説明

ドレン排水部材

【課題】ユニットバスエプロン内の浴槽側排水口の上部に設置されるドレン排水部材を提供する。
【解決手段】本体2の上面2eの中央に潜熱回収ドレン配管16aとの接続部3aと、その両側にミストドレン配管15aを備えている。潜熱回収ドレン排水路3は、接続部3a、流路3b、逆流防止用の水抜き孔3dにより構成されている。接続部4aに導かれるミストドレンは、本体2の内側表面を伝って流下するように構成されている。
前面部2aは、背面部2bより下側が長さdだけ短く構成されており、浴槽側排水口14に設置した状態で排水口面に接することなく、大気に開放されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドレン排水部材に関し、より詳細には、ユニットバスエプロン内の浴槽側排水口の上部に設置されるドレン排水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニットバスに取り付けられるミストサウナのドレン処理については、洗い場に直接排水するか、又はエプロン内の浴槽外側面に配管を固定して浴槽側排水口直近まで導き、そのまま排水することが一般的である。また、集合住宅のパイプシャフト(PS)内に設置される潜熱回収型熱源機からの回収ドレンについても、PS内で処理できない場合にはミストサウナと同様な方法で浴槽側排水口に排水している。
しかしながら、洗い場に直接排水する方式では、排水部材が浴室内に露出してしまい美観上問題となる。また、入浴時以外のときに排水が行われることもあるため、予期しないときに浴室の床面が濡れてしまうという問題もある。
浴槽側排水口に排水する方式では、エプロン内の防水パンを広範囲に濡らしてしまい、カビ発生等、衛生上の問題がある。また、浴槽側排水口直近までドレン管を配管する方式については、エプロン内空間は狭いため、浴槽の形状やスペースの関係で配管固定できないケースも生じる。特に、ミストサウナと熱源機からのドレン配管が同一方向又は両方向から配管される場合、配管固定することは困難を伴う。また、この方式についても、ドレン量が多い場合にはエプロン内防水パンを広範囲に濡らしてしまうという問題もある。
【0003】
一方、ユニットバスにおけるドレン排水処理に関しては、ヒートポンプ式浴室除湿機からのドレン配管を、浴槽側排水口に直結する技術が提案されている(例えば特許文献1)。このようなドレン排水処理構造100は、図10に示すように、ドレン排水管102を浴槽排水エルボ104とともに、浴槽側排水口101の排水目皿103に直結するものである。浴槽側排水口101の排水エルボ部106は、防水パン105に水密に取り付けられており、また、洗い場側排水口(図示せず)と連通している。このような排水処理構造100によれば、ドレンは排水口内部に直接排水されるため、エプロン内を広範囲に濡らすことはない。また、排水目皿103に固定されるため、配管固定の問題に関しても解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドレン排水管102は封水面107より上部で大気に開放されてはいるが、排水口101内部に導入されるため、出口部が常に高湿度環境に置かれることになる。このため、端面近傍にスライムなどが発生し易く、排水不良の原因となるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであって、以下の内容を要旨とする。
すなわち、本発明に係るドレン排水部材は、
(1)ドレン排水を、ユニットバス内の防水パンの浴槽側排水口に排水するためのドレン排水部材であって、本体と、本体内にドレン排水流路部と、本体上部にドレン配管との接続部と、本体下部に出口部と、を備え、該出口部と該浴槽側排水口上面との間に開口部を有するように構成されて成る、ことを特徴とする。
(2)上記発明において、前記本体が前記防水パンの土手部に取り付けられた状態において、前記出口部が、前記浴槽側排水口に設けられた逆止弁の直上に位置するように構成して成る、ことを特徴とする。
(3)上記各発明において、前記ドレン排水流路部は、潜熱回収型熱源機からのドレン排水を排水するための第一のドレン排水流路部と、前記ユニットバスに設置したミストサウナからのドレン排水を排水するための第二のドレン排水流路部と、を備え、該第一のドレン排水流路部の出口部が、前記逆止弁の直上に位置するように構成されて成ることを特徴とする。
