説明

ナノ粒子、ビニルモノマー及びシリコーンのコポリマー

コポリマーは、(a)(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子と、(b)ビニルモノマーと、(c)シリコーンマクロマーとの反応生成物を含む。(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子は、シリカナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、チタニアナノ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子、ビニルモノマー、及びシリコーンのコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンペンダント基を有するビニルポリマー主鎖を有するもの(例えば、米国特許第4,728,571号(Clemensら)を参照)、及びアクリレートペンダント基を有するシリコーンポリマー主鎖を有するもの(例えば、米国特許第5,202,190号(Kantnerら)を参照)を含むシリコーン−ビニルコポリマーは、感圧性接着剤(PSA)製品の剥離剤コーティングとして有用であることが、当該技術分野において既知である。しかしながら、これらの剥離剤コーティングを比較的高温(例えば約50℃超)に曝したとき、PSA製品において引き剥がし力及びシート除去力が望ましくないほど高まり、及び/又は接着力が喪失する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の点を考慮して、我々は、剥離剤コーティングとして使用するとき、従来のシリコーン−ビニルコポリマーほど比較的高温に対して感受性が高くないシリコーン−ビニルコポリマーに対する、当該技術分野における必要性が存在することを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に述べると、本発明は、(a)(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子と、(b)ビニルモノマーと、(c)シリコーンマクロマーとの反応生成物を含むコポリマーを提供する。(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子は、シリカナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、チタニアナノ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。シリコーンマクロマーは、以下の式:
X−(Y)−Si(R)3−m
(式中、
Xはビニル基であり、
Yは二価結合基であり、
nは0又は1であり、
Rは水素、アルキル、アリール、又はアルコキシであり、
mは1〜3の整数であり、
Zは、約1,000を超える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、共重合条件下で本質的に非反応性である)により表される。
【0005】
本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリル系」は、アクリル及びメタクリル、アクリレート及びメタクリレート、並びにアクリル系及びメタクリル系を指す。
【0006】
本発明のコポリマーは、剥離剤コーティングとして用いることができる。本発明のコポリマーを含む剥離剤コーティングは、従来のシリコーン−ビニルコポリマーを含む剥離剤コーティングより、比較的高温においてより安定している。更に、本発明のコポリマーを含む剥離剤コーティングは、感圧性接着剤(PSA)が剥離剤コーティングから引き剥がされるとき、安定した引き剥がし力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のコポリマーは、(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子と、ビニルモノマーと、シリコーンマクロマーとの反応生成物を含む。
【0008】
(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子
本発明のコポリマーで有用なナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、又は酸化チタンを含む。酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、又は酸化チタン(チタニア)ナノ粒子は、(メタ)アクリレート表面改質を有して、官能化ナノ粒子が反応性ビニルモノマー及びシリコーンマクロマーと共重合することを可能にする。好ましくは、(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子は、シリカナノ粒子である。
【0009】
本発明で有用なナノ粒子は、典型的には、約1nm〜約150nmの平均粒径を特徴とする。本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子直径」(又は「ナノ粒子サイズ」)は、ナノ粒子の最大断片寸法を指す。好ましくは、ナノ粒子は実質的に球形状であり、サイズは比較的均一であり、実質的に凝集していないままである。
【0010】
ジルコニアナノ粒子は、典型的には、約5〜約150nm(好ましくは、約5〜約75nm;より好ましくは、約5〜約25nm;最も好ましくは、約5〜約15nm)の粒径を有する。本発明で有用なジルコニアナノ粒子は、Nalco Company(Naperville、IL)から商品名Nalco(商標)OOSSOO8として、Buhler(Uzweil、Switzerland)から商品名WO又はWOSとして市販されている。ジルコニアナノ粒子はまた、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に記載されているように調製できる。
【0011】
チタニアナノ粒子は、典型的には、約5〜約50nm(好ましくは、約5〜約15nm;より好ましくは約10nm)の粒径を有する。本発明で有用なチタニアナノ粒子は、mknano(M.K.Impex Cananda、Ontarioの事業部)から市販されている。
【0012】
シリカナノ粒子は、典型的には、約5nm〜約100nm(好ましくは、約5nm〜約20nm;より好ましくは約5nm、約8nm、又は約20nm)の粒径を有する。
【0013】
本発明で使用するために官能化できるシリカナノ粒子の好ましい部類は、シリカ、ジルコニア、又はチタニア酸化物のゾルである。非晶質、半結晶質、及び/又は結晶質シリカのゾルが特に有用である。このようなゾルは、種々の技術により調製でき、種々の形態であってもよく、形態としてはヒドロゾル(水が液体媒質として機能する場合)、オルガノゾル(有機液体が用いられる場合)、及び混合ゾル(液体媒質が水及び有機液体の両方を含む場合)が挙げられる。技術及び形態の詳細は、例えば、米国特許第2,801,185号(Iler);同第4,522,958号(Dasら);及び同第5,648,407号(Goetzら)に記載されている。
【0014】
有用なシリカナノ粒子はまた、例えば、Nalco Company(Naperville、IL)(例えば、Nalco(商標)1040、1042、1050、1060、1130、2326、2327、及び2329コロイドシリカ)及びW.R.Grace&Co.(例えば、Ludox(商標)コロイドシリカ)のような供給業者からコロイド分散液又はゾルとして市販のものを入手することができる。好ましい市販のシリカナノ粒子としては、Nalco(商標)1130、Nalco(商標)2326、及びNalco(商標)2327が挙げられる。Nalco(商標)1130シリカナノ粒子が最も好ましい。
【0015】
(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子は、例えば、(メタ)アクリレートシランカップリング剤のようなカップリング剤を用いて調製できる。好ましいカップリング剤としては、例えば、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(A−174シラン)、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Z−6030シラン)、及びメタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン(M−8542シラン)が挙げられる。A−174シランが、最も好ましいシランカップリング剤である。
【0016】
メタクリルオキシシラン表面官能化シリカゾルの調製は、例えば、米国特許第7,101,616号(Arneyら)に記載されている。アクリルオキシシラン及びメタクリルオキシシラン表面官能化ナノ粒子の調製は両方とも、例えば、国際特許公開第2006/073856号に記載されている。
【0017】
好ましい(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子は、以下の一般式:
【0018】
【化1】

