説明

ナノファイバ製造装置および製造方法

【課題】ナノファイバの生産効率、及び、品質の向上。
【解決手段】原料液300を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバ301を製造するナノファイバ製造装置100であって、空間中に原料液300を放射方向に流出させる流出孔118を周壁に有する筒形状の流出体115と、流出体115と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極121と、空間中に流出した原料液300の飛行方向を変更する気体流を発生させる送風装置137と、送風装置137により発生する気体流の流れる方向において、風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有し、流出体115の風下側端部に設けられる整流体113と、流出体115と帯電電極121との間に所定の電圧を印加する帯電電源122とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、静電延伸現象によりサブミクロンオーダーの細さである繊維(ナノファイバ)を製造するナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂などから成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状(繊維状)物質を製造する方法として、静電延伸現象(エレクトロスピニング)を用いた方法が知られている。
【0003】
この静電延伸現象とは、溶媒中に樹脂などの溶質を分散または溶解させた原料液を空間中にノズルなどにより流出(噴射)させるとともに、原料液に電荷を付与して帯電させ、空間を飛行中の原料液を電気的に延伸させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的に静電延伸現象を説明すると次のようになる。すなわち、帯電され空間中に流出された原料液は、空間を飛行中に徐々に溶媒が蒸発していく。これにより、飛行中の原料液の体積は、徐々に減少していくが、原料液に付与された電荷は、原料液に留まる。この結果として、空間を飛行中の原料液は、電荷密度が徐々に上昇することとなる。そして、溶媒は、継続して蒸発し続けるため、原料液の電荷密度がさらに高まり、原料液の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力より勝った時点で原料液が爆発的に線状に延伸される現象が生じる。これが静電延伸現象である。この静電延伸現象が、空間において次々と幾何級数的に発生することで、直径がサブミクロンオーダーの樹脂から成るナノファイバが製造される。
【0005】
以上のような静電延伸現象を用いてナノファイバを製造する装置の専らの課題として生産効率の向上が挙げられる。例えば、本願出願人は、生産効率を向上させることのできる装置として、先に放射状に原料液を流出させると共に、気体流により所定方向に流出した原料液の飛行方向を変化させ、所定方向にナノファイバを搬送することのできる装置を提案している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−41128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らは、さらに、ナノファイバの生産効率を向上させることを目的として鋭意実験を行った結果、原料液を流出させる部材(流出体)に原料液が付着することを見いだした。当該現象が発生すると、ナノファイバの製造に寄与しない原料液が増加してナノファイバの生産効率の低下を招くことになる。さらに、流出体に付着した原料液が塊となって剥落し、収集したナノファイバや当該ナノファイバにより形成される不織布の品質に悪影響を及ぼすことになる。そこで、さらに鋭意実験と研究とを行った結果、流出体における気体流下流側端部の形状により原料液の飛行方向を変化させる気体流の一部に乱流が発生し、発生した乱流が原料液を巻き込み、巻き込まれた原料液が流出体に付着することを見いだすに至った。
【0008】
本願発明は上記知見に基づきなされたものであり、原料液が流出体などに付着することを抑制して、ナノファイバの生産効率を向上させ、塊状の汚染物の混入を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造装置は、原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造装置であって、空間中に原料液を放射方向に流出させる流出孔を周壁に有する筒形状の流出体と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、空間中に流出した原料液の飛行方向を変更する気体流を発生させる送風装置と、前記送風装置により発生する気体流の流れる方向において、風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有し、前記流出体の風下側端部に設けられる整流体と、前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、原料液の飛行方向を変化させる気体流に乱流が発生するのを抑制することができ、当該乱流により原料液が流出体に付着することを防止することができる。従って、ナノファイバの製造に寄与する原料液の量を増加させてナノファイバの生産効率を向上させると共に、汚染物の混入を抑制し、製造されるナノファイバの品質の向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造方法は、原料液を空間中で電気的に延伸させ、ナノファイバを製造するナノファイバ製造方法であって、空間中に原料液を放射方向に流出させる流出孔を周壁に有する筒形状の流出体から原料液を流出させる流出工程と、前記流出体と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極との間に帯電電源により所定の電圧を印加する帯電工程と、空間中に流出した原料液の飛行方向を変更する気体流を送風装置により発生させる送風工程と、前記送風装置により発生する気体流の流れる方向において、風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有し、前記流出体の風下側端部に設けられる整流体により前記送風工程により発生する気体流の一部が乱流となるのを抑制する整流工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
