説明

ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水系電解質二次電池

【課題】小粒径で均一な粒度分布を有するニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子およびかかるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】晶析反応によってニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造する製造方法であって、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が10.5〜12.0となるように制御して前記核を成長させる粒子成長工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水系電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。
また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
【0004】
かかるリチウムイオン二次電池の正極材料として、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などが提案されている。この中でも、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、正極としたときに、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が取り出せる材料として注目されている。
【0005】
正極が上述したような良い性能(高サイクル特性、低抵抗、高出力)を得る条件として、正極材料が、均一で適度な粒径を有する粒子によって構成されていることが要求される。
これは、粒径が大きく比表面積が低い材料を使用すると、電解液との反応面積が十分に確保できず、反応抵抗が上昇して高出力の電池が得られず、粒度分布が広い材料を使用すると、電池容量が低下し反応抵抗が上昇するなどの不具合が生じるためである。なお、電池容量が低下するのは、電極内で粒子に印加される電圧が不均一となることで、充放電を繰り返すと微粒子が選択的に劣化するからである。
したがって、正極材料の性能を向上させるためには、上述したリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物についても、適度な粒径で粒径が均一な粒子となるように製造することが必要である。
【0006】
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、通常、複合水酸化物から製造されるので、適度な粒径で粒径が均一な粒子とする上では、その原料となる複合水酸化物として、小粒径で粒径の均一なものを使用することが必要である。
つまり、正極材料の性能を向上させて、最終製品である高性能のリチウムイオン二次電池を製造する上では、正極材料を形成するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の原料となる複合水酸化物として、小粒径で狭い粒度分布を有する粒子からなる複合水酸化物を使用することが必要である。
【0007】
複合水酸化物の製造法については、現在までに様々な提案がなされている(特許文献1〜3)。
例えば、特許文献1では、ニッケルコバルトマンガン塩水溶液と、アルカリ金属水酸化物水溶液と、アンモニウムイオン供給体とをそれぞれ連続的または間欠的に反応系に供給し、その反応系の温度を30〜70℃の範囲内のほぼ一定値にし、かつpHを10〜13の範囲内のほぼ一定値に保持した状態で反応を進行させ、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を析出させている。また、反応は1段で行うよりも多段で反応させる方が、粒度分布の好ましい中間体が得られるとされ、生成粒子性状を制御するために一部を反応槽に戻してもよいことが記載されている。
【0008】
一方、特許文献2では、リチウム二次電池正極活物質を製造する方法において、反応槽を用い、前記物質の各構成元素の塩を水に溶解させて塩濃度を調節した複合金属塩水溶液、金属イオンと錯塩を形成する水溶性の錯化剤、及び水酸化リチウム水溶液をそれぞれ反応槽に連続供給して複合金属錯塩を生成させ、次いでこの錯塩を水酸化リチウムにより分解してリチウム共沈複合金属塩を析出させ、上記錯塩の生成及び分解を槽内で循環させながら繰り返しリチウム共沈複合金属塩をオーバーフローさせて取り出すことにより、粒子形状が略球状であるリチウム共沈複合金属塩を合成している。そして、この方法よって得られた複合金属塩を原料とした正極活物質は、高充填密度、均一組成で略球状であるとされている。
【0009】
さらに、特許文献3では、非水電解質電池用正極活物質の製造方法において、2種以上の遷移金属塩を含む水溶液または異なる遷移金属塩の2種以上の水溶液と、アルカリ溶液とを同時に反応槽に投入し、還元剤を共存させながらまたは不活性ガスを通気しながら共沈させることにより前駆体である水酸化物または酸化物を得る方法が提案されている。この方法自体は、原子レベルでの固溶が不完全になることを抑制することを目的としており、粒径の制御を行なうものではないが、高密度で大きな粒径をもつ球状の水酸化物または酸化物を得るための装置が開示されている。
この装置は、水溶液の混合物を下から上にフローさせ、結晶がある程度発達して比重が増加した結晶粒子は、沈降して下部の捕集部に到達するが、未発達の結晶粒子は下部からフローされる溶液の力に押し戻され、下部に落ちないシステムとしたものである。つまり、生成した結晶を分級しながら回収して、大きな粒径の結晶粒子を得ようとするものである。
【0010】
しかしながら、特許文献1には、粒度分布あるいは生成粒子性状の制御について、具体的な方法は開示されておらず、実施例においても一定の温度、pHで前記複合水酸化物を得たことが記載されているのみである。
また、特許文献2では、オーバーフローさせて取り出す連続晶析法であることから粒度分布が正規分布となって広がりやすく、ほぼ均一な粒径の粒子を得ることは難しい。
さらに、特許文献3は、生成した結晶を分級しながら回収して、大きな粒径の結晶粒子を得ようとするものであるが、均一な粒径の生成物を得るためには、製造条件を厳密に管理する必要があると考えられ、工業的規模の生産は難しい。
【0011】
以上のごとく、複合水酸化物を製造する方法は種々検討されているが、現在のところ、工業的規模において小粒径で粒径均一性の高い複合水酸化物を製造することができる方法は開発されておらず、リチウム二次電池の性能を向上させる上でも、かかる複合水酸化物を製造できる方法が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開W02004/092073号
【特許文献2】特開平10−214624号公報
【特許文献3】特開2003−86182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は掛かる問題点に鑑み、小粒径で粒径均一性の高いニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子およびかかるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
また、電池に用いた場合に測定される正極抵抗の値を低減することができる非水系二次電池用正極活物質およびその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、サイクル特性が良く、高出力が得られる非水系電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法)
第1発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によって一般式NiCoMn(OH)2+α(0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、 0.1≦z≦0.5、0≦t≦0.02、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、MはTi、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造する製造方法であって、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が10.5〜12.0となるように制御して前記核を成長させる粒子成長工程とからなることを特徴とする。
第2発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1発明において、前記粒子成長用水溶液は、前記核生成工程が終了した前記核生成用水溶液のpH値を調整して形成されたものであることを特徴とする。
第3発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1発明において、前記粒子成長用水溶液は、前記核生成工程において形成された核を含有する水溶液を、該核を形成した核生成用水溶液とは異なる水溶液に対して添加したものであることを特徴とする。
第4発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1、第2または第3発明において、前記核生成工程後に、前記粒子成長用水溶液の液体部の一部を排出した後、前記粒子成長工程を行うことを特徴とする。
第5発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1乃至第4発明において、前記核生成工程および前記粒子成長工程において、各水溶液の温度を、20℃以上に維持することを特徴とする。
第6発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1乃至第5発明において、前記核生成工程および前記粒子成長工程において、各水溶液のアンモニア濃度を、3〜25g/Lの範囲内に維持することを特徴とする。
第7発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、第1乃至第6発明において、前記粒子成長工程で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物に、1種以上の前記添加元素を含む化合物を被覆することを特徴とする。
(ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子)
第8発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子は、一般式NiCoMn(OH)2+α(0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、 0.1≦z≦0.5、0≦t≦0.02、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、MはTi、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物であって、該ニッケルコバルトマンガン複合水酸化は、球状の二次粒子であって、平均的な厚みが10〜300nm、平均的な長径が100〜3000nmである前記複数の板状一次粒子が、ランダムな方向に凝集して形成されたものであることを特徴とする。
第9発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子は、第8発明において、前記二次粒子は、平均粒径が3〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であることを特徴とする。
第10発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子は、第8または第9発明において、前記二次粒子は、その内部に前記添加元素が均一に分布および/またはその表面を前記添加元素が均一に被覆していることを特徴とする。
第11発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子は、第8、第9または第10発明は、第1乃至第7発明の製造方法によって生成されたものであることを特徴とする。
(非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法)
第12発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、一般式:Li1+uNixCoyMnz2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.02、Mは添加元素であり、Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質の製造方法であって、第8乃至第11発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する工程と、前記熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合して混合物を形成し、該混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和とリチウムの原子数との比が、1:0.95〜1.20となるように調整する混合工程と、該混合工程で形成された前記混合物を、800℃〜1000℃の温度で焼成する焼成工程と有することを特徴とする。
