説明

ナノサイズ顔料組成物の製造および使用

ナノサイズ顔料を50〜99重量%で、低分子量ポリスルホン化炭化水素、特にナフタレンモノスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーまたはナフタレンジスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーを1〜50重量%で、含む有機ナノサイズ顔料の混合物、ならびに直接顔料の有機顔料製造または顔料仕上げのための、粒子成長および結晶相の配向物質としてのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズ有機顔料の新規な製造方法、およびその使用、例えば添加剤として顔料粒子の成長および/または結晶相を配向させ、かつ制御するためのその使用に関する。このような合成物は、有機顔料の合成中または仕上げ中に存在する場合、特に有用である。
【0002】
ルイス酸顔料の可溶化およびin situでの顔料分散による、有機顔料ナノ粒子薄膜ディバイスが、Hsieh, B. R.; Melnyk, A. R., Xerox Corporation, Webster, NY, USAによりJournal of Imaging Science and Technology 45(1), 37-42 [2001]に記載されている。
【0003】
多数の特許に、ナノサイズ顔料の製造方法が記載されている。例えば、米国特許5,679,138号には、対応する顔料を高速ミルで微粉砕することにより製造する、顔料粒径が100nm未満の顔料を含むインクジェットインキの製造方法、およびインクジェットプリンタでのその使用が記載されている。ヨーロッパ特許第1,195,413号には、マイクロジェットリアクタ(micro jet reactor)内で沈殿させ、得られた顔料懸濁液をガスまたは蒸発液体で移動させることによる、微細に粉砕された有機顔料の製造が記載されている。平均粒径26±11nmを有する銅テトラクロロフタロシアニンを得た実施例が示されている。
【0004】
米国特許6,225,472号および米国特許6,406,533号は、顔料粒子の成長および/または結晶相を配向させ、かつ制御することができる、6,13−ジヒドロキナクリドン誘導体が記載されている。
【0005】
米国特許6,264,733号には、式:(MO3S)m−Q−(CH2−(X)−(Y)no(I)(式中、Qは、顔料部分を表し、Mは、金属カチオン、第4級NカチオンまたはHを表し、Xは、芳香族基、5原子もしくは6原子の環を少なくとも1個有する環状へテロ脂肪族基、または6原子の環を少なくとも1個有するヘテロ芳香族基で、フタルイミド基以外のものであり、Yは、スルホン酸もしくはカルボン酸またはそれらの塩であり、mおよびnは、互いに独立して、0〜2.5の整数を表し、そしてoは、0.05〜4の整数である)で示される、顔料粒子の成長および/または結晶相の新規な配向剤(director)が記載されている。
【0006】
このような化合物は、顔料合成中に存在する場合、顔料粒子の成長および結晶相を効果的に配向させることができるが、それは、顔料誘導体であるという欠点を有しており、それゆえ、最初に別個に合成する必要があり、そして、追加分の制御的除去の対象となる。
【0007】
最新の技術水準の文献には、顔料合成中または顔料仕上げ中における、ナノサイズ顔料粒子の、顔料の結晶成長を起こさせるための使用または結晶相配向物質(crystal phase director)としての使用は記載されていない。
【0008】
意外にも、低分子量のポリスルホン化炭化水素、特に、ナフタレンモノスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーもしくはナフタレンジスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーにより安定化された、ナノサイズ化された粒子形態の有機顔料は、顔料合成中または顔料仕上げ工程中に存在する場合、結晶成長および結晶相の配向物質として効果的に用いられ得ることが、ここに見出された。それは、キナクリドンおよびジケトピロロピロール顔料の場合に特に効果的である。
【0009】
このようなナノサイズ顔料粒子は、慣用的な合成手順により製造することができ、顔料製造業者に、追加の顔料仕上げ工程を必要とせずに、好ましい色特性を有する顔料を製造するための有効な手段を提供することができる。
【0010】
こうして、本発明の方法が、製造業者が、経済的で環境にやさしい手段により、高機能、高彩度の有機顔料を製造することを可能とするので、商業的に非常に重要である。
【0011】
本発明は、有機顔料を酸に溶解し、そして酸性溶液から、低分子量のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーの存在下で、液体、好ましくは水に沈殿させることにより、ナノサイズ顔料粒子の有機顔料を製造する方法に関する。得られた懸濁液をろ過すると、そのプレスケークは、ナノサイズ化された顔料粒子形態の、ポリマーおよび顔料からなる。それは、例えば、酸性の湿潤形態で「そのまま」用いることができるが、あるいは水または有機溶剤で再スラリー化して、ナノサイズ顔料粒子を含有する分散体を得ることもできる。
【0012】
本発明は、更に、顔料合成中または顔料仕上げ工程中に存在する場合の、結晶成長および結晶相の配向物質としての、そのようなナノサイズ化顔料/ナノサイズ化ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の使用に関する。
【0013】
適切な有機顔料としては、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジンおよびキノフタロン顔料、またはそれらの混合物もしくは固溶体、特に、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、フタロシアニン、インダントロンまたはイミノイソインドリノン顔料、あるいはそれらの混合物もしくは固溶体からなる群より選択される有機顔料が挙げられる。
【0014】
好ましい有機顔料は、キナクリドン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリレン、ジオキサジン、イミノイソインドリノン、イミノイソインドリン、ジケトピロロピロールおよびインダントロン顔料である。
【0015】