これにより、原料液の飛行方向を変化させる気体流に乱流が発生するのを抑制することができ、当該乱流により原料液が流出体に付着することを防止することができる。従って、ナノファイバの製造に寄与する原料液の量を増加させてナノファイバの生産効率を向上させると共に、汚染物の混入を抑制し、製造されるナノファイバの品質の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
気体流を整流することにより、原料液が流出体に付着することを抑止し、ナノファイバの生産効率の向上と、汚染物の混入の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ナノファイバ製造装置を一部切り欠いて示す平面図である。
【図2】放出装置の一部を切り欠いて示す平面図である。
【図3】放出装置の外観を示す斜視図である。
【図4】供給装置の一部を切り欠いて模式的に示す図である。
【図5】案内体近傍を示す斜視図である。
【図6】ナノファイバ製造装置の別態様を一部切り欠いて示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明に係るナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、ナノファイバ製造装置を一部切り欠いて示す平面図である。
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、放出装置101と、案内体102と、収集装置103と、誘引装置104とを備えている。
【0017】
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については、原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が電気的に延伸しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
【0018】
放出装置101は、帯電した原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流に乗せて放出することができるユニットである。
【0019】
図2は、放出装置の一部を切り欠いて示す平面図である。
図3は、放出装置の外観を示す斜視図である。
【0020】
これら図に示すように放出装置101は、流出装置110と、帯電装置111と、風洞体112と、供給装置107と、送風装置137とを備えている。
【0021】
流出装置110は、本実施の形態の場合、供給された原料液300を空気に接触させることなく遠心力により空間中に流出させるための装置であり、また、原料液300に電荷を付与し帯電させるための装置である。本実施の形態において流出装置110は、流出体115と、整流体113と、軸体116と、駆動装置117とを備えている。
【0022】
流出体115は、原料液300の圧力と遠心力とにより原料液300を空間中に流出させるための部材であり、軸体116と液密状態、かつ、軸体116に対し回転可能に接続される中空の部材である。また、流出体115の周壁には流出孔118が設けられている。ナノファイバ301を製造する際、流出体115は、内方が原料液300で満たされており、原料液300の圧力と自身の回転による遠心力とにより空間中に原料液300を流出させることのできる部材となっている。本実施の形態の場合、流出体115は、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には流出体115内方から外方に向けて原料液300を流出させるための流出孔118を周方向に一列に並べて多数備えている。また、流出体115は、貯留する原料液300に電荷を付与するため、導電体で形成されている。
【0023】
本実施の形態の場合、流出体115は、回転基体119と蓋体120とに分離可能となっている。これは、回転基体119から蓋体120を分離することで、流出体115の内方を清掃するなどのメンテナンスを容易にするためである。
【0024】
なお、流出体115に備えられる流出孔118の数は特に限定されるものでもなく、また、複数列に並べてもかまわない。
【0025】
回転基体119は、軸体116との軸方向の相対的な移動は規制され、かつ、軸体116に対し回転可能に接続される筒状の部材である。本実施の形態の場合、回転基体119は、軸体116とベアリング109を介して接続され、軸体116に対し回転可能に取り付けられている。また、回転基体119は、回転摺動可能かつ摺動部分を液密に維持することのできるパッキン106を介し軸体116の外周壁と接続されている。これにより、流出体115は、軸体116と液密状態、かつ、軸体116に対し回転可能に接続されることが可能となっている。
【0026】
蓋体120は、回転基体119に対し着脱自在に取り付けられ、原料液300を貯留する貯留室108を開閉可能に閉塞する部材である。本実施の形態の場合、蓋体120は、一端が閉塞された円筒体であり、蓋体120の周壁に流出孔118が設けられている。このように、原料液300を貯留する流出体115の貯留室108を、蓋体120の着脱で開放可能にすることで、貯留室108を容易に清掃可能となる。また、蓋体120に流出孔118を設けることで、流出体115から取り外した蓋体120を溶剤に浸漬し、超音波を当てるなどの清掃方法を容易に選択することができ、流出孔118の内壁も容易に清掃することが可能となる。
