説明

ニコチン経皮吸収製剤の製造方法

【課題】従来の技術では不可能であった、ニコチンを粘着剤層へ直接塗布することが可能なニコチン経皮吸収製剤の製造方法であって、かつ、剥離時の物理的皮膚刺激が少なく貼付感が良好な製剤の製造が可能なニコチン経皮吸収製剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】粘着剤と該粘着剤と相溶する液状成分とを含有する粘着剤層を支持体上に形成する工程と、該粘着剤層にニコチンを連続的に塗布してニコチンを粘着剤層中に含浸させる工程とを含む、ニコチン経皮吸収製剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外皮に貼付してニコチンを体内へ経皮吸収させるニコチン経皮吸収製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙草中に含まれるニコチンが習慣的喫煙に大きく影響することはよく知られている。世界中で禁煙の機運が高まるとともに、種々のニコチン投与方法が提案されてきており、喫煙を減少させる1つの方法として、喫煙以外の形でニコチンを生体内に投与することによって習慣的喫煙を抑制することが提案されている。これらの方法はいわゆるニコチン補充療法と呼ばれ、具体的には以下に述べる方法がある。
【0003】
一つはチューインガム(Chewing gum)や薬用ドロップ(Lozenge)中にニコチンを含有させ、口腔内より体内に投与する方法である。この投与方法は、実際は唾液に伴って多量のニコチンが嚥下される結果、通常の薬物を経口投与したのと同じように肝臓通過に際してニコチンがほとんど代謝され血中から除去されるため、大きな効力は望めない。また、この方法は、一時的な投与方法であるため、頻繁な適用が必要となる上、ニコチンが口中や食道の内壁に直接触れるために不味感、胸焼け、吐き気、しゃっくりといった不快な副作用を引き起こすことがある。
【0004】
次にニコチン含有溶液をプラスチック製の一単位容器又は多数回容器に入れ、これを鼻孔内に挿入して容器内のニコチン溶液を鼻粘膜から直接投与する方法がある。しかし、この方法は、容器が鼻粘膜と直接接触するため衛生上好ましくなく、しかも取り扱いや管理が困難であるほか、先の方法と同様に一時的な効果しかないため、頻繁に投与する必要がある。また、特にこの方法は容器を鼻孔内に挿入するものであるから、人前での投与がはばかられる等の問題もある。
【0005】
上記の2つの投与方法に対し、近年、経皮的にニコチンを投与する経皮吸収製剤が種々開発されている。経皮吸収製剤に関する様々な特許が出願されており、すでに製剤として実用化されているものもある。
【0006】
経皮吸収製剤の一般的長所は既に広く知られているところであるが、特にニコチンの投与に応用した場合、上記2つの投与方法で指摘した短所をほぼ解決しうる。製剤を貼付後長時間に亘って血中濃度を一定に保つことができることで投与の煩雑さが減少できる点が最大の利点であると考えられる。
【0007】
しかしながら、ニコチンの既存の経皮吸収製剤には、以下に述べるような問題点がある。
ニコチン経皮吸収製剤には、禁煙を達成するため、禁煙プログラムが設定されており、一般にこの禁煙プログラムでは数週間にわたって一日一回の貼付が求められている。この投与方法の主要な副作用として、そう痒、紅斑等の局所性副作用があげられる。そこで、添付文書には、皮膚刺激を避けるため、製剤の貼付部位を毎回変えることが注意書きとして記載されている。また、毎日新しい製剤に貼りかえることから、製剤の剥離時に発生する皮膚刺激も無視することができない。従って、刺激が少ない製剤の開発が望まれている。
【0008】
現在、ニコチン経皮吸収製剤で用いられている粘着剤としては、ポリイソブチレン(PIB)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)系に代表されるゴム系粘着剤や、アクリルモノマーの共重合体から構成されたアクリル系粘着剤があげられる。このうち、PIB粘着剤においては、ヒト皮膚に対する良好な粘着性と凝集力を付与するため、高分子量成分と低分子量成分とを混合させる技術(例えば、特許文献1参照)があるが、良好な皮膚接着性を得るためには幾分凝集力を犠牲にしなければならないことが分かっている。すなわち、この技術では、凝集力の低下によって、保存時に製剤のエッジから粘着剤が流れ出る、いわゆるコールドフロー(低温流れ)が発生するという問題がある。このコールドフローにより粘着剤が包装材内で付着し、包装材からの取り出し性が非常に悪くなる。特にニコチンは粘着剤に対して強力な可塑化作用を呈するものであるので、ニコチン経皮吸収製剤においては上記コールドフロー現象は顕著に発生する。また、ゴム系の粘着剤は、乾いた皮膚とはよく接着するが、粘着剤の親水性が低いため、貼付している最中に皮膚と粘着面の界面に汗がたまり、浮きが生じて剥がれやすくなり、使用中に製剤が脱落する危険性がある。さらに、汗によるムレによる刺激が発生しやすく、貼付感は必ずしも良好とは言えなかった。
【0009】
一方、アクリル系粘着剤を用いたニコチン経皮吸収製剤では、貼り替え時の剥離の際に皮膚刺激が生じるという問題があった。また、該製剤は製造時に液体のニコチンを粘着剤層に適用する際の補助材料として、不織布や紙が製剤の粘着剤層内に挿入されているので、製剤全体が分厚くなっており、製剤のゴワゴワ感により貼付時に物理的刺激が起こりやすく、貼付感は必ずしも良好とは言えなかった。
【0010】
ニコチンは非常に揮散性及び毒性の強い薬物であり、ニコチンの揮散は人体への安全性のリスクや環境への負荷を増大するリスクがある。従って、この点を考慮した様々なニコチン経皮吸収製剤の製造方法が知られている。
【0011】
特許文献2には、低沸点のヘキサン溶媒を用いてシリコーン接着剤の塗工液を調製し、低温で塗工することでニコチンなどの液体薬剤の分解又は損失を減少させた経皮パッチの製造方法が開示されている。しかし、該方法は、低温で塗工を行うものの、ニコチン損失のリスクを完全に排除することはできず、目標量のニコチンを得るためには増し仕込みなどが必要となる場合が考えられる。また、シリコーン粘着剤は高価であり、この方法は経済的側面からも不利である。
特許文献3には、液体を含む塗布媒体とポリマー基層とを組み合わせることにより、該液体を含有する感圧皮膚接着剤シート材料を連続的に製造する方法が開示されており、該液体に含まれる液状薬剤としてニコチンが例示されている。この場合の液体塗布では、塗布媒体中にポリマー成分を含有することを特徴としており、ニコチンの液体をそのまま、すなわち、0%ポリマー含有量で均一塗布しようとしたが、うまくいかなかったとの記載がある。この記載は、当業者であってもニコチンをそのままで粘着剤層に塗布することの困難さを示唆している。
特許文献4には、揮発性の高いニコチンを不織布のような吸収物質に含浸し、粘着剤層で挟み込む皮膚透過性投与具の製造方法が開示されている。用いられる主体層である不織布は、ニコチンをプリントすることを可能とするものであり、薬物貯蔵部として機能するものではないことが文献には記載されている。この方法を用いると、膏体中に挟む不織布の分製剤が厚くなってしまい、製剤にソフト感もなくなり、製剤の貼付性に影響を及ぼす懸念がある。また、製造コストも高くなるため経済的にも不利である。
