説明

ドラム式洗濯機

【課題】気温に応じたダンパ減衰力の制御ができて、ダンパに適正な減衰力を発揮させ、消費電力の節減を図り得るようにする。
【解決手段】水槽の振動を減衰するダンパが通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、外箱外の気温、又は外箱内の気温、もしくはドラム内の気温を検知する温度検知手段の検知結果に応じ、検知気温が低いほどダンパの通電量を少なくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラム式洗濯機においては、外箱の内部に水槽が位置し、この水槽の内部にドラムが位置していて、このドラムが水槽外のモータにより回転駆動されるようになっている。又、水槽は、外箱の底板上にサスペンションにより弾性支持して設けられており、そのサスペンションに、ドラムの振動に伴う水槽の振動を減衰するダンパが具えられている。この種のダンパには、通常、減衰力が不変のものが用いられているが、近年、減衰力が可変のものを用いる考えがあり、それには作動流体に機能性流体を使用することが考えられている。
【0003】
機能性流体とは、外部から加える物理量を制御することで粘性等のレオロジー的性質が機能的に変化する流体であって、電気的エネルギーの印加により粘度が変化する流体としての磁気粘性流体及び電気粘性流体を包含する。このうち、磁気粘性流体は、例えば、オイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたものであって、磁界が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで粘度が上昇するものであり、電気粘性流体は電界が印加されると粘度が上昇するものである(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−183297号公報
【特許文献2】特開2008−295906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の機能性流体を使用したダンパは、機能性流体の粘度の変化で減衰力を変化させ得るものであり、それによって、ドラム式洗濯機では、脱水行程起動時の水槽の共振が現れる回転速度までは、減衰力を大きくして、水槽の共振の発生を回避することにより脱水回転の立ち上がり性能を良くし、それ以後の脱水行程定常(高速回転)時には、減衰力を小さくして、水槽の振動が外箱に伝わるのを避け、更にその振動が洗濯機を設置した家屋の床面に伝わるのを避けるようにすることを可能としている。
【0006】
加えて、ドラム式洗濯機では、ドラム回転時の洗濯物の片寄りによるアンバランスを検知して、そのアンバランスの大きさがそれぞれ所定の大きさ以下であることを条件としてドラムの回転速度を段階的に上昇させるようにしており、これによっても脱水運転を振動の発生少なく進行できるようにしている。
しかしながら、上述の機能性流体を使用したダンパにおいて、減衰力を大きくするにはダンパの通電量を多くする必要があり、それに伴って消費電力量が増加するため、それを抑えるのにダンパには適正な減衰力を発揮させるようにすることが重要な課題となっていた。
【0007】
そこで、気温に応じたダンパ減衰力の制御ができて、ダンパに適正な減衰力を発揮させ、消費電力の節減を図ることのできるドラム式洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のドラム式洗濯機においては、第1に、外箱と、この外箱の内部に位置する水槽と、この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、前記外箱外の気温を検知する温度検知手段と、前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知気温が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
本実施形態のドラム式洗濯機においては、第2に、外箱と、この外箱の内部に位置する水槽と、この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、前記外箱内の気温を検知する温度検知手段と、前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知気温が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とする。
【0010】
本実施形態のドラム式洗濯機においては、第3に、外箱と、この外箱の内部に位置する水槽と、この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、このドラム内の気温を検知する温度検知手段と、前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知温度が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における検知温度とダンパ通電量との関係を、検知時別に(a)〜(d)で示す図
【図2】ドラム式洗濯機全体の、一部を破断した縦断側面図
【図3】サスペンション単体の縦断面図
【図4】ドラム式洗濯機全体の電気的構成のブロック図
【図5】全行程の制御内容を示すタイムチャート
【図6】脱水行程の制御内容を示すタイムチャート
【図7】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図8】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図9】図1相当図
【図10】図1部分相当図
【図11】本発明の第4の実施形態を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、第1の実施形態につき、図1ないし図6を参照して説明する。
