説明

ドラム式洗濯機

【課題】振動や騒音の発生を未然に抑制できるドラム式洗濯機を提供する。
【解決手段】本実施形態のドラム式洗濯機は、減衰装置と制御手段を具備し、減衰装置は、作動流体を封入したシリンダを用いて、水槽の振動を減衰させるものである。前記作動流体は機能性流体であって、制御手段は、その機能性流体の粘性を制御する。この制御手段は、洗濯機の脱水行程において、ドラムの回転に応じて機能性流体の粘性を変化させることにより、減衰装置の減衰力を可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗濯機においては、外箱内に配設された水槽を、当該外箱と水槽との間で支持し、回転槽(内槽)の振動ひいては水槽の振動を吸収するダンパを備えたものが供されている。この種のダンパには、作動流体として、磁場の強度により粘度が変化する磁気粘性流体(MR流体)を使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このダンパは、例えば、筒部材(シリンダ)内に磁気粘性流体が充填されると共に、シリンダの周りに電磁石が配置されており、電磁石の電流をコントローラで制御することにより磁気粘性流体の粘度特性を変更する。そして、水槽には、振動検出手段としてセンサ部が設けられており、このセンサ部で検出された検出信号に基づいて、ダンパの電磁石の電流を制御して、減衰力を変更するようになっている。
【0004】
しかしながら、上記の洗濯機では、センサ部によって振動が大きくなったことが検出されないと、ダンパの制御が行われない。即ち、ダンパに対する制御は、センサ部での振動の検出を前提とする事後的なものであるため、振動や騒音の抑制効果は充分ではなく、殊に脱水時にあっては、大きな振動を生じる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−170390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、振動や騒音の発生を未然に抑制できるドラム式洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のドラム式洗濯機は、減衰装置と制御手段を具備し、減衰装置は、作動流体を封入したシリンダを用いて、水槽の振動を減衰させるものである。前記作動流体は機能性流体であって、制御手段は、その機能性流体の粘性を制御する。この制御手段は、洗濯機の脱水行程において、ドラムの回転に応じて機能性流体の粘性を変化させることにより、減衰装置の減衰力を可変させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態を示すもので、ドラムの回転と減衰装置の減衰力との関係を説明するための図
【図2】ドラム式洗濯機全体の縦断側面図
【図3】減衰装置の断面図
【図4】制御系の構成を示すブロック図
【図5】コイルへの通電量と減衰力との関係を説明するための図
【図6】脱水行程における制御内容を示すフローチャート
【図7】(a)及び(b)は、低温用制御態様及び高温用制御態様を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
図2に示すドラム式洗濯機(以下、単に洗濯機と称する)において、外殻をなす外箱11は、その前面部(図2で右側)の略中央部に洗濯物出入口12が形成されると共に、当該出入口12を開閉する扉13を備える。外箱11の前面部の上部には、操作パネル14が設けられており、その裏側(外箱11内)に運転制御用の制御装置15が設けられている。また、外箱11の底板11aには、外箱11内部の温度を検出する温度検出手段(後述する温度検出部67、図4参照)が設けられている。
【0010】
外箱11の内部には、横軸円筒状をなす水槽16が配設されている。水槽16は、その中心軸線が前後(図2で右左)方向を指向し、且つ外箱11の底板11a上にて左右一対(一方のみ図示)のサスペンション17によって前上がりの傾斜状となるように弾性支持されている。尚、本実施形態のサスペンション17の具体的構成については、後述する。
【0011】
水槽16の背部には、例えば直流のブラシレスモータからなるモータ18が取付けられている。モータ18のロータ18aは、その中心部に取付けられた図示しない回転軸を備え、当該回転軸が、軸受ブラケット19を介して水槽16の内部に挿通させてある。
【0012】
水槽16の内部には、横軸円筒状をなすドラム20が配設されている。このドラム20は、その後部の中心部にて前記モータ18の回転軸の先端部に取付け固定されることで、水槽16と同軸の傾斜状に支持されている。これにより、ドラム20は、回転槽として、モータ18により回転されるようになっており、モータ18はドラム20を回転させるドラム駆動装置として機能する。ドラム20の周側部たる胴部には、多数の小孔21が全域にわたって形成されている。ドラム20及び水槽16は何れも前面部に開口部22,23を有しており、水槽16の開口部23は、環状のベローズ24を介して前記洗濯物出入口12に連ねられている。この結果、洗濯物出入口12は、ベローズ24、水槽16の開口部23、及びドラム20の開口部22を介して、ドラム20の内部に連なる。
【0013】
水槽16の底部の後部には、排水弁25を介して、排水管26が接続されている。水槽16の背部から上方そして前方には、乾燥装置27が配設されている。この乾燥装置27は、除湿器28と、送風機29、及び加熱器30を備え、水槽16内の空気を除湿し、次いで加熱して、水槽16内に戻す循環を行わしめることで、洗濯物を乾燥させる。
【0014】
続いて、サスペンション17の詳細構造について図3も参照しながら説明する。サスペンション17は、前記水槽16の振動を減衰させる減衰装置として、ダンパ31を有する構成とされている。
【0015】
即ち、ダンパ31は、図3に示すように、主部材としてシリンダ32及びシャフト33を備えている。このうち、シリンダ32は、上端部に連結部材34を有し、この連結部材34を、前記水槽16が有する取付板35(図2参照)に下方から上方へ通して弾性座板36等を介してナット37で締結することにより、水槽16に取付けられている。これに対して、シャフト33は下端部に連結部33aを有し、この連結部33aを、前記外箱11の底板11aが有する取付板38(図2参照)に上方から下方へ通して弾性座板39等を介してナット40で締結することにより、外箱11の底板11aに取付けられている。
【0016】
図3に示すように、シリンダ32の内部の中間部には、環状の突部41が外方からの押込みにより形成されており、その直下位置にはヨーク42が圧入されている。ヨーク42は磁性材からなり、内周部の上側にスペース43を有する短円筒状に形成されている。ヨーク42のスペース43には、ヨーク42より短小な短円筒状で例えば焼結含油メタルからなる軸受44が収納されている。
【0017】
シリンダ32の内部には、上記ヨーク42の直ぐ下側に位置させて、コイル45を巻装したボビン46が圧入されている。ボビン46は、円筒状をなす主体部46aの上下軸方向の両端につば部46b,46cを有し、主体部46aにコイル45が巻装されている。ボビン46の主体部46aには、上側のつば部46bの直ぐ下側に位置させて、別ピースの端子台47が取付けられている(当該端子台は主体部46aに一体成形してもよい)。図示は省略するが、端子台47は内部に接続端子を有しており、その接続端子にコイル45の巻き始めと巻き終わりの両巻線端部が接続されている。シリンダ32の中間部には、この端子台47に対応させて接続口48が形成されており、この接続口48からリード線49の先端部を端子台47に挿入して上記接続端子に接続している。
【0018】
シリンダ32の内部には、前記ボビン46の直ぐ下側に位置させて、保持部材50が圧入されている。この保持部材50は、上部を径大部50a、下部を径小部50bとした段付き短円筒状をなし、その径大部50aから径小部50bの上側にかけて径大スペース51を有し、径小部50bの下側には径小スペース52を有している。そのうち、径小スペース52には、例えば焼結含油メタルからなる軸受53が圧入され、径大スペース51には、シール部材54とヨーク55とが圧入されている。これら軸受53、シール部材54及びヨーク55を収容保持した保持部材50は、前記シリンダ32内部における上記ボビン46直下に配置されている。
【0019】
尚、シール部材54はリップ状のもので、ヨーク55は磁性材から構成されている。また、保持部材50の圧入後、シリンダ32は、保持部材50(径大部50a)周囲の部位をかしめ部56で示すようにかしめて、当該シリンダ32に対して保持部材50を結合固定している。これにより、保持部材50は前記ヨーク42(軸受44)及びコイル45(ボビン46)をも抜け落ちないように保持する。
