説明

ナノチューブを含むポリマー組成物

少なくとも1種のポリマーおよびカーボンナノチューブを含むポリマー組成物が記載されている。ポリマー組成物は、多層のカーボンナノチューブおよび/または単層のカーボンナノチューブを有することができる。組成物はまたカーボンブラックを含むことができる。また、該ポリマー組成物から作られる、ケーブルおよび他の物品を含む種々の物品が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は合衆国法典第35巻第119条第e項の下に、2005年8月8日に出願した米国仮特許出願、番号60/706,469の利益を主張し、そのすべてがここに参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は種々の組成物中のカーボンナノチューブに関し、更にシールド用組成物などの電線およびケーブルコンパウンドにおけるその使用に関する。本発明はまた、電線およびケーブル用コンパウンドにカーボンナノチューブおよびカーボンブラックの混合物を配合すること、また該混合物を使用することによる特定の特性の達成に関する。
【背景技術】
【0003】
絶縁ケーブルは電力の輸送および配電に広く用いられている。電力ケーブルの2つの成分、ストランドシールドおよび絶縁シールドは、導電性カーボンブラックを含むことができる。半導体材料が導体および絶縁の間に導電位表面を創り出すために用いられる。
【0004】
導電性充てん材は、種々の混合法によりポリマー組成物中に配合することができる。特定の充てん剤により付与された導電性の程度はその物理的および化学的性質に関連する。所望の導電性を有する充てん剤については、できるだけ低粘度を与え、そして混合物のポリマー組成物の加工性を改良するような導電性充てん剤を利用するのが通常望ましい。ケーブル用途に関して、延ばされたケーブル寿命に作用するもう1つの重要な要因はシールド界面における平滑度である。界面におけるいかなる欠陥も応力レベルを増加させ、そして早期のケーブル破損をもたらす可能性がある。
【0005】
中圧から高圧用途のために設計された電力ケーブルは、銅もしくはアルミニウムコア導体、半導体シールド層、絶縁層、および半導体絶縁シールド層を有することができる。絶縁層は、主に架橋ポリエチレンもしくは架橋エチレンプロピレンゴム(EPR)のいずれかであることができる。ケーブルの架設の間、組継ぎ(splices)および端末接続をすることがしばしば必要であり、そしてこれは絶縁層からの絶縁シールド層の完全なはく離を要求する。従って、絶縁層から容易にはがれうる可剥性(strippable)半導体絶縁シールドが望ましい。しかしながら、絶縁層および半導体絶縁の間で機械的完全性を維持するのに最低限の剥離力が要求される;もし力が低すぎると、接着性の損失は界面に沿った水の拡散をもたらす可能性があり、電気的破壊を生じる。
【0006】
従って、可剥性配合物において、比較的低粘度で、高いコンパウンド導電性、高レベルの平滑度および低接着性を同時に付与し得る新規な組成物を作り出すことが有利となる。これらの、および他の利点は本発明の組成物により達成することができる。
【0007】
静電気荷電蓄積は多くの異なる技術において種々の問題の原因である。静電気荷電は材料同士を付着させる、または互いに反発させる原因となる可能性がある。荷電蓄積はまた、汚れや他の外来からの微粒子を引き付け、そしてそれらが材料に付着する原因となる可能性がある。絶縁物からの静電気放電もまた多くの技術分野において重大な問題の原因となる可能性がある。例えば、可燃性の蒸気が存在しているときには、放電は蒸気に着火し、爆発や火災の原因となる可能性がある。
【0008】
静電気蓄積は電子産業において特に問題であり、なぜならば最新の電子デバイスは静電放電による損害に極めて敏感であるからである。静電気蓄積はまた、可燃性の蒸気が存在している自動車用途において特に重大な問題である。これはチューブ、燃料ラインおよび他のプラスチックの自動車部品を含み、それらでは静電気荷電が生み出される可能性がある。
【0009】
静電気蓄積は、材料の電気伝導性を増大させることにより制御することができる。大部分の帯電防止剤は静電気を、形成されるにつれて消散させることにより作用する。静電気減衰速度および表面導電性は、帯電防止剤の効果の通常の指標である。
【0010】
帯電防止剤は、そうしなければ絶縁性である材料の全体に配合することができる。実際、導電性充てん剤はポリマーの帯電防止剤として普通に用いられている。しかしながら、比較的に少数の導電性充てん剤しか、250℃から400℃またはそれ以上の高温になる可能性のあるポリマー溶融加工温度に耐えるのに不可欠な熱的安定性を有していない。材料の機械的特性を損なわないために、充てん剤を可能な限り少ない担持量で用いることもまた一般には望ましい。
【0011】
カーボンブラックおよび金属粉末などの導電性充てん剤の場合には、大量のカーボンブラックまたは金属粉末を、マトリックス材料とともに用いなければならない。このことは押出し成形ステップにおいて流動性の低下をもたらし、そして満足のできる特性を有するシートを得ることを困難にさせる。更に、得られるシート材料の機械的強度、そして特に衝撃強度が、実用的な使用には満足できない程まで低下する。それでもなお、静電気の散逸は非常に改善することができる。
【0012】
従って、帯電防止消散(dissipation)用途では、充てん剤の比較的少ない担持量で導電性を与える導電性充てん剤を開発することが望まれている。カーボンブラックは高いパーコレーション閾値を有しており、そして通常は高度の担持量を要求する。この用途には、低いパーコレーション閾値を有する導電性充てん剤が必要である。
【0013】
カーボンブラックなどの導電性充てん剤の添加によって、ホストポリマーの熱的および燃焼特性が影響を受ける可能性があることもまた知られている。このことは幾つかの出版物の中で論証されている。Kashiwagi et al.、Polymer、 45 巻、p.4227〜4239 (2000)、Beyer G.、 Fire and Materials、 26 巻、p.291〜293 (2002)を参照のこと。これらの出版物はその全てを参照のためにここに組み込まれる。
【0014】
大部分のプラスチクックは、それらが有機材料であるために、極めて高度の燃焼性を有している。多くの用途においては、これらの材料の燃焼性を低減することが望まれる。場合によっては、ある目的に用いられるプラスチックでは燃焼特性に関して厳しい規制が施行されている。このことは欧州連合内においては特にその通りである。
【0015】
環境に優しい難燃剤を開発することが望まれている。表面に処理をすることなくポリマー中に直接分散させることができる、または相溶化ポリマー改質剤を必要とする難燃剤もまた必要とされている。従って、ホストポリマーの燃焼特性および一般的な熱特性を改善した導電性充てん剤組成物を開発することが望まれている。
【0016】
カーボンブラックのような充てん材料は、ホストポリマー系の機械的特性も同様に改善することができることもまた知られている。特に、プラスチックと他の材料の組み合わせである進歩した材料は、多くの産業に亘ってより多くのまたより重要な用途を見出している。剛性、強靭性および強度などのより重要な物理特性を有する進歩した材料の開発が望まれている。これらの材料は、構造部分(structural section)、I形梁、電池の構造部品、防護具など、および航空機および宇宙ビークルにおいて用途を見出すであろう。
【0017】
また、タイヤ用途、特に高性能タイヤやレース用途用の充てん剤組成物の代替物の開発が望まれている。現在は、カーボンブラックが主に用いられている。しかしながら、高性能の代替物が現在開発されつつあり、また必要とされている。これらのタイヤは、改善されたトレッド性能、改善された磨耗、より低い回転抵抗、より低い熱蓄積、改善された引き裂き抵抗を有している。この組成物は、完全に新規な充てん材料から作られてもよいし、またはカーボンブラックとの混合物から作られてもよいであろう。
【0018】
更に、高秩序のおよび/または自己組織化したカーボンナノチューブ組成物を用いた組成物を開発することが望まれている。高秩序の自己組織化したカーボンナノチューブは極めて独特のまた卓越した特性を有することが知られている。Smalleyらに与えられた米国特許、番号6,790,425号を参照のこと。これはその全てを参照のために組み込まれる。自己組織化したカーボンナノチューブから形成された組成物は、卓越した物理的、電気的また化学的特性を有することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、電気ケーブル、静電気散逸(dissipation)、自動車用途、および導電性ポリマー組成物が必要とされる用途などを含む、これらに制限される訳ではないが、種々の用途に用いることができるカーボンナノチューブを充てんしたポリマー組成物に関する。カーボンナノチューブは、単独で、またはカーボンブラックなどの他の充てん剤と混合してのどちらででも充てん剤として用いることができる。
