説明

ドルーゼン形成を阻害するため、およびドルーゼン関連障害を診断または治療するための組成物および方法

「ドルーゼン」として知られる細胞外沈着物は加齢のプロセスと共に眼の中に蓄積する。本発明は、ヒトまたは動物被験体でのドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成を阻害するための、あるいはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物に関連した疾患または障害を予防または治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2005年1月14日出願の米国仮特許出願第60/644,380号の優先権を主張し、その全体が参照によって明示的に本願に組み入れられる。
本出願はまた、a)2002年9月12日出願の米国仮特許出願第60/410,069号の優先権を主張する2003年9月12日に出願のPCT国際出願第PCT/US2003/28829号の371条国内ステップ出願である、2005年3月11日出願の係属中米国特許出願第10/527,678号、およびb)2003年9月12日出願の米国仮出願第60/502,326号の優先権を主張する2004年9月12日出願の係属中の米国PCT国際出願第PCT/US2004/029946号の一部継続出願であり、このような関連出願は全て参照によってそっくりそのまま明示的に本願に組み入れられる。
【0002】
本発明は概して医学治療のための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明はドルーゼンもしくはドルーゼン類似物の沈着を阻害するための、および/またはドルーゼンもしくはドルーゼン類似物の沈着に関連する疾患を治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
異常な折りたたみ構造の集合したタンパク質から成る不溶性の細胞外沈着物の形成は、多くの神経変性疾患の顕著な特徴である。特にタンパク質の異常な折りたたみ構造、および集合はアルツハイマー病およびパーキンソン病のような多くのアミロイド疾患の病因の基礎を成しており、それによって可溶性タンパク質モノマーが線維形成前オリゴマーに変換してタンパク質の誤った折りたたみのステップ的なプロセスが始まり、不溶性のアミロイド線維へと進行していくと考えられている。
【0004】
「ドルーゼン」として知られる細胞外沈着物は、加齢に伴いヒトの眼の中に蓄積することが知られている。ドルーゼンは検眼鏡検査により直接観察可能であり、相対サイズ、量、および形状に基づいて軟性ドルーゼンまたは硬性ドルーゼンのいずれかに分類可能である。ドルーゼンは、典型的には網膜色素上皮(RPE)の基底膜およびブルッフ膜の内側コラーゲンの直下に形成される。黄斑内のドルーゼンの過剰域または融合域は、老化随伴性の黄斑変性症(AMD)のような脈絡網膜障害の発生に関連する。
【0005】
ドルーゼンは複数の免疫調整物質を含有していることが示されている。老化随伴性の黄斑変性の病理発生では、ドルーゼンの形成は黄斑上または付近での一連の局所的な炎症事象から起こると信じられている。いくつかの態様では、これらの局所的な炎症事象はアルツハイマー病の発生に関係するとされる脳組織内の局所的炎症事象に類似している。
【0006】
最近のドルーゼンの特徴分析は、アミロイド沈着物と共通のタンパク質成分を明らかにした。しかしながらドルーゼンについて特徴的なアミロイド線維はまだ見つかっていない。アミロイド疾患では非線維性のオリゴマーが共通点であるという仮説が立てられている。異なるアミロイド性タンパク質とペプチドから成るオリゴマーは、最近開発された、共通構造を認識すると考えられる抗体によって検出可能である。重要なことは、オリゴマーが細胞毒性を示すことであり、このことはそれらが神経変性疾患の病因において何らかの役割を果たしていることを示唆する。
【0007】
アミロイドベータ(Aベータ、またはAβ)はアルツハイマー病の病因に重要な役割を果たしているペプチドであり、「アミロイド小胞」として知られるドルーゼンの下部構造である小胞の構成要素中に存在することも分かっている。このことから、Aβの沈着が網膜色素上皮の萎縮、ドルーゼン生合成、およびAMDのような脈絡網膜障害、ならびにアルツハイマー病に関与する局所的炎症事象で重要な役割を果たしているという学説がたてられている。
【0008】
ドルーゼン、またはドルーゼン類似の沈着物質は別の障害とも関連しているだろう。例えば現在の証拠は、ドルーゼンの存在と弾性線維症の発症との間に相関性があることを示唆している。弾性線維症は、皮膚内の弾性線維が過剰に形成される、および/または再配置する一群の状態を表すのに用いられる用語である。長い間太陽に曝されてきた皮膚は弾性線維症の兆候を示すことが予想されるが、太陽から保護されてきた体部領域の皮膚での弾性傷害の存在は血管新生AMDの発生と相関することが示されている。
【0009】
ドルーゼン類似沈着物は特定の腎臓疾患の病理発生にも関与している。膜増殖性のII型腎炎として知られる腎臓障害を患う患者の亜群では、腎臓基底膜近く(および脾臓のような幾つかの腎臓外の部位)に無定形の高電子密度沈着物が見出されている。これらの沈着物を形成する患者は、「高密度沈着物疾患」に罹病していると言われる。これらの沈着物はドルーゼンに類似しており、高密度沈着物疾患の患者は、AMDを高頻度で発症する。腎臓の高密度沈着物はコンゴーレッドでは染まらず、β−プリーツ線維成分を欠いている。それ故にそれらはアミロイドと別のものである。しかしながらドルーゼンと同様に、高密度腎臓沈着物はビトロネクチン、免疫グロブリン、および補体C5に対する抗体と免疫反応性である。まとめると、これらのデータは高密度沈着物が組成的にはドルーゼンと同一ではないものの、類似していることを示唆している。
【0010】
また、特発生心筋症に見られる透明な沈着物は、線維ではなくオリゴマーが蓄積する傾向を示すという意味でドルーゼンに類似している。このことはまた、眼のレンズ白内障についても言える。
【0011】
最近のデータはまた、ドルーゼンがアテローム性動脈硬化症に関係する可能性も示唆している。これに関連して、ドルーゼンは、脂質、ビトロネクチン、アポリポタンパク質E、カルシウム、および補体成分を含むアテローム斑にも含まれている多数の構成要素を含有している。また、頸動脈でのアテローム性動脈硬化の発生と進行したAMDとの間に臨床的な相関性が認められている。ドルーゼンとアテローム斑との間にはそれ以外の類似点もある。このように、少なくとも幾つかの例においては、ドルーゼンの形成とアテローム斑の形成に関与する共通の病理因子が存在するだろう。
【0012】
ドルーゼン関連タンパク質の正確な起源はまだ分かっていない。いくつかのドルーゼン構成要素(例えばアミロイドP成分およびプロトロンビンのような血漿タンパク質)は、脈絡膜血管の外に出て、RPEに隣接する細胞外空間に入り、そこでそれらは1または複数の、ドルーゼン発生に関係するリガンドと結合するだろう。他のドルーゼン構成要素は、局所網膜、RPE、および/または脈絡膜細胞から分泌されるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
出願者らは、特定の有毒なアミロイド類似オリゴマーがドルーゼンに含まれていることを明らかにした。本発明は、このような有毒オリゴマーを遮断または阻害することによってドルーゼン(およびおそらくは他のドルーゼン類似沈着物)の形成または生合成を阻害するための、ならびに/あるいはドルーゼンまたはドルーゼン類似物質の崩壊、分解、および/または浄化を促進するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明によれば、ドルーゼンの生合成、形成、および/または維持に関連する有毒アミロイド類似オリゴマーは、ヒトまたは動物被験体に、以下に記載、および組み入れられている米国特許出願第10/527,678号明細書(これはPCT国際特許出願第PCT/US2003/028829号および国際公開第2004/024090号パンフレットとして公開されたものに基づいている)に記載されている組成物を治療有効量で投与することで遮断または阻害可能である。これらの組成物は、アミロイドペプチド集合体上に存在する1種類以上の立体構造エピトープ、およびこのようなエピトープに対する抗体(例えば抗オリゴマー特異抗体)を含む。発明は更に、これら立体構造エピトープに結合する抗体だけでなく、このような抗体を作製する方法、ならびにこのような抗体を用いて疾患を検出、治療、および予防する、および/または潜在的治療法を特定(例えば薬物スクリーニング)するための方法も含む。
【0015】
更に発明によれば、ドルーゼンの生合成、形成、および/または維持に関連する有毒アミロイド類似オリゴマーは、ヒトまたは動物被験体に、以下に記載する、および参照によって明示的に本願に組み入れられている同時係属中のPCT国際特許出願第PCT/US2004/029946号(国際公開第2005/025516号パンフレットとして公開)に記載されている組成物を治療有効量で投与することで遮断または阻害可能である。これらの組成物は、アミロイド障害(例えばドルーゼン形成、老化随伴性黄斑変性等)に罹ったヒトまたは動物被験体でのアミロイド線維形成に関与する集合体またはオリゴマーの立体構造エピトープに特異的なポリクローナルおよびモノクローナル抗体(例えば抗オリゴマー特異抗体)、ならびにハイブリドーマおよびそれが産生するモノクローナル抗体を含む。また、このような抗体は、アルツハイマー病、黄斑変性、その他脈絡網膜病、およびその他様々なものに対するヒトまたは動物被験体の受動的免疫感作にも用いられる。モノクローナル抗体は、アミロイド疾患(例えば老化随伴黄斑変性)に関連する神経炎症を軽減するために、金または金含有化合物のような抗炎症剤と同時、または組み合わせて投与することができる。
【0016】
より更には、発明により、本発明の方法を用いて、ドルーゼンの生合成または形成に関係しているアミロイドオリゴマーを無害化する抗オリゴマー特異的抗体をヒトまたは動物被験体に投与することによって、ドルーゼンおよび/またはドルーゼン関連障害に対し受動的免疫感作を行うこともできる。あるいは、本発明の方法を用いて、ドルーゼンの生合成または形成に関係する有毒アミロイドオリゴマーを排出させる抗オリゴマー特異的抗体の形成をもたらす特異抗原をヒトまたは動物被験体に投与することによって、能動的免疫感作を行うことができる。以下に記載し、且つ親出願の第10/527,678号(PCT国際特許出願第PCT/US2003/028829号に基づき、WO2004/024090として公開されている)に記載されているこれらの抗原は、アミロイドオリゴマーを特異的に認識する立体構造依存的抗体の産生をもたらす特異的免疫反応を誘発する。
【0017】
より更には、発明により、ヒトまたは動物被験体でのドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成を阻害するための、または低下させるための、あるいはドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物と関連する疾患または障害を予防または治療するための方法が提供される。このような方法は、一般的には被験者に、治療有効量の少なくとも次の1つを含む組成物を投与する工程を含む:
i)ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与する集合体の立体構造エピトープ;および
ii)ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与する集合体の立体構造エピトープに結合する抗体。
【0018】
発明の少なくとも幾つかの応用では、集合体は約2〜約20個のサブユニットを含む。立体構造エピトープを被験体に投与する例では組成物はペプチドを含んでよく、少なくとも幾つかの態様に於いてはそのペプチドは下記配列番号1〜9に明記したアミノ酸配列を含んでもよい。抗体を被験者に投与する例では、抗体はポリクローナルでもモノクローナルでもよい。この応用のためのモノクローナル抗体は、マウスまたはその他哺乳動物を、以下記載するような立体構造的な束縛を受けている抗原を用いて免疫感作することによって作ることができる。発明の幾つかの態様では、被験体に投与される組成物は、ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与する集合体の立体構造依存的エピトープに対応する形状に立体構造的に束縛することができる。このような立体構造的束縛は、所望の形状を有する物体の表面に組成物を結合、または会合させるような好適な方法によって達成可能である。表面はフィルム、粒子、シート、タンパク質等の上にあってもよい。幾つかの例では、組成物はβ−プリーツシートを含むタンパク質の表面に束縛されている。β−プリーツシートは、遠く離れていてもよいタンパク質鎖の二部分間に水素結合が形成されているタンパク質に存在する二次構造である。
【0019】
より更には、発明によれば、抗オリゴマー特異的抗体をドラッグデリバリー剤として用いることができる。これに関しては、抗オリゴマー特異的抗体は、薬物またはその他治療薬に架橋または結合することができ、ドルーセンに直接、またはドルーゼン生合成またはドルーゼン形成に関係する有毒オリゴマーを狙った、薬物またはその他治療薬の送達を容易にできる。
【0020】
