説明

ナノストラクチャ被覆付高性能固体式帯電装置

【課題】帯電プロセスで使用される交流電圧及び帯電プロセスにおける動作温度を抑えられ全体として動作効率がよい固体式帯電方法及びシステムを提供する。
【解決手段】誘電体層210の第1面211と隣り合うよう第1電極220を配置する一方誘電体層210の第2面212と隣り合うよう第2電極230を配置する。複数個のナノストラクチャを、それぞれその一端が第2電極230の第2面231と導電接触するよう第2電極230に被着させる。第1電極220と第2電極230の間に交流電圧を印加することによりナノストラクチャの他端にて複数の帯電種を発生させ、第2電極と向かい合うよう第2電極から離して配置されたレセプタ上にその帯電種を堆積させることにより、そのレセプタを帯電させる。第2電極230には、最終レセプタ電圧と近似的に等しい直流電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電又は放電(以下「帯電」と総称)処理に使用しうる帯電装置に関する。本発明は、例えば、ナノストラクチャにより被覆されており電子写真(electrophotographic)装置にて使用される固体式帯電装置として、実施できる。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスでは、例えばフォトレセプタ(以下単に「レセプタ」とも呼ぶ)帯電処理、トナー層再帯電処理、静電トナー転写用中間転写ベルト帯電処理、シート状媒体(用紙シート等)帯電処理等のため、様々な帯電装置が用いられる。帯電装置のうち固体式のものとしては、従来から、二種類の導体電極を誘電体素材によって分離した構成のものが知られている。導体電極のうちフォトレセプタに面する側の電極はコロナ電極と呼ばれており、従来の固体式帯電装置においては、そのコロナ電極ともう一方の導体電極即ち1個又は複数個の交流電極との間に高周波交流電界を発生させて気体を絶縁破壊させ、その結果生じた高密度プラズマ源からイオン、電子等の帯電種を抽出する、という仕組みが採られている。従って、コロナ電極の電位により帯電電流の大きさ及び極性が決まる。しかしながら、こうした構成では、プロセス実施中に反応性が強い不要な酸化性化学種が生成され、それによってフォトレセプタ劣化や空気汚濁といった問題が生じてしまう。更に、従来の固体式帯電装置では、コロナ電極表面における帯電種発生が各部位で均一でなく、帯電種の大半が隅部で発生してしまうため、これを補償しどの部位でも均等に帯電種が発生させるのに動作温度を高くしなければならない。そして、従来の固体式帯電装置では、高電圧によって誘電体層が局所的に絶縁破壊を引き起こすことがあり、その場合もやはり不均一帯電が生じてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の問題点を含め従来技術に存する問題点のうち幾つかを解決し、帯電プロセスで使用される交流電圧及び帯電プロセスにおける動作温度を低くすることができ、全体として動作効率がよい固体式帯電方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここに、本発明の一実施形態に係る電子写真用帯電装置は、誘電体層と、誘電体層の第1面と隣り合うよう配置された第1電極と、その第1面が誘電体層の第2面と隣り合うよう配置された第2電極と、それぞれその一端が第2電極の第2面と導電接触している複数個のナノストラクチャと、を備える。
【0005】
また、本発明の一実施形態に係り電子写真用帯電装置により実行されるレセプタ帯電方法は、第1及び第2電極並びにそれらの間に配置された誘電体層を備え第2電極にはそれぞれその第1端がその第2電極の表面と導電接触するよう複数個のナノストラクチャが設けられている固体式帯電装置を準備するステップと、第1電極と第2電極の間に交流電圧を印加するステップと、上記複数個のナノストラクチャの第2端にて複数の帯電種を発生させるステップと、第2電極と向かい合うよう第2電極から離して配置されたレセプタ上に帯電種を堆積させることによりそのレセプタを帯電させるステップと、最終レセプタ電圧と近似的に等しい直流電圧を第2電極に印加するステップと、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について別紙図面を参照しつつ説明する。なお、各図中、同一の又は類似する要素については可能な限り同じ参照符号を用いることとする。
