ナノ結晶セルロース(NCC)に基づく熱可塑性ナノコンポジット材料
ナノ結晶セルロース(NCC)及び適切なビニルポリマーを含んでいるナノコンポジット材料の開発のための環境に優しい手法が記載されている。この手法は、水性媒体中での酢酸ビニル及びメチルメタクリラート等の疎水性ビニルモノマーのNCC表面へのその場グラフト共重合に対処している。得られる材料は、出発時のNCCより著しく疎水性で熱に安定である。このナノコンポジット材料は、適切な溶媒中に懸濁させ、乾燥させ、通常のポリマー加工技術を用いて他の材料と共に成型することにより、新たな特徴を有する更に新たな材料を開発することができる。これらのナノコンポジットには、工業的用途から医学的用途まで広範囲にわたる応用がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノ結晶セルロース(NCC)及び疎水性ビニルモノマーの熱可塑性の疎水性ナノコンポジット、並びにかかるナノコンポジットを製造するための方法に関し、該方法は環境に優しい方法とみなすことができる。このナノコンポジットは、疎水性であり広範な合成ポリマーと相溶性がある、持続可能で熱的に安定な生体材料である。このナノコンポジット材料は、適切な溶媒中に懸濁させることも乾燥させることも、そして通常のポリマー加工技術を用いて他の材料と共に成型して新たな特徴を有する更に多くの材料を開発することもできる。これらのナノコンポジットには、工業的用途から医学的用途まで広範囲にわたる応用がある。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶セルロース(NCC)は、ナノコンポジット中の強化材として適用できることが認められてきた。高い強度及び弾性係数のキラルネマチック構造であるNCCは、再生可能であり、比較的大きい反応性表面を有しており、生分解性である。コンポジット製造におけるNCC利用に対する主な障害は、(1)大部分が疎水性の材料中での親水性NCCの分散及び(2)NCCとポリマーとの間の不十分な界面接着である。さまざまな試みが、NCCの分散及びポリマー基質との相互作用を増すために追求されている。NCCは、界面活性剤により被覆されるか又は化学的に表面が改質された1,2。界面活性剤の使用は、全く簡単な方法であるが、得られるコンポジットの強度に悪影響を与える大量の界面活性剤を通常は必要とする。他方、表面改質は、NCC表面のヒドロキシル基との反応を一般に含む。シランが、疎水性基をNCC表面にグラフトするために採用されてきた。更に、ヒドロキシルに対する反応性基を有するいくつかのポリマー、例えば、PEG3、PCL4及びPP5なども同じく使用されてきた。これらの改質は、NCCをより疎水性とし、NCCに有機溶媒中の適度な安定性を与えることができる。然しながら、これらの反応は、有機溶媒中で一般に行われ、いくつかのステップを伴う。
【0003】
多糖表面、例えば、セルロース、デンプン、及びキトサンへのビニルモノマーの表面グラフト共重合は、広範囲に研究されている6〜8。メチルメタクリラート、メチルアクリラート、アクリル酸又は酢酸ビニルが、好適なモノマーとして使用することができる。グラフト重合は、光開始剤、紫外線、γ線放射、ラジカル開始剤などを含めたさまざまな開始システムを使用することが報告されている。これらの技術においては、AIBN、鉄(II)−過酸化水素、過硫酸カリウム、及び遷移金属イオン等のラジカル開始剤が、幅広く使用されている。ラジカル開始剤の中で、セリウム(IV)イオンが多数の多糖にビニルモノマーをグラフトするのに大きな有効性を示している。この開始反応に対して提案されている機構は、一つの電子移動により解離してラジカルを生ずることができるポリマー主鎖上のヒドロキシル基との錯体の形成によるものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを提供しようとするものである。
【0005】
この発明は、又、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法を提供しようとするものである。
【0006】
なお更に、この発明は、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合された本発明の疎水性ナノコンポジットを含む組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様においては、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットであって、前記重合したビニルモノマーが、前記NCCにグラフトしている上記疎水性ナノコンポジットが提供される。
【0008】
本発明の一つの態様においては、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法であって、少なくとも一つの疎水性ビニルモノマーのNCC粒子の存在下での重合を含む上記方法が提供される。
【0009】
本発明の更に別の態様においては、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合された本発明のナノコンポジットを含む組成物が提供される。
【0010】
本発明を、添付の図面を参照することにより、図示して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すNCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCのFT−IRである。
【図2A】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPVAc−g−NCCの1H NMRを含む図である。
【図2B】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCの1H NMRを含む図である。
【図2C】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCを含む図である。
