説明

ナノスケールの超常磁性のポリ(メタ)アクリラートポリマーを用いて材料を接着させるための方法

本発明は、ポリ(メタ)アクリラートにより被覆されたか又は部分的に被覆されていない、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有するハイブリッド材料を用いて種々の材料を接着させるための方法及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリラートにより被覆されたか又は部分的に被覆されていない、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有するハイブリッド材料を用いて種々の材料を接着させるための方法及びその使用に関する。
【0002】
従来技術
DE10037883(Henkel)では、マイクロ波照射により基材を加熱するために、0.1質量%〜70質量%の磁性粒子が使用されている。基材として、加熱により硬化する接着剤が使用される。接着剤の加熱は、接着剤の軟化にも利用することができる。粒子とポリマーとの相互作用は記載されていない。
【0003】
DE10040325(Henkel)には、マイクロ波によって活性化可能なプライマー及び溶融接着剤を基材に塗布し、かつマイクロ波で加熱し、かつ接着させる方法が記載されている。
【0004】
DE10258951(Sus Tech GmbH)には、(オレイン酸で表面変性された)フェライト粒子と、PE、PP、EVA及びコポリマーとからの配合物から成る接着シートが記載されている。フェライト粒子は、シラン、4級アンモニウム化合物、及び飽和/不飽和脂肪酸、及び無機強酸の塩によって変性されていてもよい。
【0005】
DE19924138(Henkel)には、ナノスケール粒子を有する接着剤組成物が記載されている。
【0006】
EP498998には、マイクロ波によるポリマーの加熱方法が記載されており、その際、強磁性粒子をポリマーマトリックス中に分散させ、かつマイクロ波を照射する。強磁性粒子はポリマーマトリックス中にのみ分散される。
【0007】
WO01/28771(Loctite)には、マイクロ波を吸収することができる10質量%〜40質量%の粒子、硬化性成分及び硬化剤から成る硬化性組成物が記載されている。前記成分は単に混合されるのみである。
【0008】
WO03/042315(Degussa)には、ポリマー混合物と架橋剤粒子とから成る熱硬化性樹脂の製造のための接着剤組成物が開示されており、その際、架橋剤粒子は、強磁性、フェリ磁性、超常磁性、又は常磁性である充填剤と、該充填剤粒子に化学結合した架橋剤単位とから成る。充填剤粒子は、表面変性されていることができる。充填剤粒子は、コア−シェル構造を有することができる。得られた接着結合は、該接着結合を天井温度より高い温度に加熱するか、又は表面変性された充填剤粒子の熱的に不安定な基の化学的結合を切断するのに充分な温度に加熱することにより、再度剥離することができる。
【0009】
DE−A−10163399には、凝集相と、該凝集相中に分散された、超常磁性のナノスケール粒子の、少なくとも1つの粒子形態の相とを有するナノ粒子状の調製物が記載されている。該粒子は、2〜100nmの範囲内の体積平均粒子直径を有し、かつ少なくとも1種の一般式MIIMIIIO4の金属混合酸化物を含有し、その際、MIIは少なくとも2種の互いに異なる二価の金属を含む第一の金属成分を表し、かつMIIIは少なくとも1種の三価の金属を含む、もう1つの金属成分を表す。凝集相は水、有機溶剤、重合性モノマー、重合性モノマー混合物、ポリマー及び混合物からなっていてよい。この場合、接着剤組成物の形での調製物が好ましい。
【0010】
DE10116721(BMW)には、ボディー構造体における使用のための、特にフランジ継目のシールのための2成分接着剤が記載されている。該接着剤は2工程で反応し、その際、第一の反応として2成分の化学反応が行われ、該反応によって、洗流に耐えかつ触れても安定な生成物がもたらされる。該反応は反応温度でか又はわずかな加熱を伴って進行する。該加熱は誘導により、又はIR照射により行われる。第二の同様の化学反応は下塗炉中で行われる。
【0011】
EP1186642(Sika)には、樹脂成分と硬化剤成分とを有する2成分系が記載されており、その際、所望の早期強度及び取扱適性を得るために、部分硬化が例えばUV照射により行われる。該系は2つの異なる硬化プロセスを経過し、その際、一方の硬化プロセスは、室温で進行する、少なくとも1種の樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応であり、かつその際、硬化プロセスにより架橋する少なくとももう1種の架橋性系が存在する。
【0012】
本発明の課題は、種々の材料を接着するための、有利に2工程の方法を提供することである。
【0013】
前記課題は、ポリマーにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有するハイブリッド材料を用いて、又は、被覆された、及び被覆されていない、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子からの混合物を含有するハイブリッド材料による、接着のための方法により解決され、その際、該ハイブリッド材料は接着剤マトリックス中に含有されている。有利に、粒子の被覆のためにポリ(メタ)アクリラートが使用される。
【0014】
ポリマーにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を使用することにより、粒子とポリマー被覆との改善された相互作用が達成され、かつ、従来技術において必要とされているよりもわずかな、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を用いて、接着剤の加熱を達成することができる。
【0015】
