ナノ粒子クラスター及びそれを形成する方法
【課題】様々な材料から形成された、制御された粒径を有するナノ粒径の物質の製造を可能にする方法の提供。
【解決手段】請求項1に記載の方法。それにより、懸濁液中でのナノ粒子のクラスターの成長を可能にする方法が得られる。任意の粒径の最終的なクラスターが、一定の精度で選択できる。同様に、粒径分布の制御も可能となる。当該方法を使用することにより、所望の粒径が得られたときに工程を終了させることが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することが可能となる。この技術を用いて、懸濁液の多分散性を制御することも可能となる。
【解決手段】請求項1に記載の方法。それにより、懸濁液中でのナノ粒子のクラスターの成長を可能にする方法が得られる。任意の粒径の最終的なクラスターが、一定の精度で選択できる。同様に、粒径分布の制御も可能となる。当該方法を使用することにより、所望の粒径が得られたときに工程を終了させることが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することが可能となる。この技術を用いて、懸濁液の多分散性を制御することも可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ粒子のクラスター(以下ナノ粒子クラスターと記載する)に関し、特に所定粒径のクラスターの形成において有用な方法に関する。好ましい実施形態では、本発明は磁気ナノ粒子クラスターを提供する。本発明はまた、かかるナノ粒子クラスターの、医療用途においての使用(例えば薬剤放出、温熱療法の媒介物質及び磁気共鳴映像法用の造影剤としての使用)を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーの応用に関する大きな課題の1つは、材料の特性が、敏感なまでに粒子の粒径に依存することである。比較的単分散(1つの粒径のみ)である粒子又は粒子クラスターを成長させることは非常に困難である。また、単一の工程を使用して、広い粒径範囲にわたり選択された粒径を有する構造を成長させることも非常に困難である。
【0003】
例えばMRI(磁気共鳴イメージング)の分野においては、造影剤の調製のために、ポリマー(通常デキストラン)又は高分子電解質の存在下で、ナノ粒子のin situ成長及び安定化を同時に行わせることによって、ナノ粒子クラスターを成長させることが公知である。かかる技術は例えば特許文献1:国際公開第2005/076938号において記載されており、それは、マルチポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子クラスター、それを含んでなる水性磁性流体、並びに、分離手順へのそれらの使用の方法に関して開示している。マルチポリマーコートされた磁気ナノ粒子クラスターは、それに結合する第1のポリマー(第1のポリマー−超常磁性粒子の複合体がコロイドとして安定にならない)と、それに対して結合する第2のポリマー(複合体を安定化させる)とを有する超磁性核を含んでなる。分離方法(発現されたタンパク質の、それを発現する細胞及びウイルスからの分離を含む)が全て記載されている。記載されている方法は、安定なクラスターを提供する能力を有するにもかかわらず、形成されたクラスターの粒径制御は、使用する安定化ポリマーの表面の化学的性質により決定され、また大きいクラスターは、基本的に、低いナノ粒子含量のポリマーである。したがって、形成されたクラスターの粒径分布の制御は困難である。
【0004】
要約すると、かかる周知の技術を使用することにより、最終的に得られるクラスターの粒径が、ユーザ制御とは対照的に、工程制御されるものとなる。したがって、再現可能な粒径のサンプルを生成させることは困難であると考えられる。更に、クラスターの粒径範囲が幅広くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/076938号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、様々な材料から形成された、制御された粒径を有するナノ粒径の物質の製造を可能にする方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの、及び他の課題は、本発明の教示に従う方法により解決され、それは制御された粒径のナノ粒子クラスターの、再現可能な方式での製造を可能にするものである。
【0008】
本発明の教示を用いることにより、懸濁液中でのナノ粒子のクラスターの成長を可能にする方法が得られる。任意の粒径の最終的なクラスターが、一定の精度で選択できる。同様に、粒径分布の制御も可能となる。本発明の教示に従う方法を使用することにより、所望の粒径が得られたときに工程を終了させることが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することが可能となる。この技術を用いて、懸濁液の多分散性を制御することも可能となる。
【0009】
以上より、請求項1に記載の方法が提供される。有利な実施形態は、従属請求項において詳述される。これらの、及び他の本発明の特徴は、以下の説明及び図面を参照することにより理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、本発明を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図1】本発明の教示による典型的な方法に従う、ナノ粒子クラスターの調製に関連する段階を表す図。
【図1a】は、本発明の教示に従うナノ粒子クラスターの調製の、代替的な機構を示す図である。
【図2】図1において例示した代表図に関連する段階を示す模式図。
【図3】様々なナノ粒子:シリカ面の比率による、2つの典型的なPCS実験からのデータを示す。結果は、成長速度にわたる制御を示す。
【図4】様々な調製の手順を記録したデータを示す。それにより更に、クラスターがナノ粒子の添加により懸濁液から成長することが確認された。
【図5】シリカ−C18上への、磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加におけるPCSデータを示す。ラン1の時間における、懸濁液中のZ−平均の増加を示す。Y軸のPCS直径を体積に変換した場合を、挿入部分として示す。
【図6】シリカ−C18上への、磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加におけるPCSデータを示す。
【図7】シリカ−C18(2つのラン、すなわちラン1及び2)上への磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加における、多分散性指数及び平均計数率の変化を示す。
【図8】シリカ−C18上へのH5a懸濁液のME実験における、時間経過に伴う475nmでのUV吸光度を示す。
【図9】4つの連続的なランの間のME添加実験における、わずかに異なる粒径(11.8nm)のH5bのZ−平均粒径を示す。
【図10】シリカ−C18上への磁鉄鉱懸濁液(H5b)の1つの単層の添加における、時間経過に伴う平均計数率の変化を示す。
【図11】シリカ−C18上への磁鉄鉱懸濁液(H5b)のME添加における、時間経過に伴うPDIの変化を示す。
【図12】シリカ−C18上へのME実験における、サンプルH5bの場合のPCS相関データフィット、及び強度粒径分布を示す。5時間後(
【化1】
)、13時間後(
【化2】
)、及び実験終了(48時間)後(
【化3】
)。48時間における強度分布(
【化4】
)のデータは、当該範囲内おいてはゼロであり、大きな粒子のみが出現する。
【図13】シリカ−C18上へのBE添加における、懸濁液H5aの場合のPCSデータを示す。ラン1(
【化5】
)、及びラン2(
【化6】
)の、時間経過に伴う懸濁液のZ−平均の増加を示す。短い(s)及び長い(l)時間データにフィットする直線のパラメータを、各ランにおいて用いた。
【図14】サンプルH5aのBE実験における、多分散性指数(PDI)データ及び平均計数率を示す。
【図15】多孔性シリカ−C18基質上への懸濁液H5aにおける、PCSデータフィット及び強度粒径分布を示す。(BE実験の最初のランから、14時間後(
【化7】
)、44時間後(
【化8】
)、及び120時間後(
【化9】
))。
【図16】BE実験における、3つのランにおける、時間経過に伴うZ−平均データを示す。(□)H5aラン1、(○)H5aラン2、及び(▽)H5bラン3。
【図17】シリカ−C18上へのH5b懸濁液のBE実験における、時間経過における475nmでのUV吸光度を示す。
【図18】シリカ−CN基質上への磁鉄鉱懸濁液のME吸着に関する、PCSデータを示す。Z−平均粒径を(□)で、PDIを(●)で示す。
【図19】新しいシリカ−C18表面の、走査型電子顕微鏡イメージ。
【図20】ME実験からの、コーティングされたシリカ−C18粒子の電子顕微鏡写真。
【図21】矢印で示された図20の領域の拡大イメージ。
【図22】BE実験からの、コーティングされたシリカ−C18粒子の電子顕微鏡写真。
【図23】図3とは異なる給源からのアルキルグラフト化−C18基質の上に、図3とは異なる合成経路により調製され配置された、オレエートコーティングされたナノ粒子の、懸濁液中におけるPCSデータフィット及び多分散性指数を示す。
【図24】クエン酸塩コーティングされた金ナノ粒子から、NH2修飾されたシリカ粒子との相互作用によって、それらのクエン酸塩キャッピング剤が除去され、金ナノ粒子クラスターの生成がなされる機構を示す。
【図25】金ナノ粒子クラスターの成長を示す、TEM画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の例示的実施形態を参照しながら、本発明を記載するが、それらは、本発明の教示の理解を補助するために記載されるものである。本発明の教示を使用することにより、懸濁液中でのナノ粒子クラスターの成長を可能にする方法が提供される。クラスターは、複数の個々のナノ粒子で形成される。任意の最終的なクラスターの粒径が、ある程度の精度で選択されうる。同様に、粒径分布の制御をなしうる。本発明の教示に従う方法を使用することにより、所望の粒径が得られるタイミングで、工程を終了することが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することができる。
【0012】
本発明の範囲内では、懸濁液のナノ粒子が活性化源により曝露され、それにより、2つ以上の個々のナノ粒子の結合が刺激され、ナノ粒子クラスターの形成がなされる。上記活性化源は、活性化基質、又は実際には他の活性化粒子、又は懸濁液中の既に形成されたクラスターであってもよい。上記活性化源は通常、活性化表面をなしうる材料である必要がある。上記活性化源から懸濁液を除去することによって、上記ナノ粒子クラスターの更なる成長を終了することが可能である。このようにして、除去を行う適当な時間を適宜選択することは、測定可能な粒径及び分布を有するナノ粒子クラスターの調製にとり有用である。
【0013】
すなわち、例えば成長をモニターすることができ、また、所望の粒径のクラスターが得られたときは、活性化源と懸濁液との接触をなくすことによって、クラスターの更なる成長を抑制できる。このようにして、ユーザ側において、得られるクラスターの最終的な粒径を選択することが可能となる。実質的に、ナノ粒子クラスターの成長度合いの制御は、懸濁液中のナノ粒子とそれらの活性化源との間の相互作用によって維持される。
【0014】
一実施形態では、上記活性化源は、第一相(液相)のナノ粒子と、第二相(固相)の活性化基質との間に相互作用するような基質である。利用できる1つの適切な基質は、シリカ基質である。本発明では、用語「シリカ」には、純粋なシリカ(SiO2)及び他の天然の形態のシリカが包含され、当業者に自明のように、1つ以上の微量元素の形で不純物を含有しうることが理解されるであろう。1つの特に有用なシリカの形態は、アルキル鎖グラフト化シリカであり、もう一方はシアネート化シリカである。
【0015】
他の実施形態では、上記活性化源は、懸濁液中の他の活性化された粒子又はクラスターである。かかる態様は、懸濁液中において、既に活性化された粒子若しくはクラスターで当該懸濁液をシードしてクラスターの継続的な成長を可能にする場合において、又は、実際、クラスター形成の連続的なサイクルが必要である場合において、特に有用であり、また、懸濁液中の活性化可能な粒子の数が、クラスターの形成によって減少する。
【0016】
最初に、ナノ粒子上にキャッピング剤を複数供給することによって、ナノ粒子を安定化させる。適切なキャッピング剤の選択は、ナノ粒子の表面へ結合してナノ粒子を安定化させる、キャッピング剤の能力に基づいてなされるであろう。キャッピング剤は次に、ナノ粒子から少なくとも部分的に除去される。キャッピング剤の除去によりナノ粒子の安定性が変化し、それにより反応性を有するようになる。上記の除去は、活性化材料(例えばキャッピング剤との親和性を示す基質)の供給により実施することができる。キャッピングされたナノ粒子と活性化剤との間の相互作用により、上記の除去が開始される。それらの形成に続き、反応性ナノ粒子が互いに結合して、すなわち、2つ以上のナノ粒子が化学的若しくは物理的に相互に結合して、ナノ粒子クラスターの生成がなされる。
【0017】
図1及び2に示すように、本発明の教示に従う方法は、分散させたナノ粒子の懸濁液を、表面などの、活性化源と接触させることにより、ナノ粒子のクラスターの成長を生じさせることができるという理解に基づく。個々の粒子と表面との接触により、段階的なクラスターへの凝集が生じる。懸濁液中の粒子と表面との接触が長く維持されるほど、得られるクラスターの最終的な粒径は大きくなる。この典型的な方法では、所望の粒径のクラスターが支配的となったときに、ユーザは、それらの2つの間の相互作用を終了させることができる。あるいは一部の懸濁液を除去してもよく、それにより、残りの材料における、ナノ粒子クラスター成長の工程を継続させることができる。
【0018】
相互作用を促進すると考えられる機構を示すこの例においては、まずナノ粒子の懸濁液を表面と接触させる(段階200)。表面との相互作用を通じて、懸濁液中の、複数の利用できる粒子の個々の粒子は、表面から界面活性剤分子が脱着して失われることを通じて活性化される(段階205)。これらの活性化された粒子の2つ以上が結合し、クラスターの成長が行われる(段階210)。活性化された粒子間のこの相互作用の繰り返しにより、大きなクラスターが生じ、それらが懸濁液から沈殿しうる(段階215)。懸濁液中の一次粒子及び/又は形成されたクラスターは、いずれも表面との親和性を有し、また、基質が懸濁液中に添加されるこの例示的実施形態では、工程全体にわたって懸濁液からの沈殿を生じさせてもよい。このようにして、懸濁液から材料が連続的に減少する。有用な粒径のクラスターを検出した後、次にそれらのクラスターと共に、懸濁液を除去し、次にクラスターを回収又は安定化させることが可能となる。
【0019】
効果的に、この例示的実施形態では、懸濁液中に存在する個々のナノ粒子と基質表面との接触によって、事前に安定化させたナノ粒子が活性化され、それらは次に、同様に活性化された粒子と結合できる。また、懸濁液中において、活性化された粒子が、活性化されていない若しくは安定化された粒子を活性化することも可能である。しかしながら、活性化基質が存在する場合には、支配的な活性化源は活性化基質であると考えられる。クラスターの成長はナノ粒子の活性化に依存するため、それは時間依存的である。その結果、工程を制御することができる。この制御は、サンプリング手順により工程をモニターして、サンプリングされた粒径分布が予め定めた条件を満たすときに工程を終了させること、又は、所定の時間後に所定の粒径分布が得られると仮定して、時間を終了要因として用いること、のいずれかにより実施できる。
【0020】
最初の試験は、脂肪酸コーティングされた単分散(単一の粒径)の10nmの酸化鉄ナノ粒子のヘプタン中懸濁液の使用に基づくものであった。これらのナノ粒子は、当業者にとって自明な態様で、例えば、粒径制御された磁鉄鉱ナノ粒子の合成に関して開示された技術(Sun S.H.,Zeng H.,Journal of the American Chemical Society,124(28),8204−8205,2002)を使用することにより、合成される。これらの懸濁液は、数ヶ月にわたり安定であり、かつ変化しないことが公知である。実質的に、これらのコーティングナノ粒子は、そのプロセスの間に一次粒子を形成し、かつ、その表面にコーティング又はキャッピング剤を提供された核を有し、そのコーティングは活性化可能であり、それにより、活性化ナノ粒子が得られる。しかしながら最初の懸濁液中で、ナノ粒子は安定な形態で提供され、その安定化は、個々のナノ粒子の表面上のキャッピング剤により提供される。
【0021】
ナノ粒子を活性化するために、上記懸濁液を、標準的なキュベット中で、C18グラフト化シリカ基質上に配置した。懸濁された粒子の粒径を次に、光子相関分光法(PCS)によりモニターした。上記粒子の粒径が、一次粒子の凝集又はクラスター形成により徐々に増加するのが観察された。
【0022】
溶液懸濁液中のナノ粒子の個々の表面活性化に関する上記の機構は、反応性ナノ粒子を生じさせることのできる適切な機構を説明するという意味で有益であるが、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられうる場合を除いて、本発明の教示は、いかなる1つの具体的な機構にも限定されないことが理解されよう。この点をサポートするため、図1aにおいて、代替的な機構を例示する。そこにおいては、ナノ粒子、懸濁液及び基質の間の相互作用によって、個々のナノ粒子が段階的に凝集し、ナノ粒子クラスターが形成される。図2を参照しながら、図1aの模式図を再検討すると、図2の記載は、安定化された懸濁液中の一次ナノ粒子の懸濁液と、活性化基質との間の相互作用が、ナノ粒子クラスターの制御された成長を提供する際の一般的な機構を依然としてサポートすることが自明である。
【0023】