【0020】
本発明の特徴は、好ましくは1つまたはそれ以上の改善された特性を電線および/またはケーブル組成物に与える新規なカーボンナノチューブ組成物を提供することにある。
【0021】
本発明の他の特徴は、電線およびケーブル組成物に組み込まれたときに低粘度を与えるカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0022】
更に、本発明の特徴は、電線およびケーブル組成物に組み込まれたときに、容認できるまたは高い導電性範囲に導くカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0023】
本発明の更なる特徴は、電線およびケーブル組成物に配合されたときに、形成された組成物に高度な平滑性を与えるカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0024】
本発明の更なる特徴は、電線およびケーブル組成物に配合されたときに、カーボンナノチューブ組成物を含む層の非常に良好な可剥性を与えるカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0025】
また、本発明の特徴は、電線およびケーブル組成物に配合されたときに、上記の全ての特性の組み合わせを与えるカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0026】
本発明の他の特徴は、導電性充てん剤の比較的に低いパーコレーション閾値を備えたカーボンナノチューブ組成物を提供することであり、この組成物は電子産業や自動車産業において帯電防止プラスチックとしての用途を見出すであろう。これらの材料は、比較的に高い静電気減衰速度を有するであろうが、しかしながら導電性充てん剤の担持量は比較的少なく、またホストポリマーの物理特性の比較的に高い割合を維持するであろう。
【0027】
本発明の他の特徴は、車両の燃料ラインの用途のための帯電防止剤としての用途を見出すであろうカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0028】
本発明の他の特徴は、静電放電に対して高度に敏感である電子部品の製造に用いられるポリマー材料用の帯電防止剤としての用途を見出すであろうカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0029】
本発明は更に、自動車燃料システムの部品または静電塗装された物品のような自動車用物品などの、上記のポリマー組成物の1つまたはそれ以上を含む物品に関する。本発明は、更に物品の静電塗装方法に関する。
【0030】
本発明の特徴はまた、プラスチック材料の燃焼特性および熱的特性を改善するカーボンナノチューブを提供することである。
【0031】
本発明の更なる特徴は、ホストポリマーの望ましい物理特性がカーボンナノチューブ充てん剤によって大きくは影響されないような低レベルのカーボンナノチューブ充てん剤を用いながら、同時にプラスチック材料の燃焼特性および熱的特性を改善するカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0032】
本発明の更なる特徴は、ポリマー中へのカーボンナノチューブの分散のための表面処理や相溶化剤の必要なしに、プラスチック材料の燃焼特性および熱的特性を改善し、またホストポリマー中に容易に取り込むことのできるカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0033】
本発明の更なる特徴は、剛性、強靭性および強度を含むがこれらには限定されない、ホストポリマーの機械的特性を改善するカーボンナノチューブを提供することである。
【0034】
本発明の更なる特徴は、構造部分(structural sections)、I形梁、電池の構造部品、防護具などの、および航空機および宇宙ビークルにおいて用途を見出すカーボンナノチューブ組成物を提供することである。
【0035】
本発明の他の特徴は、タイヤ用の充てん剤としての用途を見出すカーボンナノチューブ組成物を提供することである。このカーボンナノチューブ組成物はカーボンナノチューブを単独で、またはカーボンブラックとの混合物でのいずれで用いてもよい。これらのタイヤは改善されたトレッド性能、改善された磨耗、より低い回転抵抗、より低い熱蓄積、および/または改善された引き裂き抵抗などの優れた特性を示す。
【0036】
本発明の他の特徴は、高秩序の、自己組織化したカーボンナノチューブを用いた組成物を提供することである。
【0037】
本発明の更なる特徴および利点は、以下の記載の中で一部は説明され、また一部はそれらの記載から明らかとなり、あるいは本発明の実施によって学び取ることができる。本発明の目的および他の利点は、記載された説明および添付の特許請求の範囲の中で特に示した要素および組み合わせによって得られ、また理解されるであろう。
【0038】
本発明は少なくとも1種のポリマーと、カーボンナノチューブとを含むポリマー組成物に関する。
【0039】
更に本発明は、本発明のポリマー組成物を用いることによって、電線およびケーブル組成物の粘度を下げ、導電性を改善し、平滑性を改善し、および/または可剥性を改善する方法に関する。
【0040】
前述の全体的な説明および以下の詳細な説明の両方ともに、例のため、また説明のためだけのものであり、また特許請求の範囲に記載した本発明の更なる説明を提供することを意図したものであることが理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、カーボンナノチューブを含むポリマー組成物などの組成物に関する。例えば、本発明は少なくとも1種のポリマー、およびカーボンナノチューブを含むポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、電気ケーブルなどの種々のタイプのケーブルなどの、これらには限定されないが、様々な製造物品へと形成することができる。
【0042】
ナノチューブについては、本発明においてはいずれのタイプのナノチューブも用いることができる。例えば、カーボンナノチューブは単層または多層(2層、3層または3層以上)であってよい。ナノチューブは、長さ、内径、外径、純度および同様のものなどの、いかなる物理的パラメータを有していてもよい。
【0043】
例えば、外径は0.1ナノメータから100ナノメータまたはそれ以上であることができる。ナノチューブの長さは500ミクロンまたはそれ未満であることができる。長さは他に、1ミクロンから70ミクロンまたはそれ以上であることができる。多層ナノチューブを形成する層の数は、2から20層またはそれ以上などのいずれの数でもよい。
【0044】
カーボンナノチューブの純度は、質量%で、20%またはそれ以上、50%またはそれ以上、75%またはそれ以上、90%またはそれ以上、95%から99%またはそれ以上など、いずれの純度でもよい。繰り返すが、本発明ではいずれの純度も用いることができる。
【0045】
カーボンナノチューブは少なくとも90モル%の炭素、または少なくとも99モル%の炭素であることができる。ナノチューブは金属ナノ粒子(通常はFe)をナノチューブの先端に有することができる。ナノチューブは3以上、または10以上の幅対長さのアスペクト比を有することができる。ナノチューブは、1μm以上の長さ、例えば5から500μmと、3から100nmの幅を有することができる。幾つかの実施態様においては、SEMによって測定して、50%以上のナノチューブが10から100μmの長さを有している。ラマンスペクトルで測定して、全体の炭素の、50%以上、または80%以上、または90%以上の炭素が、アモルファスや単純なグラファイトの形態でなく、ナノチューブの形態である。
【0046】
意図される用途に応じて、例えば表面積や熱輸送などの所望の特性を得るために、ナノチューブの分布を調製することができる。ナノチューブは1から500nm、より好ましくは2から200nm(SEMによって測定された中心軸から中心軸まで)の平均距離間隔を有することができる。ナノチューブは、高度に整列されていることができる。幾つかの実施態様では、特にそれぞれの群の中に高度のナノチューブの整列がある場合には、ナノチューブは組成物中で群になって配置されていることができる。BET/N2吸収によって測定される物品の表面積は、10m2/gナノチューブ以上、幾つかの実施態様では100から200m2/gナノチューブ、および/または10m2/gナノチューブ以上である。カーボンナノチューブのサイズおよび間隔は、界面活性剤テンプレートの組成を制御することで制御することができ、例えば、より大きな界面活性剤分子の使用によってより大きな径のナノチューブを得ることができる。