第13発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、第12発明において、前記焼成工程の前に、350℃〜800℃の温度で仮焼を行うことを特徴とする。
(非水系電解質二次電池用正極活物質)
第14発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式:Li1+uNixCoyMnz2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.02、Mは添加元素であり、Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質であって、平均粒径が2〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であることを特徴とする。
第15発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、第14発明において、第12または第13発明の製造方法によって生成されたものであることを特徴とする。
(非水系電解質二次電池)
第16発明の非水系電解質二次電池は、正極が、第14または第15発明の非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
(ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法)
第1発明によれば、核生成工程では、核生成用水溶液のpH値を12.0〜14.0とすることによって核の成長を抑制し、ほぼ核生成のみを起こすことができる。また、粒子成長工程では、粒子成長用水溶液のpH値を10.5〜12.0とすることよって、核成長のみを優先的に起こさせ、新たな核の形成を抑制することができる。すると、核を均質に成長をさせることができるので、粒度分布の範囲が狭く均質なニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得ることができる。
第2発明によれば、核生成工程が終了した核生成用水溶液のpH値を調整して粒子成長用水溶液とするので、粒子成長工程への移行を迅速に行うことができる。
第3発明によれば、核生成と粒子成長をより明確に分離することができるので、各工程における液の状態を、各工程について最適な条件とすることができる。よって、生成されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を、より粒度分布の範囲が狭くかつ均質なものとすることができる。
第4発明によれば、核生成用水溶液中のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子濃度を高めることができるので、粒子濃度が高い状態で粒子を成長させることができる。よって、粒子の粒度分布をより狭めることができ、粒子密度も高めることができる。
第5発明によれば、核発生の制御が容易になるので、粒度分布の範囲が狭く均質なニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造に適した核を形成することができる。
第6発明によれば、金属イオンの溶解度を所定の範囲に調整することができるので、形状及び粒径が整った粒子を形成することができ、粒度分布も狭くすることができる。
第7発明によれば、本方法によって製造されたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を原料として形成された電池の正極活物質を電池に用いた場合、電池の耐久特性や出力特性を向上させることができる。
(ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子)
第8発明によれば、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子をリチウム化合物と混合して焼成すると、粒子内へのリチウムの拡散が十分に行われ、リチウムの分布が均一で良好な正極活物質を得ることができる。また、かかる正極活物質からなる正極を有する電池を形成したときに、電極抵抗を小さくでき、充放電を繰り返しても電極の劣化を抑えることができる。
第9発明によれば、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を原料として正極活物質を製造すれば、この正極活物質も粒度分布の範囲が狭く均質な粒子とすることができる。すると、この正極活物質からなる正極を有する電池を形成したときに、電極抵抗を小さくでき、充放電を繰り返しても電極の劣化を抑えることができる。
第10発明によれば、本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を原料として形成された電池の正極活物質を電池に用いた場合、電池の耐久特性や出力特性を向上させることができる。
第11発明によれば、粒度分布の範囲が狭く均質なニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子とすることができるから、この粒子を原料として正極活物質を製造すれば、この正極活物質も粒度分布の範囲が狭く均質な粒子とすることができる。すると、この正極活物質からなる正極を有する電池を形成したときに、電極抵抗を小さくでき、充放電を繰り返しても電極の劣化を抑えることができる。
(非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法)
第12発明によれば、熱処理によってニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の残留水分を除去でき、製造されたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中における金属の原子数の和とリチウムの原子数との比がばらつくことを防ぐことができる。また、800℃〜1000℃の温度で焼成するので、粒子中にリチウムを十分に拡散させることができるし、粒子形態を球状に維持できる。よって、製造された正極活物質によって形成された正極を有する電池を製造した場合、電池容量を大きくすることができるし、正極抵抗の値も小さくすることができる。
第13発明によれば、リチウムの拡散を十分に行うことができるので、均一なリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得ることができる。
(非水系電解質二次電池用正極活物質)
第14発明によれば、高い電池の出力特性と高容量を実現できる。
第15発明によれば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物によって形成された正極活物質からなる電極を電池に用いた場合、測定される正極抵抗の値を低くでき、電池の出力特性を良好なものとすることができる。
(非水系電解質二次電池)
第16発明によれば、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗の電池となり、熱安定性および安全性も高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。
【図2】本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造する他の工程の概略フローチャートである。
【図3】本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物からリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。
【図4】本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造してから、非水系電解質二次電池を製造するまでの概略フローチャートである。
【図5】実施例および比較例の結果を示した表である。
【図6】本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のSEM写真(観察倍率1,000倍、10,000倍)である。
【図7】本発明のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のSEM写真(観察倍率1,000倍)である。
【図8】インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明は、(1)非水系電解質二次電池、(2)(1)非水系電解質二次電池の正極に用いられる非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、(3)(2)の非水系電解質二次電池用正極活物質の原料となるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、に関するものである。
【0018】
(1)非水系電解質二次電池の性能を向上させるためには、電池特性に優れた(2)非水系電解質二次電池用正極活物質を採用した電極を使用する必要がある。かかる電池特性に優れた(2)非水系電解質二次電池用正極活物質を得るためには、その粒径と粒度分布が重要な要因であり、所望の粒径を有しかつ所望の粒度分布に調整された正極活物質が好ましい。かかる正極活物質を得るためには、その原料である(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子に、所望の粒径を有しかつ所望の粒度分布のものを使用する必要がある。
【0019】
本発明は、上記のごとく、最終製品である(1)非水系電解質二次電池の性能に影響を与える、(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を、粒度分布の範囲が狭く均質な粒子として製造できる方法、また、この方法で製造された(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子に関するものである。
また、上記方法で製造された、粒度分布の範囲が狭く均質な(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を原料として、所望の粒径を有しかつ所望の粒度分布に調整された(2)非水系電解質二次電池用正極活物質を製造する方法、および、この方法で製造された(2)非水系電解質二次電池用正極活物質も、本発明の対象である。
そして、本発明の方法で製造された、所望の粒径を有しかつ所望の粒度分布に調整された(2)非水系電解質二次電池用正極活物質を用いた正極を有する(1)非水系電解質二次電池も、本発明の対象である。
【0020】
以下、上記(1)〜(3)の発明を詳細に説明するが、本発明の最大の特徴である、(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法および(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子、について説明する前に、最終製品である(1)非水系電解質二次電池、および、(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を原料として(2)非水系電解質二次電池用正極活物質を製造する方法および(2)非水系電解質二次電池用正極活物質について説明する。
【0021】
(1)非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、図4に示すように、後述する(2)の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いた正極を採用したものである。
そして、かかる正極を採用したので、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗の電池となり、熱安定性および安全性も高くすることができるという効果を奏するのである。
【0022】
まず、本発明の非水系電解質二次電池の構造を説明する。
本発明の非水系電解質二次電池(以下、単に本発明の二次電池という)は、正極の材料に本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に本発明の正極活物質という)を用いた以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質同等の構造を有している。
【0023】