図1aに示すように、ナノ粒子クラスター活性化のための更なる経路が存在し、それは、図1及び2に関して上記したように、シリカと粒子との直接的な相互作用を伴うものではない。この間接的な機構においては、上記基質はシリカから再び形成され、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の安定な形態での維持を補助する、オレイン酸含有懸濁液中に提供される。図2に関して記載するように、段階200では、懸濁液をシリカ基質と接触させる。図1の直接的な機構においては、シリカは直接ナノ粒子と相互作用するが、この間接的な機構においては、シリカはゆっくり懸濁溶媒からオレイン酸(一次ナノ粒子上の界面活性剤)を除去する。この界面活性剤(既に明らかなように、一次ナノ粒子に安定性を提供する)の除去により、懸濁液中での反応性ナノ粒子の生成がなされ(段階205)、2つ以上の反応性ナノ粒子の相互作用によるクラスター成長が生じる(段階210)。このクラスター成長は更に、懸濁溶媒中の遊離の界面活性剤と、ナノ粒子に吸着された界面活性剤との間の平衡を、幾らかの界面活性剤が脱着する方向にシフトさせ、それにより不完全な界面活性剤層を有する活性ナノ粒子が生じ、クラスター成長に至る。クラスターが所定の粒径に達した後、懸濁液と活性化基質との接触をなくすことによって、クラスターの成長を終了させることができる(段階215)。
【0024】
この第2の機構の有効性は、懸濁液中でのクラスター成長により示される。そこにおいては、一次ナノ粒子のシリカ表面への直接の接近が妨害されるが、それでもクラスター成長が生じる。なお、図1及び2の直接的な機構、又は図1a及び2の間接的な機構が排他的でないことはいうまでもない。
【0025】
上記の機構にかかわりなく、利用可能な基質の量を変えることによって、又は、ナノ粒子に対する安定化界面活性剤若しくはキャッピング剤の比率を増加させることによって、クラスターの成長速度及び程度、並びに粒径分布範囲の制御が可能となること、また実際に、成長を終了されることができることが明らかとなる。これらの2つの要因のいずれも、必要となる既存の反応性ナノ粒子の安定化を可能にし、新規な反応性ナノ粒子の形成を防止する。活性化基質が除去される態様においては、更なる活性化は行われない。同様に、懸濁液中の安定化界面活性剤(例えばオレエート)の濃度を過剰とすることにより、界面活性剤分子は、あらゆる反応性ナノ粒子と、他の反応性ナノ粒子と相互作用する前に結合し、及び/又は、基質上の活性化部位をブロックして新規な反応性ナノ粒子の形成を防止することにより、それらを安定化させる。
【0026】
図3は、シリカ面に対するナノ粒子の比率が異なる、2つの典型的なPCS実験によるデータを示す。その結果は、成長速度の制御を示し、また、単に適当なタイミングでシリカ基質から懸濁液を除去することによって、クラスターの粒径を10〜400nmの範囲で選択できることを示す。また、実験を行うことにより、オフラインでクラスターを成長させ、PCS用に断続的にサンプリングすることによって、それらの成長をモニターできることが示された。したがって、反応用のサンプルの量はキュベット体積(c.4ml)に限定されない。このようにして、本発明の教示に従う技術を採用することにより、連続的な工程のモニタリングが可能となり、それにより、ユーザが、懸濁液中の粒子と基質との間の相互作用を終了させる適当なタイミングを選択できることが理解されよう。
【0027】
図4(様々なシリーズの調製に関して記録している)では、懸濁液からのナノ粒子の追加により、クラスターが成長することが更に確認されている。最初に、大きいクラスターはより強く光を散乱させるため、散乱光の強度が増加する。しかしながら工程が継続されるにつれて、最終的には、クラスターの存在する量が減少し、散在強度が低下する。
【0028】
クラスター粒径の制御を可能にする方法は、多くの利点を有することはいうまでもない。この能力は、例えば特定の粒径又は粒径範囲が必要とされるような生物医学的な用途で使用できる。すなわち、上記懸濁液は特に、磁気共鳴映像法用の造影剤として、及び温熱療法を媒介する物質として有用でありうる。これらの用途は、クラスターが、それらの物理的粒径ゆえに特異的な部位に蓄積できるため、特に適切である。in situにおいて、それらを検出してもよく(MRIの場合)、又は、形成されたナノ粒子クラスターが磁気特性を有する場合、熱を生じさせてもよい(温熱療法用途の場合)。この場合、クラスターの実際の粒径がその効果にとり重要であることはいうまでもない。したがって、本発明の教示に従って形成されるクラスターを使用することは、それらの粒径及び粒径分布が制御可能であるという意味において、極めて効果的であると考えられる。
【0029】
このようにして、粒径が制御された粒子を供給することにより、当該粒子による体内でのターゲッティングが改善されることとなり、それにより、上記したように、MRIの場合には、特徴的な構造(例えば腫瘍中の漏れやすい血管構造)のターゲティングが可能となる。更に、同様の方法を用いて、異なる粒径に設定されたナノ粒子クラスターを生じさせることもでき、それにより、複数の疾患を標的とする物質を開発することが可能となる。例えば、漏れやすい血管が、関節炎などの自己免疫疾患とも関係していることが知られている。それらを踏まえ、本発明に係る薬剤送達又は薬剤ターゲティングは、体内の粒子が急速に認識され、マクロファージ(白血球)により攻撃され、細網内皮系により処理されるという理解に基づく。小さい粒子(<50nmが良好である)を使用することにより、及び/又は、ステルス粒子と称される物質を生成すること(例えばポリエチレングリコールなどのマスキング分子をその表面にグラフト化すること)により、血液循環時間を増加させることができる。これらの粒子は何度も循環し、それらが特異的な化学的相互作用を発揮する(例えば、それらが抗原でコーティングされ、抗体が存在する場合)か、又は、物理的な選択性を有する、あらゆる部位に蓄積する。すなわち、100nm以下の粒子が結局、腫瘍(存在する場合)中の漏れやすい血管構造に蓄積する。この物理的な蓄積は、基本的に受動的なプロセスであり、また、標的という用語は、目的とする領域への特異的薬剤のより多くの能動的な移動を示すものであるが、しばしばこの受動的なプロセスを記載するためにも用いられる。本発明の技術を使用して形成される粒子を用いて使用する粒子の主な粒径分布が、その効果の発揮にとり必要なパラメータ中に含まれることを確保することが可能となる。
【0030】
上記したように、磁気ナノ粒子クラスター(例えば酸化鉄)の懸濁液を使用して形成されるクラスターに特徴的な他の利点としては、印加された交流磁場により刺激されることにより、迅速な局所的な加熱又は温熱療法がなされるということが挙げられる。温熱療法の手順は、媒介物質に依存するが、それは腫瘍中で局所化されるか、又は取り込まれることができ、また高い特異的吸収速度(SAR)を示す。本発明の教示に従って形成される材料は、それらの大きな粒径が物理的なターゲティングの補助となるような用途において好適であるが、小さい一次ナノ粒子粒径(c.10nm)の採用により、許容できる磁気強度及び周波数において、非常に高いSARが得られる。許容できるという用語は、粒子が埋没され、標的とされる生体にとって許容できるという意味である。このようにしてナノ粒子クラスターを使用することは、局所的に加熱を行う際に特に効果的であり、それは原発性癌の治療において有用であり、その際、当該部位への加熱により癌組織が破壊される。
【0031】
他の、活性化を誘導する方法、又は埋め込まれたナノ粒子の局所的な加熱方法としては、RFフィールドの使用又は実際はレーザー励起が挙げられる。
【0032】
所定の粒径のナノ粒子クラスターの生成を制御できる能力は、効果的に調整された薬剤放出剤の調製の場合に、特に有用である。上記物質の粒径を制御することができるため、生体内のその最終的な標的部位を確実に選択することもできる。ゆえに、ナノ粒子クラスターが提供された感熱性リポソーム、又はポリマーコーティングされたナノ粒子クラスターは、薬剤の隔離及び体内の標的に対する薬剤の徐放にとり有用であると考えられる。リポソーム又はポリマーを用いることにより、特定の薬剤又は医薬組成物が内部に担持されているマトリックスを提供することが可能となる。かかるマトリックス内にナノ粒子クラスターを封入し、次にその組合せ物を体内に導入することによって、所望の標的部位に医薬組成物を送達することが可能となる。最適に磁気ナノ粒子クラスターを加熱することにより、上記封入された組合せ物が崩壊し、上記組成物が周囲の組織に放出される。本発明の方法により、周知の粒径のナノ粒子クラスターの形成が可能になるため、かかる薬剤送達体から形成された液体は、制御された粒径の成分を有する成分を有し、またそれにより、その液体の成分の体内での最終的な目的部位を、これまで周知でない様式において決定することができる。ナノ粒子クラスターの加熱は、多くの適切な方法により実施でき、例えば磁気若しくはRF場(field)の印加、又は実際には薬剤送達体が配置される部位へのレーザーによるターゲティングが挙げられる。
【0033】
本発明の教示に従って形成したナノ粒子クラスターの、考えられる他の用途としては、触媒表面の形成が挙げられる。触媒は、高い表面積:体積の比を必要とする。例えば、本発明の工程により調製され、固体基板に堆積された金属酸化物材のナノ粒子クラスターは、高い表面積:体積比を有するため、触媒(例えば触媒コンバータにおいて)として使用できる。大部分の用途では、キャッピング剤(脂肪酸)の除去を必要とするが、これはアニーリング段階の一部としてそれらを加熱することにより実施でき、それはまた、ナノ粒子クラスターを基質に固定させる役割をも果たす。本発明の技術を用いて形成されるクラスターは、非常に単分散性の高い一次粒子から形成され、ゆえに優れた触媒特性を提供すると考えられる。
【0034】
かかる複雑な構造の形成は、最初のナノ粒子クラスターの形成を基礎とする。上記のように、本発明の方法では、懸濁液中でクラスターを生成させる。所望の粒径のナノ粒子クラスターが得られた後、クラスターを安定化させることができる。ナノ粒子クラスターの安定化には、多くの様々な機構を利用できることが理解され、また、本発明は、いかなる具体的な機構にも限定されるものではない。にもかかわらず、考えられる方法の例をここで記載すれば、その方法は、ナノ粒子クラスターの架橋結合、及び、有機溶媒中の懸濁液からの、安定な水性懸濁液への相転移に基づくものである。これらの典型的な技術は、有機溶媒中に添加された磁鉄鉱ベースのナノ粒子に基づくものであり、また、本発明はかかる態様に限定されないものと理解されよう。例えば、以下に記載される金ナノ粒子クラスターによる実施態様から理解されるように、当該クラスターは水懸濁液中で形成され、更なる処理を必要としない。
【0035】
架橋結合方法の1つの例としては、Hatton及びLaibinisにより開示されたオレフィンベースの重合方法を利用することが挙げられる(“porimerization of olef in−terminated surfactant bilayers on magnetic fluid nanoparticles”,Shen L.F.,Stachowiak A.,Hatton T.A.ら、Langmuir,16(25),9907−9911,2000)(その開示内容を参照により本願明細書に援用する))。
【0036】
その他の技術としては、多くの水性相転移手順を含む技術が挙げられ、それらは、磁鉄鉱と強固な結合を形成する水溶性界面活性剤による、ナノ粒子表面からのアルキルキャッピング剤の部分的若しくは完全な置換に基づく。これに利用できる多くの試薬が存在するが、最近公表された文献の中でも特に、2,3−ジメルカプトコハク酸による相転移反応により、安定な水性ナノ粒子クラスター懸濁液を生じさせる方法を用いるものが挙げられる。これらの例としては、以下のものが挙げられる。
1.”In vivo magnetic resonance detection of cancer by using multifunctional magnetic nanocrystals”,Huh Y.M.,Jun Y.W.,Song H.T.,Kim S.,Choi J.S.,Lee J.H.,Yoon S.,Kim K.S.,Shin J.S.,Suh J.S.,Cheon J.,J.Am.Chem.Soc,127(35),12387−12391,2005;
2.“Nanoscale Size Effect of Magnetic Nanocrystals and Their Utilization for Cancer Diagnosis via Magnetic Resonance Imaging”Young−wook Jun,Yong−Min Huh,Jin−sil Choi,Jae−Hyun Lee,Ho−Taek Song,Sungjun Kim,Sarah Yoon,Kyung−Sup Kim,Jeon−Soo Shin,Jin−Suck Suh,and Jinwoo Cheon J.Am.Chem.Soα,127(16),5732−5733,2005。
【0037】
代替的な方法として、予め形成されたクラスターを水性高分子電解質(ポリスチレン−スルホネート又は様々なポリ(アルキル−シアノアクリレート)のうちの1つを含む)と反応させてもよい。望ましくは、このアプローチにより、クラスターが安定化され、1つのステップにおいてそれらを水溶性にすることができる。
【0038】
当業者にとり自明であるが、本発明の教示に従う方法は吸着のプロセスを利用するものであり、すなわち、1つの相からの原子、分子若しくは粒子の分離、更にそれに付随する第2の相(本発明の例ではシリカ基質)の表面におけるその蓄積又は濃縮が行われる。物理的な吸着は主に、吸着分子と吸着表面上の原子/分子との間における、ファンデルワァールス力及び静電力によってなされる。すなわち、吸着剤は表面特性(例えば表面積及び極性)によって特徴付けられる。大きい特異的な表面が、吸着能力の提供においては好ましい。多孔性の炭素グラフト化シリカは、非極性吸着剤のカテゴリに属する。これらの吸着剤は、水よりも油又は炭化水素に対して高い親和性を有する。一方、化学的な吸着では、吸着される分子上の原子と第2の相の表面の原子との間の化学結合の形成がなされる。当然ながら、本発明の場合、懸濁された粒子を活性化できるいかなるタイプの吸着も有用であると考えられ、また、本発明はいかなる1つの例、又は適切な吸着剤の1つの例に係る成分に限定されるものではなく、実際、以下に示す実施例において、様々なタイプの吸着が明記されている。
【0039】
以下のパラグラフにおいて、本発明の教示に係る技術の効果、及び、この方法をサポートする、背景となる現象を示す実験データを示す。かかるデータは典型的な結果として提供されるものであり、本発明を、いかなる実験結果にも限定することを目的としない。
【0040】
実験データは、マクロ多孔性シリカと非水性磁鉄鉱懸濁液との相互作用の解析に基づく。以下のように数種類のシリカ表面に関して解析した:
シリカ−C18:オクタデシル炭素を担持する材料;
シリカ−CN:負荷電シアン化(cyanated)シリカ;
並びに未処理シリカ及びAPS修飾シリカ。
【0041】
上記したように、Sunその他は、オレイン酸の単層コーティングによって安定されたナノ結晶質の磁鉄鉱粒子が、ヘプタンのような無極性溶媒中で非常に安定な懸濁液を形成することを教示している。カルボン酸の頭部基は、磁鉄鉱表面に化学的に吸着される。磁鉄表面から伸びている疎水性の脂肪鎖は、無極性の炭化水素溶媒により溶媒和する。搬送液体中における脂肪酸コートされた磁鉄鉱の安定化機構を記載した多くの理論が存在し、またこれらは当業者にとり自明である。本願明細書において、用語「磁鉄鉱」は、磁気ナノ粒子の合成において形成されうる、多くの酸化鉄相のうちのほんの1つであるにもかかわらず、「酸化鉄」と同義的に用いられる。但しそれにより、本発明はいかなる単一の具体的な相に限定されるものではなく、また、用語「磁鉄鉱」には、いかなる酸化鉄の幅広い長所も包含されるべきである。
【実施例】
【0042】
<実験方法>
<材料>
【0043】
大部分の実験において使用する基質である、シリカ−C18は、60Åの孔、50μmの平均粒径を有するシリカであり、Alltech Associates社(Deerfield、IL)製のC18(オクタデシル、6%の炭素ロード)でエンドキャッピングコートされている。シリカ−CN(負に荷電したシアネート化されたシリカ)、及び同じ給源からの同じ粒径の未処理のシリカも用いた。
【0044】
磁鉄鉱ナノ粒子を、水酸化アンモニウムを用いた混合Fe3VFe2+塩の共沈殿により合成した。酸化鉄の沈殿の間、過剰量のオレイン酸を添加することによって、界面活性剤コーティングの単層を形成させた。磁鉄鉱の分散液をアセトン及びメタノールにより沈殿させ、アセトンによって5回、最後にエタノールによって洗浄した。沈殿物を更に、ヘプタンに相転移させた。ヘプタン懸濁液を、13000回転/分(〜16000g rcf)で40分間遠心分離し、あらゆる凝集粒子を除去した。懸濁液H5aは低いPDI(0.09)において12.0nmのZ−平均を有し、H5bは11.8nmのZ−平均粒径を有し、単分散のPDI(0.07)であった。
【0045】
<PCS実験>
算出された所定の量の、ヘプタン中の磁鉄鉱懸濁液を、PCS分析用のクォーツ製のキュベット中のシリカ基質の上に配置した。キュベットを、あらゆる振動も回避するための適切なケア材を有するPCS(光子相関分光)分光計に置いた。キュベットの温度を25℃に維持した。入射レーザー光が遮断されないように、シリカの量を制限した。実質的に、これによりシリカの高さが<1mmに制限され、それは50mgのシリカに相当するものであった。
【0046】
実験の最初のシリーズにおいて、全てのシリカ面をナノ粒子の単層で覆うのに十分な量の磁性流体を、クォーツ製キュベット内のシリカ−C18粉末上に配置した。実験の第2のシリーズにおいて、充分量の磁鉄鉱懸濁液を添加して二層を生じさせた。磁鉄鉱含量は、サンプルH5aでは約1.47mMであり、サンプルH5bでは約1.52mMであった。必要量の算出は、シリカ−C18表面上の孔におけるナノ粒子の吸着が行われないという仮定に基づいて行った。シリカ−C18粒子は50μmの直径で、球形であった。吸着されたナノ粒子は、1枚の六方最密構造の球体をシリカ−C18面の上に形成して、均一な単層を形成し、また二層は2つの同一の単層から構成された。
【0047】
懸濁液中での磁鉄鉱ナノ粒子の成長/凝集の開始を、1〜7日間にわたり、30分の間隔で、PCS分光法によってモニターした(粒子が懸濁液に存在する場合)。PCSの測定に使用する標準作業手順(SOP)を、連続した測定が30分ずつに分けられるように、適切な遅延を伴う200の測定として設定した。各測定は約5分を要し、それぞれ10秒ずつの20のランからなった。集められた全てのデータが、1つのSOP(標準処理手順)により収集されたため、大部分の実験において、キュベットの位置及び減衰インデックスは、実験全体にわたり一定のままであった。したがって、後方散乱された光度は、散乱体の体積重み付きの数を表す。
【0048】
<結果>
ナノ粒子がシリカ上へ吸着していたことは、容易に明らかとなった。懸濁液は、濃度にかかわりなく一定時間で色を失い、一方、白いシリカ−C18粉末はチョコレートのような茶色に変化した。すなわち、懸濁液中の粒子と基質との間の相互作用が存在することが理解できる。