特許文献5では、ニコチン等の活性物質を含有するデボ剤を接着剤等のリザーバマトリックスに導入して治療品を製造する方法を開示している。該文献の例では、ニコチンを含有するデボ剤はEUDRAGIT E 100を含有している。このデボ剤を不織布に加えてプラスタを製造しており、このとき不織布は、不活性補助物質として、ニコチンを均一に分散させる助けをしている。本文献には、不活性補助物質を使用せずにニコチンを塗布する技術は開示されていない。
【特許文献1】特許第3035346号公報
【特許文献2】特表2002−531488号公報
【特許文献3】特表平11−502840号公報
【特許文献4】特許第2708391号公報
【特許文献5】特許第2763773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の技術では不可能であった、ニコチンを粘着剤層へ直接塗布することを可能とするニコチン経皮吸収製剤の製造方法であって、かつ、剥離時の物理的皮膚刺激が少なく貼付感が良好なニコチン経皮吸収製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ニコチン経皮吸収製剤の膏体層として多量の液状成分を含有した粘着剤層を用いることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 粘着剤と該粘着剤と相溶する液状成分とを含有する粘着剤層を、支持体上に形成する工程と、
該粘着剤層にニコチンを連続的に塗布して、ニコチンを粘着剤層中に含浸させる工程とを含む、ニコチン経皮吸収製剤の製造方法。
〔2〕 粘着剤と、粘着剤と相溶する液状成分との重量比が、1:0.25〜1:1.8である、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 0.3〜6.7mg/cm・分の速度でニコチンを粘着剤層に含浸させる、上記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕 粘着剤層がアクリル系粘着剤層であり、かつ架橋されている、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貼付時の固定性と貼付感(ソフト感)の両方に優れ、剥離時の皮膚刺激が低減された粘着物性の非常に優れたニコチン経皮吸収製剤を得ることができる。また、粘着剤層に多量の液状成分を含有させることでニコチンの粘着剤層への吸収速度を高めることができるため、ニコチンを溶媒等に溶解する必要性なく粘着剤層に直接塗布し、連続的に均一なニコチン経皮吸収製剤を製造することができる。さらに、塗布量及び/又は粘着剤層厚みを調節することで、ニコチン含量及び/又は濃度を自由に調節できるので、種々放出特性を有する製剤を簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のニコチン経皮吸収製剤の製造方法は、粘着剤と該粘着剤と相溶する液状成分とを含有する粘着剤層を支持体上に形成する工程と、該粘着剤層にニコチンを連続的に塗布して、ニコチンを粘着剤層中に含浸させる工程とを含む。
【0017】
本発明において、ニコチンは、粘着剤層に直接塗布される。本発明の効果を十分得るためには、ニコチンを、補助材料、例えば、溶媒、ポリマーなどの補助物質、不織布などの吸着性材料等を添加せずに塗布することが好ましい。
本発明に用いるニコチンは、ニコチンフリー塩基であり、これは常温で液体であるので、経皮吸収及び直接塗布が容易である。
粘着剤層に含浸させるニコチンの量は、投与目的に応じて適宜設定することができるが、通常粘着剤層の1〜40重量%程度含有させる。1重量%以上含有させると、治療効果を得るために十分な量のニコチンが放出されやすく、40重量%以下含有させると、費用対効果の高い経皮吸収製剤が得られる。
低レベルのニコチンが平均的に放出される目的のためには、ニコチンを粘着剤層の1〜20重量%含有させるのが好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
適用初期に高レベルのニコチンが放出される目的のためには、ニコチンを粘着剤層の20〜40重量%含有させるのが好ましく、20〜35重量%がより好ましい。
ニコチンは常温で水と同程度の粘度を示すため、ニコチンを、通常の粘着剤層に直接塗布すると、ニコチンが粘着剤層に反発され含浸不可能であったり、ニコチンが直ちには粘着剤層に含浸されないので、効率的にニコチン含有経皮吸収製剤を製造することができない。本発明に従って粘着剤層に多量の液状成分を含有させることは、従来からある液体の塗布方法を適宜使用することを可能とする。
【0018】
また、本発明においては、所期の用途や本発明の実施に悪影響を与えないのであれば、ニコチン以外の薬物を粘着剤層中に含有させてもよい。そのような薬物としては、例えば、ニコチン拮抗薬としてのメカミラミンやペンピジンなどが挙げられる。
【0019】
本発明に用いる粘着剤は、ゴム系粘着剤、ビニル系粘着剤、アクリル系粘着剤等の経皮吸収製剤の分野で一般に用いられている粘着剤を用いることができるが、架橋処理を施すことができる性質を持っている粘着剤が好ましい。
【0020】
ゴム系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム等を主成分とした粘着剤が挙げられる。
【0021】
ビニル系粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ酢酸ビニル等を主成分とした粘着剤が挙げられる。
【0022】
アクリル系粘着剤としては、特に限定されないが、架橋処理のしやすさの点からは(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基(例えば、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種もしくは2種以上を併せて用いることができる。これらのうち、常温で粘着性を与えるためにガラス転移温度を低下させるモノマーが好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基(例えば、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等、好ましくはブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、特に好ましくは2−エチルヘキシルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。アルキル基の炭素数が4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロへキシルが好ましく、なかでもアクリル酸2−エチルへキシルが最も好ましい。
【0023】