より更には、発明によれば、抗オリゴマー特異的抗体は、当技術分野で周知である技術を用いて追跡可能な標識(例えば蛍光プローブ)で標識可能である。これらの標識抗体は、標識抗体がドルーゼン生合成またはドルーゼン形成に関係する有毒オリゴマーに結合するように静脈内注射またはその他の方法で投与可能である。次に蛍光血管造影または当技術分野で知られているその他好適な技術を用いて、眼の中またはその他の脈管構造の中の部位にある、この有毒オリゴマーが存在する領域を視覚化、局在化、マッピング、および/または定量化することができ、それによってドルーゼン沈着が発生しそうな、および/または既に発生している場所を決定することができる。
【0021】
更には、発明によれば、ドルーゼンの生合成、形成、および/または維持に関連している有毒なアミロイド類似オリゴマーは、ヒトまたは動物被験体に治療有効量のアミロイドベータ由来ジスルフィドリガンド(ADDL)またはADDLに結合する抗体を投与することによって遮断または阻害することができる。このような抗体およびADDLの例は当技術分野で既知であり、参照によって本願に特に組み入れられる、公開されている米国特許出願第2003/0068316号明細書に記載されている。
【0022】
より更には、発明によれば、ドルーゼンの生合成、形成、および/または維持に関連している有毒なアミロイド類似オリゴマーは、ヒトまたは動物被験体に、治療有効量の、アミロイドベータの残基1〜7内のエピトープおよび/またはアミロイドベータの免疫原性断片を含むポリペプチドに結合する抗体、ならびに/あるいは参照によって特に本願に組み入れられている米国特許第6,787,637号明細書;第6,787,139号明細書;第6,787,138号明細書;第6,787,143号明細書;第6,787,144号明細書;第6,787,140号明細書;第6,787,523号明細書;第6,787,427号明細書;第6,750,324号明細書、ならびに公開米国特許出願第2004/0175394号明細書;第2004/0171816号明細書;第2004/0171815号明細書;第2004/0170641号明細書;および第2004/0166119号明細書に記載のアミロイドベータの形成を阻害するその他組成物を投与することによって遮断または阻害することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の更なる態様および要素は、以下記載の詳細な説明および実施例を読むことで理解されるだろう。
定義
本願で使用される場合、次の用語は以下の意味を有するものとする。
【0024】
用語「アジュバント」は、抗原と一緒に投与した時に抗原に対する免疫反応を高めるが、単独で投与した時には抗原に対し免疫反応を生じない化合物を指す。アジュバントは、リンパ細胞動員、Bおよび/またはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を含む複数のメカニズムにより免疫反応を高めることができる。
【0025】
用語「アミロイドベータ」、「Aβ」、または「Aベータペプチド」は、それぞれADに関連している低分子可溶性オリゴマー、線維形成前集合体、原線維、およびアミロイド沈着物を含むペプチドを指す。アミロイドAベータペプチドとしては、それぞれアミノ酸長が39、40、41、42、および43アミノ酸であるA39、A40、A41、A42、およびA43が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「アミロイドペプチド」は、アミロイドペプチド中間体、低分子可溶性オリゴマー、アミロイド線維、およびアミロイド斑を含む、アミロイド形状中に存在するペプチドである。
【0027】
用語「抗体」は、例えば完全長の抗体(例えばIgG抗体)または抗原結合部分(例えばFab、F(ab’)もしくはscFv断片)を含むがこれらに限定されない無傷の抗体およびその結合断片を含めるのに用いられる。典型的には、断片は、それらが由来した無傷の抗体と抗原への特異的結合を巡って競合する。抗体またはその結合断片は、随意選択的に化学的に結合または発現して、他タンパク質との融合タンパク質となることができる。
【0028】
「抗オリゴマー抗体」または「抗−オリゴマー」は、アミロイドペプチド集合体中間体とは結合するが、アミロイドペプチドモノマー、ダイマー、トリマー、またはテトラマーには特異的に結合しない抗体を指す。
【0029】
引用の要素を1つ以上「含む」組成物または方法は、具体的に引用されていない他の要素を含んでもよい。例えば、アミロイドAベータペプチドを含む組成物は、大型ペプチド配列の成分として、または複数の要素を含む組成物の一部として単離されたアミロイドAベータペプチドを含んでもよい。
【0030】
用語「エピトープ」または「抗原性決定基」は、Bおよび/またはT細胞が反応する抗原上の部位、あるいはそれに対し抗体が産生されるか、または抗体が結合する分子上の部位を指す。例えばエピトープは、エピトープを画定する抗体によって認識可能である。
【0031】
「直線エピトープ」は、アミノ酸一次配列が認識されるエピトープを含んでいるエピトープである。直線エピトープは、典型的には固有配列を有する少なくとも3個の、より一般的には少なくとも5個の、例えば約8〜約10個のアミノ酸を含む。
【0032】
「立体構造エピトープ」は、直線エピトープとは対照的に、そのエピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されるエピトープの成分を唯一規定するのものではないエピトープである(例えばアミノ酸の一次配列が、そのエピトープを画定している抗体による認識には必ずしも必要とされないエピトープ)。典型的には、立体構造エピトープは直線エピトープに比べ多くのアミノ酸を含む。立体構造エピトープの認識に関しては、抗体はペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折りたたまれてある三次元構造を形成すると、立体構造エピトープを形成している特定のアミノ酸および/またはポリペプチド主鎖が隣り合うようになって、抗体はエピトープを認識することができるようになる。エピトープの立体構造を決定する方法としては、例えばx線結晶学2次元核磁気共鳴分光法、ならびに部位指定スピンラベリングおよび電子常磁性共鳴分光法が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、その開示が参照によってそっくりそのまま本願に組み入れられている、グレン、イー モリス(Glenn E. Morris)編、「Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology」、第66巻(1996)を参照。
【0033】
「ドルーゼン類似」沈着物または「ドルーゼン類似」物質は、本願の中で参照される場合、それが、またはその生合成がオリゴマーの産生を含み、且つそのようなオリゴマーの生合成、形成、および/または維持が、アミロイドペプチド集合体上に見出される1つ以上の立体構造エピトープ、ならびに/あるいはそのようなエピトープに対する抗体(例えば抗オリゴマー特異抗体)によって遮断または阻害可能な細胞外タンパク質の沈着物である。このようなドルーゼン類似沈着物としては、II型膜性増殖性糸球体腎炎に関連して腎臓基底膜近くにある高電子密度沈着物、および弾性線維症に関連する真皮または皮膚沈着物が挙げられるが、もとよりこれらに限定されない。
【0034】
用語「免疫学的反応」または「免疫反応」は、レシピエントの患者において、アミロイドペプチドに対する有益な液性(抗体介在)および/または細胞性(抗原特異的T細胞またはそれらの分泌産物によって仲介される)の反応の発生に関係する。このような反応は、モノクローナル抗体の投与によって誘発される能動的な反応でも、または抗体または初回抗原刺激を受けたT細胞の投与によって誘発される受動的な反応でもよい。細胞性免疫反応は、クラスIまたはクラスIIMHC分子と一緒にポリペプチドエピトープを提示することによって誘発されて、抗原特異的CD4Tヘルパー細胞および/またはCD8細胞傷害性T細胞を活性化する。反応はまた単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、星状細胞、小神経膠細胞、好酸球、または生得免疫のその他成分の活性化も含む。
【0035】
「免疫原」は、場合によってはアジュバントと組み合わせて被験体に投与されることによって、それ自体に対する免疫反応を誘導することができる。
「単離された」とは、精製されている、実質的に精製されている、または部分的に精製されていることを意味する。「単離された」とは、自然に起こる環境以外の環境での存在も意味する。例えば、自然発生時に抗体が通常見出される全血血清中に存在しない抗体は単離された抗体である。
【0036】
「低分子集合体」、「低分子アミロイド集合体」、「低分子オリゴマー」、および「低分子可溶性オリゴマー」は、アミロイドペプチドが4〜5以下のペプチドの集合体中に存在することを指す。一つの具体例では、低分子Aは、ADとの関連が見出された低分子可溶性オリゴマーを指す。
【0037】
用語「患者」は、治療的、予防的、実験的、または診断的処置を受けるヒトまたは動物の被験体、あるいは自然に発生したかもしくは実験的に誘導された疾患を有するか、または疾患に罹りやすいヒトまたは動物(被験体および/もしくは実験動物モデルを含む)を含む。
【0038】
「線維形成前集合体」、「ミセル集合体」、「高分子集合体中間体」、「高分子アミロイドペプチド集合体」、「高分子可溶性アミロイドペプチド集合体」、「アミロイドペプチド集合体」、「可溶性集合体中間体」、「アミロイドオリゴマー中間体」、「オリゴマー中間体」、および「オリゴマー集合体」もしくは簡単に「中間体」は、4つ以上の個別ペプチドまたはタンパク質モノマー、例えば5つ以上のペプチドまたはタンパク質モノマーを含む集合体を指す。最大サイズの線維形成前集合体は、線維形成を導く球状構造またはミセルおよび針状のミセルを含む。線維形成前集合体の分子量は、約10kDa〜約100,000,000KDaの範囲内、例えば約10kDa〜約10,000,000または1,000,000KDaの範囲内でよい。しかしながら、このサイズの範囲は限定的なものと解釈してはならず、線維形成前集合体は分子量の範囲によって規定されない。
【0039】
「輪状原線維」は、3〜10個の球状オリゴマーサブユニットが、電子または原子力顕微鏡写真で小孔として認められる中空中心を持つ輪状または環状の様式に配置されている線維形成前集合体の特別なサブセットである。
【0040】
「原線維」は、アミロイドAペプチドを含んで成る球状構造物を含む、曲線構造を形成する球状構造物の糸となり現れる線維形成前集合体である。
2存在物間の「特異的結合」は、少なくとも10、10、10、10−1、または1010−1の親和性を意味する。特異的結合には10−1より大きな親和性が好ましい。
【0041】
用語「実質的に同一」とは、2つのペプチド配列が、例えば初期設定のギャップ加重を用いたプログラムGAPまたはBESTFITにより最適に並置された時に、少なくとも65パーセントの配列一致率、例えば少なくとも80パーセントもしくは90パーセントの一致率、または少なくとも95パーセント以上の配列一致率、例えば99パーセント以上の配列一致率を共有することを意味する。
【0042】
アラインメント中の同一でない残基位置は、保存的なアミノ酸置換、即ち同一分類または群の別のアミノ酸によるアミノ酸の置換によって異なることが好ましい。幾つかのアミノ酸は、次のように群分できる:群I(疎水性側鎖):leu、met、ala、val、leu、ile:群II(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;群III(酸性側鎖):asp、glu;群IV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;群V(鎖の回転に影響する残基):gly、pro;および群VI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。非保存的置換は、これら群類の一つのメンバーを別の分類のメンバーで交換することを含んでよい。
【0043】
配列の比較では、典型的には一つの配列を基準配列として、試験配列をこれと比較する。配列比較アルゴリズムを用いる時は、試験配列と基準配列がコンピュータに入力され、必要であればサブ配列調整をデザインし、配列アルゴリズムプログラムのパラメータをデザインする。そうすれば配列比較アルゴリズムを用いて、デザインしたプログラムパラメータに基づいて基準配列に対する試験配列の配列同一パーセントを計算することができる。配列比較の最適アラインメントは、例えばスミス&ウォーターマン(Smith & Waterman)、「Adv.Appl.Math.」第2巻、p.482(1981)の局所相同性アルゴリズム、ニードルマン&ワンチ(Needleman & Wunsch)、「J.Mol.Biol.」第48巻、p.443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、ピアソン&リップマン(Pearson & Lipman)、「Proc.Natl.Acad.」第85巻、米国、(1988)p.2444の類似法、コンピュータを使ったこれらアルゴリズムの手段(ウィスコンシン・ジェネティクス・ソフトウェア・パッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)、マディソン科学博士(Science Dr., Madison)、米国ウィスコンシン州(WI)、p.575または視覚的な検査によって実施できる。
【0044】