【0019】
により表すことができる。
【0020】
ビニルモノマー
本発明のコポリマーを作製するのに有用なビニルモノマーの例としては、(メタ)アクリレート、アリル化合物、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。有用なビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシドデシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニル2−ピロリドン、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸、2−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
好ましいモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーが用いられ、より好ましくは、メチルアクリレート及びアクリル酸が用いられる。
【0023】
シリコーンマクロマー
本発明のコポリマーの作製において有用であるシリコーンマクロマーは、単一官能基(すなわち、ビニル基)を有する終端官能性ポリマーである。有用なシリコーンマクロマーは、例えば、米国特許第4,728,571号(Clemensら)に記載されている。このようなマクロマーは、以下の式:
X−(Y)−Si(R)3−m
(式中、
Xはビニル基であり、
Yは二価結合基であり、
nは0又は1であり、
Rは水素、アルキル、アリール、又はアルコキシであり、
mは1〜3の整数であり、
Zは、約1,000を超える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、共重合条件下で本質的に非反応性である)により表すことができる。
【0024】
好ましいシリコーンマクロマーは、以下の一般式:
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、R1は水素又はCOOHであり、R2は水素、メチル、又はCHCOOHである)を有するX基を有すると更に定義することができる。
【0027】
Z基は、以下の一般式:
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R3及びR5は、独立して、アルキル、アリール、又はフルオロアルキルであり、R4は、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシル、又はフルオロアルキルであり、rは約5〜約700の整数である)を有する。好ましくは、R3及びR5は、独立して、メチル、エチル、又はプロピルである。
【0030】
好ましくは、シリコーンマクロマーは、以下のものからなる群から選択される一般式を有し、式中mは1、2、又は3であり;pは0又は1であり;R”はアルキル又は水素であり;X、R、及びZは上記定義の通りである:
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、qは2〜6の整数である);
X−Si(R)3−m
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、qは0〜2の整数である);
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、qは2〜6の整数である);
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、qは2〜6の整数である)。
【0039】
好ましくは、シリコーンマクロマーは、約1,000〜約50,000(より好ましくは、約5,000〜約25,000;最も好ましくは約10,000)の範囲の分子量を有する。
【0040】
特に好ましいシリコーンマクロマーは、以下の式:
【0041】
【化8】