【0049】
<単層等価(equivalent)吸着>
<懸濁液H5a>
実験の第1のセットにおいて、磁鉄鉱懸濁液(H5a)の1つの単層等価(ME)をシリカ−C18上に配置し、時間経過におけるZ−平均粒径をモニターした。データを図5に示す。図5に示される、時間の関数としての観察された粒径の増加を、球体積の変化に変換し、図中の注記として示す。クラスターの成長は、ラン1(図5)においては約2時間まで、又はラン2(図6)においては約4時間まで、線形成長でなされた。
【0050】
両方のランにおいて、最初の線形成長段階の後に、第2の急速な線形成長段階が続いた。体積は半径の3乗に比例するため、粒子のZ−平均粒径の最も小さい変化でも、体積曲線においては強調される。これは一旦非活性化ナノ粒子に対する活性化されたナノ粒子の臨界的な比が、第1のラン及び懸濁液中で生じた後に、クラスターの形成が加速されうることを示唆すると考えられる。このようにして、既に活性化された粒子を有する特定の懸濁液をシード(seed)して、直ちに第2の段階を進行させることが可能となる。ゆえに、懸濁液中の適切なナノ粒子の活性化源は、同じ懸濁液中の他のナノ粒子又はナノ粒子クラスターを含んでもよいと理解できる。ゆえに、既に活性化されたナノ粒子クラスター又はナノ粒子を有する懸濁液の、かかるシードは、特定の用途において、その懸濁液中での成長を加速又は維持するために採用することができる。
【0051】
2つのランにおける多分散性指数及び平均計数率データの変化を図7に示す。第1のランにおけるデータの中断は、データの記録を中断する、取得用PCのプロトコルの関係上生じたものである。粒子の多分散性は第1のランの間、約7時間で最大(1.00)まで増加し、一方、PDIは、約15時間にわたる第2のランの間、〜0.6を上回らなかった。
【0052】
平均計数率もまた、第1のランの場合、ちょうど7時間で4000kcpsまで大幅に増加した。同じ磁鉄鉱懸濁液を用いて、可能な限り、2つのランを、同一の条件で、但し19日間隔で実施した。かかる知見は、本発明の教示に係る方法の具体的な実施においては、懸濁されたナノ粒子とそれらの活性化源との間の相互作用を終了させる適切なタイミングがいつかを示す指標として、粒径分布のモニタリングが必要となりうることを示唆し、一方、他の実施態様では、所定の時間の後に特定の粒径分布が得られたという仮定をなすことによって、かかるモニタリングの必要性をなくすことができることを示唆するものである。
【0053】
シリカ−C18上のME磁鉄鉱懸濁液の吸光度変化を時間経過とともにモニターした。データを図8に示す。PCSでモニターする場合には、吸光度を、粒子が成長する条件で、30分毎に2日間にわたり記録した。吸光度の変化は、成長パターンと同調している。約7〜8時間までは変化がほとんどないが、次に、吸光度の急激な減少が続いた。変化速度は約15時間後に顕著に鈍化し、20時間後には吸光度変化はごくわずかとなった。
【0054】
<懸濁液H5b>:
また、若干異なる粒径(12.0nm)の、独立に合成された懸濁液(H5b)を用いて、ME実験を実施した。この実験を4回繰り返した(その時間内のPCS粒径の変化を図9に示す)。
【0055】
H5b懸濁液による、全てのME吸着に関する平均カウントの変化を、図10に示す。粒子の成長プロフィールは、磁鉄鉱懸濁液の合成後、10日以内に実施した、全部で4回の反復実験において、非常に類似している(図9)。PDI及びカウント(図10、11)における変化のパターンも、懸濁液H5aで観察されたものと非常に類似している。全ての実験において、平均計数率は、〜12時間まで着実に増加し、次に、更に12時間にわたり、ほぼ出発時の値にまで減少した。ラン間での計数値における変化も非常に顕著である。しかしながら、散乱強度は体積にウエイトが置かれているため、いかなる所定のタイミングにおける、粒径分布の上端部における、粒子数の小さな変化によっても散在強度に顕著な影響が及ぶが、z−平均又はPDIにはそれ程影響が及ばない。最大値の観察は、進行中のクラスター成長と整合しており、また、実験の進行に従い、クラスターの減少と整合している。これは、約20時間後の粒径データの散乱増加からも明らかである。
【0056】
時間経過に伴う多分散性指数の変化を、図11に示す。実験の進行により、PDIが増加し、粒子の粒径分布がより広くなった。平均計数率及び多分散性指数(PDI)は、開始から12〜13時間(後方散乱強度が最大となる時)に興味深いトレンドを示す。この時点付近において、全ての実験において、PDIの増加が、スパイクの形として示された。
【0057】
3つの選択された時間における相関関数を図12に示す。データのフィットの質は、後の測定値の場合には良好でない。PDIは〜12時間で高いが、なおも良好なデータのフィットがみられたため、Z−平均を、実験における分布の現実的な平均と考えることができる。計数率はこの領域で最も高い。しかし、約24時間後、計数率は低い値に減少する。青で示すフィットは、48時間後におけるデータポイントにのみ部分的に存在し、ゆえに多分散性指数は1.00であり、Z−平均は信頼性が低い計測である。25〜35時間後、低い散乱強度のため、全てのME実験においてPCSソフトウェアがクラッシュした。
【0058】
<二層等価吸着>:
ラン1及びラン2の間の、シリカ−C18上の磁鉄鉱懸濁液H5aの二層等価(BE)吸着に関して得られたPCSデータを、図13に示す。Z−平均及びPDIは、ME実験と非常に類似した挙動を示した。同じナノ粒子懸濁液を使用して、16日の間隔を置いて実施された両方のランにおいて、短い線形成長段階が約4〜6時間において見られた。ME実験とは対照的に、BE懸濁液では、2つの直線的な急速な成長段階に従っている。最初のものは〜15時間後に開始され、ラン1では35時間まで継続し、ラン2では〜40時間まで継続した。第2の線形成長段階は、両方のランにおいて、〜0.25nm/時でほぼ同一の成長速度を示した。
【0059】
ME実験では、PCS粒径が全ての場合で1500nm以上まで増加したが、BE実験では、成長が約100nmに限定された点は、注目に値する。この理解に基づけば、特殊なアプローチが、特殊なアウトプットを得るために利用できることは明らかである。例えば、大きいクラスターが必要な場合、低いナノ粒子 対 表面比率(ME)を用いたアプローチが最適であると考えられ、一方、分散性がより重要なパラメータである場合、高い比率(BE)によるアプローチがより好適であると考えられる。図15のデータが示すように、BEによるアプローチは、クラスター粒径分布の多分散性が改良されることを示す一方で、クラスターが非常に小さいときには成長が止まり(おそらく表面の飽和又は懸濁液の減少による)、またプロセスが遅くなることを示す。MEの利点は、少なくとも、静置した懸濁状態における成長の速度(但し分散性は劣る)である。更に、成長速度の違いを利用して、最初にMEアプローチを使用して若干のクラスターを急速に生成させ、それを次に他のボリュームに供給し、そこで、それらをBEアプローチを用いて活性化される粒子のシードに用いる。
【0060】
50〜60時間後、この段階に続いて、非常に遅い成長段階が見られた。図13のデータ中、中断部分が存在する(ラン2、PCS分光計が他の実験のために用いられていたため)。キュベットを慎重に取り出し、これらの時間、25℃の常温浴中に置いた。実験の再開時に、キュベット及びレーザー減衰の位置を自動的に調整した。そのため、不連続な部分が図14のカウントにも存在する。
【0061】
クラスター成長の中断後もなお、同じ直線に沿って位置するという事実は興味深い。それはすなわち、キュベットの移動によっても実験が不能になることはなく、更に、PCS実験のレーザー光はナノ粒子クラスター成長にいかなる影響も及ぼさないことを示唆するものである。
【0062】
サンプルH5a中のBE吸着実験における、PDI及び計数速度の変化を図14に示す。ME実験(図7)で観察されたように、平均計数率は、両方のランにおいて、最初の20〜40時間において、〜約500kcpsで連続的に増加し、その後減少した。
【0063】
サンプルH5aにおける、3つの選択された時間における、BE実験の時間相関データへのフィット、及び、得られる粒径強度分布を、図15に示す。BE実験へのフィットは、低いPDI値であるため、ME実験より良好な品質であり、全てのケースで、キュムラントフィットは当該データ全てに及んだ。クラスター粒径分布は、BE実験の間、広くなかったため、様々な方法が様々な目的のために最適に選択されうるという、上記で概説した評価を再度裏付けることとなる。
【0064】
BE実験における、様々な調製からのクラスター成長に関するデータを、図16に示す。一般に、流体力学直径(PCS粒径)は約50時間までは増加し、次に、成長速度の若干の減少が見られる。約40時間までの、計数率時間の増加、及びそれに続く減少の傾向が、再び観察された。BEを添加した全てのランにおいて、カウントが約40時間まで増加することが明らかとなった。
【0065】
シリカ−C18上のBE磁鉄鉱懸濁液の、時間経過に伴う吸光度変化をモニターした。データを図17に示す。120時間にわたる実験の進行において、吸光度が減少し、更に、減少速度は段階的に減少する。曲線中に不連続な部分はない。
【0066】
<更なる実験>:
ヘプタン中の、オレイン酸コーティングしたナノ粒子のサンプルを、未処理のシリカ(シリカ−C18の代わり)上に配置して、実験を行った。この場合には、クラスター形成又は吸着がないことが判明した。このことは、上記のプロセスでは、活性剤(例えば基質)によるナノ粒子の活性化が必要であるという仮定をより裏付けるものと考えられる。
【0067】
ヘプタン中の、オレイン酸でコーティングしたナノ粒子のサンプルを、アニオン性シリカ−CN(シリカ−C18の代替)上に配置して、実験を行った。μm範囲への急速なクラスター成長が、3時間以内に見られることが明らかとなった(図18参照)。低い散乱強度のため、PCSソフトウェアは4時間後にクラッシュした。後の時点に関しては、その翌日に、PCS分光計の最最適化後に再び実施した。この場合、様々な活性化基質が、本発明の範囲内の方法において十分利用可能であると理解される。実際、シリカCN基質の場合、次の実験により、速度及びナノ粒子クラスター形成の程度の制御が可能であることが示された。
【0068】
同じ量のシリカ−C18基質(50mg)を使用して、純粋なヘプタンをそこに配置して、ブランク実験を行った。それを振盪した後に、懸濁液のPCS測定を実施した。PCSデータでは、最初に、82μm粒径の粒子の存在を示した。これは、キュベットの底に置かれているシリカに起因するものである。その後の数日間のいかなる時点においても、検出可能な粒子は存在しなかった。また、同じ量のシリカ−C18で、ヘプタン中に5mMのオレイン酸を含むキュベットを調製した。この懸濁液においても、2日間にわたり懸濁粒子が得られず、PCS測定がそのたびごとにクラッシュした。このことは、上記成長には、懸濁液中におけるナノ粒子の存在が必要であるという事実をより裏付けるものと考えられる。
【0069】
一連の吸着実験を実施した。その際、ヘプタン中の、オレイン酸コーティングされたナノ粒子のサンプルをシリカ−C18上に配置し、所定のタイミングにおいて溶液を一部除去し、その時点で、実験を停止した。次にアリコート中の鉄含量を測定した。数日後、懸濁液から、シリカ−C18上へ吸着させた鉄のナノ粒子をほぼ完全に除去した。このサンプルの物理的な外観を確認した結果、白いシリカ−C18基質が徐々に着色し、チョコレート色に変化していた。この際、クラスターの回収のためには、溶液から基質上へクラスターが沈殿する前における、クラスター懸濁液の除去が必要であることはいうまでもない。
【0070】
<走査電子顕微鏡検査(SEM)>:
液体を1滴SEMスタブ上に拡散させ、それを乾燥させることにより、電子顕微鏡検査用のサンプルを調製した。PCS測定の終了後、ガラスピペットを使用して、キュベットの底から液体を採取した。導電性カーボンテープにより固定されたアルミニウムSEMスタブ上へ、スパチュラの先端上の一つまみの粉末をはねかすことによって、「未コーティング」シリカ−C18サンプルを調製した。低い拡大率によるシリカ−C18粒子のSEM映像は、25〜50μmの範囲の粒子(最高100μmの若干の大きな粒子が存在)を示した。図19のSEM画像は、非常に微細な小さい白いアモルファス含有物を含む、結晶性シリカ−C18表面の微細な形態を示す。より高い解像度の画像により、上記介在物が50〜200nmの範囲の粒径であることを示す。単層処理された磁鉄鉱懸濁液の大部分の領域における顕微鏡写真において、シリカ−C18表面上のナノ粒子のコーティングが見られなかった。
【0071】
磁鉄鉱ナノ粒子は、特に隣接するシリカ粒子の付近で、エッジに沿って大きな凝集体として沈澱することが明らかとなった。図20の矢印は、かかるナノ粒子が沈着した領域のうちの1つを示し、それを、図21に示す画像のために選択した。磁性粒子クラスターは100〜200nm程度の粒径である。
【0072】
平坦な表面上、又は2つの粒子間の接合部分には、いかなる磁鉄鉱粒子の沈着の徴候も見られない(図22)。更に、AFM試験により、平坦な表面上でのナノ粒子の存在を示すいかなる証拠も見出されなかった。すなわち、ME及びBEの呼称は、磁鉄鉱濃度の高い及び低いサンプルのことを指す。それはすなわち、本発明の範囲内において、用語ME及びBEは、ナノ粒子の、活性化基質に対する比率が高い及び低いことを定義するものとして理解される。
【0073】
<考察>:
NMR及びPCSの測定により、懸濁液H5a及びH5bは、調製した日から2ヵ月後においても非常に安定であることが確認された。目視による観察によっても、シリカ−C18上に配置された懸濁液は、時間経過に伴い酸化鉄が減少していたことが非常に明白であった。上記の吸着は、吸光度測定、及び鉄の測定により確認される。
【0074】
ME吸着実験において、Z−平均のクラスター粒径は、最初の数時間、直線的に徐々に増加した。この後、約12時間まで、速い成長の転移段階に移行した。この段階は、後方散乱光度の増加、及び約0.2までのPDIの増加を伴った。この時点では、クラスターは約100nmの直径である。次に、非常に急速な線形成長(100nm/時間のオーダー)の段階となり、数時間内に、μm範囲のクラスターが生じた。この段階は、散乱光の減少及び最大1.0の値までのPDIの増加を伴った。低い後方散乱光度のため、24時間以内にデータ取得が常に停止した。
【0075】
BE吸着実験においては、クラスター成長は全般的に遅く、通常、3つの段階で行われることが観察された。ほとんどの場合、ME実験と同様の遅い線形成長の短い段階から始まり、次に、速い速度の線形成長(c.0.5nm/時間)の別の段階が続き、更に遅い線形成長(c.0.25nm/時間)の段階によって終了した。幾つかの実験では、急速な成長が、異常な態様で続いた。ME実験のように、約40〜60時間における遅い成長段階への移行まで後方散乱強度が増加し、次に再び減少した。
【0076】
幾つかの共通の特徴がME及びBE実験に存在する。すなわち、誘導段階が存在し、その間、粒径がほとんど変化せず、次に、クラスター成長が顕著に加速することである。いずれの場合においても、後方散乱光度が最大値まで増大し、次に、鉄濃度が減少するために減少する。また、顕著な相違も存在し、BE実験の場合、成長は遅く、懸濁液中に残留するクラスターは大きく成長しない。また、成長中のクラスターは、BE実験の場合よりもはるかに単分散性が高い。BE実験の場合、誘導段階が存在する場合には、それはME実験の場合よりも非常に短い。
【0077】
ME及びBE実験の両方において、オレイン酸エステルで安定化された磁性ナノ粒子を、アルキルグラフト化シリカ相に吸着させる方法論を利用している。吸着工程が遅い速度で進行するため、拡散が制限されると考えられる。
【0078】
誘導段階の間、ナノ粒子はシリカ表面の付近で拡散すると考えられる。大部分の粒子は反発されるが、端部に接触したものは、表面との間で、プロトン、水酸基又はオレエート基を交換し、クーロン力により固定される。上記のデータは、これらの粒子がその後脱着することを強く示唆する。脱着したナノ粒子の単層コーティングが崩壊し、そのときにオレイン酸コーティングの一部がシリカ−C18に結合し、懸濁液中のナノ粒子の活性化が行われる。粒子がどれくらいの時間、脱着前に表面上に残るかを推測することは不可能であり、実際、それらは短時間吸着されることができるが、当該ナノ粒子が、荷電された物質として脱着することはほとんど考えられない。誘導期のこの観察結果は、図1に関して上記したような直接的な機構、及び酸化鉄:オレエート:シリカ−C18系の場合と整合している。しかしながら、この観察結果が、本願明細書に記載されている具体的なプロセスパラメータと整合している一方で、1つ以上の他の若しくは代替的な機構が、他の設定において有用でありうるため、本発明はこの機構に限定されるものとして解釈すべきではないと理解される。
【0079】
シリカ表面上の吸着部位の性質が不明なままであるが、単層が表面上に形成されないことは明らかであり、また、上記ナノ粒子はシリカ粒子の端部に沿ってクラスター状に堆積することが明らかである。上記端部は隣接するシリカ粒子と向き合う傾向を有することをSEM画像は示唆するが、これは、上記粒子がSEMスタブ上で乾燥されたときに生じると考えられる。シリカ不純物(例えば酸化アルミニウム)の存在が、表面活性の原因となることも予想できる。しかしながら、クラスターは高品質(低い不純物含量)のC18グラフト化シリカ上に成長することが観察され、一方、クラスター成長は、未処理シリカの場合は観察されないがシリカ−CNの場合は非常に急速な吸着が観察される。また、11nmの磁鉄鉱粒子がシリカ粒子間の隙間に容易に拡散する一方で、大きいクラスターではそれが不可能であるということにも留意すべきである。
【0080】
誘導段階の終了後、懸濁液中における表面活性化されたナノ粒子の数は臨界値を上回る。誘導段階の期間は若干変化し、それはシリカ表面上のナノ粒子沈着がなされる確率の低さに関係すると考えられる。次に、ME実験において、表面活性化されたナノ粒子の間で凝集が生じ、クラスターの成長が行われる。磁鉄鉱含量が比較的低いときには、シリカ表面に容量が残り、ナノ粒子の表面を更に活性化することが可能となる。次に、非常に急速なクラスター成長(図9)がなされる後期段階へ徐々に移行する(おそらくクラスターの凝集により生じる)。図1に示すように、幾つかのタイミングにおいて、成長したクラスターは沈殿する。
【0081】