【0007】
また、本願における「ナノストラクチャ」には、カーボンナノチューブ等のSWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)、ホーン、スパイラル等の他、各種導電素材によって形成されたロッド、ワイヤ、ファイバ又はそれらの任意の組合せ等も含めることとする。本発明を実施する際には、その断面形状が規則的なナノストラクチャも不規則なナノストラクチャも使用できる。例えば円形、卵形、楕円形、長方形、正方形、台形等の断面形状を使用できる。また、各ナノストラクチャの幅(非円形の場合)又は直径(円形の場合)は例えば約1〜約500nm、とりわけ約10〜約200nmにするとよく、長さは最大数百μm、例えば約1〜約500μmにするとよい。更に、そのナノストラクチャの組成、形状、長さ等のパラメタを制御することによって、ナノストラクチャの電気的特性、機械的特性及び熱的特性を制御できる。例えばナノストラクチャとしてカーボンナノチューブを形成する場合、そのキラリティを決めることによってそのナノストラクチャを導体にも半導体にもすることができる。また、カーボンナノチューブ等のナノストラクチャには、鋼より高い降伏強さといった機械的特性や銅より高い熱伝導率がある。カーボンナノチューブの熱伝導率は、ダイアモンドの熱伝導率に比肩し又は優る値になることもある。
【0008】
ここではまず、本発明の実施形態についてその構成を仔細に説明するのに先立ち、本発明の各実施形態に係る帯電装置(後に詳述)を組み込める電子写真複製(reproduction)装置及びその種々の構成要素について、図1を参照して模式的に説明する。本発明に係る帯電装置はとりわけ電子写真複製マシンにて好適に使用できるが、後の説明によって追々明らかになるように、本発明は他種装置でも好適に実施できる。例えば、静電写真(electrostatographic)プロセスを実施する様々なマシンで、或いは何らかの形で帯電装置を用いる様々なシステムで、本発明の実施形態に係る帯電装置を好適に使用できる。特に、大抵の静電写真複写(copying)乃至印刷装置が数多くのサブシステムから構成されており、それらのサブシステムの中には帯電装置を設けうるサブシステムが種々あり、従ってそうしたサブシステムでも本発明の各実施形態に係る帯電装置を使用できる、ということに、ご留意頂きたい。該当するサブシステムとしては、トナー転写、剥離、放電、消去、予備乃至事前清掃、清掃等のサブシステムがある。更にご留意頂きたいことに、本発明に係る帯電装置は様々な用途向けにまた様々な目的用に実施できる。例えば、本発明の実施形態に係る帯電装置は、面を帯電させる処理、面上の電荷に変化を与える処理、面上にイオンを堆積させる処理、気体中乃至流体中でイオンを堆積させる処理等、目的を問わず様々な用途に用いうる。また、本発明の実施形態に係る帯電装置は、面上に存する一種類以上の素材に電荷の変化をもたらす目的、例えば吸着支援、面における電荷誘導、分極、クリーンルーム内等での浄化・高純度化、生体物質による汚染の除去、生体物質の検知、生体物質の成長制御乃至移動制御等で、使用することができる。生体物質関連の例についていえば、本発明の実施形態に係る帯電装置を組み込んで解析センサ、検知器乃至解析システムを構成し、電気泳動解析又はそれに類する解析を実施する機器にそれを組み込むのが望ましい。
【0009】
図1に示した電子写真複製装置は、電気的に接地された導電基板14上に光導電面12を堆積させた構成を有するドラム10を備えている。図示しないがドラム10はモータと連携しており、そのモータが動作するとドラム10が矢印16の方向に回転する。この回転に伴い光導電面12の各部は前進していき、行く先々に配置されている後述の様々な処理ステーションを通り抜けていく。ドラム10上の光導電面12の各部がまず通るのは帯電装置20を有する帯電ステーションAであり、この装置20は到来した部分を帯電させる。
【0010】
光導電面12のうち帯電処理が済んだ部分は画像形成ステーションBに進む。画像形成ステーションBでは、図示しない原稿をやはり図示しない光源に対し露出し、その原稿の光像を光導電面12上の帯電部分に形成することによって、その部分の電荷を部位選択的に消散させる。これによって、原稿に相応する静電潜像がドラム10上に記録される。
