説明

ドリッパー

【課題】紙製を主とした扇形フィルターを用いるのに良好なドリッパーを提供する。
【解決方法】フィルターを保持するためのフィルター保持部に複数のリブが形成されたドリッパーにおいて、前記フィルター保持部を構成する前記リブ間に位置する面の形状を曲面とし、少なくとも対峙する一対の前記面に切欠きを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターを装着するドリッパーに関し、ドリッパーの側面に開口部を形成したものである。
【背景技術】
【0002】
漏斗状の、例えばコーヒードリッパーとして用いられるようなものとしては、従来、図6に示すようなものがある。このコーヒードリッパー11は、フィルター保持部として機能する漏斗部12と、その外周部に取り付けられた取っ手14と、抽出後のコーヒーを受けて保持する抽出液用容器31の枠に係合して保持するための鍔13とを備えている。また、漏斗部12の内周面には、下方から上方に向かって相互に間隔が広がる螺旋状に複数のリブ16が配置されている。
【0003】
リブ16は下方に向かうにしたがって順次高くなるように隆起するように構成され、ペーパーフィルター21を装着した際に漏斗部12の内周面に密着することなく、通気を均一に行い、コーヒー粉の蒸らしが均一かつ円滑に行われ、抽出されるコーヒーの風味を損なわないようにしている。なお、図6に示すように、漏斗部12の内周面の上方には、リブ16の間に追加のリブ17が形成され、リブ16の間隙増大によるペーパーフィルター21の漏斗部12の内周面への密着を防止するようにしている。
【特許文献1】実用新案登録第3116219号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコーヒードリッパー11は、漏斗部12がその断面方向の径が下方に向って狭小化するような円錐形をしており、おいしいコーヒーを入れるためには使用するペーパーフィルター21も同じ円錐形のものを用いる必要があった。しかしながら、市販されているペーパーフィルター21には扇形(台形状)のものもあり、この扇形のペーパーフィルター21を用いる場合には、円錐状に折り曲げてからドリッパーにセットしなければならなかった。したがって、このようにペーパーフィルター21を円錐状に折り曲げて使用する場合、折り曲げられた部分が漏斗部12の内周に密着するようになり、上記したような風味を損なわないコーヒーを入れることは難しかった。
【0005】
また、フィルター21が円錐状であると、注がれるお湯がコーヒー粉の全体に行き渡りやすい形状をしている反面、注がれたお湯や抽出されたコーヒーは、フィルター21の先端21Aに向かって流れるため、フィルター21の先端部21A付近のコーヒー粉からのコーヒーの抽出がいち早く終了し、出がらし状態としてしまう。このように、出がらし状態となった部分が形成されると、この部分が注がれたお湯のとおりをよくしてフィルター内のコーヒー粉から効率よくコーヒーを抽出することができなくなり、おいしいコーヒーを入れることが難しかった。
【0006】
したがって、本発明はどのような形状のフィルターを用いてもコーヒーの風味を損なわずコーヒーが抽出できるドリッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1に対応する発明は、フィルターを保持するためのフィルター保持部に複数のリブが形成されたドリッパーにおいて、前記フィルター保持部を構成する前記リブ間に位置する面の形状を曲面とし、少なくとも対峙する一対の前記面に切欠きを形成したことを特徴とする。
【0008】
このようにフィルター保持面を複数のリブで分断した複数の曲面から構成するとともに、少なくとも対峙する一対の前記面に切欠きを形成することによって、たとえ市販されている扇形(台形状)のフィルターがフィルター保持部と類似していない場合やフィルターがフィルター保持部よりも大きな場合でも、前記フィルターを折り曲げることなく、切り欠きからはみ出させてセットすることより、コーヒー抽出時においてもドリッパーの内面(フィルター保持部)と前記フィルターとの間に空隙が形成されることになる。したがって、前記フィルターを装着した際に、前記フィルター保持部に対する前記フィルターの密着度合いを低減することができる。したがって、上述のように、扇形(台形状)のフィルターを用いた場合においても、フィルター保持部とフィルターとの間の通気を均一に行うことができ、コーヒー粉の蒸らしを均一かつ円滑に行い、抽出されるコーヒーの風味を損うことがない。
