説明

ドリル穴明け用エントリーシート

【課題】ドリルビットへの樹脂の巻き付きを抑制することにより、ドリルビットの折損が少なく、かつ穴位置精度に優れるドリル穴明け用エントリーシートを提供する。
【解決手段】シート状の基材に、水溶性樹脂(a)と、多価アルコール類、アミノ酸誘導体アルコール類、有機酸類および有機塩類からなる群から選択された1種もしくは2種以上の水溶性物質(b)ならびに水溶性滑材(c)を含有する樹脂組成物層を形成したドリル穴明け用エントリーシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板材料分野で使用されるドリル穴明け用エントリーシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板材料に使用される銅張積層板のドリル穴明け加工方法としては、銅張積層板を重ね、その最上部にアルミニウム箔等を配置し、ドリル穴明け加工を行う方法が一般的に採用されている。近年、プリント配線板材料に対する信頼性向上の要求や高密度化の進展に伴い、穴位置精度の向上や穴壁粗さの低減など高品質の穴明け加工が求められており、これに対応するために、ポリエチレングリコールのシートを使用した穴明け加工法(例えば特許文献1参照)、金属箔に水溶性樹脂層を形成した穴明け用滑剤シート(例えば特許文献2参照)、熱硬化性樹脂薄膜を形成したアルミニウム箔に水溶性樹脂層を形成した穴明け用エントリーシート(例えば特許文献3参照)などが提案・実用化されている。近年、プリント配線板の小型化および軽量化のために配線パターンの微細化とスルーホールの小径化の伸展に伴って、各シートに使用している樹脂成分が、ドリルビットに巻き付く現象が増加する傾向があり、特に0.1mmφ以下の小径加工時には、ドリルビットの折損が認められる場合もあり、更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−92488号公報
【特許文献2】特開平6−344297号公報
【特許文献3】特開2003−136485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ドリルビットへの樹脂の巻き付きを抑制することにより、ドリルビットの折損が少なく、かつ穴位置精度に優れるドリル穴明け用エントリーシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため種々の検討を行った結果、水溶性樹脂(a)に、特定の水溶性物質(b)と水溶性滑材(c)を添加することにより、ドリルビットへの樹脂成分の巻き付き性が抑えられ、結果としてドリルビットの折損が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、シート状の基材に、水溶性樹脂(a)と、多価アルコール類、アミノ酸誘導体アルコール類、有機酸類および有機塩類からなる群から選択された1種もしくは2種以上の水溶性物質(b)ならびに水溶性滑材(c)を含有する樹脂組成物層を形成したドリル穴明け用エントリーシートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によればドリルビットへの樹脂巻き付きの少ないドリル穴明け用エントリーシートが得られる。樹脂巻き付きが抑えられる事により、同様の条件で穴明け加工を行った場合にはより穴位置精度に優れる。また、樹脂巻き付きが原因で生じるドリルビットの折損を抑える事が出来、穴明け工程の生産効率を著しく改善する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において使用される水溶性樹脂(a)とは、平均分子量が10000以上であるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラメチレングリコール、ポリエーテルエステル、ポリビニルアルコールが例示され、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0008】
本発明において使用される水溶性樹脂(a)の1種であるポリエーテルエステルとは、ポリアルキレンオキシドのエステル化物であれば、特に限定されるものではない。代表的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンオキサイドやこれらの共重合物で例示されるグリコール類、またはエチレンオキサイド類の重合物と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸等、及びそれらのジメチルエステル、ジエチルエステル等、ピロメリット酸無水物等で例示される多価カルボン酸、その無水物、またはそのエステルとを反応させて得られる樹脂などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0009】
本発明において使用される水溶性物質(b)は、多価アルコール類、アミノ酸誘導体アルコール類、有機酸類および有機塩類からなる群から選択された水溶性物質であれば特に限定されるものではなく、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用する事も可能である。これらの水溶性物質(b)として好ましいものは、多価アルコール類としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、イノシトールが、アミノ酸誘導体アルコール類としてはグリシノール、フェニルアラニノールが、有機酸類としてはリンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸などが、有機塩類としては、先に挙げた有機酸類の金属塩類が挙げられる。水溶性物質(b)の配合量は、水溶性樹脂(a)と水溶性滑剤(c)を併せたものの0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。
【0010】
