説明

ナノ粒子の製造方法

(a)(1)少なくとも1つの塩基と、(2)(i)両性金属酸化物若しくはオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン、及び(ii)乳酸アニオン若しくはチオ乳酸アニオンを含む少なくとも1つのカルボン酸金属塩、又は(i)該金属カチオンと非妨害アニオンとを含む少なくとも1つの金属塩、及び(ii)乳酸若しくはチオ乳酸、非妨害非金属カチオンの乳酸塩若しくはチオ乳酸塩、又はこれらの混合物を含むカルボン酸金属塩前駆体とを組み合わせる工程と、(b)該塩基と該カルボン酸金属塩又は該カルボン酸金属塩前駆体とを反応させる工程と、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第61/015、990号及び同第61/016、048号(2007年12月21日出願)の優先権を主張し、その内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、金属酸化物又は金属オキシ水酸化物粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属酸化物は、非常に多くの用途を有する。具体的には、酸化亜鉛は、例えば白色顔料として、触媒として、抗菌皮膚保護軟膏の構成成分として、及びゴム加硫用活性化剤としての使用を含む、多様な目的に使用される。日焼け止め剤及び木材用ニスは、超微粒子状酸化亜鉛を紫外線(UV)吸収顔料として含有する。
【0004】
酸化亜鉛は、紫外線への長期曝露時に劣化しないことから、UV吸収剤として有用である。ただし、その粒径が20ナノメートル(nm)未満のとき、量子閉じ込めにより、粒径の縮小に伴ってバンドギャップはより高エネルギーにシフトする。酸化亜鉛に吸収されるUV波長の数を最大にするため、半導体のバルクバンドギャップにできるだけ近いバンドギャップを有する粒子が望ましい。粒径が小さい程、粒子バルク材料のバンドギャップからのシフトが大きくなるため、少なくとも約5nmの結晶粒子直径が一般的に有用となり得る。このような粒子直径は、バルク材料に相対的に近いバンドギャップ値を提供し、その結果相対的に広い範囲の吸収波長が得られる。
【0005】
ただし、酸化亜鉛のナノ粒子は、十分に小さい場合があり、そのためごく微量の可視光線しか散乱しない。それ故、UV吸収性であるが可視光線透過性である複合材料(例えば、透明な有機−無機ハイブリッド材料、塑性体、塗料及びコーティング)は、酸化亜鉛ナノ粒子を充填剤として使用して作製することができる。光透過性を維持するため、粒子直径(及び存在する任意の粒塊の直径)は一般的に、光の波長の約10分の1未満(例えば、約30nm未満)であることが必要である。
【0006】
乾式及び湿式の両方法による酸化亜鉛の調製が既知である。亜鉛を燃焼する古典的な乾式方法は、広い粒度分布を有する凝集した粒子を生成する。特に超微粒子状酸化亜鉛は、沈殿プロセスを用いる湿式化学方法によって主として調製される。水溶液中での沈殿は、一般的に酸化亜鉛への熱的変換を要する水酸化物及び/又は炭酸塩含有材料をもたらす。熱的後処理は、粒子がこの処理中にマイクロメートル(μm)サイズの粒塊の形成を招き得る焼結プロセスを経ることから、粒子の超微粒子性にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。これらの粒塊は、ミリング又は粉砕によって、一次粒子の不完全な破砕のみが可能である。
【0007】
非水性溶液(又は水酸化亜鉛の分解温度を超える水溶液)中で、酸化亜鉛は次式に従う単純な塩基沈殿により成長する(式中Xは一般的に好適なアニオンであり、Yは好適なカチオンである)。
【0008】
ZnX+2YOH→ZnO+2YX+H
粒子の成長は、オストワルド熟成プロセスを通じて起こり、拡散依存性である。そのため、8nm以上の直径の粒子を所望する場合、粒子成長は室温でかなり低速である。反応温度の上昇は、プロセスを妥当な速度まで速めることができるが、これは同時に凝縮作用の速度を増大する。
【0009】
種々の一般的な亜鉛塩(例えば、酢酸亜鉛)は、そのような非水性沈殿プロセスにおける出発塩として使用されてきた。ただし、このような出発塩は、相対的に速い速度の凝集作用を避けるために、一般的に希釈溶液の使用を必要とし、このような塩類から成長した酸化亜鉛は透明性を必要とする用途に適さない粒塊を生成する傾向がある。
【0010】
ナノサイズの酸化亜鉛粒子を調製するその他の方法は、高価な出発物質(例えば、亜鉛アルコキシド)を使用し、乳化剤の使用を必要とし、複雑であり、粒塊をもたらし、低速の粒子成長をもたらし、粒径制御が不十分であり、及び/又は好ましい粒径(例えば、平均一次粒子直径が約5〜約30nm)を提供することが不可能であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、本発明者らは、粒子凝縮作用を最小限に抑える、又は排除さえすることができ、同時に所望の一次粒径まで粒子を成長させることができる、金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子(具体的には、酸化亜鉛ナノ粒子)を製造する方法の必要性が存在すると認識している。好ましい方法は、簡単で、費用効果が高く、及び/又は最終粒径の制御が可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡潔には、1つの態様では、本発明は、(a)(1)少なくとも1つの塩基と、(2)(i)両性金属酸化物若しくはオキシ水酸化物(最も好ましくは亜鉛)を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン、及び(ii)乳酸アニオン若しくはチオ乳酸アニオン(好ましくは乳酸アニオン)を含む少なくとも1つのカルボン酸金属塩、又は(i)金属カチオンと非妨害アニオン(すなわち、塩基と反応性ではないアニオン)とを含む少なくとも1つの金属塩、及び(ii)乳酸若しくはチオ乳酸(好ましくは乳酸)、非妨害非金属カチオン(例えばテトラアルキルアンモニウム、好ましくはテトラメチルアンモニウム)の乳酸塩若しくはチオ乳酸塩、又はこれらの混合物を含むカルボン酸金属塩前駆体と(好ましくは少なくとも1つの溶媒中で)を組み合わせる工程と、(b)塩基とカルボン酸金属塩又はカルボン酸塩前駆体とを反応させる(例えば金属酸化物若しくは金属水酸化物を形成する)工程と、を含む、方法を提供する。
【0013】
前述のカルボン酸金属塩又はカルボン酸金属塩前駆体の塩基性沈殿プロセスにおける使用は、実質的に非粒塊の金属酸化物又は金属オキシ水酸化物のナノ粒子の調製を可能とし得ることが発見された。加えて、塩類又はそれらの前駆体は、ナノ粒子が好ましいより大きな平均一次粒径(例えば、4〜5nmを超える平均一次粒子直径)まで成長することを可能とし得る。この方法の好ましい実施形態は、例えば、反応温度及び/又は時間を変えることで、平均一次粒径の制御を可能とする。