具体的には、本発明の二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有している。より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間および、負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間をそれぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉することによって、本発明の二次電池は形成されているのである。
なお、本発明の二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、また、その外形も、筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。
【0024】
(各部の構造)
つぎに、本発明の二次電池を構成する各部を説明する。
【0025】
(正極)
まず、本発明の二次電池の特徴である正極について説明する。
正極は、シート状の部材であり、本発明の正極活物質を含有する正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成されている。
【0026】
なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等が行われる。
【0027】
(正極合材ペースト)
前記正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加して混練して形成されたものである。
【0028】
正極合材は、粉末状になっている本発明の正極活物質と、導電材および結着剤とを混合して形成されたものである。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。この導電材はとくに限定されないが、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすものである。この正極合材に使用される結着剤はとくに限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
なお、正極合材には、活性炭等を添加してもよく、活性炭等を添加することによって正極の電気二重層容量を増加させることができる。
【0029】
溶剤は、結着剤を溶解して、正極活物質、導電材および活性炭等を結着剤中に分散させるものである。この溶剤はとくに限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0030】
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は、とくに限定されない。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜98質量部、導電材の含有量を1〜20質量部、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることができる。
【0031】
(負極)
負極は、銅などの金属箔集電体の表面に負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。この負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材などは異なるものの、実質的に前記正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に、必要に応じて各種処理が行われる。
【0032】
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にしたものである。
負極活物質は、例えば、金属リチウムやリチウム合金等のリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
吸蔵物質はとくに限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。かかる吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、結着剤として、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0033】
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有している。かかるセパレータは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。
【0034】
(非水系電解液)
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
なお、非水系電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
【0035】
(本発明の二次電池の特性)
本発明の二次電池は、上記のごとき構成であり、上述したような正極を使用しているので、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力となる。しかも、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物の正極活物質との比較においても熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
【0036】
(本発明の二次電池の用途)
本発明の二次電池は、上記のごとき性質を有するので、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本発明の二次電池は、高出力が要求される電気自動車用電池にも好適である。電気自動車用の電池は大型化すると安全性の確保が困難になり高価な保護回路が必要不可欠であるが、本発明の二次電池は、電池が大型化することなく優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化でき、より低コストにできる。そして、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。
なお、本発明の二次電池は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
【0037】
(2)非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、本発明の正極活物質という)は、上述したような非水系電解質二次電池の正極の材料として適したものである。
本発明の正極活物質は、一般式:Li1+uNixCoyMnz2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.02、Mは添加元素であり、Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質であって、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有する粒子であり、この粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、しかも、平均粒径が2〜8μmとなるように調整されたものである。
【0038】
なお、ニッケル、コバルト、マンガンの原子比は、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4とすることが、電気特性、熱安定性を考慮する好ましい。
また、一般式において、リチウムの割合が上記範囲であるのは、リチウムの割合が上記範囲よりも少ない場合、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため電池の出力が低くなってしまう一方、リチウムの割合が上記範囲よりも多い場合、正極活物質の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまうからである。
そして、本発明の正極活物質は上記のごとき添加元素を添加されているので、電池の正極活物質として用いられた場合に、電池の耐久特性や出力特性を向上させることができる。とくに、添加元素が粒子の表面または内部に均一に分布するように調整されていれば、粒子全体で上記効果を得ることができ、少量の添加で効果が得られ容量の低下を抑制できるという利点がある。なお、全原子に対する添加元素の原子比tを0.02以下とするのは、原子比tが0.02を超えると、Redox反応に貢献する金属元素が減少するため、電池容量が低下し、好ましくないからである。
【0039】
(粒度分布)
本発明の正極活物質は、上述したように、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.6以下となるように調整されている。
粒度分布が広範囲になっている場合、正極活物質に、平均粒径に対して粒径が非常に小さい微粒子や、平均粒径に対して非常に粒径の大きい粒子(大径粒子)が多く存在することになる。微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、微粒子の局所的な反応に起因して発熱する可能性があり安全性が低下するし、微粒子が選択的に劣化するのでサイクル特性が悪化してしまう。一方、大径粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず反応抵抗の増加による電池出力が低下する。
したがって、正極活物質の粒度分布が、前記指標〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下となるように調整されていれば、微粒子や大径粒子の割合が少ないので、この正極活物質を正極に用いた電池では、安全性に優れ、良好なサイクル特性および電池出力を得ることができる。
【0040】
なお、粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕において、d10は、各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積したときにおいて、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。また、d90は、各粒径における粒子数を粒径が小さいほうから累積したときにおいて、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。
平均粒径や、d90、d10を求める方法は特に限定されないが、例えば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0041】
(平均粒径)
本発明の正極活物質は、上述した粒度分布かつ、その平均粒径が2〜8μmに調整されていることが好ましい。その理由は、平均粒径が2μm未満の場合には、正極を形成したときに粒子の充填密度が低下して正極の容積あたりの電池容量が低下する一方、平均粒径が8μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して電池の電解液との界面が減少することにより正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下するからである。
したがって、本発明の正極活物質を、上述した粒度分布かつ、その平均粒径が2〜8μm、好ましくは3〜8μm、より好ましくは3.5〜6μmとなるように調整すれば、この正極活物質を正極に用いた電池では、容積あたりの電池容量を大きくすることができるし、高安全性、高出力等の優れた電池特性が得られる。
【0042】
(非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法)
本発明の正極活物質の製造方法は、上記結晶構造、平均粒径、粒度分布および組成となるように正極活物質を製造できるのであれば、とくに限定されないが、以下の方法を採用すれば、本発明の正極活物質をより確実に製造できるので、好ましい。
【0043】
本発明の正極活物質を製造する方法は、図3に示すように、a)本発明の正極活物質の原料となるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する工程と、b)熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合して混合物を形成する混合工程と、c)混合工程で形成された混合物を焼成する焼成工程と、から構成されており、焼成された焼成物を解砕することによってリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒子、つまり、本発明の正極活物質を得ることができるのである。
なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキング等により生じた複数の二次粒子からなる凝集体に機械的エネルギーを投入して、二次粒子をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて凝集体をほぐす操作のことである。
以下、各工程を説明する。
【0044】
a)熱処理工程