とりわけ好ましいのは、式(I):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、AおよびDは、互いに独立して、H、F、Cl、C1〜C3アルキルまたはC1〜C3アルコキシである)で示されるキナクリドン顔料である。
【0018】
本発明の方法は、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドンおよび2,9−ジメトキシキナクリドンのナノサイズ化粒子の製造に特に有用である。
【0019】
更に、本方法は、1種以上のキナクリドン成分を含有するナノサイズ化粒子形態の固溶体の製造にも適している。つまり本発明の態様は、式(I)で示されるキナクリドンを2種以上含有する混合物を、本発明の方法により共沈させて、キナクリドン固溶体生成物を生成させる方法にも関する。
【0020】
本発明の方法は、例えば米国特許4,810,304号に記載されているような、キナクリドン/2,9−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/4,11−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン、キナクリドンキノン/キナクリドン、6,13−ジヒドロキナクリドン/キナクリドン、またはキナクリドン/ジケトピロロピロール固溶体などの、ナノサイズ化粒子形態の固溶体顔料の製造に特に実用的である。
【0021】
本発明のポリスルホン化炭化水素は、好ましくは、その分子内に脂肪族部分および芳香族部分の両方を含んでおり、平均分子量が、約20000未満、特に約10000未満、好ましくは400〜3000、最も好ましくは600〜1600であり、かつ好ましくは炭素原子に対する硫黄原子の比が、少なくとも1:11である。好ましくはナフタレンモノスルホン酸ポリマーまたはナフタレンジスルホン酸ポリマー、最も好ましくは式(II):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、nは、0〜12、好ましくは1〜5の数である)で表される。
【0024】
ナフタレンスルホン酸は、特に1−もしくは2−ナフタレンスルホン酸、または好ましくは1−ナフタレンスルホン酸と2−ナフタレンスルホン酸との混合物である。最も好ましくは、本発明のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーは、モル比が約4:1の1−ナフタレンスルホン酸と2−ナフタレンスルホン酸との混合物から製造される。
【0025】
上記のポリスルホン化炭化水素またはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーは、最終的な顔料/ポリマー混合物に基づいて、1〜50重量%、好ましくは10〜45重量%の濃度で顔料に添加される。それらを、別個に製造して、その後、顔料の沈殿工程前または沈殿工程中に添加することができる。好ましくは、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーは、顔料を酸性媒体に溶解した後、つまり顔料の存在下で製造される。
【0026】
ナノサイズ化顔料は、例えば、顔料を好ましくは鉱酸、例えば硫酸またはリン酸などに溶解する方法により製造される。その時、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドは、好ましくはモル比1:1で加えて反応させ、本発明のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーを生成させ、次いで、顔料/ポリマー混合物を沈殿媒体に沈殿させる。
【0027】
沈殿媒体は、好ましくは水である。有機溶剤、好ましくは水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ−C1〜C3アルキルエーテル、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−アミルアルコールのようなC1〜C5アルコール、または有機溶剤の混合物などが、本発明のナノサイズ顔料の生成に負の影響を及ぼさないような濃度で沈殿媒体に存在することができる。
【0028】
更に、沈殿工程中、または沈殿工程後に、酸を一部または完全に中和することが有利となり得る。中和剤は、例えば、アンモニアまたは有機アミン、あるいは好ましくは、水性の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような水酸化アルカリである。
【0029】
更に、添加剤、例えば、界面活性剤、消泡剤、タルクもしくはマイカなどの無機充填剤、UV吸収剤、ヒンダードアミンのような光安定剤、樹脂またはワックスなどを、本発明の沈殿工程前、沈殿工程中、または沈殿工程後に添加することが可能である。添加剤の量は、顔料の量に基づいて、0〜40重量%、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0030】
代表的には、顔料、ナフタレンスルホン酸およびホルムアルデヒドは、1:1:1のモル比で用いられる。しかし、それを超えるナフタレンスルホン酸またはホルムアルデヒドを用いて、本発明のナノサイズ顔料粒子を、所望のポリマー生成物と混合した状態で得てもよい。好ましくは、顔料:ナフタレンスルホン酸:ホルムアルデヒドのモル比は、1:1〜1.2:1〜2である。
【0031】
有利には、顔料のスルホン化がほとんど起らないように、反応条件をする。それゆえ、顔料は、好ましくは65℃未満、好ましくは30〜60℃、最も好ましくは35〜45℃の温度で溶解され、反応は、好ましくは100℃未満、最も好ましくは50〜90℃の温度で行なわれる。
【0032】
温度、ならびにナフタレンスルホン酸および/またはホルムアルデヒドを顔料/硫酸混合物に添加するタイミングのような、他の反応条件にもよるが、ナフタレンスルホン酸の更なるスルホン化、特にナフタレンジスルホン酸へのスルホン化が幾分起こるかもしれない。本発明のナノサイズ顔料の粒子径および更なる特性に負の影響を及ぼさない限りは、そのようなナフタレンジスルホン酸部分を有するポリマーの存在は禁止されるわけではない。
【0033】