【0042】
(式中、tは約10〜約400である)により表すことができる。
【0043】
シリコーンマクロマー(又は「マクロモノマー」)は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第3,786,116号(Milkovichら)及び同第3,842,059号(Milkovichら)に開示されている方法により調製できる。ポリジメチルシロキサンマクロモノマーの調製、及びその後のビニルモノマーとの共重合は、Y.Yamashitaらによるいくつかの論文(例えば、Polymer J.、14、913(1982);ACS Polymer Preprints、25(1)、245(1984);Makromol.Chem.、185、9(1984))に記載されている。このマクロモノマー調製法は、制御された分子量のリビングポリマーを形成するために、ヘキサメチルシクロトリシロキサンモノマー(D)のアニオン重合を伴い、重合可能なビニル基を備えるクロロシラン化合物を介して、停止反応を実現させる。
【0044】
上述のアニオン重合に使用するのに好適なモノマーは、一般に、以下の式:
【0045】
【化9】

【0046】
(式中、R3及びR5は既に定義したものであり、rは3〜7の整数である)のジオルガノシクロシロキサンである。好ましいのは、rが3又は4であり、R3及びR5が両方メチルである環状シロキサンであり、これらの環状シロキサンは以後それぞれD及びDと表記する。D(拘束された環状構造である)が特に好ましい。
【0047】
アニオン重合の反応開始剤は、一官能性リビングポリマーが生成されるように選択される。好適な反応開始剤としては、アルキル又はアリールラジカルに最大20個の炭素原子、より好ましくは最大8個の炭素原子を含有する、アルキル又はアリールリチウム、ナトリウム、又はカリウム化合物のような、アルカリ金属炭化水素が挙げられる。このような化合物の例は、エチルナトリウム、プロピルナトリウム、フェニルナトリウム、ブチルカリウム、オクチルカリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、及び2−エチルヘキシルリチウムである。リチウム化合物が、反応開始剤として好ましい。また反応開始剤として好適なのは、アルカリ金属アルコキシド、ヒドロキシド、及びアミン、並びに以下の式:
【0048】
【化10】

【0049】
(式中、Mはアルカリ金属、テトラアルキルアンモニウム、又はテトラアルキルホスホニウムカチオンであり、R3、R4、及びR5は既に定義の通りである)のトリオルガノシロキサンである。好ましいトリオルガノシラノレート反応開始剤は、リチウムトリメチルシラノレート(LTMS)である。一般に、拘束された環状モノマー及びリチウム反応開始剤の両方の好ましい使用は、再分布反応の可能性を低減し、それにより望まない環状オリゴマーを合理的に含まない、分子量分布の狭いシロキサンマクロモノマーを提供する。
【0050】
分子量は、反応開始剤/環状モノマー比により決定され、よって反応開始剤の量は、モノマー1モルあたり有機金属反応開始剤約0.004〜約0.2モルの範囲で変動する。好ましくは、量は、モノマー1モルあたり約0.008〜約0.04モルの反応開始剤である。
【0051】
アニオン重合の反応開始では、不活性、好ましくは極性有機溶媒を利用できる。リチウム対イオンによるアニオン重合成長は、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、若しくはヘキサメチル亜リン酸トリアミドのような強極性溶媒、又はこのような極性溶媒と、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、若しくはトルエンのような非極性脂肪族、脂環式、若しくは芳香族炭化水素溶媒との混合物のいずれかを必要とする。極性溶媒は、シラノレートイオンを「活性化」するよう機能し、それにより成長が可能になる。
【0052】
一般に、重合は、約−20℃〜約100℃、好ましくは約−10℃〜約30℃の範囲の温度で実行できる。無水条件及び窒素、ヘリウム、又はアルゴンのような不活性雰囲気が、典型的には必要である。
【0053】
アニオン重合の終端は、一般に、リビングポリマーアニオンとハロゲン含有終端剤、すなわち、官能化クロロシランとの直接反応を介して達成されて、ビニル終端ポリマー性モノマーを生成する。このような終端剤は、一般式X−(Y)−Si(R)3−mCl(式中、mは1、2、又は3であり、X、Y、n、及びRは既に定義した通りである)により表すことができる。好ましい終端剤は、メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシランである。終端反応は、重合温度において、わずかにモル過剰な終端剤(反応開始剤の量に比べて)を、リビングポリマーに添加することにより実行される。前述のY.Yamashitaらによる論文によると、マクロモノマーの官能性を高めるために、終端剤の添加後、反応混合物に超音波を照射してもよい。マクロモノマーの精製は、メタノール中での沈殿により影響を受ける場合がある。
【0054】
コポリマー
本発明は、ビニル部分に重合されたシリカナノ粒子を有するビニル−シリコーングラフトコポリマーを提供する。本発明のコポリマーは、一般に、以下の式:
【0055】
【化11】

