説明

ドーナツ状基板の研磨装置

【課題】 装置の構成が簡易化し、ドーナツ状基板の内周部の研磨加工における作業効率を向上させるドーナツ状基板の研磨装置を提供すること。
【解決手段】 ドーナツ状基板1と、ドーナツ状基板の固定手段と、導電性を有しドーナツ状基板1の内周部1aを研磨位置において研磨する内面砥石10と、非研磨位置において内面砥石10に近接して配設されるドレッシングヘッド15と、内面砥石10とドレッシングヘッド15との間に電圧を印加する電圧印加手段30と、を少なくとも有しており、内面砥石10がドーナツ状基板1の内周部1aを研磨すると同時に、電圧印加手段30により内面砥石10とドレッシングヘッド15との間に電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に回転するドーナツ状基板の少なくとも円孔の内周部を、導電性を有し回転軸回りに回転する内面砥石により研磨するドーナツ状基板の研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの記憶装置の一つであるハードディスクは、薄いドーナツ状の円板(以下、ドーナツ状基板と呼ぶ)表面に磁性体を塗布し、この磁性体にデータを記憶させるものである。このドーナツ状基板の材料は、従来は主にアルミニウムであるが、剛性、耐久性、記憶容量等の性能を向上させるため、近年、化学強化ガラスや結晶性ガラスからなるドーナツ状基板が用いられている。
【0003】
上述したドーナツ状基板は、ハードディスクのアクセスタイムを短くするため、数万RPMの高速回転で使用される。そのため、ドーナツ状基板の表裏両面を高精度に加工し高い動バランスを実現する必要がある。また、ドーナツ状基板のエッジ部(外周部及び内周部)も、表裏両面と同程度の精度と高品質の鏡面に仕上げる必要がある。
【0004】
ドーナツ状基板の内周部における加工装置の一つとして、従来の電解インプロセスドレッシングは、ドーナツ状基板において所望の安定的な内周部の鏡面研磨を実現するために、内周部の研磨加工と、非研磨加工中における内面砥石の電解ドレッシングによる目立てと、を交互に行うドーナツ状基板の研磨装置を実施している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−105292号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、ドーナツ状基板の内周部の研磨加工と、非研磨加工中における電解ドレッシングとを交互に行うために、ドーナツ状基板と印加電極との間を回転軸の方向に、砥石を反復駆動させる必要があり、研磨加工に用いる装置の構成が複雑になるばかりか、研磨加工の作業効率低下の要因となっていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、装置の構成が簡易化し、ドーナツ状基板の内周部の研磨加工における作業効率を向上させるドーナツ状基板の研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、中央部に円孔を有するドーナツ状基板と、前記ドーナツ状基板の固定手段と、導電性を有し前記ドーナツ状基板の円孔に少なくとも一部挿入可能であり前記円孔の内周部を研磨位置において研磨する内面砥石と、前記研磨位置を除く非研磨位置において前記内面砥石に近接して配設されるドレッシングヘッドと、前記内面砥石と前記ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、を少なくとも有しており、前記内面砥石が前記ドーナツ状基板の内周部を研磨すると同時に、前記電圧印加手段により前記内面砥石と前記ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加することを特徴としている。
この特徴によれば、ドーナツ状基板の円孔の内周部を研磨すると同時に、内面砥石とドレッシングヘッドとの間に電圧を印加して電解ドレッシングすることにより、内面砥石が常時目立てされた状態で、作業効率よく研磨加工することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1に記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記ドレッシングヘッドが、前記ドーナツ状基板の回転動作とは独立して配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ドレッシングヘッドが、ドーナツ状基板の回転動作とは独立して配設されているため、ドーナツ状基板の回転動作に関わらず、ドレッシングヘッドを常時非研磨位置に配置できる。
【0010】
本発明の請求項3に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1または2に記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記ドレッシングヘッドが、前記固定手段側に配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ドレッシングヘッドが、固定手段側に配設されているため、ドーナツ状基板の交換時等において、ドーナツ状基板若しくは内面砥石の動作の邪魔にならず、該交換がスムーズにできる。