(4)上記各発明において、前記第一のドレン排水流路部は、逆流防止用の水抜き孔を備えて成ることを特徴とする。
(5)上記各発明において、前記第一のドレン排水流路部を挟んで一対の前記第二のドレン排水流路部を備え、いずれか一方の前記第二のドレン排水流路部の前記接続部に、ミストサウナからのドレン配管を接続可能に構成し、かつ、他方の前記第二のドレン排水流路部の前記接続部を水抜き孔としたことを特徴とする。
(6)上記発明において、前記第一のドレン排水流路部の出口部断面積を、前記第二のドレン排水流路の出口部断面積より大きく構成したことを特徴とする。
このように構成することにより、潜熱回収型熱源機からのドレン排水の吐出時の水勢を強めて、逆止弁を確実に開弁させることができる。また、ミストサウナからのドレン排水の水勢を弱め、周囲への飛散も少なくすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浴槽側排水口の直近で排水処理できるため、エプロン内防水パンを広範に濡らすことがなく、エプロン内をドライに保つことができる。
また、浴槽がオーバーハングしていてエプロン内に配管固定スペースがない場合でも、本発明のドレン排水部材を用いることにより、ドレン配管を排水口直近まで導くことが可能となる。
また、本発明のドレン排水部材は、下端部に開口空間を備えているため、スライムやカビの発生を防止することが可能となる。
また、排水管を利用者の目に触れさせることなくエプロン内で排水処理できるため、ユニットバス内の美観を向上させることができる。
また、潜熱回収ドレン排水流路部に逆流防止用の水抜き孔を備えた発明にあっては、浴槽排水が逆流した場合であっても、熱源機側に排水が逆流することがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るドレン排水部材1を用いたユニットバス10の配管形態を示す断面図である。
【図2】同上平面図である。
【図3】防水パン11の洗い場側排水口17及び浴槽側排水口14周辺の構成を示す図である。
【図4】浴槽側排水口14及び洗い場側排水口17の断面構成を示す図である。
【図5】ドレン排水部材1の全体構成を示す図である。
【図6】ドレン排水部材1の底面構成を示す図である。
【図7】ドレン排水部材1の断面構成を示す図である。
【図8】ドレン排水部材1の土手部18への取り付け態様を示す図である。
【図9】潜熱回収ドレン排水時の逆止弁14bの動作を示す図である。
【図10】従来の業務用ドレン排水部材100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るドレン排水部材の一実施形態について、図1乃至9を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
図1乃至3を参照して、本実施形態に係るドレン排水部材1は、浴室間仕切12内に設置されるユニットバス10の、底部防水パン11の浴槽側排水口14近傍に取付けられている。防水パン11は、土手部18を境界として洗い場側19と浴槽側20とに区画されており、洗い場側19には洗い場側排水口17が、浴槽側20には浴槽側排水口14が、それぞれ設けられている。土手部18の浴槽側排水口14近傍には、断面半円形状の凹部18aが設けられている。凹部18aを設けなかった場合には、逆止弁14bや浴槽排水栓の位置が洗い場から離れた位置に配設されることとなるため、エプロン13を外してメンテナンスする際の作業性が悪化することとなる。後述するように、ドレン排水部材1は凹部18aに嵌め込まれている。このように、凹部18aにドレン排水部材1を嵌め込むことにより、ドレン排水部材を適切な位置、および出口部を適切な方向に配置することができる。土手部18の上部にはエプロン13が取付けられており、エプロン13の内側と、浴槽21及び壁面パネル10aにより空間13a(以下、エプロン内空間という)が形成されている。
【0010】
ユニットバス10の外部には、熱源機16が設置されている。熱源機16と浴槽21に付設された循環アダプター21aの間は、追焚配管16bにより結ばれており、風呂給湯及び追焚循環を可能に構成されている。熱源機16は潜熱回収機能を備えており、潜熱回収に伴い生じるドレンは、貯水タンク(図示せず)に一旦貯水され、一定量以上となると排水ポンプ(図示せず)により排水される。排出されたドレンは、ドレン配管16aを経由してユニットバス10内のエプロン内空間13aに導かれ、最終的にドレン排水部材1により排水されるように構成されている。なお、ドレン配管16aと追焚配管16bとはコンジット管16c内に一体に収められてユニットバス10内に導入され、エプロン内空間13aにおいて分岐される。
