説明

ナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法

【課題】空間中に占めるナノファイバの量を多くして、高密度でナノファイバを収集することのできる製造装置の提供。
【解決手段】ナノファイバ301の原料となる原料液300を空間中に噴射する噴射手段201と、原料液300に電荷を付与して帯電させる第一帯電手段202と、製造されたナノファイバ301を案内する風洞を形成する案内手段206と、案内手段206内部にナノファイバ301を案内する気体流を発生させる気体流発生手段203とを有する放出手段200を複数と、各放出手段200から放出される気体流と共にナノファイバ301を合流させる合流手段130と、ナノファイバ301を収集する収集手段110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エレクトロスピニング法(静電爆発)を用いてナノファイバを製造するナノファイバ製造装置に関し、特に、ナノファイバを高密度な状態で収集するナノファイバ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質などから成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状(繊維状)物質(ナノファイバ)を製造する方法として、エレクトロスピニング(電荷誘導紡糸)法が知られている。
【0003】
このエレクトロスピニング法とは、溶媒中に高分子物質などを分散または溶解させた原料液を空間中にノズルなどにより噴射(吐出)させるとともに、原料液に電荷を付与して帯電させ、空間を飛行中の原料液を静電爆発させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的には、帯電され噴射された原料液は、空間を飛行中の原料液の粒から溶媒が蒸発するに伴い原料液の体積は減少していく。一方、原料液に付与された電荷は原料液に留まる。この結果として、空間を飛行中の原料液の粒は、電荷密度が上昇することとなる。そして、原料液中の溶媒は、継続して蒸発し続けるため、原料液の粒の電荷密度がさらに高まり、原料液の粒の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力より勝った時点で高分子溶液が爆発的に線状に延伸される現象(静電爆発)が生じる。この静電爆発が、空間において次々とねずみ算式に発生することで、直径がサブミクロンの高分子から成るナノファイバが製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
前記エレクトロスピニング法により製造されるナノファイバを糸や不織布の原料として用いる場合、大量のナノファイバを高密度で収集する必要がある。そのために、例えば特許文献2には、ナノファイバを収集するための電極である収集電極に向けて原料液を噴射する多数のノズルを配置し、多量のナノファイバを高密度で製造する発明が記載されている。
【特許文献1】特開2005−330624号公報
【特許文献2】特開2002−201559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが上記のようにエレクトロスピニング法は、ノズルと収集電極との間に高電圧を発生させ、帯電したナノファイバを電界により収集する。従って、原料液を噴射するノズルの数を増やしただけでは、ノズル同士で電界干渉が生じ、ノズルと収集電極との間の電界が安定せずナノファイバを均一に収集できないなどという問題がある。また、空間中を飛行するナノファイバは同極性に帯電しているためナノファイバ同士で反発が起こり、高い密度でナノファイバを収集することが困難となっている。
【0007】
本願発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ナノファイバを大量に安定して製造し、また、高密度でナノファイバを収集することのできるナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造装置は、ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射手段と、前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一帯電手段と、製造されたナノファイバを案内する風洞を形成する案内手段と、前記案内手段内部に前記ナノファイバを案内する気体流を発生させる気体流発生手段とを有する放出手段を複数と、前記各放出手段から放出される気体流と共にナノファイバを合流させる合流手段と、前記ナノファイバを収集する収集手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、複数の放出手段により製造されるナノファイバを気体流により合流させることができるため、ナノファイバを高い空間密度で存在させることができ、効率よくナノファイバを収集することが可能となる。
【0010】
さらに、前記製造されたナノファイバを除電する除電手段を備えてもかまわない。
【0011】
これにより、帯電したナノファイバ同士が反発する状態を解消して、より空間密度の高い状態のナノファイバを製造することが可能となる。
【0012】
さらに、合流したナノファイバを加速する加速手段を備えてもかまわない。
【0013】
これにより、さらに高い密度でナノファイバを収集することが可能となる。
【0014】
さらに、前記合流手段により合流するナノファイバを拡散させる拡散手段を備えてもかまわない。
【0015】
これにより、一端合流し高い空間密度で存在するナノファイバが拡散状態となるため、ナノファイバが所定の空間内で均一に広がることとなる。従って、ナノファイバを均一に収集することができ、当該ナノファイバに基づき安定した品質の不織布などを製造することが可能となる。