好ましい実施態様において、対応する顔料を、約50℃未満、好ましくは約35〜45℃の温度で、約5〜30重量%、最も好ましくは約10〜25重量%の濃度で濃硫酸(95〜98%)に溶解する。ナフタレンスルホン酸、好ましくはモル比が4:1の1−ナフタレンスルホン酸と2−ナフタレンスルホン酸との混合物を、約50℃未満、好ましくは約35〜45℃の温度で顔料溶液に添加して、同じく溶解する。最後にホルムアルデヒドを、好ましくはパラホルムアルデヒドの形態で、約55℃未満、好ましくは35〜50℃の温度で添加する。反応混合物を、約50〜90℃の温度に加熱して、その温度で反応が完了するまで、好ましくは約30分〜6時間、最も好ましくは約30〜90分間撹拌し、そして40℃未満の温度を有する水、好ましくは、25℃未満の温度を有する水または氷水に浸す。スラリーを、約0〜50℃、好ましくは10〜25℃の温度で、約5分〜6時間、好ましくは約30分〜3時間撹拌する。その後、本発明の合成物を、ろ過または遠心分離により分離するが、酸性のプレスケーク形態そのままで用いてもよいし、または水でpH4〜7になるまで洗浄する。得られた生成物のケーキを、また、そのまま用いてもよいし、または水もしくは溶剤で再スラリー化して、ナノサイズ顔料含有分散体を得てもよいし、あるいは乾燥させてもよい。
【0034】
一般に、本発明の反応条件は、式(III):
【0035】
【化7】

【0036】
(式中、nは、1または2であり、そしてQは、顔料からHを引抜くことにより得られる顔料の基である)で示される、対応する、極微量のモノまたはジナフタレンスルホン酸メチル顔料誘導体の存在下で、純粋なナノサイズ顔料を生成させるのに好都合である。
【0037】
いずれにしても、本発明のナノサイズ顔料に基づいて、0.01〜10重量%の濃度でのそのような誘導体の存在は、更なる有利な効果を有することができる。
【0038】
いずれの装置であっても、該装置中での酸性溶液からの沈殿が、所望の特性を有する本発明のナノサイズ顔料をもたらすなら、用いることができる。沈殿は、例えば、発行済みヨーロッパ特許第1,195,413号に記載されているようなマイクロリアクタ、または米国特許3,607,336号に記載されているような高乱流浸水装置(high turbulence drowning equipment)で行なうことができるが、または簡便に、顔料/ナフタレンスルホン酸ポリマーの硫酸溶液を、容器内の水または氷/水に浸すことにより行なうことができる。
【0039】
単離した試料は、公知の方法、例えば、元素分析または質量分析(LCMS、GCMSまたはマトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI))などあるいはHPLC法により分析することができ、それらは全て、当業者に周知である。本発明のナノサイズ顔料粒子の粒径は、電子顕微鏡写真または光散乱法により得ることができる。
【0040】
通常、本発明のナノサイズ顔料は、酸性の水性分散体からのものでは、電子顕微鏡写真で測定すると、平均粒径が1〜100nm、好ましくは1〜50nm、最も好ましくは3〜30nmである。より厳密には、本発明のナノサイズ顔料は、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%が、粒径1〜20nm、好ましくは3〜10nmの粒子からなる。この超微細な分級物は通常、非常に狭い粒径分布を有しており、通常は約3nm以下、多くの場合、この分級範囲内の粒子の95重量%が1〜2nmである。所望なら、粒径が20〜100nmの、より大きな粒子の分級物を、通常の方法、例えば、限外ろ過または超遠心分離で分級することができる。通常、より大きな分級物と超微細な分級物とは重複しないので、分級を容易にする。しかし、本発明のナノ粒子の有利な特性に、より大きな分級物が影響を及ぼすことはないため、そのような分級は、技術的に必要なく、行わないことが好ましい。
【0041】
意外にも、本発明のナノサイズ顔料/ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸ポリマー混合物は、顔料合成中または顔料仕上げ工程中に存在する場合に、効果的な結晶成長および結晶相の配向物質として作用し得ることが見出された。
【0042】
一般に、粒子成長および結晶相の配向物質として用いた場合の、本発明のナノサイズ顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物は、顔料合成の最終工程の前または顔料合成工程中に、合成される顔料に基づいて、約25重量%まで、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.3〜10重量%、最も好ましくは0.5〜8重量%の濃度で添加される。粒子成長および/または結晶相の配向物質としての顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の添加は、一般に、合成される顔料の収率に対し無視できるほどの影響しか有さない。
【0043】
本発明のナノサイズ顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の成長および/または結晶相の配向物質は、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チアジンインジゴ、チオインジゴ、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、ジオキサジン、インダントロン、アントラピリミジンおよびキノフタロン顔料のクラスの顔料を含む、幾つかの顔料のクラスの顔料の合成における添加剤として適している。
【0044】
本発明のナノサイズ顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物は、直接顔料グレード(direct pigmentary grade)の、ジケトピロロピロールおよびキナクリドンならびに/またはそれの固溶体の合成に特に適している。前記合成物は、特定の結晶変態のあるキナクリドン顔料、例えばα、βまたはγ−キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドンおよびそれらの固溶体などの合成にとりわけ適している。
【0045】
本発明は特定の理論に限定されることはなく、本発明のナノサイズ顔料粒子は、合成される顔料の種として作用することができ、低分子量のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーは、合成した顔料分子に固着することができ、そうすることにより、結晶成長および結晶相を更に配向させることができると考えられる。用語「結晶成長を配向させる(directing the crystal growth)」は、適切な顔料サイズを有する顔料粒子の合成を制御すること、ならびに結晶の成長を配向させて、所望の結晶相で、特に所望の形状、例えば、小板状、針状、立方状、小葉状、角柱状および他の幾何学的形態などの粒子を生成させることを指す。その効果は、有機顔料の化学構造、反応媒体の選択、および本発明の粒子成長誘導合成物の化学構造により影響を受ける可能性がある。このため通常は、所望の顔料と同じ顔料のクラスおよび/または更には同じ結晶相のナノサイズの種、最も好ましくは所望の顔料と同一のナノサイズの種を用いることが好ましい。
