説明

ニトライトの医薬製剤及びそれらの使用

本発明は、無機ニトライトなどのニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグの医薬組成物及びそれら組成物の医学的使用に関する。該医薬組成物は経口投与用に製剤化することが可能であるが、その医薬組成物は、亜硝酸イオン(NO2-)を即時放出し得るか又は長期間にわたって放出し得る。本発明の医薬組成物は、例えば慢性組織虚血の治療に関して、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトライト(nitrite)の医薬組成物及びそれら組成物の医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性組織虚血(即ち、特定の組織への血液供給が持続的に制限されること)は、組織の機能を損ない、組織及び器官に損傷を与え得る。慢性組織虚血は、かくして、有意にヒトの病的状態及び死亡の一因となる。慢性組織虚血は、組織への血液供給の持続的な又は再発性の制限をもたらす広範な医学的状態〔例えば、末梢性動脈疾患、1型糖尿病、2型糖尿病、アテローム動脈硬化性心血管疾患、間欠性跛行、重症下肢虚血性疾患(critical limb ischemic disease)、卒中、心筋梗塞、炎症性腸疾患及び末梢神経障害などの疾患;創傷、火傷、裂傷、打撲傷、骨折、感染症又は外科的処置などの外傷;ヘルニア、心欠損(cardiac defect)及び胃腸欠損(gastrointestinal defect)などの先天性奇形〕の何れかから生じ得る。かくして、慢性組織虚血は、例えば、骨格筋、平滑筋、心筋、神経組織、皮膚、間葉組織、結合組織、胃腸組織及び骨などを包含する、さまざまなタイプの組織において生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、病変部位への血液供給を回復させる治療方法が絶えず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概して、第1の態様において、本発明は、有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ及び製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。好ましくは、該医薬組成物をヒトに投与することにより、最大で14時間にわたって、亜硝酸イオンの血漿濃度が0.05μM〜10μM(例えば、0.1μM〜10μM、0.5μM〜5μM、0.1μM〜3μM、又は、0.1μM〜1μM)に維持される。
【0005】
別の実施形態では、該無機ニトライトは、ヒトの体重1kg当たり0.1μg〜10mg(例えば、1μg〜5mg/kg、0.05〜10mg/kg、0.1〜5mg/kg、0.5〜5mg/kg、0.5〜3mg/kg、0.1〜1.5mg/kg、0.1〜0.35mg/kg、0.35〜0.75mg/kg、又は、0.75〜1mg/kg)の用量で投与される。さらに別の実施形態では、該用量は、0.25mg/kg、0.5mg/kg又は1mg/kgである。
【0006】
特定の実施形態では、該医薬組成物は、0.5〜5.0mmol(例えば、1.0〜4.0mmol)の亜硝酸イオン(NO2-)を含む。
【0007】
別の実施形態では、該亜硝酸イオンは、NaNO2、KNO2又は亜硝酸アルギニンとして提供される。特定の実施形態では、該亜硝酸イオンは、NaNO2として提供される。
【0008】
さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。さらなる実施形態では、医薬組成物は、錠剤又はカプセル剤である。
【0009】
別の実施形態では、該医薬組成物は、アルカリ化剤(alkanizing agent)、流動促進剤、滑沢剤、増量剤(bulking agent)、セルロース含有ポリマー又はポリエチレングリコール又はそれらの任意の組合せである賦形剤を含む。さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、該無機ニトライトを遅延放出させるための製薬上許容される賦形剤(例えば、pH感受性ポリマー、又は、生物分解性ポリマー)を含んでおり、それによって、ヒト対象に経口投与されたときに、該無機ニトライトは当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されない。さらなる実施形態では、腸溶コーティングは、該無機ニトライトを遅延放出させるための製薬上許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、該製薬上許容される賦形剤は、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース又は「Eudragit(登録商標) L」若しくは「Eudragit(登録商標) S」である。さらなる実施形態では、該医薬組成物は、さらに、ポリエチレングリコール及び/又は可塑剤も含む。
【0010】
一部の実施形態では、該医薬組成物は、多粒子(multiparticulate)投与剤形である。特定の実施形態では、該多粒子投与剤形は、ペレット剤又は顆粒剤を包含する。さらなる実施形態では、該ペレット剤又は顆粒剤は、生物分解性ポリマー(例えば、多糖、例えば、アルギン酸塩、ペクチン、カラギーナン、キトサン、デキストラン、セラック、又は、キサンタンガム、又は、それらの任意の混合物)を含むコーティング層でコーティングされている。