【0016】
また、前記収集手段は、前記気体流を挿通可能なシート状の堆積手段と、ナノファイバが堆積する前記堆積手段の側と反対側に配置され、前記放出手段から放出される気体流を吸引する吸引手段とを備えてもかまわない。
【0017】
これにより、気体流と共に搬送されるナノファイバを強制的に気体流と分離し、堆積状態で収集することができ、より高密度でナノファイバを収集することが可能となる。
【0018】
さらに、合流したナノファイバを帯電させる第二帯電手段を備え、前記収集手段は、ナノファイバを堆積させる堆積手段と、ナノファイバを吸引する吸引電極と、ナノファイバを吸引するための電位を前記吸引電極に印加する吸引電源とを備えてもかまわない。
【0019】
これによれば、合流したナノファイバを積極的に帯電させ、当該帯電したナノファイバを電界により吸引するため、高い密度でナノファイバを収集することが可能となる。
【0020】
また、前記噴射手段は、原料液を噴射させる噴射孔を備え、前記噴射孔は、前記気体流発生手段が発生させる気体流の方向と交差する方向に原料液を噴射させるように設けられることが好ましい。
【0021】
これにより、収集手段のナノファイバ収集面積にかかわりなく、多くの原料液を噴射して、多くのナノファイバを製造することができる。従って、高い密度でナノファイバを収集することが可能となる。
【0022】
また、上記目的は、ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射工程と、前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一帯電工程と、前記案内手段内部に前記ナノファイバを案内する気体流を発生させる気体流発生工程とを含む原料放出工程と、前記原料放出工程で放出されるナノファイバを合流させる合流工程と、合流される前記ナノファイバを収集する収集工程とを含むナノファイバ製造方法によっても解決できる。
【0023】
当該方法の作用効果は上記と同様である。
【0024】
さらに、前記原料放出工程の一方の放出条件は他方の放出条件とは異なるものとしてもよい。
【0025】
これにより、傾斜組成を備える不織布など、目的に応じて様々な状態のナノファイバである収集物を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本願発明は、複数箇所で製造されるナノファイバを合流させた上で収集することができるため、高い密度でナノファイバを収集することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本願発明にかかるナノファイバ製造装置の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本願発明の実施の形態であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。
【0029】
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、噴射手段201と、第一帯電手段202と、案内手段206と、気体流発生手段203と、合流手段130と、収集手段110と、加速手段230と、除電手段207とを備えている。
【0030】
噴射手段201と、第一帯電手段202と、案内手段206と、気体流発生手段203とは放出手段200を構成しており、放出手段200は、帯電した原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流に乗せて放出することができるユニットである。本実施の形態の場合、放出手段200は2個設けられている。なお、放出手段200については後で詳述する。
【0031】
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が静電爆発しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
【0032】
合流手段130は、複数の放出手段200から放出される原料液300(ナノファイバ301)を気体流と共に合流させるための管状の部材である。合流手段130は、大径の主円筒体131の端部から小径の副円筒体132が2本連接された構造を有しており、2本の副円筒体132は異なる方向に向いた状態となっている。合流手段130は、原料液300(ナノファイバ301)が導入される開口部が副円筒体132の端部に設けられており、ナノファイバ301が導出される開口部は主円筒体131の端部に設けられている。合流手段130は、前記開口部以外は閉鎖状態となっており、合流手段130内方に導入される原料液300(ナノファイバ301)は、開口部に到達するまでの間、外方に漏れることなく合流され一つの流れとなって導出されるものとなっている。
【0033】
収集手段110は、合流手段130から放出されるナノファイバ301を収集するための装置であり、堆積手段101と、搬送手段104と、吸引手段102と、吸引制御手段105と、領域規制手段103とを備えている。
【0034】
堆積手段101は、静電爆発により製造され飛来するナノファイバ301が堆積される対象となる部材である。堆積手段101は、気体流により案内されるナノファイバ301を気体流と分離して収集する部材であり、気体流を挿通可能でナノファイバ301を挿通しない微細な孔を多数備えている。本実施の形態の場合、堆積手段101は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材である。具体的には、堆積手段101として、アラミド繊維からなる長尺の網を例示することができる。さらに、堆積手段101の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を堆積手段101から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。また、堆積手段101は、ロール状に巻き付けられた状態で供給ロール111から供給されるものとなっている。