【0046】
例えばろ過工程における顔料の分離中に、ポリマー化合物を(反応媒体に可溶性である場合)洗い流すことができ、所望なら、ろ液または洗浄液から回収することができる。通常、微量のこの化合物は、一部、顔料表面に残存して、付加的なメリットを有することができる。そのようなメリットは、例えば、レオロジー特性、分散性および湿潤挙動などの改善された顔料特性、抗凝集性、および改善された熱安定性である。
【0047】
特定の例においては、本発明の合成物を、公知の顔料粒子成長抑制剤、例えば、フタルイミドメチル−、イミダゾルメチル−もしくはピラゾルメチル−キナクリドン、顔料スルホン酸または特定のポリマー;あるいは他の任意成分、例えば、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、可塑剤、または一般的なテクスチャ改良剤などを含む、他の添加剤と混合または併用して用いることが有利である。そのような追加の添加剤は、該添加剤が顔料合成条件下で安定であり、最終的な顔料特性または環境に負の影響を及ぼさない限り、使用してもよい。一般に、そのような添加剤は、合成される顔料に基づいて、0.1〜25重量%、好ましくは0.2〜15重量%、最も好ましくは0.5〜8重量%の濃度で用いることができる。
【0048】
適切な特定のポリマーは、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはセルロース誘導体である。
【0049】
適切な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキルベンゼン−もしくはアルキルナフタレン−スルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩)またはカチオン性界面活性剤(例えば、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリドなどの第4級塩)あるいはノニオン性もしくは両性界面活性剤(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレン界面活性剤およびアルキルもしくはアミドプロピルベタイン)が挙げられる。
【0050】
適切なテクスチャ改良剤は、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸またはベヘン酸などの脂肪酸、ならびにラウリルアミンおよびステアリルアミンなどの脂肪アミンである。更に、脂肪アルコールまたはエトキシル化脂肪アルコール、ポリオール(例えば脂肪族1,2−ジオール)またはエポキシ化大豆油、ワックス、樹脂酸、そして樹脂酸塩などを、この目的で用いてもよい。
【0051】
適切なUV安定化剤は、例えば、商品名Tinuvin(登録商標)またはCiba Fast(登録商標)H Liquid(アリールスルホン化ベンゾトリアゾール)で公知のベンゾトリアゾール誘導体であり、両者ともCiba Specialty Chemicals Corporationの製品である。
【0052】
本発明のナノサイズ顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物は、抗凝集剤として、ならびに優れた粒子成長抑制剤および相配向物質として作用する能力により、一般に、顔料仕上げ、顔料処理、または顔料適用において、例えばビーズミル、押出機、カレンダーなどにおける顔料分散工程中、ならびに顔料合成中に、添加剤として用いることができる。
【0053】
本発明のナノサイズ顔料/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物は、それ自体が強く着色されており、無機または有機の基質、例えば鉱油、ペイント、インク、カラーフィルター、繊維、プラスチック、紙、化粧品および布地を着色するための着色剤として用いることができる。そのような用途は、例えばPCT/EP03/08654のカラーフィルターから、それ自体が周知である。
【0054】
以下の実施例は、本発明の幾つかの好ましい実施態様を更に説明しているが、本発明の範囲を限定するものではない。実施例においては、他に断りがなければ、部は全て重量によるものである。
【0055】
実施例1
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)200mlを仕込んだ。非置換のキナクリドン(Cromophtal(登録商標) Red 2020, Ciba Specialty Chemicals Inc.)31.2gを、45℃未満の温度で添加し、その混合物を、40〜45℃で10分間撹拌して、顔料を溶解させた。
【0056】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)39.7gを、45℃未満の温度で添加して、その混合物を、40〜45℃で15分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド3.2gを迅速に添加した。反応混合物を、58〜60℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.5Lに注ぎ入れた。紫色の沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。紫色のプレスケークを、pH約2.5になるまで水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0057】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、赤色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液は赤色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が4〜25nmのナノサイズ粒子形態のキナクリドンが示された。
【0058】
少量の紫色のプレスケーク試料を、pH5になるまで更に洗浄し、乾燥させて、MALDIで分析試験した。正イオンモードで測定すると、それは、主成分としてキナクリドン(m/z 314ピーク)を示し、ナフタレンスルホン酸メチルキナクリドン(m/z 535ピーク)が、図1に示すようにトレース量のみで見い出された。