まず、図2には、ドラム式洗濯機の全体構造を示しており、外箱1を外殻としている。この外箱1は、直方体状を成しており、そのうちの前面部(図2で右側)のほゞ中央部に洗濯物出入口2を形成し、この洗濯物出入口2を開閉する扉3を外箱1に枢支して設けている。又、外箱1の前面部の上部には、操作パネル4を設けており、その裏側(外箱1内)に運転制御用の制御装置5を設けている。
【0013】
外箱1の内部には、水槽6を配設している。この水槽6は軸方向が前後(図2で右左)の横軸円筒状を成すものであり、それを外箱1の底板1a上に、左右一対(図2では一方のみ図示)のサスペンション7によって前上がりの傾斜状に弾性支持している。サスペンション7の詳細構造は、後に述べる。
水槽6の背部には、モータ8を取付けている。このモータ8は、この場合、例えば直流のブラシレスモータから成るもので、アウターロータ形であり、ロータ8aの中心部に取付けた回転軸(図示省略)を、軸受ハウジング9を介して水槽6の内部に挿通している。
【0014】
水槽6の内部には、ドラム10を配設している。このドラム10も軸方向が前後の横軸円筒状を成すもので、それを後部の中心部で上記モータ8の回転軸の先端部に取付けることにより、水槽6と同心の前上がりの傾斜状に支持している。又、その結果、ドラム10はモータ8により回転されるようになっており、従って、ドラム10は回転槽であり、モータ8はドラム10を回転させるドラム駆動装置として機能するようになっている。
【0015】
ドラム10の周側部(胴部)には、小孔11を全域にわたって多数形成している。又、ドラム10及び水槽6は、ともに前面部に開口部12,13を有しており、そのうちの水槽6の開口部13と前記洗濯物出入口2との間を環状のベローズ14で連ねている。この結果、洗濯物出入口2は、ベローズ14、水槽6の開口部13、及びドラム10の開口部12を介して、ドラム10の内部に連なっている。
【0016】
水槽6の最低部である底部の後部には、排水弁15を介して、排水管16を接続している。又、水槽6の背部から上方そして前方には、乾燥ユニット17を配設している。この乾燥ユニット17は、除湿器18と、送風機19、及び加熱器20を有しており、ドラム10内の空気を吸引して除湿し、次いで加熱して、ドラム10内に戻す循環を行わしめることにより、洗濯物を乾燥させるようになっている。
【0017】
更に、水槽6の上部の前部と後部には、それぞれ振動センサ21,22を装着している。この振動センサ21,22はともに例えば加速度センサから成るもので、前記ドラム10が回転するときにアンバランスがあると、ドラム10が振動することに伴い水槽6が振動することにより、その振動を検知するようになっており、要するに振動センサ21,22は、ドラム10回転時のアンバランスを水槽6の振動で検知するアンバランス検知手段として機能するようになっている。
【0018】
そして更に、外箱1の底板1aの外下面の四隅部にはそれぞれ脚23を設けており、又、底板1aの外下面の後部には温度センサ24を設けている。この温度センサ24は、外箱1外の気温を検知する温度検知手段たるもので、例えばサーミスタから成っている。
【0019】
ここで、サスペンション7の詳細構造を述べる。サスペンション7はダンパ25を有しており、このダンパ25は、図3に示すように、主部材として、磁性材から成るシリンダ26と、同じく磁性材から成るシャフト27とを具えている。このうち、シリンダ26は上端部に連結部材28を有し、この連結部材28を、図2に示すように、前記水槽6が有する取付板29に下方から上方へ通してクッション30を介してナット31で締結することにより、水槽6に取付けている。
【0020】
これに対して、シャフト27は下端部に連結部27aを有し、この連結部27aを、同じく図2に示すように、前記外箱1の底板1aが有する取付板32に上方から下方へ通してクッション33を介してナット34で締結することにより、外箱1の底板1aに取付けている。
【0021】
図3に示すように、シリンダ26の内部の中間部には、上ヨーク35を圧入して固定している。この上ヨーク35は磁性材から成っており、内周部の上側にスペース36を有する短円筒状に形成していて、そのスペース36にリング状の上軸受37を収納して固定保持している。上軸受37は例えば焼結含油メタルから成っている。
【0022】
シリンダ26の内部の上記上ヨーク35直下の位置には、上コイル38を、上ボビン39に巻装した状態で挿入して固定保持している。又、シリンダ26の内部の上記上ボビン39直下の位置には、リング状の中間ヨーク40を圧入して固定している。中間ヨーク40は磁性材から成っている。
【0023】
更に、シリンダ26の内部の上記中間ヨーク40直下の位置には、下コイル41を、下ボビン42に巻装した状態で挿入して固定保持している。そして、シリンダ26の内部の上記下ボビン42直下の位置には、リング状の下ヨーク43と、リップ状のシール44、並びにリング状の下軸受45を、短円筒状のブラケット46の内周部に収納した状態で挿入して固定保持している。このうち、下ヨーク43とブラケット46は磁性材から成っており、下軸受45は例えば焼結含油メタルから成っている。
【0024】
加えて、上ヨーク35と上ボビン39との間にはシール47を設けており、上ボビン39と中間ヨーク40との間にはシール48を、中間ヨーク40と下ボビン42との間にはシール49を、下ボビン42とブラケット46との間にはシール50を、それぞれ設けている。これらのシール47〜50は、例えばOリングから成っている。
【0025】
そして、シャフト27を、シリンダ26の下端開口部51から、下軸受45、シール44、下ヨーク43、下ボビン42、中間ヨーク40、上ボビン39、上ヨーク35、及び上軸受37を順に貫通させてシリンダ26の内部に挿入している。この挿入したシャフト27は、下軸受45及び上軸受37に支持されつつ、それら下軸受45、シール44、下ヨーク43、下ボビン42、中間ヨーク40、上ボビン39、上ヨーク35、及び上軸受37に対して、軸方向の往復動が相対的に可能となっている。又、シリンダ26の上ヨーク35上の部分は空洞52となっており、挿入したシャフト27は、上端部がその空洞52に達し、止め輪53で抜け止めしている。