熱処理工程は、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に複合水酸化物粒子という)を加熱して熱処理する工程であり、複合水酸化物粒子に含有されている水分を除去している。この熱処理工程を行うことによって、粒子中に焼成工程まで残留している水分を減少させることができる。言い換えれば、複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換することができるので、製造される正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合がばらつくことを防ぐことができる。
なお、正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしも全ての複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換する必要はない。
【0045】
熱処理工程において、複合水酸化物粒子は残留水分が除去される温度まで加熱されればよく、その熱処理温度はとくに限定されない。例えば、複合水酸化物粒子を105℃以上に加熱すれば残留水分を除去することができる。なお、105℃未満では、残留水分を除去するために長時間を要するため工業的に適当でない。また、熱処理温度の上限は、例えば、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。500℃を超える温度で熱処理をしても、製造される正極活物質の特性や性向にほとんど影響しないからである。
【0046】
熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。
また、熱処理時間はとくに制限されないが、1時間未満では複合水酸化物粒子中の残留水分の除去が十分に行われない場合があるので、少なくとも1時間以上が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
そして、熱処理に用いられる設備は特に限定されるものではなく、複合水酸化物粒子を空気気流中で加熱できるものであれば良く、送風乾燥器、ガス発生がない電気炉が好適に使用できる。
【0047】
b)混合工程
混合工程は、熱処理工程において熱処理された粒子(以下、熱処理粒子という)と、リチウムを含有する物質、例えば、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得る工程である。
なお、熱処理粒子とは、熱処理工程において残留水分を除去されたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子や、熱処理工程で酸化物に転換されたニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子、もしくはそれらの混合粒子である。
【0048】
熱処理粒子とリチウムを含有する物質とは、リチウム混合物中のリチウム以外の金属の原子数(すなわち、ニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素の原子数の和(Me))と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.95〜1.20となるように、混合される。つまり、リチウム混合物におけるLi/Meが、本発明の正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。これは、後述する焼成工程前後で、Li/Meは変化しないので、この混合工程で混合するLi/Meが正極活物質におけるLi/Meとなるからである。
【0049】
リチウム混合物を形成するために使用されるリチウムを含有する物質は特に限定されるものではないが、リチウム化合物であれば、例えば、水酸化リチウム、または炭酸リチウム、もしくはその混合物は入手が容易であるという点で好ましい。とくに、取り扱いの容易さ、品質の安定性を考慮すると、炭酸リチウムを用いることがより好ましい。
【0050】
なお、リチウム混合物は、焼成前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合には、個々の粒子間でLi/Meがばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じる可能性がある。
また、混合には、一般的な混合機を使用することができ、例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いることができ、複合水酸化物粒子等の形骸が破壊されない程度で、熱処理粒子とリチウムを含有する物質とがと十分に混合されればよい。
【0051】
c)焼成工程
焼成工程は、上記混合工程で得られたリチウム混合物を焼成して、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を形成する工程である。焼成工程においてリチウム混合物を焼成すると、熱処理粒子に、リチウムを含有する物質中のリチウムが拡散するので、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が形成される。
【0052】
(焼成温度)
リチウム混合物の焼成は、800〜1000℃、とくに850〜1000℃で行うことが好ましい。
焼成温度が800℃未満であると、熱処理粒子中へのリチウムの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなったりして、十分な電池特性が得られないという問題が生じる。
また、焼成温度が1000℃を超えると、熱処理粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる可能性がある。すると、焼成後の粒子が粗大となってしまい粒子形態(後述する球状二次粒子の形態)を保持できなくなる可能性があり、正極活物質を形成したときに、比表面積が低下して正極の抵抗が上昇して電池容量が低下するという問題が生じる。
したがって、リチウム混合物の焼成は、800〜1000℃、とくに850〜1000℃で行うことが好ましい。
【0053】
(焼成時間)
また、焼成時間は、少なくとも1時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、5〜15時間である。1時間未満では、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の生成が十分に行われないことがあるからである。
【0054】
(仮焼)
とくに、リチウムを含有する物質として、水酸化リチウムや炭酸リチウム等を使用した場合には、800〜1000℃の温度で焼成する前に、350〜800℃の温度で1〜10時間程度保持して仮焼することが好ましい。つまり、水酸化リチウムや炭酸リチウムの融点あるいは反応温度において仮焼することが好ましい。この場合、水酸化リチウムや炭酸リチウムの融点付近あるいは反応温度付近で保持すれば、熱処理粒子へのリチウムの拡散が十分に行われ、均一なリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得ることができるという利点が得られる。
【0055】
なお、前述したように、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子の表面における添加元素Mの濃度を高めたい場合には、原料である熱処理粒子として、添加元素によって粒子表面が均一に被覆されたものを用いればよい。かかる複合酸化物粒子を含むリチウム混合物を、適度な条件で焼成することで、複合酸化物粒子表面の添加元素の濃度を高めることができる。具体的には、添加元素によって被覆された熱処理粒子を含むリチウム混合物を、焼成温度を低く、かつ、焼成時間を短くして焼成すれば、粒子表面の添加元素Mの濃度を高めたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得ることができる。
そして、添加元素によって被覆された熱処理粒子を含むリチウム混合物を焼成した場合であっても、焼成温度を高く、焼成時間を長くすると、添加元素が粒子内に均一に分布したリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得ることができる。つまり、原料とする熱処理粒子および焼成条件を調整すれば、目的とするリチウムニッケル複合酸化物粒子を得ることができるのである。
【0056】
(焼成雰囲気)
また、焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、とくに、酸素濃度が18〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。これは、酸素濃度が18容量%未満であると、熱処理された粒子に含まれるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を十分に酸化できず、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の結晶性が十分でない状態になる可能性があるからである。とくにコスト面を考慮すると、空気気流中で行うことが好ましい。
【0057】
なお、焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、大気ないしは酸素気流中でリチウム混合物を加熱できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉をいずれも用いることができる。
【0058】
(3)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子
本発明のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に本発明の複合水酸化物粒子という)は、一般式NiCoMn(OH)2+α(0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、 0.1≦z≦0.5、0≦t≦0.02、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、MはTi、V、Cr、Zr、Al、Mg、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の球状の二次粒子であって、平均的な厚みが10〜300nm、平均的な長径が100〜3000nmである前記複数の板状一次粒子が、ランダムな方向に凝集して形成されたものであり、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、かつ、その平均粒径が3〜7μmとなるように調整されたものである。
そして、本発明の複合水酸化物粒子は、上述した本発明の正極活物質の原料として特に適したものであるので、以下では、本発明の正極活物質の原料に使用することを前提として説明する。
【0059】
なお、上述した本発明の製造方法に従って正極活物質を得た場合、本発明の複合水酸化物粒子の組成比(Ni:Co:Mn:M)は、正極活物質においても維持されるので、本発明の複合水酸化物粒子の組成比は、得ようとする正極活物質と同様となるように調整される。
【0060】
(粒子構造)
本発明の複合水酸化物粒子は、球状の粒子、具体的には、複数の板状一次粒子が凝集して形成された球状の二次粒子となるように調整されている。そして、複数の板状一次粒子は、平均的な厚みが10〜300nm、平均的な長径が100〜3000nmとなるように調整されているので、正極活物質を形成する焼結工程におけるリチウムの拡散性が良く、二次粒子中の空隙が多くなりすぎない。
これは、板状一次粒子の平均的な厚みが300nmを超えた場合、また、平均的な長径が3000nmを超えた場合には、二次粒子の球状性が損なわれる場合があるため好ましくないからである。一方、板状一次粒子の平均的な厚みが10nm未満となった場合、また、平均的な長径が100nm未満となった場合、球状の二次粒子中に存在する一次粒子間の空隙が相対的に増加する。すると、正極活物質を形成する焼結工程においてリチウムと反応した後にも粒子(正極活物質)が多孔質となり充放電を繰り返すと微粉が発生する場合があるため好ましくないからである。
【0061】
また、板状一次粒子がランダムな方向に凝集して二次粒子を形成しているので、一次粒子間にほぼ均一に空隙が生じて、リチウム化合物と混合して焼成するとき、溶融したリチウム化合物が二次粒子内へ行き渡りリチウムの拡散が十分に行われる。
【0062】
(粒度分布)
また、本発明の複合水酸化物粒子は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下となるように調整されている。
正極活物質の粒度分布は、原料である複合水酸化物粒子の影響を強く受けるため、複合水酸化物粒子に微粒子あるいは粗大粒子が混入していると、正極活物質にも同様の粒子が存在するようになる。すなわち、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55を超え、粒度分布が広い状態であると、正極活物質にも微粒子あるいは粗大粒子が存在するようになる。