ハイブリッド材料を含有する本発明による接着剤を用いた場合、材料において、単純な接着作用(予備接着、固定)及び高エネルギーの導入による最終的な接着を実現する2工程の接着剤を製造することができる。第一工程は物理的変換であり、第二工程は化学的変換である。有利に、本発明によるハイブリッド材料は、エポキシ接着剤のエポキシマトリックス中に埋め込まれる。エポキシ接着剤において、エネルギー、有利に誘導エネルギーを導入することによって、第一工程において本発明によるポリマーにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子をゲル化し、それにより予備接着を可能にし、かつ第二工程において、更なるエネルギーの導入によりエポキシマトリックスの架橋、最終的な接着を行うことにより2つの接着工程が実現される。
【0016】
誘導により加熱することのできない材料の傑出した接着が可能であることが見出された。誘導エネルギーを用いて、接着剤は意図的に加熱、ひいては予備ゲル化ないしは硬化される。第一工程(予備ゲル化)において、エネルギー、有利に誘導エネルギーを導入することによって、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を被覆するポリマーは膨潤ないし溶解される。周囲のマトリックス中に含有されている可塑剤との結合で、ゲルのようなゴム弾性であるペーストが生じる。予備ゲル化は50〜100℃の温度で行われる。予備ゲル化された接着剤は、接着すべき材料との間に十分に良好な結合をもたらす。それにより、早くもすでに、例えば自動車工業において必要とされるような洗流に耐えかつ触れても安定な生成物がもたらされる。事後の硬化工程において、改めてエネルギーを供給することにより、架橋反応が開始され、該反応により最終的な材料結合がもたらされる。硬化工程は140〜200℃の温度で生じる。
【0017】
接着すべき材料の加熱は行われない。それにより、例えば、加熱による材料(ボディー構造体)の歪みのような不所望な現象を回避することができる。更に、当然のことながら、誘導により加熱可能な材料も接着され得る。ここでまたもや、接着すべき材料の不必要な強度の加熱(これは同様に歪みを招くであろう)を必要とせずに、厚い接着層をも活性化させることができることは有利である。比較的厚い接着層の使用は、特に寸法公差が変動する際には望ましい。慣用の接着法の場合には、不十分なゲル化又は除去の困難な樹脂油を用いた過熱という結果になるであろう。
【0018】
本発明による接着剤は、誘導エネルギーにより直接活性化され得る。従って、考え得る全ての材料の組み合わせを接着することができ、それというのも、接着すべき材料の加熱可能性は影響を及ぼさないためである。誘導により加熱可能な材料は、相互に、又は誘導により加熱することのできない材料と接着され得るが、誘導により加熱することのできない材料も相互に接着され得る。
【0019】
超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子は、事前の活性化又は予備被覆無しで、1種以上のモノマー、水、及び1種の不活性溶剤からの系中で、場合により乳化剤及び/又は疎水性試薬を用いて乳化され、かつ引き続き慣用の方法で重合が開始される。超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子は、コア−シェル構造で、ポリマー又はポリマー混合物からの1つ以上のシェルによって被覆されてよい。コアは1つのシェル、しかしながらまた複数のシェル、又は勾配を有する1つのシェルによって被覆されてよい。シェルは同一の、又は異なるポリマー組成物を有することができるか、もしくは1つのシェル内でポリマー組成を変えることができる(勾配)。
【0020】
第一工程において、ミニエマルション重合により、コア−シェル系の第一のシェルがコア上に施与される。場合により更なるシェルがモノマー流の供給によりin situで形成される。
【0021】
モノマーとして、(メタ)アクリラートからの混合物が使用される。
【0022】
ポリメチルメタクリラートは、一般に、メチルメタクリラートを含む混合物のラジカル重合によって得られる。一般に、前記混合物は、モノマーの質量に対して少なくとも40質量%、好適には少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%のメチルメタクリラートを含む。更に、前記混合物は、ポリメチルメタクリラートの製造のために、メチルメタクリラートと共重合可能な他の(メタ)アクリラートを含むことができる。(メタ)アクリラートという表現は、ここでは、メタクリラート、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラート等、並びにアクリラート、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート等、並びに双方からの混合物を意味する。
【0023】
前記モノマーは十分に公知である。前記モノマーに属するのはとりわけ、飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリラート、例えばメチルアクリラート、エチル(メタ)アクリラート、プロピル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、t−ブチル(メタ)アクリラート、ペンチル(メタ)アクリラート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリラート;不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリラート、例えばオレイル(メタ)アクリラート、2−プロピニル(メタ)アクリラート、アリル(メタ)アクリラート、ビニル(メタ)アクリラート;アリール(メタ)アクリラート、例えばベンジル(メタ)アクリラート、又はフェニル(メタ)アクリラート、その際、アリール基はその都度非置換か、又は最大4つまで置換されていてもよい;シクロアルキル(メタ)アクリラート、例えば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、ボルニル(メタ)アクリラート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、例えば3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート;グリコールジ(メタ)アクリラート、例えば1,4−ブタンジオール(メタ)アクリラート、エーテルアルコールの(メタ)アクリラート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリラート;(メタ)アクリル酸のアミド及び(メタ)アクリル酸のニトリル、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール;硫黄を含有するメタクリラート、例えばエチルスルフィニルエチル(メタ)アクリラート、4−チオシアナトブチル(メタ)アクリラート、エチルスルホニルエチル(メタ)アクリラート、チオシアナトメチル(メタ)アクリラート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリラート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)スルフィド;多価の(メタ)アクリラート、例えばトリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリラートである。
【0024】
上記の(メタ)アクリラートの他に、重合すべき組成物は、メチルメタクリラートと、及び上記の(メタ)アクリラートと共重合可能な、他の不飽和モノマーを有することもできる。これに属するのはとりわけ、1−アルケン、例えばヘキセン−1、ヘプテン−1;分枝鎖アルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチルペンテン−1;アクリロニトリル;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換されたスチレン、例えば[α]−メチルスチレン、及び[α]−エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換されたスチレン、例えばビニルトルエン、及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、及びテトラブロモスチレン;複素環式ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール、及び水素化されたビニルチアゾール、ビニルオキサゾール、及び水素化されたビニルオキサゾール;ビニルエーテル、及びイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、例えば無水マレイン酸、無水マレイン酸メチル、マレインイミド、メチルマレインイミド、及びジエン、例えばジビニルベンゼンである。
【0025】
一般に、前記コモノマーは、モノマーの質量に対して0〜60質量%、好適には0〜40質量%、特に好ましくは0〜20質量%の量で使用され、その際、前記化合物は個別に、又は混合物として使用されてよい。
【0026】
重合は、一般に、公知のラジカル開始剤を用いて開始される。好ましい開始剤に属するのはとりわけ、この専門分野において広く公知であるアゾ開始剤、例えばAIBN、及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、水溶性ラジカル形成剤、例えばペルオキソ硫酸塩、又は過酸化水素、並びにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾアート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボナート、2種以上の前述の化合物の相互の混合物、並びに前述の化合物と、同様にラジカルを形成することができる、前述していない化合物との混合物である。
【0027】
前記化合物は、しばしば、モノマーの質量に対して、0.01〜10質量%、好適には0.1〜3質量%の量で使用される。この場合、例えば分子量において、又はモノマー組成において異なる、様々なポリ(メタ)アクリラートを使用することができる。
【0028】
バイブリッド材料に疎水性の試薬を添加することもできる。例えば、ヘキサデカン、テトラエチルシラン、オリゴスチレン、ポリエステル、又はヘキサフルオロベンゼンの群からの疎水性物質が適当である。重合導入可能な疎水性物質は特に好ましく、それというのも、前記疎水性物質は、後の使用の際に滲出しないからである。
【0029】
6〜24個のC原子を有する飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリラートは特に好ましく、その際、アルコール基は直鎖又は分枝鎖であってよい。
【0030】
例えば、モノマー組成物は式(I)
【化1】

[式中、
Rは水素又はメチルを表し、
1は6〜40個の炭素原子、好適には6〜24個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表し、
2及びR3は独立して水素又は式−COOR’の基を表し、
ここで、R’は水素又は6〜40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す]のエチレン系不飽和モノマーを含む。
【0031】