【0020】
シャフト33は、前記連結部材34の装着前のシリンダ32に対して上方より挿入されて、前記軸受44、ヨーク42、ボビン46(コイル45)、ヨーク55、シール部材54、及び軸受53を順に貫通し、保持部材50の開口部50cから保持部材50の下方に突出している。その突出状態において、シャフト33は、軸受44,53に支持されつつ、それら軸受44、ヨーク42、ボビン46(コイル45)、ヨーク55、シール部材54、及び軸受53に対する軸方向の相対的な往復動が可能とされている。また、シャフト33の上端部には、抜け止め用の止め環57が取着されており、その上方は、シリンダ32上部において空洞58となっている。
【0021】
そして、シャフト33とボビン46(コイル45)との間、並びにその近傍であるシャフト33とヨーク42との間、及びシャフト33とヨーク55との間には、磁気粘性流体59を注入して充填している。この機能性流体たる磁気粘性流体59は、ヨーク55とシール部材54との間の溜まり部60にも満たされており、その流体59をシール部材54で封止して、磁気粘性流体59の漏れが阻止されている。尚、上記したサスペンション17における磁気粘性流体59が充填された部分を、充填部Zと総称する。
【0022】
ここで、機能性流体とは、外部から加える物理量を制御することで粘性等のレオロジー的性質が機能的に変化する流体であって、電気的エネルギーの印加により粘性が変化する流体としての磁気粘性流体59等を包含する。本実施形態では、磁界(磁場)の強度に応じて粘性特性が変化する磁気粘性流体(MR流体)59を用いるが、他の機能性流体を用いてもよい。磁気粘性流体は、例えば、オイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたものであり、磁界が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで見かけ上の粘度が上昇する。
【0023】
保持部材50の外部下方に位置するシャフト33の下部には、外周部にばね座61aを有するばね受け部材61が取着されている。このばね受け部材61のばね座61aと、上記保持部材50における径小部50bと径大部50aとの間の段部50dとの間には、シャフト33を囲繞するコイル状のスプリング62が配設されている。ここで、保持部材50の段部50dは、スプリング62の一端部(上端部)をばね座として受ける保持部として機能し、ばね受け部材61のばね座61aがスプリング62の他端部(下端部)をばね座として受ける保持部として機能する。以って、サスペンション17は、前記水槽16と前記外箱11の底板11aとの間に組込みまれ、外箱11の底板11a上で水槽16を防振支持するようになっている。尚、上記構成のサスペンション17にあっては、ヨーク55、シール部材54及び軸受53は保持部材50に収容保持されることによりユニット化した状態で組立てることができる。
【0024】
図4は、上記洗濯機の制御系の構成を示すブロック図で、特にサスペンション17の制御に係る部分を示している。制御装置15は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、ドラム20内の洗濯物の洗濯、脱水、乾燥を行う洗濯行程〜乾燥行程を含む洗濯機の動作全般を制御する。制御装置15には、操作パネル14のキースイッチ(何れも図示せず)からの各種操作信号を入力するための操作入力部65、モータ18の回転速度を検出するための回転速度検出部(回転センサ)66、及び温度検出部67が接続されている。
【0025】
温度検出部67は例えばサーミスタからなり、外箱11の底板11aにて外箱11内部の温度を検出する。この温度検出部67は、洗濯機における当該底板11a以外の部位に設けるようにしてもよく、外部(機外)の温度を検出するように配置してもよい。また、制御装置15は、入力された各種の信号や予め記憶した制御プログラム(後述する脱水行程における制御のプログラム等)に基づいて、モータ18及びコイル45を、駆動回路68及び駆動回路69を介して制御する。この場合、モータ18は、インバータによるパルス幅変調(PWM)方式によって回転速度の制御がなされる。
【0026】
次に、上記構成の作用について説明する。