【図3A】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCの13C NMRを含む図である。
【図3B】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCを含む図である。
【図4】NCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCの熱重量分析の図である。
【図5】NCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCの示差走査熱量測定の図である。
【図6】NCC及びナノコンポジットの場合に改良された疎水性を表すPMMA−g−NCCの水接触角を示す図である。
【図7】重合混合物中のさまざまなMMA:NCC比に対して生成したナノコンポジット%を示す図である。
【図8】重合混合物中のさまざまなVAc:NCC比に対して生成したナノコンポジット%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
表の簡単な説明
表1:ナノ結晶セルロース(NCC)と酢酸ビニル(VAc)及びメチルメタクリラート(MMA)のための最適な重合条件を示す表である。
表2:さまざまな溶媒系におけるNCC及びPMMA−g−NCC粒子の粒径を示す表である。2%CANによる重合に対するグラフト化率が記録されている。
【0013】
ナノ結晶セルロース(NCC)及び適切なビニルポリマーを含んでいるナノコンポジット材料の開発のための環境に優しい手法が記載されている。この手法は、水性媒体中での疎水性ビニルモノマーのNCC表面へのその場グラフト共重合を採用する。この手法は、2つの種類のモノマー、酢酸ビニル及びメチルメタクリラートに関して以後説明するが、他の疎水性ビニルモノマーを使用することもできる。
【0014】
このナノコンポジット材料は、出発時のNCCより著しくより疎水性で熱的に安定である。このナノコンポジット材料は、適切な溶媒中に懸濁させることも乾燥させることも、そして通常のポリマー加工技術を用いて他の材料と共に成型して新たな特徴を有する更に多くの材料を開発することもできる。これらのナノコンポジットには、工業的用途から医学的用途まで広範囲にわたる応用がある。
【0015】
この発明は、疎水性モノマーのナノ結晶セルロース(NCC)の表面へのその場グラフト共重合による熱可塑性で疎水性のナノコンポジットの開発に対処している。任意の適切な種類の疎水性ビニルモノマーを該NCCとのナノコンポジットを生み出すために使用することができるが、この開示は、本発明を説明する手段として好適なビニルモノマーとして酢酸ビニル及びメチルメタクリラートに焦点を合わせる。
【0016】
適切な疎水性ビニルモノマーは、特に、NCCの存在下でその場重合し、それ自体の間で架橋することなくNCCに結合すると見込まれるものである。アクリラートは適切なモノマーであるが、架橋が起こりそうなモノマーは特に適切とはなり得ないと思われる。NCCに対して中等度の疎水性を有する分子が適当である。
【0017】
該疎水性ビニルモノマーの水溶解度は、この重合のためのビニルモノマーを選択する要因である。高過ぎる場合そのポリマーは水溶性であろうし、低過ぎる場合はそのグラフト重合の生起又は進行が困難となろう。メチルメタクリラートの水溶解度は、1.5g/100mlであり、酢酸ビニルの水溶解度は2.5g/100mlである。好適にはその溶解度の範囲は約1.5〜約3g/100mlであり、それ故に、3g/100mlの水溶解度を有するメチルアクリラート、及び1.5g/100mlの水溶解度を有するエチルアクリラートも又重合のための適切な疎水性ビニルモノマーである。
【0018】
NCCからのポリマー鎖がコポリマーとなり得るように、適当なモノマーの混合物を採用することができる。NCCにグラフトしたポリマー鎖は、従って、その混合物の異なる各モノマーのホモポリマー鎖、並びにその混合物の異なるモノマーを含むコポリマー鎖を含むことができる。
【0019】
重合は水性媒体中で行われる。疎水系を生み出すことを究極の目的として重合を行うために水性媒体を使用することができることは、本発明の特に興味深い態様であり、又、費用効率のよい製造に対する重要で有利な意味合い、並びに環境上の(環境に優しい)利点を有する。
【0020】
好ましくは、その重合は、7より低い、特に1〜4のpHを有する酸性の水性媒体中で行われる。酸性のpHは、硝酸等の酸の添加によって得られる。
【0021】
その重合は、適切には室温(約20℃)〜90℃で1〜20時間、好ましくは40℃〜70℃の温度で1〜4時間にわたって行われる。
【0022】
一般的には重合を促進するためのラジカル開始剤及び重合を終結するための重合停止剤が使用される。
【0023】
開かれたオレフィンモノマーは、末端の遊離価を有しており、その一つはNCC結晶上のヒドロキシルを経る酸化物結合を形成し、もう一つは、更なるモノマーと結合してポリマー鎖を形成し、従って該ポリマー鎖は、NCCのヒドロキシル基との末端の結合を有する。
【0024】
いくつかのポリマー鎖が、それぞれのNCCナノ結晶にその結晶上のヒドロキシル基を介して独自に結合して存在することができ、それによって単一の中央の結晶がそれから放射状に延びているいくつかのポリマー鎖を有する。
【0025】
鎖の末端でオレフィンポリマーからの外側の末端遊離価がNCC結晶上のヒドロキシルを通して結合できることはあり得るが競争反応のために起こりそうもない。外側末端のラジカルは、主に以下の反応によって終結されよう。
・未使用の開始剤によって終結される。
・別の外側の末端ラジカルとの反応。2つの可能性がある。(1)その反応がモノマーのラジカルと起こる場合、それは終結される。この場合ポリマー鎖は結晶から放射状に伸びる。
・(2)然しながら反応がポリマー鎖のラジカルと起こる場合、2つの機構が可能であり:
・(a)ポリマー鎖が同じ結晶から起こっている場合、両端が結晶に結合した輪が形成される。