【0011】
ユニットバス10の天井部には、ミストサウナ15が設置されている。ミストサウナ15は、給水配管15bを介して供給される冷水を、熱源機16から暖房配管(図示せず)を介して供給される循環温水と熱交換させて暖め、ノズル噴霧してミスト状にして、ユニットバス10内に供給するものである。ミスト発生時に生じるドレンは、浴室間仕切12と壁面パネル10aとの隙間に配管されるドレン配管15aによりエプロン内空間13aに導かれ、最終的にドレン排水部材1により排水されるように構成されている。
【0012】
次に図4を参照して、ドレン排水部材1が取り付けられる浴槽側排水口14近傍の詳細構成について説明する。浴槽側排水口14及び洗い場側排水口17の下側には、それぞれ排水エルボ部23及びトラップ部24が取り付けられている。排水エルボ部23とトラップ部24は、防水パン11の床下空間において水密に連通接続されており、それぞれの排水口から流下する排水は、排水管22を介して外部に排出されるように構成されている。
浴槽21の排水孔21c、浴槽側排水口14の孔部14a及びエルボ部23は、接続部材ユニット21bによりシールされており、浴槽残り湯を、浴槽側排水口14を介してエルボ部23に排水可能に構成されている。浴槽側排水口14には、浴槽防水パン上の排水を流入可能にするとともに、浴槽排水口14からの排水の浴槽防水パン側への逆流を防止するための逆止弁14bが、孔部14aに隣接して付設されている。逆止弁14bは、弾力性のあるゴム材質で開閉可能に構成され、通常はゴムの自重と弾性により僅かに開弁している。そして、浴槽側排水口14周囲に流れ込んだ排水は、この僅かな隙間を通って、エルボ部に流れ込むようになっている。また、逆止弁14bは、浴槽排水時には、その排水圧と弾性により、閉弁する。
【0013】
次に、図5乃至8を参照して、ドレン排水部材1の詳細構成及び浴槽側排水口14への設置の形態について説明する。ドレン排水部材1は、本体2と、本体2の上面2eの中央に潜熱回収ドレン配管16aとの接続部3aと、その両側にミストドレン配管15aとの接続部4a、4bと、本体2の両側面に翼部2cと、を主要構成として備えている。各ドレン配管と各接続部は、それぞれエルボ16d、15cを介して接続されている。本体2は、円筒体の端部分を中心軸と交わる平面で斜め縦方向に切り取った形状をなし、前面部2aが中央部を除いて平面、背面部2bが曲面に構成されている。後述するように、背面部2bの曲率は、土手部18に設けた凹部18aの曲率と合わせるように形成されている。図6に示すように、本体2内部には空洞部2dが形成されている。
【0014】
前面部2aには、潜熱回収ドレン排水のための排水路3が設けられている。排水路3は、接続部3aと、前面部2a中央に突出する流路3bと、接続部3aの背面側に設けられた逆流防止用の水抜き孔3dと、により構成されている。図7に示すように、流路3bは垂直方向に対して角度θをなして設けられているが、これは後述するように、排水の便宜を考慮したためである。
なお、ドレン排水部材1には、ミストドレンのための専用排水路は設けられておらず、接続部4aに導かれるミストドレンは、本体2の内側表面を伝って流下するように構成されている。
前面部2aは、背面部2bより下側が長さdだけ短く構成されており、これにより下端出口部に開口部5が形成されている。このような開口部5を備えることにより、ドレン排水部材1は、後述するように浴槽側排水口14に設置した状態で排水口面に接することなく、大気に開放されるように構成されている。
【0015】
ドレン排水部材1は以上のように構成されており、次に、図8を参照して、ドレン排水部材1の浴槽側排水口14への設置について説明する。まず、背面部2bの曲面を浴槽側排水口14の凹部18aに嵌めこむように配置する。次に、両翼部2cの裏側に設けられ両面テープ(図示せず)により、両翼部2cを土手部18側面に貼付固定する。この位置において、ドレン排水部3の排水流路部3bの下端が、逆止弁14bの直上に位置するように配置されている。
【0016】