【0011】
第2の態様において、本発明は、有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ及び無機ニトライトを遅延放出させるための製薬上許容される賦形剤を含む(それによって、ヒト対象に経口投与されたときに、該無機ニトライトは当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されない)経口投与用に製剤化された医薬組成物に関する。特定の実施形態では、該医薬組成物は、錠剤又はカプセル剤である。
【0012】
第3の態様において、本発明は、(a)有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ;及び、(b)腸溶コーティング層を含む、経口投与に適した医薬組成物を対象とする。好ましくは、該医薬組成物は、ヒト対象に投与されたときに、該無機ニトライトが当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されないように、製剤化されている。
【0013】
特定の実施形態では、該医薬組成物をヒトに投与することにより、血漿濃度が0.05μM〜10μM(例えば、0.1μM〜10μM、0.5μM〜5μM、0.1μM〜3μM、又は、0.1μM〜1μM)に維持される。
【0014】
別の実施形態では、該無機ニトライトは、ヒトの体重1kg当たり0.1μg〜10mg(例えば、1μg〜5mg/kg、0.05〜10mg/kg、0.1〜5mg/kg、0.5〜5mg/kg、0.5〜3mg/kg、0.1〜1.5mg/kg、0.1〜0.35mg/kg、0.35〜0.75mg/kg、又は、0.75〜1mg/kg)の用量で投与される。さらに別の実施形態では、該用量は、0.25mg/kg、0.5mg/kg又は1mg/kgである。
【0015】
さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、0.5〜5.0mmol(例えば、1.0〜4.0mmol)の亜硝酸イオン(NO2-)を含む。
【0016】
特定の実施形態では、該亜硝酸イオンは、NaNO2、KNO2又は亜硝酸アルギニンとして提供される。さらなる実施形態では、該亜硝酸イオンは、NaNO2として提供される。
【0017】
別の実施形態では、該腸溶コーティング層は、製薬上許容される賦形剤(ここで、該賦形剤は、pH感受性ポリマー又は生物分解性ポリマーである)を含む。
【0018】
さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、錠剤又はカプセル剤である。
【0019】
上記態様の何れにおいても、亜硝酸イオンの血漿濃度は、最大で14時間(例えば、4〜14時間、6〜12時間、又は、6〜10時間)にわたって、維持される。血漿濃度が維持される期間は、例えば、血漿濃度がピークにある時間の間及び/又はその後であり得る。一部の実施形態では、亜硝酸イオンの30〜50%が最初の1時間に放出され、硝酸イオン(nitrate ion)の残部はその後の2〜14時間で放出される。
【0020】
別の態様において、本発明は、ヒトにおける慢性組織虚血を治療又は予防する方法を対象とする。好ましくは、該方法は、本明細書中に記載されている医薬組成物の何れかをヒトに投与することを含む。特定の実施形態では、該投与は、経口である。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、患者の体内において見いだされる循環ニトライトの不足を補う方法を対象とし、ここで該方法は、本明細書中に記載されている医薬組成物の何れかをヒトに投与することを含む。
【0022】
本発明は、ニトライト(例えば、無機ニトライト)の医薬組成物、及び、慢性組織虚血(これは、疾患、外傷又は先天的欠損に関連した慢性組織虚血を包含する)を治療するための該組成物の使用に関する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「遅延放出(delayed release)」は、実質的にそのままで胃を通過し、小腸及び/又は大腸(例えば、結腸)の中で溶解する医薬調製物(例えば、経口投与製剤)を意味する。一部の実施形態では、活性薬剤(例えば、本明細書中に記載されているニトライト)の遅延放出は、経口薬(例えば、経口投与剤形)の腸溶コーティングを使用することによる。
【0024】
薬剤の「有効量」という用語は、本明細書中で使用される場合、臨床的な結果などの有益な又は望ましい結果をもたらすのに充分な量であり、そして、そのようなものとして、「有効量」は、その用語が使用されている状況によって決まる。
【0025】