【0011】
本発明の請求項4に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記ドレッシングヘッドが、前記研磨位置と略対向した前記非研磨位置において前記内面砥石に近接して配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ドレッシングヘッドが、研磨位置と離間している略対向した位置において配設されているため、研磨加工による研磨紛の飛散等の影響を受けずに電解ドレッシングできる。
【0012】
本発明の請求項5に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記ドーナツ状基板が回転する第1回転軸に対して、前記内面砥石が回転する第2回転軸が、所定の傾斜角度傾いて配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ドーナツ状基板の第1回転軸に対して内面砥石の第2回転軸が所定の傾斜角度傾いて配設されているため、円孔の内径の大きさに関わらず電解ドレッシングする空間を確保できる。
【0013】
本発明の請求項6に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記内面砥石が先端面を有する円柱形状であって、前記先端面に前記先端面より小径の凸状部が形成されており、前記凸状部の外周面と前記先端面とで形成される段部を研磨面として利用していることを特徴としている。
この特徴によれば、凸状部の外周面と先端面とで形成される段部を研磨面として利用することで、内面砥石を第2回転軸の軸方向に動かすのみで、内周部において、より広い面積の面取り加工が可能となる。
【0014】
本発明の請求項7に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項6に記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記段部の断面形状が、前記ドーナツ状基板の内周部の最終研磨面と略同形状に形成されており、前記段部と前記ドーナツ状基板の内周部とが、一体的に当接されることを特徴としている。
この特徴によれば、凸状部の外周面と内面砥石の先端面とで形成される段部が、ドーナツ状基板の内周部の最終研磨面と略同形状に形成されているため、前記段部を、ドーナツ状基板の内周部に一度当接するのみで、内周部を研磨できる。
【0015】
本発明の請求項8に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1ないし7のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、前記研磨位置と前記ドレッシングヘッドとの間に紛体の侵入を防止する紛体侵入防止片が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば内面砥石により研磨された紛体が、紛体侵入防止片により内面砥石とドレッシングヘッドとの間に侵入することを防止できるため、電解ドレッシングの際に与える悪影響を排除できる。
【0016】
本発明の請求項9に記載のドーナツ状基板の研磨装置は、請求項1ないし8のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置であって、導電性を有し前記ドーナツ状基板の外周部を外周部研磨位置において研磨する外面砥石と、前記外周部研磨位置を除く外周部非研磨位置において前記外面砥石に近接して配設される外面砥石ドレッシングヘッドと、を更に有しており、前記外面砥石が前記ドーナツ状基板の外周部を研磨すると同時に、前記電圧印加手段により前記外面砥石と前記外面砥石ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加することを特徴としている。
この特徴によれば、ドーナツ状基板の内周部及び外周部が研磨されると同時に、内面砥石及び外面砥石を同時に電解ドレッシングして目立てできるため、更に作業効率よくドーナツ状基板の研磨加工ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、ドーナツ状基板の研磨装置の構成を示した模式図である。図2は、第1実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。図3は、砥石の研磨面の構成を示した模式図である。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施例のドーナツ状基板研磨装置は、第1回転軸Cを中心として中央部に円孔を有するドーナツ状基板1を回転駆動する基板駆動装置6と、図示しない砥石駆動装置により第2回転軸D’を中心として回転する内面砥石10と、同様に第3回転軸Eを中心として回転する外面砥石20と、内面砥石10とドレッシングヘッド15との間及び外面砥石20と外面砥石ドレッシングヘッド25との間に電圧を印加する電圧印加装置30と、から構成される。また、本実施例における第1回転軸Cと第2回転軸D’と第3回転軸Eとは、夫々互いに平行に配設されている。