【0014】
それ故、本発明の方法は、酸化亜鉛ナノ粒子の製造に特に有利となり得る。本方法は、例えば、約5nm〜約10nm又はそれ以上の範囲の平均一次粒子直径を有する酸化亜鉛ナノ粒子を提供するのに使用できる。このようなナノ粒子は、UV吸収性、可視光線透過性の複合材料を、吸収特性の調整を更に可能とする方法によって提供される粒径制御を行いながら製造する際の使用に十分に好適であることができる。
【0015】
加えて、本発明の方法は相対的に単純であり、相対的に安価な出発化合物であるカルボン酸金属塩又はカルボン酸金属塩前駆体を利用する。それ故、少なくとも好ましい実施形態において、本方法は、粒子凝集作用を最低限に抑えることができ、同時に所望の一次粒径まで粒子を成長させる、金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子(特に、酸化亜鉛ナノ粒子)を製造するための簡単で費用効果の高い方法に対する当該技術分野における前述の必要性を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様及び利点は、次の説明、添付した請求項及び添付した図面でよりよく理解されるであろう。
【図1】比較例1(酢酸亜鉛、Zn(Ac)のみ使用)及び実施例1、2、3及び4(様々なZn(Ac)対乳酸亜鉛、Zn(Lac)の比を使用)に記載された方法の実施形態の、時間に対する平均一次粒子直径のプロット。
【図2】比較例1(酢酸亜鉛、Zn(Ac)のみ使用)及び実施例1、2、3及び4(様々なZn(Ac)対乳酸亜鉛、Zn(Lac)の比を使用)に記載された方法の実施形態の、時間に対する平均凝集粒子直径の対数のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本特許出願で使用されるとき、
「凝集作用」は一次粒子の会合を意味し、相対的に弱から(例えば、電荷又は極性に基づいて)相対的に強(例えば、化学結合に基づいて)まで及び得る。
【0018】
「両性」(金属酸化物又は金属オキシ水酸化物に言及して)はブレンステッド/ローリーの酸及び塩基の両方として機能し得ることを意味する。
【0019】
「ナノ粒子」は約100nm未満の直径を有する粒子を意味する。
【0020】
「一次粒径又は直径」は非会合単結晶粒子の大きさ又は直径を意味する。
【0021】
「ゾル」は液相中のコロイド粒子の分散液又は懸濁液を意味する。
【0022】
塩基
本発明の方法での使用に好適となり得る塩基としては、ヒドロキシル基含有塩基化合物及びこれらの混合物が挙げられる。有用な化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム(例えば、その相対的な低コストにより)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(例えば、その広範な有機溶媒への溶解度により)、及びこれらの混合物が挙げられる。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドがより好ましい。
【0023】
塩基は固体形態(例えば、NaOH若しくはKOHペレットとして)又は極性有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルカノール)の溶液の形態で使用できる。広範な濃度が有用となり得る(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、メタノール中25重量%という市販濃度で使用できる)。本発明の方法の好ましい実施形態において、塩基は溶液の形態で、カルボン酸金属塩又はカルボン酸金属塩前駆体の溶液に添加できる。塩基の溶解に有用な溶媒としては、アセトン、ジエチルエーテル、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルなど、及びこれらの混合物が挙げられ、アルカノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0024】

本発明の方法での使用に好適なカルボン酸金属塩としては、(i)両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン、及び(ii)乳酸アニオン又はチオ乳酸アニオンを含むものが挙げられる。好適な金属としては、Be、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Poなど及びこれらの混合物が挙げられる。こうした金属の好ましいカチオンとしては、Be+2、Ti+4、V+4、V+5、Mn+4、Cr+3、Cr+4、Fe+3、Fe+4、Co+3/Co+2(混合酸化状態の化合物)、Ni+3、Ni+4、Al+3、Zn+2、Ga+3、In+3、Ge+2、Sn+2、Sn+4、Pb+2、As+3、Sb+3、Bi+3、Te+4、Po+4など及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
好ましい金属としてはTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、Ti、Al、Zn、Ga、In及びこれらの混合物であり、Znが最も好ましい。所望であれば、塩類はその他の金属カチオン(非両性)を(例えば、金属カチオンの全モル数を基準として約10モル%までの濃度で)含むことができるが、好ましくは塩中のすべての金属が両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成するものから選択される。
【0026】
有用なカルボン酸金属塩の部類は、次の一般式によって表すことができる。
【0027】
[CHCH(Y)COO[X+(m+n) (I)
式中、各Yは独立して−OH又は−SHであり、Xは非妨害アニオン(すなわち、塩基と反応性のないアニオン)であり、m及びnは合計m+nが金属カチオンMの電荷と等しいような値を有する整数であり、(金属カチオンの合計モル数に基づいて)少なくとも約90モル%(好ましくは少なくとも約95モル%、より好ましくは約100モル%)のMはBe、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Po及びこれらの混合物から選択される。
【0028】