用語「持続放出(extended release)」又は「持続放出(sustained release)」は、同義であって、同じ薬物の即時放出製剤と比較して薬物を長期間(例えば、6〜12時間又はそれ以上)にわたって徐々に放出する薬物製剤を意味する。好ましくは、必須ではないが、長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中濃度(これは、治療レベルの範囲内にあり、そして、ピーク血漿濃度範囲、例えば、0.05〜10μM、0.1〜10μM、0.1〜5.0μM又は0.1〜1μMの範囲内にある)をもたらす。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「腸内放出用に製剤化された(formulated for enteric release)」及び「腸溶性製剤(enteric formulation)」は、胃の強酸性(低pH)環境内における溶解からの保護を提供し得る経口投与用の医薬組成物(例えば、経口投与剤形)を意味する。腸溶性製剤は、例えば、当該医薬組成物の中に胃液中での溶解に抵抗性を示すポリマーを組み入れることによって、得ることができる。一部の実施形態では、該ポリマーの溶解に最適なpHは、約5.0〜7.0の範囲内にある(「pH感受性ポリマー」)。代表的なポリマーとしては、「Eudragit(登録商標)」(例えば、「Eudragit(登録商標) L100」、「Eudragit(登録商標) S100」、「Eudragit(登録商標) L-30D」、「Eudragit(登録商標) FS 30D」及び「Eudragit(登録商標) L100-55」)の商品名で知られているメタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート(例えば、「Coateric(登録商標)」)、フタル酸ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはセラック又はそれらの水性分散液などを挙げることができる。上記ポリマーの水性分散液としては、酢酸フタル酸セルロースの分散液(「Aquateric(登録商標)」)又はセラックの分散液(例えば、「MarCoat 125」及び「MarCoat 125N」)などがある。腸溶性製剤は、投与された用量の胃の中に放出される割合を、即時放出製剤と比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は、少なくとも98%までも、低減させる。そのようなポリマーで錠剤又はカプセル剤を被覆する場合、その被覆は、「腸溶コーティング(enteric coating)」とも称される。
【0027】
用語「医薬組成物」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載されている化合物(例えば、無機ニトライト又はその製薬上許容される任意の塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ)を含んでいて、製薬上許容される賦形剤を用いて製剤化され、典型的には、哺乳動物の疾患を治療するための治療計画(therapeutic regimen)の一部分として政府監督官庁の承認を得て製造及び販売されている、組成物を意味する。医薬組成物は、例えば、単位投与剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルキャップ剤又はシロップ剤)で経口投与するために製剤化することが可能であり;局所投与するために(例えば、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤又は軟膏剤として)製剤化することが可能であり;静脈内投与するために(例えば、静脈内での使用に適した溶媒系の中の粒状塞栓を含まない無菌溶液として)製剤化することが可能であり;又は、本明細書中に記載されている別の任意の剤形に製剤化することが可能である。
【0028】
「製薬上許容される賦形剤」は、本明細書中で使用される場合、患者の体内において無毒性且つ非炎症性であるという特性を有している、本明細書中に記載されている化合物以外の任意の成分(例えば、当該活性化合物を懸濁又は溶解させることが可能なビヒクル)を意味する。賦形剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる:接着防止剤、酸化防止剤、結合剤、被覆剤、圧縮助剤(compression aid)、崩壊剤、染料(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、膜形成剤若しくはフィルムコーティング剤、矯味矯臭薬(flavor)、香料(fragrance)、流動促進剤(glidant)(流動強化剤(flow enhancers))、滑沢剤、防腐剤、印刷インク(printing ink)、吸着剤、懸濁剤若しくは分散剤(suspensing or dispersing agent)、甘味料、又は、水和水(waters of hydration)。代表的な賦形剤としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル メチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マルトース、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファデンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クエン酸ナトリウム、ナトリウムデンプングリコレート、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミン A、ビタミン E、ビタミン C、及び、キシリトール。