次に、図9を参照して、ドレン排水部材1による潜熱回収ドレン及びミストドレンの排水態様について説明する。熱源機16から排出される潜熱回収ドレンについては、接続部3aに導かれ、排水流路3内を流下して下端出口部から浴槽側排水口14の逆止弁14bの上に排出される。この場合、潜熱回収ドレンについては流量が比較的多いため、逆止弁14bは直ちに開弁する。これにより、ドレンはエルボ部23内に流下して、さらに排水管22を介して外部に排出される。その際、逆止弁14bを大きく開弁させるために、排水流路の下端出口部の流路径を絞って、排出時の水勢が強くなるようにしている。
一方、ミストサウナ15からのドレンについては、ドレン配管15aを経由して接続部4aに導かれる。さらに、本体2の内側表面を伝って流下し、浴槽側排水口14上に溜まっていく。この場合、ミストサウナからのドレン量は比較的少ないため、逆止弁14bは大きくは開弁せず、逆止弁14bの僅かに開いた隙間から排水エルボ23内に流れ込む。
このように、いずれのドレンについても大量に滞留することなく、一定量を超えた場合には逆止弁14bが開弁するため、エプロン内空間13aが高湿度となることはない。
【0017】
なお、本実施形態では、ミストドレン配管15aを右側接続部4aに接続する例を示したが、エプロン内空間の状態に応じて、左側接続部4bに接続する形態とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、潜熱回収型熱源機、ミストサウナのみならず、ヒートポンプ除湿機等、ユニットバスに設置される他の機器・システムから発生するドレンの処理のための排水部材としても適用可能である。
さらに、ユニットバスに限らず、浴室一般のドレン排水処理のための排水部材としても適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・・ドレン排水部材
2・・・・本体
3・・・・排水路
3・・・・ドレン排水部
3・・・・排水流路
3b・・・排水流路部
4a・・・接続部
5・・・・開口部
10・・・ユニットバス
11・・・防水パン
13・・・エプロン
14・・・浴槽側排水口
14b・・逆止弁
15・・・ミストサウナ
15a・・ミストドレン配管
16・・・熱源機
16a・・ドレン配管
18・・・土手部
23・・・排水エルボ部
23・・・エルボ部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレン排水を、ユニットバス内の防水パンの浴槽側排水口に排水するためのドレン排水部材であって、
本体と、本体内にドレン排水流路部と、本体上部にドレン配管との接続部と、本体下部に出口部と、を備え、
該出口部と該浴槽側排水口上面との間に開口部を有するように構成されて成る、ことを特徴とするドレン排水部材。
【請求項2】
前記本体が前記防水パンの土手部に取り付けられた状態において、前記出口部が、前記浴槽側排水口に設けられた逆止弁の直上に位置するように構成して成る、ことを特徴とする請求項1に記載のドレン排水部材。
【請求項3】
前記ドレン排水流路部は、潜熱回収型熱源機からのドレン排水を排水するための第一のドレン排水流路部と、前記ユニットバスに設置したミストサウナからのドレン排水を排水するための第二のドレン排水流路部と、を備え、
該第一のドレン排水流路部の出口部が、前記逆止弁の直上に位置するように構成されて成ることを請求項1又は2に記載のドレン排水部材。
【請求項4】
前記第一のドレン排水流路部は、逆流防止用の水抜き孔を備えて成ることを特徴とする請求項3に記載のドレン排水部材。
【請求項5】
前記第一のドレン排水流路部を挟んで一対の前記第二のドレン排水流路部を備え、いずれか一方の前記第二のドレン排水流路部の前記接続部に、ミストサウナからのドレン配管を接続可能に構成し、かつ、他方の前記第二のドレン排水流路部の前記接続部を水抜き孔としたことを特徴とする請求項3又は4に記載のドレン排水部材。
【請求項6】
前記第一のドレン排水流路部の出口部断面積を、前記第二のドレン排水流路の出口部断面積より大きく構成したことを特徴とする請求項3乃至5に記載のドレン排水部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−229772(P2010−229772A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81078(P2009−81078)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】