BE実験においては、クラスター成長は徐々に行われ、より制御される。磁鉄鉱含量は比較的高いため、表面活性化されたナノ粒子を得るために利用できるシリカ表面の容量が少なく、したがって、懸濁された物質の合計量は全体的に少なくなる。クラスター成長は、個々のナノ粒子を成長するクラスターへ添加することにより行われる。含まれる全てのクラスターが一緒に成長する傾向が強く、それはすなわち、分布の上端部のクラスターは若干反応性が低いことを示唆する。最終的に、遅いクラスター成長(図13)の段階への移行がなされるが、それは、懸濁液から、最初の11nmの粒子が完全に消費されることによると考えられる。図15において、44時間後の曲線では未だ若干のナノ粒子が含まれるが、これは最初の成長が減速し始める時間に対応する。
【0082】
ゆえに、実験結果から、オレイン酸コーティングされた磁気ナノ粒子の、ヘプタン中懸濁液からのシリカ−C18上への一時的な吸着が行われる一方で、残留する懸濁粒子が連続的にクラスターを形成することが確認された。クラスターは数日間にわたり、μmの粒径範囲となることができる。吸着及びクラスター成長速度は、拡散が制御される工程において予想されるのと比較し、桁違いに遅い。これはすなわち、シリカ面とナノ粒子との相互作用を減少させる顕著なエネルギー障壁があること、又は吸着前に他のプロセスが存在することを示唆する。上記の観察結果は、ナノ粒子クラスター成長における支配的な機構と整合しており、この場合には、一時的に吸着されたナノ粒子のシリカ面からの脱着による損失である。これにより、懸濁液中に表面活性化されたナノ粒子が生じ、その際には、オレイン酸のコーティングが部分的に除去される。少ない量の反応性ナノ粒子は、他の脱着した粒子と相互作用し、又はクラスターの成長がμmの範囲となるように調整されながら安定化されるか、あるいはそれらは結局シリカ基質と不可逆的に結合する。
【0083】
以上において、本発明を、Sunらにより提唱された技術を使用して得られるナノ粒子に関して記載した。Sunらの方法は、コーティングされたナノ粒子を生産する方法である。本発明が、Sunらの技術を使用して最初の安定化ナノ粒子を形成する態様に限定されるものと解釈すべきでないことが理解されよう。例えば、ヘプタン中の、オレイン酸コーティングしたナノ粒子サンプル(異なる合成経路により調製)を、上記の実験において用いたものとは異なる給源から得たアルキルグラフト化−C18基質上に配置して、実験を実施した。ナノ粒子の調製は、ミクロエマルジョンの形成を伴うものであり、それは公表された手順に基づくものであった(Lee,H.S.,Lee,W.C,Furubayashi,T.A comparison of co−precipitation with micro−emulsion methods in the preparation of magnetite,Journal of Applied Physics 1999,85(8)5231−5233)。使用する基質は他の実験のものより高品質であり、高いグラフト密度及び高いシリカ純度であった。図23のPCSデータに示すように、150nmを上回る粒径へのナノ粒子クラスターの成長が見られたことが、改めて明白となった。これは、上記プロセスが、Sunの方法により調製される粒子に、又は特定のタイプに、又はアルキルグラフト化シリカの給源に特有のものでないことを証明する。注意すべき点は、図23に示されるデータの中断は、キュベットがPCS分光計から取り除かれた時点に対応するということである。後の時間の抽出されたPDIの不安定性は、低い粒子濃度と関連する低い品質のデータを反映するものである。このサンプルは、多く(>>10)の単層等価に対応する。
【0084】
上記において、具体例に即して本発明の教示を記載したこと、すなわち、オレエートコーティングした酸化鉄ナノ粒子の懸濁液から、磁鉄鉱ナノ粒子クラスターを生成させる具体例に即して記載したことが明らかであろう。この実施例は、本発明を全般的に教示する際に、理解を補助するために提供されたものであり、それはすなわち、ナノ粒子上のキャッピング剤との親和性を有する基質を提供することによって、(基質は例えば、アルキル修飾されたシリカ又はシアン化シリカ基質である)ナノ粒子からキャッピング剤を除去して反応性ナノ粒子を生成させることが可能となるという例である。2つ以上の反応性ナノ粒子が相互作用し、ナノ粒子クラスターの生成が行われる。本発明の教示のあらゆる態様(キャッピング剤でコーティングされたナノ粒子を含んでなる懸濁液を、キャッピング剤のための親和性を有する基質と接触させ、反応性ナノ粒子を生成させ、それらが結合してナノ粒子を形成する)への全般的な応用は、以下に示す他の一連の実験データにより裏付けられる。
【0085】
この第2の態様(図24に示す)において、クエン酸塩コーティング金粒子を、水溶液中に準備する(2400)。コーティングされた安定化ナノ粒子は、約16〜17nmの粒径分布で提供される。上記懸濁液を、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン修飾(APS−修飾)シリカ基質、又は約300nmの粒径を有するかかるシリカ粒子(2405)と接触させる。クエン酸塩キャッピング剤に対するAPS修飾シリカの親和性により、基質表面上のナノ粒子上に層が形成され、懸濁液(2410)中に反応性の金ナノ粒子が生成する。これらの2つ以上の反応性ナノ粒子が相互に結合し、水懸濁液中で金ナノ粒子のクラスターが生成される(2415)。これは当然ながら、制御されたナノ粒子クラスターの成長方法に関する本発明の教示の一般的な応用が、キャッピングされたナノ粒子及びキャッピング剤との親和性を有する適切な活性化剤を供給することによって効果的に行えることを裏付けるものである。
【0086】
図25は、金ナノ粒子によるナノクラスター成長を示すTEMイメージの例である。キャッピングされた金ナノ粒子を、活性化剤(このケースでは(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)修飾シリカ)で1分間曝露し、1時間経過後、クラスターの粒径分布が、最初の100nm未満から約300nmに増加したことが明白に示されている。
【0087】
本発明を、好ましい実施形態及び化合物/材料に関して記載したが、当然ながら、それらは典型例としてのみ記載されたものであり、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられうる場合を除いて、それらはいかなる形であれ、本発明を限定するものではない。すなわち、例えば、典型的な酸化鉄及び金のナノ粒子に関して本発明を記載したが、それらは、本願明細書に記載のものと異なる材料を用いても実施できることはいうまでもない。本発明の教示の範囲内で重要なことは、安定化ナノ粒子を、最初に安定化に寄与するキャッピング剤の除去により、最初に活性化するということである。この除去は、キャッピング剤との親和性を有する活性化剤の添加によりなされ、当該除去は、直接的、間接的又はそれらの2つの機構の組合せによりなされうる。更に、1つの図又は実施例に関して記載されている結果又は特徴を、本発明の技術思想又は範囲から逸脱しない範囲で、他の図又は実施例のそれらと置換できると理解される。なぜなら、整数や成分を相互に変化させることは十分可能であると考えられ、またそれらは本発明の教示に含まれるべきであるからである。
【0088】
ナノ粒子クラスターの典型的な形成方法を記載したが、本発明の教示は、最初に安定化されたナノ粒子が懸濁液に提供され、これらの安定化ナノ粒子が、ナノ粒子の表面からの安定化キャッピング剤の除去によって不安定化される、いかなる工程においても応用されることが理解されよう。次に、これらの反応性若しくは表面活性化ナノ粒子の2つ以上が懸濁液中の他の反応性ナノ粒子との相互作用及び結合によって安定化し、その安定化の結果、ナノ粒子のクラスター形成がなされる。したがって、本発明を例示的実施形態に関して記載したが、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられる態様以外は、いかなる態様にも限定されるものではない。
【0089】
更に、実験データにおいて示される結果は、典型的なタイプの結果であり、それは本発明の教示を使用して得ることが可能なものである。それらが、基礎となる特定の信念若しくは理解に関するものとして説明される場合には、本発明は、かかる信念若しくは理解に限定されるものではない。活性化物質を使用した懸濁液中でのナノ粒子の活性化、及び次のクラスター成長(本発明の教示により示されている)は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられる態様以外は、いかなる態様にも限定されるものではない。
【0090】
本願明細書において用いられる用語「含んでなり」/「含んでなる」とは、記載された特徴、整数、段階又は成分の存在を特定するためのものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、段階、成分又はその群の存在又は追加を排除するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ粒子のクラスター(以下ナノ粒子クラスターと記載する)に関し、特に所定粒径のクラスターの形成において有用な方法に関する。好ましい実施形態では、本発明は磁気ナノ粒子クラスターを提供する。本発明はまた、かかるナノ粒子クラスターの、医療用途においての使用(例えば薬剤放出、温熱療法の媒介物質及び磁気共鳴映像法用の造影剤としての使用)を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーの応用に関する大きな課題の1つは、材料の特性が、敏感なまでに粒子の粒径に依存することである。比較的単分散(1つの粒径のみ)である粒子又は粒子クラスターを成長させることは非常に困難である。また、単一の工程を使用して、広い粒径範囲にわたり選択された粒径を有する構造を成長させることも非常に困難である。
【0003】
例えばMRI(磁気共鳴イメージング)の分野においては、造影剤の調製のために、ポリマー(通常デキストラン)又は高分子電解質の存在下で、ナノ粒子のin situ成長及び安定化を同時に行わせることによって、ナノ粒子クラスターを成長させることが公知である。かかる技術は例えば特許文献1:国際公開第2005/076938号において記載されており、それは、マルチポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子クラスター、それを含んでなる水性磁性流体、並びに、分離手順へのそれらの使用の方法に関して開示している。マルチポリマーコートされた磁気ナノ粒子クラスターは、それに結合する第1のポリマー(第1のポリマー−超常磁性粒子の複合体がコロイドとして安定にならない)と、それに対して結合する第2のポリマー(複合体を安定化させる)とを有する超磁性核を含んでなる。分離方法(発現されたタンパク質の、それを発現する細胞及びウイルスからの分離を含む)が全て記載されている。記載されている方法は、安定なクラスターを提供する能力を有するにもかかわらず、形成されたクラスターの粒径制御は、使用する安定化ポリマーの表面の化学的性質により決定され、また大きいクラスターは、基本的に、低いナノ粒子含量のポリマーである。したがって、形成されたクラスターの粒径分布の制御は困難である。
【0004】
要約すると、かかる周知の技術を使用することにより、最終的に得られるクラスターの粒径が、ユーザ制御とは対照的に、工程制御されるものとなる。したがって、再現可能な粒径のサンプルを生成させることは困難であると考えられる。更に、クラスターの粒径範囲が幅広くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/076938号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、様々な材料から形成された、制御された粒径を有するナノ粒径の物質の製造を可能にする方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの、及び他の課題は、本発明の教示に従う方法により解決され、それは制御された粒径のナノ粒子クラスターの、再現可能な方式での製造を可能にするものである。
【0008】
本発明の教示を用いることにより、懸濁液中でのナノ粒子のクラスターの成長を可能にする方法が得られる。任意の粒径の最終的なクラスターが、一定の精度で選択できる。同様に、粒径分布の制御も可能となる。本発明の教示に従う方法を使用することにより、所望の粒径が得られたときに工程を終了させることが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することが可能となる。この技術を用いて、懸濁液の多分散性を制御することも可能となる。
【0009】
以上より、請求項1に記載の方法が提供される。有利な実施形態は、従属請求項において詳述される。これらの、及び他の本発明の特徴は、以下の説明及び図面を参照することにより理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、本発明を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図1】本発明の教示による典型的な方法に従う、ナノ粒子クラスターの調製に関連する段階を表す図。
【図1a】は、本発明の教示に従うナノ粒子クラスターの調製の、代替的な機構を示す図である。
【図2】図1において例示した代表図に関連する段階を示す模式図。
【図3】様々なナノ粒子:シリカ面の比率による、2つの典型的なPCS実験からのデータを示す。結果は、成長速度にわたる制御を示す。
【図4】様々な調製の手順を記録したデータを示す。それにより更に、クラスターがナノ粒子の添加により懸濁液から成長することが確認された。
【図5】シリカ−C18上への、磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加におけるPCSデータを示す。ラン1の時間における、懸濁液中のZ−平均の増加を示す。Y軸のPCS直径を体積に変換した場合を、挿入部分として示す。
【図6】シリカ−C18上への、磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加におけるPCSデータを示す。
【図7】シリカ−C18(2つのラン、すなわちラン1及び2)上への磁鉄鉱懸濁液H5aのME添加における、多分散性指数及び平均計数率の変化を示す。
【図8】シリカ−C18上へのH5a懸濁液のME実験における、時間経過に伴う475nmでのUV吸光度を示す。
【図9】4つの連続的なランの間のME添加実験における、わずかに異なる粒径(11.8nm)のH5bのZ−平均粒径を示す。
【図10】シリカ−C18上への磁鉄鉱懸濁液(H5b)の1つの単層の添加における、時間経過に伴う平均計数率の変化を示す。
【図11】シリカ−C18上への磁鉄鉱懸濁液(H5b)のME添加における、時間経過に伴うPDIの変化を示す。
【図12】シリカ−C18上へのME実験における、サンプルH5bの場合のPCS相関データフィット、及び強度粒径分布を示す。5時間後(
【化1】
)、13時間後(
【化2】
)、及び実験終了(48時間)後(
【化3】
)。48時間における強度分布(
【化4】
)のデータは、当該範囲内おいてはゼロであり、大きな粒子のみが出現する。
【図13】シリカ−C18上へのBE添加における、懸濁液H5aの場合のPCSデータを示す。ラン1(
【化5】
)、及びラン2(
【化6】
)の、時間経過に伴う懸濁液のZ−平均の増加を示す。短い(s)及び長い(l)時間データにフィットする直線のパラメータを、各ランにおいて用いた。
【図14】サンプルH5aのBE実験における、多分散性指数(PDI)データ及び平均計数率を示す。
【図15】多孔性シリカ−C18基質上への懸濁液H5aにおける、PCSデータフィット及び強度粒径分布を示す。(BE実験の最初のランから、14時間後(
【化7】
)、44時間後(
【化8】
)、及び120時間後(
【化9】
))。
【図16】BE実験における、3つのランにおける、時間経過に伴うZ−平均データを示す。(□)H5aラン1、(○)H5aラン2、及び(▽)H5bラン3。
【図17】シリカ−C18上へのH5b懸濁液のBE実験における、時間経過における475nmでのUV吸光度を示す。
【図18】シリカ−CN基質上への磁鉄鉱懸濁液のME吸着に関する、PCSデータを示す。Z−平均粒径を(□)で、PDIを(●)で示す。
【図19】新しいシリカ−C18表面の、走査型電子顕微鏡イメージ。
【図20】ME実験からの、コーティングされたシリカ−C18粒子の電子顕微鏡写真。
【図21】矢印で示された図20の領域の拡大イメージ。
【図22】BE実験からの、コーティングされたシリカ−C18粒子の電子顕微鏡写真。
【図23】図3とは異なる給源からのアルキルグラフト化−C18基質の上に、図3とは異なる合成経路により調製され配置された、オレエートコーティングされたナノ粒子の、懸濁液中におけるPCSデータフィット及び多分散性指数を示す。
【図24】クエン酸塩コーティングされた金ナノ粒子から、NH2修飾されたシリカ粒子との相互作用によって、それらのクエン酸塩キャッピング剤が除去され、金ナノ粒子クラスターの生成がなされる機構を示す。
【図25】金ナノ粒子クラスターの成長を示す、TEM画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の例示的実施形態を参照しながら、本発明を記載するが、それらは、本発明の教示の理解を補助するために記載されるものである。本発明の教示を使用することにより、懸濁液中でのナノ粒子クラスターの成長を可能にする方法が提供される。クラスターは、複数の個々のナノ粒子で形成される。任意の最終的なクラスターの粒径が、ある程度の精度で選択されうる。同様に、粒径分布の制御をなしうる。本発明の教示に従う方法を使用することにより、所望の粒径が得られるタイミングで、工程を終了することが可能となる。モニタリング技術を使用して、懸濁液のクラスターの成長をモニターし、所望の粒径が得られるタイミングを決定することができる。
【0012】
本発明の範囲内では、懸濁液のナノ粒子が活性化源により曝露され、それにより、2つ以上の個々のナノ粒子の結合が刺激され、ナノ粒子クラスターの形成がなされる。上記活性化源は、活性化基質、又は実際には他の活性化粒子、又は懸濁液中の既に形成されたクラスターであってもよい。上記活性化源は通常、活性化表面をなしうる材料である必要がある。上記活性化源から懸濁液を除去することによって、上記ナノ粒子クラスターの更なる成長を終了することが可能である。このようにして、除去を行う適当な時間を適宜選択することは、測定可能な粒径及び分布を有するナノ粒子クラスターの調製にとり有用である。
【0013】