【0029】
用語「製薬上許容されるプロドラッグ」は、本明細書中で使用される場合、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを有さず、合理的なベネフィット/リスク比に相応し、及び、それらの意図された用途に対して有効である、健全な医学的判断の範囲内においてヒト及び動物の組織に接触させて使用するのに適している本発明化合物のプロドラッグ、並びに、可能である場合には、本発明化合物の両性イオン性形態を意味する。
【0030】
用語「製薬上許容される塩」は、本明細書中で使用される場合、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを有さず、及び、合理的なベネフィット/リスク比に相応する、健全な医学的判断の範囲内においてヒト及び動物の組織に接触させて使用するのに適している塩を意味する。製薬上許容される塩は、当技術分野においては良く知られている。例えば、製薬上許容される塩は、「Berge et al., J. Pharmaceutical Sciences 66:1-19, 1977」及び「Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, (Eds. P.H. Stahl and C.G. Wermuth), Wiley-VCH、2008」に記載されている。該塩は、本発明化合物の最終的な単離及び精製の間にその場で調製することができるか、又は、独立して、その遊離塩基性基(base group)を適切な有機酸又は無機酸と反応させることによって調製することができる。代表的酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩(heptonate)、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩塩などがある。代表的なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオンなどがあり、さらに、無毒性アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン及びアミンカチオン(これらは、限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを包含する)などがある。
【0031】
用語「製薬上許容される溶媒和物」又は「溶媒和物」は、本明細書中で使用される場合、適切な溶媒の分子がその結晶格子の中に組み込まれている本発明化合物を意味する。適切な溶媒は、投与された薬量において生理学的に許容され得る。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水又はそれらの混合物を含む溶液から結晶させるか、再結晶させるか又は沈澱させることによって調製することができる。適切な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジルなどである。水が当該溶媒である場合、該溶媒和物は、「水和物」と称される。
【0032】
用語「予防する」は、本明細書中で使用される場合、疾患、障害又は本明細書中に記載されている状態(例えば、慢性組織虚血)の1以上の症状又は状態を防止する予防的治療又は治療を意味する。治療は、例えば、疾患、障害又は状態の発症に先行するイベントに先立って(「暴露前発症予防」)又はそのようなイベントの後で(「暴露後発症予防」)、開始することができる。本発明の化合物又はその医薬組成物を投与することを包含する治療は、急性的、短期間又は長期にわたるものであり得る。投与される用量は、予防的治療の過程において変えることができる。
【0033】
用語「プロドラッグ」は、本明細書中で使用される場合、上記式で表される親化合物にインビボで急速に変換される化合物を意味する。プロドラッグは、ヒトに投与されたときに体内で亜硝酸イオン(NO2-)又は亜酸化窒素(NO)を形成する、生物学的に同等な化合物も包含する。「T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series」及び「Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987」において充分な議論がなされている(これらは、それぞれ、参照により本明細書に組み入れられる)。好ましくは、本発明の化合物のプロドラッグは、EP 1336602A1(これは、参照により本明細書に組み入れられる)記載されているもののような、製薬上許容されるものである。
【0034】
本明細書中で使用される場合、及び、当技術分野において良く理解されているように、「治療(treatment)」は、臨床的な結果などの有益な又は望ましい結果を得るためのアプローチである。有益な又は望ましい結果としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:1以上の症状又は状態の軽減又は改善;疾患、障害又は状態の程度の低減;疾患、障害又は状態の安定化された(即ち、悪化していない)状態;疾患、障害又は状態の蔓延の防止;疾患、障害又は状態の進行の遅延又は進行速度の低下;疾患、障害又は状態の改善又は緩和;及び、検出可能又は検出不可能な寛解(部分的又は総合的)。「治療(treatment)」は、治療を受けなかった場合に期待される生存と比較して生存を延長することも意味する。本明細書中で使用される場合、用語「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、当該用語が適用される疾患若しくは状態又はそのような疾患若しくは状態の1以上の症状の発症を遅らせること、当該用語が適用される疾患若しくは状態又はそのような疾患若しくは状態の1以上の症状の進行を遅延若しくは逆転させること、又は、当該用語が適用される疾患若しくは状態又はそのような疾患若しくは状態の1以上の症状を軽減することも意味し得る。