長鎖アルコール基を有するエステル化合物は、例えば(メタ)アクリラート、フマラート、マレアート及び/又は相応する酸と長鎖脂肪アルコールとの反応によって得ることができ、その際、一般にエステルの混合物、例えば種々の長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリラートが生じる。前記脂肪アルコールに属するのはとりわけ、Monsanto社のOxo Alcohol(登録商標)7911及びOxo Alcohol(登録商標)7900、Oxo Alcohol(登録商標)1100;ICI社のAlphanol(登録商標)79;Condea社のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610及びAlfol(登録商標)810;Ethyl Corporation社のEpal(登録商標)610及びEpal(登録商標)810;Shell AG社のLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911及びDobanol(登録商標)25L;Augusta(登録商標)Mailand社のLial 125;Henkel KGaA社のDehydad(登録商標)及びLorol(登録商標)、並びにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7-11及びAcropol(登録商標)91である。
【0032】
上記のエチレン系不飽和モノマーは、単独で、又は混合物として使用することができる。本発明による方法の好ましい実施態様において、エチレン系不飽和モノマーの全質量に対してモノマーの少なくとも50質量パーセント、好適にはモノマーの少なくとも60質量パーセント、特に好ましくはモノマーの80質量パーセントより多くが(メタ)アクリラートである。
【0033】
更にその上、少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル鎖又はヘテロアルキル鎖を有する(メタ)アクリラートを、エチレン系不飽和モノマーの全質量に対して少なくとも60質量パーセント、特に好ましくは80質量%より多く含むモノマー組成物が好ましい。
【0034】
(メタ)アクリラートの他に、付加的に長鎖アルコール基を有するマレアート及びフマラートもまた好ましい。
【0035】
例えば、アルコール基中に10〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリラートの群から誘導されている疎水性物質、とりわけウンデシル(メタ)アクリラート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリラート、ドデシル(メタ)アクリラート、2−メチルドデシル(メタ)アクリラート、トリデシル(メタ)アクリラート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリラート、テトラデシル(メタ)アクリラート、ペンタデシル(メタ)アクリラート、ヘキサデシル(メタ)アクリラート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリラート、ヘプタデシル(メタ)アクリラート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリラート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリラート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリラート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリラート、オクタデシル(メタ)アクリラート、ノナデシル(メタ)アクリラート、エイコシル(メタ)アクリラート、セチルエイコシル(メタ)アクリラート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリラート、ドコシル(メタ)アクリラート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、ステアリル(メタ)アクリラート、ベヘニル(メタ)アクリラート及び/又はメタクリル酸エステル、及びそれらの混合物を使用することができる。
【0036】
ポリマーの分子量を制御するために、重合を場合により調節剤の存在で実施することができる。調節剤としては例えば、アルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒド、ギ酸、ギ酸アンモニウム、硫酸ヒドロキシアンモニウム及びリン酸ヒドロキシアンモニウムが適している。さらには、硫黄を有機結合形で含有する調節剤、例えばSH−基を有する有機化合物、例えばチオグリコール酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトヘキサノール、ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンを使用することができる。調節剤としてはさらにヒドラジンの塩、例えば硫酸ヒドラジニウムを使用することができる。調節剤の量は、重合すべきモノマーに対して、0〜5%、好適には0.05〜0.3質量%である。
【0037】
本発明によるコア、つまり超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子は、マトリックス及びドメインから構成されている。該粒子は、非磁性金属酸化物マトリックス、又は非磁性金属二酸化物マトリックスにおいて2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物ドメインから構成されている。磁性金属酸化物ドメインは、フェライトの群から、特に好ましくは酸化鉄の群から選択されていることができる。これらは他方では、例えば酸化ケイ素の群からの非磁性マトリックスにより完全に、又は部分的に被覆されていることができる。超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子は、粉末として存在する。この粉末は凝集された一次粒子から成ることができる。凝集されたとは、本発明の意味においては結合する一次粒子の三次元構造と理解される。複数の凝集体が結合し、アグロメレートとなることができる。このアグロメレートは、容易に再度分離できる。これとは反対に、凝集体から一次粒子への分解は、通常不可能である。