好ましくは、Yは−OHであり、Xはハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、蟻酸イオン、プロピオン酸イオン、硫酸イオン、臭素酸イオン、過塩素酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、R’(OR)Z(OR)(CHCOO、(式中、R’は1〜約4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、各Rは独立して1〜約4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキレン部分であり、xは0〜4の整数であり、Zは2価の有機架橋部分(例えば、共有結合、−S−、−C(O)O−、−C=C−及び−C(O)NH−、並びにこれらの組み合わせからなる群から非方向的に選択される部分)であり、wはx+wの合計が1〜4の整数であるという条件で0〜4の整数であり、yは0〜約3の整数である)、及び塩素酸イオン、並びにこれらの混合物(より好ましくは、塩化物イオン、酢酸イオン及びこれらの混合物、最も好ましくは酢酸イオン)から選択されるアニオンであり、並びに/又はMはTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb及びこれらの混合物(より好ましくはTi、Al、Zn、Ga、In及びこれらの混合物、最も好ましくは亜鉛)から選択される。
【0029】
有用なカルボン酸金属塩の代表例としては、乳酸金属塩、チオ乳酸金属塩及びこれらの混合物が挙げられ、金属優先順位は上に記載される。より好ましいカルボン酸金属塩としては、乳酸亜鉛、チオ乳酸亜鉛及びこれらの混合物が挙げられる。乳酸亜鉛(Zn(Lac)として示され得る)が最も好ましい。
【0030】
このようなカルボン酸金属塩は、乳酸又はチオ乳酸で置換できるアニオンを有する対応する金属塩から調製できる。有用な出発金属塩としては、オキシ硝酸金属塩、金属オキシ塩化物、炭酸金属塩、酢酸金属塩、蟻酸金属塩、プロピオン酸金属塩、硝酸金属塩、金属塩化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。このような塩類の多くは市販されている。乳酸金属塩及びチオ乳酸金属塩は、このような出発金属塩と、Aldrich Chemical Company(St.Louis、MO)から市販されている乳酸又はチオ乳酸との反応によって得ることができる。
【0031】
乳酸又はチオ乳酸を、例えば、出発金属塩の水溶液に添加し、次いで得られた混合物を、例えば約120℃のオーブン内で一晩乾燥させることができる。あるいは、塩基(例えば水酸化ナトリウム)を出発金属塩の水溶液に添加して沈殿(例えば金属水酸化物)を生成させて、乳酸又はチオ乳酸を添加する前にこれを(例えば濾過によって)回収し、(例えば、相対的に低温の水中で)洗浄し、水中に分散させることができる。得られた混合物は、一晩攪拌しながら、例えば約70℃に加熱することによって反応させることができる。得られたカルボン酸金属塩は、(例えば、得られた濾液の濾過、及びそれに続く回転蒸発によって)単離して(例えば真空オーブン内で)乾燥させることができる。出発金属塩と乳酸又はチオ乳酸とを組み合わせる、その他の順序及び方法を利用してもよい。一般的に化学量論的な量の出発金属塩及び酸を使用することができるが、化学量論的に過剰ないずれかの反応物質が有用となり得る。
【0032】
前述のカルボン酸金属塩(類)は本発明の方法において、所望であれば、非妨害アニオン(式Iに関する前述の定義による)のみを有する1つ以上の他の塩類(例えば、酢酸亜鉛のような塩類)と組み合わせて使用することができる。ただし、好ましくは、このような組み合わせの少なくとも約50モル%が前述のカルボン酸金属塩(類)である。所望であれば、非妨害アニオンを有するその他の塩類は、その他の金属カチオン(例えば、金属カチオンの全モル数を基準として約10モル%までの濃度で)を含有することができるが、好ましくはその他の塩類中の全ての金属が両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成するものから選択される。
【0033】
溶媒
本発明の方法の実施において好適となり得る溶媒としては、カルボン酸金属塩若しくは塩前駆体及び塩基が実質的に可溶性であり得るものが挙げられる。このような溶媒としては、極性有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールなど、及びこれらの混合物)、N−メチルピロリジノン(NMP)、水(例えば、カルボン酸亜鉛塩を使用するとき、亜鉛水酸化物分解温度を超える温度にて)など、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
好ましい溶媒としては、こうした溶媒における乳酸金属塩及びチオ乳酸金属塩の相対的に高い溶解度により、DMSO、DMF、アセトニトリル、NMP、及びこれらの混合物(DMSOがより好ましい)を挙げることができる。しかし、別の好ましい溶媒としては、精製中の除去の容易さから、アルカノール(好ましくは、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。最も好ましくは、溶媒が、所望の金属酸化物ナノ粒子の十分な分散を維持しながら、本方法の反応物質及び生成物を溶解する能力があることであろう。
【0035】
方法
本発明の方法は、少なくとも1つの塩基と少なくとも1つのカルボン酸金属塩を(好ましくは、少なくとも1つの溶媒中で)組み合わせることによって実施することができる。好ましさに劣るが、別の方法として、本方法は、カルボン酸金属塩をカルボン酸金属塩前駆体で置換して実施することができる。このような前駆体は、(i)金属カチオン(前述のように、両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される)と非妨害アニオン(すなわち、前述のように、塩基との反応性のないアニオン)とを含む少なくとも1つの金属塩、及び(ii)乳酸又はチオ乳酸、非妨害非金属カチオン(例えば、テトラアルキルアンモニウム、好ましくはテトラメチルアンモニウム)の乳酸塩若しくはチオ乳酸塩、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物(好ましくは、乳酸、乳酸塩(類)、又はこれらの混合物、より好ましくは乳酸塩(類))を含むことができる。有用な金属塩の部類は、次の一般式によって表すことができる。
【0036】
+n[X (II)
式中、M、X及びnは、式Iに関して上に定義されるとおりである。この代替方法において、全ての乳酸又はチオ乳酸を中和するために必要な量と比較して過剰な量の塩基を使用して、塩基を存在する金属と反応させることができる。この代替方法は、中和される酸1モルにつき1モルの水を生成する。相対的に少量の水は、ZnOナノ粒子の成長の反応速度を上げることができるが、相対的に大量の水の存在は凝集作用を引き起こし得る。
【0037】