本発明の複合水酸化物粒子において、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下となるように調整しておけば、本発明の複合水酸化物粒子を原料として得られる正極活物質も粒度分布の範囲が狭くなり、粒子径を均一化することができる。つまり、得られる正極活物質の粒度分布を、前記指標〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下とすることができる。すると、本発明の複合水酸化物粒子を原料として形成された正極活物質によって形成された電極を有する電池を、良好なサイクル特性および出力を有するものとすることができるのである。
【0063】
(平均粒径)
本発明の複合水酸化物粒子は、その平均粒径は、3〜7μmに調整されていることが好ましい。その理由は、平均粒径を3〜7μmとすることで、本発明の複合水酸化物粒子を原料として得られる正極活物質を所定の平均粒径(2〜8μm)に調整することができるからである。つまり、本発明の複合水酸化物粒子を原料として、上述した本発明の正極活物質を形成することができるからである。
ここで、本発明の複合水酸化物粒子の平均粒径が3μm未満であると、正極活物質の平均粒径も小さくなり、正極の充填密度が低下して、容積あたりの電池容量が低下する。逆に、本発明の複合水酸化物粒子の平均粒径が7μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する。
したがって、本発明の複合水酸化物粒子は、その平均粒径が3〜7μmに調整されている。この場合には、本発明の複合水酸化物粒子を原料として本発明の正極活物質を得ることができ、本発明の正極活物質を用いた正極を電池に使用したときに、優れた電池特性が得ることができる。
【0064】
(ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法)
上述した特性を有する本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、以下の方法により製造できる。
【0065】
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によってニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を製造する方法であって、a)核生成を行う核生成工程と、b)核生成工程において生成された核を成長させる粒子成長工程とから構成されている。
つまり、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、従来の連続晶析法(特許文献2、3参照)のように、核生成反応と粒子成長反応とが同じ槽内において同じ時期に進行するのではなく、主として核生成反応(核生成工程)が生じる時間と、主として粒子成長反応(粒子成長工程)が生じる時間とを明確に分離したことに特徴を有している。
【0066】
最初に、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法について概略を、図1に基づいて説明する。なお、図1および図2では、(A)が核生成工程に相当し、(B)が粒子成長工程に相当する。
【0067】
(核生成工程)
図1に示すように、まず、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含有する複数の金属化合物を所定の割合で水に溶解させ、混合水溶液を作製する。本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子における上記各金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。
よって、混合水溶液中における各金属の組成比が、本発明の複合水酸化物粒子中における各金属の組成比と同じ組成比となるように、水に溶解させる金属化合物の割合を調節して、混合水溶液を作製する。
【0068】
一方、反応槽には、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液、および水を供給混合して水溶液を形成する。この水溶液(以下、反応前水溶液という)は、アルカリ水溶液の供給量を調整して、そのpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH12.0〜14.0の範囲になるように調節される。合わせて、反応前水溶液中のアンモニウムイオンの濃度が3〜25g/Lとなるように調節する。また、反応前水溶液の温度は20〜60℃となるように調節する。なお、反応槽内の液体のpH、アンモニウムイオンの濃度は、それぞれ一般的なpH計、イオンメーターによって測定できる。
【0069】
そして、反応前水溶液の温度およびpH値が調整されると、反応槽内の水溶液を攪拌しながら混合水溶液を反応槽内に供給する。すると、反応槽内には、反応前水溶液と混合水溶液とが混合した水溶液(以下、反応水溶液という)が形成されるから、反応水溶液中に本発明の複合水酸化物の微細な核を生成させることができる。このとき、反応水溶液のpH値は上記範囲にあるので、生成した核はほとんど成長せず、核の生成が優先的に起こる。
なお、核生成に伴って、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が変化するので、反応水溶液には、混合水溶液とともに、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給して、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が所定の値を維持するように制御する。
【0070】
上記のごとく、反応水溶液に対して、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液を連続して供給すると反応水溶液中には、連続して新しい核の生成が継続される。そして、反応水溶液中に、所定の量の核が生成されると、核生成工程を終了する。所定量の核が生成したか否かは、反応水溶液に添加した金属塩の量によって判断する。
【0071】
上記の反応水溶液、つまり、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の混合した水溶液であってpH12.0〜14.0の範囲になるように調節された反応水溶液が、特許請求の範囲にいう核生成用水溶液である。
【0072】
(粒子成長工程)
核生成工程が終了すると、反応水溶液のpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH10.5〜12.0となるように調整する。具体的には、アルカリ水溶液の供給量を調整して、反応水溶液のpH値を制御する。
反応水溶液のpH値が12.0以下となると、反応水溶液中では、所定の粒子径を有する本発明の複合水酸化物粒子が形成される。このとき、水溶液のpH値が上記範囲にあるので、核の生成反応よりも核の成長反応の方が優先して生じるから、水溶液中には新たな核はほとんど生成されない。
そして、所定の粒径を有する複合水酸化物粒子が所定の量だけ生成されると、粒子成長工程を終了する。所定の粒径を有する複合水酸化物粒子の生成量は、反応水溶液に添加した金属塩の量によって判断する。
【0073】
上記の反応水溶液、つまり、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の混合した水溶液であってpH10.5〜12.0の範囲になるように調節された反応水溶液が、特許請求の範囲にいう粒子成長用水溶液である。
【0074】
以上のごとく、上記複合水酸化物粒子の製造方法の場合、核生成工程では核生成が優先して起こり核の成長はほとんど生じず、逆に、粒子成長工程では核成長のみが生じほとんど新しい核は生成されない。このため、核生成工程では、粒度分布の範囲が狭く均質な核を形成させることができ、また、粒子成長工程では、均質に核を成長させることができる。よって、複合水酸化物粒子の製造方法では、粒度分布の範囲が狭く均質なニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得ることができる。
【0075】
なお、上記方法の場合、両工程において、金属イオンは核または複合水酸化物粒子となって晶出するので、反応水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。すると、見かけ上、供給する混合水溶液の濃度が低下したようになり、粒子成長工程において、複合水酸化物粒子が十分に成長しない可能性がある。
よって、核生成工程終了後あるいは粒子成長工程の途中で、反応水溶液の一部を反応槽外に排出する。具体的には、反応水溶液に対する混合水溶液等の供給および攪拌を停止して、核や複合水酸化物粒子を沈降させて、反応水溶液の上澄み液を排出する。すると、反応水溶液における混合水溶液の相対的な濃度を高めることができる。そして、混合水溶液の相対的な濃度が高い状態で複合水酸化物粒子を成長させることができるので、複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭めることができ、複合水酸化物粒子の密度も高めることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、核生成工程が終了した核生成用水溶液のpH値を調整して粒子成長用水溶液を形成して、粒子成長工程を行っているので、粒子成長工程への移行を迅速に行うことができるという利点がある。
しかし、図2に示すように、核生成用水溶液とは別に、核生成工程に適したpH値、アンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を形成しておき、この成分調整水溶液に、別の反応槽で核生成工程を行った核を含有する水溶液を添加して、反応水溶液とし、この反応水溶液(つまり、粒子成長用水溶液)において粒子成長工程を行ってもよい。
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるので、各工程における反応水溶液の状態を、各工程に最適な条件とすることができる。とくに、粒子成長工程を開始する初期から、反応水溶液のpH値を最適な条件とすることができる。すると、粒子成長工程で形成されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を、より粒度分布の範囲が狭くかつ均質なものとすることができる。
【0077】
さらに、本発明の方法の場合、上述したように核生成用水溶液のpH値を調整して粒子成長用水溶液を形成すれば、核生成工程から引き続いて粒子成長工程を行うことができる。すると、核生成工程から粒子成長工程への移行は、反応水溶液のpH値を調整するだけで移行でき、pHの調整も一時的にアルカリ水溶液の供給を停止することで容易に行うことができるという利点がある。なお、反応水溶液のpH値は、金属化合物を構成する酸と同種の無機酸、例えは、硫酸塩の場合は硫酸を反応水溶液に添加することでも調整することができる。
【0078】
つぎに、各工程において使用する物質や溶液、反応条件について、詳細に説明する。
【0079】
(pH値)
(核生成工程)
上述したように、核生成工程においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH値が12.0〜14.0、好ましくは12.0〜13.5となるように調整されている。
pH値が14.0より高い場合、生成する核が微細になり過ぎ、反応水溶液がゲル化する問題があるし、pH値が12.0未満では、核形成とともに核の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり不均質なものとなってしまう。
したがって、粒子成長工程の反応水溶液のpH値は12.0〜14.0とすることが必要であり、かかる範囲であれば、核生成工程では、核の成長を抑制してほぼ核生成のみを起こすことができ、形成される核も均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
【0080】
(粒子成長工程)
上述したように、粒子成長工程においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH値が10.5〜12.0となるように調整されている。
pH値が12.0より高い場合、あらたに生成される核が多く粒径分布が良好な水酸化物粒子が得られないし、pH値が10.5未満では、アンモニアイオンによる溶解度が高く析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため好ましくない。
したがって、粒子成長工程の反応水溶液のpH値は10.5〜12.0とすることが必要であり、かかる範囲であれば、核生成工程で生成した核の成長のみを優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができるから、形成されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができるのである。
【0081】