【0011】
本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば理解できるように、光導電面12上の帯電部分への輻射による潜像形成手法は幾つかある。例えば、レーザビーム等の走査用電磁輻射ビームを適宜変調し、光導電面12上の該当部位に照射すればよい。
【0012】
ドラム10上の光導電面12のうち静電潜像記録済部分は現像ステーションCに進む。現像ステーションCに設けられている現像システム30、例えば磁気ブラシ型現像器は、その静電潜像上に現像剤を堆積させる。
【0013】
この図に示した現像システム30は、ハウジング34内に単一の現像ローラ32を配した構成である。通常、ハウジング34内にはキャリア溜まりがあり、そこにはトナー粒子より大きな導電性キャリアビーズが貯留されている。現像システム30は、例えばこのキャリアビーズをトナー粒子と混ぜ合わせ、両者の摩擦により後者を帯電させて現像剤を形成し、形成された現像剤を現像ローラ32上に装荷する。現像ローラ32には、現像剤の装荷及び移送並びに現像剤による現像のため、例えば磁石を内蔵させてある。現像ローラ32の表面には摩擦帯電されたトナー粒子が吸着して層をなすので、現像ローラ32を回転させてトナー粒子を現像ゾーンに運び込み、そこで磁気ブラシにより光導電面12上にトナー像を形成即ち現像することができる。いわゆる当業者であれば理解できるように、現像システムにはこれ以外にも様々な形式がある。
【0014】
光導電面12のうちトナー粒子堆積済部分は、同図中に示すように、ドラム10の回転に伴い転写ステーションDに進む。転写ステーションDでは、現像により得られたトナー像を、移動中のシート状被着素材42に接触させる。各部材の動作タイミングは、光導電面12上に現像済の像が転写ステーションDにてシート状被着素材42と接触することとなるよう、設定乃至制御する。転写ステーションDに設けられている帯電装置40は、被着素材42の背面に静電荷を発生させることによって、光導電面12上に現像済の像から被着素材42へのトナー転写を支援する。
【0015】
画像転写済被着素材42は次いで矢印44の方向へ移送され、図示しないコンベア上に載せられて図示しない融着ステーションに送られる。融着ステーションでは、転写済画像を被着素材42に永久固着させ、複写物乃至印刷物を完成させる。オペレータは、こうして仕上がった複写物乃至印刷物を受け取ることができる。
【0016】
他方、被着素材42がドラム10から剥がれた後の光導電面12上には、現像剤が僅かながら貼り付いて残る可能性がある。被着素材42がドラム10から剥がれた後に残存トナー粒子を光導電面12から除去するには、例えば清掃ステーションE等の最終処理ステーションを設ければよい。
【0017】
清掃ステーションEは様々な機構によって実現することができる。例えば図示の如く単純なブレード50を設け或いは図示しない繊維質ブラシを可回転実装し、それを用いて光導電面12からトナー粒子を刮ぎ落とすようにする。また、図示しないが、清掃ステーションEに放電ランプを設けるとよい。放電ランプから光導電面12の隅々に十分な量の光を照射することにより、光導電面12上の残存静電荷を全て散逸させることができ、次の画像形成サイクルに備えることができる。
【0018】
本発明を実施する際には、その装置乃至システム構成が周知になっている数種類のものを含め、様々な静電複製装置を対象とすることができる。また、本願中に記した静電写真プロセス用サブシステム乃至プロセスの細部に対し、特に支障なく本発明を実施できるよう、改変を施すこともできる。
【0019】
図2〜図6に、電子写真プロセスにて例えば対レセプタ帯電処理又は放電処理に使用できる固体式帯電装置を幾つか示す。これから説明する各実施形態の帯電装置においては、第1及び第2電極が誘電体素材により分離されており、更にその第2電極には、それぞれその一端がその第2電極の表面と導電接触するよう複数個のナノストラクチャが設けられている。ナノストラクチャを有するこれらの実施形態によれば、従来の帯電装置に比べ使用電圧を低くすることができ、オゾンやNOx等の酸化性物質の発生量を減らすことができ、或いは動作温度を低くすることができる。即ち、ナノストラクチャを用いることによって電荷発生に必要な電界強度が変化するため従来より低い電圧でも電荷が発生するようになり、また、ナノストラクチャ被覆無しコロナ電極使用時に比べ電荷発生プロセス所要気体量がかなり少なくなる分、不要酸化性物質発生量を抑えることができる。