・(b)ポリマー鎖が異なる結晶から起こっている場合、それらの結晶は架橋される。これはあり得るけれども最小限のようであり、グラフトしたNCCが、有機溶媒中に適切に懸濁することが見いだされており、凝集体は検出されていない。
・グラフトしていない遊離ポリマーをもたらすモノマーへの移動及び重合開始。
【0026】
グラフト化率は、改質されたNCC(即ち、ビニルグラフト化NCC)の重量対元のNCCの重量の比である。本明細書の表1に示されている最適の反応条件に対して、グラフト化率は、次の通りである:
1.PMMA−g−NCCについては、MMA:NCC重量比=1:1で66.4%
2.PVAc−g−NCCについては、VAc:NCC重量比=2:1で12.4%
モノマー重量比を増した場合、そのグラフト化率も、同じ反応条件において、増加することになろう。図7及び8は、MMA及びVAcについてその傾向を裏付けるグラフである。
【0027】
一般に、該重合は、ビニルモノマーのNCCへのグラフト化及び上記モノマーの更なるモノマーとの重合による、NCCから伸びるポリマー鎖の形成によって進行する。
【0028】
該ナノコンポジットは、高MWポリマーと混合又は組み合わせることができ、一般に、グラフトしていない遊離ポリマーは、かかる混合又は組み合わせの前に該ナノコンポジットから除去されようが、高MWポリマーとしてPMMAを使用することができる場合は生成したPMMA−g−NCC中に存在する遊離PMMAポリマーを除去する必要はない。他方で、高MWポリマーとしてポリスチレンがPMMA−g−NCCと混合するために使用される場合は、遊離PMMAホモポリマーを除去する必要がある。
【0029】
好適な高MWポリマーは、20,000から数百万、例えば、20,000〜5,000,000の分子量を有しており、好適なポリマーとしては、ポリメチルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル及びポリスチレンが挙げられる。
【0030】
特定の実施形態において、NCCへの酢酸ビニル(VAc)又はメチルメタクリラート(MMA)の表面グラフト共重合は、以下の手順に従って実施される。モノマー中の防止剤を防止剤除去カラムにより最初に除去する。水中のNCC懸濁液をVAc又はMMAと最初に混合し脱イオン(DI)水により所定の濃度に希釈する。NCC対MMA(又はVAc)の質量比は調節可能であり、この場合は1:2を使用する。最終の反応液においては、NCCの濃度は3%w/wであるように制御し、反応液のpHは、例えばHNO3を用いて酸性になるように、例えばpH=2を目標にして調節する。ラジカル開始剤、例えば硝酸セリウムアンモニウム(CAN)の所要量を、所要量のHNO3と共にDI水中に溶解する。CAN及びNCCの両溶液は、次に例えば30分間窒素を吹き込む。重合はCAN溶液をNCC溶液中に添加することによって開始し、その反応を特定温度で一定時間にわたってそのまま進行させる。反応の終点近くで100μlのヒドロキノン(例えば、1%w/w)を加えて反応を停止させ、固形分を4,400rpmで30分間遠心分離にかける。未グラフトのポリ(酢酸ビニル)(PVAc)又はポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)をアセトンにより、例えばソックスレー抽出を少なくとも3日間用いて抽出する。抽出が完了した後、PMMA−g−NCC又はPVAc−g−NCCナノコンポジット材料を真空下の室温で一晩乾燥する。表面グラフト重合のための最適な反応条件を決定するために、一連の実験を酢酸ビニル及びメチルメタクリラートについてそれぞれ行う。最適な条件は表1に記載されている。
【0031】
グラフトポリマー対NCCの比率の範囲は異なるモノマーで幅広く変化し、添加されるモノマーの量にも依存する。例として、1:1のMMA:NCC比についてはグラフトしたPMMA:NCC比は0.63:1であり、2:1のVAc:NCC比についてはグラフトしたPVAc:NCC比は0.12:1である。
【0032】
硝酸、塩酸及び硫酸等の無機酸、並びに酢酸等の有機酸を含めたさまざまな酸が、重合反応を行うのに適する。
【実施例】
【0033】
(例1)
ナノコンポジットを上記の手順に従って製造した。ビニルモノマーのNCCへの表面グラフト共重合の成功の証拠、即ち、PVAc又はPMMAがNCCにグラフトしているか否かの判定は、フーリエ変換赤外(FT−IR)及び/又は核磁気共鳴(NMR)を用いて行った。図1において、グラフト共重合後は、元のNCCと比較して2つのピークが特に明白である。それぞれ、1734cm−1のピークはC=O振動であり、1241cm−1のピークはエステル基中のC−O振動に相当する。PVAc及びPMMAのグラフト化の発生は、1H NMRにより更に確認される。図2において、PVAc−g−NCCについて、1.755におけるピークaは、−CH2−プロトンを示し、ピークc(1.9から1.97)は−CH3プロトンを示し、一方、4.78におけるピークbは、−CH−プロトンを与える9。PMMA−g−NCCのNMRスペクトルにおいて、ピークb(0.84及び1.02)は、炭素上のメチルのプロトンを与え、一方ピークc(3.6)は、酸素上のメチルのプロトンを与える。1.81のピークaは−CH2−プロトンを与える10。溶液NMRに加えて固体13C NMRをPMMA−g−NCC試料について実施し、NCCへの表面グラフト化の成功の決定的証拠を得た。図3において明らかなように、全ての特異ピークは文献11,12により帰属させることができる。
【0034】
(例2)
NCC及びPMMA−g−NCC粒子の粒径は、等価球の流体力学直径を測定する高解像度の粒径分析器(例えば、ゼータサイザー(Zetesizer))を用いて検出することができる。NCCは水中に懸濁させ、一方PMMA−g−NCCはクロロホルム又はテトラヒドロフラン(THF)中に懸濁させる。表2に示されているPMMA−g−NCCの粒径は、異なる重合法により変化させることができる。1:1のMMA:NCCを使用する場合、その生成物は溶媒中に懸濁できず、これは、NCCにグラフトしたMMAが十分にないため、適当な有機溶媒中にそれを懸濁させることができないことを意味する。他方で、より少ない開始剤が使用される場合、得られるPMMA−g−NCCは、より多くの開始剤が使用される場合より粒径がより大きい。これは、より多くの開始剤はPMMA鎖をより短くし、より小さい粒径のPMMA−g−NCC粒子をもたらす事実によって説明される。最後に、PMMA−g−NCCは、クロロホルム中よりTHF中で小さい傾向がある。表2は、効率的な首尾好いグラフト化を裏付ける2つの条件に対するグラフト化率も示している。