【0009】
また、前記フィルター保持部を構成する前記曲面の内、少なくとも対峙する一対の曲面において切欠きを形成していることに起因して、このような切欠きからも抽出液を排出することができる。したがって、ドリッパーの抽出液滴下用孔から排出しきれずドリッパーとフィルターとの空間に溜まる、ということがなくなる。この結果、フィルターの先端部付近のコーヒー粉からのコーヒーの抽出がいち早く終了し、出がらし状態となることを抑制し、コーヒーの抽出をより効率的に行うことができ、コーヒーの風味を向上させることができる。
【0010】
請求項2に対応する発明は、上部に開口が形成されるとともに、下部に抽出液滴下用の孔が形成され、上部から下部に向けて断面方向の径が狭小化した錐体状のドリッパーにおいて、前記ドリッパーの側面を前記抽出液滴下用の孔から上方へ向けて拡大するように複数の凹面を放射状に並べた形状とし、少なくとも一対の対峙する位置の凹面に開口部を形成したことを特徴とする。
【0011】
このようにドリッパーの側面を、抽出液滴下用の孔から上方へ向けて放射状に拡大するように形成した複数の凹面から構成するとともに、少なくとも一対の対峙する位置の凹面に開口部を形成することによって、たとえ市販されている扇形(台形状)のフィルターがフィルター保持部と類似していない場合やフィルターがフィルター保持部よりも大きな場合でも、前記フィルターを折り曲げることなく、切り欠きからはみ出させてセットすることより、コーヒー抽出時においてもドリッパーの内面(フィルター保持部)と前記フィルターとの間に空隙が形成されることになる。したがって、前記フィルターを装着した際に、前記フィルター保持部に対する前記フィルターの密着度合いを低減することができる。したがって、上述のように、扇形(台形状)のフィルターを用いた場合においても、フィルター保持部とフィルターとの間の通気を均一に行うことができ、コーヒー粉の蒸らしを均一かつ円滑に行い、抽出されるコーヒーの風味を損うことがない。
【0012】
なお、「錐体状」とは、平面状の閉じた曲線(または折れ線)の周上1周する点と、この平面外の一点とを結ぶ直線によって作られる曲面(または幾つかの平面の一部)で囲まれた空間の一部分である円錐や角錐はもちろんのこと、平面外の点を線として、この線と結ぶ直線によって作られる曲面などで囲まれたものも含むものである(広辞苑引用)。
【0013】
また、少なくとも一対の対峙する位置の凹面に開口部を形成するようにしているので、このような開口部からも抽出液を排出することができ、ドリッパーの抽出液滴下用孔から排出しきれずドリッパーとフィルターとの空間に溜まる、ということがなくなる。したがってフィルターの先端部付近のコーヒー粉からのコーヒーの抽出がいち早く終了し、出がらし状態となることを抑制し、コーヒーの抽出をより効率的に行うことができ、コーヒーの風味を向上させることができる。
【0014】
さらに、本態様によれば、特にフィルターが大きな場合でも、フィルターを折り曲げることなくフィルターをはみ出させ、かつこのはみ出し部分にまでコーヒー粉を入れた場合においても、ドリッパーにセットした場合、上述した作用効果を得ることができ、風味の良いコーヒーを得ることができる。
【0015】
請求項3に対応する発明は、請求項1または2に対応する発明のドリッパーにおいて、フィルター保持面の外面に抽出液用容器に載置するための鍔を形成したものである。このように、鍔を形成したことにより、さまざまな容器にドリッパーを載置することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、どのような形状のフィルターを用いてもコーヒーの風味を損なわずコーヒーが抽出できるドリッパーを提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
最初に、本発明のドリッパーの一例について説明する。図1は、本例におけるドリッパーを上方から見た場合の平面図であり、図2は、図1に示すドリッパーを横方向から見た場合の側面図であり、図3は、図1に示すドリッパーを下方から見た場合の平面図である。図1〜3に示すドリッパー1は、フィルター保持部2と、このフィルター保持部2の外周面に形成された鍔部3と、この鍔部3に形成された取っ手4とを含む。なお、本例において、図示したドリッパー1はポリプロピレン樹脂などにより、上記フィルター保持部2などの全ての部材が一体的に成形されている。但し、本発明では、このような一体成形は必須の構成要件ではない。