【0020】
図2に、本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置200を示す。この帯電装置200は、誘電体層210、誘電体層210の第1面211と隣り合うよう配置された第1電極220、並びに誘電体層210の第2面212と隣り合うよう配置された第2電極230を備えている。本実施形態に係る固体式帯電装置200は、更に、第1電極220と隣り合うよう配置された例えばアルミナ製の基板260を備えている。また、1個又は複数個のヒータ250を設けた形態で実施してもよい。図3中の部分断面に表されているように、本実施形態に係る固体式帯電装置200は更に複数個のナノストラクチャ240を備えている。これらのナノストラクチャ240は、各ナノストラクチャ240の一端が第2電極230の第2面231と導電接触するよう、配置されている。
【0021】
ナノストラクチャ240は、第2電極230の第2面231全体に亘って設けてもよいし、或いは第2面231の一部分だけに設けてもよい。ナノストラクチャ240は例えば導電性とする。ナノストラクチャ240の形態は、例えばカーボンナノチューブ等のSWNT、MWNT、ロッド、ワイヤ、ファイバ等の形態とする。これらのうち何種類かの形態が混在していてもよい。ナノストラクチャ240を形成する元素としては、例えばIV族、V族、VI族、VII族、VIII族、IB族、IIB族、IVA族及びVA族のうち何れかに属する元素を少なくとも一種類使用するとよい。例えば金属、合金、上記元素の混合物等を使用できる。なお、本願における元素族表記は皆、CAS(Chemical Abstract System;化学文献抄録サービス;登録商標)による表記に従っている。ナノストラクチャ240を形成する方法としては、例えば気相成長、真空蒸着、電解メッキ、無電解メッキ等を含め様々な方法を使用できるが、いわゆる当業者であれば理解できるように他の方法でも形成できる。ナノストラクチャ240の幅は例えば約10〜約500nm、長さは例えば約1〜約200μmである。本実施形態においては、ナノストラクチャ240を有する面即ち第2電極230の第2面231を、図示しないレセプタと向かい合うようレセプタから離して配置する。第2電極230の第2面231とレセプタとの間隔は、約2mm未満、例えば約0.5〜約2mmとする。
【0022】
本実施形態における第1電極220は複数個の交流電極から構成されている。それらの交流電極は互いに実質平行になるよう配置されており、また第2電極230と同じくNi、Au、その組合せ等の導電素材によって形成されている。他方の第2電極230には複数個の開口235が設けられているので、第1電極220のストライプをそれら開口235の下方に配置することによって、第1電極220と第2電極230との間の静電容量を抑えることができ、従って交流電力印加時に流れる交流電流を抑えることができる。なお、交流が印加されるこれらの第1電極220は皆、互いに導通させておく。また、図2及び図3に示すように第2電極230は開口235によるアレイを有している。本実施形態においては、このアレイにおける開口235のピッチが約150〜約200μm、各開口235の幅が約50〜約75μmである。
【0023】
誘電体層210の役割は第1電極220と第2電極230の間を絶縁することである。本実施形態における誘電体層210の厚みは約25μm以下とする。誘電体層210は、例えばMgOや、Al、Ta、Ti、Gd、Yb、Y、Dy、Nb若しくはLaの酸化物や、SrTiO、BaSr(1−x)TiO、アルミノ珪酸塩、ハフニウム及びジルコニウム珪酸塩、雲母等によって形成する。また、例えばPI(polyimide)、PEEK(polyether ether ether ketone)、PU(polyurethane)等の絶縁性ポリマも使用できる。更に、図2に示した例においては、帯電装置200を加熱するためのヒータ250を第1電極220と平行になるよう基板260上に配置してあるが、このヒータ250は例えば、いわゆる当業者にとり既知の形状及び構成を有する抵抗ヒータとする。