【0059】
負イオンモードで測定すると、再度キナクリドンが観察され(m/z 312ピーク)、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒドポリマーの高分子構造が、主分子量ピーク:428、649、870、1091、1312、1534、1755および1976により、明確に観察された。負イオンモードのMALDIスペクトルを、図2に示す。
【0060】
実施例2
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)200mlを仕込んだ。2,9−ジメチルキナクリドン顔料(Cromophtal(登録商標) Pink PT, Ciba Specialty Chemicals Inc.)17gを、45℃未満の温度で添加し、その混合物を、40〜45℃で10分間撹拌して、顔料を完全に溶解させた。
【0061】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)19.9gを、45℃未満の温度で添加して、その混合物を、40〜45℃で30分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド1.6gを迅速に添加した。反応混合物を、58〜60℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.5リットルに注ぎ入れた。青味がかった紫色の沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。紫色のプレスケークを、pH2〜2.5になるまで水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0062】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、マゼンタ色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液はマゼンタ色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が10〜30nmのナノサイズ粒子形態の2,9−ジメチルキナクリドンが示された。
【0063】
実施例3
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)150mlを仕込んだ。2,9−ジメトキシキナクリドン14gを、45℃未満の温度で添加し、その混合物を、40〜45℃で10分間撹拌して、顔料を完全に溶解させた。
【0064】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)15gを、45℃未満の温度で添加して、その混合物を、40〜45℃で15分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド1.2gを迅速に添加した。反応混合物を、58〜60℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.5リットルに注ぎ入れた。青味がかった紫色の沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。青味がかった紫色のプレスケークを、pH2〜2.5になるまで水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0065】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、青味がかった紫色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液は青味がかった紫色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が10〜30nmのナノサイズ粒子形態の2,9−ジメトキシキナクリドンが示された。
【0066】
実施例4
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)250mlを仕込んだ。2,9−ジクロロキナクリドン顔料(Cinquasia(登録商標) Magenta RT-265-D, Ciba Specialty Chemicals Inc.)19.5gを、50℃の温度で添加し、その混合物を、48〜52℃で20分間撹拌して、顔料を溶解させた。
【0067】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)19.9gを、50℃未満の温度で添加して、その混合物を、45〜50℃で30分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド1.6gを迅速に添加した。反応混合物を、58〜60℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.5リットルに注ぎ入れた。紫色の沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。紫色のプレスケークを、pH1.5〜2.5になるまで少量の水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0068】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、紫色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液は紫色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が10〜25nmのナノサイズ粒子形態の2,9−ジクロロキナクリドンが示された。
【0069】
実施例5
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)200mlを仕込んだ。C.I.Pigment Red 254(Irgazin(登録商標) DPP Red BO, Ciba Specialty Chemicals Inc.)21.4gを添加して、その混合物を、55〜58℃で1時間撹拌した。