【0027】
具体的には、流出体115の直径は、10mm以上、300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると後述の気体流により原料液300やナノファイバ301を集中させることが困難になるからであり、また、流出体115の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために流出体115を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を流出させるための回転を高めなければならず、駆動源の負荷や振動など問題が発生するためである。さらに流出体115の直径は、20mm以上、150mm以下の範囲から採用することが好ましい。
【0028】
また、流出孔118の形状は円形が好ましく、その直径は、流出体115の肉厚にもよるが、おおよそ0.01mm以上、3mm以下の範囲から採用することが好適である。これは、流出孔118があまりに小さすぎると原料液300を流出体115の外方に流出させることが困難となるからであり、あまりに大きすぎると一つの流出孔118から流出する原料液300の単位時間当たりの量が多くなりすぎ(つまり、流出する原料液300が形成する線の太さが太くなりすぎ)て所望の径のナノファイバ301を製造することが困難となるからである。また、流出孔118の孔長は、短い方が好ましい。メンテナンスの際に流出孔118を塞ぐ樹脂を除去し易いからである。
【0029】
なお、流出体115の形状は、円筒形状に限定するものではなく、断面が多角形状の多角筒形状のようなものや円錐形状のようなものでもよい。流出孔118が回転することにより、流出孔118から原料液300が遠心力で流出可能な形状であればよい。また、流出孔118の形状は、円形に限定することなく、多角形状や星形形状などであってもよい。
【0030】
整流体113は、送風装置137により発生する気体流の一部が流出体115の端部で乱流となることを抑止し、流出孔118から流出する原料液300の一部が流出体115に付着することを防止する部材である。整流体113は、気体流の流れる方向(図2中の矢印)において流出孔118より風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有している。また、整流体113は、流出体115の風下側端部に取り付けられている。本実施の形態において、流出体115と接合する整流体113の接合部分は、流出体115と同じ筒形状であり、流出体115の端部形状と滑らかにつながっている。整流体113の外側形状は、流出体115の回転軸に対し外側に膨出した曲線を回転させて得られる形状いわゆるキャップ形状であり、接合部分の形状から先端に向かって滑らかな曲線を描く形状となっている。
【0031】
なお、整流体113は、流出体115と一体に形成されるものでもよい。また、整流体113の形状は、気体流の風下に向かって徐々に径が短くなれば良く、円錐形状でもかまわない。さらに、整流体113は、軽量化などのために中空であってもよく、また、中実でも良い。
【0032】
軸体116は、流出体115と回転可能かつ液密状態で接続されると共に、内部に後述する案内管114が挿入され、案内管114と液密状態で接続される部材である。本実施の形態の場合、軸体116は、流出体115の回転軸体として機能する円筒状の部材であり、流出体115は、軸体116の周囲を回転するものとなっている。また、軸体116の一端開口は流出体115の貯留室108に臨み、他端は、基台154に固定されている。
【0033】
駆動装置117は、遠心力により原料液300を流出孔118から流出させるために、流出体115に回転駆動力を付与する装置である。本実施の形態の場合、駆動装置117は、ベルトドライブ機構とモータとを備えており、流出体115の回転基体119に取り付けられるプーリーをベルトで回転させることにより流出体115に回転力を付与している。このように、ベルトドライブ機構を介して駆動力を伝達することで、モータと流出体115とを絶縁状態とすることが可能となる。
【0034】
なお、駆動装置117は、中空軸モータを備え、中空軸の内方に軸体116を挿通し、前記中空軸で流出体115を直接回転させるものでも良い。
【0035】
流出体115の回転数は、流出孔118の口径や使用する原料液300の粘度や原料液内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましい。
【0036】
帯電装置111は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、帯電装置111は、帯電電極121と、帯電電源122と、接地装置123とを備えている。
【0037】
帯電電極121は、流出体115と所定の間隔を隔てて配置され、自身が流出体115に対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、流出体115に電荷を誘導するための部材である。本実施の形態の場合、帯電電極121は、流出体115の周囲を取り囲むように配置される円環状の部材となっている。帯電電極121に正の電圧が印加されると流出体115には、負の電荷が誘導され、帯電電極121に負の電圧が印加されると流出体115には、正の電荷が誘導される。
【0038】
本実施の形態の場合、帯電電極121の大きさは、流出体115の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、50mm以上、1500mm以下の範囲から採用されることが好適である。なお、帯電電極121の形状は、円環状に限ったものではなく、流出体115の形状との関係によって、多角形の環状や平板状などであってもよい。また、帯電電極121の断面形状も凸曲面状であっても良い。