【0020】
基板駆動装置6は、本発明の固定手段であって内空部7aを有する環状に形成されドーナツ状基板1を吸着させる真空吸着ヘッド7と、真空吸着ヘッド7と一体的に接続される回転台4とが、モータ軸Mを中心として回転する駆動モータ3により回転駆動される。また真空吸着ヘッド7及び回転台4は、該回転駆動とは独立して固定的に配設されるベース台2と接続されている。
【0021】
ドーナツ状基板1の固定について説明すると、ドーナツ状基板1を載置したヘッド面7bにおいて負圧を発生させるための図示しない負圧発生装置と、ヘッド面7bにおけるエアを排気する排気孔8とを有し、この構成により、ドーナツ状基板1をヘッド面7bに載置して、負圧発生装置によりヘッド面7b上のエアを排気孔8を介して外部に排出することで、ドーナツ状基板1を真空吸着ヘッド7に吸着し固定することができ、精度よく回転駆動することができるようになっている。
【0022】
尚、ドーナツ状基板1の固定手段は、ドーナツ状基板1を所定の位置に固定するものであれば、必ずしも本実施例に限られるものではなく、例えばいわゆるワックス固定によるものでも構わない。
【0023】
また、基板駆動装置6と後述するドレッシングヘッド15は、図2に示されるドーナツ状基板1を加工する加工位置と、ドーナツ状基板1から内面砥石10及び外面砥石20を離脱させてドーナツ状基板1の交換を可能にする図示しない非加工位置との間を移動可能に構成されている。
【0024】
更に、砥石駆動装置は、後述のように内面砥石10を第2回転軸D’の軸方向に移動可能に構成されており、同様に外面砥石20を第3回転軸Eの軸方向に移動可能に構成されている。
【0025】
次に、ドーナツ状基板1の研磨加工について説明する。
【0026】
内面砥石10は、導電性を有しドーナツ状基板1の円孔の内径よりも小径の先端面を有する円柱形状であって、外周面に形成される研磨面41に後述する砥粒42が配設されている(図3参照)。また、外面砥石20は、内面砥石10よりも大径の円柱形状であり、他は内面砥石10と同様の構成を有している。
【0027】
図2に示されるように、内面砥石10がドーナツ状基板1の内周部1aと当接し、外面砥石20がドーナツ状基板1の外周部1bと当接した状態にて、ドーナツ状基板1と砥石とを夫々回転駆動することにより、ドーナツ状基板1の内周部研磨工程と、外周部研磨工程とを同時に実施し、ドーナツ状基板1の内周部1a及び外周部1bを所望の研磨加工することができる。
【0028】
図3に示されるように、内面砥石10(及び外面砥石20)の研磨面41は、砥粒42(例えば、ダイヤモンドまたはcBN)と、導電性を有し砥粒42を固定する母地であるメタルボンド部43と、からなる。メタルボンド部43は、鋳鉄、青銅、その他の金属について粉末冶金法等を応用したものである。また、内面砥石10(及び外面砥石20)は、周面が円柱面であり、回転軸周りに回転しながらドーナツ状基板1の内周部1a(及び外周部1b)と当接させることで、内周部1a(及び外周部1b)を高精度且つ高品質に加工できるように成形されている。
【0029】
次に、本実施例における電解ドレッシングについて説明する。
【0030】
図1及び図3に示されるように、ドーナツ状基板1の内周部1a、外周部1bにおける高能率且つ高精密な鏡面研磨を実現するための、内面砥石10及び外面砥石20の研磨面41の目立て手段として知られている電解ドレッシングは、メタルボンド部43を電解ドレッシングにより溶解させて目立てを行うものである。
【0031】
先ず、電解ドレッシングの加工原理について説明すると、内面砥石10及び外面砥石20側にプラス極となるブラシ16、26を設け、研磨面41に対向するマイナス極である後述するドレッシングヘッド15、外面砥石ドレッシングヘッド25を設けて、極間を近接(約0.1〜0.3mm)に設定する。電圧印加装置30により該極間に直流パルス電圧を供給し、内面砥石10及び外面砥石20のメタルボンド部43を選択的に除去することで、効果的にドレッシングして研磨面41を目立てすることが可能となる。該ドレッシングを後述のようにドーナツ状基板1の研磨工程と同時に行うことにより、目つぶれや目詰まりによる内面砥石10及び外面砥石20の切れ味の低下を抑え、ドーナツ状基板1の高効率な鏡面研磨作業が可能となる。
【0032】
図2に示されるように、本実施例のドレッシングヘッド15は、環状に形成される真空吸着ヘッド7の内空部7aにおいて、ドーナツ状基板1の内周部1aを研磨する研磨位置と略対向する非研磨位置にて、真空吸着ヘッド7の回転駆動とは独立して固定的に配設されている。また、ドレッシングヘッド15に所定の電圧を供給する電源ケーブル17も同様に上述した回転駆動とは独立してベース台2に固定的に配設されている。このようにすることで、ドーナツ状基板1の回転動作に関わらず、ドレッシングヘッド15を常時非研磨位置Hに配置できる。