また、上記モノマーと共重合する第二の成分として、架橋剤を用いる際の架橋点となりうる官能基を有したモノマーを用いてもよい。本発明では、官能基として水酸基又はカルボキシル基を含有するビニルモノマーを用いることが好ましい。第二の成分のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例、アクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などが挙げられる。これらの第二のモノマー成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記第二のモノマー成分以外に第三のモノマー成分を共重合してもよい。これらは粘着層の凝集力調整やニコチンや併用薬物の溶解性や放出性の調整のために用いることができる。このような第三のモノマー成分としては、例えば、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニルアミド類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、α−ヒドロキシメチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル等のアルコキシル基含有モノマー、スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルモルホリン等のビニル系モノマーなどが挙げられる。これらの第三のモノマー成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明において、アクリル系粘着剤として、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと上記第二のモノマー成分との共重合体を用いる場合、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル:第二のモノマー=40〜99.9:0.1〜10程度の重量比で配合して共重合させればよい。
さらに、上記第三のモノマー成分を用いる場合は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル:第二のモノマー:第三のモノマー=40〜99.9:0.1〜10:0〜50程度の重量比で配合して共重合させればよい。
重合反応は、自体公知の方法で行うことができ、例えば、上記のモノマーを、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等)を添加して、溶媒(酢酸エチル等)中で、50〜70℃で5〜48時間反応させる方法が挙げられる。
【0026】
粘着剤としては、架橋剤を用いて架橋処理が容易に行えるという点から、シリコーンゴム及びアクリル系粘着剤が好ましい。
【0027】
本発明では、上記粘着剤と相溶する液状成分を粘着剤層に含有させる。該液状成分は、粘着剤を可塑化させてソフト感を付与し、ニコチン経皮吸収剤を皮膚から剥離する時に皮膚接着力に起因する痛みや皮膚刺激性を低減するため、また粘着剤層へのニコチンの直接塗布を可能とするために添加するものである。従って、液状成分としては、可塑化作用を有し、ニコチンの粘着剤層への吸収速度を向上するなど、本発明を実施可能である限り、如何なる液状物質を使用してもよい。薬物を併存させる場合には、経皮吸収性を向上させるため吸収促進作用を有するものを用いることも可能である。液状成分としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、スクワレン、ラノリン等の油脂類、ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤類、液状の界面活性剤類、アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸(ジ)エステル(例、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)等)、セバシン酸ジエチル等の可塑剤類、流動パラフィン等の炭化水素類、脂肪酸アルキルエステル(例、アルキル部分が炭素数1〜13の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキルであるアルコールと、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸とのエステルなど、具体的には、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等)、グリセリン脂肪酸エステル(例、グリセリンと炭素数8〜16の飽和又は不飽和の脂肪酸とのエステルなど、具体的には、カプリル酸・カプリン酸トリグリセリドなど)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例、プロピレングリコールと炭素数8〜16の飽和又は不飽和の脂肪酸とのエステルなど、具体的には、ジカプリル酸プロピレングリコールなど)、ピロリドンカルボン酸アルキルエステルなどの脂肪酸エステル類、脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(例、アルキル部分が炭素数1〜4の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキルであるアルコールと、炭素数6〜16の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸とのエステルなど、具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルなど)、オクチルドデカノール等の高級アルコール、シリコーン油、エトキシ化ステアリルアルコールなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を配合して使用する。上記例示の脂肪酸アルキルエステル(例、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなど)、グリセリン脂肪酸エステル(例、カプリル酸・カプリン酸トリグリセライドなど)が好ましく、特にミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及びグリセリン脂肪酸エステルの使用が好ましく、グリセリン脂肪酸エステルの中でもカプリル酸・カプリン酸トリグリセライドが特に好ましい。
【0028】
液状成分の種類や量を適宜調整することにより、ニコチンの粘着剤層への含浸速度を0.3〜6.7mg/cm・分の範囲に調整することが好ましい。含浸速度が0.3mg/cm・分以上であれば、所定のニコチン量を塗布工程中で効率的に粘着剤層中に含浸させることができ、ニコチンの含量バラツキが少ない。含浸速度が6.7mg/cm・分以下であれば、粘着剤層中の液状成分の比率も好ましい範囲内であり、粘着力や凝集力、タックなどの粘着物性のバランスが良く剥れや糊残りが生じにくい。
含浸速度の更に好ましい範囲は0.5〜5.0mg/cm・分であり、最も好ましい範囲は0.8〜3.8mg/cm・分の範囲である。この範囲に設定するための粘着剤層中の粘着剤と液状成分との配合割合は、重量比で1:0.25〜1:1.8、皮膚刺激の観点からは好ましくは1:0.4〜1:1.6であり、すなわち液状成分を多量に含有させることが好ましい。