【0035】
(例3)
図4に示されている熱重量分析(TG)データは、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCが両方共元のNCCよりもより熱的に安定であることを明示している。これはこれらのナノコンポジットを通常のポリマー加工技術、例えば押出しを用いて加工することが可能であることを示す。図5において、示差走査熱量測定(DSC)データは、PVAc−g−NCCについては検出可能な勾配変化がなく、又一方、PMMA−g−NCCについては100℃付近に明らかな勾配の変化があり、これはPMMAに対するTgである。これは、多分、グラフトしたPVAcの量がDSCによって検出されるほど十分に多くないためである。然しながら、NCCについては、勾配は160℃を超えると変化するが、その理由は恐らく、160℃より上の温度でNCCの分解が始まり、そのためDSC曲線に発熱応答があることである。図4におけるNCCについてのTG曲線は、NCCの分解が160℃を超えるとすぐに始まることを裏付けている。
【0036】
(例4)
NCCとPMMA−g−NCCの両方の表面疎水性を決定するために、水接触角の測定を採用している。図6は、PMMA−g−NCCのナノコンポジットの水接触角が、元のNCCに対する値より二倍を超えて増大しており、この新たなナノコンポジット材料が改良された疎水性を表していることを示す。
【0037】
表
【表1】
【表2】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノ結晶セルロース(NCC)及び疎水性ビニルモノマーの熱可塑性の疎水性ナノコンポジット、並びにかかるナノコンポジットを製造するための方法に関し、該方法は環境に優しい方法とみなすことができる。このナノコンポジットは、疎水性であり広範な合成ポリマーと相溶性がある、持続可能で熱的に安定な生体材料である。このナノコンポジット材料は、適切な溶媒中に懸濁させることも乾燥させることも、そして通常のポリマー加工技術を用いて他の材料と共に成型して新たな特徴を有する更に多くの材料を開発することもできる。これらのナノコンポジットには、工業的用途から医学的用途まで広範囲にわたる応用がある。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶セルロース(NCC)は、ナノコンポジット中の強化材として適用できることが認められてきた。高い強度及び弾性係数のキラルネマチック構造であるNCCは、再生可能であり、比較的大きい反応性表面を有しており、生分解性である。コンポジット製造におけるNCC利用に対する主な障害は、(1)大部分が疎水性の材料中での親水性NCCの分散及び(2)NCCとポリマーとの間の不十分な界面接着である。さまざまな試みが、NCCの分散及びポリマー基質との相互作用を増すために追求されている。NCCは、界面活性剤により被覆されるか又は化学的に表面が改質された1,2。界面活性剤の使用は、全く簡単な方法であるが、得られるコンポジットの強度に悪影響を与える大量の界面活性剤を通常は必要とする。他方、表面改質は、NCC表面のヒドロキシル基との反応を一般に含む。シランが、疎水性基をNCC表面にグラフトするために採用されてきた。更に、ヒドロキシルに対する反応性基を有するいくつかのポリマー、例えば、PEG3、PCL4及びPP5なども同じく使用されてきた。これらの改質は、NCCをより疎水性とし、NCCに有機溶媒中の適度な安定性を与えることができる。然しながら、これらの反応は、有機溶媒中で一般に行われ、いくつかのステップを伴う。
【0003】
多糖表面、例えば、セルロース、デンプン、及びキトサンへのビニルモノマーの表面グラフト共重合は、広範囲に研究されている6〜8。メチルメタクリラート、メチルアクリラート、アクリル酸又は酢酸ビニルが、好適なモノマーとして使用することができる。グラフト重合は、光開始剤、紫外線、γ線放射、ラジカル開始剤などを含めたさまざまな開始システムを使用することが報告されている。これらの技術においては、AIBN、鉄(II)−過酸化水素、過硫酸カリウム、及び遷移金属イオン等のラジカル開始剤が、幅広く使用されている。ラジカル開始剤の中で、セリウム(IV)イオンが多数の多糖にビニルモノマーをグラフトするのに大きな有効性を示している。この開始反応に対して提案されている機構は、一つの電子移動により解離してラジカルを生ずることができるポリマー主鎖上のヒドロキシル基との錯体の形成によるものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを提供しようとするものである。
【0005】
この発明は、又、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法を提供しようとするものである。
【0006】
なお更に、この発明は、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合された本発明の疎水性ナノコンポジットを含む組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様においては、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットであって、前記重合したビニルモノマーが、前記NCCにグラフトしている上記疎水性ナノコンポジットが提供される。
【0008】
