説明

ナノ粒子分散液の製造方法

【課題】粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができるナノ粒子分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】凝集したナノ粒子を含有する粒子分散液を分散装置に送液することによりナノ粒子を連続的に分散処理する工程を有するナノ粒子分散液の製造方法であって、前記分散装置における粒子分散液が通過する流路の最も狭い部分の幅が0.5mm未満であり、粒子分散液が通過する流路内の圧力が1MPa以上であるナノ粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができるナノ粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒径が1〜100nm程度であるナノ粒子は、粒径が数百nm以上の粒子に比べて活性度及び反応性が飛躍的に向上し、電気的、磁気的、光学的、機械的特性が大きく変化するため、印刷材料、電子材料、化粧品材料、食品材料、医薬品材料等の分野において大きく期待されている。しかしながら、一般的に、微粒子は粒径が小さくなるに従って粒子が凝集しやすくなるため、ナノ粒子が微分散したナノ粒子分散液を製造することは困難であった。凝集した粒子を微粒化し、分散させる方法としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター等のメディアタイプの分散装置を用いる方法が挙げられる。しかしながら、メディアタイプの分散装置は、メディアと分散液の分離やメディアの洗浄といった煩雑な作業を必要としたり、メディアの摩滅物が異物として混入したりする等の問題があった。
【0003】
特許文献1、2には、メディアタイプの分散装置を用いない分散方法として、高圧ホモジナイザーにより、粒子分散液を溝幅1mm、深さ0.5mm程度の流路に7MPa程度の高圧で送液することにより、液体同士を衝突させたり、流体の剪断力を利用したりして粒子を分散させる方法が開示されている。しかしながら、特許文献1、2で開示されている分散方法では、数百nmまでの比較的大きなサイズの粒子の分散は可能だが、粒径が100nm以下の粒子に対しては充分な分散効果が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開2001−29776号公報
【特許文献2】特開2003−10663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができるナノ粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、凝集したナノ粒子を含有する粒子分散液を分散装置に送液することによりナノ粒子を連続的に分散処理する工程を有するナノ粒子分散液分散液の製造方法であって、上記分散装置における粒子分散液が通過する流路の最も狭い部分の幅が0.5mm未満であり、粒子分散液が通過する流路内の圧力が1MPa以上であるナノ粒子分散液の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、粒子分散液が送液され、通過する分散装置の粒子分散液が通過する流路の最も狭い部分の幅を0.5mm未満に狭め、粒子分散液が通過する流路内の圧力を1MPa以上とすることで、粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法は、凝集したナノ粒子を含有する粒子分散液を分散装置に送液することによりナノ粒子を連続的に分散処理する工程を有する。
【0008】
上記分散装置の粒子分散液が通過する流路の最も狭い部分の幅は0.5mm未満である。上記流路の最も狭い部分の幅が0.5mm以上であると、粒径が100nm以下の粒子に対して充分な分散効果が得られない。上記流路の最も狭い部分の幅の好ましい上限は0.1mmである。上記流路の最も狭い部分の幅の下限については特に限定されないが、実質的には10nm程度が下限である。
【0009】
上記分散装置のナノ粒子分散液が通過する流路内の圧力の下限は1MPaである。上記流路内の圧力が1MPa未満であると、粒径が100nm以下の粒子に対して充分な分散効果が得られない。上記流路内の圧力の好ましい下限は10MPa、上限は1000MPaである。
【0010】
上記分散装置は、圧力に応答して流路幅を0mmを超えて0.5mm未満の範囲で自動的に調整する機構(以下、マイクロ流路幅自動調整装置ともいう)を有することが好ましい。上記マイクロ流路幅自動調整装置を有することで、ナノ粒子による目詰まりを防止できる。
【0011】
上記マイクロ流路幅自動調整装置は特に限定されず、図1に示すような外部から流路に力を加えることで流路幅を調整する装置、図2に示すような弁により流路幅を調整する装置等が挙げられる。上記マイクロ流路幅自動調整装置のうち市販されているものとしては、例えば、AKICO社製「HPB−450」、TESCOM社製「26−1700シリーズ」等が挙げられる。
【0012】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法における、凝集したナノ粒子を含有する粒子分散液を分散装置に送液することによりナノ粒子を連続的に分散処理する工程において、分散の対象となるナノ粒子は特に限定されず、例えば、金属、合金、無機酸化物、半導体、有機化合物、炭素系ナノ粒子、ポリマー材料、ポリペプチド等からなるナノ粒子が挙げられる。
【0013】
上記金属は特に限定されず、例えば、Ni、Co、Al、Ag、Au、Cu、Fe、Pt、Pd等が挙げられる。
上記合金は特に限定されず、例えば、CoPt、FePt等が挙げられる。