特に、液状成分として、脂肪酸アルキルエステル、とりわけミリスチン酸イソプロピル、グリセリン脂肪酸エステル、とりわけカプリル酸・カプリン酸トリグリセリドなどを使用し、かつ粘着剤層中の粘着剤と該液状成分との配合割合を上記の範囲とすることが好ましい。特に良好な経皮吸収性と接着性の良好なバランスを得る観点からは、脂肪酸アルキルエステルとグリセリン脂肪酸エステルとの共存系が好ましい。上記液状成分の配合割合を容易に実現する観点から、架橋されたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0029】
粘着剤層の厚みは、好ましくは40〜240μm、より好ましくは60〜240μmであり、皮膚接着性やニコチンの経皮吸収性の点から好ましくは50〜200μm、より好ましくは100〜200μmである。
【0030】
本発明では、ヒトなどの皮膚に適応される際に適度な凝集力を提供するために、粘着剤層に架橋処理を施すのが好ましい。架橋処理としては、例えば、イソシアネート系化合物(例えば、コロネートHL(商品名、日本ポリウレタン製)など)、金属キレート化合物(例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛又はアルミニウムからなる金属キレート化合物、具体的にはアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(例えば、ALCH、商品名、川研ファインケミカル製)など)、有機過酸化物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、金属アルコラート等の架橋剤を用いた化学的架橋処理や、UV、γ線、電子線等を用いた物理的架橋処理が挙げられる。中でも、反応性や取り扱い性の観点から、イソシアネート化合物、チタン、ジルコニウム、亜鉛もしくはアルミニウムから構成される金属アルコラート又は金属キレート化合物等の架橋剤を用いた化学的架橋処理が好ましい。これらの架橋剤は、塗布、乾燥までは溶液の増粘現象を起こさず、極めて作業性に優れている。
架橋剤の配合量は、粘着剤100重量部に対し、0.01〜5.0重量部程度である。かかる範囲内であれば、粘着剤層の凝集力と皮膚接着力のバランスが良く、剥離時の糊残りや皮膚刺激の発生が少ない。
【0031】
化学的架橋処理は、自体公知の方法で行えばよく、一般には架橋剤の添加後、架橋反応温度以上に加熱することにより行うことができる。加熱温度、時間は架橋剤の種類に応じて適宜選択すればよい。通常、加熱温度は、50〜140℃程度であり、加熱時間は1日〜1週間程度である。
【0032】
本発明に用いる支持体は、特に限定されないが、粘着剤層に含有されるニコチンが支持体を通って粘着剤層形成面の反対の面から失われて含量低下を起こさないもの、即ちニコチンが不透過性の材質からなるものが好ましい。支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、金属箔、ポリエチレンテレフタレート等の単独フィルム、およびこれらの1種または2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルムなどを用いることができる。これらのうち、支持体と粘着剤層との間の接着性(投錨性)を向上させるために、支持体を例えば上記の材質からなる無孔シートと下記の多孔シートとのラミネートシートとし、多孔シート側に粘着剤層を形成することが好ましい。このような多孔シートとしては、支持体と粘着剤層との投錨性が向上するものであれば特に限定されず、例えば、紙、織布、不織布(例えば、ポリエチレンテレフタレート不織布など)、上記のフィルム(例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、金属箔、ポリエチレンテレフタレート等の単独フィルム、およびこれらの1種または2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルムなど)に機械的に穿孔処理したシートなどが挙げられ、紙、織布、不織布(例えば、ポリエチレンテレフタレート不織布など)が特に好ましい。支持体の厚みは投錨性向上や製剤全体の柔軟性を考慮すると、10〜500μmの範囲とするのが好ましい。
また、多孔シートとして織布や不織布を用いる場合、目付量を5〜50g/mとすることが好ましく、投錨力の向上の点からは8〜40g/mとすることがより好ましい。
無孔シートと多孔シートとのラミネートシートとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレート不織布とのラミネートシートなどが挙げられる。
【0033】
本発明のニコチン経皮吸収製剤は、皮膚への貼付の直前まで粘着剤層の粘着面を剥離ライナーで被覆し、保護することが好ましい。そして使用時にライナーを剥離して粘着面を露出させ、貼付部位に貼付してニコチンを投与する。
本発明では、粘着剤層を剥離ライナー上に形成してもよい。この場合、剥離ライナー上に粘着剤層を形成し、ニコチンを該粘着剤層に含浸させた後、粘着剤層の該剥離ライナーと反対の面に支持体を貼り合わせてもよい。
剥離ライナーは、特に限定されず、経皮吸収製剤に一般に用いられるものを用いればよい。例えば、公知の剥離処理剤(例えば、長鎖アルキル基含有ポリマー、シリコーンポリマー、フッ素系ポリマーなど)で剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。剥離ライナーの厚みは、通常25〜500μmである。
【0034】
本発明のニコチン経皮吸収製剤の製造方法の好ましい態様としては、以下の方法が挙げられる。
粘着剤及び液状成分、ならびに必要に応じ架橋剤の混合溶液をよく撹拌した後、支持体又は剥離ライナー上に該溶液を塗布し、乾燥する。その後、剥離ライナー又は支持体を貼り合わせ、必要に応じ加熱などの架橋処理を行う。次いで、剥離ライナーを剥離してニコチンを粘着剤層上に直接塗布した後、剥離ライナーを適宜貼り合わせる。この剥離ライナーを貼り合せる時に、別の粘着剤層を形成しておき、ニコチンを含有する粘着剤層に積層させることも可能である。この時積層する別の粘着剤層は、ニコチンを含有する粘着剤層と同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
また、ニコチンを粘着剤に直接塗布する方法としては、特に印刷分野で用いられている印刷的手法も利用できる。印刷的手法を用いる際に粘度調整が必要である場合には、経皮吸収性や粘着物性に影響しない程度であれば、適宜添加物を加えてもよい。
【0035】
ニコチンを塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター、フレキソコーター、カレンダーコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、ファウンテン式コーター、ダイコーター、インクジェットなどを用いる方法が挙げられる。