【0026】
更に、挿入したシャフト27と上ボビン39及び下ボビン42との各間、並びにそれらの近傍であるシャフト27と上ヨーク35、中間ヨーク40、及び下ヨーク43との各間には、機能性流体、この場合、磁気粘性流体(MR流体)54を充填している。
【0027】
機能性流体とは、既述のように、外部から加える物理量を制御することで粘性等のレオロジー的性質が機能的に変化する流体であって、電気的エネルギーの印加により粘度が変化する流体としての磁気粘性流体54及び図示しない電気粘性流体を包含する。本実施形態では、磁界(磁場)の強度に応じて粘性特性が変化する磁気粘性流体54を用いているが、電界(電場)の強度に応じて粘性特性が変化する電気粘性流体(ER流体)を用いても良い。
【0028】
磁気粘性流体54は、これも既述のように、例えば、オイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたものであり、磁界が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで粘度が上昇するものであり、前記シール44とシール49〜50は、この磁気粘性流体54の漏れを抑止する機能を有している。
【0029】
かくして、ダンパ25を構成しており、このダンパ25のシリンダ26の外部下方に位置したシャフト27の下部には、ばね受け座55を嵌合固定し、このばね受け座55とシリンダ26の下端部との間には、シャフト27を囲繞する圧縮コイルスプリングから成るコイルばね56を装着し、かくして、サスペンション7を構成すると共に、該サスペンション7を前記水槽6と前記外箱1の底板1aとの間に組込み、外箱1の底板1a上に水槽6を弾性支持するようにしている。
なお、前記ダンパ25の上下両コイル38,41は、図示しないリード線を介してダンパ25外部の駆動回路(図示省略)に接続され、通電されるようになっている。
【0030】
図4には、前記制御装置5を中心とした電気的構成をブロック図で示している。制御装置5は、例えばマイクロコンピュータから成るもので、ドラム式洗濯乾燥機の運転全般を後述のように制御する制御手段として機能するようになっており、この制御装置5には、前記操作パネル4が有する各種の操作スイッチから成る操作入力部57より各種操作信号が入力されるようになっている。
【0031】
制御装置5には、そのほか、前記水槽6内の水位を検知するように設けた水位センサ58から水位検知信号が入力されると共に、モータ8の回転を検知するように設けた回転センサ59から回転検知信号が入力され、前記振動センサ21,22から振動(アンバランス)検知信号が、温度センサ24から温度検知信号が、それぞれ入力されるようになっている。
【0032】
なお、制御装置5は、上記回転センサ59からの回転検知信号に基づき、モータ8の回転数ひいてはドラム10の回転数を検知所要時間で除する演算をするようになっており、それによってドラム10の回転速度を検知する回転速度検知手段としても機能するようになっている。
【0033】
そして、制御装置5は、それらの入力と検知結果並びにあらかじめ記憶された制御プログラムに基づいて、前記水槽6内に給水するように設けた給水弁60と、前記モータ8、前記排水弁15、前記乾燥ユニット17における送風機19の送風羽根19a(図2参照)を駆動するモータ19b(同図参照)、同乾燥ユニット17における加熱器20のヒータ20a(同図参照)、及び前記ダンパ25における上コイル38、下コイル41、を駆動する駆動回路61に駆動制御信号を与えるようになっている。
【0034】
次に、上記構成のものの作用を述べる。
上記構成のものでは、操作パネル4の操作に基づき、運転が開始されると、制御手段たる制御装置5は、図5に示すように、洗い行程、脱水行程、すすぎ行程、脱水行程、乾燥行程の順に運転を実行する。
【0035】
洗い行程では、最初に、ドラム10内に収容されて存在する洗濯物の量を検知する洗濯物量検知動作を行うが、更に、その洗濯物量検知動作の開始時には、温度センサ24による温度(この場合、外箱1外の気温)の検知を行い、その検知結果に応じて、該洗濯物量検知動作時並びにこの後の洗い動作時における、それぞれダンパ25の通電量(上下両コイル38,41の通電量)の設定をする。
【0036】
図1(a)は、この洗い行程の洗濯物量検知動作の開始時における検知温度と、それに応じて設定するダンパ25の通電量とを動作時別に示しており、洗濯物量検知動作時については、検知温度が30〔℃〕以上であるときに、ダンパ25の通電量は1〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく1〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.8〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定する。
【0037】
一方、洗い動作時については、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく0.5〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.4〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.3〔A〕に設定するものであり、要するに、いずれも検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0038】
さて、このように設定した後、洗濯物量検知動作を実行する。このとき、ドラム10内に存在する洗濯物は、洗濯前であるから乾布であり、従って、この洗濯物量検知動作は乾布洗濯物量検知動作であり、本実施形態のドラム式洗濯機は乾布洗濯物量検知機能を有している。
【0039】