【0047】
カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱的化学気相堆積法(CVD)法、触媒合成法またはプラズマ合成法などのいずれの方法によっても合成することができる。これらの方法は数百℃から数千℃の高温、または高温条件を避けるために真空下で実施することができる。
【0048】
1つの実施態様では、ナノチューブは10質量%もしくはそれ未満の、または約5%未満の金属を含んでいる。本発明の他の実施態様では、単層のカーボンナノチューブ材料は、約1質量%未満の金属を含んでいる。更に本発明の他の実施態様では、単層のカーボンナノチューブ材料は、約0.1質量%未満の金属を含んでいる。更に、本発明の1つの実施態様では、単層のカーボンナノチューブ材料は約50質量%未満のアモルファスカーボンを含んでいる。本発明の他の実施態様では、単層のカーボンナノチューブ材料は約10質量%未満のアモルファスカーボンを含んでおり、更に本発明の他の実施態様では、単層のカーボンナノチューブ材料は約1.0質量%未満のアモルファスカーボンを含んでいる。
【0049】
本発明において用いることができるカーボンナノチューブのタイプは、米国特許の番号、6,824,689、6,752,977、6,759,025、6,752,977、6,712,864、6,517,800、6,401,526および6,331,209、および米国公開特許出願の番号、2002/0122765、2005/0002851、2004/0168904、2004/0070009および2004/0038251に記載されているものを含んでいる。これらの出版物はカーボンナノチューブおよびその製造方法を記載している。これらの特許および公開特許出願のそれぞれは、上記で、または本特許出願を通して記載した特許または公開特許出願と同様に、その全てを参照のためにここに組み込まれる。
【0050】
通常、カーボンナノチューブはチューブまたはロッドであると考えることができ、また円筒形であろうと多層であろうと、チューブを定義するいずれの形態を有してもよい。カーボンナノチューブは、マサチューセッツ州ケンブリッジのHyperion Catalysis International, Inc.社などから商業的に入手できる。
【0051】
更に、ナノチューブは、ジエンまたは他の知られている官能化する試薬などの処理によって官能化することができる。更に、カーボンナノチューブは、付加したアルキル基、もしくは芳香族基、またはポリマー基、またはそれらの組み合わせなどの、1つまたはそれ以上の付加した有機基を有するように任意で処理することができる。代表的な有機基および付加の方法は、米国特許の番号、5,554,739、5,559,169、5,571,311、5,575,845、5,630,868、5,672,198、5,698,016、5,837,045、5,922,118、5,968,243、6,042,643、5,900,029、5,955,232、5,895,522、5,885,335、5,851,280、5,803,959、5,713,988、5,707,432および6,110,994および国際特許公開の番号、WO97/47691、WO99/23174、WO99/31175、WO99/51690、WO99/63007およびWO00/22051に記載されており、その全てを参照のためにここに組み入れる。国際公開出願の番号WO99/23174およびWO99/63007に記載された基と付加の方法もまた用いることが可能であり、その全てをここに参照のために組み入れる。
【0052】
本発明の組成物中に存在するナノチューブの量は、通常、組成物全体が意図した目的に対して有用である限り如何なる量が用いられてもよい。厳密に例示としてだけではあるが、組成物中に存在することのできるカーボンナノチューブの量は、組成物全体の約0.1質量%から約60質量%の範囲またはそれ以上であることができる。組成物中に存在することのできるより好ましい量は、約0.25質量%から約25質量%の範囲である。用いることができる他の質量パーセント範囲は、組成物の質量を基準として2質量%から20質量%の範囲を含んでいる。本発明のポリマー組成物中には意図した目的の用途に効果的な如何なる量のカーボンナノチューブも用いることが可能であるが、通常、質量基準でポリマー100部に対して、約0.1部から約300部の範囲の量のカーボンナノチューブを用いることができる。しかしながら、ポリマーの100質量部に対して約0.5質量部から100質量部のカーボンナノチューブの量を用いることが好ましく、そしてポリマーの100質量部に対して約0.5質量部から80質量部のカーボンナノチューブの量の使用がより好ましい。好ましくは、カーボンナノチューブは組成物を通して均一に分布していることが好ましいが、しかしながら任意には、カーボンナノチューブの濃度は組成物中のさまざまな位置で異なっていてもよい。
【0053】
本発明で用いられるナノチューブの利点は、ナノチューブが、それが配合されたポリマー組成物に、好ましくは低粘度を与えることである。
【0054】
本発明のナノチューブの他の利点は、ナノチューブが、それが配合されたポリマー組成物に、低CMA(コンパウンド吸湿)を与えることである。
【0055】
本発明のナノチューブの更なる利点は、ナノチューブが、ポリマー組成物中に高いまたは低い担持量で配合することが可能なことである。
【0056】
選択肢の1つとして、カーボンブラック、またはカーボンファイバーなどの他のカーボンタイプの充てん剤および同様のもの、などの充てん剤が、カーボンナノチューブとともに存在することができる。通常は、本発明では如何なるタイプのカーボンブラックもカーボンナノチューブとともに用いることができる。好ましくは、カーボンブラックはファーネスカーボンブラックであり、そしてポリマー組成物、特にはケーブルコンパウンドに通常用いられる如何なるタイプでもよい。カーボンブラックは、どのような物理特性や粒子サイズを有していてもよい。
【0057】
例えば、カーボンブラックは次の特性の1つまたはそれ以上を有していることができる。
CDBP(粉砕したカーボンブラックのジブチル吸収値):カーボンブラック100グラム当たり30〜100cc
ヨウ素価:15〜1,500mg/g
一次粒子径:7〜200nm
BET表面積:12〜1,800m2/g
DBP:カーボンブラック100グラム当たり30〜1,000cc
【0058】
本出願の組成物中のカーボンナノチューブと組み合わせて用いることのできるカーボンブラックの量は、選択肢の1つとして、組成物全体を基準にして例えば0質量%から約60質量%またはそれ以上である。より好ましい質量範囲は、組成物全体の質量を基準として約0.1から約40質量%、約2質量%から約20質量%、そして約3質量%から約15質量%である。カーボンブラックは、ポリマー組成物などの組成物中へ、慣用の技術を用いて導入することが可能であり、そして好ましくはカーボンブラックは組成物を通して均一に分布する。
【0059】
カーボンナノチューブでの場合と同様に、カーボンブラックは種々の官能化する試薬によって処理することおよび/または酸化することができる。本発明で用いられるカーボンブラックは、前述のように付加された有機基を有するように処理することができる。
【0060】
本発明のカーボンナノチューブおよび/またはカーボンブラックは、バインダーおよび/または界面活性剤などの種々の処理剤で更に処理することができる。米国特許の番号、5,725,650、5,200,164、5,872,177、5,871,706および5,747,559に記載された処理剤は、ここに参照によって組み込まれ、本発明のカーボンブラックの処理に用いることができる。界面活性剤および/またはバインダーを含む他の好ましい処理剤を用いることができ、それらは、ポリエチレングリコール、アルキレンオキサイド、例えばプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド、ソジウムリグノスルファート、エチレンビニルアセテートなどのアセテート、ソルビタンモノオレートおよびエチレンオキサイド、エチレン/スチレン/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートバインダー、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、および同様のものを含むが、これらに限定されない。このようなバインダーは、ユニオンカーバイド、ICI、ユニオンパシフィック、Waker/Air Products、Interpolymer CorporationおよびB.F. Goodrichなどの製造者から商業的に入手可能である。これらのバインダーは好ましくは、Vinnapas LL462、Vinnapas LL870、Vinnapas EAF650、Tweeen 80、Syntran 1930、Hycar 1561、Hycar 1562、Hycar 1571、Hycar 1572、PEG 1000、PEG 3350、PEG 8000、PEG 20000、PEG 35000、Synperonic PE/F38、Synperonic PE/F108、Synperonic PE/F127およびLignosite−458の商標の下に販売されているものである。