【0024】
図4に、本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置400の動作を示す。この図にある通り、第1電極420と第2電極430の間には交流電源480から高周波交流電圧、例えば約2000V以下のピークトゥピーク電圧及び約20kHz〜約1MHzの周波数を有する交流電圧を印加し、第2電極430には図中の直流電源からレセプタ最終電圧と近似的に等しい直流電圧Vscreenを印加する。更に、装置温度が約80℃以下に留まるよう、例えば図2に示したヒータ250と同様のヒータによって帯電装置400を加熱する。また、本実施形態においては、第1電極420の上方に電気絶縁性のカプセル化層465が設けられている。ここではその原理を特定するつもりはないが、第1電極420とナノストラクチャにより被覆されている第2電極430との間に高周波交流電圧を印加すると両者間に高周波交流電界が発生し、その電界の強度が開口の縁において電界しきい値を上回ると、電子や気体イオン等の帯電種が発生するものと見てよかろう。即ち、図3中、開口235の縁にあるナノストラクチャ240の先端にて電荷強度が十分に高まると正イオン、自由電子、負イオン等の帯電種が発生し、それらの帯電種が他の気体分子乃至原子と衝突してそれらの分子乃至原子(の一部)をイオン化させ、このイオン化によって生じたものも含めそれらの帯電種が図4中の光導電面406に近づき堆積して帯電させる、と見てよかろう。レセプタ405の光導電面406は第2電極430と向かい合うよう第2電極430から離して配置されており、また本実施形態では光導電面406と第2電極430との間隔dが約0.5〜約2mmとされている。このように、本実施形態では、帯電種発生部位が第2電極430の隅部に限られておらず、第2電極430の表面上でナノストラクチャが配置されている場所ならばどこからでも、帯電種が発生する。
【0025】
また、本発明の実施に当たっては、ナノストラクチャの被着先たる第2電極(コロナ電極)を様々な形態にすることができる。例えば図5に示す固体式帯電装置500は、基板560、基板560と隣り合うよう配置された第1電極520、第1電極520と隣り合うよう配置された誘電体層510、並びに誘電体層510と隣り合うよう配置された第2電極530を備えており、またその第2電極530の第2面531上には、それぞれその第1端が面531と導電接触するよう複数個のナノストラクチャが設けられている。更に、第2電極530は互いに実質平行になるよう配置された複数個の電極として構成されており、各第2電極530には開口535のアレイが形成されている。なお、この図ではアレイの個数が3個で各アレイにおける開口535の個数が7個の例を示してあるが、いわゆる当業者であれば理解できるように、この構成は一例であり別の構成にすることもできる。
【0026】
図示しないが、本実施形態では面531全体に亘ってナノストラクチャを配置してある。そのため、本実施形態では、電流電圧曲線の勾配が非常に急峻になる他、帯電種発生場所の個数が増すのでより均一に帯電種を発生させうる。そのため、本実施形態の固体式帯電装置500ではヒータを設ける必要がない。
【0027】
また、本発明に係る固体式帯電装置は、開口のないコロナ電極を用いて実施することもできる。例えば図6に示す固体式帯電装置600は、誘電体層610、誘電体層610の第1面611と隣り合うよう配置された第1電極620、並びに誘電体層610の第2面612と隣り合うよう配置された第2電極630を備える他、それぞれその一端が第2電極630の第2面631と導電接触するよう配置された図示しない複数個のナノストラクチャを備えている。
【0028】
第1電極620は、単独の電極として構成してもよいし、複数個の電極を互いに平行になるよう配置して構成してもよい。第2電極630は、互いに実質平行になるよう複数個の電極を配置することによって構成する。ナノストラクチャは、この第2電極630の第2面631全体に亘り又はその一部分のみに配置する。
【0029】