【0039】
接地装置123は、本実施の形態の場合、流出体115と電気的に接続され、流出体115を接地電位に維持することができる部材である。接地装置123の一端は、流出体115が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。なお、接地装置123は、流出体115と電気的に接続されれば良く、回転する流出体115と接地装置123とが僅かに離れていても良い。
【0040】
帯電電源122は、帯電電極121に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源122は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響を受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、逆極性の電位を印加した電極でナノファイバ301を誘引するような場合には、直流電源を採用することが好ましい。また、帯電電源122が直流電源である場合、帯電電源122が帯電電極121に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。帯電電源122に負の電圧が印加される場合には、前記の印加する電圧の極性は、負になる。特に、流出体115と帯電電極との間の電界強度が重要であり、帯電電極121と流出体115との距離が最も近い空間において1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧を調整するのが好ましい。
【0041】
本実施の形態のように帯電装置111に一方の電極を接地電位とする誘導方式を採用すれば、流出体115を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。流出体115が接地電位の状態であれば、流出体115に接続される軸体116や駆動装置117などの部材を流出体115から電気的に絶縁する必要が無くなり、流出装置110として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
【0042】
なお、帯電装置111として、流出体115に電源を接続し、流出体115を高電圧に維持し、帯電電極121を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。
【0043】
送風装置137は、流出体115から流出される原料液300の飛行方向を変更し、ナノファイバ301を搬送するための気体流(図2中:W2)を発生させる装置である。本実施の形態の場合、送風装置137は、基台154側から整流体113の先端に向かう気体流を発生させる。送風装置137は、流出体115から径方向に流出される原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。本実施の形態の場合、送風装置137は、軸流ファンで構成されている。
【0044】
なお、送風装置137は、放出装置101に備わる必要は無い。例えば、後述の吸引装置132や他の何らかの装置により、流出体115の近傍に気体流が発生し、流出孔118から流出する原料液300の飛行方向が変更されるなら、当該気体流の発生源が送風装置137としてもみなすことができる。また、送風装置137は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。
【0045】
さらにまた、放出装置101は、風洞体112と、風制御体124と、加熱装置125とを備えている。
【0046】
風洞体112は、流出体115の近傍空間に流れる気体流を、所望の流れとなるように整流する風洞である。本実施の形態の場合、風洞体112は、送風装置137で発生した気体流を帯電電極121と流出体115との間に案内する導管である。風洞体112により案内された気体流は、帯電電極121の内側を通過しつつ、流出体115の流出孔118から流出された原料液300と交差し、原料液300の飛行方向を変更する。
【0047】
風制御体124は、送風装置137により発生する気体流が流出孔118の開口端に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものである。本実施の形態の場合、風制御体124として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。風制御体124により、気体流が直接には流出孔118に当たらないため、流出孔118から流出される原料液300が早期に蒸発して流出孔118を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて流出させ続けることが可能となる。なお、風制御体124は、流出孔118の風上に配置され気体流が流出孔118近傍に到達するのを抑止する壁状の防風壁でもかまわない。
【0048】
加熱装置125は、送風装置137が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱装置125は、案内体102の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱装置125を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱装置125により気体流を加熱することにより、空間中に流出される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバ301を製造することが可能となる。
【0049】
図4は、供給装置の一部を切り欠いて模式的に示す図である。
同図に示すように、供給装置107は、容器151と、昇圧装置153と、導出管156とを備え、また、第二容器152と、移送装置155と、開閉弁159と、案内管114とを備えている。また、供給装置107は、重量測定装置141と、制御装置142とを備えている。