乾布洗濯物量検知動作は、例えば、ドラム10を所定の回転速度まで回転させ、それに要した時間と、その後、ドラム10の駆動を停止してドラム10を惰性回転させ、それによってドラム10の回転速度が所定の回転速度まで下降するのに要した時間とから、洗濯物の量をモータ8の回転負荷でもって検知するものである。従って、回転センサ59と制御装置5は洗濯物量検知手段として機能する。
【0040】
この乾布洗濯物量検知動作時には、ドラム10の回転に伴い、水槽6が上下方向を主体に振動する。この水槽6の上下振動に応動して、サスペンション7では、水槽6に取付けたシリンダ26が、上ヨーク35及び上軸受37、上ボビン39及び上コイル38、中間ヨーク40、下ボビン42及び下コイル41、ブラケット46及び下ヨーク43、シール44、下軸受45を伴って、コイルばね56を伸縮させつつシャフト27の周囲を上下方向に振動する。
【0041】
このようにシリンダ26が上記各部品を伴って上下方向に振動するとき、シャフト27と上ボビン39及び下ボビン42との各間、並びにそれらの近傍であるシャフト27と上ヨーク35、中間ヨーク40、及び下ヨーク43との各間に充填した磁気粘性流体54は、その粘性による摩擦抵抗でサスペンション7に減衰力を与え、水槽6の振幅を減衰させる。
しかして、この乾布洗濯物量検知動作時には、ダンパ25の上下両コイル38,41に前述の検知温度に応じて設定した電流の通電をする。コイル38,41に通電すると、磁場が発生して、磁気粘性流体54に磁界が与えられ、磁気粘性流体54の粘度が高まる。
【0042】
詳細には、コイル38,41に通電したことで、シャフト27−磁気粘性流体54−上ヨーク35−シリンダ26−中間ヨーク40−磁気粘性流体54−シャフト27の磁気回路が発生すると共に、シャフト27−磁気粘性流体54−中間ヨーク40−シリンダ26−ブラケット46−下ヨーク43−磁気粘性流体54−シャフト27の磁気回路が発生し、それぞれ磁束が通過する箇所の磁気粘性流体54の粘度が高まる。特に磁束密度の高いシャフト27と上ヨーク35との間、並びに中間ヨーク40とシャフト27との間、下ヨーク43とシャフト27との間の、各磁気粘性流体54の粘度が高まり、摩擦抵抗が増加する。
【0043】
かくして、シリンダ26が前記各部品、特には上下両コイル38,41と、上ヨーク35、中間ヨーク40、及び下ヨーク43を伴って上下方向に振動するときの、摩擦抵抗が増加することにより、減衰力が大きくなる。これにより、水槽6に振動が発生しにくくできるので、乾布洗濯物量検知機能による洗濯物量の検知も正確にできるようになる。
この後、給水弁60を開放させて、検知洗濯物量に応じた水位まで水槽6内に給水する給水動作を行う。このときには又、図示しない洗剤ケースにセットした洗剤の供給を給水と併せて行う。
【0044】
給水動作の後には、ドラム10を低速で正逆両方向に交互に回転させて洗濯物を主にたたき洗いする洗い動作を、検知洗濯物量に応じた時間の長さで行う。この洗い動作時にも、ドラム10の回転に伴い、水槽6が上下方向を主体に振動するから、サスペンション7では、各部に前記乾布洗濯物量検知動作時と同様の動きや働きが生じる。よって、このときにも、ダンパ25の上下両コイル38,41に前述の検知温度に応じて設定した電流の通電をして、磁気粘性流体54の粘度を高め、ダンパ25の減衰力を適度に大きくして、水槽6の振動を抑制する。
【0045】
なお、この洗い動作時におけるダンパ25の通電量に比して、前記洗濯物量検知動作時におけるダンパ25の通電量は多い。これは、洗濯物量検知動作時に水槽6の振動をより発生しにくくして洗濯物量の検知がより正確にできるようにするためである。
洗い行程の終了時には、排水弁15を開放させて水槽6内から排水する排水動作を行う。この排水動作では、ダンパ25の上下両コイル38,41への通電を停止(断電)する。よって、このときには、磁気粘性流体54の粘度が磁力で高められることはなく、ダンパ25の減衰力は磁気粘性流体54の自然粘度で得られる大きさに戻される。
【0046】
この後の脱水行程(中間脱水行程)では、開始時に、温度センサ24による温度(気温)の検知を再び行い、その検知結果に応じて、この脱水行程における脱水動作時と、その後のすすぎ行程におけるすすぎ動作時での、それぞれダンパ25の通電量の設定をする。
【0047】
図1(b)は、この脱水行程の開始時における検知温度と、それに応じて設定するダンパ25の通電量とを動作時別に示しており、この脱水行程における脱水動作時については、前記洗い行程の洗濯物量検知動作時と同様に、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は1〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく1〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.8〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定する。
【0048】
一方、すすぎ動作時については、前記洗い動作時と同様に、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく0.5〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.4〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.3〔A〕に設定するものであり、要するに、この場合も、いずれも検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0049】
さて、このように設定した後に実行する脱水行程は、詳細には図6に示すように実行するものであり、すなわち、ドラム10を回転させ、その回転速度をRで示すように段階的に上昇させて、洗濯物に残留する水を遠心力により振り切り排出する脱水動作を検知洗濯物量に応じた時間の長さで行う。
【0050】