【0061】
一般に、本発明でも用いられる処理剤の量は、上記の特許に記載された量であってよいが、例えば、処理された充てん剤の約0.1質量%から約50質量%の量であってよいが、望まれる特性の種類または用いられる特定の処理剤に応じてこれとは異なる量で用いることも可能である。
【0062】
また、本発明の目的のためには、カーボン相とシリコーン含有種の相を含む集合体を任意に用いることができる。この集合体の説明は、この集合体の製造方法とともに、PCT公開の番号、WO96/37547およびWO98/47971中に、米国特許の番号、5,830,930、5,869,550、5,877,238、5,919,841,5,948,835および5,977,213中と同様に記載されている。これらの特許および公開特許のすべてをここに参照によって組み込む。
【0063】
カーボン相と金属含有種の相を含む集合体は、金属含有種の相が種々の異なる金属、例えばマグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモニ、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、アルミニウムおよび亜鉛、およびこれらの混合物であることができる場合に、任意に用いることができる。カーボン相および金属含有種の相の集合体は、米国特許の番号6,017,980中に記載されており、その全てもここに参照として組み込まれる。
【0064】
また、本発明の目的のためには、米国特許の番号5,916,934および1996年11月28日に公開されたPCT公開の番号WO96/37547に記載されているように、シリカで被覆されたカーボンブラックを任意に用いることができ、それらの全てがここに参照によって組み込まれる。
【0065】
ポリマーについては、上述のように、本発明のポリマー組成物中には少なくとも1種のポリマーが存在している。2種またはそれ以上のポリマーなどの混合物も用いることができる。ポリマーは単独重合体、共重合体であってもよく、または何種類のモノマーの重合によって形成されたものでもよい。ポリマーは熱可塑性でもまたは熱硬化性でもよい。
【0066】
本発明で適切に用いられるポリマーの中には、天然ゴム、合成ゴムおよび塩素化ゴムなどの合成ゴムの誘導体;約10質量%〜約70質量%のスチレンと約90質量%〜約30質量%のブタジエンの共重合体、例えばスチレン19部とブタジエン81部の共重合体、スチレン30部とブタジエン70部の共重合体、スチレン43部とブタジエン57部の共重合体およびスチレン50部とブタジエン50部の共重合体;共役ジエンの重合体または共重合体、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンおよび同様のもの、およびそのような共役ジエンとエチレン基を含みこれらと共重合可能なモノマー、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アルキル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファメチレンカルボン酸およびそれらのエステルおよびアミド、例えばアクリル酸およびジアルキルアクリル酸アミドがあり;更にここで適切に用いられるのは、エチレンおよび他の高級アルファオレフィン、例えばプロピレン、ブテン−1およびペンテン−1の共重合体;特に好ましいのはエチレン−プロピレン共重合体であって、エチレン含量が20〜90質量%の範囲のもの、またエチレン−プロピレン共重合体で、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンおよびメチレンノルボルネンなどの第三モノマーをさらに含むもの、がある。
【0067】
更に、好ましいポリマー組成物はポリオレフィン、例えばポリプロピレンおよびポリエチレンである。適切なポリマーはまた、以下のものを含む。
a)プロピレン単独重合体、エチレン単独重合体、およびエチレン共重合体およびグラフトポリマー、ここで共重合モノマーは、ブテン、ヘキセン、プロペン、オクテン、ビニルアセテート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のC1-18アルキルエステル、メタクリル酸のC1-18アルキルエステル、無水マレイン酸、無水マレイン酸のハーフエステルおよび一酸化炭素から選択される。
b)天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ランダムまたはブロックスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレン、アクリロニトリルブタジエン、エチレンプロピレン共重合体または三元共重合体、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)から選ばれたエラストマー。
c)スチレンの単独重合体および共重合体であり、スチレン−ブタジエンスチレンリニアおよびラジアルポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)およびスチレンアクリロニトリル(SAN)を含む。
d)熱可塑性プラスチックであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、アセタールを含む、および、
e)熱硬化性樹脂であって、ポリウレタン、エポキシおよびポリエステルを含む。
【0068】
更に、好ましいポリマー組成物は、ポリオレフィンであって、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、またはそれらの共重合体である。例としては、LLDPE、HDPE、MDPEおよび同様のものが含まれるが、これらに限定はされない。
【0069】
1つの実施態様では、組成物はエチレン含有ポリマーまたはエラストマーであり、例えば、ポリエチレンまたはエチレン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、および/またはエチレンエチルアクリレート(EEA)であるが、これらに限定されない。
【0070】
ポリマー組成物は、他の慣用の添加剤、例えば硬化剤、加工用添加剤、炭化水素オイル、促進剤、助剤、酸化防止剤、および同様のものを含むことができる。
【0071】
本発明の組成物はまた、適切な添加剤を、それらの知られた目的で、また知られたまた効果的な量で含有することができる。例えば、本発明の組成物はまた、架橋剤、加硫剤、安定剤、顔料、染料、色素、金属不活性化剤、エクステンダーオイル、潤滑剤、無機充てん剤および同様のものなどの添加剤を含むことができる。これらの成分は当業者にはよく知られており、そして当業者によって適切と認められるいずれの組成物も用いることができる。
【0072】
本発明のポリマー組成物は、ポリマーと粒子状成分を混合するための、当技術分野で知られているいずれの方法によっても製造することができる。
【0073】
本発明の組成物を含む製造物品を製造することができる。好ましい製造物品は、押出し成形した物品、例えばケーブル(またはその一部)、異形材(profile)、チューブ、テープ、またはフィルムである。これらの物品は静電気散逸用に、自動車用途において、および広く導電体として用いることができる。
【0074】
本発明のポリマー組成物は、物品のいずれの部分をも形成することができる。本発明のナノチューブを含む本発明のポリマー組成物は、紫外線(UV)応用に関して特に有用な用途を有しており、例えばパイプ、フィルム、膜、外被(jacketing)、それらの成分、およびそれらの部品、および同様のものである。パイプや同様のものは、如何なる適切なサイズまたは厚みであってもよい。従って、本発明のポリマー組成物から少なくとも一部を形成することができる物品は、パイプ、ケーブル外被、膜、成形品、および同様のものを含むが、これらに限定はされない。本発明のポリマー組成物から少なくとも一部を形成することができる物品の特に好ましい例は、飲料水、ガスおよび他の液体および気体、および同様のものなどの用途のための圧力パイプである。例えば、米国特許の番号6,024,135および6,273,142に記載されたデザイン、成分および用途はここでも用いることが可能であり、またその全てが参照によってここに組み込まれる。
【0075】
他の好ましい物品は、結合したもしくは可剥性の導電性の電線またはケーブル被覆コンパウンドである。また、本発明の製造物品として好ましいものは、以下のものを含む中圧または高圧ケーブルである。