【0050】
容器151は、原料液300を貯留することができ、昇圧装置153から供給されるガスの圧力に抗し気密性を維持することのできる容器である。なお、容器151には、導出管156と、導入管157と、ガス導入管158とが挿通されている。
【0051】
容器151が気密状態であるため、導出管156から原料液300をガス圧により圧送することが可能である。また、容器151が気密状態であるため原料液300から溶媒が蒸発することを抑制することが可能であり、容器151内方の圧力が高められるため、さらに溶媒の蒸発を抑制できる。従って、原料液300の品質を低下させることなく安定して流出体115に圧送することが可能となる。
【0052】
昇圧装置153は、容器151にガスを導入し容器151内の圧力を上昇させる装置である。本実施の形態の場合、昇圧装置153は、圧力源161と調整弁162とを備えている。圧力源161は、例えば高い圧力のガスが封入されるボンベやアキュムレータのような装置である。調整弁162は、圧力源161の圧力を所定の圧力にまで降圧することのできるいわゆるレギュレータである。昇圧装置153に用いられるガスは特に限定されるものではない。例えば、空気等や窒素などの不活性ガス等を例示することができる。
【0053】
導出管156は、一方の開口端が容器151に貯留される原料液300に浸漬状態で配置される管状の部材である。
【0054】
第二容器152は、容器151よりも大容量の容器であって、大量の原料液300を貯留することのできるものである。
【0055】
移送装置155は、第二容器152から容器151に原料液300を移送するための装置である。移送装置155としては、例えば、ポンプなどを例示することができる。
【0056】
開閉弁159は、移送装置155から供給される原料液300を通過させるか否かを選択することのできる電磁弁である。
【0057】
案内管114は、供給装置107から圧送される原料液300を流出体115まで案内する管体である。本実施の形態の場合、案内管114の先端部は、軸体116内に配置され、原料液の圧力により拡径する拡径部126を備えている。案内管114の内部に原料液300が挿通している場合は、拡径部126が拡径して軸体116と接触し、液密状態で接続される。また、案内管114の内部に原料液300が挿通されていない場合は、案内管114は、軸体116に対し容易に挿入し、また、抜き出すことができるものとなっている。
【0058】
重量測定装置141は、載置される容器151や収容される原料液300等の重量を測定するための装置であり、測定結果を情報として送信できるものとなっている。
【0059】
制御装置142は、重量測定装置141から受信した情報を解析し、重量測定装置141から得られた情報が所定の重量以下の情報を含んでいる場合、開閉弁159を制御して原料液300を容器151内方に供給させることができる装置である。
【0060】
以上のような供給装置107を用いると、流出体115の流出孔118から流出するまでほぼ空気と接触することなく原料液300を供給することができるため、原料液300の品質の低下を抑制することが可能となる。
【0061】
図5は、案内体近傍を示す斜視図である。
同図に示すように、案内体102は、放出装置101から放出され、気体流によって搬送されるナノファイバ301を所定の場所に案内する風洞である。
【0062】
拡散体127は、案内体102と接続され、空間中において高密度状態で搬送されるナノファイバ301を広く均等に拡散させ低密度状態とする導管であり、ナノファイバ301が案内される空間を滑らか、かつ、連続的に拡大することで、ナノファイバ301を搬送する気体流の速度とナノファイバ301の速度とを徐々に減速させるフード状の部材である。本実施の形態の場合、拡散体127は、案内体102の高さをそのまま維持し、幅のみ徐々に広がるフード形状となっている。
【0063】
収集装置103は、案内体102から放出されるナノファイバ301を収集するための装置である。本実施の形態の場合、収集装置103は、被堆積部材128と、巻回装置129と、部材供給装置130とを備えている。
【0064】
被堆積部材128は、静電延伸現象により製造され気体流により搬送されるナノファイバ301と気体流とを分離し、ナノファイバ301のみが堆積する部材である。本実施の形態の場合、被堆積部材128は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材であり、気体流を容易に透過でき、ナノファイバ301を捕集しうる網状の部材である。具体的に被堆積部材128としては、アラミド繊維からなる長尺の布を例示することができる。さらに、被堆積部材128の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を被堆積部材128から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。また、被堆積部材128は、ロール状に巻き付けられた状態で部材供給装置130から供給されるものとなっている。
【0065】
巻回装置129は、被堆積部材128を移送することができる装置である。本実施の形態の場合、長尺の被堆積部材128を巻き取りながら部材供給装置130から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に被堆積部材128を搬送するものとなっている。巻回装置129は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を被堆積部材128とともに巻き取ることができるものとなっている。
【0066】
誘引装置104は、図1に示すように、ナノファイバ301を被堆積部材128に誘引するための装置である。本実施の形態の場合、誘引装置104は、異なる誘引方式を同時、または、選択的に実施できるように、気体誘引装置143と、電界誘引装置133とを備えている。