【0033】
次に、図3に示されるように、具体的な加工メカニズムについて説明すると、上述した極間に電圧を印加することにより、先ずメタルボンド部43が電解され、適度に砥粒42突出が得られる。この間に、電解溶出したメタルボンド材が、一部不導体化され不導体被膜40として内面砥石10及び外面砥石20の研磨面41に堆積するため、研磨面41の絶縁性が増して電解電流が自動的に低下する。この時が初期ドレッシング終了となる。この状況で、ドーナツ状基板1の内周部1a、外周部1bの研磨作業を開始すると、研磨面41の不導体被膜40が、内周部1a、外周部1bの表面と接触し摩擦により剥離、除去され、これと同時に砥粒42が、内周部1a、外周部1bの表面を研磨し始め砥粒磨耗が生じる。すると、研磨面41の絶縁性が低下して電解電流が回復する。これにより、磨耗した砥粒42間の不導体被膜40が薄くなった部分から電解溶出が再開され、また砥粒42突出が得られることになる。
【0034】
尚、この加工メカニズムは、使用する内面砥石10及び外面砥石20のメタルボンド種類若しくは電圧値、電流値等の電解条件、また被加工材であるドーナツ状基板1の材質などの加工条件により、ドレッシング効果が異なるため、最も実用的な効果が得られるように条件設定を行うことが好ましい。
【0035】
また図1に示されるように、本発明の電圧印加手段は、電圧印加装置30と、内面砥石10及び外面砥石20の回転シャフトと接触するブラシ16、26と、ドレッシングヘッド15及び外面砥石ドレッシングヘッド25と、電源ケーブルと、からなり、ブラシ16、26側にプラス極を、ドレッシングヘッド15及び外面砥石ドレッシングヘッド25側にマイナス極を印加するようになっている。電源は、直流電源をパルス状に供給できる定電流型電源が好ましい。
【0036】
特に図示しないが、研磨液供給装置は、内面砥石10とドレッシングヘッド15との間及び外面砥石20と外面砥石ドレッシングヘッド25との間に導電性研磨液を供給するようになっている。すなわち、研磨液供給装置は、砥石駆動装置に固定された研磨液供給ノズル13、23を有し、ドレッシングヘッド15が内面砥石10の研磨面41に近接する位置で、内面砥石10とドレッシングヘッド15との間に研磨液を供給できるようになっている。また、外面砥石20についても同様の構成を有している。
【0037】
砥石駆動装置は、図示しないNC制御により所定方向に移動できるようになっている。この構成により、ドーナツ状基板1の非加工位置から、内面砥石10を移動させてドーナツ状基板1を加工する加工位置にあるドーナツ状基板1に合わせて位置決めし、更に内面砥石10を第2回転軸Dの軸方向に移動させてドーナツ状基板1の内周部1aに接触させて研磨加工することができる。また、外面砥石20についても、同様の構成を有している。
【0038】
上述したように、ドレッシングヘッド15が、真空吸着ヘッド7の内空部7aに配設されており、このようにすることで、砥石駆動装置が移動して、ドーナツ状基板1に合わせて位置決めする際に、ドレッシングヘッド15が、砥石駆動装置の移動動作の邪魔にならず、該動作がスムーズにできる。同様に、基板駆動装置6の移動の際においても、ドレッシングヘッド15が、基板駆動装置6の移動動作の邪魔にならず、該動作がスムーズにできる。
【0039】
内面砥石10が、上述したようにドーナツ状基板1の内周部1aを研磨する内周部研磨工程と同時に、電圧印加装置30により内面砥石10とドレッシングヘッド15との間に所定の電圧を印加する電圧印加工程を実施する。このようにすることで、内面砥石10が常時目立てされた状態で、作業効率よく研磨加工することができる。
【0040】
また、ドレッシングヘッド15が、内周部1aの研磨位置と略対向した位置において、内面砥石10に近接して配設されており、このようにすることで、研磨加工による研磨紛の飛散等の影響を受けずに電解ドレッシングできる。
【0041】
また同様に、外面砥石20が、上述したようにドーナツ状基板1の外周部1bを研磨すると同時に、電圧印加装置30により外面砥石20と外面砥石ドレッシングヘッド25との間に所定の電圧を印加する。
【0042】
この構成により、ドーナツ状基板1の内周部1a及び外周部1bが研磨されると同時に、内面砥石10及び外面砥石20を同時に電解ドレッシングして目立てできる。このようにすることで、更に作業効率よくドーナツ状基板1の研磨加工ができる。
【0043】