一般的に、いかなる順序及び方法での反応物質の組み合わせも使用できるが、時として、組み合わせる前にそれぞれの反応物質を溶媒中に個別溶解することが好ましい場合がある。好ましくは、カルボン酸金属塩又は塩前駆体の量と比較して準化学量論的な量の塩基(特に塩がカルボン酸亜鉛である場合)を利用することができる(例えば、得られる金属酸化物が良好に分散したままであることを確実にするため)。
【0038】
所望であれば、機械的攪拌又はかき混ぜを用いて、混合を促進することができる。任意で加熱を用いて、溶解、反応、及び/又は一次粒径の成長を促進することができる。反応物質は、所望であれば圧力容器内で組み合わせることができる(例えば、選択された溶媒の沸点を超える温度で実行される反応に有用となり得る)。
【0039】
例えば、モルホロジー、磁気特性、伝導性、光吸収若しくは放出特性、及び/又は得られるナノ粒子の結晶化度に影響を与えるために、種々の化合物(外来イオン)を、ナノ粒子沈殿の前、間、又は後に添加することができる。好ましい添加剤化合物としては、第2〜第4主族元素及び遷移金属化合物(より好ましくは、コバルト、ガリウム、インジウム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、及びアルミニウム化合物、並びにこれらの混合物、最も好ましくは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びケイ素化合物、並びにこれらの混合物)が挙げられる。このような添加剤化合物は、好ましくは、溶解形態で反応物質の組み合わせに添加することができ、及び/又は好ましくは、金属(例えば、乳酸金属塩若しくはチオ乳酸金属塩の形態で存在する)の全モル数を基準として約0.01〜約10モル%の量で使用することができる。
【0040】
得られるナノ粒子は、デカンテーション(例えば、遠心分離、若しくは共溶媒添加によって任意に誘発される沈降に続いて)、濾過、溶媒除去のための回転蒸発、透析、ダイアフィルトレーションなど、及びこれらの組み合わせなどの標準的技法を用いて(例えば、得られたゾルから)単離及び/又は精製することができる。得られる生成物の特性は、紫外可視分光法(吸収特性)、X線回折(結晶粒径、結晶相、及び粒度分布)、透過電子顕微鏡(粒径、結晶相、及び粒度分布)、並びに動的光錯乱(凝集作用の度合い)によって評価することができる。
【0041】
得られるナノ粒子は、例えば有機−無機ハイブリッド材料(例えば、ポリマー、塗料、コーティングなどのUV保護のため)に使用することができる。本発明の方法の好ましい実施形態は、紫外線吸収性、可視光線透過性の複合材料の調製に有用なナノ粒子を提供することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例証のみを目的とし、添付した請求項の範囲を制限することを意味しない。
【0043】
本明細書の実施例及びその他の部分における全ての部、百分率、比などは特に注記がない限り、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に注記がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis、MO)より入手した。
【0044】
一次粒径測定
一次粒径を観察するために用いた紫外(UV)−可視(Vis)分光計は、PerkinElmer(商標)Lambda35計測計(PerkinElmer Life and Analytical Sciences(Wellesley、MA)より入手可能)に路程1cmのUVグレード石英試料セル又はキュベットを備えたものであった。実験試料の少量のアリコートをそのバイアル瓶より取り出し、有機溶媒(例えば、200標準強度の無水エタノール、USPグレード、Aaper Alchol and Chemical Co.(Shelbyville、Kentucky))で希釈した。希釈した試料は、十分に振盪させて混合し、約2.5mLをUV−可視分光測定用キュベットに移した。UV−Vis分光計は、スリット幅設定1nm及びデータ収集間隔1nmを用いて、毎分1920nmの速度で500nmから280nmまで走査させた。分光計は、326nmで可視光線ランプから紫外線ランプに変わるように設定した。
【0045】
試料の吸収端の位置は、分光計ソフトウェアと共に供給されたサヴィツキー−ゴレイの手順を用いて、吸光度対波長曲線を波長に関して分化することによって決定し、その際幅パラメータは9に設定した。吸光度対波長曲線の分化において、分光計ソフトウェアは分化した吸光度対波長曲線の負数を計算し、結果は頂点が正数である曲線であった。この頂点の最大の波長を吸収端位置λ’maxとした。次の等式(E.A.MeulenkampによってJournal of Physical Chemistry、B、102、5556〜5572(1998)に記載)を用いて、吸収端位置(λ’max、単位nm)から粒子直径(d、単位nm)を求めた。
【0046】
d={0.017+[(334.56/λ’max)−0.8904]1/2}/[(375.64/λ’max)−1]
光の散乱は、不正確な吸収度の測定値につながり、したがって不正確な一次粒径の測定につながることから、一次粒径は、試料が容易に認識される量まで散乱した(例えば、重大な凝集作用により)ときは計算しなかった。この容易に認識できる量は、400nmでの吸光度を吸収端の最上部での吸光度で除した値として定義した。この数が0.2を超えるときは、一次粒径を計算しなかった。
【0047】
酸化亜鉛の濃度の測定
選択した分散液中の酸化亜鉛の濃度は、分散液のUV−可視吸収端の高さを測定し、報告された酸化亜鉛ナノ粒子消滅係数に分散液の希釈係数を乗じて決定した。(直径ほぼ4nmの酸化亜鉛ナノ粒子の消滅係数は0.135mL−1−1cm−1であるとしてHuらによってJournal of Colloid and Interface Science、288、313〜316(2005)に報告されており、この数値を全ての計算で使用した。)吸収端の高さは、その形状が端であって明確な頂点ではないことから、明確に分からないことが多かった。吸収端の高さを再現可能であるように計算し、種々の幅を持つ吸収端を補正するために、次の手順を用いた。
【0048】
λ’(分化した吸光度)曲線で発生する頂点のλ’maxを前述のように測定した。次いで頂点の半値全幅(FWHM)を、次のように測定した。頂点の左最小位置を、波長が、λ’maxより15nm〜45nm低い範囲のλ’曲線の最小の分化吸光度の値として取った。頂点の右最小位置を、波長が、λ’maxより30nm大きいλ’曲線上の分化吸光度の値として取った。分化吸光度曲線の頂点の左と右の中間点(頂点の底部から頂点の最大値までの中間にある点)を、最大値及びそれぞれの最小点を平均することによって決定した。次いで、左中間点の波長(より短い波長)の値を右中間点の波長(より長い波長)の値から差し引いて、FWHMを決定した。
【0049】