前記操作入力部65からの入力信号に基づき、洗いや脱水等の運転を開始させると、洗濯物を収容したドラム20の回転駆動に伴い、水槽16が上下方向を主体に振動する。この水槽16の上下振動に応動して、サスペンション17では、水槽16に取付けたシリンダ32が、スプリング62を伸縮させながらシャフト33の周囲を上下方向に振動する。この場合、シリンダ32は、これに配設された各部品(ヨーク42、軸受44、ボビン46、コイル45、保持部材50、ヨーク55、シール部材54、軸受53)を伴って上下方向に振動し、前記充填部Zに充填された磁気粘性流体59は、その粘性による摩擦抵抗でダンパ31に減衰力を与え、水槽16の振幅を減衰させる。
【0027】
このとき、コイル45への通電により磁場を発生させると、磁気粘性流体59に磁界が与えられ、磁気粘性流体59の粘度が高まる。即ち、コイル45に通電することで、シャフト33−磁気粘性流体59−ヨーク42−シリンダ32−ヨーク55−磁気粘性流体59−シャフト33を通じて磁気回路が形成され、磁束が通過する部分の磁気粘性流体59の粘度が高まる。殊に磁束密度の高いシャフト33とヨーク42との間、並びにヨーク55とシャフト33との間にて各磁気粘性流体59の粘度が大幅に高まることから、シリンダ32が前記各部品を伴って上下方向に振動するときの、摩擦抵抗が大きく増加し、減衰力がより高められることとなる。
【0028】
ここで、図5は、コイル45への通電量(電流値)とサスペンション17における減衰力との関係を示している。同図に示すように、コイル45に流す電流Iを非通電状態(符号I0で示す)からI5(大電流とする)まで順次上昇させた場合、当該電流I0〜I5は「I0<I1<I2<I3<I4<I5」の関係にある。そして、サスペンション17の減衰力Fは、電流I0〜I5の大きさに応じてF0〜F5の順に高くなる「F0<F1<F2<F3<F4<F5」の関係にある。
【0029】
そして、本実施形態のサスペンション17は、脱水行程において、回転速度検出部66で検出されたモータ18の回転速度(ドラム20の回転速度)と、温度検出部67により検出された検出温度とに基づき、その減衰力Fを可変させ、振動や騒音を極力抑制するようになっている。このサスペンション17に係る制御につき、図1、図6及び図7も参照しながら説明する。尚、図6は、前記制御プログラムに基づき、制御装置15が脱水行程時に実行する制御内容を示しており、同図中、S1〜S8は各ステップを示す。
【0030】
図6に示すように、脱水行程になると制御装置15は、先ず温度検出部67により外箱11内の温度を検出する(ステップS1)。次いで制御装置15は、モータ18を起動させて、ドラム20の回転を開始させ(ステップS2)、モータ18の回転速度(ドラム20の回転速度)を定常回転速度まで上昇させる。このモータ18の回転速度上昇工程において、制御装置15は、前記の温度検出部67による検出温度が、所定の温度(例えば10度)より低い場合には(ステップS3にてYes)サスペンション17の低温用制御を行い、例えば10度よりも高い場合には(ステップS3にてNo)高温用制御を行う。
【0031】
具体的には、モータ18の回転速度上昇工程において共振時、特には一次共振が発生する低速度領域(図1中、A1で示す)では、水槽16の振動が大きくなる。また、洗濯機は、当該洗濯機を構成する部材(ゴム等を含む種々の材料)の温度依存性により、その振動特性が変化することから、温度が低い場合に自身(当該洗濯機全体)の制振作用の低下を招く。そこで、ステップS4における低温用制御では、制御装置15は、モータ18の回転速度上昇に伴い前記電流IをI0、I5、I0、I3、I1の順に共振領域A1、A2(図1、図7(a)参照)に対応するように変化させて、減衰力FをF0、F5、F0、F3、F1に設定する。換言すれば、制御装置15は、低温用制御において、電流Iを比較的高めに設定してサスペンション17の減衰力Fを相対的に高くすると共に、特に一次共振領域A1(低速度領域)では、コイル45に大電流I5を流すことで、その減衰力Fを、当該速度領域A1よりも高い高速度領域A3での減衰力(F0〜F3)よりも高いF5に設定する制御を行う。
【0032】