本発明における水溶性滑剤(c)とは平均分子量10000未満のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどで例示されるポリオキシエチレンのモノエーテル類;ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート;ヘキサグリセリンモノステアレート、デカヘキサグリセリンモノステアレートなどで例示されるポリグリセリンモノステアレート類;ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及び、それらの誘導体が挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。水溶性滑剤(c)の配合量は、水溶性樹脂(a)と水溶性滑剤(c)の配合量の合計100重量部に対して、10〜90重量部、より好ましくは20〜80重量部である。水溶性滑剤(c)が10重量部未満では粘度が高くなり過ぎることや、ドリル穴明け時の潤滑性に問題が生じ易く、90重量部を超えると樹脂層が脆くなる。
【0011】
本発明で使用する樹脂組成物は、前記水溶性樹脂(a)、水溶性物質(b)、水溶性滑剤(c)を必須成分としたものであり、その混合方法は、工業的に使用される公知の方法であれば、特に制約はされない。具体的には上記樹脂組成物をロールやニーダー、またはその他の混錬手段を使用し、適宜加温或いは加熱して、均一な混合物とするか、その後、必要に応じて、水を含む溶媒に溶解もしくは分散させ樹脂組成物溶液とする方法などが例示される。
【0012】
本発明において使用されるシート状の基材は、金属箔、有機フィルム・シートなど公知のシート状の基材であれば、特に限定されないが、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔の材質としては、純度95%以上のアルミニウムが好ましく、具体的には、JIS-H4160に規定される、5052、3004、3003、1N30、1050、1070、1085などが例示されるが、純度99.3%以上のアルミニウムがより好ましい。基材に高純度のアルミニウム箔を使うことでドリルビットの衝撃の緩和や食いつき性が向上し、樹脂組成物によるドリルビットの摩擦熱による発熱の軽減効果と相俟って、ドリル穴明け時の位置精度と穴品質の大幅向上が可能となる。基材の厚さは、50〜500μmの範囲が好ましい。厚みが50μm未満では穴明け後の積層板にバリが発生し易く、500μmを超えると、発生する切り粉の排出が困難になる。また、これらアルミニウム箔に、予め厚さ0.1〜10μmの接着用皮膜が形成されているアルミニウム箔の使用が樹脂組成物との密着性の点から最も好ましい。接着用皮膜に使用される接着剤としては、ウレタン系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、ポリエステル系及び、それらの共重合体や、エポキシ系、シアネート系などの接着剤が例示される。
【0013】
本発明において、シート状基材に樹脂組成物層を形成させる方法としては、例えば、樹脂組成物を、適宜加熱溶融するか、溶媒に溶解もしくは分散させた液状として、シート状基材に塗工して樹脂組成物層を形成させる方法や、予め樹脂組成物層(シート)を形成した後に、シート状基材の少なくとも片面に樹脂組成物層(シート)を重ね、ロール等で加熱するか又は接着剤等により、貼り合わせる方法などがある。樹脂組成物層(シート)の製造方法としては、工業的に使用される公知の方法であれば、特に限定されない。具体的には、樹脂組成物をロールやニーダー、または他の混練手段を使用し、適宜加熱溶融して混合し、ロール法やカーテンコート法などで、離型フィルム上に樹脂組成物層を形成する方法や、樹脂組成物をロールやT−ダイ押出機等を使用し、予め所望の厚さの樹脂組成物シートに成形する方法などが例示される。
【0014】
また、樹脂組成物を、水を含む溶媒に溶解もしくは分散させた樹脂組成物溶液をシート状の基材に形成する方法については、工業的に使用される公知の方法であれば特に限定されない。具体的には、ナイフコーターやダイコーターなどを用いて、基材上に樹脂組成物溶液の塗工層を形成し、乾燥炉で熱風乾燥により溶媒を蒸発させる方法などが例示される。塗工層を形成したシート状の基材を乾燥し、基材に樹脂組成物層を形成する方法は、工業的に用いられる公知の方法であれば特に制約はない。具体的には、熱風乾燥を用いる場合が多いが、必要に応じて赤外線やマイクロ波、高周波加熱を併用する方法などが例示される。乾燥条件としては、乾燥機の大きさ・能力や、目的とする樹脂組成物層厚み、塗工速度などにもよるが、例えば、乾燥ゾーンが3箇所に分かれている場合には、乾燥炉内の温度とその際の基材温度との差があまり大きくならないように、入り口側から60℃、90℃、120℃と徐々に昇温させ、最終的には基材温度が100℃以上になるような条件などが例示される。
【0015】
本発明おいて、シート状の基材に形成される樹脂組成物層の厚さは5〜200μmの範囲が好ましい。樹脂組成物層厚さが5μm 未満では、潤滑性能不足から得られる穴品質が低下し、200μm を超えると、小径での穴明け時に樹脂成分のドリルビットへの巻き付き現象が改善されず、穴位置精度が悪化する。以上により、本発明のドリル穴明け用エントリーシートが得られる。
【0016】
本発明のドリル穴明け用エントリーシートは、プリント配線材料、例えば銅張積層板または多層銅張積層板をドリル穴明け加工する際に、プリント配線材料を1枚または複数枚を重ねたものの少なくとも最上面に、プリント配線材料に接するように配置し、ドリル穴明け用エントリーシートの樹脂組成物層面側から、ドリル穴明けを行うものである。以下に、実施例、比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンPP-15、第一工業製薬株式会社製) 50重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(商品名:ノニオンS-40、日本油脂株式会社製) 50重量部、キシリトール2重量部を、ニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、T−ダイ押出機を使用してPETフィルム上に押し出し、厚さ100μmの樹脂シートを得た。この樹脂シートを、予めポリエステル系接着剤(商品名:R820、セメダイン株式会社製)を5μm厚塗布した厚さ100μmのアルミニウム箔(材質:1070)の片面に、温度100℃に設定した誘電加熱ロールと加圧ロールを用いて貼り付け、総厚200μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。得られたドリル穴明け用エントリーシートを、厚さ0.4mm、両面12μm銅張積層板(商品名:HL832 0.4T/T、三菱ガス化学株式会社製)を2枚重ねた上面に配置し、下面に当て板(紙フェノール積層板)を配置し、ドリルビット:0.15mmφ(商品名:NEUL004S、ユニオンツール株式会社製)、回転数:150000 rpm、送り速度:12μm/rev.の条件で3000ヒットのドリル穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表1に示した。
