説明

ナノ構造のリン酸カルシウム銀複合粉体、その粉体の製造方法並びに抗菌及び殺菌への利用

本発明は、抗菌剤及び/又は殺菌剤として使用できる、商用製品と同様の効果を有し、毒性レベルが低い、ナノ構造のリン酸カルシウム銀複合粉体から成る。本発明の第2の目的は、前記ナノ構造のリン酸カルシウム銀複合粉体を得るための、ゾル・ゲル法によるナノメートルのリン酸カルシウムの製造と、次に銀ナノ粒子をその表面に沈着させることから構成される製造方法から成る。該ナノ構造粉体は、例えば、外科的移植、公共施設(トイレ及び病院、交通など)、食品、歯科、塗料、衣類及び包装(食品、医薬品、医療用器具)などの適用のための一般的な消毒剤として使用できる抗菌剤及び/又は殺菌剤の製造に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外科的移植分野、公共施設(トイレ、病院、交通など)、冷暖房設備、食品、歯科、塗料、衣類、及び包装(食品、家庭用リンネル製品、医薬品、医療用器具など)における抗菌及び殺菌用途。
【背景技術】
【0002】
従来技術
移植に関連する感染の原因となる一般的な菌種や哺乳類の細胞に非毒性のものを含む広範囲の病原菌に対する低濃度の銀の抗菌特性は周知である。抗菌物質として銀を含むほとんどの生体材料は、有機及び無機のマトリクスで支持された金属の元素又はカチオンから成る。抗菌作用に関する研究は、銀を含む重合体やバイオガラスの場合では行われているが、ナノ構造のリン酸カルシウム銀複合材料の場合では行われていない。
【0003】
近年、Agを有するヒドロキシアパタイト(HA)化合物を、イオン交換法(ゾルゲル法又は共沈法)を用いて得ることについての研究が発表された(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。カルシウムが少ないヒドロキシアパタイトが得られるこれらの方法は、銀がカルシウムの代わりとなることを示唆する。これらの材料の抗菌反応は良好であるが、2つの主な欠点が観察された:i)カルシウムの欠乏は、HAナノ粒子の構造安定性と、HAの骨伝導性に悪影響を与え得る、そして、ii)pHによっては、所望するよりも速く銀が放出され得る。これを受けて、殺菌源としての銀ナノ粒子への関心が、水媒体におけるその低溶解性のために増している。
【0004】
銀ナノ粒子の殺菌活性は、その大きさによって影響を及ぼされる:大きさが小さいほど、ナノ粒子の凝集の問題があるために、微生物活性はより大きくなる。この難点を回避する解決方法は、異なる基質の表面に付着したナノ粒子を使って行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Han I-H,Lee I-S, Song J-H, Lee M-H, Park J-C, Lee G-H, Sun X-D, Chung S-M. Characterization of a silver-incorporated calcium phosphate film by RBS and its antimicrobial effects. Biomed. Mater. 2007; 2(3): S91-4
【非特許文献2】Chen W, Oh S, Ong A P, Oh N, Liu Y, Courtney H S, Appleford M and Ong J L 2007 J. Biomed. Mater. Res. A 82 899
【非特許文献3】Cheng R J, Hsieh M F, Huang K C, Perng L H, Chou F I and Chin T S 2005 Journal of Solid Science and Technology 33 229
【非特許文献4】Rameshbabu N, Sampath Kumar T S, Prabhakar T G, Sastry V S, Murty K V G K and Prasad Rao K 2007 J. Biomed. Mater. Res. A 80 581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(簡単な説明)