この脱水動作時にも、ドラム10の回転に伴い、水槽6が上下方向を主体に振動するもので、ドラム10の回転速度が前記洗い動作時より高いので、サスペンション7では、各部に洗い動作時より大きな動きや働きが生じる。よって、このときには、前述の検知温度に応じて設定した電流の値が洗い動作時のそれより大きく、ダンパ25の上下両コイル38,41に通電するときには、その洗い動作時より大きく設定した通電をして、磁気粘性流体54の粘度を高め、ダンパ25の減衰力を大きくして、水槽6の振動を抑制する。
【0051】
しかして、この脱水行程の初期(脱水行程の起動時であって、ドラム10の回転が例えば400〔rpm〕に達するまで)には、ダンパ25の上下両コイル38,41に上記検知温度に応じて設定した電流値の通電をする(図6は、1〔A〕の通電をした状態を一例として表している)。これにより、水槽6の共振が現れる脱水行程の起動時(ドラム10の回転が例えば400〔rpm〕に達するまで)のダンパ25の減衰力を大きくして水槽6の共振の発生を回避し、ドラム10回転の立ち上がり性能を良くする。
【0052】
又、このときには、図6に「アンバランス検知」で示すように、振動センサ21,22の振動検知信号からドラム10回転のアンバランスの検知をするもので、ドラム10の回転速度を上昇させたその各段でアンバランスの検知結果が所定値以下であるときに、ドラム10の回転速度を次段に上昇させることを行うことで、ドラム10回転のアンバランスの小さい状態を各段でより確実に把握しながら、ドラム10の回転速度を段階的に上昇させる。
【0053】
ドラム10の回転速度が前記400〔rpm〕に達してからは、ドラム10回転のアンバランスの検知を停止し、ドラム10の回転速度を所定時間Tだけその400〔rpm〕に保つ。この状況、すなわちドラム10の回転速度が一定である状況で、ダンパ25の上下両コイル38,41への通電を減じて最終的に断電することにより、ダンパ25の減衰力を図6に「減衰力変化」から「減衰力:小」で示すように小さくする。
【0054】
そして、その直後には、図6に次の「アンバランス検知」で示すように、ドラム10の回転速度を(上記400〔rpm〕から)更に上昇させるための、前記振動センサ21,22の振動検知信号に基づくドラム10回転のアンバランスの検知をし、その検知結果が所定値以下であったときに、ドラム10の回転速度を次段(例えば950〔rpm〕)まで上昇させることを行う。
【0055】
この後、図6に更に次の「アンバランス検知」で示すように、ドラム10の回転速度を(上記950〔rpm〕から)更に上昇させるための、前記振動センサ21,22の振動検知信号に基づくドラム10回転のアンバランスの検知をし、その検知結果が所定値以下であったときに、ドラム10の回転速度を最終段(例えば1200〔rpm〕)まで上昇させることを行う。
【0056】
ドラム10の最終段の回転速度の回転は所定時間継続するもので、この間(ドラム10の回転速度を前記400〔rpm〕から上昇させて以来)、ダンパ25の減衰力は小さくしたままであり、その間、水槽6の振動は小さいがそれなりに発生するため、それが外箱1に伝わるのを避け、更に洗濯乾燥機を設置した家屋の床面に伝わるのを避ける必要があり、よって、このときには、ダンパ25の減衰力を小さくして、サスペンション7のコイルばね56の弾性により上記振動の伝達を防止するようにしている。
【0057】
そして、その後、ドラム10の回転駆動を停止し、回転速度を0まで下げる。このドラム10の回転速度を0まで下げるときには、水槽6の共振が現れる速度域を通過するため、ダンパ25の上下両コイル38,41には再び前記検知温度に応じた電流値(一例では1〔A〕)の電流の通電をすることで、ダンパ25の減衰力を図6に又「減衰力:大」で示すように大きくし、水槽6の共振の発生を回避する。
この脱水行程の終期に大きくしたダンパ25の減衰力は、ドラム10の回転速度が上述の水槽6の共振が現れる速度域を通過した後、上下両コイル38,41への通電を減じ、更に通電を断つことで小さくする。
【0058】
この後、すすぎ行程を行う。このすすぎ行程では、前記洗い行程同様に、給水弁60を開放させて前述の検知洗濯物量に応じた水位まで水槽6内に給水する給水動作を行い、続いて、ドラム10を低速で正逆両方向に交互に回転させて洗濯物を主にたたきすすぎするすすぎ動作を検知洗濯物量に応じた時間の長さで行う。このすすぎ行程では、ダンパ25の上下両コイル38,41への通電は、上記脱水行程の開始時における検知温度に応じて設定した電流(このときの各部の動きや働きが前記洗い動作時同様に脱水動作時より小さいので脱水動作時より小さい)の通電をして、磁気粘性流体54の粘度を高め、ダンパ25の減衰力を適度に大きくして、水槽6の振動を抑制する。
【0059】
この後、排水弁15を開放させて水槽6内から排水する排水動作が行われるものであり、この排水動作では、ダンパ25の上下両コイル38,41への通電を停止する。
更に、その後の脱水行程(最終脱水行程)は、前記脱水行程(中間脱水行程)と同様に行うものであり、従って、その開始時に温度センサ24による温度(外箱1外の気温)の検知を更に行い、その検知結果に応じて、この脱水行程における脱水動作時でのダンパ25の通電量の設定をする。
【0060】
図1(c)は、この最終の脱水行程の開始時における検知温度と、それに応じて設定するダンパ25の通電量とを示しており、この最終の脱水行程における脱水動作時については、前記洗い行程の洗濯物量検知動作時及び脱水行程(中間脱水行程)の脱水動作時と同様に、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は1〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく1〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.8〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定するものであり、要するに、この場合も、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0061】