【0018】
(実施例2)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンPP-15、第一工業製薬株式会社製) 30重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(商品名:ノニオンS-40、日本油脂株式会社製) 70重量部、コハク酸0.5重量部を、ニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、T−ダイ押出機を使用してPETフィルム上に押し出し、厚さ60μmの樹脂シートを得た。この樹脂シートを、予めポリエステル系接着剤(商品名:R820、セメダイン株式会社製)を5μm厚塗布した厚さ70μmのアルミニウム箔(材質:1N30)の片面に、温度100℃に設定した誘電加熱ロールと加圧ロールを用いて貼り付け、総厚130μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。得られたドリル穴明け用エントリーシートを、厚さ0.4mm、両面12μm銅張積層板(商品名:HL832 0.4T/T、三菱ガス化学株式会社製)を2枚重ねた上面に配置し、下面に当て板(紙フェノール積層板)を配置し、ドリルビット:0.12mmφ(商品名:MD J531Cユニオンツール株式会社製)、回転数:150000rpm、送り速度:12μm/rev.の条件で3000ヒットのドリル穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表2に示した。
【0019】
(実施例3)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(パオゲンPP-15) 40重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(ノニオンS-40) 60重量部を、攪拌槽において水180重量部に溶解した後、イソプロピルアルコールを80重量部添加し固形分27.8%、粘度14000センチポイズ(25℃)の樹脂溶液を得た。この水溶液にグリシノール1部とイノシトール1部を添加した。この樹脂溶液を、ダイコーターを用いて予めポリエステル系接着剤(R820)を5μm厚塗布した100μmのアルミニウム箔(材質:1085)の片面に330μm厚塗布し、炉長3m×3室のロールサポートタイプの乾燥炉、(設定温度:60-100-140℃)中を、上面に風速20m/minで熱風を吹き付ける条件で、0.1m/秒で通過させて乾燥し総厚200μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。得られたドリル穴明け用エントリーシートを使用し、実施例1と同様にして、ドリル穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表3に示した。
【0020】
(実施例4)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(パオゲンPP-15) 20重量部、ポリエチレングリコール(商品名:PEG20000、三洋化成株式会社製) 20重量部ポリオキシエチレンモノステアレート(ノニオンS-40) 60重量部を、攪拌槽において280重量部の水に溶解した後、イソプロピルアルコールを40重量部添加し、固形分23.8%、粘度7000センチポイズ(25℃)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に更にギ酸ナトリウム0.5部とペンタエリスリトール1部を混合した。この樹脂溶液を、ダイコーターを用いて70μmのアルミニウム箔(1070)の片面に43μm厚塗布し、炉長3m×3室のロールサポートタイプの乾燥炉(設定温度:60-90-120℃)中を、上面に風速15m/minで熱風を吹き付ける条件で、0.07m/秒で通過させ、総厚80μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。得られたドリル穴明け用エントリーシートを、厚さ0.2mm、両面12μm銅張積層板(商品名:HL832 0.2T/T、三菱ガス化学株式会社製)を4枚重ねた上面に配置し、下面に当て板(紙フェノール積層板)を配置し、ドリルビット:0.105mmφ(商品名: MDJ492B、ユニオンツール株式会社製)、回転数:160000 rpm、送り速度:5μm/rev.の条件で3000ヒットのドリル穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表4に示した。
【0021】
(比較例1)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンPP-15、第一工業製薬株式会社製) 50重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(商品名:ノニオンS-40、日本油脂株式会社製) 50重量部をニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、T−ダイ押出機等を使用してPETフィルム上に押し出し、厚さ100μmの樹脂シートを得た。この樹脂シートを、予めポリエステル系接着剤(商品名:R820、セメダイン株式会社製)を5μm厚塗布した厚さ100μmのアルミニウム箔(材質:1070)の片面に、温度100℃に設定した誘電加熱ロールと加圧ロールを用いて貼り付け、総厚200μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。このドリル穴明け用エントリーシートを、実施例1と同条件で穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表1に示した。