なお、pH値が12の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程もしくは粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。
すなわち、核生成工程のpH値を12より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程でpH値を12とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、核の成長が優先して起こり、粒径分布が狭く比較的大きな粒径の前記水酸化物粒子が得られる。
一方、反応水溶液中に核が存在しない状態、すなわち、核生成工程においてpH値を12とした場合、成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12より小さくすることで、生成した核が成長して良好な前記水酸化物粒子が得られる。
いずれの場合においても、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より低い値で制御すればよい。
【0082】
(核生成量)
核生成工程において生成する核の量は特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、全体量、つまり、複合水酸化物粒子を得るために供給する全金属塩の0.1%から2%とすることが好ましく、1.5%以下とすることがより好ましい。
【0083】
(複合水酸化物粒子の粒径制御)
複合水酸化物粒子の粒径は粒子成長工程の時間により制御できるので、所望の粒径に成長するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程のみならず、核生成工程のpH値と核生成のために投入した原料量でも制御することができる。
すなわち、核生成時のpH値を高pH値側とすることにより、あるいは核生成時間を長くすることにより投入する原料量を増やし、生成する核の数を多くする。すると、粒子成長工程を同条件とした場合でも複合水酸化物粒子の粒径を小さくできる。
一方、核生成数が少なくするように制御すれば、得られる前記複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
【0084】
(他の条件の説明)
以下、金属化合物、反応水溶液中アンモニア濃度、反応温度、雰囲気などの条件を説明するが、核生成工程と粒子成長工程との相違点は、反応水溶液のpH値を制御する範囲のみであり、金属化合物、反応液中アンモニア濃度、反応温度、雰囲気などの条件は、両工程において実質的に同様である。
【0085】
(金属化合物)
金属化合物としては、目的とする金属を含有する化合物を使用する。使用する化合物は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。例えば、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが好ましく用いられる。
混合水溶液を形成する際に、各金属化合物は、混合水溶液中に存在する金属イオンの原子数比が、目的とする複合水酸化物中の金属イオンの原子数比と一致するように調整される。
【0086】
(添加元素)
添加元素(Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる1種以上の元素)は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、例えば硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0087】
かかる添加元素を複合水酸化物粒子の内部に均一に分散させる場合には、混合水溶液に、添加元素を含有する添加物を添加すればよい。すると、複合水酸化物粒子の内部に添加元素を均一に分散させた状態で共沈させることできる。
【0088】
また、複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆する場合には、例えば、添加元素を含んだ水溶液で複合水酸化物粒子をスラリー化し、晶析反応により添加元素を複合水酸化物粒子表面に析出させれば、その表面を添加元素で被覆することができる。この場合、添加元素を含んだ水溶液に替えて添加元素のアルコキシド溶液を用いてもよい。さらに、複合水酸化物粒子に対して、添加元素を含んだ水溶液あるいはスラリーを吹き付けて乾燥させることによっても、複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆することができる。
なお、表面を添加元素で被覆する場合、混合水溶液中に存在する添加元素イオンの原子数比を被覆する量だけ少なくしておくことで、得られる複合水酸化物粒子の金属イオンの原子数比と一致させることができる。
また、粒子の表面を添加元素で被覆する工程は、複合水酸化物粒子を加熱したあとの粒子、つまり、前述した熱処理粒子に対して行ってもよい。
【0089】
(混合水溶液の濃度)
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で1〜2.4mol/Lとすることが好ましい。混合水溶液の濃度が1mol/L未満でも複合水酸化物粒子を晶析反応させることは可能であるが、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。
一方、混合水溶液の塩濃度が2.4mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、結晶が再析出して設備の配管を詰まらせるなどの危険がある。
また、金属化合物は、必ずしも混合水溶液として反応槽に供給しなくてもよく、反応水溶液中における金属化合物の合計の濃度が上記範囲となるように、個々の金属化合物の水溶液として所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
さらに、混合水溶液等や個々の金属化合物の水溶液を反応槽に供給する量は、晶析反応を終えた時点での晶析物濃度が概ね30〜200g/Lになるようにすることが望ましい。なぜなら、晶析物濃度が30g/L未満の場合は、一次粒子の凝集が不十分になることがあり、200g/Lを越える場合は、添加する混合水溶液の反応槽内での拡散が十分でなく粒子成長に偏りが生じることがあるからである。
【0090】
(アンモニア濃度)
反応槽内において、反応水溶液中のアンモニア濃度は、以下の問題を生じさせないために、好ましくは3〜25g/Lの範囲内で一定値に保持する。
まず、アンモニアは錯化剤として作用し、アンモニア濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度を一定に保持することができないため、形状及び粒径が整った板状の水酸化物一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成しやすいため粒度分布も広がりやすい。
一方、アンモニア濃度が25g/Lを越える濃度では、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きる。
また、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
なお、アンモニウムイオン供給体はとくに限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができる。
【0091】
(反応液温度)
反応槽内において、反応液の温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは20〜60℃に設定する。反応液の温度が20℃未満の場合、温度が低いため核発生が起こりやすく制御が難しくなる一方、60℃を越えると、アンモニアの揮発が促進されるため所定のアンモニア濃度を保つために過剰のアンモニウムイオン供給体を添加しなければならないからである。
【0092】
(アルカリ水溶液)
反応槽内のpHを調整するアルカリ水溶液は、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。かかるアルカリ金属水酸化物の場合、直接、反応槽に供給する前の混合水溶液に添加してもよいが、反応槽内における反応水溶液のpH値制御の容易さから、水溶液として反応槽内の反応水溶液に添加することが好ましい。
また、アルカリ水溶液を反応槽に添加する方法も特に限定されるものではなく、混合水溶液を十分に攪拌しながら、定量ポンプなど、流量制御が可能なポンプで、反応槽内の水溶液pH値が所定の範囲に保持されるように添加すればよい。
【0093】
(反応雰囲気)
反応中の雰囲気は、特に制限されるものではないが、安定的に製造するためには、過度の酸化性雰囲気は好ましくない。かかる反応中の雰囲気の制御は、少なくとも粒子成長工程で行うことが好ましく、例えば、反応槽内空間の酸素濃度を10%以下に制御して晶析反応を行うことで、粒子の不要な酸化を抑制し、粒度の揃った粒子を得ることができる。
そして、このような状態に反応槽内空間を保つための手段としては、窒素などの不活性ガスを槽内へ常に流通させることが挙げられる。
【0094】
(製造設備)
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置を用いる。例えば、撹拌機が設置された通常に用いられるバッチ反応槽などである。かかる装置を採用すると、一般的なオーバーフローによって生成物を回収する連続晶析装置のように成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されるという問題が生じないので、粒度分布が狭く粒径の揃った粒子を得ることができる。
また、反応雰囲気を制御する場合には、密閉式の装置などの雰囲気制御可能な装置であることが好ましい。このような装置を用いれば、核生成反応や粒子成長反応がほぼ均一に進むので、粒径分布の優れた粒子(つまり、粒度分布の範囲の狭い粒子)を得ることができる。
【実施例】
【0095】
本発明の方法によって製造した複合水酸化物、また、この複合水酸化物を原料として本発明の方法によって製造した正極活物質について、平均粒径および粒度分布を確認した。
また、本発明の方法によって製造した正極活物質を用いて製造した正極を有する二次電池について、その性能(初期放電容量、サイクル容量維持率、正極抵抗比)を確認した。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0096】
(平均粒径および粒度分布の測定)
複合水酸化物、正極活物質の平均粒径および粒度分布(〔(d90−d10)/平均粒径〕値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した体積積算値から算出している。
また、X線回折測定(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)により結晶構造も確認した。
また、得られた複合水酸化物および正極活物質の組成は、試料を溶解した後、ICP発光分光法により確認した。
【0097】
(二次電池の製造)
評価には、以下の方法で作製した巻回型リチウム二次電池を使用した。
【0098】
まず、25℃の正極活物質と、カーボンブラックからなる導電材と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)よりなる結着剤とを、85:10:5の質量割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に溶解させ、正極合材ペーストを作製した。
得られた正極合材ペーストを、コンマコータにてアルミ箔の両面に塗布し、100℃で加熱して乾燥させて正極を得た。
得られた正極をロールプレス機に通して荷重を加え、電極密度を向上させた正極シートを作製した。
【0099】
続いて、グラファイトよりなる負極活物質と、結着剤としてのPVDFとを92.5:7.5の質量割合でNMP溶液に溶解させて、負極合材ペーストを得た。
得られた負極合材ペーストを、正極と同様に、コンマコータにて銅箔の両面に塗布し、120℃で乾燥させて負極を得た。得られた負極をロールプレス機に通して荷重を加え、電極密度を向上させた負極シートを作製した。
【0100】
得られた正極シートおよび負極シートを、厚さ25μmの微多孔性ポリエチレンシートよりなるセパレータを介した状態で巻回させて、巻回型電極体を形成した。巻回型電極体は、正極シートおよび負極シートにそれぞれに設けられたリードタブが、正極端子あるいは負極端子に接合した状態となるように、電池ケースの内部に挿入した。
【0101】
さらに、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶液よりなる有機溶媒に、電解液中で1mol/dm3となるように、リチウム塩としてLiPF6を溶解させて、電解液を調整した。
得られた電解液を、巻回型電極体が挿入された電池ケース内に注入し、電池ケースの開口部を密閉し、電池ケースを封止して、二次電池を製造した。
【0102】
製造した二次電池の性能を評価する、初期放電容量、サイクル容量維持率、正極抵抗比は、以下のように定義した。