【0035】
搬送手段104は、長尺の堆積手段101を巻き取りながら供給ロール111から引き出し、加速手段230の導出口近傍をゆっくりと移動させ、堆積するナノファイバ301と共に堆積手段101を搬送するものとなっている。搬送手段104は、ナノファイバ301が堆積している不織布を堆積手段101とともに巻き取ることができるものとなっている。
【0036】
吸引手段102は、堆積手段101のナノファイバ301が堆積される側と反対側、すなわち、加速手段230が配置される側と反対側に配置され、放出手段200から加速手段230を経て流れ来る気体流を堆積手段101に強制的に通過させて吸引する装置である。本実施の形態では、ナノファイバ製造装置100は、吸引手段102として、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機が採用されており、領域規制手段103からダクト121に向かう気体流を発生させている。また、吸引手段102は、ダクト121と連通状態で配置されており、加速手段230から導出される気体流であって、原料液300から蒸発した溶媒が混ざったほとんどの気体流を吸引し、ダクト121を通過して溶剤回収装置106まで搬送することができるものとなっている。
【0037】
吸引制御手段105は、吸引手段102と電気的に接続され、吸引手段102の吸引量を制御する装置である。本実施の形態では吸引手段102として送風機が採用されており、吸引制御手段105は、前記送風機の回転数を制御することにより気体の吸引量を制御している。
【0038】
領域規制手段103は、吸引手段102の吸引領域を規制する機能を有し、堆積手段101のナノファイバ301が収集される側と反対側にあって、堆積手段101と吸引手段102との間に配置される両端が開放状態の筒体である。領域規制手段103の形状は、ナノファイバ301が放出される端部形状に対応することが好ましい。本実施の形態の場合、加速手段230の導出端開口部の形状が矩形であるので、領域規制手段103も前記形状に対応する矩形の筒体が採用されている。なお、前記導出端部の形状が環状であれば、領域規制手段103も円筒形を採用すればよい。
【0039】
加速手段230は、合流手段130で合流されたナノファイバ301の飛行速度を高める装置であり、第二気体流発生手段232と、加速風洞体234とを備えている。
【0040】
加速風洞体234は、合流手段130の主円筒体131に接続され、合流手段130から導出されるナノファイバ301を堆積手段101まで案内する機能を有する筒状の部材であり、第二気体流発生手段232で発生する気体流を加速風洞体234内方に導入することが可能な気体流導入口233を周壁に備えている。加速風洞体234の合流手段130と接続される部分は、合流手段130の導出側端部の面積に対応する面積で構成されており、加速風洞体234の導出側端部は、前記導出側端部の面積より小さくなっている。従って、加速風洞体234は、全体として漏斗形状となっており、加速風洞体234に導入されたナノファイバ301を気体流と共に圧縮できる形状となっている。
【0041】
また、加速手段230の上流側(導入側)の端部形状は、合流手段130の端部形状と合致する円環状である。一方、加速手段230の下流側(吐出側)の端部形状は、矩形である。また、加速手段230の下流側(吐出側)の端部形状は、堆積手段101の幅方向(同図紙面と垂直方向)全体に渡って延び、堆積手段101の移動方向は前記幅方向に対して狭い。加速手段230は、環状の上流端から矩形状の下流端に向かって徐々に形状が変化するものとなっている。
【0042】
第二気体流発生手段232は、高圧ガスを加速風洞体234内部に導入することで気体流を発生させる装置である。本実施の形態では、第二気体流発生手段232は、高圧ガスを貯留しうるタンク(ボンベ)と、タンク内の高圧ガスの圧力を調節するバルブ235を有するガス導出手段を備える装置が採用されている。
【0043】
なお、第二気体流発生手段232が供給するガスは、空気でもかまわないが、酸素含有比率が空気よりも低い安全ガスが望ましい。原料液300から蒸発する溶媒による爆発を回避するためである。安全ガスとしては、空気から樹脂膜(中空糸膜)により酸素をある程度除去した低酸素濃度ガスや、過熱水蒸気を挙示することができる。なお、本記載は酸素の含有がほとんどない高純度なガスなどの使用を除外するものではなく、液体や気体等の状態でボンベに封入された高純度な窒素やドライアイスから供給される二酸化炭素なども利用可能である。
【0044】
また、第二気体流発生手段232により発生する気体流を加熱する加熱手段を設けてもかまわない。
【0045】
上記加速手段230によれば、加速風洞体234に導入されるナノファイバ301は、第二気体流発生手段232から気体流導入口233を経て導入される高圧(高速)のガスにより加速される。さらに、加速風洞体234の形状により、ナノファイバ301が存在する空間は除除に圧縮されてナノファイバ301が高密度状態となりながら収集手段110に向かって搬送される。
【0046】
また、搬送されたナノファイバ301は、加速手段230により均一に分散した状態で収集手段110に向かって導出される。従って、収集手段110においては、均一な状態のナノファイバ301を収集することができる。これにより、収集したナノファイバ301をそのまま不織布とするような場合は、幅方向に厚さが均一な不織布を得ることが可能となる。また、収集したナノファイバ301を用いて紡糸する場合も、均一な糸を得ることが可能となる。
【0047】