配列同一パーセントまたは配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの一つの例はBLASTアルゴリズムであり、これはアルトシュール(Altschul、et al.,)らの「J.Mol.Biol.」第215巻、(1990)p.403〜410に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手可能である。一般的には初期設定のプログラムパラメータを用いて配列を比較することができるが、カスタマイズしたパラメータも使用することができる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは初期設定値として、ワード長(W)3、予想値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用しており、例えば「Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.」、第89巻、米国(USA)p.10915(1989)を参照。保存的置換は、同一分類のアミノ酸間の置換を含む。
【0045】
「治療薬」または「治療法」は、患者の疾患の治療または予防に有用な物質である。発明の治療薬は、典型的には実質的に純粋である。このことは、薬剤が典型的には少なくとも約50%w/w(重量/重量)の純度であること、ならびに治療の効力を妨害するタンパク質および汚染物が実質的に存在しないことを意味する。薬剤は少なくとも約80%w/w、より好ましくは少なくとも90%w/wまたは約95%w/wの純度である。しかしながら通常のタンパク質精製技術を用いれば、99%w/w以上の均一ペプチドを製造することができる。
【0046】
AMDとドルーゼンとの相関関係
ドルーゼンの存在とAMDとの間の相関関係は確立しているが、ドルーゼン形成の基本的原因ならびにRPEおよび光受容体細胞変性におけるその役割については解明されていない。
【0047】
最近の証拠は、ドルーゼン形成とAMDがアルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)のようなアミロイド疾患と類似性を持つことを示唆している。AMDと同様に、アミロイド疾患は加齢および沈着物の形成と強く相関している。更にこれらアミロイド沈着物は広範囲の脂質およびタンパク質を含んでおり、その多くはドルーゼンの中にも存在している。アミロイド沈着物とドルーゼンに共通する構成要素としては、ビンブラスチン、アミロイドP、アポリポタンパク質E、およびアルツハイマー病のアミロイド斑に関連しているアミロイドAベータ(Aβ)ペプチドのようなタンパク質が挙げられる。ヒトではAPOEA対立遺伝子がアルツハイマー病と強い正の関連性を示している。興味深いことに、トランスジェニックマウスでのAPOEA対立遺伝子の発現は、ヒトのAMDに関連する病理に似た眼の変化を誘発した。これに加えてアミロイド沈着物ならびにドルーゼン中には急性期反応物質、補体成分、免疫調整因子、およびその他炎症メディエイターが存在しており、AMDおよびアミロイド疾患において炎症経路が共通の役割を果たしている可能性が示唆されている。AMDの眼だけでなく老化した眼についても、小型「硬性」ドルーゼンから大型「軟性」ドルーゼンまで様々なサイズおよび形状のドルーゼンの中に、C5、C5b9、およびC3断片のような補体成分の存在が観察されていることは特に注目に値する。これらの観察は、補体活性化がドルーゼンの生合成に関係しているという考え方に一致する。補体因子Hの多形がAMDのリスク因子を上昇させるという最近の発見と共に、この疾患の病因における炎症の役割に今大きな関心が集まっている。
【0048】
上記の共通する類似性にも関わらずAMDはこれまでアミロイド疾患としては分類されてこなかった。とりわけ大きな違いは、古典的なアミロイド疾患が典型的には大量のアミロイド線維を示すことである。例えばADの例では、特徴となっている斑は主に線維性のアルツハイマーAβペプチドから成るが、一方PDに見られるレービー小体はα−シヌクレイン線維に富んでいる。これらアミロイド線維は、細長い、幅6〜15nmの、長さ不定の棒状構造物であり、共通の交差β構造を特徴としている。それらに関係する構造的特徴に加えて、アミロイド線維はチオフラビンTおよびコンゴーレッド染色性といった特徴的な色特性も示す。ドルーゼンはチオフラビンTおよびコンゴーレッドで染まるが、コンゴーレッド染色したアミロイド線維にしばしば見られる特徴的な青リンゴ色の複屈折は存在しない。ドルーゼンおよびサブRPE沈着物にはAβペプチド、トランスサイレチン、免疫グロブリン軽鎖、およびアミロイドAのようなアミロイドタンパク質を見出すことができるが、電子顕微鏡を使った研究は真性アミロイド線維の存在を示す証拠をほとんど示していない。これらの観察がAMDを古典的なアミロイド疾患として見ることを妨げている。
【0049】
アミロイド線維の形成は、モノマータンパク質が様々なオリゴマー型βシートを含む構造体となる立体構造の再構成を行い、最終的にアミロイド線維に変換される、タンパク質が誤って折りたたまれる多ステップの分子的カスケード事象である。様々なアミロイド疾患に関する多くの研究から、アミロイド線維ではなく線維形成前オリゴマーが主要な有毒作用物質らしいことが推測されている。この考えは、アミロイド疾患の病因としてアミロイド線維は必要ないことを証明した動物モデルによって裏付けられている。これらの結果は、顕著なアミロイド線維蓄積を示さずに病因性の線維形成前オリゴマーが存在する別の疾患が見つかる可能性を示唆している。最近の証拠は、デスミンが関係する心筋症がこのような疾患である可能性を示唆している。
【0050】
ドルーゼン中の線維形成前アミロイドオリゴマーの存在
出願者らは、実験を行ってドルーゼン内に線維形成前アミロイドオリゴマーが存在しているか明らかにした。この疑問に答えるために、出願者らは最近開発された、線維形成前オリゴマーには結合するが、未変性もしくは線維性タンパク質には結合しない「抗オリゴマー」抗体を使用した。この抗体は当初アルツハイマーAβペプチドに対して作られたものであるが、α−シンクレイン、島アミロイドポリペプチド、プリオンペプチド、ポリグルタミン、リソチーム、ヒトインスリン、および最近証明されたように、酵母プリオンタンパク質といった様々な他アミロイド原性タンパク質に由来する有毒オリゴマーも検出することが示されている。このことから、様々なタンパク質に由来する線維形成前アミロイドオリゴマーが共通の構造的特徴を持つことが示唆されている。重要なことは、この抗体がオリゴマー誘導毒性に対して強い保護作用も示すことであり、オリゴマーが実際に有毒種であることを示している。
【0051】
この汎用抗アミロイドオリゴマー抗体の有用性は、免疫細胞化学研究からも確立されている。例えば、この抗体を用いてAD疾患脳内に線維形成前オリゴマーが存在することが証明されている。これら有毒オリゴマーは老人斑に近接して見出されているが、その局在は線維斑の領域であることも示されており、このことはおそらくアミロイド線維沈着の初期ステップであることを示唆しているのだろう。更には、デスミン関連心筋症に関する上記の研究では、同じ抗体を免疫細胞化学研究に用いてアミロイドオリゴマーを確認している。
【0052】
本研究では、抗オリゴマー抗体を使用することによってドルーゼンを含むドナーの眼の中に有毒なオリゴマーを検出することができたが、ドレーゼンのないコントロールの眼では検出できなかった。アミロイドオリゴマーの存在は、AMDの基礎病因がアミロイド疾患の基礎病因と関係している可能性を示唆している。
【0053】
免疫蛍光顕微鏡は、ドルーゼンを含む眼の異なる領域にアミロイドオリゴマーの存在を示した。抗体反応性はドルーゼンの中心で最も高頻度に見られたが、本願では、蛍光シグナルは典型的にはブルッフ膜内側のコラーゲン層に近接して集中しており、明瞭な球状のサブドメインを形成している。我々がアミロイドオリゴマーコアと呼ぶこれらの構造は、ドルーゼンのサイズが変わる場合でも、サイズは大きく変動しなかった。最も小さいドルーゼン(<20μm)では、ドルーゼンの中身はアミロイドオリゴマーコアが占めていた(図1Aおよび図1B)。大型のドルーゼンでは、コアは直径〜15μmを保っており、それらが「硬性」ドルーゼン(図1C〜F)の外観を持つか黄斑軟性ドルーゼン(図1GおよびH)の外観を持つかにかかわらずブルッフ膜に境を接するという同一の空間的関係を維持していた。これらのデータは、オリゴマーコアがドルーゼン生合成中の初期に起こる可能性、およびそれらが、ドルーゼンが大型化しても成長しないことを示唆している。
【0054】
アミロイドオリゴマーコアの大きさは制限されると思われるが、ドルーゼン当たりのコアの数は変化した。特に大型のドルーゼンでは、複数のアミロイドオリゴマーコアを含むことが観察されることがあった。これはこれらのドルーゼンがより小さなドルーゼンの癒合から形成されていることを示唆している。しかしながら全てのドルーゼンがアミロイドオリゴマーコアを含むわけではない。しかし、大型のドルーゼンに対しアミロイドオリゴマーコアのサイズが小さいことを考えれば、多くのコアは断面の外にあるために検出されなかったと思われる。表1は、19例の個人の眼より得た結果をまとめている。驚くべき事に、ドルーゼンを含む全ての眼については抗オリゴマー抗体の反応性が観察されたが、ドルーゼンを含まない、年齢を一致させたコントロールの眼または若年ドナーの目について、反応性は観察されなかった。これらのデータは、アミロイドオリゴマーの存在とドルーゼンとの間に直接の相関関係があることを明らかにしており、ドルーゼン生合成に於いてオリゴマーコアがある役割を果たしている可能性を示唆している。
【0055】
ドルーゼン内にアミロイドオリゴマーコアが存在すること以外に、幾つかの例、特にブルッフ膜の肥厚が観察されている(図2Cおよび図2D)例では、ブルッフ膜および基部の直線状沈着物中ブルッフ膜下、(図2E〜H)にオリゴマーの染色が観察されている。RPE(網膜色素上皮)においてはしばしば染色が観察された(図2I)。神経網膜(データ未表示)には染色は観察されなかった。このことから、抗体反応性もまたAMDの特徴である別の病因的変化に関連している。
【0056】
抗オリゴマー抗体の特異性を図2(IおよびJ)に示すが、これは同一ドルーゼンから得た一連の切片である。このドルーゼンは抗オリゴマー反応性を示す点を複数含んでいた。切片を一次抗体なしでインキュベーションするか(データ未表示)、または抗体を前もってAβ1−40ペプチドから作成した線維形成前オリゴマーとインキュベーションしておくと染色は見られなかった(図2J)。我々は神経網膜から、またはドルーゼン/RPE/ブルッフ膜を含む基礎組織から調製した組織ホメジェネート中の抗オリゴマー反応性の特異性をさらに試験するために、ELISAを実施した。試験管内合成した線維形成前Aβ1−40オリゴマーを陽性コントロールとして用いた。図3Aに示すように、オリゴマー特異的抗体が存在する時にはAβ1−40オリゴマーの量を増やすと用量依存的な反応が観察されたが、抗体を省いた時には反応は見られなかった。神経網膜から、およびドルーゼン/RPE/ブルッフ膜を含む組織から調製した抽出物についても抗体反応性を比較した(図3B)。ドルーゼン含有組織から調製した抽出物については用量依存的な反応性が観察されたが、一次抗体が存在しない場合には反応性は観察されなかった。同一ドナーの眼の神経網膜から調製した抽出物については、反応性はほとんど観察されなかった。このことから、ドルーゼンに見られる陽性シグナルは、アミロイドオリゴマーに極めて特異的であると思われる。
【0057】
従って、示したデータはアミロイドオリゴマーがドルーゼン内に存在するという意見を裏付けている。レーザー走査共焦点顕微鏡を使って切片を高倍率で更に調べると、アミロイドオリゴマーコアの中心に向かって密度が増加する、小さな小胞構造物の斑状パターンが明らかになった(図4A)。時に斑状パターンはRPEに向かって漸減する(図4B)。別の例では、小胞構造物は、ブルッフ膜の層を貫通するのが観察されている(図4C)。まとめると、これらのデータはアミロイドオリゴマーがRPE細胞、ドルーゼン、および脈絡膜の間を行き来できることを示唆している。
【0058】
コアの小胞特性を確認するために、我々はまず間接免疫蛍光を用いてアミロイドオリゴマーコアを含むドルーゼンを特定した。次に、免疫金標識、続いて電子顕微鏡向けに隣接する連続切片を作製した(図4D)。金粒子の分布から判断して、これらの研究は実際にアミロイドオリゴマーが小胞構造物と関連していることを立証した。さらにこれら小胞構造物はブルッフ膜の近くに集中しておいるが、同様の構造はRPE近くにあるドルーゼン先端部に於いても標識されることがあった(データ未提示)。
【0059】
アミロイドオリゴマーコアの構造は幾つかの点で樹状細胞突起に類似していると思われる。抗HLA−DR(赤、テキサスレッド)と一緒に抗オリゴマー抗体(緑、FITC)を用いた二重染色を行い、免疫反応性が重複して存在しているか確定した(図5A〜D)。ドルーゼンの中(図5B)またはブルッフ膜の下に強いHLA−DR反応性を見ることができ、その場合、反応性はドルーゼンを貫通してオリゴマーコアに近接しており(図5C)、コアを完全に取り囲むことさえあった(図5D)。いくつかの例では、HLA−DRの反応性はアミロイドオリゴマーコアに近接していると思われる(図5B)。よく調べると、免疫蛍光シグナルは重複していないことは明らかである(図CおよびD)。従って、アミロイドオリゴマーコアは、前述したHLA−DR陽性樹状細胞突起とは別の構造物である。
【0060】