これらの方法は一般に高い精度が要求される薄膜塗工に適応できる方法であり、本発明のように薬物の含量均一性が要求される場合にはこれらの方法を用いることが有利である。さらに、本発明ではニコチンを塗布液として用いるので、低粘度の塗布液でも高い塗布精度が達成できる塗布方式であることが好ましい。さらに、ニコチンは非常に毒性が高いので製造作業者に対して安全性の高い塗布方式が望ましく、開放系ではない塗布方式が望ましい。これらの点を考慮すると、ダイコーターやピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いる方法が、塗工精度に優れ、閉鎖系にすることが容易であるため、特に好ましい。
【0036】
本発明において最も好ましいニコチンを塗布する方法としては、以下に示すようなダイコーターを用いる方法が挙げられる。
【0037】
図1A及び図1Bに本発明に用いることが可能なダイ塗布の一例の概略図を示す。
ニコチン供給用タンク1から計量ポンプ2を用いてダイ3へニコチンを供給する。支持体層又は剥離ライナーに支持された液状成分を含有する粘着剤層5はバックアップロール4とダイ3の間の隙間を通過し、ダイ3よりニコチンが粘着剤層5上に均一に塗布される。
ダイとしては、例えば、カーテンダイ、ウルトラダイ、リップダイ、スロットダイなどが挙げられ、低粘度溶液で高精度の塗布が可能な点から、スロットダイが好ましい。
計量ポンプとしては、例えば、シリンジポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられる。精度の高さなどの点からシリンジポンプが好ましく、また、ギアポンプも好ましい。
ポンプの計量精度は、ニコチン塗布の均一性に影響する要因として重要である。
計量ポンプの種類はもちろんであるが、ポンプを駆動させるモーターも重要であり、外乱により回転数の変化の少ないサーボ方式のモーターを使用するのが好ましい。
また、ニコチンを塗布する際の粘着剤層5のライン速度の精度も重要である。ニコチンの塗布量や塗布精度は計量ポンプの回転数及び回転精度とライン速度の比率のみで大まかに決定することができる。本発明の製造方法によれば、ニコチンの吸収速度が十分に速いため、計量ポンプの回転数とライン速度の比率の精度がそのまま塗布精度となりうる。
【0038】
そのほかにニコチン塗布の均一性に影響する因子としては、ニコチン供給ライン内部の圧力変動やダイ内部のニコチンの流動特性が挙げられる。ニコチン供給ライン内部の圧力変動は計量ポンプの精度によるもの以外に供給ラインへの気泡の混入によるものがあり、ニコチン供給ライン内部の気泡は除去しておくことが望ましい。ニコチンの供給は気泡が抜けやすいように、回転軸が水平になるようにバックアップロール4が設置されている場合、バックアップロール4の回転軸を通る水平面とバックアップロール4の外周面とが交わる点又はそれよりもバックアップロール4の回転方向に対してより下流からニコチンを供給するのが望ましく(図1A及び図1B参照)、気泡トラップ装置(図示せず)をライン中に設置するのが望ましい。ニコチン供給ライン6の配管は、気泡が抜けやすいように細い配管を使用するのが望ましい。配管の径の設計はニコチンの供給量により異なるので一概には言えないが、ニコチン供給量が約3mL/分の場合は配管の内径は2〜4mmが望ましい。配管の材質は、ニコチンにより腐食されなければ如何なる材質であってもよいが、ニコチンが毒物であることを考慮するとステンレスが望ましい。配管の材質がニコチンにより腐食されるような材質であっても、配管内部にニコチンに対して耐腐食性を有するコーティングを施せばよい。配管内部の気泡を確認する意味ではテフロン(登録商標)配管を用いることも好ましい。
【0039】
塗布される側(すなわち、支持体又は剥離ライナー)の表面は少なくとも±5μm程度の凹凸を有していてもよい。
【0040】
本発明ではニコチンを溶媒等の補助物質に溶解せずそのまま塗布液として用いるため、塗布液が低粘度であり、塗布のライン速度を大きくすることが可能である。従って、本発明は、生産性の向上や塗布精度の向上に非常に有利である。
【0041】
ダイの中での塗布液の流動特性も均一塗布には重要である。特に幅広いダイでの幅方向の均一性はダイ内部の構造に依存するので、ニコチン塗布用に十分設計されたダイを用いるのが望ましい。
【0042】
ニコチンを塗布するためのダイの隙間(シム)はニコチンに対して不活性な金属フィルム又はプラスチックフィルムにより調節できる。ニコチンに対して不活性な金属フィルムとしては、ステンレスフィルム、亜鉛箔フィルム、チタン箔フィルムなどが挙げられる。ニコチンに対して不活性なプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルムなどが挙げられる。最も好ましいシムの材質としてはポリエチレンテレフタレートフィルム及びステンレスフィルムが挙げられる。シムの厚みは塗布厚や塗布ラインの速度に影響されるが、塗布厚15〜20μmの場合は、20μm〜100μmが好ましい。
【0043】
ダイシステムの具体例としては、米国リバティー社(LIBERTY)、米国クローレン社(CLOEREN)のスロットダイシステムを挙げることができるが、本発明で使用可能なダイシステムがこれらに限定されるわけではない。また、計量ポンプを含め中外炉工業(株)や東レエンジニアリング(株)製のスロットダイシステムなども好適に用いることができる。
【0044】
本発明におけるニコチンの塗布では既に述べたように、計量ポンプの回転数とライン速度の比率のみで塗布精度が決まるので、計量ポンプとライン速度の間の電気的な信号を制御したり、回転数をフィードバックする機構を持たせ、ライン速度を増加させれば自動的にポンプの回転速度が一定の比率で増加するように設計することが望ましい。
【0045】
また、塗布液が毒物であることを考慮すれば、ダイヘッドやダイの内部、配管、タンクを自動で洗浄する機構が備えてあり、ニコチンの露出部分からの揮発があった場合を考慮して、ニコチンの露出部分に安全カバーを施したり、作業を行う部屋に排気装置を備え付けることが望ましい。
【0046】
本発明においてニコチンの塗布は通常、室温下で実施するが、室内の温度変化により、ニコチンの比重が変化し、塗布量の変動につながるので塗布するニコチンの温度は一定に保つことが好ましい。ニコチンの温度を一定に保つために、ダイや配管、タンクに温度を一定に保つ装置を付属させてもよい。ニコチンを高温にして塗布すれば、粘着剤層へのニコチンの浸透速度は速くなるが、ニコチンの揮散により作業者に危険が及ぶようになる。従って、作業者の安全性の観点からは、低温のニコチンの塗布が好ましく、0〜40℃、好ましくは5〜30℃、更に好ましくは10〜25℃にニコチンの温度を保つのがよい。温度変化は±2℃以内であるのが好ましい。
ニコチンは吸湿性があるので、湿度管理がされていない高湿度の場所で長時間保存することは避けた方がよい。しかしながら、極端に低湿度下では静電気スパークによるニコチンへの引火爆発の危険がある。従って、相対湿度で40〜60%の一定湿度に湿度管理された場所で塗布するのが望ましい。
【0047】