除電手段207は、帯電しているナノファイバ301を除電する装置であり、本実施の形態の場合、加速手段230の内方に備えられている。除電手段207は、例えば帯電しているナノファイバ301の極性と逆の極性を備えるイオンや粒子を空間中に放出することができる装置を挙示することができる。具体的には、コロナ放電方式や電圧印加方式、交流方式、定常直流方式、パルス直流方式、自己放電式、軟X線方式、紫外線式、放射線方式など任意の方式からなる除電手段207を採用して良い。また、除電手段は静電爆発が終了した後のナノファイバ301に対して除電を行う必要がある。
【0048】
図2は、放出手段を示す断面図である。
【0049】
図3は、放出手段を示す斜視図である。
【0050】
放出手段200は、前述の通り、噴射手段201と、第一帯電手段202と、案内手段206と、気体流発生手段203とを備えている。
【0051】
これらの図に示すように、噴射手段201は、原料液300を空間中に噴射する装置であり、本実施の形態では、原料液300を遠心力により放射状に噴射する装置である。噴射手段201は、噴射容器211と、回転軸体212と、モータ213とを備えている。
【0052】
噴射容器211は、原料液300が内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に原料液300を噴射することのできる容器であり、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には噴射口216を多数備えている。噴射容器211は、貯留する原料液300に電荷を付与するため、導電体で形成されている。噴射容器211は支持体(図示せず)に設けられるベアリング(図示せず)により回転可能に支持されている。
【0053】
具体的には、噴射容器211の直径は、10mm以上200mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると気体流により原料液300やナノファイバ301を集中させることが困難になるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を噴射させるための回転を高めなければならず、モータの負荷や振動など問題が発生するためである。さらに噴射容器211の直径は、20mm以上80mm以下の範囲から採用することが好ましい。また、噴射口216の形状は円形が好ましく、その直径は、0.01mm以上2mm以下の範囲から採用することが好適である。
【0054】
回転軸体212は、噴射容器211を回転させ遠心力により原料液300を噴射させるための駆動力を伝達するための軸体であり、噴射容器211の他端から噴射容器211の内部に挿通され、噴射容器211の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ213の回転軸と接合されている。
【0055】
モータ213は、遠心力により原料液300を噴射口216から噴射させるために、回転軸体212を介して噴射容器211に回転駆動力を付与する装置である。なお、噴射容器211の回転数は、噴射口216の口径や使用する原料液300の粘度や原料液内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましく、本実施の形態のようにモータ213と噴射容器211とが直動の時はモータ213の回転数は、噴射容器211の回転数と一致する。
【0056】
第一帯電手段202は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、第一帯電手段202は、誘導電極221と、誘導電源222と、接地手段223とを備えている。また、噴射容器211も第一帯電手段202の一部として機能している。
【0057】
誘導電極221は、自身がアースに対し高い電圧となることで、近傍に配置され接地されている噴射容器211に電荷を誘導するための部材であり、噴射容器211の先端部分を取り囲むように配置される円環状の部材である。また、誘導電極221は、気体流発生手段203からの気体流を合流手段130の副円筒体132に案内する案内手段206としても機能している。
【0058】
誘導電極221の大きさは、噴射容器211の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、200mm以上、800mm以下の範囲から採用されることが好適である。
【0059】
誘導電源222は、誘導電極221に高電圧を印加することのできる電源である。なお、誘導電源222は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、電極上に回収するような場合には、直流電源が好ましい。また、それ以外の場合には、交流電源でもかまわない。また、誘導電源222が直流電源である場合、誘導電源222が誘導電極221に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。特に、電界強度が重要であり、1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧や誘導電極の配置を行うことが好ましい。
【0060】
接地手段223は、噴射容器211と電気的に接続され、噴射容器211を接地電位に維持することができる部材である。接地手段223の一端は、噴射容器211が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
【0061】
本実施の形態のように第一帯電手段202に誘導方式を採用すれば、噴射容器211を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。噴射容器211が接地電位の状態であれば、噴射容器211に接続される回転軸体212やモータ213などの部材を噴射容器211から電気的に絶縁する必要が無くなり、噴射手段201として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