ドルーゼンの切片を二重染色し、オリゴマーコアおよびドルーゼンの主要構成要素である急性期タンパク質のビトロネクチンを視覚化した(38)(図5E〜H)。ドルーゼンは全て、ビトロネクチンについて陽性に染色されたが、オリゴマーコアはドルーゼンのサブセットにだけに存在した(例えば図5F)。ビトロネクチンは不均一な標識パターンを示す傾向があった。オリゴマーコアとビトロネクチンとの両方について陽性に反応したドルーゼンでは、それらのシグナルの重複は観察されなかった。オリゴマーコアがアミロイドAβ(A)から組立てられたものか確認するために、ドルーゼンを含有した切片をこれら2種類の構成要素について同時染色した(図5I〜L)。殆どのドルーゼンはAβアッセンブリーかオリゴマーコアのどちらかを含んだが、両方は含まなかった。従来の報告に一致して、Aβ反応性はドルーゼン内の小胞構造物に付随した(図5Kおよび図5L)。両方の抗体と反応した一例のドルーゼンでは、蛍光シグナルは重複して存在してはいなかった:アミロイドオリゴマーの反応性はRPEに付随したが、Aβの反応性はドルーゼン内の球状構造物を修飾した(図5L)。このことから、アミロイドオリゴマーは多くの既知ドルーゼン構成要素とは重複して存在していないと思われる。
【0061】
様々なタイプの組織または培養細胞がアミロイド集合体の毒性に対し多様な感受性を示す。我々は、アミロイドオリゴマーが、ドルーゼンを含んだ眼の中で互いを近接させた場合にRPE細胞に対し有毒であるか検証した。図6は、Aβ1−40から作製した可溶性オリゴマーがヒトのRPE初代培養細胞に対し実際に有毒であることを示している。この毒性は、A11抗オリゴマー抗体をインキュベーション混合物に入れると強く遮断された。従って、RPE細胞に近接したアミロイドオリゴマーの存在は、ドルーゼンを生合成中の細胞またはAMDのこれら細胞の生理に負の影響を及ぼすだろう。

アミロイド原性タンパク質またはペプチドから作られる線維形成前のオリゴマー構造物は、アミロイド疾患の病理発生に関与すると考えられる。このような構造物は、最近開発された立体構造特異的ではあるが、配列特異的ではない抗体によって、組織切片中に原位置で検出可能である(24)。この抗体を使用して、我々はドルーゼンを含む眼および萎縮性AMDを伴うと臨床診断された眼にアミロイドオリゴマーが存在することを証明した(表1)。重要なことは、ドルーゼンが存在しないコントロールの眼には反応性が観察されないことであり、アミロイドオリゴマーが疾患特異的プロセスであることを示唆している。線維形成前のアミロイドオリゴマーは初代ヒトRPE培養細胞に対し毒性であることが証明されたことから、それらが疾患プロセスでのそれらの消滅に関与している可能性がある。従って、AMDおよびアミロイド疾患は、タンパク質の類似する異常な折りたたみ構造を共有すると思われ、共通の病理発生経路を共有している可能性がある。
【0062】
一つの共通点は、球状のAβ会合体ならびにAD斑に共通して見られる他の炎症前タンパク質がドルーゼン内にも存在しているという発見である。具体的には、電子顕微鏡で観察した時に単一のドルーゼンはAβ構造物を含まないことも、または直径0.25〜10μmの範囲の、高度に組織化された同心層を示すAβ構造物を大量に含むこともあると報告されている。このことから、文献は、そのサイズ、形状、および分布の違いから、オリゴマー関連小胞とは構造的に異なるAβ会合体を記載している。実際、我々のデータは、それらがドルーゼン内で重複して存在しないことを示している。しかしながら、Aβモノマーがアミロイド線維に変形した時には、Aβのエピトープがオリゴマー構造物内に隠されていることを指摘しておくことは重要である。それ故に、我々はドルーゼン中のオリゴマーコアがAβから成っている可能性を排除することはできない。別のドルーゼンのサブドメインは、Arachea hypogea凝集素(PNA)反応性を示すコア類似構造物を含む。これらの構造物は、本願に記載のオリゴマー構造物にある程度類似しているが、それらは直径が5〜38μmの範囲であり、一方アミロイドオリゴマーコアは典型的には10〜15μmである。それ故に、本願で論じるオリゴマー構造物は、これまで記載されてきたドルーゼン内の下部構造とは明らかに異なると思われる。ドルーゼン内のオリゴマー構造物の組成はまだ決定されておらず、現在研究が行われている。
【0063】
出願者らのデータは、AMDおよびアミロイド疾患が、ドルーゼンにアミロイド線維は観察されていないものの、共通の病因経路を共有している更なる証拠を提示している。これまでに線維が存在しない状況についてアミロイドタンパク質関連毒性が観察されている。例えばADのトランスジェニックマウスモデルでは、ヒト野生型β−アミロイド前駆体タンパク質の過剰発現が学習不足、およびアミロイド斑形成を伴わないAβ沈着を招いた。PDのマウスモデルでは、野生型α−シヌクレインの過剰発現が運動異常およびα−シヌクレインを含有する非線維性封入体の形成を招いた。2型糖尿病の動物モデルであるヒト島アミロイドポリペプチドを発現しているトランスジェニックラットでは、膵臓島細胞のアポトーシスとアミロイド形成とは相関しなかった。これらの結果は、アミロイド線維の存在が病因の必要条件ではないことを示しており、有毒な線維形成前オリゴマーが細胞消失の基礎原因であることを暗示している。従って、AMDとデスミン関連心筋症とは、おそらく複数存在する、アミロイド疾患に関係するが顕著なアミロイド線維の沈着をまだ示していない疾患のうちの2つに過ぎないかもしれない。
【0064】
ドルーゼンについてアミロイド線維の検出が困難な理由は明らかではないが、オリゴマーおよび線維の回転速度が重要だろう。上記したようにアミロイド線維形成はステップ的なプロセスであり、オリゴマーおよび線維の全体の収率は各ステップの基礎動態に依存している。このことから、線維沈着の程度が低いことを説明する可能性のある説明として、線維形成の速度が遅いことと、および排除速度が速いという2つが考えられる。アミロイド線維形成の速度は実験条件によって大きく左右されることが知られており、且つ生化学データは、適切な条件の下では、オリゴマーの安定性が、それらが線維に変換する前長期間維持することができることを示唆している。また、オリゴマーが線維に変換することができるようになる前にドルーゼンの外に出て行く可能性も考えられる。本研究はこのような浄化の直接的な証拠を提供していないが、オリゴマー構造物がブルッフ膜を貫通できることがこの可能性を示唆している。
【0065】
ドルーゼン内のHLA−DR反応性に関する最近の免疫細胞化学データは、ドルーゼン内に樹状細胞突起が存在することを示唆している。樹状細胞は、異物を取り込み、且つ原理的にはアミロイドオリゴマー排除を容易にする抗原提示細胞である。実際、我々の研究は、Hagemanらの報告と同様にしてHLA−DRの存在がドルーゼン内の構造を活性化することを示している。これら推定樹状細胞の突起は、アミロイドオリゴマーよりもドルーゼンの中と周囲に多く見られるが、アミロイドオリゴマーコアに近接して見出されることもある。しかしながらそれらは重複して存在することはないと考えられる。
【0066】
出願者のデータは、数を増しつつあるAMDとアミロイド疾患との間の類似点を明らかにする証拠のリストを追加するものである。炎症前タンパク質がこれらの疾患に関連する細胞外沈着物中に同定されたことは特に意義深い。AMDの眼だけでなく高齢者の眼にも存在する特定のRPE細胞、小型ドルーゼン、および大型の軟性ドルーゼンの中に補体活性化を示す証拠が観察されている。この観察から、ドルーゼンの生物発生において、異常な免疫反応が何らかの役割を果たしているという仮説が立てられた。重要なことは、補体活性化の重要制御因子である補体因子Hの多形が、AMDの重要なリスク因子であることが明らかにされたことである。この発見によって、AMDの病因における補体活性化の役割に注目が集まっている。免疫反応の活性化する因子はなにか?我々は、本願で類似の分布を示すドルーゼン、RPE細胞、および基底沈着物内にアミロイドオリゴマーが存在することを報告している。これらのオリゴマーが細胞に対し毒性を示すことでアミロイド疾患の病因に関係していることは注目すべきことである。RPE細胞に近接してオリゴマーが存在することが、それらの細胞の機能を障害し、補体カスケードを活性化してドルーゼンの形成を招いている可能性がある。
【0067】
まとめると、ドルーゼン内のアミロイドオリゴマーの存在は、AMDとアミロイド疾患とに、タンパク質の異常な折りたたみ構造と病理発生病因に関して共通点があることを示唆している。AMDおよびデスミン関連心筋症は、成熟したアミロイド線維ではなくオリゴマー中間体が蓄積する新しいアミロイド疾患分類の最初の例である可能性が高い。
【0068】
ヒト組織。無傷ヒトドナーの眼はオレゴンライオンズサイト&ヒアリングファウンデーション(Oregon Lions Sight & Hearing Fundation)、米国オレゴン州ポートランド(Portland)およびアルツハイマー・ディジーズ・リサーチセンター、ニューパソロジー・コア(Alzheimer Disease Research Center Neuropathology Core)南カリフォルニア大学(University of Southern California)より得た。下表1に示すように19名の個人の眼を調べ、その内の4例に、AMDの臨床歴が記録されていた。
【0069】
【表1】

表1にまとめたデータは、オリゴマーの反応性がドルーゼン含有組織に特異的であることを示している。19名のドナーの眼全体について、共焦点顕微鏡を使ってアミロイドの存在についてスクリーニングした。オリゴマー反応性はドルーゼンが存在するときのみ観察された。年齢を一致させた、ドルーゼンが存在しないコントロールの眼、またはドルーゼンを含まない若年者の眼にオリゴマー反応性は観察されなかった。
【0070】
眼は全て4℃に保ち、検視後24時間までに処理した。固定を、抗オリゴマー特異抗体を用いた抗原検出を妨害する可能性があることから避けた。眼球前極を取り除いた後、網膜を剥がし、解剖顕微鏡(MZ125、Leica(商標)、ドイツ(Germany)を使ってドルーゼンの存在について眼球の後極を調べた。ドルーゼンを含む全ての領域を対象とした。コーティングしたステンレス鋼製のカミソリの刃を使って、組織を1cm x 0.5cmの長方形に切断し、O.C.T.(Tissue−Tek、サクラファインテック(Sakura Finetich)、米国カリフォルニア州トランス(Torrance、CA)に包埋した。
【0071】
共焦点免疫蛍光顕微鏡。凍結包埋組織をクリオスタット(Leica(商標) CM 3050S、ドイツ(Germany)を使って−20℃で切片化した。厚さ8〜10μmの凍結切片を前もってきれいにしておいたsuperfrost(商標)プラススライド(VWRサイエンティフィック(VWR Scientific)、米国ペンシルベニア州ウェスト・チェスター(West Chester、PA)の上に集め、30分間風乾し、−20℃に保管した。抗オリゴマー特異的抗体を用いた免疫細胞化学研究は前述したとおりに実施した。簡単に説明すると、切片をブロッキング液(2%BSAおよび2%ヤギ血清を含有するリン酸緩衝化食塩水)の中で一晩、4℃でブロッキングし、翌日アフィニティー精製した抗オリゴマー特異抗体(1.6mg/ml)と1時間、室温でインキュベーションした。次に切片を洗浄し、フルオロセイン標識ヤギ抗ウサギ抗体(1:100、ベクターラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国カリフォルニア州バーリンゲーム(Burlingame、CA)と1時間、室温でインキュベーションした。オリゴマーおよびHLA−DR、またはビトロネクチンおよびAβのようなドルーゼン構成要素を検出するために、切片を上記通りに処理し、マウス抗ヒトHLA−DR抗体(0.5mg/ml、ファーミンゲン(Pharmingen)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego、CA)、マウス抗ビトロネクチン抗体(1:200、Biosource)、またはAβ、ペプチドの残基17〜24に対するものであるマウス抗Aβ、抗体(1:100、4G8、サイネット・ラボラトリーズ(Signet Laboratories)とインキュベーションした。免疫染色した切片のデジタル画像を、LSM510 Zeissレーザー走査共焦点顕微鏡(ソーンウッド(Thornwood)、米国ニューヨーク州(NY)を使って得た。
【0072】
電子顕微鏡。最初に免疫蛍光を使って線維形成前オリゴマーを凍結切片について同定した。オリゴマーを含むことが分かったものの前後の連続切片を抗オリゴマー抗体とインキュベーションし、続いて5nmの金標識ヤギ抗ウサギ抗体(テッド・ペラ(Ted Pella)、米国カリフォルニア州レッディング(Redding、CA)とインキュベーションした。切片を洗浄して、4%アガロース内に予備包埋した。次にアガロース包埋切片を短時間OsOで固定し、エタノール濃度を上げながら脱水し、エポキシ樹脂を浸透させてウルトラミクロトーム(Ultracut UCT;Leica(商標)、ドイツ(Germany)を使って、電子顕微鏡向けに70nmで切片化した。画像を、透過型電子顕微鏡(EM10;ツァイス(Zeiss)、ドイツ(Germany)を用いて得た。
【0073】
可溶性Aβオリゴマーの調製。Aβオリゴマーは、当技術分野既知の技術に従って調製した。簡単に説明すると、1.0mgのAβを400μlの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に10分間、室温で溶解した。溶液の一部(100μl)を、シリコン処理したエッペンドルフチューブに入った900μlのddHOに溶解した。10分間のインキュベーションの後、サンプルを15分間、14,000gで遠心分離し、上清分画を新しいシリコン処理チューブに移した。N流を5〜10分間吹き付けてHFIPを蒸発させた。次にサンプルをテフロンコートしたマイクロスターラーバーを使って500rpmで24〜48時間、室温で攪拌した。一部を6〜12時間間隔で採取して、球状オリゴマーの存在についてチェックした。