初期放電容量は、二次電池を24時間程度放置し、開路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
サイクル容量維持率は、正極に対する電流密度を3.0mA/cm2としてカットオフ電圧を4.3から3.0Vとして60℃で500サイクルの充放電を繰り返した後の放電容量と初期の放電容量の比を計算して容量維持率とした。
また、正極抵抗比は、二次電池を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタットを使用して交流インピーダンス法により測定すると、図8に示すようなナイキストプロット得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗の値を算出する。そして、この正極抵抗の値と後述する比較例1における正極抵抗の値との比を、正極抵抗比とした。
【0103】
なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
【0104】
(実施例1)
(複合水酸化物製造工程)
複合水酸化物は、本発明の方法を用いて、以下のように作成した。
まず、反応槽(34L)内に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて窒素雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は2.0%であった。
【0105】
上記反応槽内の水に25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水を適量加えて、液温25℃を基準として測定するpH値として、槽内の反応液のpHが12.6となるように調整した。また、反応液中アンモニア濃度は10g/Lに調節した。
【0106】
(核生成工程)
次に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウム、タングステン酸ナトリウムを水に溶かして1.8mol/Lの混合水溶液を形成した。この混合水溶液では、各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した。
上記混合水溶液を、反応槽内の反応液に88ml/分で加えた。同時に、25%アンモニア水および25%水酸化ナトリウム水溶液も反応槽内の反応液に一定速度で加えていき、反応液中のアンモニア濃度を上記値に保持した状態で、pH値を12.6(核生成pH値)に制御しながら2分30秒間晶析を行って、核生成を行った。
【0107】
(粒子成長工程)
その後、反応液のpH値が液温25℃を基準として測定するpH値として11.6(粒子成長pH値)になるまで、25%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止した。
液温25℃を基準として測定するpH値として、反応液のpH値が11.6に到達した後、再度、25%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、pH値を11.6に制御したまま、2時間晶析を継続し粒子成長を行った。
【0108】
反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。その後、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、2時間晶析を行った後(計4時間)、晶析を終了させた。そして、生成物を水洗、濾過、乾燥させると粒子が得られた。
【0109】
得られた粒子は、Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.0050.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子であった。
図5に示すように、この複合水酸化物粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径は3.6μmであり、(〔(d90−d10)/平均粒径〕値は0.48であった。
また、得られた複合水酸化物粒子のSEM(株式会社日立ハイテクノロジース製走査電子顕微鏡S−4700)観察結果であるSEM写真(図6)から、厚み約200nm、長径約1000nmの板状一次粒子がランダムに凝集して二次粒子を構成していることが確認できる。
【0110】
(正極活物質製造工程)
前記複合水酸化物粒子を大気雰囲気中150℃で12時間の熱処理をした後、Li/Me=1.15となるように炭酸リチウムを秤量し、熱処理した複合水酸化物粒子と混合して混合物を形成した。混合は、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて行った。
得られたこの混合物を空気(酸素:21容量%)気流中にて760℃で4時間仮焼した後、950℃で10時間焼成し、さらに解砕して正極活物質を得た。
【0111】
図5に示すように、得られた正極活物質の粒度分布を測定したところ、平均粒径は3.8μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕値は0.55であった。
また、複合水酸化物粒子と同様の方法で正極活物質のSEM観察したところ、SEM写真(図7)から、得られた正極活物質は、略球状であり、粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。
また、得られた正極活物質をCu−Kα線による粉末X線回折で分析したところ、六方晶の層状結晶リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物単相であることが確認された。
そして、正極活物質は、化学分析によりLiが7.83質量%、Niが19.1質量%、Coが19.2質量%、Mnが17.9質量%、Zrが0.46質量%、Wが0.93質量%の組成でありLi1.146Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.0050.005であることが確認できた。
【0112】
(電池評価)
前記正極活物質を使用して形成された正極を有する二次電池について、充放電試験を行ったところ、図5に示すように、二次電池の初期放電容量は158.0mAh/gであり、500サイクル後の容量維持率は91%であった。また、正極抵抗比は、0.57であった。
【0113】
以下、実施例2〜15および比較例1〜7については、上記実施例1と変更した物質、条件のみを示す。また、実施例2〜15および比較例1〜7の各評価の結果は、図5に示した。
【0114】
(実施例2)
Li/Me=1.10となるように混合したこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0115】
(実施例3)
Li/Me=1.12となるように混合したこと、焼成条件を970℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0116】
(実施例4)
焼成条件を900℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0117】
(実施例5)
仮焼条件を400℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0118】
(実施例6)
仮焼をせず950℃、10時間で焼成したこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0119】
(実施例7)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr=0.33:0.33:0.33:0.01となるように混合水溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0120】
(実施例8)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W:Nb=0.328:0.328:0.328:0.005:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0121】
(実施例9)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.397:0.297:0.297:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製したこと、焼成条件を930℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0122】
(実施例10)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr=0.498:0.248:0.248:0.005となるように混合水溶液を調製したこと、核生成pHを12.8としたこと、Li/Me=1.05となるように混合したこと、焼成条件を900℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0123】
(実施例11)
Li/Me=1.10となるように混合したこと、焼成条件を860℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0124】
(実施例12)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn=0.333:0.333:0.333となるように混合水溶液を調製して、添加元素Mのない水酸化物を得たこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0125】
(実施例13)
複合水酸化物製造工程において、核生成を行なう晶析時間を30秒にしたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0126】
(実施例14)
複合水酸化物製造工程において、槽内温度を50℃、アンモニア濃度を20g/lとした以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0127】
(実施例15)
小型反応槽(5L)内に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、窒素ガスを流通させて窒素雰囲気とした。25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水を適量加えて、液温25℃を基準として測定するpH値として、槽内の反応液のpH値を12.6に、液中アンモニア濃度を10g/Lに調節した。次に、前記反応液に硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウム、タングステン酸ナトリウム(金属元素モル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005)を水に溶かして得た1.8mol/Lの混合水溶液と、反応液中のアンモニア濃度を上記値に保持した状態で、25%アンモニア水および25%水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加えていき、pH値を12.6(核生成pH値)に制御しながら2分30秒間晶析を行うことにより実施例1と同様に種晶を得た。別の反応槽(34L)に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、窒素ガスを流通させて窒素雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度を2.0%であった。25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水を適量加えて、液温25℃を基準として測定するpH値として、槽内の反応液のpH値を11.6に、液中アンモニア濃度を10g/Lに調節した。前記小型反応槽で得られた種晶を含む反応液を、反応槽に投入した後に、実施例1と同様にpH値を11.6に制御したまま前記混合水溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液を加えて2時間晶析を継続し粒子成長を行った。反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開した。2時間晶析を行った後(計4時間)、晶析を終了させて、生成物を水洗、濾過、乾燥させた。以降の工程は実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。得られた複合水酸化物粒子の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、並びに正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、初期放電容量、500サイクル後の容量維持率、正極抵抗比を図5に示す。
【0128】
(実施例16)