本発明の1つの目的は、好ましくは150nm未満の粒子サイズのリン酸カルシウムと、その表面に付着した好ましくは50nm未満の大きさのAgナノ粒子によって形成されたナノ複合材料又はナノ構造の粉体(以下、本発明のナノ複合材料という)から成る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの特定の目的は、リン酸カルシウムが以下の群に属するナノ複合材料の粉体から成るが、これらは例示であって本発明の範囲を制限することを意図するものではない:ヒドロキシアパタイト、α−TCP、β−TCP及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくはヒドロキシアパタイト(HA)。
【0008】
本発明の別の目的は、以下の工程を含む本発明のナノ複合材料の粉体を得るための製造方法(以下、本発明の製造方法という)から成る:
a.ゾル・ゲル法の処理を用いたナノメートルのリン酸カルシウムの製造;及び
b.該リン酸カルシウム表面への銀ナノ粒子の沈着。
【0009】
本発明の別の目的は、以下の群に属する適用のための一般的な消毒剤として使用できる抗菌及び/又は殺菌複合材料の詳細における本発明のナノ複合材料の粉体の使用から成るが、これらは例示であって本発明の範囲を制限することを意図するものではない:外科的移植、公共施設(トイレ及び病院、交通など)、食品、歯科、塗料、衣類、及び包装(食品、医薬品、医療用器具など)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は透過電子顕微鏡により得られた顕微鏡写真であり、方法1によって得られた約140nmの大きさのヒドロキシアパタイトナノ粒子の表面に付着した大きさが20nm未満の銀ナノ粒子の均一な分布を示す。
【図2】図2は透過電子顕微鏡により得られた顕微鏡写真であり、方法2によって得られたナノ複合材料の粉体においてAgナノ粒子の大きさが15nm未満であることが観察できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本発明には、表面に付着した均一に分散された50nm未満の粒子サイズの金属Agナノ粒子(図1及び2)を有し、銀ナノ粒子がその表面に存在する基質としてのリン酸カルシウムに基づく抗菌及び殺菌活性を有する140nm未満の大きさのHAナノ粒子によって形成されたナノ構造粉体が記載されている。同様に前記ナノ構造複合材料を得るための簡単で安価な選択的製造方法が、より具体的には2つの異なる方法を用いることが示されている(実施例1)。
【0012】
現在の技術水準において、本発明によって提供される最初の利点は、ナノ粒子の凝集は、これらが基質の表面に付着しているために回避できるという事実から成る。2番目の利点は、商用製品と同様の抗菌及び殺菌の効果である(実施例2)。3番目の利点はその低い毒性であり、この材料では、Vitelinateの場合(約800〜1,300ppm)よりも2桁少ない銀の溶出が観察されることで示された(HA/Agの場合(<5ppm)である)。これは、商用製品をはるかに下回る毒性と非常に低い毒性レベル(使用される銀の量は1重量%オーダーである)を示唆するが、有効性は同様である(実施例2)。さらに、溶出銀の定量分折で明らかなように、CaがAgで置き換えられた材料の場合よりも、銀は非常にゆっくりと放出され、制御されている方法である。したがって、抗菌及び殺菌作用におけるカルシウムと銀の相乗効果を考慮すると、この新しい材料は一般的な消毒剤として使用できる。
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、その表面に付着した好ましくは50nm未満の大きさのAgナノ粒子を有する、好ましくは150nm未満の粒子サイズのリン酸カルシウムから成るナノ複合材料又はナノ構造の粉体(以下、本発明のナノ複合材料の粉体という)から成る。
【0014】
本発明の1つの特定の目的は、リン酸カルシウムが以下の群に属するナノ複合材料の粉体から成るが、これらは例示であって本発明の範囲を制限することを意図するものではない:ヒドロキシアパタイト、α−TCP、β−TCP及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくはヒドロキシアパタイト(HA)。
【0015】
本発明の別の特定の目的は、金属銀粒子が0.01重量%〜8重量%で含まれる、銀の最適比率が1重量%であるナノ複合材料の粉体から成る。
【0016】
本発明の別の目的は、以下の工程を含む本発明のナノ複合材料の粉体を得るための製造方法(以下、本発明の製造方法という)から成る:
a.ゾル・ゲル法の処理を用いたナノメートルのリン酸カルシウムの製造;及び、
b.該リン酸カルシウム表面への銀ナノ粒子の沈着。