【0062】
なお、帯電手段202として、噴射容器211に電源を接続し、噴射容器211を高電圧に維持して原料液300に電荷を付与してもよい。また、噴射容器211を絶縁体で形成すると共に、噴射容器211に貯留される原料液300に直接接触する電極を噴射容器211内部に配置し、当該電極を用いて原料液300に電荷を付与するものでもよい。
【0063】
気体流発生手段203は、噴射容器211から噴射される原料液300の飛行方向を案内手段206の方向に変更するための気体流を発生させる装置である。気体流発生手段203は、モータ213の背部に備えられ、モータ213から噴射容器211の先端に向かう気体流を発生させる。気体流発生手段203は、噴射容器211から径方向に噴射される原料液300が誘導電極221に到達するまでに前記原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。本実施の形態の場合、気体流発生手段203として、放出手段200の周囲にある雰囲気を強制的に送風する軸流ファンを備える送風機が採用されている。
【0064】
なお、気体流発生手段203は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。また、高圧ガスを導入することにより噴射された原料液300の方向を変更するものでもかまわない。また、吸引手段102や第二気体流発生手段232などにより案内手段206内方に気体流を発生させるものでもかまわない。この場合、気体流発生手段203は積極的に気体流を発生させる装置を有しないこととなるが、本願発明の場合、案内手段206の内方に気体流が発生していることをもって気体流発生手段203が存在しているものとする。また、気体流発生手段203を有しない状態で、吸引手段102により吸引することで、案内手段206の内方に気体流を発生させるようにすることも気体流発生手段が存在しているものとする。
【0065】
さらにまた、放出手段200は、気体流制御手段204と、加熱手段205とを備えている。
【0066】
気体流制御手段204は、気体流発生手段203により発生する気体流が噴射口216に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものであり、本実施の形態の場合、気体流制御手段204として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。気体流制御手段204により、気体流が直接噴射口216に当たらないため、噴射口216から噴射される原料液300が早期に蒸発して噴射口216を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて噴射させ続けることが可能となる。なお、気体流制御手段204は、噴射口216の風上に配置され気体流が噴射口216近傍に到達するのを防止する壁状の防風壁でもかまわない。
【0067】
加熱手段205は、気体流発生手段203が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱手段205は、案内手段206の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱手段205を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱手段205により気体流を加熱することにより、空間中に噴射される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバを製造することが可能となる。
【0068】
次に、ナノファイバ301の製造方法の概略を説明する。
【0069】
まず、各気体流発生手段203により、各案内手段206内部に気体流を発生させる。一方、吸引手段102により、堆積手段101よりも下流側から前記気体流を吸引する。
【0070】
次に、各噴射容器211に原料液300を供給する。原料液300は、別途タンク(図示せず)に蓄えられており、各原料液供給路217(図2参照)を通過して各噴射容器211の他端部から噴射容器211内部に供給される。次に、各誘導電源222により各噴射容器211に貯留される原料液300に電荷を供給しつつ、各噴射容器211を各モータ213により回転させて、遠心力により噴射口216から帯電した原料液300を噴射する。
【0071】
噴射容器211の径方向放射状に噴射された原料液300は、気体流により飛行方向が変更される。原料液300は静電爆発によりナノファイバ301を製造しつつ放出手段200から放出される。また、前記気体流は、加熱手段205により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶媒の蒸発を促進している。
【0072】
これにより、堆積手段101の堆積面に対し垂直方向または略垂直方向に噴射口216を多数個並べることができ、一定の空間中に多量の原料液300を噴射することが可能となる。これはつまり、堆積面の面積にかかわりなく、理論的には無限に噴射口216を設け、そこから噴射され製造されたナノファイバ301が前記堆積面に堆積されることを意味している。
【0073】
また、気体流が加熱手段205により加熱されているため、溶媒の蒸発が促進され、静電爆発が促進され効率よくナノファイバ301を製造することが可能となる。従って、原料液300の飛行距離を短くすることが可能となるため、装置全体の大きさを小さくすることが可能となる。
【0074】