上記無機酸化物は特に限定されず、例えば、SiO、SnO、ZnO、MgO、CaO、SrO、BaO、Al、ZrO、Nb、V、TiO、Sc、Y、La、Ga、GeO、Ta、HfO、Fe、Fe、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO(ATO)、ZnをドープしたIn(IZO)、MgIn、CuAlO、AgInO、13族元素(B、Al、Ga、In、Tl)をドープしたZnO、17族元素(F、Cl、Br、I)をドープしたZnO、1族元素(Li、Na、K、Rb、Cs)をドープしたZnO、15族元素(N、P、As、Sb、Bi)をドープしたZnO等が挙げられる。
上記半導体は特に限定されず、例えば、Si、Ge、SiC等のIV族半導体、CuCl等のI−VII族半導体、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe等のII−VI族半導体、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InP、InAs、InSb等のIII−V族半導体等が挙げられる。
上記有機化合物は特に限定されず、例えば、フタロシアニン、アゾ化合物等が挙げられる。
上記炭素系ナノ粒子は特に限定されず、例えば、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
これらのナノ粒子は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上記ナノ粒子は、2種以上の成分を含有してもよく、コアシェル構造を形成してもよい。
【0014】
上記コアシェル構造を有するナノ粒子は特に限定されず、例えば、CdSをコア−CdSeをシェル、CdSeをコア−CdSをシェル、CdSをコア−ZnSをシェル、CdSeをコア−ZnSをシェル、CdSeのナノ結晶をコア−ZnSをシェル、CdSeのナノ結晶をコア−ZnSeをシェル、Siをコア−SiOをシェルとするコアシェル構造有するナノ粒子等が挙げられる。
【0015】
上記コアシェル構造を有するナノ粒子は、表面のシェル層が親水性基を有する化合物により処理されていてもよい。
上記親水基を有する化合物は、上記ナノ粒子の表面と結合し、上記ナノ粒子に親水性を付与する物質である。
【0016】
上記親水基は水との相互作用の強い有極性の官能基であれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基又はその塩、水酸基、アミノ基、シアノ基、スルホン基、アミド基、イミド基又はその塩、硫酸エステル基又はその塩等、またこれらの官能基を含む糖、ペプチド等が挙げられ、例えば、−NR、−NR’R、−NHR、−NH等のアミノ基や、−CR”R’R、−CR’R、−CR、−CHR、−CHR’R、−CHR、−CH、−SR、−SHが挙げられる。なお、上記R”、R’、Rは親水性の有機飽和化合物基を示す。
【0017】
上記親水基を有する化合物は特に限定されないが、上記ナノ粒子の表面と結合を形成可能な官能基を有する結合部(以下、単に結合部ともいう)と親水基とを有する化合物(以下、親水性化合物ともいう)が好適である。
【0018】
上記親水性化合物は、1分子内に上記結合部を2以上有する2官能以上の化合物であってもよいし、親水基を2以上有する化合物であってもよい。
【0019】
上記結合部は、上記ナノ粒子の表面と結合する部位である。
上記親水性化合物において、上記ナノ粒子の表面と結合を形成可能な官能基と上記ナノ粒子の表面との結合の態様は特に限定されず、例えば、化学吸着、物理吸着、水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等が挙げられる。なかでも、上記ナノ粒子の表面への結合が容易であり、かつ、上記ナノ粒子の表面に結合させた上記親水性化合物の安定性が高くなることから、配位結合又は共有結合が好ましい。
【0020】
上記ナノ粒子の表面と結合を形成可能な官能基は特に限定されないが、配位結合可能なチオール基、共有結合可能な反応性官能基等が好適に用いられる。
【0021】
上記チオール基を有する親水性化合物は特に限定されず、例えば、2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプトプロピオニック酸、メルカプトサクシニック酸、チオグリコーリック酸、カプトリル、1−チオグリコール、チオラクティック酸、2−メルカプトエタンスルホニック酸、3−メルカプトイソブチリック酸、チオマリック酸、3−メルカプトベンゾイック酸、2−メルカプトベンゾイルアルコール、2−メルカプトニコティック酸、6−メルカプトニコティック酸、2−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、4−メルカプトフェノール等が挙げられる。
【0022】
上記共有結合可能な反応性官能基は特に限定されないが、末端に炭素−炭素二重結合(C=C)を有する官能基が好ましく用いられる。
【0023】
上記ナノ粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、板状、薄膜状、繊維状、チューブ状等が挙げられる。なかでも、球状のナノ粒子が好適である。
【0024】
本発明において、上記ナノ粒子の粒径は特に限定されず、例えば、医療用や産業用等種々の分野において用いられている粒子径がナノサイズの従来公知の微粒子を用いることができ、好ましい下限は0.3nm、好ましい上限は200nmである。
【0025】
上記ナノ粒子を分散させる分散媒は特に限定されず、例えば、水、水溶液、有機溶剤等が挙げられる。
上記有機溶剤は特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0026】
上記分散媒が水溶液の場合、金属酸化物等は表面電位により分散性が決まるため、等電点は重要な因子である。等電点より離れたpHでは、一旦分散したナノ粒子は長時間安定に分散し続ける。一方、疎水的なナノ粒子の場合、例えばアルブミン等が溶媒中に存在すればそのナノ粒子を被覆して分散処理後長時間安定に分散し続ける。