【0017】
本発明の別の特定の目的は、工程a)において、リン酸カルシウムが、以下の工程を含むゾル・ゲル法によって製造された本発明の製造方法から成る:
a)最終的な混合物において所望のCa/Pモル比(ヒドロキシアパタイトの場合は好ましくは1.67)を得るために必要な量の亜リン酸トリエチルと硝酸カルシウムを有する対応する水溶液を調製すること;
b)制御された温度とpH条件を維持し、強く攪拌しながら、カルシウム溶液にリン溶液を一滴ずつ添加すること;
c)得られたコロイド懸濁液の攪拌と、ゲルを形成するための周囲温度での、好ましくは24時間のその後のエイジング;及び、
d)ナノメートルサイズの良好に結晶化された粉体を得るために、500℃〜1,000℃の温度、好ましくは550℃で、溶媒を完全に取り除くまでゲルを真空ヒーター内で乾燥及び焼成すること。
【0018】
本発明の別の特定の目的は、工程b)が以下の工程を含む本発明の製造方法から成る(方法1):
a)6で得られた粉体の水懸濁液を調製し、pHを5に調整し、陰イオン性界面活性剤を低濃度で加えること;
b)リン酸カルシウム固形分の含有量を基準に、最終的な化合物における銀元素の含有量が0.01重量%〜8重量%、好ましくは1重量%の銀が含まれるために必要な濃度を有する銀塩前駆体の水溶液を、光を遮断して添加すること;
c)酸化物(AgO)としてAg陽イオンが沈殿するような方法で、pHを9に調整し、強く攪拌すること;
d)濾過し、蒸留水で洗浄し、得られた粉体を乾燥すること;及び、
e)150℃〜500℃に含まれた温度範囲、好ましくは350℃でのH/Ar雰囲気における還元。
【0019】
本発明の別の特定の目的は、工程b)が以下の工程を含む本発明の製造方法から成る(方法2):
a)6で得られたヒドロキシアパタイト粉体の水懸濁液を調製し、陰イオン性界面活性剤を低濃度で加えること;
b)0.1NのNaOH水溶液を使用し、pHを7に調整すること;
c)超音波プローブを1〜10分間使用し、完全に均一化し、ボールミルで分散させること;
d)10分間強く攪拌し続けながら、最終的な製品中のAg濃度が、最終的な化合物に0.01重量%〜8重量%、好ましくは1重量%の銀が含まれるように必要量の銀塩前駆体AgNOの水溶液を一滴ずつ添加すること;
e)任意の還元剤、好ましくはNaBHを使用して、その場で銀を化学的還元すること(強く攪拌し続けながら、還元剤を分散体に一滴ずつ添加する);及び、
f)濾過し、蒸留水で洗浄し、60℃のヒーターで乾燥すること。
【0020】
最終的に、本発明の別の目的は、以下の群に属する適用のための一般的な消毒剤として使用できる抗菌性及び/又は殺菌性組成物の詳細における本発明のナノ複合材料の粉体の使用から成るが、これらは例示であって本発明の範囲を制限することを意図するものではない:外科的移植、公共施設(トイレ及び病院、交通など)、食品、歯科、塗料、衣類、及び包装(食品、医薬品、医療用器具など)。
【実施例】
【0021】
本発明の実施態様の実施例
実施例1−本発明のナノ複合材料の粉体の製造方法
ゾル・ゲル法の処理を用いたナノメートルのリン酸カルシウム及び銀ナノ粒子のリン酸カルシウム表面への沈着という2つの主な製造工程を含む本発明のナノ複合材料の粉体の製造方法が以下に詳細に記載される。
【0022】
1.1−リン酸カルシウムとしてのヒドロキシアパタイト(HA)の合成
HAの合成に使用される前駆体は、亜リン酸トリエチル(98%、Aldrich)と硝酸カルシウム四水和物(≧99%、Fluka)である。行われた工程を以下に詳細に述べる:
1.最終的な混合物において1.67のCa/Pモル比を得るために必要な量のこれらの前駆体を用いて対応する水溶液を調製する。
2.制御された温度とpH条件を維持し、強く攪拌しながら、カルシウム溶液に亜リン酸トリエチルを一滴ずつ添加する。
3.得られたコロイド懸濁液の攪拌を維持し、周囲温度で24時間エイジングした後、ゲルを形成する。及び、
4.真空ヒーターで溶媒を完全に取り除くまで得られたゲルを乾燥する。そして、これを550℃で焼成し、150nm未満の大きさのナノメートルサイズの良好に結晶化されたヒドロキシアパタイトの粉体を得る。
【0023】
1.2−リン酸カルシウム表面への銀の沈着工程
この段階の時点において、2つの異なる方法によって本発明のナノ構造の粉体が得られた。
【0024】
方法1
ゾル・ゲル法とその後の焼成によるHAナノ粒子の合成後、最適量の界面活性剤を有する水に分散されたHAに、前駆体としての酸化銀(例えば、硝酸銀)の沈着が行われる。次に、以下に詳細に説明するように、陽イオンAgはAr/H雰囲気でオーブン内にてAgに還元される:
a)1.1で得られたヒドロキシアパタイトの粉体によって水懸濁液が作製される。攪拌によってpHは5に調整される。ヒドロキシアパタイトをより良好に分散させるために、分散剤として低濃度の陰イオン性界面活性剤が導入される(ヒドロキシアパタイトの固形分濃度に対して1重量%)。
b)最終的なHA−Ag化合物における銀元素の含有量が0.01重量%〜8重量%で含まれるために必要な濃度を有する銀塩前駆体の水溶液は、光から保護され、添加される(リン酸カルシウム固形分の含有量を基準とする)。
c)酸化物(AgO)としてAg陽イオンが沈殿するような方法で、懸濁液を強く攪拌しながら、pHを9に調整する。及び、
d)濾過及び洗浄の後、150℃〜500℃の温度範囲で、Ar/10%H雰囲気において、これを乾燥し、還元する。
【0025】
このようにして、均一に分散された、約140nmの大きさのヒドロキシアパタイトナノ粒子の表面に付着した20nm未満の大きさの銀ナノ粒子を有するナノ複合材料の粉体が得られた。
【0026】
方法2
ゾル・ゲル法とその後の焼成によるHAナノ粒子の合成後、銀ナノ粒子Agは、分散剤を有する最適pHの水に分散された銀の前駆体の状態でヒドロキシアパタイトに沈着される。還元は、還元剤を使用して、周囲温度で、その場で行われる。
a)得られたヒドロキシアパタイトの粉体によって水懸濁液が作製される。ヒドロキシアパタイトをより良好に分散させるために、分散剤として低濃度の陰イオン性界面活性剤が導入される(Dolapix)。
b)HA粒子を良好に分散し、同時に、pH値が8よりも高いときに起こるAgOとしてのAg陽イオンの沈殿を回避するために、0.1NのNaOH水溶液を使用してpHを7に調整する。
c)1〜10分間の超音波プローブ。ボールミル内での均一化と分散。
d)最終的な製品におけるAgの濃度を、最終的なHA−Ag化合物において0.01重量%〜8重量%とするために必要な量の前駆体(AgNO)が加えられる。HA分散体に一滴ずつ加えた時点で、次の工程を始める前に10分間強く攪拌される。この工程は、前駆体溶液と前駆体を加えた後の分散体を光から保護しながら、行われなければならない。
e)銀の還元は、例えば、1:8(NaBH:Ag)のモル比で銀と反応するNaBHを還元剤として使用し、以下の反応によって、その場で化学的に行われる:
【0027】
【化1】

【0028】
f)NaBH溶液は分散体に一滴ずつ沈着される。及び、
g)強く攪拌し、濾過し、蒸留水で洗浄し、そして最後に60℃のヒーターで乾燥する。
【0029】
このようにして、本発明のナノ複合材料の粉体が得られた。Agナノ粒子の大きさが15nm未満であることが観察できた。
【0030】
実施例2−本発明のナノ複合材料の粉体の殺生物活性及び浸出試験
殺菌性試験は、異なる微生物に対する銀を含むサンプルの効果を調べるために行われた:Escherichia coli JM 110(グラム陰性菌)、Micrococcus luteus(グラム陽性菌)及びIssatchenkia orientalis(イースト)。微生物は、ペトリ皿上のE.coli JM110及びM.luteus用のルリア−ベルターニ(LB)固形培地(1%のトリプトン、0.5%の酵母エキス、1%のClNa、1.5%の寒天を含む)又は酵母エキスデキストロース(YEPD)(1%の酵母エキス、2%のペプトン、2%のブドウ糖を含む)に播かれた。皿を37℃で24時間インキュベートした。次に、前述の皿の各々の微生物の単離されたコロニーを5mlのLB(細菌)又はYEPD(イースト)に接種し、前培養物を得るために37℃で5時間培養した。1%の銀を含む調製品M1とM2の200mg/ml(重量/重量)の水懸濁液を同時に調製した。最後に、各々の微生物の前培養物を、微生物に応じて1mlのLB又はYEPDに接種した。次に、150μLのHA/nAgサンプル(M1とM2)を培養物に添加し、Agの最終的な濃度は0.13重量%となった。同様に、水及び対応する栄養素の混合物から成る銀を含まないサンプルを対照の目的で調製した。攪拌しながら培養物を37℃でインキュベートし、各々について連続希釈を行った後に生細胞数を算定するために、異なる培養物について一定量を得た。
【0031】
2.1−Micrococcus luteusを用いた殺生物試験