複合水酸化物製造工程において、種晶作製時のpH(核生成pH値)を13.5、種晶作製時間を1分15秒、アンモニア濃度を15g/lとした以外は実施例15と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。得られた複合水酸化物粒子の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、並びに正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、初期放電容量、500サイクル後の容量維持率、正極抵抗比を図5に示す。
【0129】
(比較例1)
上部にオーバーフロー用配管を備えた連続晶析用の反応槽(34L)を用いて、液のpHを液温25℃を基準として測定するpH値として12.0の一定値に保ちながら、実施例1と同様に金属塩を溶解した混合水溶液とアンモニア水溶液および中和液を一定流量で連続的に加えて、オーバーフローするスラリーを連続的に回収して晶析を行った。槽内の平均滞留時間を4時間として、反応槽内が平衡状態になってから、スラリーを回収して固液分離し、複合水酸化物粒子を得た。得られた複合水酸化物粒子を用いて実施例1と同様の正極活物質製造工程により、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0130】
(比較例2)
複合水酸化物製造工程において、核生成時と粒子成長時の反応液のpHを、液温25℃を基準として測定するpH値として11.6の一定値に保持したこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
【0131】
(比較例3)
複合水酸化物製造工程において、核生成時と粒子成長時の反応液のpHを、液温25℃を基準として測定するpH値として12.6の一定値に保持したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。得られた複合水酸化物は、ゲル状の析出物を含む不定形の粒子となり、固液分離が困難であり、正極活物質の製造を中止した。
【0132】
(比較例4)
焼成条件を1050℃で10時間としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
【0133】
(比較例5)
Li/Me=1.25としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
【0134】
(比較例6)
Li/Me=0.90とした以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
【0135】
(比較例7)
複合水酸化物製造工程において、金属元素モル比でNi:Co:Mn:Zr=0.3234:0.3233:0.3233:0.03となるように金属塩溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
【0136】
(評価)
実施例1〜16の複合水酸化物粒子および正極活物質は、本発明に従って製造されたため、平均粒径および粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕値のいずれもが好ましい範囲にあり、粒径分布が良好で粒径がほぼ揃った粒子となっている。
また、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、サイクル特性に優れ、正極抵抗も低いものとなっており、優れた特性を有した電池となっている。
【0137】
比較例1は、連続晶析法を用いたため、核生成と粒子成長の分離ができず、粒子成長時間が一定でないため、粒度分布が広いものとなっている。このため、初期放電容量は高いものの、サイクル特性が悪くなっている。
比較例2では、核成長時と粒子成長時のpH値をいずれもpH12以下としたため、核生成量が不足し、複合水酸化物粒子、正極活物質ともに大粒径となっている。このため、電池に用いたときに反応表面積が不足して高い正極抵抗となっている。
比較例3では、核成長時と粒子成長時のpH値をいずれもpH12以上としたため、晶析反応全期間において新たな核が生成したために、粒度分布が広くなり、正極活物質の製造が困難となった。
【0138】
比較例4〜6は、正極活物質の製造工程が本発明に従わなかったため、良好な特性の正極活物質が得られず、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、正極抵抗が大きくなっており、初期放電容量、サイクル特性ともに悪化している。
また、比較例7は、添加元素の原子比が、本発明の範囲より高いため、粒度分布は良好であるものの初期放電容量と正極抵抗は悪化している。
【0139】
以上の結果より、本発明の製造方法を用いて、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子および正極活物質を製造すれば、この正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、サイクル特性に優れ、正極抵抗も低いものとなり、優れた特性を有した電池となることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の非水系電解質二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適であり、高出力が要求される電気自動車用電池にも好適である。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、優れた安全性を有し、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。
なお、本発明は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
晶析反応によって一般式NiCoMn(OH)2+α(0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、 0.1≦z≦0.5、0≦t≦0.02、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、MはTi、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造する製造方法であって、
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、
該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が10.5〜12.0となるように制御して前記核を成長させる粒子成長工程とからなる
ことを特徴とするニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記粒子成長用水溶液は、
前記核生成工程が終了した前記核生成用水溶液のpH値を調整して形成されたものである
ことを特徴とする請求項1記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記粒子成長用水溶液は、
前記核生成工程において形成された核を含有する水溶液を、該核を形成した核生成用水溶液とは異なる水溶液に対して添加したものである
ことを特徴とする請求項1記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記核生成工程後に、前記粒子成長用水溶液の液体部の一部を排出した後、前記粒子成長工程を行う
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記核生成工程および前記粒子成長工程において、各水溶液の温度を、20℃以上に維持する
ことを特徴とする請求項1乃至4記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記核生成工程および前記粒子成長工程において、各水溶液のアンモニア濃度を、3〜25g/Lの範囲内に維持する
ことを特徴とする請求項1乃至5記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項7】
前記粒子成長工程で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物に、1種以上の前記添加元素を含む化合物を被覆する
ことを特徴とする請求項1乃至6記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項8】
一般式NiCoMn(OH)2+α(0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、 0.1≦z≦0.5、0≦t≦0.02、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、MはTi、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物であって、
該ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、
球状の二次粒子であって、
平均的な厚みが10〜300nm、平均的な長径が100〜3000nmである前記複数の板状一次粒子が、ランダムな方向に凝集して形成されたものである
ことを特徴とするニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子。
【請求項9】
前記二次粒子は、
平均粒径が3〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下である
ことを特徴とする請求項8記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子。
【請求項10】
前記二次粒子は、その内部に前記添加元素が均一に分布および/またはその表面を前記添加元素が均一に被覆している
ことを特徴とする請求項8または9記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子。
【請求項11】
請求項1乃至7の製造方法によって生成されたものである
ことを特徴とする請求項8、9または10記載のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子。
【請求項12】
一般式:Li1+uNixCoyMnz2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.02、Mは添加元素であり、Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質の製造方法であって、
請求項8乃至11のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する工程と、
前記熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合して混合物を形成し、該混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和とリチウムの原子数との比が、1:0.95〜1.20となるように調整する混合工程と、
該混合工程で形成された前記混合物を、800℃〜1000℃の温度で焼成する焼成工程と有する
ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記焼成工程の前に、350℃〜800℃の温度で仮焼を行う
ことを特徴とする請求項12記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
一般式:Li1+uNixCoyMnz2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.02、Mは添加元素であり、Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質であって、
平均粒径が2〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下である
ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項15】
請求項12または13の製造方法によって生成されたものである
ことを特徴とする請求項14記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項16】
正極が、
請求項14または15の非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されている
ことを特徴とする非水系電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−116580(P2011−116580A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274518(P2009−274518)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】