本発明の一つの態様においては、ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法であって、少なくとも一つの疎水性ビニルモノマーのNCC粒子の存在下での重合を含む上記方法が提供される。
【0009】
本発明の更に別の態様においては、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合された本発明のナノコンポジットを含む組成物が提供される。
【0010】
本発明を、添付の図面を参照することにより、図示して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すNCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCのFT−IRである。
【図2A】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPVAc−g−NCCの1H NMRを含む図である。
【図2B】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCの1H NMRを含む図である。
【図2C】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCを含む図である。
【図3A】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCの13C NMRを含む図である。
【図3B】ビニルモノマーのNCCへの好結果の表面グラフトを示すPMMA−g−NCCを含む図である。
【図4】NCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCの熱重量分析の図である。
【図5】NCC、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCの示差走査熱量測定の図である。
【図6】NCC及びナノコンポジットの場合に改良された疎水性を表すPMMA−g−NCCの水接触角を示す図である。
【図7】重合混合物中のさまざまなMMA:NCC比に対して生成したナノコンポジット%を示す図である。
【図8】重合混合物中のさまざまなVAc:NCC比に対して生成したナノコンポジット%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
表の簡単な説明
表1:ナノ結晶セルロース(NCC)と酢酸ビニル(VAc)及びメチルメタクリラート(MMA)のための最適な重合条件を示す表である。
表2:さまざまな溶媒系におけるNCC及びPMMA−g−NCC粒子の粒径を示す表である。2%CANによる重合に対するグラフト化率が記録されている。
【0013】
ナノ結晶セルロース(NCC)及び適切なビニルポリマーを含んでいるナノコンポジット材料の開発のための環境に優しい手法が記載されている。この手法は、水性媒体中での疎水性ビニルモノマーのNCC表面へのその場グラフト共重合を採用する。この手法は、2つの種類のモノマー、酢酸ビニル及びメチルメタクリラートに関して以後説明するが、他の疎水性ビニルモノマーを使用することもできる。
【0014】
このナノコンポジット材料は、出発時のNCCより著しくより疎水性で熱的に安定である。このナノコンポジット材料は、適切な溶媒中に懸濁させることも乾燥させることも、そして通常のポリマー加工技術を用いて他の材料と共に成型して新たな特徴を有する更に多くの材料を開発することもできる。これらのナノコンポジットには、工業的用途から医学的用途まで広範囲にわたる応用がある。
【0015】
この発明は、疎水性モノマーのナノ結晶セルロース(NCC)の表面へのその場グラフト共重合による熱可塑性で疎水性のナノコンポジットの開発に対処している。任意の適切な種類の疎水性ビニルモノマーを該NCCとのナノコンポジットを生み出すために使用することができるが、この開示は、本発明を説明する手段として好適なビニルモノマーとして酢酸ビニル及びメチルメタクリラートに焦点を合わせる。
【0016】
適切な疎水性ビニルモノマーは、特に、NCCの存在下でその場重合し、それ自体の間で架橋することなくNCCに結合すると見込まれるものである。アクリラートは適切なモノマーであるが、架橋が起こりそうなモノマーは特に適切とはなり得ないと思われる。NCCに対して中等度の疎水性を有する分子が適当である。
【0017】
該疎水性ビニルモノマーの水溶解度は、この重合のためのビニルモノマーを選択する要因である。高過ぎる場合そのポリマーは水溶性であろうし、低過ぎる場合はそのグラフト重合の生起又は進行が困難となろう。メチルメタクリラートの水溶解度は、1.5g/100mlであり、酢酸ビニルの水溶解度は2.5g/100mlである。好適にはその溶解度の範囲は約1.5〜約3g/100mlであり、それ故に、3g/100mlの水溶解度を有するメチルアクリラート、及び1.5g/100mlの水溶解度を有するエチルアクリラートも又重合のための適切な疎水性ビニルモノマーである。
【0018】
NCCからのポリマー鎖がコポリマーとなり得るように、適当なモノマーの混合物を採用することができる。NCCにグラフトしたポリマー鎖は、従って、その混合物の異なる各モノマーのホモポリマー鎖、並びにその混合物の異なるモノマーを含むコポリマー鎖を含むことができる。
【0019】
重合は水性媒体中で行われる。疎水系を生み出すことを究極の目的として重合を行うために水性媒体を使用することができることは、本発明の特に興味深い態様であり、又、費用効率のよい製造に対する重要で有利な意味合い、並びに環境上の(環境に優しい)利点を有する。
【0020】
好ましくは、その重合は、7より低い、特に1〜4のpHを有する酸性の水性媒体中で行われる。酸性のpHは、硝酸等の酸の添加によって得られる。
【0021】
その重合は、適切には室温(約20℃)〜90℃で1〜20時間、好ましくは40℃〜70℃の温度で1〜4時間にわたって行われる。
【0022】
一般的には重合を促進するためのラジカル開始剤及び重合を終結するための重合停止剤が使用される。
【0023】