【0067】
気体誘引装置143は、気体流を吸引することによりナノファイバ301を被堆積部材128に誘引する装置であり、被堆積部材128の後方に配置されている。本実施の形態の場合、気体誘引装置143は吸引装置132と集中体131とを備えている。
【0068】
集中体131は、拡散体127で広がった気体流を受け取り、吸引装置132に至るまでの間に気体流を集中させる部材であり、拡散体127とは逆向きの漏斗形状となっている。
【0069】
吸引装置132は、被堆積部材128を通過する気体流を強制的に吸引する送風機である。吸引装置132は、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機であって、被堆積部材128を通過して速度が落ちた気体流を高い速度に加速することのできる装置である。吸引装置132により気体流を吸引することで、ナノファイバ301を製造する際に蒸発する溶媒も同時に吸引される。そのようにすることで、引火性の高い溶媒を使用する場合においても、案内体102の内部が爆発濃度まで達することはなく、安心して装置の使用ができるようになる。
【0070】
電界誘引装置133は、帯電しているナノファイバ301を電界により被堆積部材128に誘引する装置であり、誘引電極134と、誘引電源135とを備えている。
【0071】
誘引電極134は、帯電したナノファイバ301を誘引するための電界を発生させるための電極である。本実施の形態の場合、誘引電極134には気体流を通過させることのできる金属製の網が採用されている。誘引電極134は、拡散体127の開口部全体に広がって設けられている。
【0072】
誘引電源135は、誘引電極134を所定の電圧及び極性に維持することができる直流電源である。本実施の形態の場合、誘引電源135は、0V(接地状態)から200KV以下の範囲で自由に電圧と極性を変更することができる直流電源である。
【0073】
なお、誘引電極134は、実施の形態において金属製の網が採用されているが、それに限定されるものではない。例えば、被堆積部材128の幅程度の長さを備え所定の幅を有する棒状体でもよい。また、棒状の誘引電極134を複数本並べてもかまわない。
【0074】
なお、帯電電源122が交流電源の場合は、誘引電源135を交流電源としても良い。
回収装置105は、原料液300から蒸発した溶剤を気体流から分離して回収することのできる装置である。回収装置105に関しては、原料液300に用いられる溶剤の種類によって異なるが、例えば、気体を低温にして溶剤を結露させて回収する装置や、活性炭やゼオライトを用いて溶剤のみを吸着させる装置、液体などに溶剤を溶け込ませる装置やこれらを組み合わせた装置を例示できる。
【0075】
ここで、ナノファイバ301を構成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体等の高分子物質を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記樹脂に限定されるものではない。
【0076】
原料液300に使用される溶媒としては、揮発性のある有機溶剤などを例示することができる。具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を挙示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明に用いられる原料液300は上記溶媒を採用することに限定されるものではない。
【0077】
さらに、原料液300に骨材や可塑剤などの添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al23、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B23、P25、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb23、As23、CeO2、V25、Cr23、MnO、Fe23、CoO、NiO、Y23、Lu23、Yb23、HfO2、Nb25等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明の原料液300に添加される物質は、上記添加剤に限定されるものではない。
【0078】
原料液300における溶媒と樹脂との混合比率は、溶媒の種類と樹脂の種類とにより異なるが、溶媒量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。
【0079】
本実施の形態のように、原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流により搬送し、また、当該気体流を吸引装置132で吸引する場合、溶媒蒸気が滞留することなく流れるため、溶媒を50重量%以上含んだ原料液300であっても十分に蒸発し、静電延伸現象を発生させることが可能となる。従って、溶質である樹脂の濃度が薄い状態からナノファイバ301を製造することができるため、より細いナノファイバ301を製造することも可能となる。また、原料液300の調整可能範囲が広がるため、製造されるナノファイバ301の性能の範囲も広くすることが可能となる。
【0080】
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
【0081】
まず、放出装置101から収集装置103に向かう気体流を発生させる(送風工程)。以上の状態で、案内体102内の気体流W2の風量が毎分30立米となるようナノファイバ製造装置100を調整した。
【0082】