このように設定した後に実行する最終の脱水行程は、その設定した通電量の通電をダンパ25に対し行いつつ、脱水動作を前述の脱水行程(中間脱水行程)の脱水動作と同様に実行する。
この後、乾燥行程を行う。この乾燥行程でも、最初には、ドラム10内に存在する洗濯物の量を検知する洗濯物量検知動作を行うが、更に、その開始時には温度センサ24による温度(外箱1外の気温)の検知を行い、その検知結果に応じて、該洗濯物量検知動作時並びにこの後の乾燥動作時における、それぞれダンパ25の通電量の設定をする。
【0062】
図1(d)は、この乾燥行程の洗濯物量検知動作の開始時における検知温度と、それに応じて設定するダンパ25の通電量とを動作時別に示しており、洗濯物量検知動作時については、前記洗い行程の洗濯物量検知動作時及び脱水行程(中間脱水行程、最終脱水行程)の各脱水動作時と同様に、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は1〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく1〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.8〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定する。
【0063】
一方、乾燥動作時については、前記洗い動作時及びすすぎ動作時と同様に、検知温度が30〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定し、検知温度が20〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく0.5〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕以上で20〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.4〔A〕に設定し、検知温度が10〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.3〔A〕に設定するものであり、要するに、この場合も、いずれも検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0064】
このように設定した後、洗濯物量検知動作を実行する。このとき、ドラム10内に存在する洗濯物は、洗い、脱水後であるから湿布であり、従って、この洗濯物量検知動作は湿布洗濯量検知動作であり、本実施形態のドラム式洗濯機は又湿布洗濯物量検知機能を有している。
湿布洗濯物量検知動作は、前述の乾布洗濯物量検知動作と同じ内容で行う。そして、その湿布洗濯物量検知機能による洗濯物量の検知時には、ダンパ25の上下両コイル38,41には上記検知温度に応じて設定した電流値の通電をする。
【0065】
この後、ドラム10を回転させつつ、乾燥ユニット17を機能させて洗濯物を乾燥させる乾燥動作を検知洗濯物(湿布)量に応じた時間の長さで行うもので、そのとき、ダンパ25の上下両コイル38,41には上記検知温度に応じて設定した電流値の通電をする。
なお、この乾燥動作時におけるダンパ25の通電量に比して、洗濯物量検知動作時におけるダンパ25の通電量は多い。これは、前述の洗い動作時とそれ以前の洗濯物量検知動作時との関係と同じで、水槽6の振動をより発生しにくくして洗濯物量の検知がより正確にできるようにするためである。
【0066】
このように上記構成のものでは、回転駆動されるドラム10が内部に位置する水槽6を外箱1の内部で弾性支持するサスペンション7が、水槽6の振動を減衰するダンパ25を有し、そのダンパ25が通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、外箱1外の気温を検知する温度検知手段として温度センサ24を有し、この温度センサ24の検知結果に応じて、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするようにしている。
【0067】
回転駆動されるドラム10が内部に位置する水槽6を外箱1の内部で弾性支持するサスペンション7、中でもコイルばね56やクッション30,33等は、温度特性を有し、気温が高いときより気温が低いときに水槽6の振動を抑制する効果に優れるという特性を有している。従って、気温が低いときには、ダンパ25の減衰力を大幅に大きくしない(ダンパ25に多くの通電をしない)でも、水槽6の振動を充分に抑制できるものであり、そこで、上述のように外箱1外の気温を検知する温度検知手段としての温度センサ24の検知結果に応じ、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をすることにより、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得て、消費電力の節減を達成することができる。
【0068】
又、上記構成のものでは、脱水行程でのダンパ25の通電量を、脱水行程開始時における外箱1外の気温の検知結果で制御するようにしている。外箱1外とはいえ、ドラム式洗濯機に付設する温度検知手段としての温度センサ24の検知結果は、ドラム式洗濯機の運転に伴って変化する。そこで、このように脱水行程でのダンパ25の通電量を、脱水行程開始時における外箱1外の気温の検知結果で制御することにより、脱水行程の進行による検知温度の変化に左右されない温度検知ができるもので、それにより、その検知温度に応じたダンパ25の通電量の制御も狂いなくできて、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得るので、消費電力の一層の節減を達成することができる。
【0069】