【0027】
上記粒子分散液は分散剤を含有することが好ましい。上記粒子分散液が分散剤を含有することで、ナノ粒子の分散性が更に向上する。
【0028】
上記分散剤は特に限定されず、例えば、コーティング作用を有する高分子化合物や粒子表面の電価が等電点から外れるようにする低分子化合物が挙げられる。
上記コーティング作用を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、ゼラチン等が挙げられる。
上記粒子表面の電価が等電点から外れるようにする低分子化合物としては酸又は塩基が用いられる。
上記酸又は塩基は特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、塩酸、硫酸、炭酸等が挙げられる。
【0029】
上記分散剤の配合量は、粒子の大きさや表面状態により適宜決めることができる。
【0030】
更に、上記粒子分散液は、必要に応じて、バインダー、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フリーラジカル捕捉剤、揮発成分除去剤、スリップ剤、重合阻害剤、光開始剤、消泡剤、乳化剤、レオロジー調節添加剤(増粘剤)、難燃剤等を含有してもよい。
【0031】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法を用いて製造したナノ粒子分散液の用途は特に限定されず、例えば、被覆材料、接着剤、シール剤、コーティング剤、塗料、光成型品、接着フィルム、セルフサポーティングフィルム及び硬質フォームの製造用の硬化性材料、建築物、家具、電子部品、機械部品、中空ガラス製品、ジェットインク、導電性ペースト、導電性インク、導電性フィルム、太陽電池、医薬品等に広く用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができるナノ粒子分散液の製造方法を提供することができる。具体的には、1次粒径50nm以下の粒子が凝集して1次粒子の10倍以上に凝集した凝集粒子を凝集粒子径の1次粒径の6倍以下に解砕、分散することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0034】
(実施例1)
(1)ナノ粒子の作製
アルゴン気流下、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)(関東化学社製)7.5gに、ステアリン酸(関東化学社製)2.9g、n−テトラデシルホスホン酸(AVOCADO社製)620mg、及び、酸化カドミニウム(和光純薬工業社製)250mgを加え、370℃に加熱混合した。これを270℃まで自然冷却させた後、予めトリブチルフォスフィン(関東化学社製)2.5mLにセレン(STREM CHEMICAL社製)200mgを溶解させた溶液を加え、減圧乾燥し、TOPOで被覆されたCdSe微粒子を得た。
次いで、得られたCdSe微粒子に、TOPO15gを加えて加熱し、引き続き270℃でトリオクチルホスフィン(シグマアルドリッチ社製)10mLにジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(東京化成社製)1.1gを溶解した溶液を加え、表面にTOPOが固定された、CdSeのナノ結晶をコアとし、ZnSをシェルとするナノ粒子(以下、TOPO固定量子ドットともいう)を得た。なお、この状態の量子ドットは、トルエンやテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に可溶である。
その後、作製したTOPO固定量子ドットをTHFに溶解させて85℃に加温し、そこにエタノールに溶解させたN−[(S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリン(シグマアルドリッチ社製)100mgを滴下させ、12時間程度還流させた。12時間還流後、NaOH水溶液を加え、2時間、90℃で加熱してTHFを蒸発させた。得られた未精製の量子ドットを、限外濾過(Millipore社製、「Microcon」)及びセファデックスカラム(Amersham Biosciences社製、「MicroSpin G−25Columns」)を用いて精製と濃縮とを行うことで、量子ドットの表面にN−[(S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリンが固定された親水性量子ドットを製造した。
この粒子の作製直後(凝集前)の粒径分布を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。その結果、作製直後の粒径の標準偏差σは1.8、平均粒径(中心となる粒度分布のピーク粒径)は8.7nm、全平均粒径は43.8nm、CV値は4.1%であった。なお、全平均粒径とは、中心となる粒度分布だけでなく全粒子の平均粒径を表し、上記CV値とは下記式(1)で表されるものである。
CV値(%)=(標準偏差σ/全平均粒径)×100 (1)
【0035】
(2)粒子分散液の調製
得られたナノ粒子の濃度が1g/Lになるように蒸留水で希釈した。この溶液を40℃で2日間保持して得られた、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を分散処理用サンプルとした。
【0036】
(3)凝集したナノ粒子の分散処理
図3に示す実験装置において、マイクロ流路幅自動調整装置としてAKICO社製「HPB−450」を用いて分散処理を行った。
得られた分散処理用サンプルを粒子分散液用タンク1に、分散剤として400mg/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加剤溶液用タンク2に導入し、表1に示す条件で凝集したナノ粒子の分散処理を行い、ナノ粒子分散液を得た。