開かれたオレフィンモノマーは、末端の遊離価を有しており、その一つはNCC結晶上のヒドロキシルを経る酸化物結合を形成し、もう一つは、更なるモノマーと結合してポリマー鎖を形成し、従って該ポリマー鎖は、NCCのヒドロキシル基との末端の結合を有する。
【0024】
いくつかのポリマー鎖が、それぞれのNCCナノ結晶にその結晶上のヒドロキシル基を介して独自に結合して存在することができ、それによって単一の中央の結晶がそれから放射状に延びているいくつかのポリマー鎖を有する。
【0025】
鎖の末端でオレフィンポリマーからの外側の末端遊離価がNCC結晶上のヒドロキシルを通して結合できることはあり得るが競争反応のために起こりそうもない。外側末端のラジカルは、主に以下の反応によって終結されよう。
・未使用の開始剤によって終結される。
・別の外側の末端ラジカルとの反応。2つの可能性がある。(1)その反応がモノマーのラジカルと起こる場合、それは終結される。この場合ポリマー鎖は結晶から放射状に伸びる。
・(2)然しながら反応がポリマー鎖のラジカルと起こる場合、2つの機構が可能であり:
・(a)ポリマー鎖が同じ結晶から起こっている場合、両端が結晶に結合した輪が形成される。
・(b)ポリマー鎖が異なる結晶から起こっている場合、それらの結晶は架橋される。これはあり得るけれども最小限のようであり、グラフトしたNCCが、有機溶媒中に適切に懸濁することが見いだされており、凝集体は検出されていない。
・グラフトしていない遊離ポリマーをもたらすモノマーへの移動及び重合開始。
【0026】
グラフト化率は、改質されたNCC(即ち、ビニルグラフト化NCC)の重量対元のNCCの重量の比である。本明細書の表1に示されている最適の反応条件に対して、グラフト化率は、次の通りである:
1.PMMA−g−NCCについては、MMA:NCC重量比=1:1で66.4%
2.PVAc−g−NCCについては、VAc:NCC重量比=2:1で12.4%
モノマー重量比を増した場合、そのグラフト化率も、同じ反応条件において、増加することになろう。図7及び8は、MMA及びVAcについてその傾向を裏付けるグラフである。
【0027】
一般に、該重合は、ビニルモノマーのNCCへのグラフト化及び上記モノマーの更なるモノマーとの重合による、NCCから伸びるポリマー鎖の形成によって進行する。
【0028】
該ナノコンポジットは、高MWポリマーと混合又は組み合わせることができ、一般に、グラフトしていない遊離ポリマーは、かかる混合又は組み合わせの前に該ナノコンポジットから除去されようが、高MWポリマーとしてPMMAを使用することができる場合は生成したPMMA−g−NCC中に存在する遊離PMMAポリマーを除去する必要はない。他方で、高MWポリマーとしてポリスチレンがPMMA−g−NCCと混合するために使用される場合は、遊離PMMAホモポリマーを除去する必要がある。
【0029】
好適な高MWポリマーは、20,000から数百万、例えば、20,000〜5,000,000の分子量を有しており、好適なポリマーとしては、ポリメチルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル及びポリスチレンが挙げられる。
【0030】
特定の実施形態において、NCCへの酢酸ビニル(VAc)又はメチルメタクリラート(MMA)の表面グラフト共重合は、以下の手順に従って実施される。モノマー中の防止剤を防止剤除去カラムにより最初に除去する。水中のNCC懸濁液をVAc又はMMAと最初に混合し脱イオン(DI)水により所定の濃度に希釈する。NCC対MMA(又はVAc)の質量比は調節可能であり、この場合は1:2を使用する。最終の反応液においては、NCCの濃度は3%w/wであるように制御し、反応液のpHは、例えばHNO3を用いて酸性になるように、例えばpH=2を目標にして調節する。ラジカル開始剤、例えば硝酸セリウムアンモニウム(CAN)の所要量を、所要量のHNO3と共にDI水中に溶解する。CAN及びNCCの両溶液は、次に例えば30分間窒素を吹き込む。重合はCAN溶液をNCC溶液中に添加することによって開始し、その反応を特定温度で一定時間にわたってそのまま進行させる。反応の終点近くで100μlのヒドロキノン(例えば、1%w/w)を加えて反応を停止させ、固形分を4,400rpmで30分間遠心分離にかける。未グラフトのポリ(酢酸ビニル)(PVAc)又はポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)をアセトンにより、例えばソックスレー抽出を少なくとも3日間用いて抽出する。抽出が完了した後、PMMA−g−NCC又はPVAc−g−NCCナノコンポジット材料を真空下の室温で一晩乾燥する。表面グラフト重合のための最適な反応条件を決定するために、一連の実験を酢酸ビニル及びメチルメタクリラートについてそれぞれ行う。最適な条件は表1に記載されている。
【0031】
グラフトポリマー対NCCの比率の範囲は異なるモノマーで幅広く変化し、添加されるモノマーの量にも依存する。例として、1:1のMMA:NCC比についてはグラフトしたPMMA:NCC比は0.63:1であり、2:1のVAc:NCC比についてはグラフトしたPVAc:NCC比は0.12:1である。
【0032】
硝酸、塩酸及び硫酸等の無機酸、並びに酢酸等の有機酸を含めたさまざまな酸が、重合反応を行うのに適する。
【実施例】
【0033】
(例1)
ナノコンポジットを上記の手順に従って製造した。ビニルモノマーのNCCへの表面グラフト共重合の成功の証拠、即ち、PVAc又はPMMAがNCCにグラフトしているか否かの判定は、フーリエ変換赤外(FT−IR)及び/又は核磁気共鳴(NMR)を用いて行った。図1において、グラフト共重合後は、元のNCCと比較して2つのピークが特に明白である。それぞれ、1734cm−1のピークはC=O振動であり、1241cm−1のピークはエステル基中のC−O振動に相当する。PVAc及びPMMAのグラフト化の発生は、1H NMRにより更に確認される。図2において、PVAc−g−NCCについて、1.755におけるピークaは、−CH2−プロトンを示し、ピークc(1.9から1.97)は−CH3プロトンを示し、一方、4.78におけるピークbは、−CH−プロトンを与える9。PMMA−g−NCCのNMRスペクトルにおいて、ピークb(0.84及び1.02)は、炭素上のメチルのプロトンを与え、一方ピークc(3.6)は、酸素上のメチルのプロトンを与える。1.81のピークaは−CH2−プロトンを与える10。溶液NMRに加えて固体13C NMRをPMMA−g−NCC試料について実施し、NCCへの表面グラフト化の成功の決定的証拠を得た。図3において明らかなように、全ての特異ピークは文献11,12により帰属させることができる。