【0035】
用語「単位投与剤形(unit dosage form)」は、ヒト対象及び別の哺乳動物に対する単位投与として適した物理的に分離されている単位(ここで、各単位は、任意の適切な1種類又は複数種類の製薬用賦形剤と協力して所望される治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を含む)を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「血漿濃度(plasma concentration)」は、治療された対象の血漿中に存在している亜硝酸イオンの量(例えば、以下に記載されているアッセイを用いてウサギにおいて測定された亜硝酸イオンの量、又は、ヒト体内における亜硝酸イオンの量)を意味する。
【0037】
本発明の別の特徴及び有利点は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、制御放出製剤(1)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図2】図2は、制御放出製剤(2)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図3】図3は、制御放出製剤(5)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図4】図4は、制御放出製剤(9)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図5】図5は、制御放出製剤(9C)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図6】図6は、制御放出製剤(10C)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図7】図7は、制御放出製剤(12)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図8】図8は、制御放出製剤(12C)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図9】図9は、制御放出製剤(13)に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図10】図10は、対照の即時放出製剤に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験から得られた結果を示す図である。
【図11】図11は、ウサギ体内における製剤(100A)、製剤(200A)及び製剤(300A)に関する総NOxの放出プロフィールを示す図である。
【図12】図12は、ウサギ体内における製剤(100A)、製剤(200A)及び製剤(300A)に関するニトレート(nitrate)、ニトロソチオール類、ニトロソヘム(nitrosoheme)及びニトロソアミン類の放出プロフィールを示す図である。
【図13】図13は、ウサギ体内における製剤(100A)、製剤(200A)及び製剤(300A)に関する遊離ニトライトの放出プロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、ニトライト(例えば、無機ニトライト)の生理学的に許容される組成物、及び、例えば慢性組織虚血性疾患などに罹患していると診断された患者に対して前記組成物を投与し得る方法を対象とする。
【0040】
ニトライト
無機ニトライト
本発明の製薬上許容される組成物は、無機ニトライト〔例えば、亜硝酸(HNO2)の塩若しくはエステル〕又はその製薬上許容される塩を含む。亜硝酸塩としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)の塩;アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム及びバリウム)の塩;並びに、有機塩基(例えば、アミン塩基)及び無機塩基の塩。本発明の化合物は、中間体又は最終化合物の中に存在している原子の全ての同位体も包含する。同位体は、原子番号は同一であるが質量数が異なっている原子を包含する。例えば、水素の同位体には、三重水素及び重水素が包含される。用語「化合物」は、任意の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグに関連して本明細書中で使用される場合。全ての化合物及びその製薬上許容される塩は、溶媒和(例えば、水和)形態も包含することが意図されている。ニトライトは、化学式「NO2-」で表され、水中でイオンとして存在し得る。亜硝酸ナトリウムは、化学式「NaNO2」で表され、典型的には、水中で溶解してナトリウムイオン「Na+」及び亜硝酸イオン「NO2-」を形成する。さらに、本発明がニトライト化合物のそのような全ての溶媒和形態(例えば、水和物)を包含することも理解される。代表的なニトライト化合物は、WO 2008/105730(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