次に、容器151に昇圧装置153から所定の圧力のガスを導入する。本実施の形態の場合、容器151の重量を監視し、第二容器152から原料液300を容器151に適宜供給することにより、容器151内には一定量の原料液300が常に貯留されている。また、昇圧装置153から導入されるガスは、空気を用いた。これにより、容器151内方の圧力が高まり、導出管156から原料液300が常に一定の圧力で導出される。
【0083】
容器151から導出された原料液300は、案内管114を通過して流出体115の貯留室108まで圧送される。ここで、導出管156と案内管114と流出体115とは、一連に接続されており、原料液300は、空気に触れること無く流出体115の貯留室108に供給される。
【0084】
なお、容器151の容量が十分にある場合、開閉弁159を閉状態にしたままで、操業してもかまわない。所定の圧力で液面を押す場合に、密閉状態を維持できるからである。
【0085】
流出体115に供給された原料液300は貯留室108を満たし、流出孔118から空間中に流出する(供給工程)。以上により、原料液300は、供給装置107から空気に触れることなく流出孔118まで到達する。
【0086】
本実施の形態に採用される溶質としての樹脂は、ポリウレタンを選定した。また、原料液300を構成する溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミドを選定した。原料液300における溶質と溶媒との混合比率は、ポリウレタンを25重量%、N,N−ジメチルアセトアミドを75重量%とした。
【0087】
次に、帯電電源122により帯電電極121を正または負の高電圧とする。帯電電極121の近傍に配置される流出体115の流出孔118に電荷が集中し、当該電荷が流出体115の流出孔118を通過して空間中に流出する原料液300に転移し、原料液300が帯電する(帯電工程)。
【0088】
前記帯電工程と同時期に駆動装置117により流出体115を回転させ、流出体115の周壁に設けられる流出孔118から原料液300を所定の圧力と遠心力とで空間中に流出させる(回転工程、流出工程)。
【0089】
具体的には、外径がΦ60mmの流出体115を用いた。流出体115は、周方向等間隔に72個の流出孔118が設けられている。流出孔118の直径は、0.2mmであり、形状は円形であった。一方、帯電電極121は内径Φ600mmのものを用い、帯電電源122により帯電電極121を接地電位に対して負の60KVとした。これにより、流出体115には正の電荷が誘導され、正に帯電した原料液300が流出することとなる。
【0090】
流出孔118から流出された原料液300は、初めて気体流(空気)と接触し、気体流により搬送され(搬送工程)、気体流に乗り案内体102に案内される。
【0091】
ここで、原料液300の飛行方向を変更する気体流は、流出体115から整流体113に至るまでの滑らかな曲線に沿って流れるため、乱流の発生が抑制されている。従って、乱流に巻き込まれて流出体115に付着する原料液300の量を低減、または、無くすことが可能となり、ナノファイバ301の生産効率(歩留まり)を向上させ、品質を向上させることが可能となる。
【0092】
原料液300は、静電延伸現象によりナノファイバ301を製造しつつ(ナノファイバ製造工程)放出装置101から放出される。ここで、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が容易に発生し、流出した原料液300のほとんどがナノファイバ301に変化していく。また、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が何次にもわたって発生し、線径の細いナノファイバ301が大量に製造される。
【0093】
また、前記気体流は、加熱装置125により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶剤の蒸発を促進し静電延伸を促進している。
【0094】
以上のようにして放出装置101から放出されるナノファイバ301は、案内体102に導入される。そして、ナノファイバ301は、案内体102の内方を気体流に搬送されながら収集装置103に向かって案内される(案内工程)。
【0095】
拡散体127にまで搬送されたナノファイバ301は、ここで急速に速度が低下すると共に、均一な分散状態となる(拡散工程)。
【0096】
この状態において、被堆積部材128の背方に配置される吸引装置132は、蒸発した溶媒と共に気体流を吸引し、ナノファイバ301を被堆積部材128上に誘引する(誘引工程)。また、電圧が印加された誘引電極134により電界が発生し、当該電界によってもナノファイバ301が誘引される(誘引工程)。
【0097】
以上により、被堆積部材128により気体流から分けられてナノファイバ301が収集される(収集工程)。被堆積部材128は、巻回装置129によりゆっくり移送されているため、ナノファイバ301も移送方向に延びた長尺の帯状部材として回収される。
【0098】
被堆積部材128を通過した気体流は、吸引装置132により加速され、回収装置105に到達する。回収装置105では、気体流から溶媒を分離回収する(回収工程)。
【0099】
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用い、以上のナノファイバ製造方法を実施することによって、流出孔118から流出するまで原料液300を空気に触れさせることなく供給することができるため、安定した品質の原料液300を空間中に流出し続けることができ、品質の高いナノファイバ301を安定した状態で長期間製造し続けることができる。また、流出孔118において原料液300中の樹脂が固化するのを防止することができ、流出孔118の目詰まりを除去するメンテナンス作業の回数を減少させることが可能となる。
【0100】
また、遠心力と共に原料液300の圧力により流出孔118から原料液300が流出するため、各流出孔118から均等に原料液300が流出し、製造されるナノファイバ301の品質を安定させることが可能となる。
【0101】