本発明の方法により製造されるニコチン経皮吸収製剤の形状、大きさは、特に限定されず、貼付部位等に合わせて任意の形状、大きさとすればよい。形状としては、例えば、テープ状、シート状等を含む。製剤の大きさは、例えば5〜30cmが挙げられる。
本発明の方法により製造されるニコチン経皮吸収製剤は、喫煙者(特に、禁煙希望者)に対し、習慣的禁煙を抑制するための、従来実施されている又は将来実施される禁煙プログラムに沿ったニコチン補充療法などに用いることができる。
本発明の方法により製造されるニコチン経皮吸収製剤によるニコチンの投与量は、患者の年齢、体重、疾患の重症度等により異なるが、通常、成人に対してニコチン5〜120mgを含有した経皮吸収製剤を、皮膚5〜30cmに、0.5〜2日あたり1回程度貼付する。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例を示し、更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお特に断りのない限り、以下において部および%は重量部および重量%を示す。
【0049】
(実施例1)
窒素雰囲気下でアクリル酸2−エチルへキシルエステル95部と、アクリル酸5部、酢酸エチル100部、過酸化ベンゾイル0.2部を還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下漏斗、窒素導入管付きのセパラブルフラスコ中にて60℃で15時間反応させ粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液を粘着剤固形分49.93部換算の量として反応容器に量りとり、該反応容器に、ミリスチン酸イソプロピルを粘着剤固形分に対し50部添加し、更に架橋剤としてコロネートHL(日本ポリウレタン製)を0.07部(粘着剤に対し0.14%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが240μmとなるように塗布、60℃3分乾燥後、80℃3分乾燥、95℃3分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。その後、該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基(塩を形成していない、ニコチンのフリー体、Sigma製)を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ13mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0050】
(実施例2)
窒素雰囲気下でフラスコ内にアクリル酸2−エチルヘキシルエステル72部、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部を仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を添加し重合を開始させた。撹拌速度と外浴温度の調節、および酢酸エチルの滴下によって、内浴温度を58〜62℃に制御し、重合反応を行い、粘着剤溶液(以下、粘着剤溶液Aとも言う。)を調製した。
上記粘着剤溶液を粘着剤固形分59.82部換算の量として反応容器に量りとり、該反応容器に、ココナードMT(花王製、カプリル酸・カプリン酸トリグリセリド)を粘着剤固形分に対し40部添加し、更に架橋剤としてALCH(川研ファインケミカルズ製、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)を0.18部(粘着剤に対し0.3%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが120μmとなるように塗布、70℃2分乾燥後、さらに90℃2分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。その後、該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ12mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0051】
(実施例3)
アクリル酸2−エチルヘキシル/酢酸ビニル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル=78/16/6(重量比)(DUROTAK2196、ナショナルスターチ・アンド・ケミカル製)を粘着剤固形分69.72部換算の量として反応容器に量りとり、ココナードMT(花王製)を粘着剤固形分に対し30部添加し、更に架橋剤としてALCH(川研ファインケミカルズ製)を0.28部(粘着剤に対し0.4%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布、70℃2分乾燥後、さらに90℃2分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。その後、該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ14mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0052】
(実施例4、5)
窒素雰囲気下でフラスコ内にアクリル酸2−エチルヘキシルエステル72部、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3部を添加し重合を開始させた。撹拌速度と外浴温度の調節、および酢酸エチルの滴下によって、内浴温度を58〜62℃に制御し、重合反応を行い、粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液を粘着剤固形分69.72部換算の量として反応容器に量りとり、該反応容器に、ミリスチン酸イソプロピルを粘着剤固形分に対し30部添加し、更に架橋剤としてALCH(川研ファインケミカルズ製)を0.21部(粘着剤に対し0.3%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みがそれぞれ40μm(実施例4)、70μm(実施例5)となるように塗布、70℃2分乾燥後、さらに90℃2分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。その後、該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ10mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0053】
(実施例6)
