説明

ニッケル水素蓄電池

【課題】 正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体をアルカリ電解液と共に電池缶内に収容させると共に、この電池缶の開口部を封口体によって閉塞させたニッケル水素電池の充電状態を、電池以外の機器を使用しなくても、電池単体で簡単に検知できるようにする。
【解決手段】 正極11と水素吸蔵合金を用いた負極12との間にセパレータ13を介在させて巻回させた電極体10がアルカリ電解液と共に電池缶20内に収容されると共に、この電池缶の開口部が封口体30によって閉塞されてなるニッケル水素蓄電池において、上記の電極体の中心の空間部10a内に、移動体16を一定以上の充電状態では固定されるようにして移動可能に収容させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体がアルカリ電解液と共に電池缶内に収容されると共に、この電池缶の開口部が封口体によって閉塞されてなるニッケル水素蓄電池に係り、このニッケル水素蓄電池が一定以上の充電状態にあるかを簡単に検知できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体をアルカリ電解液と共に電池缶内に収容させると共に、この電池缶の開口部を封口体によって閉塞させたニッケル水素電池が様々な用途に使用されており、またこのようなニッケル水素蓄電池を充電器により充電させて繰り返して使用できるようにしたものが広く利用されている。
【0003】
ここで、このようなニッケル水素蓄電池は、使用によって電池容量が減少すると共に、長時間の放置による自己放電によって次第に電池容量が減少する。
【0004】
そして、このニッケル水素蓄電池に現在どの程度の電池容量が残っているのか知るために、従来においては、テスターでこのニッケル水素蓄電池の電圧を測定してニッケル水素蓄電池の残容量を検知するようにしたり、充電器やこのニッケル水素蓄電池を使用する機器側に残量メータなどを設けてニッケル水素蓄電池の残容量を表示させるようにしたもの(例えば,特許文献1,2参照。)が知られている。
【0005】
しかし、上記のものにおいてはニッケル水素蓄電池の残容量を検地するのに、電池以外の機器が必要になり、電池単体でその充電状態を検知することができないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−191128号
【特許文献2】特開2005−253269号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体をアルカリ電解液と共に電池缶内に収容させると共に、この電池缶の開口部を封口体によって閉塞させたニッケル水素蓄電池において、電池以外の機器を使用しなくても、電池単体で充電状態を簡単に検知できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるニッケル水素蓄電池においては、上記のような課題を解決するため、正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体がアルカリ電解液と共に電池缶内に収容されると共に、この電池缶の開口部が封口体によって閉塞されてなるニッケル水素蓄電池において、上記の電極体の中心の空間部内に、移動体を一定以上の充電状態では固定されるようにして移動可能に収容させたのである。
【0008】
ここで、上記のニッケル水素蓄電池が充電状態では、負極に用いた水素吸蔵合金が水素を吸蔵してその体積が膨張し、これにより上記の電極体の中心における空間部が狭くなって、上記の移動体が電極体に保持されて固定されるようになる。そして、上記のニッケル水素蓄電池が放電されると、水素吸蔵合金に吸蔵された水素が放出されてその体積が次第に減少し、電極体の中心の空間部が拡大し、一定以上放電されると、電極体に保持されて固定されていた移動体がこの電極体の空間部内において移動可能になり、この状態でニッケル水素蓄電池を振ると、上記の移動体が電極体の空間部内において移動して、電池缶などに衝突して音を発するようになる。
【0009】
ここで、上記の移動体を電極体の中心の空間部内に収容させるにあたっては、この移動体と電池缶などとの接触によってショートが発生しないようにするため、この移動体の少なくとも表面が絶縁性であるようにし、或いはこの移動体を電極体の中心の空間部内に設けられた可撓性の絶縁性収容体に収容させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明におけるニッケル水素蓄電池においては、上記のように正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体の中心の空間部内に移動体を移動可能に収容させ、ニッケル水素蓄電池が一定以上の充電状態では、この移動体が電極体に保持されて固定されるようにし、このニッケル水素蓄電池が一定以上放電された状態では、電極体に保持されて固定されていた移動体がこの電極体の空間部内において移動できるようにした。
【0011】
この結果、本発明におけるニッケル水素蓄電池においては、従来のように電池以外の機器を使用しなくても、このニッケル水素蓄電池を振ることにより、上記の移動体が電極体の空間部内において移動し、電池缶などに衝突して音を発するかを調べることによって、このニッケル水素蓄電池が一定以上の充電状態にあるか否かを簡単に検知できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係るニッケル水素蓄電池を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明におけるニッケル水素蓄電池は、下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0013】