方法1を用いて得られたHA粉体(銀前駆体としてAgNOを使用し、最終化合物HA−Agの銀含有量は1重量%(HA固形分の含有量を基準とする)であった)を用いて水懸濁液(固形分9重量%)を調製した。Micrococcus luteusを用いて行われた試験は、24時間後、表題化合物では<1.0×10を示した。一方、対照は3.0×10である。
【0032】
72時間後に、培養培地に浸出したカルシウムの濃度は、15〜30ppmの範囲内にあることが判明した。銀の濃度は<5ppmであった。これと並行して、市販のナノ構造のSilver Vitelinate(Argenol、粒子サイズは20nm未満)について、開始時の銀濃度を同じにしてその中に接種したところ、約1,300ppmの銀の浸出が観察された。
【0033】
2.2−Escherichia coliを用いた殺生物試験
方法1を用いて得られたHA粉体(銀前駆体としてAgNOを使用し、最終化合物HA−Agの銀含有量は1重量%(HA固形分の含有量を基準とする)であった)を用いて水懸濁液(固形分9重量%)を調製した。Escherichia coli JM110を用いて行われた試験は、24時間後、表題化合物では<1.0×10を示した。一方、対照は1.4×1011である。
【0034】
72時間後に、培養培地に浸出したカルシウムの濃度は、15〜30ppmの範囲内にあることが判明した。銀の濃度は<5ppmであった。これと並行して、同じ開始時の濃度の市販のナノ構造のSilver Vitelinate(Argenol、粒子サイズは20nm未満)に接種したところ、約900ppmの銀の浸出が観察された。
【0035】
2.3−Issatchenkia orientalisを用いた殺生物試験
方法2を用いて得られたHA粉体(銀前駆体としてAgNOを使用し、最終化合物HA−Agの銀含有量は1重量%(HA固形分の含有量を基準とする)であった)を用いて水懸濁液(固形分9重量%)を調製した。Issatchenkia orientalisを用いて行われた殺菌性試験は、24時間後、表題化合物では1.0×10を示した。一方、対照は1.2×1011である。
【0036】
72時間後に、培養物に浸出したカルシウムの濃度は、15〜30ppmの範囲内にあることが判明した。銀の濃度は<5ppmであった。これと並行して、同じ開始時の濃度の市販のナノ構造のSilver Vitelinate(Argenol、粒子サイズは20nm未満)に接種したところ、約800ppmの銀の浸出が観察された。
【0037】
2.4−Micrococcus luteusを用いた殺生物試験
方法2を用いて得られたHA粉体(銀前駆体としてAgNOを使用し、最終化合物HA−Agの銀含有量は1重量%(HA固形分の含有量を基準とする)であった)を用いて水懸濁液(固形分9重量%)を調製した。Micrococcus luteusを用いて行われた殺菌性試験は、24時間後、表題化合物では4.0×10を示した。一方、対照は3.0×10である。
【0038】
72時間後に、培養物に浸出したカルシウムの濃度は、15〜30ppmの範囲内にあることが判明した。銀の濃度は<5ppmであった。これと並行して、同じ開始時の濃度の市販のナノ構造のSilver Vitelinate(Argenol、粒子サイズは20nm未満)に接種したところ、約900ppmの銀の浸出が観察された。
【0039】
2.5−Escherichia coli JM 110を用いた殺生物試験
方法2を用いて得られたHA粉体(銀前駆体としてAgNOを使用し、最終化合物HA−Agの銀含有量は1重量%(HA固形分の含有量を基準とする)であった)を用いて水懸濁液(固形分9重量%)を調製した。Escherichia coli JM 110を用いて行われた殺菌性試験は、24時間後、表題化合物では<1.0×10を示した。一方、対照は1.4×1011である。
【0040】
72時間後に、培養物に浸出したカルシウムの濃度は、15〜30ppmの範囲内にあることが判明した。銀の濃度は<5ppmであった。これと並行して、同じ開始時の濃度の市販のナノ構造のSilver Vitelinate(Argenol、粒子サイズは20nm未満)に接種したところ、約1300ppmの銀の浸出が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子サイズが好ましくは150nm未満のリン酸カルシウムと、その表面に付着した大きさが好ましくは50nm未満のAgナノ粒子によって形成されたことを特徴とするナノ複合材料の粉体。
【請求項2】