【0041】
亜硝酸ナトリウムに加えて、代表的な無機ニトライト化合物としては、以下のものを挙げることができる:亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)、亜硝酸バリウム(Ba(NO2)2;例えば、無水亜硝酸バリウム又は亜硝酸バリウム一水和物)、亜硝酸カルシウム(Ca(NO2)2;例えば、無水亜硝酸カルシウム又は亜硝酸カルシウム一水和物)、亜硝酸セシウム(CsNO2)、亜硝酸コバルト(II)(Co(NO2)2)、亜硝酸コバルト(III)カリウム(CoK3(NO2)6;例えば、亜硝酸コバルト(III)カリウムセスキ水和物)、亜硝酸リチウム(LiNO2;例えば、無水亜硝酸リチウム又は亜硝酸リチウム一水和物)、亜硝酸マグネシウム(MgNO2;例えば、亜硝酸マグネシウム三水和物)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸ルビジウム(RbNO2)、亜硝酸銀(I)(AgNO2)、亜硝酸ストロンチウム(Sr(NO2)2)、及び、亜硝酸亜鉛(Zn(NO2)2)。
【0042】
本発明の化合物は、化学合成の当業者に知られているさまざまな方法で調製することができる。亜硝酸塩を調製する方法は当技術分野においてはよく知られており、そして、広範な前駆物質及び亜硝酸塩を商業的に容易に入手することができる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)の混合物を対応する金属水酸化物溶液と反応させることにより合成することがで可能であり、及び、対応する硝酸塩を熱分解に付すことによっても合成することが可能である。別のニトライト類は、対応するニトレート類を還元することによって得ることができる。
【0043】
本発明の化合物は、容易に入手可能な出発物質から、当技術分野において知られている方法及び手順を用いて調製することができる。典型的な又は好ましいプロセス条件(即ち、反応温度、反応時間、反応体のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、特に別途示されていない限り、別のプロセス条件も使用可能であるということは理解されるであろう。最適な反応条件は、使用する特定の反応体又は溶媒によってさまざまであり得るが、そのような条件は、日常的な最適化手順によって当業者が決定し得る。
【0044】
適切な製薬上許容される塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カルシウムなどを挙げることができる。代表的なさらに別の塩は、「Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418」、「Berge et al., J. Pharmaceutical Sciences 66: 1-19, 1977」及び「Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, (Eds. P.H. Stahl and C.G. Wermuth), Wiley-VCH, 2008」の中に見いだされる(これらは、それぞれ、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。
【0045】
医薬組成物
本発明の製薬上許容される組成物は、無機ニトライト〔例えば、亜硝酸(HNO2)の塩、例えば、NaNO2〕又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを含む。医薬品として使用される場合、本発明の化合物は、いずれも、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、製薬の技術分野でよく知られている方法で調製することが可能であり、及び、局所療法又は全身療法の何れが望ましいかに応じて、及び、治療対象の領域に応じて、さまざまな経路によって投与することができる。投与は、局所投与、非経口投与、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、眼窩内投与、眼内投与、脳室内投与、嚢内投与、髄腔内投与、槽内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エーロゾル投与、坐剤による投与又は経口投与であり得る。
【0046】
本発明は、さらに、1種類以上の製薬上許容される担体を含むことが可能な医薬組成物も包含する。本発明の医薬組成物の製造においては、活性成分を典型的には賦形剤と混合させるか、賦形剤で希釈するか、又は、例えばカプセル、サシェ、紙若しくは別の容器などの形態にある担体の中に封入する。賦形剤が希釈剤として使用される場合、それは、固体物質、半固体物質又は液体物質(例えば、正常食塩水)であることができ、活性成分のためのビヒクル、担体又は媒体として作用する。かくして、該組成物は、錠剤、粉末剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、エマルション剤、溶液剤、シロップ剤、軟ゼラチンカプセル剤及び硬ゼラチンカプセル剤の形態にあることができる。当技術分野においては知られているように、希釈剤の種類は、意図される投与経路に応じて、さまざまであり得る。このようにして得られた組成物には、防腐剤などの付加的な作用剤も含ませることができる。