【0074】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)。ELISAは、組織ホモジェネートおよびAβペプチドから作製したオリゴマーを用いて実施した。眼組織サンプルを処理するために、眼の後極で、神経網膜を下にあるRPE/BM/脈絡膜−複合体から剥がした。単離した組織(神経網膜または下側のRPE/BM/脈絡膜−複合体)を超音波処理装置(Microson(商標))を用いてddHO中でホモジェナイゼーションし、遠心分離して上清を集めた。ELISAは抗オリゴマー特異的抗体を用いて、Kayedと共同研究者らが記載した通りに実施した。簡単に説明すると、サンプルをコーティング緩衝液(0.1M重炭酸ナトリウム)で希釈し、96ウエルマイクロプレート(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、米国ニュージャージー州フランクリンレイクス(Franklin Lakes、NJ)のウエルに加えた。2時間、37℃でインキュベーションした後、サンプルを37℃で3%BSA TBS−Tを用いてブロッキングした。抗オリゴマー抗体(1:2500)を100μl加え、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgGと1時間、37℃でインキュベーションする前に、37℃で1時間インキュベーションした。続いて3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて発色させるために、反応を100μlの1MのHClを用いて停止し、プレートを450nmで読みとった(Benchmark Plus、バイオラド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules、CA)。
【0075】
細胞生存アッセイ。細胞の生存を、MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)に基づくアッセイ(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、米国ミズーリ州セントポール・ルイス(St.Louis、MO)を用いて分光光学的に評価した。ヒト胎児の眼から単離したRPE細胞を、アドバンスド・バイオサイエンス・リソーシーズ・インク(Advanced Bioscience Resources, Inc.)(米国カリフォルニア州アラメダ(Alameda、CA)より得た。細胞は2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%ウシ胎児血清を補充したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)で、37℃で維持した。3〜4回継代した細胞をウエル当たり10,000細胞で96ウエルプレートに接種し、〜90%の周密度まで3〜4日間増殖させた。毒性アッセイの前に、培地を、フェノールレッドを含まないDMEMに溶解した指示濃度のAβオリゴマー単独または当モルのA11抗オリゴマー抗体と一緒のものと交換した。この状態を三回繰り返した。4時間後、DMEMに溶解したMTTを細胞に加え更に4時間インキュベーションした。不溶性の結晶はMTT溶解溶液(10%Triton X−100、0.1NのHClの無水イソプロパノール溶液)を加えて溶解し、吸光度を570nmで測定した。
【0076】
抗体の調製および治療応用
以下の各アミロイドペプチドは、本発明の抗体、例えばA−βペプチドオリゴマー中間体に対し産生された抗体が認識する立体構造エピトープを作り出すアミロイドペプチド集合体を形成することが示されている。これらペプチドの幾つかは、アミロイド沈着物を特徴とする疾患を持つヒトまたは動物のアミロイド沈着物中に存在している。本発明は、掲載のペプチドまたはタンパク質の配列、あるいは配列の幾つかと関連する特定の疾患に限定されない。本発明は、他のアミロイドペプチド集合体またはその他全てのアミロイドペプチド集合体に結合する本願に記載の抗体を予想している。特に、本発明は、他の疾患に関連するアミロイド前駆体集合体を形成する他のペプチドおよびタンパク質の配列への本発明の方法および組成物の応用も予想し、且つ包含している。
【0077】
A40(配列番号1)
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV
A42(配列番号2)
DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA
ヒトIAPP(配列番号3)
KCNTATCATQ RLANFLVHSS NNFGAILSST NVGSNTY
ヒトプリオン106−126(配列番号4)
KTNMKHMAGA AAAGAVVGGL G
最近、ステファニ(Stefani)と共同研究者ら(ブッシアンテイーニら(Bucciantini et al(2002)「Nature」第416巻、p.507〜511)とは、疾患と無関係なタンパク質から作製したアミロイドペプチド集合体が生得的に細胞毒性であることを報告し、それらが疾患関連アミロイドペプチドと共通の構造を有する可能性を示唆した。次の疾患と無関係なアミロイドペプチドを含む疾患と無関係なアミロイドペプチド集合体が、本発明の抗体に結合することも示されている。
【0078】
ポリグルタミン合成ペプチドKK(Q40)KK(配列番号5)
KKQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ QQKK
ヒトリゾチーム(配列番号6)
MKALIVLGLV LLSVTVQGKV FERCELARTL KRLGMDGYRG SLANWMCLA KWESGYNTRA TNYNAGDRST DYGIFQINSR YWCNDGKTPG AVNACHLSCS ALLQDNIADA VACAKRVVRD PQGIRAWVAW RNRCQNRDVR QYVQGCGV
ヒトインスリン(配列番号7)
MALWMRLLPL LALLALWGPD PAAAFVNQHL CGSHLVEALY LVCGERGFFY TPKTRREAED LQVGQVELGG GPGAGSLQPL ALEGSLQKRG IVEQCCTSIC SLYQLENYCN
ヒトトランスシレチン(配列番号8)
MASHRLLLLC LAGLVFVSEA GPTGTGESKC PLMVKVLDAV RGSPAINVAV HVFRKAADDT WEPFASGKTS ESGELHGLTT EEEFVEGIYK VEIDTKSYWK ALGISPFHEH AEVVFTANDS GPRRYTIAAL LSPYSYSTTA VVTNPKE
ヒトアルファシヌクレイン(配列番号8)
MDVFMKGLSK AKEGVVAAAE KTKQGVAEAA GKTKEGVLYV GSKTKEGVVH GVATVAEKTK EQVTNVGGAV VTGVTAVAQK TVEGAGSIAA ATGFVKKDQL GKNEEGAPQE GILEDMPVDP DNEAYEMPSE EGYQDYEPEA
これに加えて、A42(A21G)フランドル突然変異体)、A42(E22Q)オランダ突然変異体、A42(E22G)北極突然変異体、A42(D23N)アイオワ突然変異体、A40(A21G)フランドル突然変異体)、A42(E22Q)オランダ突然変異体、A42(E22G)北極突然変異体、A40(D23N)アイオワ突然変異体、A40(E22Q&D23N)オランダおよびアイオワ突然変異体、A3−42(pGlu 3)、A3−40(pGlu 3)、A8−42、A17−42、A1−16、A3−11、A25−35、A4−16(3つの類似体、Cys16A4−16、Ala A4−16、およびAla10 A4−16)、His6 A40C40(AβC40のアミノ末端に6つのヒスチジンが追加されている)を含むがこれらに限定されない野生型A42、A40の変異体および断片から形成されたオリゴマー中間体も本発明の抗体によって認識される。発明の抗体が認識する他のオリゴマー中間体としては、IAPP内に自然に存在するシステインがアラニンで置換されているIAPP(C2AおよびC7A)から形成されたオリゴマー中間体、Q残基の数が32より多いポリグルタミンKKQ40KKまたはポリグルタミン、カルシトニン、TTRおよびその変異体であるTTR Pro55、TTR Phe78、ビトロネクチン、ポリリジン、ポリアルギニン、血清アミロイドA、シスタンチンC、IgGカッパ軽鎖、本願に開示された他アミロイドペップチドから作られたオリゴマー中間体、ならびに本願に開示されたアミロイド疾患に関連するアミロイド中間体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明は、アミロイドオリゴマー中間体に対する特異的免疫反応を誘導するアミロイド疾患治療薬を提供する。発明の治療薬は、オリゴマー中間体に特異的に結合する抗体を含む。このような抗体は本出願に記載されているようなモノクローナル抗体でも、参照によって本願に組み入れられているPCT国際出願第PCT/US2003/028829号に記載されているようなポリクローナル抗体でもよい。一つの有用な態様では、抗体は立体構造エピトープに結合する。本発明のヒト以外(例えばマウスまたはラット)のモノクローナル抗体の産生は、例えば動物を発明のオリゴマー中間体模擬物で免疫することによって達成できる。また精製したアミロイド中間体で動物を免疫することも考えられる。
【0080】
発明のヒト化マウス抗体を、組換え体DNA技術によってヒト以外の抗体のCDR領域をヒトの定常領域に連結することによって作ることができる。クィーンら(Queen, et al.,)、「Proc.Natl.Acad.Sci.」第86巻、米国(USA)(1989)p.10029〜10033および国際公開第90/07861号パンフレット(全ての目的について、参照によって組み入れられている)を参照。
【0081】
ヒト抗体を、ファージディスプレイ法を用いて得ることができる。例えばダワーら(Dower et al.)、国際公開第91/17271号パンフレットおよびマッカファティら(McCafferty et al.,)ら、国際公開第92/01047号パンフレットを参照。これらの方法では、ファージのライブラリーを、そのメンバーがその外面上に異なる抗体を提示するように作製する。所望する特異性を持つ抗体を提示しているファージをアフィニティー濃縮によって選択する。オリゴマー中間体に対するヒト抗体はまた、少なくともヒトの免疫グロブリン遺伝子座の一区分と不活性化された内因性の免疫グロブリン遺伝子座をコードしているトランス遺伝子を持つヒト以外のトランスジェニック動物からも産生可能である。例えばロンバーグら(Lonberg、 et al.,)、国際公開第WO93/12227号パンフレット(1993);(クッシェリアパティ(Kucheriapati、国際公開第91/10741号パンフレット(1991)(それぞれ、全ての目的について、参照によってそっくりそのまま組み入れられている)を参照。ヒト抗体は、競合結合実験によって選択することができるか、さもなければ特定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を持つように選択することができる。このような抗体は、おそらくマウス抗体の有用な機能特性を共有するだろう。
【0082】
ヒトまたはヒト化抗体は、IgG、IgD、IgA、およびIgEの定常領域、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のイソ型を有するようにデザイン可能である。抗体はFab、Fab’F(ab’)およびFvのような個別の重鎖、軽鎖として、二本の軽鎖および二本の重鎖を含む四量体として、あるいはスペーサーを介して重鎖および軽鎖の可変ドメインが連結されている単鎖抗体として発現させることができる。
【0083】
特定の例では、本発明の1または複数のアミロイドペプチド集合体免疫原を好適な担体に結合させることが望ましいだろう。好適な担体としては、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風毒素、またはジフテリア、大腸菌、コレラ、もしくはピロリ菌のようなその他病原性細菌の毒素、あるいは弱毒化した毒素誘導体が挙げられる。免疫反応を刺激または増進するためのアジュバントとして作用することができるその他担体としては、IL−1、IL−1とペプチド、IL−2、INF、IL−10、GM−CSF、ならびにM1P1およびRANTESのようなケモカインが挙げられる。
【0084】
本発明のモノクローナル抗体を用いた治療に好適なヒトまたは動物の被験体または患者としては、アミロイド疾患のリスクがあるが症状は示していない個体、ならびに既に症状もしくはアミロイド疾患のその他の証拠を示している個体が挙げられる。ADを含む特定のアミロイド疾患の場合は、実質的に誰もがこの疾患に罹るリスクがある。
【0085】