ここで、原料液300の飛行方向を変更し溶媒の蒸発を促進させる気体流は、気体流制御手段204により噴射口216およびその近傍に到達しないように制御されている。従って、噴射口216の近傍では原料液300に含まれる溶媒の蒸発が促進されにくい状態となるため、溶質により噴射口216が狭められ、また、封鎖されることが無い。よって、噴射容器211から長期間原料液300を噴射し続けても、噴射量が低下することを可及的に抑止することができる。つまり、空間中の原料液300やナノファイバ301の濃度を高い状態で長期間維持することが可能となる。
【0075】
次に、各放出手段200から放出され静電爆発により製造されたナノファイバ301は、合流手段130により気体流と共に合流する。そして、合流手段130の内方を気体流に乗って搬送される。この段階で、ナノファイバ301は、第一段階の高密度状態となって加速手段230に到達する。
【0076】
加速手段230内方を通過するナノファイバ301は、高圧ガスの噴流により加速されつつ、加速手段230の内方が狭くなるにつれて徐々に圧縮され第二段階の高密度状態となって堆積手段101に到達する。堆積手段101は、背部(下流側)から気体流が吸引手段102により吸引されているため、フィルタとして機能し、ナノファイバ301と気体流とを分離してナノファイバ301のみを堆積させながら収集する。ナノファイバ301が堆積する堆積手段101は、搬送手段104の巻き取りにより一定の移動速度で移動しており、堆積手段101の上に堆積したナノファイバ301は、不織布を形成しながら堆積手段101と共に移動し、搬送手段104に巻き取られる。
【0077】
上記構成により、複数箇所に配置される放出手段200から放出された製造されたナノファイバ301は、合流手段130により集められ収集手段110により収集される。従って、多量のナノファイバ301を高密度で収集することが可能となる。
【0078】
また、上記構成では、収集手段110に高電圧を必要とする電極などが必要とならないため、装置全体の構成が従来よりもシンプルとなり、対人安全性も向上させることが可能となる。
【0079】
なお、本実施の形態1では、放出手段200を2個備える場合を示したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、放出手段200を3個以上備えるものでもかまわない。また、合流手段130は、上記機能を備えるのであれば放出手段200の数や配置により適当な形状を選択しうる。
【0080】
なお、ナノファイバ301を構成する高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
【0081】
原料液300に使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
【0082】
さらに、原料液300に骨材や可塑剤などの添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al23、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B23、P25、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb23、As23、CeO2、V25、Cr23、MnO、Fe23、CoO、NiO、Y23、Lu23、Yb23、HfO2、Nb25等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
【0083】
溶媒と高分子との混合比率は、溶媒と高分子により異なるが、溶媒量は、約60%から98%の間が望ましい。
【0084】
(実施の形態2)
次に、本願発明にかかる他の実施の形態を説明する。
【0085】
図4は、本願発明の実施の形態であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。なお、上記実施の形態1と同じ機能を有する部材、装置等には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0086】
本実施の形態も、放出手段200を複数備え、放出手段200から放出されるナノファイバ301を合流させる合流手段130、合流したナノファイバを加速させる加速手段230、飛来するナノファイバ301を気体流とナノファイバ301とに分離し、ナノファイバ301を堆積させる収集手段110とを備えている。これらは上記実施の形態1と同様である。
【0087】
本実施の形態にかかるナノファイバ製造装置100は、上記実施の形態1に加えて拡散手段240を備えている。また、領域規制手段103の形状は、拡散手段240の形状に対応して上記実施の形態1と異なっている。
【0088】
拡散手段240は、加速手段230に接続され、合流手段130により合流したナノファイバ301を広く拡散させる部材であり、加速手段230で加速したナノファイバ301の速度を減速させるフード状の部材である。拡散手段240は、気体流が導入される上流端側の矩形の開口部と、気体流を放出する下流端側の矩形の開口部とを備え、下流端側の開口部の開口面積は、上流端側の開口部の開口面積よりも大きい設定となっている。拡散手段240は、上流端側の開口部から下流端側の開口部に向けて徐々に面積が大きくなるような形状が採用されている。下流端側の開口部は、堆積手段101の幅に対応する幅を有し、堆積手段101の移動方向に長く延びた形状となっている。
【0089】
拡散手段240の小面積の導入端側から大面積の導出端側に向かって気体流が流れると、気体流の流速は拡散手段240の断面積に比例して落ちていく。従って、気体流は拡散手段240で減速することになる。一方、気体流に乗って搬送されるナノファイバ301も、気体流と共に速度が減速される。この際、ナノファイバ301は、拡散手段240の断面積の拡大に従い徐々に均等に拡散していく。従って、ナノファイバ301を堆積手段101上に均等に堆積させることが可能となる。
【0090】