【0047】
本発明の治療薬は、単独で投与し得るか、又は、製薬上許容される賦形剤又は担体の存在下で混合して投与し得る。賦形剤又は担体は、投与方法及び投与経路に基づいて選択される。適切な製薬用担体、及び、医薬製剤中で使用するための製薬用必須物質は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Gennaro, Ed., Lippencott Williams & Wilkins (2005)」(これは、当分野においてよく知られている参考テキストである)及び「USP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)」に記載されている。製剤の調製においては、当該活性化合物は、残りの成分と合する前に、摩砕して適切な粒径とすることができる。当該活性化合物が実質的に不溶性である場合、それは、摩砕して200メッシュ未満の粒径とすることができる。当該活性化合物が実質的に水溶性である場合、製剤中で実質的に均質に分配されるように摩砕によって粒径を調節することができる(例えば、約40メッシュ)。
【0048】
適切な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン類、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩類、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースである。該製剤は、付加的に、以下のものを含有することができる:平滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;防腐剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル;甘味剤;及び、矯味矯臭剤。代表的な別の賦形剤は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients, 6th Edition, Rowe et al., Eds., Pharmaceutical Press (2009)」に記載されている。
【0049】
該医薬組成物は、硝酸塩若しくはそのプロドラッグ又は別の治療薬を含有し得る。代表的な硝酸塩は、WO 2008/105730に記載されている。本明細書中に記載されている組成物の中に含ませ得る代表的な治療薬は、心血管治療薬(therapeutics)(例えば、抗血栓薬(例えば、ジピリダモール、クロピドグレルなど)、抗高血圧薬(例えば、Ca++チャンネル遮断薬、AT-2遮断薬、ACE阻害薬など)、抗コレステロール薬(例えば、スタチン類、フィブラート類など)及びチアゾリジンジオン系治療薬である。
【0050】
該医薬組成物は、患者に投与されたあとで、当技術分野において知られている方法を用いて活性成分を即時放出するように又は長期間にわたって放出するように又は遅延放出するように、製剤化することができる。
【0051】
該組成物は、各投与量が例えば0.1〜500mgの活性成分を含む、単位投与剤形に製剤化することができる。例えば、該投与量は、約0.1mg〜約50mg、約0.1mg〜約40mg、約0.1mg〜約20mg、約0.1mg〜約10mg、約0.2mg〜約20mg、約0.3mg〜約15mg、約0.4mg〜約10mg、約0.5mg〜約1mg、約0.5mg〜約100mg、約0.5mg〜約50mg、約0.5mg〜約30mg、約0.5mg〜約20mg、約0.5mg〜約10mg、約0.5mg〜約5mg、約1mg〜約50mg、約1mg〜約30mg、約1mg〜約20mg、約1mg〜約10mg、約1mg〜約5mg、約5mg〜約50mg、約5mg〜約20mg、約5mg〜約10mg、約10mg〜約100mg、約20mg〜約200mg、約30mg〜約150mg、約40mg〜約100mg、約50mg〜約100mgの活性成分、約50mg〜約300mg、約50mg〜約250mg、約100mg〜約300mg、又は、約100mg〜約250mgの活性成分を含む。錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分を1種類以上の製薬用賦形剤と混合させて、本発明化合物の均質な混合物を含む固体バルク製剤組成物を形成させる。これらのバルク製剤組成物を均質であると称する場合、当該組成物が錠剤又はカプセル剤などの等しく有効な単位投与剤形に容易に分割され得るように、該活性成分は典型的には組成物全体に一様に分散されている。この固体バルク製剤を、次いで、例えば0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含む上記タイプの単位投与剤形に分割する。
【0052】
経口投与用組成物