a)金属導体コア、
b)半導体シールドまたは導体シールド、
c)絶縁層、および
d)外部半導体層または絶縁シールド、
e)中性導体、および
f)ケーブル外被。
【0076】
本発明の組成物は、例えば、上記のb)、d)および/またはf)で用いることができる。更に、組成物は可剥性でも結合されていてもよい。
【0077】
本発明の組成物は、シールド組成物および/または外部半導体層または絶縁シールドであることができる。これらの組成物はストランドシールド組成物および絶縁組成物として知られている。
【0078】
例えば、カーボンナノチューブはシールド組成物中へ様々な量で配合することができ、例えばシールド組成物の約0.01質量%から約50質量%、またより好ましくはシールド組成物の質量を基準として約0.25質量%から約35質量%、また最も好ましくはシールド組成物の約1質量%から約25質量%である。
【0079】
好ましくは、本発明のシールド組成物はエチレン−ビニルアセテート共重合体などのエチレン含有ポリマーまたはポリエチレン、および有機過酸化物架橋剤などの架橋剤を含んでいる。本発明のシールド組成物は他のポリマー、例えばアクリロニトリルブタジエンポリマー(例えばアクリロニトリルブタジエン共重合体)を更に含むことができる。もしもカーボンナノチューブまたはカーボンブラックが、例えばアクリロニトリルブタジエン共重合体の形で処理剤を有している場合は、シールド組成物中に存在させるアクリロニトリルブタジエンポリマーもしくは他のポリマーの量は減少させることができるかまたはなくすことができる。
【0080】
好ましくは、エチレン含有ポリマーはエチレン−ビニルアセテート共重合体またはエチレンエチルアクリレート共重合体であり、それらは好ましくはシールド組成物の質量を基準として20質量%から約50質量%、そしてより好ましくは約25質量%から約45質量%存在する。
【0081】
通常は、半導体組成物は、1種またはそれ以上のポリマーを、組成物を半導体の状態にするのに十分な量の導電性充てん剤と混合することによって製造することができる。同様に、絶縁材は、少量の充てん剤、例えば色素または補強剤をポリマー組成物中へ配合することによって形成することができる。絶縁材は、ポリマーを材料に半導体の性能を与えるよりもずっと少ない量の導電性充てん剤を配合することによって形成することができる。例えば、本発明のポリマー組成物はポリオレフィンなどのポリマーを組成物を半導体の状態にするのに十分な量の充てん剤と混合することによって製造することができる。
【0082】
本発明のポリマー組成物は、本ポリマー組成物の特性が適切であるいずれの製品中へも配合することができる。例えば、このポリマー組成物は絶縁された導電体、例えば電線および電力ケーブルを製造するのに特に有用である。ポリマー組成物の導電性に応じて、ポリマー組成物は、例えば半導体材料として、または絶縁材料として、これらの電線やケーブルに用いることができる。
【0083】
より好ましくは、ポリマー組成物の半導体シールドは、導体シールドとして内部導電体を覆って、または結合されたもしくは可剥性絶縁シールドとして絶縁材料を覆って、または外部被覆材料として、直接形成することができる。選定されたポリマー組成物中のカーボンナノチューブは、導電性もしくは非導電性配合物のいずれかで、ストランド充填用途にも用いることができる。
【0084】
通常、電気ケーブルの成分はいくつかの保護層により囲まれた導電性コア(多数の導電性電線のような)である。さらに、導電性コアは、導電性電線とともに、水を遮断するコンパウンドなどのストランド充てん剤を含むことができる。保護層は外被層、絶縁層、および半導体シールドを含む。ケーブルにおいて、通常、導電性電線は、半導体シールドにより囲まれており、ついで絶縁層に囲まれており、次いで半導体層、次いで金属テープシールド、そして最後にジャケット層に囲まれている。
【0085】
ポリマー材料は自動車用の材料として、金属に対していくつかの利点を提供し、また従って多くの自動車部品用に選択される材料になっている。例えば、ポリマー材料は自動車燃料システムの部品のほぼ全てについて好ましく用いられており、例えば燃料入口、給油口、燃料タンク、燃料ライン、燃料フィルタ、およびポンプ筐体である。これらのポリマー配合物の多くは、しかしながら非導電材料である。自動車はますます電子的に作動する装置を搭載しており、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)、電子式燃料噴射、衛星利用測位システム(GPS)および搭載された中央コンピュータなどである。これらの装置全ての安全な作動を確実にするために、自動車部品、例えば内部トリム、ダッシュボード、パネル、シート繊維、スイッチおよびハウジングに静電放電保護および静電散逸(ESD)特性を与えるポリマー材料が必要とされている。更に、静電塗装(ESP)が、自動車用の被覆された物品を調製するのにしばしば用いられている。ESPにおいては、塗料または被覆は、イオン化されもしくは荷電され、そして接地された、または導電性の物品上に噴射される。塗料もしくは被覆剤と接地された物品との間の静電気引力は、浪費される塗料材料がより少なく、また単純なまたは複雑な形状の物品への塗料被覆度がより堅実な、より効果的な塗装方法をもたらす。しかしながら、自動車産業において優れた腐食特性および低減された質量特性のために用いられるポリマー材料は、通常は絶縁性で、また非導電性である。
【0086】
電動の被覆方法においては、効果的な塗装方法を与えるために、被覆される基材と被覆剤との間に、電位が用いられる。より詳細には、塗料または被覆剤が荷電され、もしくはイオン化され、そして接地された物品上に噴射される。塗料もしくは被覆剤と、接地された導電性物品との間の静電気引力は、浪費される塗料材料がより少ない、より効果的な塗装方法をもたらす。更に、この方法の更なる利点は、より厚い、またより堅実な塗料被覆である。金属から作られた物品が塗装される場合、本質的に導電性である金属は容易に接地され、そして効果的に塗装される。しかしながら、多くの物品、特に自動車用のものの製造にポリマー材料を用いると、ポリマーは導電性が不十分または全く導電性でないために、物品が静電塗装される場合には、満足できる塗装厚さや被覆度が得られない。この問題を克服する試みの中で、導電性充てん剤を含む組成物が、イオン導電性金属塩の使用と同様に用いられてきた。更に、米国特許の番号、5,844,037は導電性カーボンとポリマーとの混合物を提供しており、これはその全てがここに参照によって組み込まれる。この特許に示されているように、好ましくは少量の導電性カーボン、例えば0.1質量%から12質量%が、アモルファスまたは半結晶性の熱可塑性ポリマーおよび異なる結晶化度を有する第二の半結晶性熱可塑性ポリマーとともに組み合わせて用いられる。
【0087】
米国特許の番号、5,902,517、6,156,837、6,086,792、5,877,250、5,844,037および5,484,838は、米国特許出願の番号、09/728,706と同様にその全てが参照によって組み込まれるが、カーボンブラックおよび半導性のもしくは導電性のポリマー組成物および物品に関する。しかしながら、高いコンパウンド導電性を有し、一方で同時に強靭性、剛性、平滑性、引張特性などのレベルが自動車用途での使用に受け入れられるレベルを有する導電性ポリマーを提供する必要性が依然としてある。
【0088】
本発明は少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1つのタイプの本発明のカーボンナノチューブを、任意に1種またはそれ以上のカーボンブラックとともに含む導電性ポリマーに関する。
【0089】
本発明の導電性ポリマー組成物中に存在するポリマーについては、このポリマーはいずれのポリマーコンパウンドでもよい。好ましくは、ポリマーは自動車用途において有用なものであり、例えばポリオレフィン、ハロゲン化ビニルポリマー、ハロゲン化ビニリデンポリマー、ペルフルオロポリマー、スチレンポリマー、アミドポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリケトン、ポリアセタール、ビニルアルコールポリマー、またはポリウレタンなどである。これらのポリマー材料の1種またはそれ以上の混合物で、記載されたポリマーが主成分として存在する、または少量成分として存在するの、いずれもまた用いることができる。ポリマーの特定のタイプは、所望の用途に依って決めることができる。これらは以下でより詳細に記載される。本発明のポリマー組成物はまた、適切な添加剤を、それらの知られた目的および量で含有することができる。例えば、本発明の組成物はまた、架橋剤、加硫剤、安定剤、顔料、染料、色素、金属不活性化剤、エクステンダーオイル、潤滑剤、無機充てん剤および同様のものなどの添加剤を含むことができる。本発明のポリマー組成物は、商業的に入手可能な混合機を用いて種々の成分を一緒に混合するような慣用の技術を用いて調製することができる。組成物は、当技術分野においてよく知られているようなバッチまたは連続の混合方法によって調製することができる。例えば、不連続の内部ミキサー、連続内部ミキサー、往復式単軸スクリュー押出機、2軸および単軸スクリュー押出機などを、配合の成分を混合するのに用いることができる。カーボンナノチューブはポリマー混合物中に直接導入されてもよく、またはカーボンナノチューブは1種のポリマー中へ、そのポリマーが他のポリマーと混合される前に導入されてもよい。本発明のポリマー組成物の成分は、自動車用途の物品のような材料の製造といったような、将来の利用のために混合され、そしてペレットに形成されてもよい。