それ故に、本願に記載されているモノクローナル抗体、または親出願第10/527,678号明細書(国際公開第WO2004/024090号パンフレット)に記載されている同様のポリクローナル抗体、あるいはアミロイドオリゴマーの立体構造エピトープに対する抗体反応を被験体に誘発できる免疫原は、対象患者のリスク評価をすることなく一般集団に予防的に投与されてもよい。この方法は、ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物と関連するか、または合併性を有することが知られている疾患に関する既知の遺伝的リスクを有する個体にとって特に有用である。このような個体は、AMD、膜増殖性II型糸球体腎炎、弾性線維症、その他のアミロイド疾患等と診断されるか、またはそのリスク因子(例えば家族歴、遺伝マーカー等)を有しているだろう。例えばADのリスクの遺伝マーカーとしては、APP遺伝子の突然変異、特にHardyとSwedishの突然変異とそれぞれ呼ばれている位置717および位置670と671の突然変異が挙げられる(Hardy、TINS、上記を参照)。ADに関するリスクの別のマーカーはプレセニリン遺伝子、PS1およびPS2の突然変異、ApoE4、ならびにAD,高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化の家族歴である。
【0086】
AMD、膜増殖性II型糸球体腎炎、弾性線維症、AD、およびその他アミロイド疾患の症状は、多くの医師には明らかである。例えばAMDに罹病中の個体は、通常の眼検査で診断されることが多い。これに加えて、アミロイド疾患を持つ個体を識別するための多くの診断試験を利用することもできる。例えばADの例では、このようなものとしてCSFのタウおよびA42レベルの測定が挙げられる。タウの増加、A42レベルの低下はADの存在を表す。
【0087】
予防治療応用では、AMD、膜増殖性II型糸球体腎炎、弾性線維症、AD、およびその他アミロイド疾患に罹りやすいと思われるか、そのリスク因子を持つ患者に、本発明の組成物または中間物を疾患のリスクを排除もしくは下げる、または発症を遅らせるのに十分な量投与される。別の治療応用では、本発明の組成物または中間物を、ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物が観察されているか、あるいは既にAMD、膜増殖性II型糸球体腎炎、弾性線維症、AD、またはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物と関連するその他疾患もしくは障害の兆候または症状を示している患者に、ドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成もしくは生合成を阻害する、および/または既に存在しているドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物を減らす、および/またはAMD、膜増殖性II型糸球体腎炎、弾性線維症、AD、またはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物と関連する疾患もしくは障害を治癒もしくは重篤度を緩和するのに十分な量投与する。これを達成するのに適した量は、治療的または薬学的有効量と定義される。予防および治療レジメンの両方において、本発明の治療薬は、十分な免疫状態が達成されるまで反復投与量で投与される。一般的には、患者の免疫状態はモニタリングされ、免疫状態が衰えれば更なる投薬が行われるだろう。
【0088】
本発明の組成物の有効投与量は、上記の状態の治療に関しては、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の投与薬、および処置が予防的か治療的かを含む多くの異なる要因によって変わる。通常、患者はヒトであるが、狂牛病のような幾つかの疾患では、患者はウシのようなヒト以外の動物であることもあり、アルツハイマー病の場合には患者はイヌのこともある。治療用量を、滴定により安全性および効力を最適化する必要がある。抗体による受動免疫の場合、投与量は約0.0001mg/kg体重〜約100mg/kg体重の範囲であり、より一般的には約0.01mg/kg体重〜約5mg/kg宿主体重である。投与される免疫原の量は、アジュバントも投与されるかどうかによって変わり、アジュバントがない場合はより高用量が必要となる。例えば約1重量%の所望免疫原を含む溶液を0.1〜100ml(cc)皮下注射すると、注射当たり1mgから1gの免疫原投薬量が送り込まれる。注射のタイミングは、1日1回から年に1回、10年に1回までと大きく変化するだろう。免疫源投与の一つの典型レジメンは、免疫およびそれに続く6週間隔のブースター注射から成る。別のレジメンは、免疫およびそれに続く1、2、および12ヶ月後のブースター注射から成る。別のレジメンは、生涯2ヶ月毎の注射を含む。あるいは、ブースター注射は免疫反応のモニタリングによって指示された場合に不規則に行ってもよい。
【0089】
免疫反応を誘導するための治療薬は、任意の好適投与経路、例えば非経口、局所、静脈内、経口、皮下、腹腔内、鼻内、または筋肉内投与経路によって投与されることができる。最も一般的な投与経路は皮下であるが、他の経路も等しく有効である。次に一般的な経路は筋肉内注射である。このタイプの注射は、腕または脚部の筋肉に最も一般的に行われる。腹腔内注射、動脈、頭蓋内、または皮内注射だけでなく静脈内注射も、免疫反応の発生に有効であろう。幾つかの方法では、治療薬は沈着物が蓄積しているか、または蓄積している可能性のある特定の組織内に直接注射される。
【0090】
本発明のモノクローナル抗体は、随意選択的にアミロイド原性疾患の治療に少なくとも一部有効である他の薬物と組み合わせて投与されることができる。脳内にアミロイドの蓄積が起こるアルツハイマー病およびダウン症候群の場合、発明の治療薬は発明の組成物の血管−脳関門の通過を高める別の薬物と一緒に投与されることもできる。例えば以下に詳しく記載するように、抗炎症用量の金コロイドまたは金塩をモノクローナル抗体に随伴して(例えば前、同時、または後)投与し、ADおよびその他アミロイド疾患に関連した脳の炎症を阻止することができる。
【0091】
本発明の免疫原は、アジュバントと組み合わせて投与されることもある。本発明の免疫原とは多様なアジュバントを組み合わせて用い、免疫反応を惹起することができる。好ましいアジュバントは、反応の定量的な形に悪影響を及ぼす免疫原内の立体構造を起こさずに免疫原に対する内因性の反応を高める。好ましいアジュバントとしては、ミョウバン、3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB2220211を参照)が挙げられる。QS21は南米にあるキラヤ・サポニン(Quillaja Saponaria Molina)の木の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドまたはサポニンである(ケンシールら(Kensil,et al)、ワクチン・デザイン(Vaccine Design)内:「The subunit and Ajuvant Approach」(編集 ポウェル&ニューマン、プレナムプレス(Powell & Newman、Plenum Press)、米国ニューヨーク州(NY)(1995);および米国特許第5,057,540号明細書を参照)。別のアジュバントは、場合によってはモノホスホリル脂質Aのような免疫刺激剤と組み合わされてよい、スクアレンまたはピーナッツオイルのような水中油系乳剤である。例えばストゥートら(Stoute,et al)、N.Engl.J.Med.第336巻、P336、86〜91(1991)、を参照。別の有用なアジュバントは「Bioworld Today」、1998年11月15日(Nov.15、1998)に記載されているCpGである。あるいは免疫原はアジュバントに連結することもできる。しかしながらこのような連結は、免疫原を本質的に変えて、それに対する免疫反応の性質に悪影響を及ぼすようなものであってはならない。アジュバントは、活性作用物質と一緒に治療組成物の構成要素として投与されることもでき、または治療薬の投与前、同時、もしくは後に別々に投与されることもできる。
【0092】
好ましい種類のアジュバントは水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムのようなアルミニウム塩(ミョウバン)である。このようなアジュバントは、MPLもしくは3−DMP、QS21、ポリグルタミン酸もしくはポリリジンのような重合体もしくは単量体アミノ酸のようなその他の特異的免疫刺激剤と一緒に、またはこれら無しに用いられることができる。
【0093】
別の種類のアジュバントは、水中油形乳剤である。このようなアジュバントは、ムラミルペプチド(例えばN−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP)テラミド(登録商標))のようなその他特異的免疫刺激剤、またはその他細菌細胞壁成分と一緒に、あるいはそれら無しに用いることができる。水中油形乳剤としては、(a)5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85(場合によって様々量のMTP−PEを含有)を含み、Model 110Yマイクロフルイダイザー(マイクロフルーイディックス(Microfluidics)、米国マサチューセッツ州ニュ−トン(Newton、MA)のような流動化装置を用いてミクロン以下の粒子に製剤化されたMF59(国際公開第90/14837号パンフレット)、(b)10%スクアラン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有し、ミクロン以下の乳剤に流体化されるか、ボルテックスしてより大きな粒子サイズの乳剤にしたSAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)から成る群から1種類以上の細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(登録商標)を含有するRibi(登録商標)アジュバントシステム(RAS)(リビ・イミュノケム(Ribi Immunochem)、米国モンタナ州ハミルトン(Hamilton、MT)が挙げられる。
【0094】
別の種類の好ましいアジュバントは、Stimulons(QS21、アキュイラワーセスター(Aquila、Worcester)、米国マサチューセッツ州(MA)またはISCOMs(免疫刺激複合体)のようなそれから作られた粒子、ならびにISCOMATRIXのようなサポニンアジュバントである。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、および不完全フロイントアジュバント(IFA)が挙げられる。その他アジュバントには、例えばIL−1、IL−2、およびIL−12のようなインターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、組織壊死因子(TNF)のようなサイトカイン、ならびに/あるいはCXCL10およびCCL5のようなケモカインがある。
【0095】
アジュバントは単一組成物である免疫原と一緒に投与されることができ、あるいは免疫原投与の前、同時、または後に投与されることができる。免疫原およびアジュバントは同一バイアルに包装して供給されることができ、または別々のバイアルに包装され、使用前に混合されることもできる。免疫原およびアジュバントは、一般的には目的とする治療応用を表示したラベルと一緒に包装される。免疫原とアジュバントとを別々に包装する場合は、包装には一般的に使用前の混合を指示するものが入れられる。アジュバントおよび/または担体の選択はアジュバントを含有するワクチンの安定性、投与経路、投薬スケジュール、ワクチン接種対象となる種に対するアジュバントの効力に依存し、且つヒトの場合には、薬学的に許容されるアジュバントは、管轄の取り締まり機関によってヒトへの投与が認可されているか、承認可能なものである。例えば完全フロイントアジュバントはヒトへの投与には適していない。場合によっては2種類以上のアジュバントを同時に用いることができる。好ましい組み合わせとしては、ミョウバンとMPL、ミョウバンとQS21、MPLとQS21、およびQS21とMPLとが挙げられる。また不完全フロイントアジュバントは(チャンら(Chang et al.,)「Advanced Drug Delivery Reviews」第32巻、(1998)p.173〜186)、随意選択的に任意のミョウバン、QS21、およびMPLとの組み合わせ、ならびにそれら全てと組み合わせて用いることができる。
【0096】
本発明の組成物は、各種その他薬学的に許容可能な構成要素を含む薬学的組成物として投与されることが多い。「Remington’s Pharmaceutical Science」(第15版、マックパブリッシング社(Mack Publishing Company)、米国ペンシルベニア州イートン(Easton、Pennsylvania)、1980)を参照。好ましい形態は、意図する投与様式および治療応用に依存する。組成物はまた、所望する調合に応じて薬学的に許容される無毒の担体または希釈剤を含むこともでき、これらは動物またはヒトへ投与する薬学的組成物の調合に普通に用いられる賦形剤として定義される。希釈剤は、組み合わせの生物活性に悪影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は蒸留水、生理学的リン酸−緩衝化食塩水、リンガー液、デキストロース液、およびハンクス液である。これらに加えて、薬学的組成物または調合物は、その他の担体、アジュバント、または無毒の非治療薬、非モノクローナル抗体性安定化剤等を含んでもよい。しかしながら、完全フロイントのアジュバントのような動物への投与に好適ないくつかの試薬は、一般的にヒトへ使用する組成物には加えない。
