容量を小さくするように設定され、信号線の途中に第一スイッチと第二スイッチとを設け、第一スイッチは、調節レバーがエンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度からドラム回転速度上限に対応する上限回転速度より低い所定回転速度までに調節する範囲内にある場合に閉じるように設定され、第二スイッチは、油圧ポンプの吐出圧力が所定の閾値以下であると閉じるように設定されることを特徴とするドラム回転装置。
【請求項2】
第一コイルへの通電によって伸長し第二コイルへの通電によって収縮する自己保持型のソレノイドと、ソレノイドによって駆動されるストッパとを備え、ソレノイドが伸長した状態で調節レバーの側面がストッパに衝合すると、エンジン回転速度を所定回転速度以上とする範囲への調節レバーの回転操作を妨げるストッパ機構を設け、第一コイルは、油圧ポンプの吐出圧力が上記所定の閾値以下となると通電され、第二コイルは、第一スイッチおよび第二スイッチが閉じていると通電されることを特徴とする請求項1に記載のドラム回転装置。
【請求項3】
調節レバーは、ミキサ車に揺動自在に取り付けられ、当該調節レバーに円弧状の被検知板を設け、第二スイッチは、調節レバーがエンジン回転速度をアイドリング状態の回転速度から上記所定回転速度までに調節する範囲内にある場合に被検知板に対向して被検知体の接近によりスイッチ動作する近接スイッチであることを特徴とする請求項1または2に記載のドラム回転装置。
【請求項4】
信号線は、変更機構を下流として、その途中で上流側から、第二コイルへ接続される第二コイル励磁線と、第一コイルへ接続される第一コイル励磁線とに分岐され、信号線の途中であって第二コイル励磁線と第一コイル励磁線との間に第一スイッチと第二スイッチを設け、第二コイル励磁線の途中に油圧ポンプの吐出圧力が上記所定の閾値以下となると閉じる第三スイッチを設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のドラム回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91729(P2012−91729A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242176(P2010−242176)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】