【0056】
(式中、
【0057】
【化12】

【0058】
はシリカナノ粒子を表し、
R’は−X−(Y)−Si(R)3−m(式中、X、Y、n、R、m、及びZは上記の通りである)であり、
Qは、約500〜約100,000(好ましくは、約4,000〜約20,000)の平均分子量を有するビニルポリマーセグメントである)により表される。
【0059】
好ましくは、Qは、(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成されるランダムコポリマーである。より好ましくは、Qは、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成される。Qは、好ましくは、約4,000〜約20,000の平均分子量を有する。
【0060】
好ましくは、X、Y、n、R、m、及びZは上記の通りである。より好ましくは、R’は
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、tは約10〜約400である)である。
【0063】
当業者は、上式が単に本発明の1つの可能なコポリマーの提示として与えられたものであり、本発明のコポリマーを限定する意図はないことを理解する。当業者は、例えば、シリカ粒子が、それに付着した4つ超又は未満のビニル−シリコーンコポリマー「分岐」を有してもよく、−OH基のいくつかは更に反応し、架橋してもよいことを理解する。
【0064】
方法
本発明のコポリマーは、Ulrichの米国再発行特許第24,906号に記載のような従来のフリーラジカル重合により共重合され得る。モノマーは、不活性有機溶媒に溶解し、熱的に又は光化学的に活性化され得る好適なフリーラジカル反応開始剤を利用して重合される。好適な反応開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロンイトリル)のようなアゾ化合物、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド、及び過酸化ベンゾイル又は過酸化シクロヘキサノンのような過酸化物が挙げられる。使用される反応開始剤の量は、一般に、総重合性組成物の約0.01〜約5重量%である。
【0065】
フリーラジカル共重合に使用される有機溶媒は、反応体及び生成物に対し不活性であり、そうでなければ反応に悪影響を及ぼさない、任意の有機液体であることができる。好適な溶媒としては、酢酸エチル、並びに酢酸エチルとトルエン、ヘプタンとトルエン及びイソプロピルアルコール、及びヘプタンとトルエン及びメチルアルコールのような混合物が挙げられる。他の溶媒系も有用である。溶媒の量は、一般に、反応体及び溶媒の総重量の約30〜80重量%である。溶液重合に加えて、共重合は、懸濁、乳化、及びバルク重合のような他の周知の技術により実行してもよい。
【0066】
好ましいグラフト化技術は、(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子、ビニルモノマー、及びシリコーンマクロマーの共重合を含む。しかしながら、他のグラフト化技術を使用してもよい。
【0067】
ビニルモノマーの充填、反応開始剤、シリコーンマクロマー、官能化シリカナノ粒子、及び溶媒を、適切な容器に充填することができる。典型的には、ビニルモノマー、シリコーンマクロマー、及びナノ粒子の総重量を基準として、シリコーンマクロマーは約5〜約60重量%の量存在し、ナノ粒子は約1〜約10重量%の量存在する。
【0068】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子とビニルモノマー及びシリコーンマクロマーの重量比は、約10:90以下(好ましくは約5:95以下、より好ましくは約2:98)である。いくつかの実施形態では、シリコーンマクロマーとビニルモノマーの重量比は、約10:90〜約30:70である。
【0069】
本発明のコポリマーは、必要なとき又は望ましいとき、物理的特性を最適化するために、適合性変性剤とブレンドしてもよい。このような変性剤の使用は、当該技術分野において一般的である。例えば、顔料、充填剤、安定剤、又は種々のポリマー添加剤のような材料を含むことが望ましい場合もある。