また、低温用制御では、制御装置15は、図1に示すように前記定常回転速度において小電流I1を維持した後、その回転速度を低下させてドラム20が停止するまでの回転速度下降工程において、電流Iを、小電流I1からI2、中電流I4の順に共振領域A2、A1に対応するように変化させる。これにより、回転速度下降工程における減衰力Fは、その回転速度の下降に伴い二次共振領域A2で減衰力がF2に設定された後、一次共振領域A1で減衰力がF4に設定されることで、段階的に可変する。また、このような減衰力Fの段階的な制御を行うことで、脱水行程におけるコイル45への通断電(オンオフ)の回数が少なくなり、磁気粘性流体59の寿命を延ばすことができる。つまり、磁気粘性流体59は、磁界が繰り返し与えられる頻度が多いほど当該流体59の機能の低下が早まる傾向があることから、上記の制御を行うことで通断電の頻度を減らして、サスペンション17の機能を良好に維持できるのである。尚、本実施形態では、減衰力Fを、各共振領域に対応して二段階に可変したが多段階(三段階以上)に設定してもよい。
【0033】
上記のように、サスペンション17に係る制御は、脱水行程の開始から終了までの間に、ドラム20の回転に応じて行われることとなる(図6のステップS4〜S6参照)。一方、ステップS7における前記高温用制御にあっては、制御装置15は、サスペンション17の減衰力Fを前記低温用制御の場合よりも低く設定する。
【0034】
具体的には、図7(b)に、この高温用制御で行われる回転速度上昇工程における減衰力Fの可変例を示しており、サスペンション17の電流Iは、回転速度上昇工程では一次共振領域A1にてI3(中電流)に設定された後、前記高速度領域A3ではI0(非通電状態)に設定される。このため、図7(a)の低温用制御との対比から明らかなように、高温用制御では、サスペンション17の減衰力Fを相対的に低くする制御が行われる。従ってまた、図示は省略するが、制御装置15は、例えば、定常回転速度において非通電状態を維持した後、回転速度下降工程において、電流Iを非通電状態から共振領域A2、A1に対応するように段階的に上昇させるが、このときの減衰力Fも、低温用制御における減衰力Fよりも低く設定される。こうして、サスペンション17について検出温度に応じた高温用制御あるいは低温用制御が行われることで、洗濯機の環境温度に係わりなく安定した制振効果が得られる。また、脱水行程におけるドラム20の回転、特には共振領域A1に対応して、サスペンション17の減衰力を可変させることで、総じて共振時の振動や騒音を極力抑制される。
【0035】
尚、本実施形態の共振領域とは、共振点(共振周波数)を含む共振点近傍の領域であって、一次共振領域A1は、前記洗濯機に存する複数の共振点のうち比較的低い周波数領域に属する共振領域である。
【0036】
以上説明した本実施形態において、制御装置15、コイル45及び駆動回路69は、制御手段に相当する。この制御手段は、洗濯機の脱水行程において、ドラム20の回転に応じて機能性流体の粘性を変化させることにより、サスペンション17の減衰力Fを可変させる。従って、センサ部での振動の検出に基づきダンパを制御する従来構成と異なり、本実施形態のサスペンション17は、例えば共振により振動が大きくなる前の共振点近傍の領域において減衰力Fを高くすることで、振動の発生を未然に抑制することができ、振動や騒音の抑制効果を高めることができる。
【0037】
前記機能性流体は、電気的エネルギーの印加により粘性が変化する磁気粘性流体59からなる。磁気粘性流体59にあっては、その粘性を比較的簡単な構成で容易に変化させることができ、サスペンション17の構成の簡素化や応答性の向上を図ることができる。本実施形態では、その制御手段としてコイル45を用いることができ、減衰力の制御を容易に行うことができる。
【0038】
前記制御手段は、脱水行程において水槽16に一次共振が発生する低速度領域A1ではサスペンション17の減衰力Fを相対的に高くし、その速度領域A1よりも高い高速度領域A3ではサスペンション17の減衰力Fを相対的に低くする制御を行う。従って、上記のように共振点近傍の領域において、洗濯機の振動が大きくなる前にサスペンション17にて充分な減衰作用を発生することができると共に、高速度領域A3においても適切な減衰力Fを得て、振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0039】