【0070】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)23.9gを、70℃未満の温度で添加して、その混合物を、70℃で10分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド1.9gを迅速に添加した。反応混合物を、70〜75℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.7リットルに注ぎ入れた。紫褐色の沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。プレスケークを、pH2.0〜3.0になるまで水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0071】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、紫色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液は褐色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が10〜30nmのナノサイズ粒子形態のジケトピロロピロール顔料が示された。
【0072】
実施例6
撹拌機、温度計、コンデンサーおよび乾燥管を具備した1リットルフラスコに、濃硫酸(95〜98%)200mlを仕込んだ。C.I.Pigment Blue 60(Cibanon(登録商標) Blue RS PT 9860, Ciba Specialty Chemicals Inc.)15gを、45℃未満の温度で添加し、その混合物を、40〜45℃で15分間撹拌して、顔料を完全に溶解させた。
【0073】
固形分含量58%の、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩湿プレスケーク(1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩80%および2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(Shanghai Shen Li Chemical Factory)20%を含有する混合物)10.7gを、50℃未満の温度で添加して、その混合物を、40〜45℃で10分間撹拌し、次いでパラホルムアルデヒド1.6gを迅速に添加した。反応混合物を、60〜65℃で1時間撹拌し、その後、氷水2.5リットルに注ぎ入れた。暗い青味がかった沈殿を、5〜20℃で1時間撹拌し、その後ろ過した。暗い青味がかったプレスケークを、pH1.5〜3.0になるまで水で洗浄して、プレスケークとして保持した。
【0074】
プレスケーク約0.5gを、熱水20mlで再スラリー化すると、青色の液体が生じ、それをろ紙でろ過して少量の凝集物質を除去した。ろ液は青色であり、染料溶液のように見えた。しかし、電子顕微鏡写真では、平均粒径が10〜30nmのナノサイズ粒子形態のインダントロン顔料が示された。
【0075】
実施例7
温度計、撹拌機およびコンデンサーを具備した1リットルフラスコに、6,13−ジヒドロキナクリドン50g、メタノール200ml、ポリビニルピロリドン粉末(Luviskol(登録商標) K-30,BASF)1g、および実施例1に記載のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク7gを仕込み、20〜27℃で10分間撹拌した。50%水性水酸化ナトリウム50gを添加した。緩やかな窒素気流下、50〜53℃で1時間、混合物を撹拌した。触媒としてのアントラキノンモノスルホン酸ナトリウム塩0.8gを添加して、反応混合物を、10分間、加熱還流した。18.9重量%過酸化水素水性溶液76gを、蠕動ポンプを用いて、送入速度0.4ml/分で反応混合物に添加したが、その際、還流および緩やかな窒素気流を保持しながら、添加時間の25分後に、フタルイミドメチルキナクリドン1.6gを反応混合物に導入し、過酸化水素は続けて添加し続けた。得られた紫色の懸濁液を、還流しながら更に10分間撹拌し、その後、冷水100mlで希釈してろ過した。プレスケークを、熱水で洗浄し、その後乾燥させて、紫色のキナクリドンを得た。
【0076】
生成物は、分光光度法で測定すると、高純度で、残存6,13−ジヒドロキナクリドン0.1%未満を示した。顔料のX線回折パターンは、β−キナクリドンの特性を示した。自動車用ペイントに組み込むと、生成物は、優れたレオロジー特性を有し、コントラストカートン(contrast carton)に描くと魅力的なカラーアピアランスを有する濃い紫色の分散体になり、その分散体は、金属パネルに簡単にスプレーすることができ、耐久性の優れたコーティングを生成した(その後、トップコートを、通常の手法、例えばウェットオンウェット法で更に塗布してもよい)。
【0077】
実施例8
温度計、撹拌機およびコンデンサーを具備した1リットルフラスコに、6,13−ジヒドロキナクリドン50g、メタノール200ml、ポリビニルピロリドン粉末(Luviskol(登録商標) K-30,BASF)1g、および実施例1に記載のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク7gを仕込み、20〜27℃で10分間撹拌した。50%水性水酸化ナトリウム73gを添加した。緩やかな窒素気流下、50〜53℃で30分間、混合物を撹拌した。触媒としてのアントラキノン−2,7−ジスルホン酸二ナトリウム塩の37%水性溶液4.6gを添加し、次いで水10mlを添加して、反応混合物を40分間、加熱還流した。18.2重量%過酸化水素水性溶液79gを、蠕動ポンプを用いて、送入速度0.4ml/分で反応混合物に添加したが、その際、還流および緩やかな窒素気流を保持しながら、添加時間の20分後にフタルイミドメチルキナクリドン2.3gを、そして更に70分後にフタルイミドメチルキナクリドン0.3gを、反応混合物に導入し、過酸化水素は続けて添加し続けた。得られた紫色の懸濁液を、還流しながら更に10分間撹拌し、その後、冷水100mlで希釈してろ過した。プレスケークを、熱水で洗浄し、その後乾燥させて、紫色のキナクリドンを得た。
【0078】
生成物は、分光光度法で測定すると、高純度で、残存6,13−ジヒドロキナクリドン0.1%未満を示した。顔料のX線回折パターンは、β−キナクリドンの特性を示した。自動車用ペイントまたはプラスチックに組み込むと、生成物は、濃い紫色になり、優れた特性を有していた。
【0079】
実施例9
実施例1のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物プレスケークの水性プレスケーク7gの代わりに、実施例2に記載のナノサイズの2,9−ジメチルキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク4gを用いたこと以外は、実施例8の手順を繰り返した。同様の良好な顔料特性を有する紫色のβ−キナクリドンが得られた。