すなわち、例えば成長をモニターすることができ、また、所望の粒径のクラスターが得られたときは、活性化源と懸濁液との接触をなくすことによって、クラスターの更なる成長を抑制できる。このようにして、ユーザ側において、得られるクラスターの最終的な粒径を選択することが可能となる。実質的に、ナノ粒子クラスターの成長度合いの制御は、懸濁液中のナノ粒子とそれらの活性化源との間の相互作用によって維持される。
【0014】
一実施形態では、上記活性化源は、第一相(液相)のナノ粒子と、第二相(固相)の活性化基質との間に相互作用するような基質である。利用できる1つの適切な基質は、シリカ基質である。本発明では、用語「シリカ」には、純粋なシリカ(SiO2)及び他の天然の形態のシリカが包含され、当業者に自明のように、1つ以上の微量元素の形で不純物を含有しうることが理解されるであろう。1つの特に有用なシリカの形態は、アルキル鎖グラフト化シリカであり、もう一方はシアネート化シリカである。
【0015】
他の実施形態では、上記活性化源は、懸濁液中の他の活性化された粒子又はクラスターである。かかる態様は、懸濁液中において、既に活性化された粒子若しくはクラスターで当該懸濁液をシードしてクラスターの継続的な成長を可能にする場合において、又は、実際、クラスター形成の連続的なサイクルが必要である場合において、特に有用であり、また、懸濁液中の活性化可能な粒子の数が、クラスターの形成によって減少する。
【0016】
最初に、ナノ粒子上にキャッピング剤を複数供給することによって、ナノ粒子を安定化させる。適切なキャッピング剤の選択は、ナノ粒子の表面へ結合してナノ粒子を安定化させる、キャッピング剤の能力に基づいてなされるであろう。キャッピング剤は次に、ナノ粒子から少なくとも部分的に除去される。キャッピング剤の除去によりナノ粒子の安定性が変化し、それにより反応性を有するようになる。上記の除去は、活性化材料(例えばキャッピング剤との親和性を示す基質)の供給により実施することができる。キャッピングされたナノ粒子と活性化剤との間の相互作用により、上記の除去が開始される。それらの形成に続き、反応性ナノ粒子が互いに結合して、すなわち、2つ以上のナノ粒子が化学的若しくは物理的に相互に結合して、ナノ粒子クラスターの生成がなされる。
【0017】
図1及び2に示すように、本発明の教示に従う方法は、分散させたナノ粒子の懸濁液を、表面などの、活性化源と接触させることにより、ナノ粒子のクラスターの成長を生じさせることができるという理解に基づく。個々の粒子と表面との接触により、段階的なクラスターへの凝集が生じる。懸濁液中の粒子と表面との接触が長く維持されるほど、得られるクラスターの最終的な粒径は大きくなる。この典型的な方法では、所望の粒径のクラスターが支配的となったときに、ユーザは、それらの2つの間の相互作用を終了させることができる。あるいは一部の懸濁液を除去してもよく、それにより、残りの材料における、ナノ粒子クラスター成長の工程を継続させることができる。
【0018】
相互作用を促進すると考えられる機構を示すこの例においては、まずナノ粒子の懸濁液を表面と接触させる(段階200)。表面との相互作用を通じて、懸濁液中の、複数の利用できる粒子の個々の粒子は、表面から界面活性剤分子が脱着して失われることを通じて活性化される(段階205)。これらの活性化された粒子の2つ以上が結合し、クラスターの成長が行われる(段階210)。活性化された粒子間のこの相互作用の繰り返しにより、大きなクラスターが生じ、それらが懸濁液から沈殿しうる(段階215)。懸濁液中の一次粒子及び/又は形成されたクラスターは、いずれも表面との親和性を有し、また、基質が懸濁液中に添加されるこの例示的実施形態では、工程全体にわたって懸濁液からの沈殿を生じさせてもよい。このようにして、懸濁液から材料が連続的に減少する。有用な粒径のクラスターを検出した後、次にそれらのクラスターと共に、懸濁液を除去し、次にクラスターを回収又は安定化させることが可能となる。
【0019】
効果的に、この例示的実施形態では、懸濁液中に存在する個々のナノ粒子と基質表面との接触によって、事前に安定化させたナノ粒子が活性化され、それらは次に、同様に活性化された粒子と結合できる。また、懸濁液中において、活性化された粒子が、活性化されていない若しくは安定化された粒子を活性化することも可能である。しかしながら、活性化基質が存在する場合には、支配的な活性化源は活性化基質であると考えられる。クラスターの成長はナノ粒子の活性化に依存するため、それは時間依存的である。その結果、工程を制御することができる。この制御は、サンプリング手順により工程をモニターして、サンプリングされた粒径分布が予め定めた条件を満たすときに工程を終了させること、又は、所定の時間後に所定の粒径分布が得られると仮定して、時間を終了要因として用いること、のいずれかにより実施できる。
【0020】
最初の試験は、脂肪酸コーティングされた単分散(単一の粒径)の10nmの酸化鉄ナノ粒子のヘプタン中懸濁液の使用に基づくものであった。これらのナノ粒子は、当業者にとって自明な態様で、例えば、粒径制御された磁鉄鉱ナノ粒子の合成に関して開示された技術(Sun S.H.,Zeng H.,Journal of the American Chemical Society,124(28),8204−8205,2002)を使用することにより、合成される。これらの懸濁液は、数ヶ月にわたり安定であり、かつ変化しないことが公知である。実質的に、これらのコーティングナノ粒子は、そのプロセスの間に一次粒子を形成し、かつ、その表面にコーティング又はキャッピング剤を提供された核を有し、そのコーティングは活性化可能であり、それにより、活性化ナノ粒子が得られる。しかしながら最初の懸濁液中で、ナノ粒子は安定な形態で提供され、その安定化は、個々のナノ粒子の表面上のキャッピング剤により提供される。
【0021】
ナノ粒子を活性化するために、上記懸濁液を、標準的なキュベット中で、C18グラフト化シリカ基質上に配置した。懸濁された粒子の粒径を次に、光子相関分光法(PCS)によりモニターした。上記粒子の粒径が、一次粒子の凝集又はクラスター形成により徐々に増加するのが観察された。
【0022】
溶液懸濁液中のナノ粒子の個々の表面活性化に関する上記の機構は、反応性ナノ粒子を生じさせることのできる適切な機構を説明するという意味で有益であるが、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられうる場合を除いて、本発明の教示は、いかなる1つの具体的な機構にも限定されないことが理解されよう。この点をサポートするため、図1aにおいて、代替的な機構を例示する。そこにおいては、ナノ粒子、懸濁液及び基質の間の相互作用によって、個々のナノ粒子が段階的に凝集し、ナノ粒子クラスターが形成される。図2を参照しながら、図1aの模式図を再検討すると、図2の記載は、安定化された懸濁液中の一次ナノ粒子の懸濁液と、活性化基質との間の相互作用が、ナノ粒子クラスターの制御された成長を提供する際の一般的な機構を依然としてサポートすることが自明である。
【0023】
図1aに示すように、ナノ粒子クラスター活性化のための更なる経路が存在し、それは、図1及び2に関して上記したように、シリカと粒子との直接的な相互作用を伴うものではない。この間接的な機構においては、上記基質はシリカから再び形成され、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の安定な形態での維持を補助する、オレイン酸含有懸濁液中に提供される。図2に関して記載するように、段階200では、懸濁液をシリカ基質と接触させる。図1の直接的な機構においては、シリカは直接ナノ粒子と相互作用するが、この間接的な機構においては、シリカはゆっくり懸濁溶媒からオレイン酸(一次ナノ粒子上の界面活性剤)を除去する。この界面活性剤(既に明らかなように、一次ナノ粒子に安定性を提供する)の除去により、懸濁液中での反応性ナノ粒子の生成がなされ(段階205)、2つ以上の反応性ナノ粒子の相互作用によるクラスター成長が生じる(段階210)。このクラスター成長は更に、懸濁溶媒中の遊離の界面活性剤と、ナノ粒子に吸着された界面活性剤との間の平衡を、幾らかの界面活性剤が脱着する方向にシフトさせ、それにより不完全な界面活性剤層を有する活性ナノ粒子が生じ、クラスター成長に至る。クラスターが所定の粒径に達した後、懸濁液と活性化基質との接触をなくすことによって、クラスターの成長を終了させることができる(段階215)。
【0024】
この第2の機構の有効性は、懸濁液中でのクラスター成長により示される。そこにおいては、一次ナノ粒子のシリカ表面への直接の接近が妨害されるが、それでもクラスター成長が生じる。なお、図1及び2の直接的な機構、又は図1a及び2の間接的な機構が排他的でないことはいうまでもない。
【0025】
上記の機構にかかわりなく、利用可能な基質の量を変えることによって、又は、ナノ粒子に対する安定化界面活性剤若しくはキャッピング剤の比率を増加させることによって、クラスターの成長速度及び程度、並びに粒径分布範囲の制御が可能となること、また実際に、成長を終了されることができることが明らかとなる。これらの2つの要因のいずれも、必要となる既存の反応性ナノ粒子の安定化を可能にし、新規な反応性ナノ粒子の形成を防止する。活性化基質が除去される態様においては、更なる活性化は行われない。同様に、懸濁液中の安定化界面活性剤(例えばオレエート)の濃度を過剰とすることにより、界面活性剤分子は、あらゆる反応性ナノ粒子と、他の反応性ナノ粒子と相互作用する前に結合し、及び/又は、基質上の活性化部位をブロックして新規な反応性ナノ粒子の形成を防止することにより、それらを安定化させる。
【0026】
図3は、シリカ面に対するナノ粒子の比率が異なる、2つの典型的なPCS実験によるデータを示す。その結果は、成長速度の制御を示し、また、単に適当なタイミングでシリカ基質から懸濁液を除去することによって、クラスターの粒径を10〜400nmの範囲で選択できることを示す。また、実験を行うことにより、オフラインでクラスターを成長させ、PCS用に断続的にサンプリングすることによって、それらの成長をモニターできることが示された。したがって、反応用のサンプルの量はキュベット体積(c.4ml)に限定されない。このようにして、本発明の教示に従う技術を採用することにより、連続的な工程のモニタリングが可能となり、それにより、ユーザが、懸濁液中の粒子と基質との間の相互作用を終了させる適当なタイミングを選択できることが理解されよう。
【0027】
図4(様々なシリーズの調製に関して記録している)では、懸濁液からのナノ粒子の追加により、クラスターが成長することが更に確認されている。最初に、大きいクラスターはより強く光を散乱させるため、散乱光の強度が増加する。しかしながら工程が継続されるにつれて、最終的には、クラスターの存在する量が減少し、散在強度が低下する。
【0028】
クラスター粒径の制御を可能にする方法は、多くの利点を有することはいうまでもない。この能力は、例えば特定の粒径又は粒径範囲が必要とされるような生物医学的な用途で使用できる。すなわち、上記懸濁液は特に、磁気共鳴映像法用の造影剤として、及び温熱療法を媒介する物質として有用でありうる。これらの用途は、クラスターが、それらの物理的粒径ゆえに特異的な部位に蓄積できるため、特に適切である。in situにおいて、それらを検出してもよく(MRIの場合)、又は、形成されたナノ粒子クラスターが磁気特性を有する場合、熱を生じさせてもよい(温熱療法用途の場合)。この場合、クラスターの実際の粒径がその効果にとり重要であることはいうまでもない。したがって、本発明の教示に従って形成されるクラスターを使用することは、それらの粒径及び粒径分布が制御可能であるという意味において、極めて効果的であると考えられる。
【0029】
このようにして、粒径が制御された粒子を供給することにより、当該粒子による体内でのターゲッティングが改善されることとなり、それにより、上記したように、MRIの場合には、特徴的な構造(例えば腫瘍中の漏れやすい血管構造)のターゲティングが可能となる。更に、同様の方法を用いて、異なる粒径に設定されたナノ粒子クラスターを生じさせることもでき、それにより、複数の疾患を標的とする物質を開発することが可能となる。例えば、漏れやすい血管が、関節炎などの自己免疫疾患とも関係していることが知られている。それらを踏まえ、本発明に係る薬剤送達又は薬剤ターゲティングは、体内の粒子が急速に認識され、マクロファージ(白血球)により攻撃され、細網内皮系により処理されるという理解に基づく。小さい粒子(<50nmが良好である)を使用することにより、及び/又は、ステルス粒子と称される物質を生成すること(例えばポリエチレングリコールなどのマスキング分子をその表面にグラフト化すること)により、血液循環時間を増加させることができる。これらの粒子は何度も循環し、それらが特異的な化学的相互作用を発揮する(例えば、それらが抗原でコーティングされ、抗体が存在する場合)か、又は、物理的な選択性を有する、あらゆる部位に蓄積する。すなわち、100nm以下の粒子が結局、腫瘍(存在する場合)中の漏れやすい血管構造に蓄積する。この物理的な蓄積は、基本的に受動的なプロセスであり、また、標的という用語は、目的とする領域への特異的薬剤のより多くの能動的な移動を示すものであるが、しばしばこの受動的なプロセスを記載するためにも用いられる。本発明の技術を使用して形成される粒子を用いて使用する粒子の主な粒径分布が、その効果の発揮にとり必要なパラメータ中に含まれることを確保することが可能となる。
【0030】
上記したように、磁気ナノ粒子クラスター(例えば酸化鉄)の懸濁液を使用して形成されるクラスターに特徴的な他の利点としては、印加された交流磁場により刺激されることにより、迅速な局所的な加熱又は温熱療法がなされるということが挙げられる。温熱療法の手順は、媒介物質に依存するが、それは腫瘍中で局所化されるか、又は取り込まれることができ、また高い特異的吸収速度(SAR)を示す。本発明の教示に従って形成される材料は、それらの大きな粒径が物理的なターゲティングの補助となるような用途において好適であるが、小さい一次ナノ粒子粒径(c.10nm)の採用により、許容できる磁気強度及び周波数において、非常に高いSARが得られる。許容できるという用語は、粒子が埋没され、標的とされる生体にとって許容できるという意味である。このようにしてナノ粒子クラスターを使用することは、局所的に加熱を行う際に特に効果的であり、それは原発性癌の治療において有用であり、その際、当該部位への加熱により癌組織が破壊される。
【0031】
他の、活性化を誘導する方法、又は埋め込まれたナノ粒子の局所的な加熱方法としては、RFフィールドの使用又は実際はレーザー励起が挙げられる。
【0032】
所定の粒径のナノ粒子クラスターの生成を制御できる能力は、効果的に調整された薬剤放出剤の調製の場合に、特に有用である。上記物質の粒径を制御することができるため、生体内のその最終的な標的部位を確実に選択することもできる。ゆえに、ナノ粒子クラスターが提供された感熱性リポソーム、又はポリマーコーティングされたナノ粒子クラスターは、薬剤の隔離及び体内の標的に対する薬剤の徐放にとり有用であると考えられる。リポソーム又はポリマーを用いることにより、特定の薬剤又は医薬組成物が内部に担持されているマトリックスを提供することが可能となる。かかるマトリックス内にナノ粒子クラスターを封入し、次にその組合せ物を体内に導入することによって、所望の標的部位に医薬組成物を送達することが可能となる。最適に磁気ナノ粒子クラスターを加熱することにより、上記封入された組合せ物が崩壊し、上記組成物が周囲の組織に放出される。本発明の方法により、周知の粒径のナノ粒子クラスターの形成が可能になるため、かかる薬剤送達体から形成された液体は、制御された粒径の成分を有する成分を有し、またそれにより、その液体の成分の体内での最終的な目的部位を、これまで周知でない様式において決定することができる。ナノ粒子クラスターの加熱は、多くの適切な方法により実施でき、例えば磁気若しくはRF場(field)の印加、又は実際には薬剤送達体が配置される部位へのレーザーによるターゲティングが挙げられる。
【0033】
本発明の教示に従って形成したナノ粒子クラスターの、考えられる他の用途としては、触媒表面の形成が挙げられる。触媒は、高い表面積:体積の比を必要とする。例えば、本発明の工程により調製され、固体基板に堆積された金属酸化物材のナノ粒子クラスターは、高い表面積:体積比を有するため、触媒(例えば触媒コンバータにおいて)として使用できる。大部分の用途では、キャッピング剤(脂肪酸)の除去を必要とするが、これはアニーリング段階の一部としてそれらを加熱することにより実施でき、それはまた、ナノ粒子クラスターを基質に固定させる役割をも果たす。本発明の技術を用いて形成されるクラスターは、非常に単分散性の高い一次粒子から形成され、ゆえに優れた触媒特性を提供すると考えられる。
【0034】
かかる複雑な構造の形成は、最初のナノ粒子クラスターの形成を基礎とする。上記のように、本発明の方法では、懸濁液中でクラスターを生成させる。所望の粒径のナノ粒子クラスターが得られた後、クラスターを安定化させることができる。ナノ粒子クラスターの安定化には、多くの様々な機構を利用できることが理解され、また、本発明は、いかなる具体的な機構にも限定されるものではない。にもかかわらず、考えられる方法の例をここで記載すれば、その方法は、ナノ粒子クラスターの架橋結合、及び、有機溶媒中の懸濁液からの、安定な水性懸濁液への相転移に基づくものである。これらの典型的な技術は、有機溶媒中に添加された磁鉄鉱ベースのナノ粒子に基づくものであり、また、本発明はかかる態様に限定されないものと理解されよう。例えば、以下に記載される金ナノ粒子クラスターによる実施態様から理解されるように、当該クラスターは水懸濁液中で形成され、更なる処理を必要としない。
【0035】
架橋結合方法の1つの例としては、Hatton及びLaibinisにより開示されたオレフィンベースの重合方法を利用することが挙げられる(“porimerization of olef in−terminated surfactant bilayers on magnetic fluid nanoparticles”,Shen L.F.,Stachowiak A.,Hatton T.A.ら、Langmuir,16(25),9907−9911,2000)(その開示内容を参照により本願明細書に援用する))。
【0036】
その他の技術としては、多くの水性相転移手順を含む技術が挙げられ、それらは、磁鉄鉱と強固な結合を形成する水溶性界面活性剤による、ナノ粒子表面からのアルキルキャッピング剤の部分的若しくは完全な置換に基づく。これに利用できる多くの試薬が存在するが、最近公表された文献の中でも特に、2,3−ジメルカプトコハク酸による相転移反応により、安定な水性ナノ粒子クラスター懸濁液を生じさせる方法を用いるものが挙げられる。これらの例としては、以下のものが挙げられる。