【0070】
使用
驚くべきことに、ビニルモノマー、シリコーンマクロマー、及び(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子の重合では、ゲル化が生じない。ゲルは、ポリマー鎖の架橋により無限網状構造として形成される単一の巨大分子であり、よってその分解温度未満では全ての溶媒に対して不溶性である(例えば、Principles of Polymerization、第3版、Wiley&Sons、p.108、(1991年)を参照)。
【0071】
本発明のコポリマーは、それ故、コーティング可能な組成物で利用できる。本明細書で使用するとき、用語「コーティング可能」又は「コーティング可能な組成物」は、組成物が溶媒若しくは水に可溶性又は分散性であり、実質的にゲルを含まず、標準的なコーティング方法を用いて基材に適用できることを意味する。必要に応じて、コーティング可能な組成物は、基材をコーティングする前に、液体(例えば、水及び/又は有機溶媒)で希釈してもよく、又はそれに分散させてもよい。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の重量を基準として、約2〜約20パーセントの固形分(より好ましくは、約5〜約10パーセント)を含有する。
【0072】
コーティング可能な組成物は、例えば、噴霧、パディング、浸漬、ロールコーティング、はけ塗り、又は染着のような標準的な方法により基材(又は基材を含む物品)に塗布できる。次いで、組成物を乾燥させて、残りの水又は溶媒を全て除去することができる。
【0073】
コーティング可能な組成物は、剥離剤コーティングとして有用であり、接着剤からの剥離特性を必要とする表面に塗布できる。本発明の剥離剤組成物を調製する1つの方法は、高純度のコポリマーを提供することであり、これは重合溶媒から直接コーティングされ得る。反応体コーティングは、硬化又は架橋を必要としない。しかしながら、特定の用途にとって溶媒耐性が望ましい場合、放射線硬化(電子ビーム又は紫外線)又は化学的架橋のような、当該技術分野において周知である標準的な方法により、架橋がもたらされる場合がある。
【0074】
本発明の剥離剤コーティングは、固体基材用コーティングとしての使用に最も適しており、固体基材はシート、線維、又は成形物品であってもよい。しかしながら、好ましい基材は、感圧接着剤製品に使用される可撓性基材である。好適な基材としては、紙、金属シート及び箔、不織布、並びにポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のような熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられるが、接着剤に対する剥離剤を必要とする任意の表面を用いることができる。当該技術分野において既知である下塗り剤を利用して、基材へのコーティングの接着を補助してもよいが、一般的には必要ない。
【0075】
剥離剤コーティング組成物は、従来のコーティング技術を用いて好適な基材に適用することができる。反応体コーティングは、天然ゴム系、アクリル系、及び他の合成フィルム形成エラストマー系接着剤のような広範な従来の感圧性接着剤に有効な剥離剤を提供する。剥離剤コーティング組成物は、高温多湿条件下でさえ、安定な引き剥がし力及び良好な再接着力を提供する。
【0076】
剥離剤コーティング組成物は、剥離ライナ、及びコーティングされたシート材料(例えば、第1の主表面の少なくとも一部を被覆する剥離剤コーティングと、第2の主表面の少なくとも一部を被覆する接着剤を有する可撓性シート)において特に有用である。有利なことに、コーティングされたシート材料上の本発明の剥離剤コーティングは、水性及び油性インク(例えば、インクペン又はマーカー)を受け入れることができる。
【実施例】
【0077】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0078】
【表1】