【0080】
実施例10
実施例1に記載のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物プレスケークの水性プレスケーク7gの代わりに、実施例3に記載のナノサイズの2,9−ジメトキシキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク4gを用いたこと以外は、実施例8の手順を繰り返した。同様の良好な顔料特性を有する紫色のβ−キナクリドンが得られた。
【0081】
実施例11
実施例1に記載のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物プレスケークの水性プレスケーク7gの代わりに、実施例4に記載のナノサイズの2,9−ジクロロキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク4gを用いたこと以外は、実施例8の手順を繰り返した。同様の良好な顔料特性を有する紫色のβ−キナクリドンが得られた。
【0082】
実施例12
温度計、撹拌機およびコンデンサーを具備した1リットルフラスコに、6,13−ジヒドロキナクリドン50g、メタノール200ml、および実施例1に記載のナノサイズのキナクリドン/ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマー混合物の水性プレスケーク5gを仕込み、20〜27℃で10分間撹拌した。50%水性水酸化ナトリウム50gを添加した。緩やかな窒素気流下、50〜53℃で1時間、混合物を撹拌した。触媒としてのアントラキノン−2,7−ジスルホン酸二ナトリウム塩0.9gを添加し、反応混合物を、5分間、加熱還流した。19.1重量%過酸化水素水性溶液77gを、蠕動ポンプを用いて、送入速度0.4ml/分で反応混合物に添加したが、その際、還流および緩やかな窒素気流を保持しながら、添加時間の15分後に、フタルイミドメチルキナクリドン1.6gを反応混合物に導入し、過酸化水素は続けて添加し続けた。得られた赤色の懸濁液を、還流しながら更に10分間撹拌し、その後、冷水100mlで希釈してろ過した。プレスケークを、熱水で洗浄し、その後乾燥させて、赤色のキナクリドンを得た。X線は、γキナクリドンの回折パターンを示した。この顔料は、優れた顔料特性を示し、ペイント、インクおよびプラスチックの赤色着色のために適用することができた。
【0083】
実施例13
ポリ塩化ビニル63.0g、エポキシ化大豆油3.0g、バリウム/カドミウム熱安定化剤2.0g、フタル酸ジオクチル32.0gおよび実施例7に記載の紫色のβ−キナクリドン顔料1.0gを、撹拌棒を用いてガラスビーカ内で一緒に混合した。混合物を、実験用2本ロールミルでローラー速度25rpm、フリクション比1:1.2、温度160℃で8分間ロール掛け(絶えず、折り重ね、取り出し、送りこむ作業による)して、厚さ約0.4mmの軟質PVCシートに成形した。得られた軟質PVCシートは、魅力的な紫の色調に着色され、優れた耐熱堅ろう度、耐光堅ろう度および耐マイグレーション性を有していた。
【0084】
実施例14
実施例8に記載の紫色のβ−キナクリドン顔料5g、Chimassorb(登録商標)944LD(ヒンダードアミン光安定剤)2.65g、Tinuvin(登録商標)328(ベンゾトリアゾールUV吸収剤)1.0g、およびIrganox(登録商標)B-215 Blend(抗酸化剤、全てCiba Specialty Chemicals Corporationによる)を、高密度ポリエチレンと一緒に、溶融後、速度175〜200rpmで30秒間混合した。溶融した顔料着色樹脂を、温かく、展性のあるうちに切断し、その後、粗砕機に供給した。得られた細粒を、射出成形機を用いて、滞留時間5分、サイクル時間30秒、温度200、250および300℃で成形した。実質的に色差のない紫色を示す、均質に着色されたチップが得られた。それらは、優れた光安定性を有していた。
【0085】
実施例15
この実施例は、実施例8に記載の本発明のβ−キナクリドンの、自動車用ペイント系への組み込みを示している。
【0086】
ミルベース配合物
パイントジャーに、アクリル樹脂30.9g、トルエン中の45%アクリル樹脂からなるAB分散剤16.4g、および溶剤(Solvesso(登録商標)100, American Chemical)42.8gを仕込んだ。実施例8に記載のβ−キナクリドン30.0gおよび4mm径のスチール製ダイアゴナルロッド(diagonal rods)を添加した。ジャーの中の混合物を、Skandex振とう機で5時間振とうした。そのミルベースは、顔料25%を含有し、顔料/バインダ比は0.5であった。
【0087】
マストーンカラー
上記のミルベース48.9g、透明な47.8%固形分の未着色樹脂溶剤溶液(メラミン樹脂用触媒、非水性分散用樹脂およびUV吸収剤を含有している)71.7g、および透明未着色で固形分が58%の未着色ポリエステルウレタン樹脂溶剤溶液29.4gを混合して、キシレン76部、ブタノール21部およびメタノール3部を含む溶剤混合物で、#2フィッシャーカップ(Fisher Cup)での測定によるスプレー粘度20〜22秒に希釈した。
【0088】
樹脂/顔料分散体を、ベースコートとして1分30秒間隔で2回、パネルにスプレーした。2分後に、クリアコート樹脂を、ベースコート上に1分30秒間隔で2回スプレーした。その後、スプレーしたパネルを、フラッシュキャビネット内で空気で10分間急速に蒸発させてから、129℃のオーブンで30分間「焼付け」して、紫色のパネルを得た。コーティングしたパネルは、優れた耐候性を有していた。
【0089】
実施例16
ポリプロピレン細粒(Daplen PT-55(登録商標), Chemie Linz)1000g、および実施例12に記載のγ−キナクリドン顔料10gを、混合ドラムで充分に混合した。そのようにして得られた細粒を、260〜285℃で、耐光堅ろう度および布地用繊維特性が良好な赤色のフィラメントに溶融紡糸した。
【0090】
実施例17
ポリプロピレン細粒(Daplen PT-55(登録商標), Chemie Linz)1000g、および実施例9に記載のβ−キナクリドン顔料10gを、混合ドラムで充分に混合した。そのようにして得られた細粒を、260〜285℃で、耐光堅ろう度および布地用繊維特性が良好な紫色のフィラメントに溶融紡糸した。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、正イオンモードのMALDIスペクトルである。