【0019】
フィルター保持部2は、漏斗状で最下部には抽出液滴下用の孔5が形成されており、フィルター保持部2内面は複数のリブ状のフィルター接触部6と、このフィルター接触部6間を外方に凸となるような曲面7で形成し、この曲面7のうち、対峙する二面に開口部8が形成されている。この開口部8は曲面7の上端近傍から孔5付近まで形成しているので、ペーパーフィルターを容易にセットできる。
【0020】
鍔部3は、フィルター保持部2の外周面を囲むようにドーナツ状に形成され、開口部8に対応する位置には開口孔9が形成されている。
【0021】
取っ手4は、鍔部3から開口部8の一つを含むような位置まで外方に突出させるようにして形成した。
【0022】
このドリッパー1に市販されている扇形のペーパーフィルター(2〜4杯用)を開口部8にはみ出すようにセットし、コーヒー粉を一人分約10gとして30g入れ、お湯を注いでコーヒーを抽出する。このとき、ペーパーフィルターは、注がれたお湯により外側へ膨らむが、ペーパーフィルターの側面は、フィルター接触部6で保持されるようになり、曲面7とは接触しにくくなる。このように、ペーパーフィルターを面接触でなく、線接触とすることにより、ペーパーフィルターへの通気が均一になり、コーヒーの風味を損なわない効果を有している。
【0023】
また、ペーパーフィルターの側面のほとんどがドリッパーと非接触であることから、コーヒーが側面から染み出してペーパーフィルターの外面をゆっくりと下方へ流れ、抽出液用容器に滴下させることができる。さらに、一部は開口部8及び開口孔9を通過して抽出液用容器内に滴下させることができる。このように、コーヒーをゆっくりと抽出することにより、ネルドリップ(布ドリップ)に近い味と香り、コクを引き出すことができる。
【0024】
さらに、ペーパーフィルターを折り曲げず、はみ出させてドリッパーにセットしているので、ペーパーフィルター先端部の一部もはみ出した状態となっている。すなわち、注がれたお湯から抽出されたコーヒー液がペーパーフィルター先端部に到達したとき、ドリッパー1の孔5だけでなくペーパーフィルター先端部からも開口部8及び開口孔9を介して直接抽出液用容器に滴下させることができる。
【0025】
したがって、ペーパーフィルター先端部に降りてくる抽出されたコーヒー液を広い範囲から滴下でき、かつドリッパーとペーパーフィルターとの間に溜めないことから、ペーパーフィルター先端部のコーヒー粉の出がらしとなる時間をのばすことができるので、ペーパーフィルターに投入されるコーヒー粉から効率よくコーヒー液を抽出できる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明のドリッパーの他の例について説明する。図4は、本例におけるドリッパーを上方から見た場合の平面図である。なお、本例におけるドリッパーの側面形状は図2と類似しているので、本例では記載を省略する。なお、類似及び同一の構成要素に関しては同じ参照数字を用いている。
【0027】
本例では、図4に示すように、フィルター接触部6間の曲面7に開口部8を4箇所形成したものである。このドリッパー1のフィルター保持部2は、8本のフィルター接触部6を形成し、曲面7の一つおきに開口部8を開け(すなわち、二組の対峙する二面に開口部8を開け)、かつ対峙する開口部8を結ぶ線がほぼ90度で交わるように形成したものである。本例でも、開口部8は曲面7の上端近傍から孔5付近まで延在するようにして形成されている。
【0028】
鍔部3は上記第1の実施形態と同様に、フィルター保持部2の外周面を囲むようなドーナツ状に形成され、開口部8の対応する部分には開口孔9を形成している。取っ手4も上記実施例と同様に、鍔部3と一体に成形され、いずれか一方の対峙する開口部8を含むようにして外方に延在した形状としている。
【0029】
このドリッパー1に市販されている円錐形のペーパーフィルター(2〜4杯用)をセットするのであるが、セットするときペーパーフィルターを半分に折り曲げ、折り目のところを山折として、この山折した部分を開口部8からはみ出すようにセットする。そして、コーヒー粉を入れお湯を注いでコーヒーを抽出する。
【0030】