【0034】
(例2)
NCC及びPMMA−g−NCC粒子の粒径は、等価球の流体力学直径を測定する高解像度の粒径分析器(例えば、ゼータサイザー(Zetesizer))を用いて検出することができる。NCCは水中に懸濁させ、一方PMMA−g−NCCはクロロホルム又はテトラヒドロフラン(THF)中に懸濁させる。表2に示されているPMMA−g−NCCの粒径は、異なる重合法により変化させることができる。1:1のMMA:NCCを使用する場合、その生成物は溶媒中に懸濁できず、これは、NCCにグラフトしたMMAが十分にないため、適当な有機溶媒中にそれを懸濁させることができないことを意味する。他方で、より少ない開始剤が使用される場合、得られるPMMA−g−NCCは、より多くの開始剤が使用される場合より粒径がより大きい。これは、より多くの開始剤はPMMA鎖をより短くし、より小さい粒径のPMMA−g−NCC粒子をもたらす事実によって説明される。最後に、PMMA−g−NCCは、クロロホルム中よりTHF中で小さい傾向がある。表2は、効率的な首尾好いグラフト化を裏付ける2つの条件に対するグラフト化率も示している。
【0035】
(例3)
図4に示されている熱重量分析(TG)データは、PVAc−g−NCC及びPMMA−g−NCCが両方共元のNCCよりもより熱的に安定であることを明示している。これはこれらのナノコンポジットを通常のポリマー加工技術、例えば押出しを用いて加工することが可能であることを示す。図5において、示差走査熱量測定(DSC)データは、PVAc−g−NCCについては検出可能な勾配変化がなく、又一方、PMMA−g−NCCについては100℃付近に明らかな勾配の変化があり、これはPMMAに対するTgである。これは、多分、グラフトしたPVAcの量がDSCによって検出されるほど十分に多くないためである。然しながら、NCCについては、勾配は160℃を超えると変化するが、その理由は恐らく、160℃より上の温度でNCCの分解が始まり、そのためDSC曲線に発熱応答があることである。図4におけるNCCについてのTG曲線は、NCCの分解が160℃を超えるとすぐに始まることを裏付けている。
【0036】
(例4)
NCCとPMMA−g−NCCの両方の表面疎水性を決定するために、水接触角の測定を採用している。図6は、PMMA−g−NCCのナノコンポジットの水接触角が、元のNCCに対する値より二倍を超えて増大しており、この新たなナノコンポジット材料が改良された疎水性を表していることを示す。
【0037】
表
【表1】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法であって、少なくとも一つの疎水性ビニルモノマーのNCC粒子の存在下での重合を含む上記方法。
【請求項2】
重合が水性媒体中である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性媒体が、酸性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性媒体が、1〜4のpHを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重合が、室温(約20℃)〜90℃で1〜24時間にわたって行われる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合が、40℃〜70℃の温度で1〜4時間にわたって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記重合が、ラジカル開始剤の存在下で行われる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重合が、NCCへのビニルモノマーのグラフト化、及び前記モノマーの重合による、NCCから伸びるポリマーの形成を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記重合の完了後に、前記ビニルモノマーの遊離ポリマーの抽出及び疎水性ナノコンポジットの回収を更に含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記疎水性ビニルモノマーが、約1.5〜約3g/100mlの水溶解度を有するものである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットであって、前記重合した疎水性ビニルモノマーが、前記NCCにグラフトされている上記疎水性ナノコンポジット。
【請求項13】
前記ビニルモノマーが、約1.5〜約3g/100mlの水溶解度を有するものである、請求項12に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項14】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項15】
前記ビニルモノマーが、NCC上のヒドロキシル及びビニルモノマーの開かれたオレフィン結合を介した酸化物結合により前記NCCにグラフトしている、請求項12から14までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項16】
前記重合したビニルモノマーが、ホモポリマーである、請求項12から15までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項17】