以上、複数個のナノストラクチャがそのコロナ電極の表面に被着している固体式帯電装置への本発明の適用例を以て、本発明を説明したが、いわゆる当業者であれば理解できるように、複数個のナノストラクチャをそのコロナ電極の表面に被着させうる限り、他種構成にも本発明を適用できる。更に、以上の説明では、電子写真方式又は静電写真方式による画像形成装置、システム及び方法に対する本発明の適用例を示したが、ご理解頂けるようにこれも例示的なものであり、本発明の用途をその種の用途に限定する趣旨のものではない。むしろ、本発明の実施形態に係るシステム及び方法は、その原理上、帯電処理を担う装置である限りどのような装置にも好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電装置を使用できる電子写真印刷装置を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置、そのナノストラクチャ付コロナ電極及びそのコロナ電極の開口を示す斜視図である。
【図3】図2に示したコロナ電極並びにその開口及びナノストラクチャを示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置、そのナノストラクチャ付コロナ電極、そのコロナ電極の開口、並びにこの装置により帯電されるレセプタを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置、そのナノストラクチャ付コロナ電極、並びにコロナ電極に形成された複数の開口アレイを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る固体式帯電装置、並びにそのナノストラクチャ付コロナ電極たる複数の直線状電極を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
200,400,500,600 固体式帯電装置、210,510,610 誘電体層、211,611 誘電体層の第1面、212,612 誘電体層の第2面、220,420,520,620 第1電極、230,430,530,630 第2電極、231,531,631 第2電極の第2面、240 ナノストラクチャ、405 レセプタ、480 高周波交流電源、Vscreen 直流電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
誘電体層の第1面と隣り合うよう配置された第1電極と、
その第1面が誘電体層の第2面と隣り合うよう配置された第2電極と、
それぞれその一端が第2電極の第2面と導電接触している複数個のナノストラクチャと、
を備える電子写真用帯電装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真用帯電装置であって、上記複数個のナノストラクチャが、SWNT、MWNT、ロッド、ワイヤ、ホーン、スパイラル若しくはファイバ又はそれらの任意の組合せである電子写真用帯電装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子写真用帯電装置であって、誘電体層がMgOを含み、第1電極がNiを含み、第2電極がAu又はNiを含む電子写真用帯電装置。
【請求項4】
第1及び第2電極並びにそれらの間に配置された誘電体層を備え第2電極にはそれぞれその第1端がその第2電極の表面と導電接触するよう複数個のナノストラクチャが設けられている固体式帯電装置を準備するステップと、
第1電極と第2電極の間に交流電圧を印加するステップと、
上記複数個のナノストラクチャの第2端にて複数の帯電種を発生させるステップと、
第2電極と向かい合うよう第2電極から離して配置されたレセプタ上に帯電種を堆積させることによりそのレセプタを帯電させるステップと、
最終レセプタ電圧と近似的に等しい直流電圧を第2電極に印加するステップと、
を有し、電子写真用帯電装置により実行されるレセプタ帯電方法。
【請求項5】
請求項4記載のレセプタ帯電方法であって、第2電極に設けられた開口の縁から離れた場所で帯電種が発生することとなるよう、上記複数個のナノストラクチャを第2電極の表面に配置するレセプタ帯電方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−279724(P2007−279724A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90293(P2007−90293)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】