前記制御手段は、ドラム20が定常回転速度から停止するまでの間に、サスペンション17の減衰力Fを段階的に可変させるように制御する。これによれば、脱水行程において、ドラム20が減速する場合でも前記共振領域における振動や騒音の発生を抑制することができると共に、機能性流体に対して外部から加える物理量の変化を小さくする(本実施形態ではコイル45への通断電の回数を減少させる)ことができ、機能性流体ひいてはサスペンション17の寿命を延して、その機能を良好に維持することができる。
【0040】
前記外箱11の内部あるいは外部の温度を検出する温度検出部67を備え、前記制御手段は、温度検出部67による検出温度が所定の温度よりも低い場合に、サスペンション17の減衰力Fを相対的に高くし、前記検出温度が所定の温度よりも高い場合に、サスペンション17の減衰力Fを相対的に低くする制御を行う。これによれば、洗濯機を構成する部材の温度依存性による振動特性の変化に対応した制御を行うことができる。従って、外箱11の内部あるいは外部の温度変化に係わりなくサスペンション17において良好な制振作用を発揮することができ、振動や騒音の抑制効果をより高めることができる。
【0041】
以上のような本実施形態のドラム式洗濯機によれば、制御手段は、洗濯機の脱水行程において、ドラムの回転に応じて機能性流体の粘性を変化させることにより、減衰装置の減衰力を可変させる。従って、センサ部での振動の検出に基づきダンパを制御する従来構成と異なり、前記減衰装置によって、例えば共振により振動が大きくなる前の共振点近傍の領域において減衰力Fを高めることで、振動の発生を未然に抑制することができ、振動や騒音の抑制効果を高めることができる。
【0042】
以上説明したドラム式洗濯機は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば低温用制御と高温用制御とに切換える温度を、材料の温度依存性(洗濯機の振動特性)に応じて前記10度以外の所定の温度に設定する等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0043】
図面中、16は水槽、15は制御装置(制御手段)、17はサスペンション、20はドラム、32はシリンダ、45はコイル(制御手段)、59は磁気粘性流体(機能性流体)、69は駆動回路(制御手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱内に配置され、ドラムが収容された水槽の振動を、作動流体を封入したシリンダを用いて減衰させる減衰装置を備えたドラム洗濯機において、
前記作動流体は機能性流体であって、前記機能性流体の粘性を制御する制御手段を具備し、
前記制御手段は、前記洗濯機の脱水行程において、前記ドラムの回転に応じて前記機能性流体の粘性を変化させることにより、前記減衰装置の減衰力を可変させることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記機能性流体は、電気的エネルギーの印加により粘性が変化する磁気粘性流体からなることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記脱水行程において前記水槽に一次共振が発生する低速度領域では前記減衰装置の減衰力を相対的に高くし、前記低速度領域よりも高い高速度領域では前記減衰装置の減衰力を相対的に低くする制御を行うことを特徴とする請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ドラムが定常回転速度から停止するまでの間に、前記減衰装置の減衰力を段階的に可変させるように制御することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記外箱の内部あるいは外部の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段による検出温度が所定の温度よりも低い場合には、前記減衰装置の減衰力を相対的に高くし、前記検出温度が所定の温度よりも高い場合には、前記減衰装置の減衰力を相対的に低くする制御を行うことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−229602(P2011−229602A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100837(P2010−100837)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】