このとき、上記第1の実施形態と同様に、ペーパーフィルターは外側に膨らむが、開口部8が4箇所あるので、実施例1よりもペーパーフィルターの側面が曲面7と接触する可能性を低減させることができる。したがって、本例でも抽出されたコーヒーをゆっくりと下方へ流すことができるので、ネルドリップに近い味と香り、コクを引き出すことができる。
【0031】
また、開口部8を孔の近傍まで開けていることから、注がれたお湯から抽出されたコーヒー液がドリッパー1とペーパーフィルターとの間に溜まりにくいので、ペーパーフィルター先端部のコーヒー粉の出がらしとなる時間を延ばすことができる。したがって、コーヒー粉から効率よくコーヒーを抽出することができるので、コクのあるおいしいコーヒーを入れることができる。
【0032】
この実施形態では円錐形のペーパーフィルターを用いたが、扇形のペーパーフィルターを用いても同様な効果を得ることができる。また、ペーパーフィルターだけでなく、不織布で形成されたフィルターであっても使用することができる。
【0033】
また、抽出液用容器にドリッパー1を載置するために、ドーナツ状の鍔部3を形成したが、全開口部8が形成されている曲面7から外向きに取っ手4を伸ばすことにより、この取っ手4を用いてドリッパー1を抽出液用容器に載置するようにしてもよい。
【0034】
図5は、図4に示す例の変形例であり、フィルター保持部2において、12本のフィルター接触部6を形成し、曲面7の二つおきに開口部8を開け(すなわち、二組の対峙する二面に開口部8を開け)ている点で図4に示す例と異なり、その他の構成要素について同様である。
【0035】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ドリッパー1に形成した鍔部3にフィルターを保持させる機能を付加することにより、抽出液用容器にフィルターを浸漬してもフィルター内の被抽出物(紅茶葉や緑茶葉)を抽出液用容器に落下することなく抽出液(紅茶や緑茶)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のドリッパーの一例を上方から見た場合の平面図である。
【図2】図1に示すドリッパーを横方向から見た場合の側面図である。
【図3】図1に示すドリッパーを下方から見た場合の平面図である。
【図4】本発明のドリッパーの他の例を上方から見た場合の平面図である。
【図5】本発明のドリッパーのその他の例を上方から見た場合の平面図である。
【図6】従来のドリッパーの構成を概略的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ドリッパー、2 フィルター保持部、3 鍔部、4 取っ手、5 孔、6 フィルター接触部、7 曲面、8 開口部(切欠き)、9 開口孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターを保持するためのフィルター保持部に複数のリブが形成されたドリッパーにおいて、
前記フィルター保持部を構成する前記リブ間に位置する面の形状を曲面とし、少なくとも対峙する一対の前記面に切欠きを形成したことを特徴とするドリッパー。
【請求項2】
上部に開口が形成されるとともに、下部に抽出液滴下用の孔が形成され、上部から下部に向けて断面方向の径が狭小化した錐体状のドリッパーにおいて、
前記ドリッパーの側面を 前記抽出液滴下用の孔から上方へ向けて拡大するように複数の凹面を放射状に並べた形状とし、少なくとも一対の対峙する位置の凹面に開口部を形成したことを特徴とするドリッパー。
【請求項3】
前記フィルター保持部の外面に抽出液用容器に載置するための鍔を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のドリッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161279(P2008−161279A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351608(P2006−351608)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【特許番号】特許第4027961号(P4027961)
【特許公報発行日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000158208)AGCテクノグラス株式会社 (81)
【Fターム(参考)】