領域規制手段103は、堆積手段101側に拡散手段240の導出側開口端と同じ形状、同じ面積の開口部を備え、吸引手段102に接続される側の開口部は、吸引手段102に対応する円形となっている。
【0091】
これにより、拡散手段240で流速の落ちた気体流を吸引し、堆積手段101によりナノファイバ301と分離することができる。その結果、均一に分散されたナノファイバ301を堆積手段101に強固に引きつけることができ、堆積手段101上に均一かつ高密度にナノファイバ301を収集することが可能となる。
【0092】
なお、上記実施の形態2では、吸引手段102を一つ備える場合を例示したが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、拡散手段240の下流端開口部に対応する領域を複数の領域規制手段103で複数分割し、分割された領域それぞれに吸引手段102を複数備えてもかまわない。これにより、吸引手段102の吸引量を領域毎に調整することで、ナノファイバ301の堆積状態を任意にコントロールすることが可能となる。
【0093】
また、実施の形態2においては、合流手段130により合流したナノファイバ301を加速手段230に接続し、その後、拡散手段240でナノファイバ301を拡散するように構成したが、合流手段130により合流したナノファイバ301を直接拡散手段240に接続して、ナノファイバ301を堆積手段101に堆積させてもよい。
【0094】
(実施の形態3)
次に、本願発明にかかる他の実施の形態を説明する。
【0095】
図5は、本願発明の実施の形態であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。なお、上記と同じ機能を有する部材、装置等には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0096】
本実施の形態も、放出手段200を複数備え、放出手段200から放出されるナノファイバ301を合流させる合流手段130、合流したナノファイバを加速させる加速手段230とを備えている。これらは上記実施の形態1と同様である。
【0097】
本実施の形態にかかるナノファイバ製造装置100は、上記実施の形態2に変えて収集手段110の態様が異なっており、また、除電手段207に変えて第二帯電手段208を備えている。
【0098】
収集手段110は、合流手段130から放出されるナノファイバ301を収集するための装置であり、堆積手段101と、搬送手段104と、吸引電極112と、吸引電源113とを備えている。
【0099】
吸引電極112は、帯電しているナノファイバ301を電界(電場)により吸引する部材であり、拡散手段240の下流側端部の開口部全体を覆う矩形の板状の電極である。吸引電極112の拡散手段240に向かう面の周縁部は尖った部分がなくアールが施されており、異常放電が発生するのを防止している。
【0100】
吸引電源113は、吸引電極112に電位を付与するための電源であり、本実施の形態の場合は直流電源が採用されている。
【0101】
第二帯電手段208は、加速手段230の内壁に取り付けられ、帯電しているナノファイバ301の帯電を増強したり、中和されて中性となっているナノファイバ301を帯電させる機能を備える装置である。例えば帯電しているナノファイバ301の極性と同極性を備えるイオンや粒子を空間中に放出することができる装置を挙示することができる。具体的には、コロナ放電方式や電圧印加方式、交流方式、定常直流方式、パルス直流方式、自己放電式、軟X線方式、紫外線式、放射線方式など任意の方式からなる第二帯電手段208を採用して良い。
【0102】
次に、本実施の形態3におけるナノファイバ製造方法を説明する。
【0103】
ナノファイバ301の発生から、加速までは上記と同様である。次に、加速手段230の内壁に設けられる第二帯電手段208により、加速され圧縮されつつあるナノファイバ301を帯電させる。
【0104】
これにより、合流など長時間気体流で搬送され、自然放電で中性となったナノファイバ301に再度電荷を付与することが可能になる。
【0105】
そして、拡散手段240により、帯電したナノファイバ301が空間中に均一に分散する状態となる。一方、収集手段110の吸引電極112は、吸引電源113により帯電したナノファイバ301とは逆の極性の電圧が印加されているため、ナノファイバ301を電界(電場)により吸引し、堆積手段101の上にナノファイバ301を堆積させていく。
【0106】
以上のような構成、及び、方法によれば、目が細かく気体流が容易に通過しないような場合でもナノファイバ301を効率よく収集し堆積させることが可能となる。
【0107】
また、第二帯電手段208によりナノファイバ301を帯電させる極性を周期的に変化させ、これに対応して吸引電極112に印加される電圧の極性も変化させれば、堆積されたナノファイバ301自体が、次のナノファイバ301を吸引することができ、より厚くナノファイバ301を収集することも可能である。
【0108】
また、実施の形態3においては、合流手段130により合流したナノファイバ301を加速手段230に接続し、その後、拡散手段240でナノファイバ301を拡散するように構成したが、合流手段130により合流したナノファイバ301を直接拡散手段240に接続して、ナノファイバ301を堆積手段101に堆積させてもよい。
【0109】
上記実施の形態は、噴射手段201として原料液300を遠心力により噴射させる装置を開示したが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、加圧された原料液300をノズルから噴射させるものでもかまわない。また、2流体ノズルなどを用い気体流と原料液300とを噴霧するものでもかまわない。
【0110】