FWHMを決定した後、分散液の吸収端の吸光度を計算した。吸光度曲線中のベースラインオフセットを説明するため、吸収端の底部の点の吸光度の値を吸収端の最上部の点の吸光度の値から差し引いて、吸収端を基準化した。吸収端の最上部の点の吸光度の値は、λ’maxからFWHMの1.3倍を差し引いたものに相当する波長での吸光度の値であった。吸収端の底部の点の吸光度の値は、λ’maxにFWHMの1.3倍を加えたものに相当する波長での吸光度の値であった。最終的に報告した、吸収端の吸光度の値は、最上部の(より高い)吸光度の値から底部の(より低い)吸光度の値を差し引いた結果であった。
【0050】
凝集作用の度合い
動的光散乱の測定は、Malvern NANOSIZER Nano−ZS(型番号ZEN−3600)、粒径分析器(Malvern Instruments(Malvern、U.K.)より入手可能)を用いて実施し、時間の経過に伴う粒子の凝集作用を観察するために用いた。少量(1g)のアリコートを油浴中の試料バイアル瓶から採取し、1gのジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。希釈した試料は、十分に混合してガラスキュベットに移した。光散乱のデータは、試料温度を25℃に設定して記録した。得られた自己相関関数を粒径に変換するため、ジメチルスルホキシドの粘度(1.98×10−3Pa.s;1.98cP)及び屈折率(1.479)を用いた。報告した凝集粒子直径は、強度加重分布(intensity weighted distribution)を基準とした。
【0051】
ジグリコール酸亜鉛の調製
ジグリコール酸亜鉛は、H.M.XiongらによってChemistry of Materials 17、3062〜3064(2005)に記載された手順の改定版によって調製した。塩化亜鉛(13.63g、0.1モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))の水溶液(20g)に、水酸化ナトリウム(207mLの1.0N水溶液(Mallincrodt Baker(Phillipsburg、NJ))を添加した。白色沈殿物(水酸化亜鉛)が直ちに形成された。得られた混合物は、1時間激しく攪拌し、冷却し、濾過した。得られた固形物は、200mLの冷水で3回洗浄した。次いで、洗浄した固形物(白色)を、70℃のオーブンで1時間乾燥させた。次いで、乾燥した固形物を、50gの脱イオン水でスラリーにして、70℃に加熱した。このスラリーに、20gの脱イオン水に混合したジグリコール酸(13.41g、0.1モル(Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を添加した。得られた水酸化亜鉛及びジグリコール酸のスラリーを、攪拌しながら一晩反応させた。大部分の水は、回転蒸発によってスラリーから除去された。残りの水は、100℃の真空オーブンで一晩乾燥することにより除去された。
【0052】
3,6−ジオキサジオクタンジオン酸亜鉛の調製
3,6−ジオキサジオクタンジオン酸亜鉛は、ジグリコール酸を3,6−ジオキサジオクタンジオン酸(17.81g、0.1モル)で置き換えた以外は、実質的にジグリコール酸亜鉛について前述した手順で調製した。
【0053】
3,6,9−トリオキサウンデカンジオン酸亜鉛の調製
3,6,9−トリオキサウンデカンジオン酸亜鉛は、ジグリコール酸を3,6,9−トリオキサウンデカンジオン酸(23.86g、0.107モル)で置き換えて水/水酸化亜鉛のスラリーに直接添加した以外は、実質的にジグリコール酸亜鉛について前述した手順で調製した。
【0054】
アジピン酸亜鉛の調製
アジピン酸亜鉛は、ジグリコール酸をアジピン酸(14.65g、0.1モル、Fisher Scientific(Hampton、NH))で置き換えた以外は、実質的にジグリコール酸亜鉛について前述した手順で調製した。
【0055】
実施例1〜4及び比較例1
乳酸亜鉛(Pfaltz&Bauer(Waterbury、CT))を、100℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。乳酸亜鉛の熱重量分析(TGA)を、乾燥前及び乾燥後に実施した。熱重量分析計の温度を、毎分20℃の速度で120℃の温度まで上昇させ、この温度を20分間維持した。真空オーブンで乾燥する前に、乳酸亜鉛は15.7重量%の水を含有していた。乾燥した後、乳酸亜鉛は2.4重量%の水を含有していた。
【0056】
酸化亜鉛を、様々な乳酸亜鉛(Zn(Lac))対酢酸亜鉛(Zn(Ac))の比を用いて合成した。1グラム当たり0.52ミリモルのZn(Ac)原液を、2.75gの乾燥した酢酸亜鉛(Alfa Aesar(Ward Hill、MA)、183.5g/モル)を26.35gのジメチルスルホキシド(DMSO、EMD Chemicals(Gibbstown、NJ)、OMNISOLVグレード)に溶解して調製した。様々な量のZn(Lac)及びDMSOを原液の一部分に添加して、以下の表1に示す一連の試料を調製した。
【0057】
【表1】

【0058】
各試料を、40mLのバイアル瓶に入れて、それぞれに20.3gのDMSO及び電磁攪拌棒を加えた。次いで各バイアル瓶を、90℃に設定した油浴中に入れた。次いで各バイアル瓶に、2.3gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を添加した。5体の各試料は、約1重量%のZnOナノ粒子を含有すると予測された。試料を、UV−可視分光法(0.5gのアリコートを24.5gの200標準強度エタノールで希釈して発生させた50倍希釈を用いて)、及び様々な時間間隔での動的光散乱によって分析した。結果を図1及び2に図示する。
【0059】
(実施例5)
乳酸亜鉛(Pfaltz&Bauer(Waterbury、CT))を、実質的に前述のように100℃で一晩真空乾燥させた。TGAを実質的に前述のように実施し、乳酸亜鉛が乾燥後に4.6重量%の水を含有することが示された。
【0060】
DMSO(200g)を1リットルの3つ首丸底フラスコに入れた。機械的攪拌により、酢酸亜鉛(28.44g、0.155モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))及び真空乾燥させた乳酸亜鉛(37.74g、0.155モル)を、粉末添加漏斗を介して粉末としてフラスコに添加した。DMSO(41.9g)を用いて、丸底フラスコへの粉末添加漏斗に残った残留酢酸亜鉛又は乳酸亜鉛を洗浄した。フラスコをシリコーン油浴内に入れ、その温度を90℃に設定した。粉末が溶解した後、メタノール中25%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(192.1g、0.527モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を一定の流れで15分間にわたって分液漏斗を介してフラスコに添加した。