窒素雰囲気下でフラスコ内にアクリル酸2−エチルヘキシルエステル72部、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部を仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を添加し重合を開始させた。撹拌速度と外浴温度の調節、および酢酸エチルの滴下によって、内浴温度を58〜62℃に制御し、重合反応を行い、粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液を粘着剤固形分59.82部換算の量として反応容器に量りとり、該反応容器に、ミリスチン酸イソプロピルを粘着剤固形分に対し20部、ココナードMT(花王製)を粘着剤固形分に対し20部添加し,更に架橋剤としてALCH(川研ファインケミカルズ製)を0.18部(粘着剤に対し0.3%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を,片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが60μmとなるように塗布、70℃2分乾燥後、さらに90℃2分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。その後、該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ10mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0054】
(実施例7)
窒素雰囲気下でフラスコ内にアクリル酸2−エチルヘキシルエステル72部、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部を仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を添加し重合を開始させた。撹拌速度と外浴温度の調節、および酢酸エチルの滴下によって、内浴温度を58〜62℃に制御し、重合反応を行い、粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液を粘着剤固形分34.88部換算の量として反応容器に量りとり、該反応容器に、ココナードMT(花王製、カプリル酸・カプリン酸トリグリセリド)を粘着剤固形分に対し65部添加し、更に架橋剤としてアルミキレートA(川研ファインケミカルズ製、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))を0.12部(粘着剤に対し0.35%)添加し、よく撹拌した。
得られた溶液を、片面に剥離処理を施したポリエステルフィルム製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが70μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥後、粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエステル不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形により積層して作製した支持体の不織布側の面とを貼り合せて、積層体を作製した。該積層体を密封して60℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を形成した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥して粘着面を露出させ、フレキソ印刷用コーター(RK Print Coat Instruments Ltd.製、商品名:K−ロックスプルーファ)にバーコーターNo.9(膜厚:約20.6μm)をセットし、バーコーターでステンレス板上にニコチンフリー塩基を均一に塗布した後、架橋粘着剤層の粘着面を貼り合せ、ニコチンフリー塩基(Sigma製)1.65mg/cm2を架橋粘着剤層に含浸させた。次にポリエステルフィルム製の剥離ライナーと、上記積層体のニコチンフリー塩基を塗布した架橋粘着剤層の塗布面とを貼り合せ、実施例7のニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0055】
(比較例1)
実施例2において得られた粘着剤溶液A(粘着剤固形分100部換算の量)をそのまま(すなわち、液状成分を含ませずに)、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離処理を施した面に乾燥後の厚みが120μmとなるように塗布、70℃2分乾燥後、さらに90℃2分乾燥して粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面と、ポリエチレンテレフタレート不織布(目付け量12g/m)上に2μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを押出成形した支持体の不織布側の面とを貼り合せて積層体を作製した。
その後、該積層体の剥離ライナーを剥がしながらダイコーターを用いて、ニコチンフリー塩基を粘着剤層の粘着面に塗布した。ニコチン塗布面上にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを貼り合わせ、幅100mm、長さ11mのニコチン経皮吸収製剤を得た。
【0056】
(比較例2)
接着剤溶液(74部:6部:20部 イソオクチルアクリレート:アクリルアミド:酢酸ビニル共重合体、91部:9部 エチルアセテート:メタノール中の固形分22%、インヘレント粘度=1.21dl/g)を、シリコーン樹脂被覆ポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの非剥離面上に、押出ダイを用いて塗布した。ダイは20mil(500μm)のシムを備えていた。塗布された剥離ライナーを150°F(65℃)で1分間、275°F(135℃)で1分間、更に350°F(177℃)で1分間オーブン乾燥した。幅7インチ(17.8cm)の4000線ヤード(3640線メートル)のウェブが得られた。
直接グラビア塗布[グラビアロールパラメータ:パターン−三重螺旋形;45ライン毎インチ(18ライン毎cm);体積因子−3.0×10−3in/in(7.6×10−3cm/cm)を使用して、ニコチンをそのまま、すなわち0%ポリマー含有量で均一塗布しようとしたが、うまくいかなかった。
【0057】
(実験例)
実施例1〜7及び比較例1で得られたニコチン経皮吸収製剤について以下の評価を行った。
【0058】
ニコチン含有量
得られた実施例1〜6及び比較例1のニコチン経皮吸収製剤より、幅方向には塗布した範囲の両端から25mmの位置を中心に2点(表1〜7における手前・奥)、塗布方向には0.5m置きに18〜21点サンプリングした。サンプリングは10cmの正方形の打ち抜き型を用いてニコチン経皮吸収製剤のサンプルを打抜いて取り出し、これをメタノール中で25℃で120分間振盪させて抽出し、抽出液中のニコチン含有量をHPLC法を用いて定量した。
得られた実施例7のニコチン経皮吸収製剤(1枚を9cm×25cmのシートに切断、10シート)より、各シートの中央部から塗布方向に始・中・終の3点をサンプリングした。サンプリングは10cmの正方形の打ち抜き型を用いてニコチン経皮吸収製剤のサンプルを打抜いて取り出し、これをメタノール中で25℃で120分間振盪させて抽出し、抽出液中のニコチン含有量をHPLC法を用いて定量した。
【0059】