【0097】
薬学的組成物は、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(ラテックス機能化セファロース、アガロース、セルロース等のような)、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(油滴またはリポソームのような)のような大型のゆっくりと代謝される高分子を含むこともできる。これに加えて、これら担体は免疫刺激剤(即ちアジュバント)として機能することもできる。
【0098】
非経口投与については、発明の組成物は、物質が水油、食塩水、グリセロール、またはエタノールのような無菌の液体でよい生理学的に受け入れ可能な希釈剤または薬学的担体中にある注射可能な投与量の溶液または懸濁として投与されることができる。
【0099】
湿潤化剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝化物質等のような補助物質は、組成物の中にあってもよい。薬学的組成物のその他構成要素は、石油、動物、植物、もしくは合成起源の油、例えばピーナッツオイル、大豆油、および鉱油である。一般的にはプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなグリコールが好ましい、特に注射液にとって好ましい液体担体である。
【0100】
組成物は、注射可能な溶液または懸濁液として調製されることができる;注射前に溶液、懸濁液にするか、または液体賦形剤に加えるのに適した個体として調製されることもできる。調合物は、上記したように、アジュバント効果を高めるために、ポリ乳酸、ポリグリド、またはコポリマーと乳化またはリポソームもしくは微粒子に封入されることができる。「Langer、Science」、第249巻(1990)、p.1527および「Hanes、Advanced Drug Delivery Reviews」、第28巻(1997)、p.97〜119を参照。本発明の組成物は、活性成分の持続的または拍動的放出が可能なように調合されることできるデポー注射製剤またはインプラント製剤の形で投与可能である。
【0101】
その他の投与様式に好適な追加の調合物は、経口、鼻内、および肺向けの調合物、座薬、および経皮適用剤である。
座薬の場合、結合材および担体としては、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられる;このような座薬は活性成分を0.5%〜約10%の範囲、例えば約1%〜約2%含む混合物から作ることができる。経口調合物は、薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムのような賦形剤を含む。これら組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出調合物または粉末の形を取り、活性成分を約10%〜約95%、例えば約25%〜約70%含むことができる。
【0102】
局所への適用は、経皮的または皮内デリバリーをもたらすことができる。局所投与は、コレラトキシンまたはその無毒化誘導体もしくはサブユニット、またはその他同様の細菌性毒素と一緒に組成物を同時投与することで促進することができる。グレンら(Glenn et al.,)「Nature」、第391巻、p.851(1998)を参照。同時投与は混合物、または化学的架橋もしくは融合タンパク質として発現することによって得られる連結分子として構成要素を用いることにより達成することができる。
【0103】
あるいは経皮デリバリーは、皮膚パッチを用いることにより、またはトランスフェロゾームを用いることによって達成することができる。例えばポールら(Paul et al.,)「Eur.J.Immunol.」第25巻、p.3521〜24(1995);セブら(Cevc et al.,)「Biochem.Biophys.Acta」、第1368巻(1998)、p.201〜15を参照。
【0104】
金またはその他抗炎症剤の随伴投与
金の抗炎症作用は十分確立している。例えば、金コロイド注射製剤(Mycohrysine(商標)またはSolganal(商標))はリウマチ関節炎の治療用に市販されている。経口投与向け金製剤(Auranofin(商標))も利用することができる。脳内の炎症はアルツハイマー病の原因または寄与因子と考えられているが、それは主にアルツハイマー病の患者の脳内に見出されるAβが炎症性タンパク質として知られているからである。この観点からロフェコキシブ(Vioxx)およびナプロキセン(Aleve)のような非ステロイド系抗炎症薬を使用してアルツハイマー病の進行を遅らせることを提案している人もいる。同様に炎症は少なくともAMDのような幾つかの網脈絡膜疾患でもある役割を果たしていると信じられており、幾つかの研究は日常的に抗炎症薬(例えば非ステロイド系抗炎症剤、スタチン)を服用している患者ではAMDの発生率が低いことを示している。
【0105】
出願者は、組織病理学的観察に基づいて、金コロイドの皮下投与がアミロイド疾患のモデルとなるマウスの脳内において小グリアの活性化を下げることができると判断した。本発明は、神経炎症を下げるのに治療的に有効である量の金コロイド、金塩、またはその他抗炎症剤の被験者への投与を含む。幾つかの例では、金または抗炎症剤は、モノクローナル抗体または免疫原と一緒にすることができる。別の例では、金または抗炎症剤はモノクローナル抗体または免疫原と別々に投与できる。任意の好適な投与量、投薬スケジュール、または投与経路を用いることができる。例えばリウマチ関節炎治療用の市販金製剤は、リウマチ関節炎の治療について推奨されているものと同一の投与経路(Mycohrysine(商標)またはSolganal(商標)の皮下注射、またはAuranofin(商標)の経口投与))および投与量/投薬スケジュールで投与できる。
【0106】
前述の発明は、明瞭に理解できることを目的に詳しく説明したが、特定の態様が添付の請求項の範囲内で実行できることは明らかであろう。本願に引用した全ての刊行物および特許文書は、参照によって、全ての目的について、あたかもそれぞれを個別に記したのと同程度にそっくりそのまま本願に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ドルーゼンのアミロイド原性オリゴマーの免疫局在を示す共焦点レーザー顕微鏡写真の図。特に図1A、図1C、図1E、および図1Gは微分干渉コントラスト像である;図1B、図1D、図1F、および図1Hは、アミロイドオリゴマーコアの共焦点蛍光画像である(緑、FITCチャンネル)。図が示す様に、ドルーゼンは、ドルーゼン内中心部およびブルッフ膜に近接して蓄積するコア様構造形態内にアミロイドオリゴマー活性を示す。RPE細胞質内のリポフスチン顆粒の自己蛍光は赤色で画像化されている(Cy3チャンネル)。(図1Aおよび図1B)抗オリゴマー特異抗体は小型ドルーゼン(〜30μm)内の球形構造(〜15μm)を認識する。(図1C〜1F)2個の中心のコア構造を有する大型のドルーゼン。(図1Gおよび図1H)81歳の女性ドナーより得た非常に大型の黄斑軟性ドルーゼン。ドルーゼンの大きさおよび形状に違いはあるが、アミロイドオリゴマーコアの大きさは10〜15μmで一定であった。RPE、網膜色素上皮;Bm、ブルッフ膜。バー=10μm。
【図2】ドルーゼンおよび肥厚したブルッフ膜内にアミロイドオリゴマーが存在していることを示す図。アミロイドオリゴマーの活性を、フルオロセイン(緑)で視覚化し、リポフスチンの自己蛍光はCy3チャンネル(赤)を用いて視覚化した。大型のドルーゼンについては、あたかも大型ドルーゼンが複数の小型ドルーゼンが融合して形成されたことを示すように、複数のアミロイドオリゴマーコアが観察されることがあった(図2Aおよび2B)。アミロイドオリゴマーコアは、そのサイズ、ならびにドルーゼン内およびブルッフ膜近傍での相対位置を維持している。ドルーゼンが存在する眼では、オリゴマーはブルッフ膜の上、特にブルッフ膜が肥厚して現れる場合には基底線(図2Cおよび2D)または基底薄層(図2E〜2H)の上の沈着物として蓄積することがあった。RPE細胞内が染色されることも観察されている(図2H)。図2Cおよび図2Dはそれぞれ図2Dおよび図2Fの微分干渉コントラスト像である。抗体が凍結切片内でも特異的であることが、隣の大型ドルーゼンの切片で証明されている(図2Iおよび図2J)。複数のアミロイドオリゴマーコアが、抗オリゴマー抗体を用いて視覚化されている(図2I)。一次抗体を事前にAβ1−40ペプチドから合成したアミロイドオリゴマーとインキュベーションすると活性は失われた(図2J)。RPE、網膜色素上皮;Bm、ブルッフ膜。バー=10μm。
【図3】抗オリゴマー抗体を用いた網膜抽出物のELISAの図。(図3A)Aβ1−40ペプチドから作製したオリゴマーの量を増やすと、抗オリゴマー特異抗体とインキュベーションした時に用量依存的な反応が起こった(黒丸)。一次抗体なしにAβ1−40ペプチドをインキュベーションした場合には、ほとんど、または全く反応性が認められなかった(白丸)。(図3B)抗オリゴマー特異抗体を、76歳の男性ドナーより切除したDr/RPE/Bm組織から調製した抽出物と、量を増やしながらインキュベーションすると用量依存的な反応が観察された(黒丸)。一次抗体を省くと反応性はほとんど、または全く観察されなかった(白丸)。複数のドナー眼球の神経網膜(黒三角)から調製した抽出物は、抗オリゴマー特異抗体とインキュベーションした時に用量依存的な反応を示さなかった。Dr、ドルーゼン;RPE、網膜色素上皮;Bm、ブルッフ膜。
【図4】ドルーゼン中のアミロイドオリゴマーコアの形態を高倍率で示す図。(図4A〜4C)ドルーゼンの共焦点顕微鏡写真。アミロイドオリゴマーコアはフルオロセインで標識し(緑)、RPE中のリポフスチンの自己蛍光は赤色で視覚化されている(Cy3チャンネル)。アミロイドオリゴマーコアは、中心に向かって密度を増す小型小胞構造物の集合体(白色矢印)から成っていると考えられている。これらの小胞構造物の幾つかは、RPEに向かって、密度を下げながら伸びていると思われる(B、矢ジリ)。時にアミロイドオリゴマーコアはブルッフ膜を貫通して脈絡膜に向かって伸びていることが分かる(図4C、矢ジリ)。アミロイドオリゴマーコアの超構造は、電子顕微鏡写真の中で免疫金標識されて描かれており(図4D、挿入図)、様々な大きさの小胞構造を金粒子が修飾している。Dでは、ブルッフ膜の上に最も高密度な金粒子の領域が認められる(長方形、図4D)。RPE、網膜色素上皮;Bm、ブルッフ膜;Ch、脈絡膜。バー(図4E)=2μm。バー(図4F)=100nm。
【図5】アミロイドオリゴマーコアと他の既知ドルーゼン成分との同時分布を示す図。全ての共焦点画像において、アミロイドオリゴマーコアはフルオロセインで標識されている。HLA−DRはテキサスレッドで標識されている(図5B〜5D)。両抗原は、大型ドルーゼンに存在するが(図5A、微分干渉コントラスト;図5B、共焦点顕微鏡)、この時アミロイドオリゴマーコアはHLA−DR反応領域内に包まれている。倍率を上げると、これらのドルーゼンではアミロイドオリゴマーコアおよびHLA−DR反応性サブドメインが重複して存在していないことが明らかとなった。一つの例では、HLA−DR反応性領域、おそらくは樹状細胞突起を表すと思われる領域が、脈絡膜を起点として、ブルッフ膜近くに達し、アミロイドオリゴマーコアである小胞構造が集まっている部分に接触することが観察される(図5C)。別の例では、HLA−DR反応性は脈絡膜、ブルッフ膜、およびドルーゼンを取り囲む形で観察される。ドルーゼンの中では、HLA−DR反応性はオリゴマーコアを囲む様に見え、重複しては存在していない(図5D)。同様に、共にテキサスレッドで標識したビンブラスチン(図5F〜5H)またはAβ(図5J〜5L)も重複して存在していない。RPE内のリポフスチンの自己蛍光もCy3チャンネル内で視覚化されている。Dr,ドルーゼン;RPE、網膜色素上皮;Bm、ブルッフ膜。バー(図4E)=10μm。
【図6】アミロイドオリゴマーは初代培養ヒトRPE細胞にとって有毒であることを示す図。細胞生存率はMTT還元によって評価した。Aβから作られたアミロイドオリゴマーの量の増加は、培養RPE細胞に対する用量依存的な毒性を示した。この毒性は、等モルの抗オリゴマー抗体A11を投与することによってほぼ遮断された。誤差バーは、N=3での標準偏差を表している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】

【図2I】

【図2J】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトもしくは動物被験体におけるドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成を阻害する、または低下させるための、あるいはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物と関連する疾患もしくは障害を予防もしくは治療するための方法であって:
(A)少なくとも1種類の
i)ドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成もしくは生合成に関与する集合体の立体構造エピトープ;および
ii)ドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成もしくは生合成に関与する集合体の立体構造エピトープに結合する抗体:
を含む組成物を治療有効量で被験体に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