更に、上記構成のものでは、ドラム10の内部に存在する洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を具備し、その洗濯物量検知手段による洗濯物量の検知を洗い行程の開始時に行うものであって、その洗濯物量検知時のダンパ25の通電量を、該洗濯物量検知開始時における温度検知手段の検知結果で制御するようにしている。上述のように、外箱1外とはいえ、ドラム式洗濯機に付設する温度検知手段としての温度センサ24の検知結果は、ドラム式洗濯機の運転に伴って変化する。そこで、このように洗濯物量検知手段による洗濯物量の検知を洗い行程の開始時に行うものであって、その洗濯物量検知時のダンパ25の通電量を、該洗濯物量検知開始時における温度検知手段の検知結果で制御することにより、洗濯物量検知動作の進行による検知温度の変化に左右されない温度検知ができるもので、それにより、その検知温度に応じたダンパ25の通電量の制御も狂いなくできて、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得るので、消費電力の一層の節減を達成することができる。
【0070】
加えて、上記構成のものでは、上記洗濯物量検知手段による洗濯物量の検知を乾燥行程の開始時に行うものであって、その洗濯物量検知時のダンパ25の通電量を、該洗濯物量検知開始時における温度検知手段の検知結果で制御するようにしている。これによっても、洗濯物量検知動作の進行による検知温度の変化に左右されない温度検知ができるものであり、それによって、その検知温度に応じたダンパ25の通電量の制御も狂いなくできて、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得るので、消費電力の一層の節減を達成することができる。
【0071】
以上に対して、図7ないし図11は第2ないし第4の実施形態を示すもので、それぞれ、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0072】
[第2の実施形態]
図7に示す第2の実施形態においては、前記温度センサ24に代えて、温度センサ71を、外箱1内の底板1a上に設けて、外箱1内の気温を検知する温度検知手段として機能させるようにしている。従って、この場合、制御装置5には、温度センサ71から外箱1内の気温の検知信号が入力されるようになっていて、それに応じ、制御装置5はダンパ25の通電量を、第1の実施形態におけるそれと同様に制御するようになっている(図1参照)。
【0073】
このように、ダンパ25の通電量は、外箱1内の気温の検知結果で制御しても、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をすることで、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得て、消費電力の節減を達成することができる。
【0074】
加えて、この場合、温度センサ71はサスペンション7の近傍に配置している。このようにすることにより、ダンパ25の通電量をダンパ25に近い位置の温度で制御できて、より高精度な制御ができる。
なお、前述の外箱1外に配置する温度センサ24でも、サスペンション7の直下部等に配置することによって、サスペンション7の近傍に配置することが可能で、それによって、上述同様に、より高精度な制御ができる。
【0075】
[第3の実施形態]
図8ないし図10に示す第3の実施形態においては、前記温度センサ24,71に代えて、温度センサ81を、乾燥ユニット17の除湿器18内の下部であって、水槽6の空気出口(図示省略)と対向する部分、すなわち、ドラム10内の空気が水槽6内から除湿器18内に至って進むところの部分に設けて、ドラム10内の気温を検知する温度検知手段として機能させるようにしている。従って、この場合、制御装置5には、温度センサ81からドラム10内の気温の検知信号が入力されるようになっていて、それに応じ、制御装置5はダンパ25の通電量を図9に示すように制御するようにしている。
【0076】
すなわち、この場合には、図9の(a)〜(c)に示すように、洗い行程の洗濯物量検知動作から最終の脱水行程の脱水動作まで、第1実施例におけるそれらと同様に制御するものであり、そして、図9の(d)に示すように、乾燥行程の洗濯物量検知動作と乾燥動作時については、乾燥行程をそれ以前の行程から連続して行うコースであるときに、ドラム10内の空気がそれ以前の行程におけるモータ8の動作熱や洗濯物の摩擦等で温度上昇することを考慮して、洗濯物量検知動作の開始時における検知温度の判定レベルを変えている。
【0077】
具体的には、この場合、この乾燥行程の洗濯物量検知動作の開始時における検知温度が40〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は1〔A〕に設定し、検知温度が30〔℃〕以上で40〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく1〔A〕に設定し、検知温度が15〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.8〔A〕に設定し、検知温度が15〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定する。
【0078】
一方、乾燥動作時については、この乾燥行程の洗濯物量検知動作の開始時における検知温度が40〔℃〕以上であるときには、ダンパ25の通電量は0.5〔A〕に設定し、検知温度が30〔℃〕以上で40〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は同じく0.5〔A〕に設定し、検知温度が15〔℃〕以上で30〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.4〔A〕に設定し、検知温度が15〔℃〕未満であるときには、ダンパ25の通電量は0.3〔A〕に設定するものであり、要するに、この場合も、いずれも検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0079】