また、図2に示されるように、基板駆動装置6の内空部7a周面の所定位置に、ドーナツ状基板1の内周部1aの研磨位置Kとドレッシングヘッド15との間に紛体の侵入を防止する紛体侵入防止片35が、上述したようにドーナツ状基板1の回転動作とは独立して配設されているドレッシングヘッド15と接続され、ドーナツ状基板1の内周部1a近傍に向かって配設されている。このようにすることで、内面砥石10により研磨された紛体が、紛体侵入防止片35により内面砥石10とドレッシングヘッド15との間に侵入することを防止できるため、電解ドレッシングの際に与える悪影響を排除できる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の第2実施例ないし第5実施例を図面に基づいて説明すると、図4は、第2実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。図5は、図4の点線囲い部の拡大図である。図6は、第3実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。図7は、第4実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。図8は、第5実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。尚、上述した実施例と重複する装置構成については説明を省略する。
【0045】
図4及び図5に示されるように、第2実施例における第2回転軸Dは、ドーナツ状基板1が回転する第1回転軸Cに対して略45度の傾斜角度に傾いて形成されており、内面砥石10cの先端面10aと後述する凸状部11とを利用して、ドーナツ状基板1の内周部1aを研磨できるようになっている。更に、上述のように第2回転軸Dが第1回転軸Cに対して傾いて形成されていることにより、研磨位置Kにおいて行う研磨工程と同時に、非研磨位置Hにおいて後述する内面砥石10の電解ドレッシングが可能となっている。
【0046】
次に、外面砥石20cは、内面砥石10cと一体に形成され第2回転軸D回りに回転し、内周面に研磨面41が配設されているフレアー形状であり、上述した45度の傾斜角度において、上述した内面砥石10cの研磨面41がドーナツ状基板1の内周部1aと当接すると略同時に、外面砥石20cの研磨面41がドーナツ状基板1の外周部1bと当接するように形成されている。
【0047】
尚、本実施例の内面砥石10cと外面砥石20cとは、同一の第2回転軸D回りに一体に回転するように形成されており、夫々ドーナツ状基板1の内周部1a及び外周部1bを研磨するため、装置構成をシンプルにできる。
【0048】
次に、ドーナツ状基板1の内周部1aにおける研磨加工について、詳細に説明する。
【0049】
図5に示されるように、ドーナツ状基板1の内周部1aにおける最終研磨面は、表裏一対に形成されるように、ドーナツ状基板1の表面1f、裏面1gと直交方向に形成される内周面1dと、内周面1dと表面1fとの間に形成される第1面取り面1cと、同様に内周面1dと裏面1gとの間に形成される第2面取り面1eと、で構成されるようになっている。
【0050】
また第1面取り面1cは、内周面1d及び表面1fに対して略45度に形成されており、同様に第2面取り面1eは、内周面1d及び裏面1gに対して略45度に形成されている。
【0051】
ドーナツ状基板1の内周部1aを上述した最終研磨面の形状に研磨加工するように、内面砥石10cの先端部において先端面10aより小径の凸状部11が形成されており、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度で当接する内面砥石10cの先端面10aと、凸状部11とで形成される段部を研磨面41として利用している。
【0052】
即ち、内面砥石10cの先端面10aと、凸状部11の第1外周面11aと、第2外周面11bとが、夫々ドーナツ状基板1の最終研磨面である第1面取り面1c、内周面1d、第2面取り面1eと略同形状に形成され、一体的に当接するように予め形成されている。
【0053】
このように内面砥石10cの先端面10aと凸状部11の外周面とで形成される段部を研磨面41として利用することで、内面砥石10cを第2回転軸Dの軸方向に動かすのみで、ドーナツ状基板1の内周部1aにおいて、より広い面積の面取り加工ができる。
【0054】
また、このようにドーナツ状基板1の内周部1aの最終研磨面と略同形状に形成されている上述した段部を、ドーナツ状基板1の内周部1aに一度当接するのみで、内周部1aを研磨できる。
【0055】
上述したように、内面砥石10cが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度で当接するために、図5に示されるように、第1回転軸Cと直交する内面砥石10cの先端面10aが、第1面取り面1cを研磨するように形成されている。同様に凸状部11の第1外周面11aは、内面砥石10cの先端面10a及び周面10bに対し略45度に形成され、第2外周面11bは、周面10bと略平行に形成されている。
【0056】
即ち、内面砥石10cが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度で当接することにより、内面砥石10cの先端面10aと、凸状部11の第1外周面11a及び第2外周面11bの形状が、予め形成し易い。
【0057】
尚、詳細は特に図示しないが、ドーナツ状基板1の外周部1bについても、内周部1aと同様の形状に研磨加工するように、外面砥石20cの内周面が、予め所定の形状に当接する研磨面41に形成されている。
【0058】