【0079】
メタクリル改質(A−174改質)5nmシリカ粒子の合成
Nalco 2326シリカゾル(400g)、イソオクチルシラン(5.4g)、A−174シラン(32.6g)、エタノール/メタノールの80/20混合物(320g)、及びProStab(商標)5198(0.016g)を、攪拌棒、真空ポンプ、冷水コンデンサ、及び熱油浴を備える1Lの1つ口丸底フラスコに充填した。熱油浴にはTherm−o−Watch(TOW)コントローラを用いた。分散液を80℃に設定したTOWを用いて4時間還流させた。次いで、分散液を、真空蒸留を介して、水及びアルコールからMEKへ溶媒交換した。得られた表面改質ナノシリカ分散液の固形分はMEK中およそ35%であった。
【0080】
メタクリル改質(A−174改質)8nmシリカ粒子の合成
Nalco 1130シリカゾル(400g)、イソオクチルシラン(6.0g)、A−174シラン(36.7g)、エタノール/メタノールの80/20混合物(320g)、及びProStab(商標)5198(0.016g)を、攪拌棒、真空ポンプ、冷水コンデンサ、及び熱油浴を備える1Lの3つ口丸底フラスコに充填した。熱油浴にはTherm−o−Watch(TOW)コントローラを用いた。分散液を80℃に設定したTOWを用いて4時間還流させた。次いで、分散液を、真空蒸留を介して、水及びアルコールからMEKへ溶媒交換した。得られた表面改質ナノシリカ分散液の固形分はMEK中およそ32.2%であった。
【0081】
比較例1:SiMac/IBMAの合成
細口クオートジャーに、72gのSiMac、48gのIBMA、180gのMEK、及び0.3602gのVAZO 64を充填した。得られた均質な混合物を5分間Nパージした。瓶を密封し、55℃の熱水浴中で24時間混転させた。最終固形分はMEK中39.1%であった。
【0082】
実施例1:SiMac/IBMA/A−174改質5nmシリカ、60/35/5:
細口クオートジャーに、72gのSiMac、42gのIBMA(イソブチルメタクリレート)、17.14gのA−174改質シリカ(MEK中35%固形分)、168.86gのMEK、及び0.3602gのVAZO 64を充填した。得られた均質な混合物を5分間Nパージした。瓶を密封し、55℃の熱水浴中で24時間混転させた。最終固形分はMEK中39.4%であった。ゲルは観察されなかった。
【0083】
比較例2:MA/NVP/SiMac/AAの合成
細口クオートジャーに、23.5gのMA(メチルアクリレート)、18.3gのNVP(N−ビニルピロリドン)、2.6gのAA(アクリル酸)、15.7gのSiMac、160gのMEK、及び0.1809gのVAZO 64を充填した。得られた均質な混合物を5分間Nパージした。瓶を密封し、55℃の熱水浴中で24時間混転させた。最終固形分は29.1%であった。溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)上にコーティングする前に、IPA/トルエンの50/50ブレンドで12.5%固形分に希釈した。
【0084】
実施例2:MA/NVP/SiMac/AA/A−174 5nm改質シリカの合成
細口クオートジャーに、23.1gのMA(メチルアクリレート)、17.9gのNVP(N−ビニルピロリドン)、2.6gのAA(アクリル酸)、15.4gのSiMac、2.9gのA−174改質シリカ(MEK中35%固形分)、158gのMEK、及び0.1809gのVAZO 64を充填した。得られた均質な混合物を5分間Nパージした。瓶を密封し、55℃の熱水浴中で24時間混転させた。最終固形分は29.2%であった。溶液を、PET上にコーティングする前に、IPA/トルエンの50/50ブレンドで12.5%固形分に希釈した。
【0085】
実施例3:MA/NVP/SiMac/AA/A−174 5nm改質シリカの合成
細口クオートジャーに、22.5gのMA(メチルアクリレート)、17.5gのNVP(N−ビニルピロリドン)、2.5gのAA(アクリル酸)、15gのSiMac、7.2gのA−174改質シリカ(MEK中35%固形分)、155.3gのMEK、及び0.1809gのVAZO 64を充填した。得られた均質な混合物を5分間Nパージした。瓶を密封し、55℃の熱水浴中で24時間混転させた。最終固形分は39.1%であった。溶液を、PET上にコーティングする前に、IPA/トルエンの50/50ブレンドで12.5%固形分に希釈した。
【0086】
接着力試験
比較例2並びに実施例2及び3の溶液を、#3メイヤーロッドを用いてPET(35.6マイクロメートル(1.4mil)2SAB、Mitsubishiから入手可能)上にコーティングし、得られたコーティングを65℃で30分間乾燥させた。Post−it(商標)Easelパッド(3M Companyから入手可能)に対してコーティングを積層させ、30秒間20.7MPa(3000psi)で加圧した。本発明の剥離剤コーティングから接着剤でコーティングされた2.54cm(1”)ストリップを除去し又は引き剥がし、次いでガラスプレート上にストリップを積層することにより、21℃の一定温度及び50%の一定湿度(CT/CH)で5日間、及び49℃で5日間エージングした後、ASTM D3330に従って接着力を測定した。接着力結果を、以下の表に列挙する。
【0087】
【表2】