前記リン酸カルシウムが、以下の群に属することを特徴とする請求項1に記載のナノ複合材料の粉体:ヒドロキシアパタイト、α−TCP、β−TCP及び/又はこれらの組み合わせ。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムが、ヒドロキシアパタイト(HA)であることを特徴とする請求項1に記載のナノ複合材料の粉体。
【請求項4】
金属銀粒子含有量が0.01重量%〜8重量%であり、好ましくは銀が1重量%であることを特徴とする請求項1に記載のナノ複合材料の粉体。
【請求項5】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ複合材料の粉体の製造方法:
a)ゾル・ゲル法の処理を用いたナノメートルのリン酸カルシウムの製造;及び、
b)該リン酸カルシウム表面への銀ナノ粒子の沈着。
【請求項6】
工程a)において、前記リン酸カルシウムを、以下の工程を含むゾル・ゲル法によって製造することを特徴とする請求項5に記載の製造方法:
a)最終的な混合物において所望のCa/Pモル比(ヒドロキシアパタイトの場合は好ましくは1.67)を得るために必要な量の亜リン酸トリエチルと硝酸カルシウムを有する対応する水溶液を調製すること;
b)制御された温度とpH条件を維持し、強く攪拌しながら、該カルシウム溶液に該リン溶液を一滴ずつ添加すること;
c)得られたコロイド懸濁液の攪拌と、周囲温度における、好ましくは24時間の、ゲルを形成するためのその後のエイジング;及び、
d)ナノメートルサイズの良好に結晶化された粉体を得るために、500℃〜1,000℃の温度、好ましくは550℃で、溶媒を完全に取り除くまで真空ヒーター内でゲルを乾燥し、焼成すること。
【請求項7】
工程b)において、以下の工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法:
a)請求項6で得られた粉体の水懸濁液を調製し、pHを5に調整し、陰イオン性界面活性剤を低濃度で加えること;
b)リン酸カルシウム固形分の含有量を基準に、最終的な化合物における銀元素の含有量が0.01重量%〜8重量%であり、好ましくは1重量%の銀が含まれるために必要な濃度を有する銀塩前駆体の水溶液を、光を遮断して添加すること;
c)AgOとしてAg陽イオンが沈殿するような方法で、pHを9に調整し、懸濁液を強く攪拌すること;
d)濾過し、蒸留水で洗浄し、得られた粉体を乾燥すること;及び、
e)150℃〜500℃の温度範囲、好ましくは350℃でのH/Ar雰囲気における還元。
【請求項8】
工程b)において、以下の工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法:
a)請求項6で得られたヒドロキシアパタイト粉体の水懸濁液を調製し、陰イオン性界面活性剤を低濃度で加えること;
b)0.1NのNaOH水溶液を使用し、pHを7に調整すること;
c)超音波プローブを1〜10分間使用し、完全に均一化し、ボールミルで分散させること;
d)10分間強く攪拌し続けながら、最終的な製品中のAg濃度が、最終的な化合物において0.01重量%〜8重量%、好ましくは1重量%となるように必要量の銀塩前駆体の水溶液、AgNOを一滴ずつ添加すること;
e)強く攪拌し続けながら分散体に一滴ずつ添加される任意の還元剤、好ましくはNaBHを使用して、その場で銀を化学的還元すること;及び、
f)濾過し、蒸留水で洗浄し、60℃のヒーターで乾燥すること。
【請求項9】
以下の群に属する適用のための、消毒剤として使用できる抗菌性及び/又は殺菌性組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ複合材料の粉体の使用:外科的移植、公共施設(トイレ及び病院、交通など)、食品、歯科、塗料、衣類及び包装(食品、医薬品、医療用器具)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513971(P2012−513971A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542851(P2011−542851)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070628
【国際公開番号】WO2010/072882
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508155273)
【Fターム(参考)】