また、内面砥石10cの先端部が、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度にて当接した場合に、非研磨位置Hにおいて、内面砥石10cとドレッシングヘッド15とが近接している。
【0059】
上述したようにドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して内面砥石10cの第2回転軸Dが傾斜しているため、ドーナツ状基板1における円孔の内径の大きさに関わらず、電解ドレッシングする空間を確保できる。
【0060】
尚、本実施例では、内面砥石10cの第2回転軸Dが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度の角度で傾斜しているが、内面砥石10cによる研磨加工を行いながら、電解ドレッシングが可能な空間を確保するものであれば、ドライブ軸の傾斜する角度は45度に限らず何度でもよい。
【0061】
また、本実施例では、内面砥石10cの第2回転軸Dが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して傾斜しており、研磨加工の際に発生する研磨紛が、ドレッシングヘッド15と内面砥石10cとの間に侵入することが、上述した第1実施例と比較して少ないため、紛体侵入防止片35の設置を省略することも可能である。
【実施例3】
【0062】
図6に示されるように、第3実施例における外面砥石20’と内面砥石10’とは略同径であり、先端部における外周面に研磨面41を有する円柱形状であって、外面砥石20’が回転する第3回転軸Fは、内面砥石10’の回転する第2回転軸Dと略平行に形成されており、且つ内面砥石10’と外面砥石20’とは、夫々第2回転軸D、第3回転軸Fの軸方向に移動可能に形成されている。
【0063】
このようにすることで、内面砥石10’及び外面砥石20’の移動動作が同じ方向になるので、砥石駆動装置の構成をシンプルにできる。
【0064】
また、外面砥石20’が回転する第3回転軸Fが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して、第2回転軸Dと同一の略45度の傾斜角度で傾いて形成されているため、外面砥石20’の先端部における研磨面41を、図4に示される内面砥石10’と同様の形状とすることができる。
【実施例4】
【0065】
次に、図7に示されるように、第4実施例における外面砥石20’が回転する第3回転軸Gは、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対する内面砥石10’の第2回転軸Dの傾きとは反転した向きに傾いており、且つ第1回転軸Cに対して略45度の傾斜角度であり、第2回転軸Dの傾斜角度と同じである。
【0066】
このようにすることで、ドーナツ状基板1の内周部1aにおける研磨位置及び外周部1bにおける外周部研磨位置が、いずれも図示ドーナツ状基板1の右側部において互いに近傍に設定できるため、内面砥石10’のドレッシングヘッド15及び外面砥石20’の外面砥石ドレッシングヘッド25や、図示しない研磨液供給ノズル等の機器を、いずれも図示右側の研磨位置及び外周部研磨位置の周辺に集中的に配設することができる。
【0067】
また、上述の第3実施例と同様に、外面砥石20’が回転する第3回転軸Gが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して、第2回転軸Dと同一の略45度の傾斜角度で傾いて形成されているため、外面砥石20’の先端部における研磨面41を、図4に示される内面砥石10’と同様の形状とすることができる。
【実施例5】
【0068】
次に、図8に示されるように、第5実施例における外面砥石20’が回転する第3回転軸Jは、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cと略平行に形成されている。
【0069】
このようにすることで、上述した内面砥石10’のように、電解ドレッシングを行う上でスペース制限のない外面砥石20’については、第1回転軸Cに対して傾斜のない従来用いられている汎用品を利用することができる。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、上記実施例では、内面砥石10’の第2回転軸Dが、ドーナツ状基板1の第1回転軸Cに対して略45度の傾斜角度で傾いているが、ドーナツ状基板1の内周部1aに影響されず電解ドレッシングする空間を確保できれば、必ずしも第2回転軸は、第1回転軸Cに対して略45度の傾斜角度で傾いているものに限られず、傾斜角度は何度でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ドーナツ状基板の研磨装置の構成を示した模式図である。
【図2】第1実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。
【図3】砥石の研磨面の構成を示した模式図である。
【図4】第2実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。