1.”In vivo magnetic resonance detection of cancer by using multifunctional magnetic nanocrystals”,Huh Y.M.,Jun Y.W.,Song H.T.,Kim S.,Choi J.S.,Lee J.H.,Yoon S.,Kim K.S.,Shin J.S.,Suh J.S.,Cheon J.,J.Am.Chem.Soc,127(35),12387−12391,2005;
2.“Nanoscale Size Effect of Magnetic Nanocrystals and Their Utilization for Cancer Diagnosis via Magnetic Resonance Imaging”Young−wook Jun,Yong−Min Huh,Jin−sil Choi,Jae−Hyun Lee,Ho−Taek Song,Sungjun Kim,Sarah Yoon,Kyung−Sup Kim,Jeon−Soo Shin,Jin−Suck Suh,and Jinwoo Cheon J.Am.Chem.Soα,127(16),5732−5733,2005。
【0037】
代替的な方法として、予め形成されたクラスターを水性高分子電解質(ポリスチレン−スルホネート又は様々なポリ(アルキル−シアノアクリレート)のうちの1つを含む)と反応させてもよい。望ましくは、このアプローチにより、クラスターが安定化され、1つのステップにおいてそれらを水溶性にすることができる。
【0038】
当業者にとり自明であるが、本発明の教示に従う方法は吸着のプロセスを利用するものであり、すなわち、1つの相からの原子、分子若しくは粒子の分離、更にそれに付随する第2の相(本発明の例ではシリカ基質)の表面におけるその蓄積又は濃縮が行われる。物理的な吸着は主に、吸着分子と吸着表面上の原子/分子との間における、ファンデルワァールス力及び静電力によってなされる。すなわち、吸着剤は表面特性(例えば表面積及び極性)によって特徴付けられる。大きい特異的な表面が、吸着能力の提供においては好ましい。多孔性の炭素グラフト化シリカは、非極性吸着剤のカテゴリに属する。これらの吸着剤は、水よりも油又は炭化水素に対して高い親和性を有する。一方、化学的な吸着では、吸着される分子上の原子と第2の相の表面の原子との間の化学結合の形成がなされる。当然ながら、本発明の場合、懸濁された粒子を活性化できるいかなるタイプの吸着も有用であると考えられ、また、本発明はいかなる1つの例、又は適切な吸着剤の1つの例に係る成分に限定されるものではなく、実際、以下に示す実施例において、様々なタイプの吸着が明記されている。
【0039】
以下のパラグラフにおいて、本発明の教示に係る技術の効果、及び、この方法をサポートする、背景となる現象を示す実験データを示す。かかるデータは典型的な結果として提供されるものであり、本発明を、いかなる実験結果にも限定することを目的としない。
【0040】
実験データは、マクロ多孔性シリカと非水性磁鉄鉱懸濁液との相互作用の解析に基づく。以下のように数種類のシリカ表面に関して解析した:
シリカ−C18:オクタデシル炭素を担持する材料;
シリカ−CN:負荷電シアン化(cyanated)シリカ;
並びに未処理シリカ及びAPS修飾シリカ。
【0041】
上記したように、Sunその他は、オレイン酸の単層コーティングによって安定されたナノ結晶質の磁鉄鉱粒子が、ヘプタンのような無極性溶媒中で非常に安定な懸濁液を形成することを教示している。カルボン酸の頭部基は、磁鉄鉱表面に化学的に吸着される。磁鉄表面から伸びている疎水性の脂肪鎖は、無極性の炭化水素溶媒により溶媒和する。搬送液体中における脂肪酸コートされた磁鉄鉱の安定化機構を記載した多くの理論が存在し、またこれらは当業者にとり自明である。本願明細書において、用語「磁鉄鉱」は、磁気ナノ粒子の合成において形成されうる、多くの酸化鉄相のうちのほんの1つであるにもかかわらず、「酸化鉄」と同義的に用いられる。但しそれにより、本発明はいかなる単一の具体的な相に限定されるものではなく、また、用語「磁鉄鉱」には、いかなる酸化鉄の幅広い長所も包含されるべきである。
【実施例】
【0042】
<実験方法>
<材料>
【0043】
大部分の実験において使用する基質である、シリカ−C18は、60Åの孔、50μmの平均粒径を有するシリカであり、Alltech Associates社(Deerfield、IL)製のC18(オクタデシル、6%の炭素ロード)でエンドキャッピングコートされている。シリカ−CN(負に荷電したシアネート化されたシリカ)、及び同じ給源からの同じ粒径の未処理のシリカも用いた。
【0044】
磁鉄鉱ナノ粒子を、水酸化アンモニウムを用いた混合Fe3VFe2+塩の共沈殿により合成した。酸化鉄の沈殿の間、過剰量のオレイン酸を添加することによって、界面活性剤コーティングの単層を形成させた。磁鉄鉱の分散液をアセトン及びメタノールにより沈殿させ、アセトンによって5回、最後にエタノールによって洗浄した。沈殿物を更に、ヘプタンに相転移させた。ヘプタン懸濁液を、13000回転/分(〜16000g rcf)で40分間遠心分離し、あらゆる凝集粒子を除去した。懸濁液H5aは低いPDI(0.09)において12.0nmのZ−平均を有し、H5bは11.8nmのZ−平均粒径を有し、単分散のPDI(0.07)であった。
【0045】
<PCS実験>
算出された所定の量の、ヘプタン中の磁鉄鉱懸濁液を、PCS分析用のクォーツ製のキュベット中のシリカ基質の上に配置した。キュベットを、あらゆる振動も回避するための適切なケア材を有するPCS(光子相関分光)分光計に置いた。キュベットの温度を25℃に維持した。入射レーザー光が遮断されないように、シリカの量を制限した。実質的に、これによりシリカの高さが<1mmに制限され、それは50mgのシリカに相当するものであった。
【0046】
実験の最初のシリーズにおいて、全てのシリカ面をナノ粒子の単層で覆うのに十分な量の磁性流体を、クォーツ製キュベット内のシリカ−C18粉末上に配置した。実験の第2のシリーズにおいて、充分量の磁鉄鉱懸濁液を添加して二層を生じさせた。磁鉄鉱含量は、サンプルH5aでは約1.47mMであり、サンプルH5bでは約1.52mMであった。必要量の算出は、シリカ−C18表面上の孔におけるナノ粒子の吸着が行われないという仮定に基づいて行った。シリカ−C18粒子は50μmの直径で、球形であった。吸着されたナノ粒子は、1枚の六方最密構造の球体をシリカ−C18面の上に形成して、均一な単層を形成し、また二層は2つの同一の単層から構成された。
【0047】
懸濁液中での磁鉄鉱ナノ粒子の成長/凝集の開始を、1〜7日間にわたり、30分の間隔で、PCS分光法によってモニターした(粒子が懸濁液に存在する場合)。PCSの測定に使用する標準作業手順(SOP)を、連続した測定が30分ずつに分けられるように、適切な遅延を伴う200の測定として設定した。各測定は約5分を要し、それぞれ10秒ずつの20のランからなった。集められた全てのデータが、1つのSOP(標準処理手順)により収集されたため、大部分の実験において、キュベットの位置及び減衰インデックスは、実験全体にわたり一定のままであった。したがって、後方散乱された光度は、散乱体の体積重み付きの数を表す。
【0048】
<結果>
ナノ粒子がシリカ上へ吸着していたことは、容易に明らかとなった。懸濁液は、濃度にかかわりなく一定時間で色を失い、一方、白いシリカ−C18粉末はチョコレートのような茶色に変化した。すなわち、懸濁液中の粒子と基質との間の相互作用が存在することが理解できる。
【0049】
<単層等価(equivalent)吸着>
<懸濁液H5a>
実験の第1のセットにおいて、磁鉄鉱懸濁液(H5a)の1つの単層等価(ME)をシリカ−C18上に配置し、時間経過におけるZ−平均粒径をモニターした。データを図5に示す。図5に示される、時間の関数としての観察された粒径の増加を、球体積の変化に変換し、図中の注記として示す。クラスターの成長は、ラン1(図5)においては約2時間まで、又はラン2(図6)においては約4時間まで、線形成長でなされた。
【0050】
両方のランにおいて、最初の線形成長段階の後に、第2の急速な線形成長段階が続いた。体積は半径の3乗に比例するため、粒子のZ−平均粒径の最も小さい変化でも、体積曲線においては強調される。これは一旦非活性化ナノ粒子に対する活性化されたナノ粒子の臨界的な比が、第1のラン及び懸濁液中で生じた後に、クラスターの形成が加速されうることを示唆すると考えられる。このようにして、既に活性化された粒子を有する特定の懸濁液をシード(seed)して、直ちに第2の段階を進行させることが可能となる。ゆえに、懸濁液中の適切なナノ粒子の活性化源は、同じ懸濁液中の他のナノ粒子又はナノ粒子クラスターを含んでもよいと理解できる。ゆえに、既に活性化されたナノ粒子クラスター又はナノ粒子を有する懸濁液の、かかるシードは、特定の用途において、その懸濁液中での成長を加速又は維持するために採用することができる。
【0051】
2つのランにおける多分散性指数及び平均計数率データの変化を図7に示す。第1のランにおけるデータの中断は、データの記録を中断する、取得用PCのプロトコルの関係上生じたものである。粒子の多分散性は第1のランの間、約7時間で最大(1.00)まで増加し、一方、PDIは、約15時間にわたる第2のランの間、〜0.6を上回らなかった。
【0052】
平均計数率もまた、第1のランの場合、ちょうど7時間で4000kcpsまで大幅に増加した。同じ磁鉄鉱懸濁液を用いて、可能な限り、2つのランを、同一の条件で、但し19日間隔で実施した。かかる知見は、本発明の教示に係る方法の具体的な実施においては、懸濁されたナノ粒子とそれらの活性化源との間の相互作用を終了させる適切なタイミングがいつかを示す指標として、粒径分布のモニタリングが必要となりうることを示唆し、一方、他の実施態様では、所定の時間の後に特定の粒径分布が得られたという仮定をなすことによって、かかるモニタリングの必要性をなくすことができることを示唆するものである。
【0053】
シリカ−C18上のME磁鉄鉱懸濁液の吸光度変化を時間経過とともにモニターした。データを図8に示す。PCSでモニターする場合には、吸光度を、粒子が成長する条件で、30分毎に2日間にわたり記録した。吸光度の変化は、成長パターンと同調している。約7〜8時間までは変化がほとんどないが、次に、吸光度の急激な減少が続いた。変化速度は約15時間後に顕著に鈍化し、20時間後には吸光度変化はごくわずかとなった。
【0054】
<懸濁液H5b>:
また、若干異なる粒径(12.0nm)の、独立に合成された懸濁液(H5b)を用いて、ME実験を実施した。この実験を4回繰り返した(その時間内のPCS粒径の変化を図9に示す)。
【0055】
H5b懸濁液による、全てのME吸着に関する平均カウントの変化を、図10に示す。粒子の成長プロフィールは、磁鉄鉱懸濁液の合成後、10日以内に実施した、全部で4回の反復実験において、非常に類似している(図9)。PDI及びカウント(図10、11)における変化のパターンも、懸濁液H5aで観察されたものと非常に類似している。全ての実験において、平均計数率は、〜12時間まで着実に増加し、次に、更に12時間にわたり、ほぼ出発時の値にまで減少した。ラン間での計数値における変化も非常に顕著である。しかしながら、散乱強度は体積にウエイトが置かれているため、いかなる所定のタイミングにおける、粒径分布の上端部における、粒子数の小さな変化によっても散在強度に顕著な影響が及ぶが、z−平均又はPDIにはそれ程影響が及ばない。最大値の観察は、進行中のクラスター成長と整合しており、また、実験の進行に従い、クラスターの減少と整合している。これは、約20時間後の粒径データの散乱増加からも明らかである。
【0056】
時間経過に伴う多分散性指数の変化を、図11に示す。実験の進行により、PDIが増加し、粒子の粒径分布がより広くなった。平均計数率及び多分散性指数(PDI)は、開始から12〜13時間(後方散乱強度が最大となる時)に興味深いトレンドを示す。この時点付近において、全ての実験において、PDIの増加が、スパイクの形として示された。
【0057】
3つの選択された時間における相関関数を図12に示す。データのフィットの質は、後の測定値の場合には良好でない。PDIは〜12時間で高いが、なおも良好なデータのフィットがみられたため、Z−平均を、実験における分布の現実的な平均と考えることができる。計数率はこの領域で最も高い。しかし、約24時間後、計数率は低い値に減少する。青で示すフィットは、48時間後におけるデータポイントにのみ部分的に存在し、ゆえに多分散性指数は1.00であり、Z−平均は信頼性が低い計測である。25〜35時間後、低い散乱強度のため、全てのME実験においてPCSソフトウェアがクラッシュした。
【0058】
<二層等価吸着>:
ラン1及びラン2の間の、シリカ−C18上の磁鉄鉱懸濁液H5aの二層等価(BE)吸着に関して得られたPCSデータを、図13に示す。Z−平均及びPDIは、ME実験と非常に類似した挙動を示した。同じナノ粒子懸濁液を使用して、16日の間隔を置いて実施された両方のランにおいて、短い線形成長段階が約4〜6時間において見られた。ME実験とは対照的に、BE懸濁液では、2つの直線的な急速な成長段階に従っている。最初のものは〜15時間後に開始され、ラン1では35時間まで継続し、ラン2では〜40時間まで継続した。第2の線形成長段階は、両方のランにおいて、〜0.25nm/時でほぼ同一の成長速度を示した。
【0059】
ME実験では、PCS粒径が全ての場合で1500nm以上まで増加したが、BE実験では、成長が約100nmに限定された点は、注目に値する。この理解に基づけば、特殊なアプローチが、特殊なアウトプットを得るために利用できることは明らかである。例えば、大きいクラスターが必要な場合、低いナノ粒子 対 表面比率(ME)を用いたアプローチが最適であると考えられ、一方、分散性がより重要なパラメータである場合、高い比率(BE)によるアプローチがより好適であると考えられる。図15のデータが示すように、BEによるアプローチは、クラスター粒径分布の多分散性が改良されることを示す一方で、クラスターが非常に小さいときには成長が止まり(おそらく表面の飽和又は懸濁液の減少による)、またプロセスが遅くなることを示す。MEの利点は、少なくとも、静置した懸濁状態における成長の速度(但し分散性は劣る)である。更に、成長速度の違いを利用して、最初にMEアプローチを使用して若干のクラスターを急速に生成させ、それを次に他のボリュームに供給し、そこで、それらをBEアプローチを用いて活性化される粒子のシードに用いる。
【0060】
50〜60時間後、この段階に続いて、非常に遅い成長段階が見られた。図13のデータ中、中断部分が存在する(ラン2、PCS分光計が他の実験のために用いられていたため)。キュベットを慎重に取り出し、これらの時間、25℃の常温浴中に置いた。実験の再開時に、キュベット及びレーザー減衰の位置を自動的に調整した。そのため、不連続な部分が図14のカウントにも存在する。
【0061】
クラスター成長の中断後もなお、同じ直線に沿って位置するという事実は興味深い。それはすなわち、キュベットの移動によっても実験が不能になることはなく、更に、PCS実験のレーザー光はナノ粒子クラスター成長にいかなる影響も及ぼさないことを示唆するものである。
【0062】
サンプルH5a中のBE吸着実験における、PDI及び計数速度の変化を図14に示す。ME実験(図7)で観察されたように、平均計数率は、両方のランにおいて、最初の20〜40時間において、〜約500kcpsで連続的に増加し、その後減少した。
【0063】
サンプルH5aにおける、3つの選択された時間における、BE実験の時間相関データへのフィット、及び、得られる粒径強度分布を、図15に示す。BE実験へのフィットは、低いPDI値であるため、ME実験より良好な品質であり、全てのケースで、キュムラントフィットは当該データ全てに及んだ。クラスター粒径分布は、BE実験の間、広くなかったため、様々な方法が様々な目的のために最適に選択されうるという、上記で概説した評価を再度裏付けることとなる。
【0064】
BE実験における、様々な調製からのクラスター成長に関するデータを、図16に示す。一般に、流体力学直径(PCS粒径)は約50時間までは増加し、次に、成長速度の若干の減少が見られる。約40時間までの、計数率時間の増加、及びそれに続く減少の傾向が、再び観察された。BEを添加した全てのランにおいて、カウントが約40時間まで増加することが明らかとなった。
【0065】
シリカ−C18上のBE磁鉄鉱懸濁液の、時間経過に伴う吸光度変化をモニターした。データを図17に示す。120時間にわたる実験の進行において、吸光度が減少し、更に、減少速度は段階的に減少する。曲線中に不連続な部分はない。
【0066】
<更なる実験>:
ヘプタン中の、オレイン酸コーティングしたナノ粒子のサンプルを、未処理のシリカ(シリカ−C18の代わり)上に配置して、実験を行った。この場合には、クラスター形成又は吸着がないことが判明した。このことは、上記のプロセスでは、活性剤(例えば基質)によるナノ粒子の活性化が必要であるという仮定をより裏付けるものと考えられる。
【0067】
ヘプタン中の、オレイン酸でコーティングしたナノ粒子のサンプルを、アニオン性シリカ−CN(シリカ−C18の代替)上に配置して、実験を行った。μm範囲への急速なクラスター成長が、3時間以内に見られることが明らかとなった(図18参照)。低い散乱強度のため、PCSソフトウェアは4時間後にクラッシュした。後の時点に関しては、その翌日に、PCS分光計の最最適化後に再び実施した。この場合、様々な活性化基質が、本発明の範囲内の方法において十分利用可能であると理解される。実際、シリカCN基質の場合、次の実験により、速度及びナノ粒子クラスター形成の程度の制御が可能であることが示された。
【0068】
同じ量のシリカ−C18基質(50mg)を使用して、純粋なヘプタンをそこに配置して、ブランク実験を行った。それを振盪した後に、懸濁液のPCS測定を実施した。PCSデータでは、最初に、82μm粒径の粒子の存在を示した。これは、キュベットの底に置かれているシリカに起因するものである。その後の数日間のいかなる時点においても、検出可能な粒子は存在しなかった。また、同じ量のシリカ−C18で、ヘプタン中に5mMのオレイン酸を含むキュベットを調製した。この懸濁液においても、2日間にわたり懸濁粒子が得られず、PCS測定がそのたびごとにクラッシュした。このことは、上記成長には、懸濁液中におけるナノ粒子の存在が必要であるという事実をより裏付けるものと考えられる。
【0069】