前記重合したビニルモノマーが、コポリマーである、請求項12から15までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項18】
請求項12から17までのいずれか一項に記載のナノコンポジットを含む組成物であって、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合されている上記組成物。
【請求項19】
前記高分子量のポリマーが、ポリメチルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、及びポリスチレンからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項1】
ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットを製造するための方法であって、少なくとも一つの疎水性ビニルモノマーのNCC粒子の存在下での重合を含む上記方法。
【請求項2】
重合が水性媒体中である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性媒体が、酸性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性媒体が、1〜4のpHを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重合が、室温(約20℃)〜90℃で1〜24時間にわたって行われる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合が、40℃〜70℃の温度で1〜4時間にわたって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記重合が、ラジカル開始剤の存在下で行われる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重合が、NCCへのビニルモノマーのグラフト化、及び前記モノマーの重合による、NCCから伸びるポリマーの形成を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記重合の完了後に、前記ビニルモノマーの遊離ポリマーの抽出及び疎水性ナノコンポジットの回収を更に含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記疎水性ビニルモノマーが、約1.5〜約3g/100mlの水溶解度を有するものである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ナノ結晶セルロース(NCC)と重合した疎水性ビニルモノマーとの疎水性ナノコンポジットであって、前記重合した疎水性ビニルモノマーが、前記NCCにグラフトされている上記疎水性ナノコンポジット。
【請求項13】
前記ビニルモノマーが、約1.5〜約3g/100mlの水溶解度を有するものである、請求項12に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項14】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項15】
前記ビニルモノマーが、NCC上のヒドロキシル及びビニルモノマーの開かれたオレフィン結合を介した酸化物結合により前記NCCにグラフトしている、請求項12から14までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項16】
前記重合したビニルモノマーが、ホモポリマーである、請求項12から15までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項17】
前記重合したビニルモノマーが、コポリマーである、請求項12から15までのいずれか一項に記載の疎水性ナノコンポジット。
【請求項18】
請求項12から17までのいずれか一項に記載のナノコンポジットを含む組成物であって、高分子量のポリマーと組み合わされ又は混合されている上記組成物。
【請求項19】
前記高分子量のポリマーが、ポリメチルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、及びポリスチレンからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ビニルモノマーが、酢酸ビニル、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びそれらの混合物から選択される、請求項18に記載の組成物。
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図1】
【図2C】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2B】
【図3A】
【図1】
【図2C】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−519760(P2013−519760A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553156(P2012−553156)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000114
【国際公開番号】WO2011/100818
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(507171683)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000114
【国際公開番号】WO2011/100818
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(507171683)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]