また、一つのナノファイバ製造装置100に対し放出手段200を備える個数は限定されることはない。また、一の放出手段200の放出条件と他の放出手段200の放出条件とが異なるものとしてもよい。例えば放出条件とは、溶質の種類や溶媒の種類、帯電させる極性、帯電させる電圧、原料液300を噴射するタイミング(間欠運転の間隔など)、原料液300の噴射の量、気体流の流速、気体流の温度などである。また、これらを徐々に変化させることで傾斜組成を備えた不織布を製造することも可能となる。特に、各放出手段200に使用する原料液300の高分子物質の種類を変更して、タイミングをずらせて、ナノファイバ301を生成して、堆積手段101の移動速度を間欠運転等を行い、堆積手段101上に堆積させることができれば、多層の種類の異なる高分子物質が堆積することが可能になり、本願発明の実施の形態は、その応用範囲を拡大することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、ナノファイバ製造装置や、製造されたナノファイバを用いて紡糸する装置、製造されたナノファイバを用いて不織布を製造する装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本願発明の実施の形態1であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。
【図2】放出手段を示す断面図である。
【図3】放出手段を示す斜視図である。
【図4】本願発明の実施の形態2であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。
【図5】本願発明の実施の形態3であるナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0113】
100 ナノファイバ製造装置
101 堆積手段
102 吸引手段
103 領域規制手段
104 搬送手段
105 吸引制御手段
110 収集手段
111 供給ロール
112 吸引電極
113 吸引電源
121 ダクト
130 合流手段
131 主円筒体
132 副円筒体
200 放出手段
201 噴射手段
202 第一帯電手段
203 気体流発生手段
204 気体流制御手段
205 加熱手段
206 案内手段
207 除電手段
208 第二帯電手段
211 噴射容器
212 回転軸体
213 モータ
216 噴射口
221 誘導電極
222 誘導電源
223 接地手段
230 加速手段
232 第二気体流発生手段
233 気体流導入口
234 加速風洞体
235 バルブ
240 拡散手段
300 原料液
301 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射手段と、前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一帯電手段と、製造されたナノファイバを案内する風洞を形成する案内手段と、前記案内手段内部に前記ナノファイバを案内する気体流を発生させる気体流発生手段とを有する放出手段を複数と、
前記各放出手段から放出される気体流と共にナノファイバを合流させる合流手段と、
前記ナノファイバを収集する収集手段と
を備えるナノファイバ製造装置。
【請求項2】
さらに、
前記製造されたナノファイバを除電する除電手段を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
さらに、合流したナノファイバを加速する加速手段を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項4】
さらに、
前記合流手段により合流するナノファイバを拡散させる拡散手段を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項5】
前記収集手段は、
前記気体流を挿通可能なシート状の堆積手段と、
ナノファイバが堆積する前記堆積手段の側と反対側に配置され、前記放出手段から放出される気体流を吸引する吸引手段と
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項6】
さらに、
合流したナノファイバを帯電させる第二帯電手段を備え、
前記収集手段は、
ナノファイバを堆積させる堆積手段と、
ナノファイバを吸引する吸引電極と、
ナノファイバを吸引するための電位を前記吸引電極に印加する吸引電源とを備える
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項7】
前記噴射手段は、
原料液を噴射させる噴射孔を備え、
前記噴射孔は、前記気体流発生手段が発生させる気体流の方向と交差する方向に原料液を噴射させるように設けられる請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項8】
ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射工程と、
前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一帯電工程と、
前記案内手段内部に前記ナノファイバを案内する気体流を発生させる気体流発生工程と
を有する原料放出工程を複数と、
前記原料放出工程で放出されるナノファイバを合流させる合流工程と、
合流される前記ナノファイバを収集する収集工程と
を含むナノファイバ製造方法。
【請求項9】
前記原料放出工程の一方の放出条件は他方の放出条件とは異なる請求項8に記載のナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−209485(P2009−209485A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54133(P2008−54133)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】