【0090】
本発明の導電性ポリマー組成物は自動車用物品の調製に特に有用である。特に、導電性組成物は、自動車の燃料システムの部品、例えば燃料入口、給油口、燃料タンク、燃料ライン、燃料フィルタ、およびポンプ筐体などに用いることができる。更に、本発明の導電性ポリマー組成物は静電放電保護および静電散逸特性が重要な自動車用途において用いることができる。その例は、内部トリム、ダッシュボード、パネル、バンパーフェイシア、ミラー、シート繊維、スイッチ、ハウジングおよび同様のものを含んでいる。本発明は、自動車において用いられるような安全システムにも用いることができる。例えば、フィンガートラップ安全システムは、導電ゾーンとして本発明の導電組成物を含むことができ、ここでは2つの導電部品またはゾーンが通常用いられ、そして通常は絶縁コンパウンドによって分離されている。自動車用物品などの本発明の物品は、本発明のポリマー組成物から、当業者に知られた技術を用いて調製することができる。その例は、押出成形、多層共押出成形、ブロー成形、多層ブロー成形、射出成形、回転成形、熱成形、および同様のものを例として含むが、これらに限定されない。自動車用物品などのこれらの物品を調製するためには、所望の性能特性を実現するために、特定のポリマーまたは混合物が好ましく用いられる。例えば、燃料システム部品に好ましいポリマーは、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDMなど)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルEPDMスチレン(AES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA6、PA66、PA11、PA12およびPA46などのPA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタエート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、およびポリフェニレンエーテル(PPE)などである。好ましいポリマー混合物は、PC/ABS、PC/PBT、PP/EPDM、PP/EPR、PP/PE、PA/PPOおよびPPO/PPを含むが、これらには限定されない。本発明のポリマー組成物は望ましい全体的な特性、例えば導電性、強靭性、剛性、平滑性および引張特性を得るように最適化することができる。静電気散逸保護のための自動車部品用に好ましいポリマーは、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン(LLDPE、LDPE、HDPE,UHMWPE、VLDPEおよびmLLDPEなどのPE)、ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDMなど)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルEPDMスチレン(AES)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA6、PA66、PA11、PA12およびPA46などのPA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、テトラエチレンへキサプロピレンフッ化ビニリデンポリマー(THV)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリケトン(PK)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、共重合ポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)およびポリフェニレンエーテル(PPE)を含んでいる。好ましい混合物は、PC/ABS、PC/PBT、PP/EPDM、PP/EPR、PP/PE、PA/PPOおよびPPO/PEを含む。これらの自動車用物品を調製するのに用いられるポリマー組成物はまた、所望の全体的性能を得るために最適化することができる。
【0091】
本発明は更に物品を静電塗装する方法、さらに結果として得られる塗装された物品に関する。この方法は、自動車用物品などの物品の表面に塗料を静電気的に塗工する方法を含んでおり、その物品は本発明の導電性ポリマー組成物から形成されている。上記の燃料システムおよび静電気散逸保護でのように、静電気塗装される物品の調製に用いられるのはいくつかのポリマーが好ましい。これらのポリマーの例は、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDMなど)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルEPDMスチレン(AES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA6、PA66、PA11、PA12およびPA46などのPA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)およびポリフェニレンエーテル(PPE)を含んでいる。好ましいポリマー混合物は、PC/ABS、PC/PBT、PP/EPDM、PP/EPR、PP/PE、PA/PPOおよびPPO/PEを含むが、これらに限定されない。導電性ポリマー組成物は、導電性、表面平滑性、塗料接着性、強靭性、剛性および引張特性を含む所望の全体的な特性を得るように最適化することができる。
【0092】
本発明の導電性ポリマー組成物は、好ましくは自動車用途などの用途に有用な、有益な性能のバランスを提供する。特に、ポリマー組成物は、室温で測定した場合に、好ましくは100オーム−cmを超え、より好ましくは1000オーム−cmを超える体積抵抗率を有している。更に、これらの組成物は、1012オーム−cm未満の、そしてより好ましくは109オーム−cm未満の体積抵抗率を有する。このことは、これらの組成物を上記の自動車用途に特に有用なものにする。本発明においては、表面抵抗率も優れており、例えば1012オーム−cm未満であり、そして好ましくは1010オーム−cm未満または108オーム−cm未満である。
【0093】
本発明の組成物は、好ましくは有益な性能、例えば良好な粘度、高度な平滑性、許容できる導電性、および/または良好な可剥性のバランスを提供する。
【0094】
既に述べたように、カーボンナノチューブは低粘度を提供する、または促進する能力を有しており、それによりカーボンナノチューブがポリマー組成物を通して分散する能力を改善する。カーボンナノチューブはまた、好ましくはシールド組成物の導電性範囲を、例えば、ISO3915により、エチレンエチルアクリレート中に15質量%担持して、約1012オメガcmまたはそれ以下、そしてより好ましくは約105オメガcmまたはそれ以下、そしてさらに好ましくは約1000オメガcmまたはそれ以下に改善する。
【0095】
エチレンエチルアクリレート(EEA)中の多層のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真を図1に示した。
【0096】
表5は、本発明の種々の組成物について測定された物理的および電気的特性の概要を示している。最初の欄は組成物の充てん剤含量を測定するために行われた炉試験からの結果を説明している。これは全てのポリマーを取り除いて、導電性充てん剤だけを残すために、材料を炉中で約950℃で、不活性雰囲気の下で燃焼させること(burning)を含んでいる。2番目の欄は種々の組成物の測定されたメルトフローインデックスを説明している。
【0097】
表5の欄3は、本発明の種々の組成物の表面導電性を与えている。導電性は先ず圧縮成形したプラーク(plaque)を調製して測定した。圧縮成形されたプラークは通常は約16×16cmのサイズおよび約1mmの厚さを有していた。これらは次の圧縮成形プログラムを用いることによって調製した。180℃で、90kNの圧の下で2分間、次いで180℃で180kNの圧の下に3分間、次いで180℃で270kNの圧の下に3分間、次いで2枚の水冷された板の間で90kNの圧の下に2分間冷却した。次いでそれぞれのプラークの表面反応性を測定した。