【図5】図4の点線囲い部の拡大図である。
【図6】第3実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。
【図7】第4実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。
【図8】第5実施例における内面砥石及び外面砥石がドーナツ状基板を研磨する状況を示した断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ドーナツ状基板
1a 内周部
1b 外周部
1c 第1面取り面
1d 内周面
1e 第2面取り面
1f 表面
1g 裏面
2 ベース台
3 駆動モータ
4 回転台
6 基板駆動装置
7 真空吸着ヘッド(固定手段)
7a 内空部
7b ヘッド面
8 排気孔
10、10c 内面砥石
10’ 内面砥石
10a 先端面
10b 周面
11 凸状部
11a 第1外周面
11b 第2外周面
13 研磨液供給ノズル
15 ドレッシングヘッド
16 ブラシ
17 電源ケーブル
20、20c 外面砥石
20’ 外面砥石
23 研磨液供給ノズル
25 外面砥石ドレッシングヘッド
26 ブラシ
30 電圧印加装置(電圧印加手段)
35 紛体侵入防止片
40 不導体被膜
41 研磨面
42 砥粒
43 メタルボンド部
C 第1回転軸
D、D’ 第2回転軸
E、F、G、J 第3回転軸
K 研磨位置
H 非研磨位置
M モータ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に円孔を有するドーナツ状基板と、前記ドーナツ状基板の固定手段と、導電性を有し前記ドーナツ状基板の円孔に少なくとも一部挿入可能であり前記円孔の内周部を研磨位置において研磨する内面砥石と、前記研磨位置を除く非研磨位置において前記内面砥石に近接して配設されるドレッシングヘッドと、前記内面砥石と前記ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、を少なくとも有しており、前記内面砥石が前記ドーナツ状基板の内周部を研磨すると同時に、前記電圧印加手段により前記内面砥石と前記ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加することを特徴とするドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項2】
前記ドレッシングヘッドが、前記ドーナツ状基板の回転動作とは独立して配設されていることを特徴とする請求項1に記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項3】
前記ドレッシングヘッドが、前記固定手段側に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項4】
前記ドレッシングヘッドが、前記研磨位置と略対向した前記非研磨位置において前記内面砥石に近接して配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項5】
前記ドーナツ状基板が回転する第1回転軸に対して、前記内面砥石が回転する第2回転軸が、所定の傾斜角度傾いて配設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項6】
前記内面砥石が先端面を有する円柱形状であって、前記先端面に前記先端面より小径の凸状部が形成されており、前記凸状部の外周面と前記先端面とで形成される段部を研磨面として利用していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項7】
前記段部の断面形状が、前記ドーナツ状基板の内周部の最終研磨面と略同形状に形成されており、前記段部と前記ドーナツ状基板の内周部とが、一体的に当接されることを特徴とする請求項6に記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項8】
前記研磨位置と前記ドレッシングヘッドとの間に、紛体の侵入を防止する紛体侵入防止片が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置。
【請求項9】
導電性を有し前記ドーナツ状基板の外周部を外周部研磨位置において研磨する外面砥石と、前記外周部研磨位置を除く外周部非研磨位置において前記外面砥石に近接して配設される外面砥石ドレッシングヘッドと、を更に有しており、前記外面砥石が前記ドーナツ状基板の外周部を研磨すると同時に、前記電圧印加手段により前記外面砥石と前記外面砥石ドレッシングヘッドとの間に電圧を印加することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のドーナツ状基板の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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