【0022】
(比較例2)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンPP-15、第一工業製薬株式会社製) 30重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(商品名:ノニオンS-40、日本油脂株式会社製) 70重量部をニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、T−ダイ押出機等を使用してPETフィルム上に押し出し、厚さ60μmの樹脂シートを得た。この樹脂シートを、予めポリエステル系接着剤(商品名:R820、セメダイン株式会社製)を5μm厚塗布した厚さ70μmのアルミニウム箔(材質:1N30)の片面に、温度100℃に設定した誘電加熱ロールと加圧ロールを用いて貼り付け、総厚130μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。このドリル穴明け用エントリーシートを、実施例1と同条件で穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表2に示した。
【0023】
(比較例3)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(パオゲンPP-15) 40重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(ノニオンS-40) 60重量部を、攪拌槽において水180重量部に溶解した後、イソプロピルアルコールを80重量部添加し固形分27.8%、粘度14000センチポイズ(25℃)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を、ダイコーターを用いて予めポリエステル系接着剤(R820)を5μm厚塗布した100μmのアルミニウム箔(材質:1085)の片面に330μm厚塗布し、炉長3m×3室のロールサポートタイプの乾燥炉、(設定温度:60-100-140℃)中を、上面に風速20m/minで熱風を吹き付ける条件で、0.1m/秒で通過させて乾燥し総厚200μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。このドリル穴明け用エントリーシートを、実施例3と同条件で穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表3に示した。
【0024】
(比較例4)
ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(パオゲンPP-15) 20重量部、ポリエチレングリコール(商品名:PEG20000、三洋化成株式会社製) 20重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(ノニオンS-40) 60重量部を、攪拌槽において280重量部の水に溶解した後、イソプロピルアルコールを40重量部添加し、固形分23.8%、粘度7000センチポイズ(25℃)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を、ダイコーターを用いて70μmのアルミニウム箔(1070)の片面に43μm厚塗布し、炉長3m×3室のロールサポートタイプの乾燥炉(設定温度:60-90-120℃)中を、上面に風速15m/minで熱風を吹き付ける条件で、0.07m/秒で通過させ、総厚80μmのドリル穴明け用エントリーシートを得た。このドリル穴明け用エントリーシートを、実施例4と同条件で穴明け加工を行い、穴評価を行った結果を表4に示した。
【0025】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0026】
(穴評価の方法)
評価はドリル穴明け加工を行った際の穴位置精度とドリルビットへの樹脂の巻きつき量の目視観察によった。
・穴位置精度:重ねた銅張積層板の最下板の裏側に明いたビット2本×3000穴/本=6000穴の位置について、指令座標とのズレを測定し、それぞれズレ量の平均と標準偏差および最大値を求めた。この操作を3回繰り返した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材に、
ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラメチレングリコール、ポリエーテルエステル、及びポリビニルアルコールからなる群から選択された1種もしくは2種以上の水溶性樹脂(a)と、
多価アルコール類、アミノ酸誘導体アルコール類、有機酸類および有機塩類からなる群から選択された1種もしくは2種以上の水溶性物質(b)、ならびに
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル類、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート類、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びそれらの誘導体からなる群から選択された1種もしくは2種以上の水溶性滑剤(c)
を含有する樹脂組成物層を形成したドリル穴明け用エントリーシート。
【請求項2】
該樹脂組成物層の厚さが5〜200μmである請求項1記載のドリル穴明け用エントリーシート。
【請求項3】
該シート状の基材がアルミニウム箔である請求項1又は2記載のドリル穴明け用エントリーシート。
【請求項4】
該アルミニウム箔が厚さ0.1〜10μmの接着用皮膜が予め形成されているアルミニウム箔である請求項3に記載のドリル穴明け用エントリーシート。

【公開番号】特開2011−183548(P2011−183548A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142100(P2011−142100)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2007−183124(P2007−183124)の分割
【原出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】