【0098】
カーボンブラックを充てんした組成物およびカーボンナノチューブを充てんした組成物のパーコレーション曲線を図2に示した。このデータは、カーボンナノチューブを充てんした組成物のパーコレーション閾値がカーボンブラックを充てんした組成物のものよりも約6倍低いことを示している。これらの実験では、比較的に不純な(80%)多層のカーボンナノチューブが用いられたにも関わらず、このような結果である。
【0099】
図3は、本発明の種々の組成物の表面抵抗率に対するメルトフローインデックスを示している。
【0100】
本発明のある実施態様においては、カーボンナノチューブの使用は、ポリマー組成物などの組成物中で用いられる充てん剤の全体の量を低減することができる。言い換えれば、カーボンナノチューブを単独でまたはカーボンブラックと組み合わせて用いれば、充てん剤の全体の質量パーセントを低減することができ、従って、低密度、低粘度、低コンパウンド吸湿、分散品質および/または優れた平滑性を含む数々の利点を提供する。
【0101】
少なくとも1つの実施態様では、カーボンブラックと組み合わせたカーボンナノチューブは、相乗的な結果を与え、カーボンブラックと組み合わせたカーボンナノチューブは、低密度、低粘度、低配合物吸湿、分散品質および/または優れた平滑性に関して、全てがカーボンブラックであることを除いては、同じ総質量の充てん剤パーセント量を使用した場合と比較して、同じ、ほぼ同じ、またはより良い特性を実現する。従って、カーボンナノチューブの使用は、特にカーボンブラックといっしょの使用は、例えば電力ケーブルの成分として使用されるポリマー組成物などにおいて、少なくとも1つの同じ特性を得るのに必要な充てん剤の量の総量の低減に導く。
【0102】
カーボンナノチューブおよびカーボンブラックの、ポリマー組成物などの組成物への配合は、如何なる方法でも起こし得る。例えば、カーボンブラックは、カーボンナノチューブと共に、乾燥状態ででも、またはキャリア(carrier)溶液またはスラリーなどの液体状態ででも、先ず予備混合することができる。あるいは、カーボンナノチューブおよび/またはカーボンブラックを最初に組成物中に導入することもできる。基本的に、組成物に含まれる種々の原料の導入の如何なる順序も実現することができる。更に、組成物中に存在するポリマーは、カーボンナノチューブおよび任意にカーボンブラックの存在の下に、現場で(in situ)形成することさえも可能である。
【0103】
本発明のポリマー組成物は、商業的に入手可能な混合機を用いて、種々の成分を一緒に混合するなどの慣用の技術を用いて製造することができる。組成物は次いで、当業者に知られている慣用の技術を用いて、所望の厚さおよび長さおよび幅に形成することができ、それらは例えば欧州特許EP0420271、米国特許の番号、4,412,938、4,288,203および4,150,193に記載されており、その全てがここに参照によって組み込まれる。
【0104】
更に詳細には、本発明のポリマー組成物は、慣用の機械および方法を用いて加工して、所望の最終ポリマー製品を生産することができる。組成物は、当技術分野でよく知られているようなバッチまたは連続の混合方法によって調製することができる。例えば、バンバリーミキサー、ブスコニーダー、および2軸スクリュー押出機などの装置が配合物の原料を混合するのに用いることができる。例えば、本発明のポリマー組成物の成分は、混合され、そして絶縁導線などの材料を製造するのに将来用いるために、ペレットに形成することができる。
【実施例】
【0105】
以下の試験方法が、本発明のカーボンブラック、本発明のカーボンブラックを配合したポリマー組成物の分析的特性の測定および評価に用いられた。
【0106】
カーボンブラックのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸収面積)をASTM試験法D3750−85に従って測定した。
【0107】
ヨウ素価をASTM試験法D1510に従って測定した。カーボンブラックの比着色力値(”Tint”)をASTMのD3250中で説明されている方法に従って測定した。
【0108】
カーボンブラックペレットのDBP(ジブチルフタレート吸収値)をASTM試験法D2414に従って測定した。
【0109】
カーボンブラックペレットのCDBP(粉砕したジブチルフタレート吸収値)をASTMのD3493−86中に説明されている方法に従って測定した。
【0110】
カーボンブラックのトルエン抽出度を、ニューヨーク州RochesterのMilton Roy社製のMilton Roy Spectronic 20 分光光度計を用いて、ASTM試験法D1618に従って測定した。
【0111】
カーボンブラックの粒子サイズをASTMのD3849−89中で説明されている方法に従って測定した。
【0112】
本発明は、以下の例によって更に明確にされるであろうが、以下の例は本発明を例示することを意図したものである。
【0113】
例1
配合した装置は高剪断内部混合機Haake Rheocord 90であり、2つの異方向回転のブラベンダー形ブレードを備えた混合チャンバーを備えていた。それぞれのコンパウンドについて、以下の方法を用いた。最初にペレット状のポリマーを混合チャンバー中に導入した。操作温度および2つの異方法回転ブレードの作用の下に材料が溶融すると直ぐに、カーボンブラック(Vulcan XC−500(登録商標)カーボンブラック)またはThin Crude Multi−Wall Carbon Nanochu−Bu(MWNT)を混合チャンバー中に導入した。
【0114】
混合サイクル(40rpmで1分間、40rpmから200rpmへ3分間で、200rpmで2分間)が終了したら、コンパウンドを混合機から回収し、そしてMylarシートの2枚のシートの間で、水圧プレスで押圧して平らにした。次いで、充てん剤の良好な分散と均一なコンパウンドを確実にするための第二の混合サイクルを実施するために、材料を小片に切断した。
【0115】
いくつかのコンパウンドを異なる担持量(質量%)で作製した。
カーボンブラックについては:35、30、25、20、17.5、15、12.5、10%
MWNTについては:10、5、2.5、1、0.75%
カーボンブラック/MWNT混合比率は10/1;公称MFIが190℃、2.16kgで6g/10分であるBorealisのEEA LE5861中に、19.8、17.6、15.4、13.2、11.0、8.8%。
【0116】
充てん剤の担持量を、一定質量のコンパウンドを炉中で950℃で不活性雰囲気下で燃え尽きさせて(burning out)評価した。残存する材料はカーボンブラックまたはMWNTであり、次いでそれは質量%を測定するために計量した。
【0117】
評価した物理的および電気的特性は次の通りである。
190℃でのメルトフローインデックス
Cabot Test Method E042A「圧縮成形したプラークの表面抵抗率」に従った、1mm厚のプラークの表面抵抗。これはIEC167「圧縮成形したプラークの表面抵抗率」を基にしている。
【0118】
試験結果
コンパウンディング
上記で説明したように、コンパウンドは2つのステップで作った。最初の混合サイクルは導電性充てん剤を配合し、またその分散を開始するのに用い、一方第二のステップは良好な分布と均一性を確実にするために用いた。
【0119】
1つの混合サイクルは6分間続き、そして3つのステップからなっている。
1)40rpmで1分間
2)速度を40rpmから200rpmへと3分間で増加させる。
3)200rpmで2分間
−EEA中のカーボンブラックのコンパウンドについて”WIGHT CB EEA”
−EEA中のMWNTのコンパウンドについて”WIGHT CNT EEA”
−EEA中のCB−MWNTの10−1の比率の混合物のコンパウンドについて”WEIGHT CNT−CB EEA”
【0120】
それぞれのコンパウンドは、混合チャンバーに最初に投入されている溶融したポリマー中に、導電性充てん剤を添加することによって作製される。
【0121】
カーボンブラックとMWNTとの混合物を含むコンパウンドについては、35質量%のCBおよび10質量%のMWNTのコンパウンドをそれぞれ用い、それらを良好な精度の用量を得るために希釈した。
【0122】
コンパウンディングの結果は次の通りである。
【0123】
【表1】

【0124】
備考:
1)総トルクのNmMという単位は、キログラム−メータ−分を意味し、そしてコンパウンドの溶融粘度の指標として用いられる。
【0125】
2)Melt T°は、対応する混合サイクルの最後におけるコンパウンドの最終温度に相当する。
【0126】
炉試験
コンパウンド中の導電性充てん剤の含量を評価するために炉試験を実施した。これは炉中で、950℃で、不活性雰囲気下で材料を焼くこと(burning of)からなっており、それによって全てのポリマーを取り除き、そして導電性充てん剤のみを残す。この試験はCabot Test Method E010に従って実施した。