【0037】
(実施例2、3、比較例1)
凝集したナノ粒子の分散処理において、ナノ粒子分散液が通過する流路内の圧力を表1に示した値とした以外は、実施例1と同様にして凝集したナノ粒子の分散処理を行った。
【0038】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られた分散処理用サンプル0.1mLに分散剤として400mg/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.9mLを加えた。分散装置による分散処理は行わなかった。
(比較例3)
実施例1と同様にして、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を得た。分散剤や分散装置による分散処理は行わなかった。
【0039】
(実施例4、5)
(1)ナノ粒子の作製
実施例1と同様にしてTOPO固定量子ドットを得た。
その後、作製したTOPO固定量子ドットをクロロホルムに溶解させて82℃に加温し、そこにメタノールに溶解させた2−アミノエタンチオール(シグマアルドリッチ社製)53mgを滴下させ、1時間程度還流させた。1時間還流後、反応液を回収し遠心分離を行った。得られた沈殿物をクロロホルム洗浄したのち、再度遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物をドラフト内で乾燥後、蒸留水に溶解させた。得られた未精製の量子ドットを、限外濾過(Millipore社製、「Microcon」)及びセファデックスカラム(Amersham Biosciences社製、「MicroSpin G−25Columns」)を用いて精製と濃縮とを行うことで、量子ドットの表面に2−アミノエタンチオールが固定された親水性量子ドットを製造した。
この粒子の作製直後(凝集前)の粒径分布を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。その結果、作製直後の粒径の標準偏差σは0、平均粒径(中心となる粒度分布のピーク粒径)は7.5nm、全平均粒径は29.6nm、CV値は0%であった。
【0040】
(2)粒子分散液の調製
得られたナノ粒子の濃度が1g/Lになるように蒸留水で希釈した。この溶液を25℃で90日間保持して得られた、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を分散処理用サンプルとした。
【0041】
(3)凝集したナノ粒子の分散処理
図3に示す実験装置において、マイクロ流路幅自動調整装置としてAKICO社製「HPB−450」を用いて分散処理を行った。
得られた分散処理用サンプルを粒子分散液用タンク1に、分散剤として1.823mg/Lの塩酸水溶液又は蒸留水を添加剤溶液用タンク2に導入し、表1に示す条件で凝集したナノ粒子の分散処理を行い、ナノ粒子分散液を得た。
【0042】
(比較例4)
実施例4と同様にして、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を得た。分散剤や分散装置による分散処理は行わなかった。
【0043】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた(ナノ)粒子分散液中の粒子の平均粒径、粒径の標準偏差σ、CV値、及び、ピーク粒径を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、粒径が100nm以下の粒子が微分散したナノ粒子分散液を容易に製造することができるナノ粒子分散液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】マイクロ流路幅自動調整装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】マイクロ流路幅自動調整装置の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明のナノ粒子の分散方法にて用いる実験装置の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0047】
1 粒子分散液用タンク
2 添加剤溶液用タンク
3 ポンプ
4 圧力ゲージ
5 マイクロ流路幅自動調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集したナノ粒子を含有する粒子分散液を分散装置に送液することによりナノ粒子を連続的に分散処理する工程を有するナノ粒子分散液の製造方法であって、
前記分散装置における粒子分散液が通過する流路の最も狭い部分の幅が0.5mm未満であり、粒子分散液が通過する流路内の圧力が1MPa以上である
ことを特徴とするナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
分散装置は、圧力に応答して流路幅を0mmを超えて0.5mm未満の範囲で自動的に調整する機構を有することを特徴とする請求項1記載のナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
粒子分散液は分散剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のナノ粒子分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−69357(P2010−69357A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236473(P2008−236473)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(502165942)
【Fターム(参考)】