【0038】
超常磁性粉末の凝集体直径は、好ましくは100nmを上回りかつ1μm未満であってよい。好適には、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末の凝集体は、少なくとも1つの空間方向で250nm未満の直径を有することができる。ドメインとは、マトリックスにおける空間的に相互に分離された範囲と理解することができる。超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末のドメインは2〜100nmの直径を有する。
【0039】
ドメインは、粉末の磁性特性に対して何ら寄与しない非磁性範囲を有することもできる。その大きさが原因で超常磁性を示さず、かつ残留磁気を誘導する磁区もまた、付加的に存在することができる。このことは、比体積飽和磁化の向上につながる。しかしながら、前記ドメインの割合は、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のドメインの数と比較して僅少である。本発明によれば、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末は、交番磁界、又は交番電磁界を用いて本発明による調製物を加熱可能にするような数の、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のドメインを含む。超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末のドメインは、周囲のマトリックスによって完全に、又は単に部分的に包囲されていることができる。部分的に包囲されている、とは、個々のドメインが凝集体の表面から突出していることができるということである。
【0040】
ドメインは1種以上の金属酸化物を有することができる。磁区は好ましくは鉄の酸化物、コバルトの酸化物、ニッケルの酸化物、クロムの酸化物、ユーロピウムの酸化物、イットリウムの酸化物、サマリウムの酸化物、又はガドリニウムの酸化物を含むことができる。前記ドメイン中では、金属酸化物が一定の変態で、又は種々の変態で存在することができる。特に好ましい磁区は、ガンマ−Fe23(γ−Fe23)、Fe34、ガンマ−Fe23(γ−Fe23)及び/又はFe34からなる混合物の形の酸化鉄である。
【0041】
磁区はさらに、金属成分、すなわち鉄、コバルト、ニッケル、錫、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、マンガン、銅、バリウム、マグネシウム、リチウム、又はイットリウムを有する、少なくとも2種の金属の混合酸化物として存在することができる。
【0042】
磁区はさらに、一般式MIIFe24を有する物質であることができ、その際、MIIは少なくとも2種の相互に異なる二価の金属を含む金属成分を表す。好ましくは、二価の金属の一方がマンガン、亜鉛、マグネシウム、コバルト、銅、カドミウム、又はニッケルであることができる。さらには、磁区は一般式(Ma1−x−y MbxFey)IIFe2IIIO4の三元系から構成されていることができ、その際、MaもしくはMbは金属、すなわちマンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウム、イットリウム、錫、リチウム、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、クロム、バナジウム、ニオブ、モリブデンであってよく、x=0.05〜0.95、y=0〜0.95、及びx+y≦1である。
【0043】
特に好ましくは、ZnFe24、MnFe24、Mn0.6Fe0.4Fe24、Mn0.5Zn0.5Fe24、Zn0.1Fe1.94、Zn0.2Fe1.84、Zn0.3Fe1.74、Zn0.4Fe1.64、又はMn0.39Zn0.27Fe2.344、MgFe23、Mg1.2Mn0.2Fe1.64、Mg1.4Mn0.4Fe1.24、Mg1.6Mn0.6Fe0.84、Mg1.8Mn0.8Fe0.44であることができる。非磁性マトリックスの金属酸化物の選択は、更に限定されることはない。好ましくは、チタンの酸化物、ジルコンの酸化物、亜鉛の酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の酸化物、セリウムの酸化物、又は錫の酸化物であることができる。本発明の意味においては、金属二酸化物、例えば二酸化ケイ素もまた、金属酸化物である。さらには、マトリックス及び/又はドメインは、非晶質及び/又は結晶質で存在することができる。
【0044】
粉末中の磁区の割合は、マトリックスとドメインとの空間的分離が存在する限り、限定されない。好適には、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末中の磁区の割合は、10〜100質量%であることができる。
【0045】
適切な超常磁性粉末は、例えば、EP−A−1284485並びにDE10317067に記載されており、これらをすべての範囲において引き合いに出す。本発明による調製物は、好ましくは0.01〜60質量%の範囲の超常磁性の粉末割合を有し、好ましくは0.05〜50質量%の範囲、及び極めて特に好ましくは0.1〜10質量%の範囲であることができる。
【0046】
超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末は、ミニエマルション重合法を用いて更に処理され、本発明によるハイブリッド材料へと変換される。
【0047】
ミニエマルション重合は、以下のように実施することができる:
a)第一工程において、ナノスケール粉末をモノマー中、又はモノマー混合物中、又は水中に分散させる。
b)第二工程において、モノマー、又はモノマー混合物を、疎水性試薬、及び乳化剤を用いて水中に分散させる。