【0127】
MWNTを含むコンパウンドについては、MWNT中の触媒担体のレベルの評価するために灰分残渣(Ash Residue)試験を実施した。
【0128】
【表2】

【0129】
メルトフローインデックス
メルトフローインデックス(MFI)をCabot Test Method E005に従って実施した。
【0130】
【表3】

【0131】
導電性
導電性を測定するために、コンパウンドを用いて圧縮成形したプラークを調製した。圧縮成形したプラークは16×16cmの大きさで、1mmの厚さであった。それらは次の圧縮成形プログラムを用いて調製した。
1)180℃で、90kNの圧の下に2分間
2)180℃で、180kNの圧の下に3分間
3)180℃で、270kNの圧の下に3分間
4)2枚の水冷板の間で90kNの圧の下に2分間冷却
【0132】
次いで、表面抵抗率用のCabot Test Method E042Aによって表面抵抗率を測定するためにそれぞれのプラークを用いた。得られた複合材の導電性を、成形したプラークから101.6mm×6.35mm×1.8mmの細片を切り出して測定したが、接触抵抗を取り除くために、細片に沿って50mm離れた電極を作るためにコロイド状の銀塗料を用いた。細片の電気抵抗を測定するのに、フルーク(Fluke) 75シリーズIIデジタルマルチメータもしくはケースレー(Keithley) マルチメータおよび2点法を用いた。
【0133】
【表4】

【0134】
考察
表5にデータをまとめた。
【0135】
【表5】

【0136】
内部混合機コンパウンド技術が、カーボンブラック充てんポリマーおよびMWNT充てんポリマーの両方で、導電性充てん剤含量に関して、良好な精度を可能にした。等しい担持量では、MWNT充てんコンパウンドの粘度は、VXC−500カーボンブラックを充てんしたものの粘度よりもずっと大きかった。同じ導電性でもまた、MWNTベースのコンパウンドは、より粘度が高かった。MWNT充てんコンパウンドのパーコレーション閾値は、VXC−500カーボンブラック充てんコンパウンドよりも約6倍低かった。このことは、本試験で評価したナノチューブのタイプが、純度が約80%であって最良のものではなく、そしてそれは多層であって、単層ではないので、興味深い結果である。後者は導電性においてより効率的であるといわれている。ナノチューブは、カーボンブラック集合体間に電気的経路を作り出す「橋」として作用することができる。
【0137】
出願人は、この説明中に引用した全ての参照文献の内容の全てを組み込む。更に、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲として、好ましい範囲として、または上限の好ましい値の列挙および下限の好ましい値の列挙として与えられた場合は、いずれの上限値もしくは好ましい値と、いずれの下限値もしくは好ましい値のいずれの対から形成される全ての範囲を、個別にどのような範囲を示しているかに関わらず、特に開示していると理解されなければならない。数値範囲が記載されている場合には、別のように記載されていない限り、その範囲はその終点を含み、またその範囲内の全ての整数および端数を含むことを意図している。範囲を規定した場合には、本発明の範囲が、その記載された特定の値に限定されることを意図したものではない。
【0138】
本発明の他の実施態様は、当業者には、本明細書およびここに開示された本発明の実施から明らかであろう。本明細書および例は、例のみであると考えられることが意図されており、本当の本発明の範囲および精神は特許請求の範囲およびそれと同等のものによって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1aおよび1bは、エチレンエチルアクリレート(EEA)中の多層カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真である。
【図2】図2はカーボンブラックが充てんされた組成物およびカーボンナノチューブが充てんされた組成物のパーコレーション曲線のグラフである。
【図3】図3は本発明の種々の組成物についての、表面抵抗率に対するメルトフローインデックスのグラフである。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー、およびカーボンナノチューブを含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが精製されたカーボンナノチューブである請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項5】
カーボンブラックを更に含む請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマーがエチレン含有ポリマーを含む請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記エチレン含有ポリマーがエチレンエチルアクリレート共重合体である請求項6記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記エチレン含有ポリマーが、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、またはそれらの混合物を含む請求項6記載のポリマー組成物。
【請求項9】
エチレン含有ポリマー、カーボンナノチューブおよび架橋剤を含む組成物から、少なくとも一部が形成された、ケーブルである製造物品。
【請求項10】
前記エチレン含有ポリマーが、前記組成物の総質量を基準として約70質量%から約99.95質量%の量で存在し、
前記カーボンナノチューブが、前記組成物の総質量を基準として約0.05質量%から約60質量%の量で存在し、
前記架橋剤が、前記組成物の総質量を基準として約1質量%から約10質量%の量で存在する請求項9記載の製造物品。
【請求項11】
前記エチレン含有ポリマーがエチレンエチルアクリレート共重合体である請求項9記載の製造物品。
【請求項12】
前記エチレン含有ポリマーが、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、またはそれらの混合物である請求項9記載の製造物品。
【請求項13】
前記組成物が半導体組成物であり、そして製造物品が金属導体コア、半導体シールド、絶縁層、および外部半導体層を含み、該組成物が半導体シールドまたは外部半導体層の少なくとも1つで用いられている電力ケーブルである請求項9記載の製造物品。
【請求項14】
前記組成物が絶縁層に直接結合されており、また、絶縁層がエチレン単独重合体または共重合体を含む請求項13記載の製造物品。
【請求項15】
物品の少なくとも一部を静電塗装によって被覆することを含む物品の静電塗装方法であって、該物品が請求項1記載のポリマー組成物を含み、該ポリマーが導電性ポリマーである方法。
【請求項16】
カーボンブラックが以下の特徴、CDBP(粉砕したカーボンブラックのジブチル吸収値)がカーボンブラック100グラム当たり30〜100cc、ヨウ素価が15〜1,500mg/g、一次粒子径が7〜200nm、BET表面積が12〜1,800m2/g、およびDBPがカーボンブラック100グラム当たり30〜1,000cc、の1つまたはそれ以上を有している請求項5記載のポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項18】
前記物品が自動車用物品である請求項17記載の物品。
【請求項19】
前記物品が、内部トリム、ダッシュボード、パネル、バンパーフェイシア、ミラー、シート繊維、スイッチ、ハウジングである請求項17記載の物品。
【請求項20】
前記物品がフィンガートラップ安全システムである請求項17記載の物品。
【請求項21】
前記物品がパイプ、異形材(profile)、チューブ、テープ、フィルム、膜、外被(jacketing)、それらの成分、またはそれらの部品である請求項17記載の物品。
【請求項22】
前記物品が圧力パイプである請求項17記載の物品。
【請求項23】
前記物品が燃料ラインである請求項17記載の物品。
【請求項24】
前記物品が押出成形品である請求項17記載の物品。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521535(P2009−521535A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537700(P2008−537700)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/030609
【国際公開番号】WO2008/041965
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】