【図2】図2は、負イオンモードのMALDIスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1〜100nm、好ましくは1〜50nm、最も好ましくは3〜30nmを有する有機顔料を、50〜99重量%、好ましくは55〜90重量%で、
分子量が400〜20000、好ましくは400〜10000、最も好ましくは400〜3000であり、かつ好ましくは炭素原子に対する硫黄原子の比が少なくとも1:11である、ポリスルホン化炭化水素、好ましくはナフタレンモノスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーまたはナフタレンジスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーを、1〜50重量%、好ましくは10〜45重量%で、含む組成物。
【請求項2】
顔料が、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジンおよびキノフタロン顔料、ならびにそれらの混合物およびそれらの固溶体からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
顔料が、式(I):
【化1】


(式中、AおよびDは、互いに独立して、H、F、Cl、C1〜C3アルキルまたはC1〜C3アルコキシである)で示されるキナクリドンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
顔料が、キナクリドンおよび/またはジケトピロロピロール顔料の二成分系または三成分系固溶体である、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ポリスルホン化炭化水素が、式(II):
【化2】


(式中、nは、0〜12、好ましくは1〜5の数である)で示される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーが、主鎖の一部として、1−ナフタレンスルホン酸部分および/または2−ナフタレンスルホン酸部分、好ましくは1−ナフタレンスルホン酸部分および2−ナフタレンスルホン酸部分の両方を4:1のモル比で含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
更に、式(III):
【化3】


(式中、nは、1または2であり、そしてQは、前記顔料の基である)で示される顔料誘導体を、顔料に基づいて、0.01〜10重量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
平均粒径が1〜100nm、好ましくは1〜50nm、最も好ましくは3〜30nmの有機顔料を、50〜99重量%、好ましくは55〜90重量%で、
分子量が400〜10000、好ましくは400〜3000のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーを1〜50重量%、好ましくは10〜45重量%で、含む組成物の製造方法であって、
顔料を鉱酸、好ましくは硫酸またはリン酸に溶解し、
鉱酸中の顔料の存在下で、ナフタレンスルホン酸ホルムルデヒドポリマーを添加または調製し、そして
顔料およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマーを一緒に水性液に浸すことにより組成物を沈殿させる
ことを含む方法。
【請求項9】
a)顔料を、65℃未満、好ましくは約35〜約45℃の温度で濃硫酸に溶解し;
b)ナフタレンスルホン酸を、工程a)の溶液に添加して、約35〜約50℃の温度で溶解し;
c)その後、パラホルムアルデヒドを、35〜55℃の温度で添加し;
d)工程c)からの混合物を、約50〜90℃に30分〜6時間加熱し;
e)工程d)からの混合物を、氷と水との混合物、または40℃未満の温度の水に浸して沈殿物を得、そして
f)沈殿物を分離する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
顔料:ナフタレンスルホン酸:ホルムアルデヒドのモル比が、1:1〜1.2:1〜2である、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
顔料が、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジンおよびキノフタロン顔料、好ましくは、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、フタロシアニン、インダントロンおよびイミノイソインドリノン顔料、ならびにそれらの混合物およびそれらの固溶体からなる群より選択される、請求項8、9または10記載の方法。
【請求項12】
更に、式(III):
【化4】


(式中、nは、1または2であり、そしてQは、前記顔料の基である)で示される顔料誘導体が、顔料に基づいて、0.01〜10重量%得る、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、ジオキサジン、インダントロン、アントラピリミジンまたはキノフタロン顔料、あるいはそれらの固溶体、好ましくは、ジケトピロロピロールまたはキナクリドン顔料、あるいはそれらの固溶体、最も好ましくはキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドンまたは2,9−ジメトキシキナクリドン顔料、あるいはそれらの固溶体の製造方法であって、
顔料が、製造される顔料の重量に基づいて、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の25重量%までの、好ましくは0.1〜15重量%の、存在下で製造される方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−508211(P2006−508211A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554537(P2004−554537)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050840
【国際公開番号】WO2004/048482
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】