ニコチンの含浸速度の測定
実施例1〜6及び比較例1において作製した粘着剤層にニコチンを塗布する際に、塗布してから粘着剤層中にニコチンが完全に浸透するまでの時間を以下のようにして測定した。
粘着剤上のニコチンを目視にて確認し、JIS P3801に規定する第1種濾紙を用いて粘着剤上のニコチンに接触させた。この時、液状のニコチンが濾紙に含浸しなくなる点をもって、ニコチンが粘着剤中に完全に含浸したものとした。ダイのニコチン吐出口からニコチンが粘着剤中に含浸した位置までの距離を測定し、塗布速度で除して含浸速度を算出した。
1平方センチメートル当たりのニコチン含有量は以下の表に示したニコチン含有量の平均値を用いた。なお、本実施例で用いた塗布装置においては、ダイのニコチン吐出口からライナーの貼り合せ位置までの距離が10mであったため、10m以上の含浸位置の測定はできなかった。
実施例7において作製した粘着剤層にニコチンを塗布する際に、塗布してから粘着剤層中にニコチンが完全に浸透するまでの時間を以下のようにして測定した。
ステンレス板にニコチンを均一に塗布した後、架橋粘着剤層の粘着面を貼り合せ、ニコチンを架橋粘着剤層に含浸させる時間を5秒から1分まで、5秒間隔で行い、経皮吸収製剤をステンレス板から剥した。ステンレス板上に残存しているニコチンを目視にて確認し、ニコチンが残存していない時間を測定し、含浸されたニコチン含有量から除して含浸速度を算出した。
上記2つの実験の結果を表1〜8に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
実施例1〜7の製剤のニコチン含有量のバラツキは相対標準偏差で1.0〜4.17%であり、均一な製剤を得ることが可能であった。また、含浸速度の測定によれば、実施例の製剤ではニコチンの含浸速度が非常に速やかであり、塗布バラツキが少ないと考えられた。
しかし、比較例1の製剤におけるニコチン塗布では、粘着剤層の塗布面上でニコチンがほとんど吸収されず、ニコチンが塗布面上で比較的大きな水玉となり、粘着剤層の粘着面が濡れていない様子が観察された。このニコチンは粘着剤層に剥離ライナーが貼り合せられるまで、ほぼ同じ様子であり、ライナー貼り合せ時にニコチンが絞り出されるなどしてニコチン含有量の低下及びバラツキが生じたものと考えられた。この時のニコチンの含浸速度は0.28mg/cm・分以下であることを確認した。
一方、比較例2は、特表平11−502840号公報の実施例に基づくものであるが、この実験は、従来の方法で、ニコチンをそのまま粘着剤層上に塗布することが非常に困難であることを示している。
これらの試験により、本発明のニコチン経皮吸収製剤の製造方法は、非常に均一なニコチン塗布が可能であり、高度に工業化可能であることが示された。
【0069】
含浸速度と液状成分の関係
実施例1〜6により得られた含浸速度と液状成分含量との関係をグラフにプロットしたところ、図2に示す関係が得られた。液状成分の種類や粘着剤の種類により変動すると考えられるが、液状成分をより多く粘着剤に含有させれば、より早い含浸速度が得られる。
【0070】
接着性評価
接着力:
実施例1〜7及び比較例1のニコチン経皮吸収製剤を24mm幅に切断してサンプルを作製し、被着体としてベークライト板を用いて、引張試験機(島津製作所製,EZTest)によりサンプルの接着力を評価した。
剥離時の痛みの評価:
実施例1〜7及び比較例1のニコチン経皮吸収製剤を10cmに成型してサンプルを作製し、健全なボランティア6名の上腕部にサンプルを24時間貼付した後、製剤を剥離する時の痛みを以下に示す5段階のスコアで評価した。
1:全く痛くない 2:ごく僅かに痛い
3:僅かに痛い 4:少し痛い
5:非常に痛い
結果を表9に示す。
【0071】
【表9】

【0072】
皮膚透過性の評価
ニコチン経皮吸収製剤の薬物透過性を、ヘアレスマウス摘出皮膚を用いて以下の条件により評価した。
透過装置:全自動フロースルー拡散セル装置(バンガードインターナショナル製)
サンプル面積:0.2826cm
レセプター溶液:リン酸緩衝液(pH=7.4)、0.02%アジ化ナトリウム含む
流量:約10mL/4時間/セル(ポンプ回転数:2.0rpm)
サンプリングポイント:1、2、3、4、5、6、9、12、15、18、21、24時間
サンプル:実施例1〜3(各n=3)、実施例4〜6(各n=3)のニコチン経皮吸収製剤
なお、実施例1〜3の比較対照として、市販のニコチン経皮吸収製剤ニコチネルTTS(ノバルティス製)を用いた。実施例4〜6の比較対照として、市販のニコチン経皮吸収製剤ニコダームCQクリア(ALZA製)を用いた。
レセプター溶液に流入したニコチン含有量をHPLC法を用いて定量した。結果を図3、図4に示す。
【0073】
上記で示されたように、実施例1〜6の製剤は皮膚貼付が非常に良好であった。また、剥離時の痛みが少なく、刺激が非常に少ないため、毎日貼付するニコチン経皮吸収製剤としては好適である。使用時の脱落もないため、非常に経済的である。さらに、実施例1〜6の製剤は皮膚透過性試験の結果、既存のニコチン経皮吸収製剤と同等か、又はそれ以上の透過性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】本発明の好ましい一実施態様を示す概略図である。
【図1B】本発明の好ましい一実施態様を示す概略図である。
【図2】実験例により得られた含浸速度と液状成分含量の関係を示すグラフである。
【図3】実験例における、実施例1〜3及びコントロールの製剤の皮膚透過性試験(透過流束(Flux))の結果を示すグラフである。
【図4】実験例における、実施例4〜6及びコントロールの製剤の皮膚透過性試験(透過流束(Flux))の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 ニコチン供給用タンク
2 計量ポンプ
3 ダイ
4 バックアップロール
5 粘着剤層
6 ニコチン供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と該粘着剤と相溶する液状成分とを含有する粘着剤層を、支持体上に形成する工程と、
該粘着剤層にニコチンを連続的に塗布して、ニコチンを粘着剤層中に含浸させる工程とを含む、ニコチン経皮吸収製剤の製造方法。
【請求項2】
粘着剤と、粘着剤と相溶する液状成分との重量比が、1:0.25〜1:1.8である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.3〜6.7mg/cm・分の速度でニコチンを粘着剤層に含浸させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
粘着剤層がアクリル系粘着剤層であり、かつ架橋されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−63260(P2007−63260A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205514(P2006−205514)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】