工程Aが立体構造エピトープに対する免疫反応を誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程Aで投与される組成物がペプチドを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが立体構造的に束縛されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、およびそれらの組み合わせから成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ペプチドが配列番号1を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
工程Aで投与される組成物が、マウスまたはその他哺乳動物を、チオエステル結合を介して金コロイドに共有結合したアミロイドAβから成る立体構造的に束縛された抗原で免疫感作して作られたモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
組成物が表面上にあり、それによってドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与する集合体の立体構造依存的エピトープに対応した形に組成物を立体構造的に束縛する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
表面がフィルム、粒子、またはシートの表面を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
表面がタンパク質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質がベータプリーツシートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エピトープが表面に結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
エピトープが表面に化学的に結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
化学結合が共有結合である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
表面が、金、亜鉛、カドミウム、スズ、チタン、銀、セレニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素、ケイ素、それらの混合物、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される物質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
表面が金粒子上にある、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
表面がコロイド検濁液中の金粒子上にある、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
集合体が線維形成前集合体であり、約10kDa〜約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
集合体が2〜20個のサブユニットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
集合体が5個のサブユニットを含む線維形成前集合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
集合体が8個のサブユニットを含む線維形成前集合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
アミロイドペプチドモノマーがエピトープを実質的に持たない、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
患者にドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物が観察され、方法を実行してドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物に関連する疾患の発生または病因を予防または阻止する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
疾患が脈絡網膜障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
疾患が黄斑変性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
疾患が加齢に関係する黄斑変性である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
疾患が先天性停在性夜盲症である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
疾患がII型膜増殖性糸球体腎炎である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
疾患が弾性線維症である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
疾患が神経変性性疾患である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
疾患がアルツハイマー病である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程Aで投与される組成物がモノクローナル抗体を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
工程Aで投与される組成物がポリクローナル抗体を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
工程Aで投与される組成物が、ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与するAβおよび/またはその他アミロイドのオリゴマー立体構造によって都合よく提示された立体構造依存的エピトープに結合する単離された抗体を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
抗体がドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物の形成または生合成に関与する毒性オリゴマーの毒性の低下に有効である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
毒性オリゴマーが約10kDa〜約100,000,000kDaの範囲内の分子量を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ヒトまたは動物被験体の体内へのアミロイド病変またはアミロイド物質の形成を特徴とする疾患または障害を診断する方法であって、
A)関心対象のアミロイド病変もしくはアミロイド物質中に存在するか、またはその生合成もしくは形成に関与する標的オリゴマーに結合する標識抗体を準備する工程;
B)標識抗体を被験体に、それが前記オリゴマーに結合するように投与する工程;および
C)標識抗体が蓄積した被験体体内の位置を同定および/またはマッピングおよび/または定量化する工程、を含む方法。
【請求項38】
関心対象のアミロイド病変またはアミロイド物質がドルーゼンを含み、且つ工程Cが、標識抗体が蓄積した眼内の位置を同定および/またはマッピングおよび/または定量化することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
工程Cが蛍光プローブ標識抗体を投与した後に蛍光血管造影法を実施する工程を含む、請求項37または38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ドルーゼンまたはドルーゼン類似沈着物内に存在するか、またはそれらの形成もしくは生合成に関与する標的オリゴマーに結合し、且つ請求項37または38に記載の方法の実施に使用可能な標識抗体。
【請求項41】
アミロイド含有病変またはアミロイド含有物質が形成されるか、または今後形成される可能性のある、ヒトまたは動物被験体体内の場所に治療薬または診断薬を送り込むための方法であって、
A)関心対象のアミロイド病変もしくはアミロイド物質内に存在するか、またはこれらの生合成もしくは形成に関与する標的オリゴマーに結合する抗体を準備する工程;
B)前記抗体を治療薬または診断薬に架橋またはその他方法で結合し、抗体/薬剤組成物を形成する工程;
C)前記抗体/薬剤組成物を、抗体/薬剤組成物が被験体体内の標的オリゴマーに結合するように被験体に投与する工程、を含む方法。
【請求項42】
関心対象のアミロイド病変または物質がドルーゼンを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
関心対象のアミロイド病変またはアミロイド物質が、アルツハイマー病および/またはその他アミロイド脳症に関連する脳病変、斑、交錯物、線維、および/または線維形成前集合体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ヒトもしくは動物被験体でのドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成を阻害するための、またはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物を低下させるため方法であって:
A)被験体に、アミロイドベータ由来拡散可能リガンド(ADDL)またはアミロイドベータ由来拡散可能リガンド(ADDL)に結合する抗体を含む組成物を治療有効量で投与する工程、を含む方法。
【請求項45】
ヒトもしくは動物被験体でのドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成を阻害するための、またはドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物を低下させるため方法であって:
A)被験体に、i)アミロイドAβの残基1〜17内にあるエピトープに結合する抗体、および/またはii)アミロイドA−ベータの免疫原断片を含むポリペプチド、および/またはiii)アミロイドAβの形成を阻害するその他組成物を含む組成物を治療有効量で投与する工程、を含む方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法の実施に使用可能な抗体/薬物の組み合わせ。
【請求項47】
薬物がヒト化抗体を含む、請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
薬物がヒト化マウス抗体を含む、請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
薬物がヒト化ウサギ抗体を含む、請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
組成物が、チオエステル結合を介して金コロイドに共有結合したアミロイドAβから成る立体構造的に束縛された抗原で免疫感作し、且つ抗体をヒト化することによって作製したモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
薬物が眼の中に直接送り込まれる、請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
薬物が眼の中に注入される、請求51に記載の方法。
【請求項53】
a)ドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成に関与する集合体の立体構造エピトープ、ならびに/あるいはb)ドルーゼンもしくはドルーゼン類似沈着物の形成および/もしくは生合成に関与する集合体の立体構造エピトープに結合する抗体、ならびに/あるいはc)アミロイドベータ由来拡散可能リガンド(ADDL)を含む組成物、ならびに/あるいはアミロイドベータ由来拡散可能リガンド(ADDL)に結合する抗体を含む組成物の、請求項1〜52のいずれか一項に記載の方法を実施するためにヒトまたは動物患者に投与される調製物の製造への使用方法。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図5K】
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【図5L】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527005(P2008−527005A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551459(P2007−551459)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/001478
【国際公開番号】WO2006/083533
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500210903)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニア (31)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】