【0061】
得られた酸化亜鉛ナノ粒子の大きさは、得られた混合物の0.1mLのアリコートを採取し、それを23.82gのエタノールで希釈して、UV−可視分光法を用いて観察した(実質的に前述のとおり)。3時間の反応時間後、大きさが6.1nmになるまで1時間ごとに大きさを測定した。次いで丸底フラスコを油浴から取り出した。
【0062】
得られた冷却混合物に、66gの3−(エチレンジアミノ)プロピル官能化シリカゲルを添加し、得られた混合物を一晩攪拌した。得られたスラリーは、ASTMガラスフリット漏斗フィルターに支えられたCelite(商標)521珪藻土濾過剤層を通じて濾過した。Celite(商標)521珪藻土濾過剤層及びシリカゲルを、総量750mLの4部分の200標準強度のエタノールですすいだ。エタノール及びDMSOは、回転蒸発を介して揮散させ、最初に水吸引装置を用いてエタノール揮散用の真空を準備し、次いで機械的ポンプを用いてDMSO揮散用の真空を準備した。得られた固形物は、200gのエタノールに再分散させて、わずかにかすみがかった分散液を調製した。この分散液は、1マイクロメートルのガラス繊維膜シリンジフィルタ(Acrodisc(商標)、Pall Life Sciences(East Hills、NY))を介して濾過した。
【0063】
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、得られたZnO分散液を分析し、いまだに7重量%のDMSOが存在することが示され、それ故エタノール及びDMSOは、前述の回転蒸発を介して再び揮散させた。得られた固形物は、200gのエタノール中で再分散させた。その後GCは、3.7重量%のDMSOが存在することを示した。
【0064】
エタノール中のZnO分散液は、KROSFLO Research II TFF System(Spectrum Labs(Rancho Dominquez、CA))を用いてタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を介して更に精製した。分散液は、エタノールで355mLから1600mLに希釈した。次いで分散液は、中空繊維濾過モジュール(Spectrum Labs(Rancho Dominquez、CA)P/N M11S−260−01N、615cm濾過面積、10キロダルトン遮断)を用いて、TFFシステム上で200mLに濃縮した。TFFシステムの蠕動ポンプの流速は、9900秒−1のせん断力値をもたらすように設定されていた。同一のモジュールを用いて、分散液は、ダイアフィルトレーションモードのTFFシステムを用いて1000mL(5ボリューム)の200標準強度のエタノールで洗浄した(膜を通じて喪失したエタノールは新たなエタノールで補給された)。
【0065】
UV−可視分光法を用いて粒径を測定し、6.0nmであると判定された。得られたスペクトルの吸収端の高さを前述のように測定し、59mg mL−1の酸化亜鉛の濃度を計算した。288mLの最終分散液量で、17gの酸化亜鉛ナノ粒子を生成した(配粒子の重量は含まない)。
【0066】
比較例2
ジグリコール酸亜鉛(0.73g、0.0037モル)を、28.04gのDMSOと混合した。得られた混合物を、70℃で2.5時間攪拌した。この時間の後、混合物はかすみがかっていた。このかすみがかった混合物に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、2.28g、0.0063モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を添加した。混合物は直ちに濁った白色となった。
【0067】
比較例3
3,6−ジオキサジオクタンジオン酸亜鉛(0.90g、0.0037モル)を、26.86gのDMSOと混合した。70℃で2.5時間の攪拌後、混合物は濁った白色であった。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、2.28g、0.0063モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を添加後、混合物は濁った白色のままであった。
【0068】
比較例4
3,6,9−トリオキサウンデカンジオン酸亜鉛(1.06g、0.0037モル)を、26.70gのDMSOと混合した。70℃で2.5時間の攪拌後、透明な溶液を得た。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、2.28g、0.0063モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))の添加後、溶液は直ちに濁って白色となった。
【0069】
比較例5
アジピン酸亜鉛(0.77g、0.0037モル)を、26.95gのDMSOと混合した。70℃で2.5時間の攪拌後、混合物は濁った白色であった。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、2.28g、0.0063モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))の添加後、混合物は濁った白色のままであった。
【0070】
比較例2〜5の分析
UV−可視分光分析は、比較例2〜5について70℃で1時間及び3.5時間加熱した後に、それぞれの少量のアリコートを採取し、そのアリコートを200標準強度のエタノールで75倍に希釈することにより実施した。それぞれの温度におけるそれぞれの事例において、酸化亜鉛のナノ粒子のための吸収端がスペクトル中に見えたが、可視光線の大きな散乱も存在した。
【0071】
70℃で3.5時間加熱後、DMSO分散液中の濁った白色の酸化亜鉛をそれぞれ遠心分離させ(3000g、20分間)、各分散液を、透明な液体の上層と白色の固形物の下層とに分離させた。液体層を別の容器に静かに注いで、希釈しない液体にUV−可視分光法を実施した。それぞれの事例において、検出限界0.0014mg mL−1を超える酸化亜鉛は検出されなかった。これは、試料中に凝集していない酸化亜鉛が実質的に存在しないことを示した。
【0072】
比較例6
グルコン酸亜鉛(Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を、100℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。乾燥したグルコン酸亜鉛(5.63g、0.0123モル)を、加熱及び磁気攪拌を行いながら、86.72gのDMSOに溶解させた。得られたは溶液を、室温で冷却させた。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、7.65g、0.0209モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を、冷却した溶液に攪拌しながら5分間にわたって滴状添加した。塩基の添加が終了してから5分後、得られた反応溶液は透明でかすかに黄色であった。