一連の吸着実験を実施した。その際、ヘプタン中の、オレイン酸コーティングされたナノ粒子のサンプルをシリカ−C18上に配置し、所定のタイミングにおいて溶液を一部除去し、その時点で、実験を停止した。次にアリコート中の鉄含量を測定した。数日後、懸濁液から、シリカ−C18上へ吸着させた鉄のナノ粒子をほぼ完全に除去した。このサンプルの物理的な外観を確認した結果、白いシリカ−C18基質が徐々に着色し、チョコレート色に変化していた。この際、クラスターの回収のためには、溶液から基質上へクラスターが沈殿する前における、クラスター懸濁液の除去が必要であることはいうまでもない。
【0070】
<走査電子顕微鏡検査(SEM)>:
液体を1滴SEMスタブ上に拡散させ、それを乾燥させることにより、電子顕微鏡検査用のサンプルを調製した。PCS測定の終了後、ガラスピペットを使用して、キュベットの底から液体を採取した。導電性カーボンテープにより固定されたアルミニウムSEMスタブ上へ、スパチュラの先端上の一つまみの粉末をはねかすことによって、「未コーティング」シリカ−C18サンプルを調製した。低い拡大率によるシリカ−C18粒子のSEM映像は、25〜50μmの範囲の粒子(最高100μmの若干の大きな粒子が存在)を示した。図19のSEM画像は、非常に微細な小さい白いアモルファス含有物を含む、結晶性シリカ−C18表面の微細な形態を示す。より高い解像度の画像により、上記介在物が50〜200nmの範囲の粒径であることを示す。単層処理された磁鉄鉱懸濁液の大部分の領域における顕微鏡写真において、シリカ−C18表面上のナノ粒子のコーティングが見られなかった。
【0071】
磁鉄鉱ナノ粒子は、特に隣接するシリカ粒子の付近で、エッジに沿って大きな凝集体として沈澱することが明らかとなった。図20の矢印は、かかるナノ粒子が沈着した領域のうちの1つを示し、それを、図21に示す画像のために選択した。磁性粒子クラスターは100〜200nm程度の粒径である。
【0072】
平坦な表面上、又は2つの粒子間の接合部分には、いかなる磁鉄鉱粒子の沈着の徴候も見られない(図22)。更に、AFM試験により、平坦な表面上でのナノ粒子の存在を示すいかなる証拠も見出されなかった。すなわち、ME及びBEの呼称は、磁鉄鉱濃度の高い及び低いサンプルのことを指す。それはすなわち、本発明の範囲内において、用語ME及びBEは、ナノ粒子の、活性化基質に対する比率が高い及び低いことを定義するものとして理解される。
【0073】
<考察>:
NMR及びPCSの測定により、懸濁液H5a及びH5bは、調製した日から2ヵ月後においても非常に安定であることが確認された。目視による観察によっても、シリカ−C18上に配置された懸濁液は、時間経過に伴い酸化鉄が減少していたことが非常に明白であった。上記の吸着は、吸光度測定、及び鉄の測定により確認される。
【0074】
ME吸着実験において、Z−平均のクラスター粒径は、最初の数時間、直線的に徐々に増加した。この後、約12時間まで、速い成長の転移段階に移行した。この段階は、後方散乱光度の増加、及び約0.2までのPDIの増加を伴った。この時点では、クラスターは約100nmの直径である。次に、非常に急速な線形成長(100nm/時間のオーダー)の段階となり、数時間内に、μm範囲のクラスターが生じた。この段階は、散乱光の減少及び最大1.0の値までのPDIの増加を伴った。低い後方散乱光度のため、24時間以内にデータ取得が常に停止した。
【0075】
BE吸着実験においては、クラスター成長は全般的に遅く、通常、3つの段階で行われることが観察された。ほとんどの場合、ME実験と同様の遅い線形成長の短い段階から始まり、次に、速い速度の線形成長(c.0.5nm/時間)の別の段階が続き、更に遅い線形成長(c.0.25nm/時間)の段階によって終了した。幾つかの実験では、急速な成長が、異常な態様で続いた。ME実験のように、約40〜60時間における遅い成長段階への移行まで後方散乱強度が増加し、次に再び減少した。
【0076】
幾つかの共通の特徴がME及びBE実験に存在する。すなわち、誘導段階が存在し、その間、粒径がほとんど変化せず、次に、クラスター成長が顕著に加速することである。いずれの場合においても、後方散乱光度が最大値まで増大し、次に、鉄濃度が減少するために減少する。また、顕著な相違も存在し、BE実験の場合、成長は遅く、懸濁液中に残留するクラスターは大きく成長しない。また、成長中のクラスターは、BE実験の場合よりもはるかに単分散性が高い。BE実験の場合、誘導段階が存在する場合には、それはME実験の場合よりも非常に短い。
【0077】
ME及びBE実験の両方において、オレイン酸エステルで安定化された磁性ナノ粒子を、アルキルグラフト化シリカ相に吸着させる方法論を利用している。吸着工程が遅い速度で進行するため、拡散が制限されると考えられる。
【0078】
誘導段階の間、ナノ粒子はシリカ表面の付近で拡散すると考えられる。大部分の粒子は反発されるが、端部に接触したものは、表面との間で、プロトン、水酸基又はオレエート基を交換し、クーロン力により固定される。上記のデータは、これらの粒子がその後脱着することを強く示唆する。脱着したナノ粒子の単層コーティングが崩壊し、そのときにオレイン酸コーティングの一部がシリカ−C18に結合し、懸濁液中のナノ粒子の活性化が行われる。粒子がどれくらいの時間、脱着前に表面上に残るかを推測することは不可能であり、実際、それらは短時間吸着されることができるが、当該ナノ粒子が、荷電された物質として脱着することはほとんど考えられない。誘導期のこの観察結果は、図1に関して上記したような直接的な機構、及び酸化鉄:オレエート:シリカ−C18系の場合と整合している。しかしながら、この観察結果が、本願明細書に記載されている具体的なプロセスパラメータと整合している一方で、1つ以上の他の若しくは代替的な機構が、他の設定において有用でありうるため、本発明はこの機構に限定されるものとして解釈すべきではないと理解される。
【0079】
シリカ表面上の吸着部位の性質が不明なままであるが、単層が表面上に形成されないことは明らかであり、また、上記ナノ粒子はシリカ粒子の端部に沿ってクラスター状に堆積することが明らかである。上記端部は隣接するシリカ粒子と向き合う傾向を有することをSEM画像は示唆するが、これは、上記粒子がSEMスタブ上で乾燥されたときに生じると考えられる。シリカ不純物(例えば酸化アルミニウム)の存在が、表面活性の原因となることも予想できる。しかしながら、クラスターは高品質(低い不純物含量)のC18グラフト化シリカ上に成長することが観察され、一方、クラスター成長は、未処理シリカの場合は観察されないがシリカ−CNの場合は非常に急速な吸着が観察される。また、11nmの磁鉄鉱粒子がシリカ粒子間の隙間に容易に拡散する一方で、大きいクラスターではそれが不可能であるということにも留意すべきである。
【0080】
誘導段階の終了後、懸濁液中における表面活性化されたナノ粒子の数は臨界値を上回る。誘導段階の期間は若干変化し、それはシリカ表面上のナノ粒子沈着がなされる確率の低さに関係すると考えられる。次に、ME実験において、表面活性化されたナノ粒子の間で凝集が生じ、クラスターの成長が行われる。磁鉄鉱含量が比較的低いときには、シリカ表面に容量が残り、ナノ粒子の表面を更に活性化することが可能となる。次に、非常に急速なクラスター成長(図9)がなされる後期段階へ徐々に移行する(おそらくクラスターの凝集により生じる)。図1に示すように、幾つかのタイミングにおいて、成長したクラスターは沈殿する。
【0081】
BE実験においては、クラスター成長は徐々に行われ、より制御される。磁鉄鉱含量は比較的高いため、表面活性化されたナノ粒子を得るために利用できるシリカ表面の容量が少なく、したがって、懸濁された物質の合計量は全体的に少なくなる。クラスター成長は、個々のナノ粒子を成長するクラスターへ添加することにより行われる。含まれる全てのクラスターが一緒に成長する傾向が強く、それはすなわち、分布の上端部のクラスターは若干反応性が低いことを示唆する。最終的に、遅いクラスター成長(図13)の段階への移行がなされるが、それは、懸濁液から、最初の11nmの粒子が完全に消費されることによると考えられる。図15において、44時間後の曲線では未だ若干のナノ粒子が含まれるが、これは最初の成長が減速し始める時間に対応する。
【0082】
ゆえに、実験結果から、オレイン酸コーティングされた磁気ナノ粒子の、ヘプタン中懸濁液からのシリカ−C18上への一時的な吸着が行われる一方で、残留する懸濁粒子が連続的にクラスターを形成することが確認された。クラスターは数日間にわたり、μmの粒径範囲となることができる。吸着及びクラスター成長速度は、拡散が制御される工程において予想されるのと比較し、桁違いに遅い。これはすなわち、シリカ面とナノ粒子との相互作用を減少させる顕著なエネルギー障壁があること、又は吸着前に他のプロセスが存在することを示唆する。上記の観察結果は、ナノ粒子クラスター成長における支配的な機構と整合しており、この場合には、一時的に吸着されたナノ粒子のシリカ面からの脱着による損失である。これにより、懸濁液中に表面活性化されたナノ粒子が生じ、その際には、オレイン酸のコーティングが部分的に除去される。少ない量の反応性ナノ粒子は、他の脱着した粒子と相互作用し、又はクラスターの成長がμmの範囲となるように調整されながら安定化されるか、あるいはそれらは結局シリカ基質と不可逆的に結合する。
【0083】
以上において、本発明を、Sunらにより提唱された技術を使用して得られるナノ粒子に関して記載した。Sunらの方法は、コーティングされたナノ粒子を生産する方法である。本発明が、Sunらの技術を使用して最初の安定化ナノ粒子を形成する態様に限定されるものと解釈すべきでないことが理解されよう。例えば、ヘプタン中の、オレイン酸コーティングしたナノ粒子サンプル(異なる合成経路により調製)を、上記の実験において用いたものとは異なる給源から得たアルキルグラフト化−C18基質上に配置して、実験を実施した。ナノ粒子の調製は、ミクロエマルジョンの形成を伴うものであり、それは公表された手順に基づくものであった(Lee,H.S.,Lee,W.C,Furubayashi,T.A comparison of co−precipitation with micro−emulsion methods in the preparation of magnetite,Journal of Applied Physics 1999,85(8)5231−5233)。使用する基質は他の実験のものより高品質であり、高いグラフト密度及び高いシリカ純度であった。図23のPCSデータに示すように、150nmを上回る粒径へのナノ粒子クラスターの成長が見られたことが、改めて明白となった。これは、上記プロセスが、Sunの方法により調製される粒子に、又は特定のタイプに、又はアルキルグラフト化シリカの給源に特有のものでないことを証明する。注意すべき点は、図23に示されるデータの中断は、キュベットがPCS分光計から取り除かれた時点に対応するということである。後の時間の抽出されたPDIの不安定性は、低い粒子濃度と関連する低い品質のデータを反映するものである。このサンプルは、多く(>>10)の単層等価に対応する。
【0084】
上記において、具体例に即して本発明の教示を記載したこと、すなわち、オレエートコーティングした酸化鉄ナノ粒子の懸濁液から、磁鉄鉱ナノ粒子クラスターを生成させる具体例に即して記載したことが明らかであろう。この実施例は、本発明を全般的に教示する際に、理解を補助するために提供されたものであり、それはすなわち、ナノ粒子上のキャッピング剤との親和性を有する基質を提供することによって、(基質は例えば、アルキル修飾されたシリカ又はシアン化シリカ基質である)ナノ粒子からキャッピング剤を除去して反応性ナノ粒子を生成させることが可能となるという例である。2つ以上の反応性ナノ粒子が相互作用し、ナノ粒子クラスターの生成が行われる。本発明の教示のあらゆる態様(キャッピング剤でコーティングされたナノ粒子を含んでなる懸濁液を、キャッピング剤のための親和性を有する基質と接触させ、反応性ナノ粒子を生成させ、それらが結合してナノ粒子を形成する)への全般的な応用は、以下に示す他の一連の実験データにより裏付けられる。
【0085】
この第2の態様(図24に示す)において、クエン酸塩コーティング金粒子を、水溶液中に準備する(2400)。コーティングされた安定化ナノ粒子は、約16〜17nmの粒径分布で提供される。上記懸濁液を、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン修飾(APS−修飾)シリカ基質、又は約300nmの粒径を有するかかるシリカ粒子(2405)と接触させる。クエン酸塩キャッピング剤に対するAPS修飾シリカの親和性により、基質表面上のナノ粒子上に層が形成され、懸濁液(2410)中に反応性の金ナノ粒子が生成する。これらの2つ以上の反応性ナノ粒子が相互に結合し、水懸濁液中で金ナノ粒子のクラスターが生成される(2415)。これは当然ながら、制御されたナノ粒子クラスターの成長方法に関する本発明の教示の一般的な応用が、キャッピングされたナノ粒子及びキャッピング剤との親和性を有する適切な活性化剤を供給することによって効果的に行えることを裏付けるものである。
【0086】
図25は、金ナノ粒子によるナノクラスター成長を示すTEMイメージの例である。キャッピングされた金ナノ粒子を、活性化剤(このケースでは(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)修飾シリカ)で1分間曝露し、1時間経過後、クラスターの粒径分布が、最初の100nm未満から約300nmに増加したことが明白に示されている。
【0087】
本発明を、好ましい実施形態及び化合物/材料に関して記載したが、当然ながら、それらは典型例としてのみ記載されたものであり、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられうる場合を除いて、それらはいかなる形であれ、本発明を限定するものではない。すなわち、例えば、典型的な酸化鉄及び金のナノ粒子に関して本発明を記載したが、それらは、本願明細書に記載のものと異なる材料を用いても実施できることはいうまでもない。本発明の教示の範囲内で重要なことは、安定化ナノ粒子を、最初に安定化に寄与するキャッピング剤の除去により、最初に活性化するということである。この除去は、キャッピング剤との親和性を有する活性化剤の添加によりなされ、当該除去は、直接的、間接的又はそれらの2つの機構の組合せによりなされうる。更に、1つの図又は実施例に関して記載されている結果又は特徴を、本発明の技術思想又は範囲から逸脱しない範囲で、他の図又は実施例のそれらと置換できると理解される。なぜなら、整数や成分を相互に変化させることは十分可能であると考えられ、またそれらは本発明の教示に含まれるべきであるからである。
【0088】
ナノ粒子クラスターの典型的な形成方法を記載したが、本発明の教示は、最初に安定化されたナノ粒子が懸濁液に提供され、これらの安定化ナノ粒子が、ナノ粒子の表面からの安定化キャッピング剤の除去によって不安定化される、いかなる工程においても応用されることが理解されよう。次に、これらの反応性若しくは表面活性化ナノ粒子の2つ以上が懸濁液中の他の反応性ナノ粒子との相互作用及び結合によって安定化し、その安定化の結果、ナノ粒子のクラスター形成がなされる。したがって、本発明を例示的実施形態に関して記載したが、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられる態様以外は、いかなる態様にも限定されるものではない。
【0089】
更に、実験データにおいて示される結果は、典型的なタイプの結果であり、それは本発明の教示を使用して得ることが可能なものである。それらが、基礎となる特定の信念若しくは理解に関するものとして説明される場合には、本発明は、かかる信念若しくは理解に限定されるものではない。活性化物質を使用した懸濁液中でのナノ粒子の活性化、及び次のクラスター成長(本発明の教示により示されている)は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると考えられる態様以外は、いかなる態様にも限定されるものではない。
【0090】
本願明細書において用いられる用語「含んでなり」/「含んでなる」とは、記載された特徴、整数、段階又は成分の存在を特定するためのものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、段階、成分又はその群の存在又は追加を排除するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子クラスターを形成する方法であって、
a.第1の段階で、懸濁液中に複数の各々コーティングされたナノ粒子を準備する段階であって、前記ナノ粒子が複数の界面活性剤分子でコーティングされている段階と、
b.次に、第2の別の段階において、個々にコーティングされた前記ナノ粒子を有する前記懸濁液を、活性化剤として機能しうる材料と接触させて、コーティングされた前記ナノ粒子の表面からの界面活性剤分子の脱着によって、複数の個々の前記ナノ粒子の表面を活性化する段階と、
c.活性化されたナノ粒子を、時間の満了まで結合させ、1つ以上のクラスター又はナノ粒子を形成させる段階と、
d.次に、活性化剤との接触から、ナノ粒子クラスターを有する懸濁液を除去する段階と、を有してなる方法。
【請求項2】
更に、形成された前記ナノ粒子クラスターが所望の粒径となるときを決定する段階と、所望の粒径が得られたときに、活性化剤との接触から懸濁液を除去する段階と、を有してなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記決定が、懸濁液中のナノ粒子クラスターの成長のモニタリングによってなされる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記モニタリングが、連続的なプロセスである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記モニタリングが、複数の繰り返しでなされる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子クラスターが所望の粒径となるときを決定する段階が、所定の時間の満了の後になされる、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記活性化剤が、基質である、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記基質が、シリカ基質である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記シリカ基質が、グラフト化シリカから形成されている、請求項9記載の方法。
【請求項10】