【0088】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリカナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、チタニアナノ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子と、
(b)ビニルモノマーと、
(c)以下の式により表されるシリコーンマクロマーと、
X−(Y)−Si(R)3−m
(式中、
Xはビニル基であり、
Yは、二価結合基であり、
nは0又は1であり、
Rは水素、アルキル、アリール、又はアルコキシであり、
mは1〜3の整数であり、
Zは、約1,000を超える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、共重合条件下で本質的に非反応性である)の反応生成物を含むコポリマー。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子が、シリカナノ粒子である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子が、シリカナノ粒子と3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとの前記反応生成物である、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート官能化ナノ粒子が、以下の式:
【化1】

(式中、
【化2】

はシリカナノ粒子を表す)により表される、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、約5nm〜約100nmの平均粒径を有する、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、約5nm、約8nm、又は約20nmの平均粒径を有する、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
Xが以下の式:
【化3】

(式中、R1は水素又はCOOHであり、R2は水素、メチル、又はCHCOOHである)により表される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
R1がメチル、エチル、又はプロピルである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項9】
Zが以下の式:
【化4】

(式中、R3及びR5は、独立して、アルキル、アリール、又はフルオロアルキルであり、R4は、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシル、又はフルオロアルキルであり、rは約5〜約700の整数である)により表される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
R3及びR5が独立してメチル、エチル、又はプロピルである、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記シリコーンマクロマーが、以下の式:
【化5】

(式中、tは約10〜約400である)により表される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記シリコーンマクロマーが、約1,000〜約50,000の数平均分子量を有する、請求項1又は11に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記ビニルモノマーが、(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項14】
前記ビニルモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
前記コポリマーの前記ビニルポリマーセグメントが、約500〜約100,000の平均分子量を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項16】
(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子とビニルモノマー及びシリコーンマクロマーの重量比が、約10:90以下である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項17】
(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子とビニルモノマー及びシリコーンマクロマーの重量比が、約5:95以下である、請求項16に記載のコポリマー。
【請求項18】
(メタ)アクリレート官能化シリカナノ粒子とビニルモノマー及びシリコーンマクロマーの重量比が、約2:98である、請求項17に記載のコポリマー。
【請求項19】
シリコーンマクロマーとビニルモノマーの重量比が、約10:90〜約40:60である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項20】
組成物がコーティング可能である、請求項1に記載のコポリマーを含む組成物。
【請求項21】
前記組成物が剥離剤コーティングである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の組成物でコーティングされた1つ以上の表面を有する基材を備える物品。
【請求項23】
前記基材が、紙、金属シート、金属箔、不織布、又は熱可塑性樹脂のフィルムを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記基材が紙シートである、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記物品が剥離ライナである、請求項22に記載の物品。
【請求項26】
第1の主表面の少なくとも一部を被覆する請求項21に記載の剥離剤コーティングを有する可撓性シートと、第2の主表面の少なくとも一部を被覆する接着剤と、を含む、コーティングされたシート材料。

【公表番号】特表2011−508811(P2011−508811A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540814(P2010−540814)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087641
【国際公開番号】WO2009/086079
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】