【0073】
UV−可視分光測定用に、0.1mLの反応溶液を7.4mLの200標準強度のエタノールで希釈した。希釈した溶液のUV−可視スペクトルは吸収端を有さず、この試料が酸化亜鉛を含有しないことを示した。
【0074】
塩基の添加が終了してから90分後、反応溶液は黄味を帯びた橙色であった。溶液の別の試料を採取し、エタノールで75倍に希釈し、UV−可視分光法を用いて調べた。ここでも、酸化亜鉛は検出されなかった。
【0075】
反応溶液は、室温で一晩放置された。翌日、溶液は鮮やかな橙色で不透明であった。溶液の少量のアリコート(0.1mL)をDMSOで75倍に希釈した。ここでも、UV−可視分光法は酸化亜鉛が形成されなかったことを示した。
【0076】
比較例7
比較例6の反応溶液への塩基の添加が終了してから約2時間後、25gの溶液を取り出して別のバイアル瓶に入れた。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、2.99g、0.0082モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を、取り出した溶液に攪拌しながら添加した。この部分の橙色は黄色に退色し、濁り、次いで透明になった。
【0077】
この塩基の添加後まもなく、この部分の試料(0.1mL)をエタノールで75倍に希釈し、UV−可視分光法によって調べた。酸化亜鉛の吸収端は検出されなかった。
【0078】
反応溶液のこの部分は、室温で一晩放置された。翌日、溶液はまだ黄色で透明であった。溶液の少量のアリコート(0.1mL)をDMSOで75倍に希釈した。ここでも、UV−可視分光法は酸化亜鉛が形成されなかったことを示した。
【0079】
実施例6及び比較例8
実施例6は、次の重量を測ってバイアル瓶に入れて実施した:塩化亜鉛(0.50g、0.0037モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))、水中85重量%のDL−乳酸(0.78g、0.0074モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))、メタノール(2.69g、EMD Chemicals(Gibbstown、NJ)、OMNISOLVグレード)、及びDMSO(21.06g、EMD Chemicals(Gibbstown、NJ)、OMNISOLVグレード)。攪拌棒を加え、90℃に維持したシリコーン油浴にバイアル瓶を入れた。得られた混合物を、透明な溶液が形成されるまで攪拌した。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中25%、4.97g、0.0014モル、Alfa Aesar(Ward Hill、MA))を溶液に滴状添加した。溶液は濁り、次いで透明になった。溶液を90℃で5時間加熱し、その間UV−可視分光法及び動的光散乱分析を実施した。UV−可視分光測定用の希釈は、0.1mLの溶液を取り除いてそれを5.88gの無水エタノール(7.4mL、USPグレード、Aaper Alcohol and Chemical Co.(Shelbyville、Kentucky)に添加して調製した。UV−可視分光法及び動的光散乱測定を前述のように実施した。それらの結果を下記の表2に示す。
【0080】
比較例8は、2つの例外、すなわち、水中85重量%のDL−乳酸を、氷酢酸(0.44g、0.0074モル、Mallinkrodt Baker(Phillipsburg、NJ))と蒸留水(0.12g)とを組み合わせて調製した水中85重量%の酢酸で置き換え、DMSO量を21.06gから21.28gに増大したこと以外は、実施例6と同一の方法で実施した。実施例6と同様に、バイアル瓶を90℃に加熱し、溶液が形成されるまで混合物を攪拌した。次いで、実施例6と同様に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを添加した。塩基の添加後、溶液は濁り、続いて透明になった。透明な溶液を5時間加熱し、この間、溶液は濁り、続いて不透明な白色となった。次いで実施例6と同一の方法で試験を実施した。それらの結果を下記の表2に示す。UV−可視スペクトル中に存在する散乱量のため、一次粒子直径は計算できなかった。
【0081】
【表2】

【0082】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含まれる参照された記述内容は、その全体が、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)少なくとも1つの塩基と、(2)(i)両性金属酸化物若しくはオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン、及び(ii)乳酸アニオン若しくはチオ乳酸アニオンを含む少なくとも1つのカルボン酸金属塩、又は(i)前記金属カチオンと非妨害アニオンとを含む少なくとも1つの金属塩、及び(ii)乳酸若しくはチオ乳酸、非妨害非金属カチオンの乳酸塩若しくはチオ乳酸塩、又はこれらの混合物を含むカルボン酸金属塩前駆体とを組み合わせる工程と、(b)前記塩基と前記カルボン酸金属塩又は前記カルボン酸金属塩前駆体とを反応させる工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記塩基がヒドロキシル基含有塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属カチオンが、Be、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te及びPoのカチオン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属カチオンが、Be+2、Ti+4、V+4、V+5、Mn+4、Cr+3、Cr+4、Fe+3、Fe+4、Co+3/Co+2(混合酸化状態の化合物)、Ni+3、Ni+4、Al+3、Zn+2、Ga+3、In+3、Ge+2、Sn+2、Sn+4、Pb+2、As+3、Sb+3、Bi+3、Te+4、Po+4及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属カチオンが亜鉛カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボン酸金属塩及び前記非金属塩の前記アニオンが乳酸アニオンであり、前記酸が乳酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非妨害非金属カチオンがテトラアルキルアンモニウムであり、前記非妨害アニオンがハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、蟻酸イオン、プロピオン酸イオン、硫酸イオン、臭素酸イオン、過塩素酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、R’(OR)Z(OR)(CHCOO