前記活性化基質に対する前記懸濁液の濃度により、前記ナノ粒子クラスターの成長が決定される、請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記濃度が、懸濁液中のナノ粒子クラスターの、成長の速度及び/又は成長の範囲及び/又は粒径分布のうちの1つ以上に影響を及ぼす、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液が、流動方式により提供され、それにより、連続的な量の懸濁液が前記基質との接触に供されうる、請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁液が、磁気ナノ粒子を含有する、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記懸濁液が、脂肪酸コーティングされたナノ粒子を含有する、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、金ナノ粒子である、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記金ナノ粒子が、クエン酸塩界面活性剤でコーティングされている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記活性化剤が、基質であり、かつ、表面を活性化された前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子からの表面分子の基質上への吸着によって活性化される、請求項1から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記活性化剤が、懸濁液中にも存在する、請求項1から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記懸濁液中の前記活性化剤が、活性化されたナノ粒子である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記懸濁液中の前記活性化剤が、ナノ粒子クラスターである、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記活性化剤が、前記懸濁液に対するシード剤として添加され、それにより、ナノ粒子クラスターの成長が加速又は維持される、請求項18から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子クラスターが、基質表面からの一時的に吸着されたナノ粒子の脱着による損失から形成され、それにより、表面活性化されたナノ粒子が懸濁液中に形成され、他の脱着された粒子との相互作用によって、前記表面活性化されたナノ粒子が安定化され、それにより、クラスターの成長が調整される、請求項1から22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
形成される前記ナノ粒子クラスターが、10〜100nmの範囲のクラスターから選択される、請求項1から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
形成される前記ナノ粒子クラスターが、100〜1000nmの範囲のクラスターから選択される、請求項1から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子クラスターを安定化させる段階を含んでなる、請求項1から25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記安定化させる段階により、前記ナノ粒子クラスターの架橋及び安定な水溶液への相転移がなされるか、又は、ポリマーマトリックスへの前記クラスターの埋め込みがなされる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記界面活性剤分子が、前記ナノ粒子上のキャッピング剤として機能し、前記活性化剤が、キャッピング剤とのその親和性を基礎として選択され、それにより、前記活性化剤に対するキャッピングされた前記ナノ粒子の曝露により前記ナノ粒子からの前記キャッピング剤の除去がなされ、反応性ナノ粒子が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
ナノ粒子クラスターを形成する方法であって、
a.オレエートで安定された磁気ナノ粒子を懸濁液中に準備する段階と、
b.前記ナノ粒子の表面上に一時的に吸着させたオレエート分子を、前記ナノ粒子の表面から脱着させて損失させ、それにより表面活性化された反応性ナノ粒子を形成させる段階と、
c.前記懸濁液中で表面活性化された前記反応性ナノ粒子を、他の反応性ナノ粒子と相互作用及び結合させることにより安定化させる段階であって、前記安定化によりナノ粒子のクラスターの形成がなされる段階と、を含んでなる方法。
【請求項30】
表面活性化された前記ナノ粒子が、基質との相互作用によって活性化される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記相互作用が、吸着工程によってなされ、そこにおいて、前記ナノ粒子からのキャッピング分子が基質の表面上へ吸着される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
生物医学的用途にナノ粒子クラスターを使用する方法であって、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを形成させる段階と、
b.形成された前記ナノ粒子クラスターを体内に導入する段階と、を含んでなる方法。
【請求項33】
薬剤送達物質を形成する方法であって、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを形成させる段階と、
b.1つ以上の前記ナノ粒子クラスターを、感熱性溶媒内に封入する段階であって、前記感熱性溶媒が、所定の薬学的組成物を提供するための担体として機能する段階と、を含んでなる方法。
【請求項34】
体内に医薬組成物を送達する方法であって、請求項33記載の薬剤送達物質を形成する段階と、前記薬剤送達物質を体内に導入する段階と、次に、1つ以上の前記ナノ粒子クラスターを刺激することにより前記薬剤送達物質中で熱を発生させ、それにより前記薬剤送達物質の崩壊及び医薬組成物の放出を生じさせる段階と、を含んでなる方法。
【請求項35】
前記ナノ粒子クラスターの前記刺激が、
a.前記薬剤送達物質が位置する領域に磁場を印加すること、
b.前記薬剤送達物質が位置する領域にRF場を印加すること、及び
c.レーザーを用いて前記薬剤送達物質が位置する領域を標的にすること、のうちの少なくとも1つによりなされる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い調製される磁気ナノ粒子クラスターを含んでなる造影剤。
【請求項37】
請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い調製される、温熱療法を補助するための媒介物質。
【請求項38】
触媒を形成する方法であって、前記触媒が、基質表面上に形成された1つ以上のナノ粒子クラスターを有し、前記方法が、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを準備する段階と、
b.前記基質表面上に、形成された前記ナノ粒子クラスターを付着させる段階と、
c.付着させた前記ナノ粒子クラスターをアニーリングし、付着させた前記ナノ粒子クラスターから、吸着した分子種を熱脱着させる段階と、を含んでなる方法。
【請求項1】
ナノ粒子クラスターを形成する方法であって、
a.第1の段階で、懸濁液中に複数の各々コーティングされたナノ粒子を準備する段階であって、前記ナノ粒子が複数の界面活性剤分子でコーティングされている段階と、
b.次に、第2の別の段階において、個々にコーティングされた前記ナノ粒子を有する前記懸濁液を、活性化剤として機能しうる材料と接触させて、コーティングされた前記ナノ粒子の表面からの界面活性剤分子の脱着によって、複数の個々の前記ナノ粒子の表面を活性化する段階と、
c.活性化されたナノ粒子を、時間の満了まで結合させ、1つ以上のクラスター又はナノ粒子を形成させる段階と、
d.次に、活性化剤との接触から、ナノ粒子クラスターを有する懸濁液を除去する段階と、を有してなる方法。
【請求項2】
更に、形成された前記ナノ粒子クラスターが所望の粒径となるときを決定する段階と、所望の粒径が得られたときに、活性化剤との接触から懸濁液を除去する段階と、を有してなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記決定が、懸濁液中のナノ粒子クラスターの成長のモニタリングによってなされる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記モニタリングが、連続的なプロセスである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記モニタリングが、複数の繰り返しでなされる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子クラスターが所望の粒径となるときを決定する段階が、所定の時間の満了の後になされる、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記活性化剤が、基質である、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記基質が、シリカ基質である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記シリカ基質が、グラフト化シリカから形成されている、請求項9記載の方法。
【請求項10】
前記活性化基質に対する前記懸濁液の濃度により、前記ナノ粒子クラスターの成長が決定される、請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記濃度が、懸濁液中のナノ粒子クラスターの、成長の速度及び/又は成長の範囲及び/又は粒径分布のうちの1つ以上に影響を及ぼす、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液が、流動方式により提供され、それにより、連続的な量の懸濁液が前記基質との接触に供されうる、請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁液が、磁気ナノ粒子を含有する、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記懸濁液が、脂肪酸コーティングされたナノ粒子を含有する、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、金ナノ粒子である、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記金ナノ粒子が、クエン酸塩界面活性剤でコーティングされている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記活性化剤が、基質であり、かつ、表面を活性化された前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子からの表面分子の基質上への吸着によって活性化される、請求項1から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記活性化剤が、懸濁液中にも存在する、請求項1から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記懸濁液中の前記活性化剤が、活性化されたナノ粒子である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記懸濁液中の前記活性化剤が、ナノ粒子クラスターである、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記活性化剤が、前記懸濁液に対するシード剤として添加され、それにより、ナノ粒子クラスターの成長が加速又は維持される、請求項18から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子クラスターが、基質表面からの一時的に吸着されたナノ粒子の脱着による損失から形成され、それにより、表面活性化されたナノ粒子が懸濁液中に形成され、他の脱着された粒子との相互作用によって、前記表面活性化されたナノ粒子が安定化され、それにより、クラスターの成長が調整される、請求項1から22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
形成される前記ナノ粒子クラスターが、10〜100nmの範囲のクラスターから選択される、請求項1から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
形成される前記ナノ粒子クラスターが、100〜1000nmの範囲のクラスターから選択される、請求項1から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子クラスターを安定化させる段階を含んでなる、請求項1から25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記安定化させる段階により、前記ナノ粒子クラスターの架橋及び安定な水溶液への相転移がなされるか、又は、ポリマーマトリックスへの前記クラスターの埋め込みがなされる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記界面活性剤分子が、前記ナノ粒子上のキャッピング剤として機能し、前記活性化剤が、キャッピング剤とのその親和性を基礎として選択され、それにより、前記活性化剤に対するキャッピングされた前記ナノ粒子の曝露により前記ナノ粒子からの前記キャッピング剤の除去がなされ、反応性ナノ粒子が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
ナノ粒子クラスターを形成する方法であって、
a.オレエートで安定された磁気ナノ粒子を懸濁液中に準備する段階と、
b.前記ナノ粒子の表面上に一時的に吸着させたオレエート分子を、前記ナノ粒子の表面から脱着させて損失させ、それにより表面活性化された反応性ナノ粒子を形成させる段階と、
c.前記懸濁液中で表面活性化された前記反応性ナノ粒子を、他の反応性ナノ粒子と相互作用及び結合させることにより安定化させる段階であって、前記安定化によりナノ粒子のクラスターの形成がなされる段階と、を含んでなる方法。
【請求項30】
表面活性化された前記ナノ粒子が、基質との相互作用によって活性化される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記相互作用が、吸着工程によってなされ、そこにおいて、前記ナノ粒子からのキャッピング分子が基質の表面上へ吸着される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
生物医学的用途にナノ粒子クラスターを使用する方法であって、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを形成させる段階と、
b.形成された前記ナノ粒子クラスターを体内に導入する段階と、を含んでなる方法。
【請求項33】
薬剤送達物質を形成する方法であって、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを形成させる段階と、
b.1つ以上の前記ナノ粒子クラスターを、感熱性溶媒内に封入する段階であって、前記感熱性溶媒が、所定の薬学的組成物を提供するための担体として機能する段階と、を含んでなる方法。
【請求項34】
体内に医薬組成物を送達する方法であって、請求項33記載の薬剤送達物質を形成する段階と、前記薬剤送達物質を体内に導入する段階と、次に、1つ以上の前記ナノ粒子クラスターを刺激することにより前記薬剤送達物質中で熱を発生させ、それにより前記薬剤送達物質の崩壊及び医薬組成物の放出を生じさせる段階と、を含んでなる方法。
【請求項35】
前記ナノ粒子クラスターの前記刺激が、
a.前記薬剤送達物質が位置する領域に磁場を印加すること、
b.前記薬剤送達物質が位置する領域にRF場を印加すること、及び
c.レーザーを用いて前記薬剤送達物質が位置する領域を標的にすること、のうちの少なくとも1つによりなされる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い調製される磁気ナノ粒子クラスターを含んでなる造影剤。
【請求項37】
請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い調製される、温熱療法を補助するための媒介物質。
【請求項38】
触媒を形成する方法であって、前記触媒が、基質表面上に形成された1つ以上のナノ粒子クラスターを有し、前記方法が、
a.請求項1から31のいずれか1項記載の方法に従い、1つ以上のナノ粒子クラスターを準備する段階と、
b.前記基質表面上に、形成された前記ナノ粒子クラスターを付着させる段階と、
c.付着させた前記ナノ粒子クラスターをアニーリングし、付着させた前記ナノ粒子クラスターから、吸着した分子種を熱脱着させる段階と、を含んでなる方法。
【図1】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2010−512252(P2010−512252A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540766(P2009−540766)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063815
【国際公開番号】WO2008/071742
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504094693)ダブリン シティ ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063815
【国際公開番号】WO2008/071742
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504094693)ダブリン シティ ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】
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