なお、本願発明に係るナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法は、上記に限定されるものではない。例えば図6に示すように、ドラム状の被堆積部材128をゆっくりと回転させて被堆積部材128の周面にナノファイバ301を堆積させていくものでもよい。本実施の形態の場合、ナノファイバ製造装置100は、案内体102を備えず、被堆積部材128が、帯電電極121と、誘引電極134との機能も併せ持っている。つまり、流出体115と被堆積部材128との間に高電圧を印加することで、原料液300に電荷を供給すると共に、流出体115と被堆積部材128との間に発生する電界によりナノファイバ301を被堆積部材128に誘引することとなる。
【0102】
また、原料液300を垂直面内に流出させ、ナノファイバ301を気体流により水平方向に搬送し、垂直面内に配置された被堆積部材128でナノファイバ301を収集する態様に限定されることもない。例えば、原料液300を水平面内に流出させ、ナノファイバ301を気体流により垂直方向に搬送し、水平面内に配置された被堆積部材128でナノファイバ301を収集する態様でもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本願発明は、ナノファイバの製造やナノファイバを用いた紡糸、不織布の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
100 ナノファイバ製造装置
101 放出装置
102 案内体
103 収集装置
104 誘引装置
105 回収装置
106 パッキン
107 供給装置
108 貯留室
109 ベアリング
110 流出装置
111 帯電装置
112 風洞体
113 整流体
114 案内管
115 流出体
116 軸体
117 駆動装置
118 流出孔
119 回転基体
120 蓋体
121 帯電電極
122 帯電電源
123 接地装置
124 風制御体
125 加熱装置
126 拡径部
127 拡散体
128 被堆積部材
129 巻回装置
130 部材供給装置
131 集中体
132 吸引装置
133 電界誘引装置
134 誘引電極
135 誘引電源
137 送風装置
141 重量測定装置
142 制御装置
143 気体誘引装置
151 容器
152 第二容器
153 昇圧装置
154 基台
155 移送装置
156 導出管
157 導入管
158 ガス導入管
159 開閉弁
161 圧力源
162 調整弁
300 原料液
301 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバを製造するナノファイバ製造装置であって、
空間中に原料液を放射方向に流出させる流出孔を周壁に有する筒形状の流出体と、
前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極と、
空間中に流出した原料液の飛行方向を変更する気体流を発生させる送風装置と、
前記送風装置により発生する気体流の流れる方向において、風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有し、前記流出体の風下側端部に設けられる整流体と、
前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源と
を備えるナノファイバ製造装置。
【請求項2】
前記整流体の外側形状は、仮想的な回転軸に対し外側に膨出した曲線を回転させて得られる形状である請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
前記整流体の外側形状は、円錐形状である請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項4】
さらに、
空間中で製造されるナノファイバを収集する収集手段と、
前記収集手段にナノファイバを誘引する誘引手段と
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項5】
さらに、
遠心力により原料液を流出孔から流出させる、流出体に回転駆動力を付与する駆動装置を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項6】
原料液を空間中で電気的に延伸させ、ナノファイバを製造するナノファイバ製造方法であって、
空間中に原料液を放射方向に流出させる流出孔を周壁に有する筒形状の流出体から原料液を流出させる流出工程と、
前記流出体と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極との間に帯電電源により所定の電圧を印加する帯電工程と、
空間中に流出した原料液の飛行方向を変更する気体流を送風装置により発生させる送風工程と、
前記送風装置により発生する気体流の流れる方向において、風下方向に向かって徐々に径が短くなる外側形状を有し、前記流出体の風下側端部に設けられる整流体により前記送風工程により発生する気体流の一部が乱流となるのを抑制する整流工程と
を含むナノファイバ製造方法。
【請求項7】
さらに、
空間中で製造されるナノファイバを収集手段により収集する収集工程と、
前記収集手段にナノファイバを誘引する誘引工程と
を含む請求項6に記載のナノファイバ製造方法。
【請求項8】
前記流出工程は、
前記流出体を回転させ、流出体の周壁に設けられる流出孔から原料液を遠心力で空間中に流出させる回転工程
を含む請求項6に記載のナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21298(P2011−21298A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168295(P2009−168295)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】