(式中、R’は1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、各Rは独立して1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキレン部分であり、xは0〜4の整数であり、Zは2価の有機架橋部分であり、wはx+wの合計が1〜4の整数であるという条件で0〜4の整数であり、yは0〜3の整数である)、
及び塩素酸イオン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非妨害非金属カチオンがテトラメチルアンモニウムであり、前記非妨害アニオンが塩化物イオン、酢酸イオン及びこれらの混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸金属塩が、次の一般式によって示される部類の1つであり、
[CHCH(Y)COO[X+(m+n) (I)
前記金属塩が、次の一般式で示される部類の1つであり、
+n[X (II)
式中、各Yは独立して−OH又は−SHであり、Xは非妨害アニオンであり、m及びnは合計m+nが金属カチオンMの電荷と等しいような値を有する整数であり、(金属カチオンの合計モル数に基づいて)少なくとも90モル%のMはBe、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Po及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記yが−OHであり、前記Xがハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、蟻酸イオン、プロピオン酸イオン、硫酸イオン、臭素酸イオン、過塩素酸イオン、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、R’(OR)Z(OR)(CHCOO
(式中、R’は1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、各Rは独立して1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキレン部分であり、xは0〜4の整数であり、Zは2価の有機架橋部分であり、wはx+wの合計が1〜4の整数であるという条件で0〜4の整数であり、yは0〜3の整数である)、
及び塩素酸イオン、並びにこれらの混合物から選択されるアニオンであり、前記MがTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb及びこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Xが塩化物イオン、酢酸イオン及びこれらの混合物から選択され、前記MがTi、Al、Zn、Ga、In及びこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Mが亜鉛である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボン酸金属塩が乳酸金属塩、チオ乳酸金属塩及びこれらの混合物から選択され、前記金属がBe、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Po及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボン酸金属塩が乳酸金属塩、チオ乳酸金属塩及びこれらの混合物から選択され、前記金属がTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb及びこれらの混合物から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボン酸金属塩が乳酸金属塩、チオ乳酸金属塩及びこれらの混合物から選択され、前記金属がTi、Al、Zn、Ga、In及びこれらの混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボン酸金属塩が乳酸亜鉛、チオ乳酸亜鉛及びこれらの混合物から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸金属塩が乳酸亜鉛である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記カルボン酸金属塩が少なくとも1つの他の塩と組み合わせて使用され、前記他の塩が非妨害アニオンのみを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記他の塩が酢酸金属塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)(1)少なくとも1つのヒドロキシル基含有塩基と、(2)乳酸亜鉛、チオ乳酸亜鉛及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つのカルボン酸金属塩と、を組み合わせる工程と、(b)前記塩基と前記塩とを反応させる工程と、を含む、方法。
【請求項22】
前記カルボン酸金属塩が少なくとも1つの他の塩と組み合わせて使用され、前記他の塩が酢酸金属塩である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸金属塩が乳酸亜鉛である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸金属塩が少なくとも1つの他の塩と組み合わせて使用され、前記他の塩が酢酸亜鉛である、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507793(P2011−507793A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539691(P2010−539691)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086932
【国際公開番号】WO2009/085731
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】