この実施形態におけるニッケル水素蓄電池においては、図1に示すように、正極11として、ニッケル発泡体などの正極支持体11aの両面に水酸化ニッケルを主成分とするペースト状正極活物質を付与し、これを乾燥させて圧延させたものを用い、負極12として、パンチングメタルなどの負極支持体12aの両面に水素吸蔵合金を主成分とするペースト状負極活物質を付与し、これを乾燥させて圧延させたものを用いるようにした。
【0014】
そして、ニッケル水素蓄電池を作製するにあたっては、上記の正極11と負極12との間にポリプロピレン製不織布などのセパレータ13を介在させてスパイラル状に巻き取った電極体10の中心における空間部10a内に移動体16を収容させ、この電極体10の一方の端面において、上記の正極11における正極支持体11aに面状になった正極集電体14を取り付けると共に、上記の電極体10の他方の端面において、上記の負極12における負極支持体12aに面状になった負極集電体15を取り付けるようにした。
【0015】
そして、このように空間部10a内に移動体16が収容されると共に正極集電体14と負極集電体15が取り付けられた電極体10を電池缶20内に収容させて、上記の負極集電体15を電池缶20内部の底面に取り付け、この電池缶20内に上記のアルカリ電解液を注液させると共に、上記の正極集電体14からリード部14aを延出させ、このリード部14aを封口体30の底部31に取り付け、この封口体30の周縁に絶縁ガスケット32を装着させて、この封口体30を上記の電池缶20の開口部に配置し、電池缶20の開口端縁をかしめて、封口体30を電池缶20に取り付けるようにした。なお、上記の封口体30においては、その底部31と正極外部端子33との間に、スプリング34と弁35とを設け、これにより電池の内圧が異常に上昇した場合に、電池内部のガスを大気に放出させるようにした。
【0016】
また、この実施形態においては、上記の移動体16として、図2に示すように、ニッケル等の金属球16aの外周面を樹脂などの絶縁性材料からなる絶縁層16bで被覆したものを用いるようにした。
【0017】
また、このような移動体16を上記のように電極体10の中心における空間部10a内に収容させるにあたっては、このニッケル水素蓄電池の作製時及び放電状態では、この移動体16が空間部10a内を移動できるようにする一方、このニッケル水素蓄電池の充電により、負極12に用いた水素吸蔵合金が水素を吸蔵してその体積が膨張し、上記の電極体10の中心における空間部10aが狭くなった状態では、上記の移動体16が電極体10に保持されて固定されるようにした。
【0018】
このようにすると、このニッケル水素蓄電池が一定以上の充電状態では、移動体16が電極体10に保持されて固定される一方、このニッケル水素蓄電池が一定以上放電された状態では、電極体10に保持されて固定されていた移動体16がこの電極体10の空間部10a内において移動できるようになり、この状態で、このニッケル水素蓄電池を振ると、移動体16が電極体10の空間部10a内を移動して正極集電体14や負極集電体15などに衝突して音を発すようになり、このような音を聞いて、このニッケル水素蓄電池が一定以上の充電状態にあるか否かを簡単に検知できるようになる。
【0019】
なお、この実施形態においては、移動体16として、金属球16aの外周面を絶縁層16bで被覆したものを用いるようにしたが、この移動体16は特にこのようなものに限定されず、例えば、樹脂やセラミックなどの絶縁性材料で構成された球体を用いるようにしたり、移動体16として上記のような金属球16aを用い、この金属球16aからなる移動体16をポリプロピレンフィルムなどの可撓性の絶縁性収容体(図示せず)内に収容させた状態で、この絶縁性収容体を電極体10の空間部10a内に配置させるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態に係るニッケル水素蓄電池の概略断面図である。
【図2】同実施形態に係るニッケル水素蓄電池において使用した移動体の概略断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 電極体
10a 空間部
11 正極
11a 正極支持体
12 負極
12a 負極支持体
13 セパレータ
14 正極集電体
15 負極集電体
16 移動体
16a 金属球
16b 絶縁層
20 電池缶
30 封口体
31 封口体の底部
32 絶縁ガスケット
33 正極外部端子
34 スプリング
35 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と水素吸蔵合金を用いた負極との間にセパレータを介在させて巻回させた電極体がアルカリ電解液と共に電池缶内に収容されると共に、この電池缶の開口部が封口体によって閉塞されてなるニッケル水素蓄電池において、上記の電極体の中心の空間部内に、移動体が一定以上の充電状態では固定されるようにして移動可能に収容されていることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項2】
請求項1に記載のニッケル水素蓄電池において、上記の移動体の少なくとも表面が絶縁性であることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項3】
請求項1に記載のニッケル水素蓄電池において、上記の移動体が電極体の中心の空間部内に設けられた可撓性の絶縁性収容体に収容されていることを特徴とするニッケル水素蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−242440(P2007−242440A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63802(P2006−63802)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】