c)第三工程において、a)及びb)からの分散液を、超音波、膜、ローター・ステーター系、撹拌機又は高圧を用いて分散させる。
d)c)からの分散液の重合を熱的に開始する。
【0048】
ポリマー中の超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性の粉末の割合は、1〜99質量%であることができる。
【0049】
以下に示された実施例は、本発明の詳説のために示すものであるが、本発明をここに開示された特徴に限定することは適切ではない。
【0050】
実施例
接着剤の特性に関する重要なパラメータとしての粘度変化を試験した。
【0051】
慣用の接着剤(Betamate 1020, Fa.Dow社、スイス在)をゆっくりと室温から93℃に加熱し、かつ再度室温に冷却した。これは、2工程の接着剤における予備ゲル化のための温度プロフィールに相当する。エネルギーを、装置に由来する慣用の電気ヒータ出力により導入した。35℃及び65℃での粘度を測定した(例V)。
【0052】
前記接着剤材料に、同一の試験系列に関して、本発明によるポリ(メタ)アクリラートにより被覆された超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を12質量%の量で添加する。ここでも、35℃及び65℃での粘度(例E1)を測定した。
【0053】
他の試験系列において、慣用の接着剤(Betamate 1020, Fa.Dow社、スイス在)に、少量のチキソトロープ剤及び再度本発明によるポリ(メタ)アクリラートにより被覆された超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子12質量%を添加した(例E2)。
【0054】
【表1】

【0055】
慣用の接着剤の場合(V)、加熱前の粘度と加熱後の粘度とは極めて接近している。本発明によるポリ(メタ)アクリラートにより被覆された超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を添加した場合、粘度が著しく上昇する。チキソトロープ剤を省いた場合(E2)、初期粘度はまだ比較的低いが、加熱後にははるかに高いレベルにある。チキソトロープ剤及び本発明によるポリ(メタ)アクリラートにより被覆された超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を使用した場合(E1)、加熱前の粘度及び加熱後の粘度は、明らかに慣用の接着剤の粘度を上回る。35℃でも65℃でも、比較的高い粘度により改善された予備接着が達成される。
【0056】
誘導エネルギーの供給による接着
慣用のエポキシ接着剤マトリックスに、ハイブリッド材料12質量%を混入する。誘導により加熱することのできない材料に、前記混合物からの幅1cm、高さ0.5cmの接着剤のビードを塗布した。誘導エネルギーの導入のために、STS M260S型の発生装置を有する三重巻線円筒コイル(Fa. IFF社,イスマニング在)を出力100%で使用する。該コイルを接着剤のビード上方で5mm間隔で速度1.25mm/秒で一回運転させる。温度推移を、接着剤のビードの中央に設置された光ファイバー温度計を用いて測定した。接着剤を、誘導エネルギーを用いて20秒以内に25℃から90℃に加熱することができることを示すことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メタ)アクリラートにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有する接着剤。
【請求項2】
ポリ(メタ)アクリラートにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子、及び、ポリ(メタ)アクリラートにより被覆されていない、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有する、請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂マトリックス中に、ポリ(メタ)アクリラートにより被覆された、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子、及び、ポリ(メタ)アクリラートにより被覆されていない、超常磁性の、強磁性の、フェリ磁性の、又は常磁性のナノスケール粒子を含有する、請求項1記載の接着剤。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の接着剤を用いて材料を接着するための方法。
【請求項5】
第一工程において、誘導エネルギーを用いた温度上昇によって接着剤の予備ゲル化を行い、第二工程において、更なる温度上昇によって接着剤の硬化を行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
予備ゲル化を50〜100℃の温度で行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
硬化を140〜200℃の温度で行う、請求項5記載の方法。
【請求項8】
材料を、誘導により加熱することのできない少なくとも1種の材料と接着させるための、請求項4記載の方法の使用。
【請求項9】
自動車製造、航空機製造、船舶製造、軌条車両製造、及び宇宙航行技術における、請求項4記載の方法の使用。

【公表番号】特表2009−526878(P2009−526878A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554611(P2008−554611)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068707
【国際公開番号】WO2007/093237
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】