なお、乾燥行程をそれ以前の行程から連続せず単独に行うときには、ドラム10内の空気がそれ以前の行程におけるモータ8の動作熱や洗濯物の摩擦等で温度上昇することはないので、図10に示すように、この乾燥行程の洗濯物量検知動作の開始時における検知温度の判定レベルは、前記第1及び第2の実施形態のそれと同様とするものであり、ダンパ25の通電量も前記第1及び第2の実施形態のそれと同様とする。従って、この場合も、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をするのである。
【0080】
このように、ダンパ25の通電量は、ドラム10内の気温の検知結果で制御しても、検知気温が低いほどダンパ25の通電量を少なくする制御をすることで、ダンパ25に気温に応じた適正な減衰力を発揮させ得て、消費電力の節減を達成することができる。
【0081】
[第4の実施形態]
図11に示す第4の実施形態おいては、前述のサスペンション7に代わるサスペンション91を用いている。このサスペンション91は、ダンパ92が、コイル93を上下に分けず1つでボビン94に巻装して有し、これをシリンダ26内の上ヨーク35と下ヨーク43(ブラケット46)との間に配設して固定保持している。従って、このものでは、前記中間ヨーク40を有していない。そのほかは、前述のサスペンション7と同様である。
このような構成であっても、コイル93の通電を制御することで、ダンパ62の減衰力を変化させることができ、一定に保つこともできる。
【0082】
以上説明したドラム式洗濯機は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、特に、温度検知とダンパの通電量の設定は各動作を開始した直後に行うようにしても良いなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0083】
図面中、1は外箱、5は制御装置(制御手段、洗濯物量検知手段)、6は水槽、7はサスペンション、10はドラム、24は温度センサ(温度検知手段)、25はダンパ、54は磁気粘性流体(機能性流体)、59は回転センサ(洗濯物量検知手段)、71,81は温度センサ(温度検知手段)、91はサスペンション、を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と、
この外箱の内部に位置する水槽と、
この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、
前記外箱外の気温を検知する温度検知手段と、
前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、
前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、
前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知気温が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
外箱と、
この外箱の内部に位置する水槽と、
この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、
前記外箱内の気温を検知する温度検知手段と、
前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、
前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、
前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知気温が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
外箱と、
この外箱の内部に位置する水槽と、
この水槽の内部に位置して回転駆動されるドラムと、
このドラム内の気温を検知する温度検知手段と、
前記水槽を前記外箱の内部で弾性支持し、前記水槽の振動を減衰するダンパを有するサスペンションとを具備し、
前記ダンパが、通電による電気的エネルギーの印加により粘度が変化する機能性流体を使用して減衰力を変化させるものであって、
前記温度検知手段の検知結果に応じ、検知温度が低いほど前記ダンパの通電量を少なくする制御をする制御手段を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
制御手段が、脱水行程でのダンパの通電量を、脱水行程開始時における気温の検知結果で制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
ドラムの内部に存在する洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を具備し、制御手段が、その洗濯物量検知手段による洗濯物量の検知を洗い行程の開始時に行うものであって、その洗濯物量検知時のダンパの通電量を、該洗濯物量検知開始時における温度検知手段の検知結果で制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
ドラムの内部に存在する洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を具備し、制御手段が、その洗濯物量検知手段による洗濯物量の検知を乾燥行程の開始時に行うものであって、その洗濯物量検知時のダンパの通電量を、該洗濯物量検知開始時における温度検知手段の検知結果で制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
温度検知手段をサスペンションの近傍に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240019(P2011−240019A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116239(P2010−116239)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】