本発明によって意図されている医薬組成物には、経口投与用に製剤化された医薬組成物(「経口投与剤形」)が包含される。経口投与剤形は、例えば、当該活性成分(1種類又は複数種類)を無毒性の製薬上許容される賦形剤と混合された状態で含む錠剤、カプセル剤、液体の溶液剤若しくは懸濁液剤、粉末剤又は液体若しくは固体の結晶の形態にあり得る。これらの賦形剤は、以下のものであり得る:例えば、不活性な希釈剤又は増量剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、デンプン類、例えば、ジャガイモデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又は、リン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、セルロース誘導体、例えば、微結晶性セルロース、デンプン類、例えば、ジャガイモデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩類、又は、アルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファデンプン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又は、ポリエチレングリコール);並びに、平滑剤、流動促進剤及び接着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、又は、タルク)。別の製薬上許容される賦形剤は、着色剤、矯味矯臭薬、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などであり得る。
【0053】
経口投与用の製剤は、咀嚼錠として、又は、硬ゼラチンカプセル剤(ここで、該活性成分は、不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又は、カオリン)と混合されている)として、又は、軟ゼラチンカプセル剤(ここで、該活性成分は、水又は油性媒体(例えば、ラッカセイ油、動パラフィン、又は、オリーブ油)と混合されている)として、提供することもできる。粉末剤、顆粒剤及びペレット剤は、錠剤及びカプセル剤の下で上記で挙げられている成分を使用し、慣習的な方法で、例えば、混合機、流動床装置又は噴霧乾燥装置などを用いて、調製することができる。
【0054】
経口用途用の制御放出組成物は、活性薬物物質の溶解及び/又は拡散を制御することによって活性薬物を放出するように構築することができる。制御放出及び目標とする血漿濃度対時間プロフィールを達成するために、多くの方法のうちの何れも実施することができる。一例を挙げれば、制御放出は、さまざまな製剤パラメータ及び成分(これは、例えば、さまざまなタイプの制御放出組成物及びコーティングなどを包含する)を適切に選択することによって達成される。かくして、薬物は、適切な賦形剤を用いて、投与されたときに制御された方法で薬物を放出する医薬組成物に製剤化される。その例としては、単一若しくは複数の単位錠剤組成物又はカプセル剤組成物、油溶液剤、懸濁液剤、エマルション剤、マイクロカプセル剤、ミクロスフェア剤、ナノ粒子剤、貼付剤及びリポソーム剤などを挙げることができる。特定の実施形態では、組成物は、生物分解性のpH感受性及び/又は温度感受性ポリマーコーティングを含む。
【0055】
溶解制御放出又は拡散制御放出は、化合物の錠剤製剤、カプセル製剤、ペレット製剤若しくは顆粒製剤に適切なコーティングを施すことによって、又は、該化合物を適切なマトリックスの中に組み込むことによって、達成することができる。制御放出コーティングは、上記で挙げられているコーティング物質のうちの1種類以上、並びに/又は、例えば、セラック、蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、硬化ひまし油(castor wax)、カルナウバ蝋、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクルリレート、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル、1,3 ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート及び/若しくはポリエチレングリコールを含有し得る。制御放出マトリックス製剤においては、該マトリックス物質は、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバ蝋及びステアリルアルコール、carbopol 934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリル、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及び/又はハロゲン化フルオロカーボンなどを含有し得る。
【0056】
本発明の化合物及び組成物を組み入れることが可能な経口投与用の液体形態としては、水溶液、適切に風味を付けたシロップ、水性又は油性の懸濁液、及び、食用油(例えば、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油又はラッカセイ油)で風味が付けられているエマルション、並びに、エリキシル及び類似した製薬用ビヒクルなどがある。
【0057】
コーティング
本発明の経口送達用に製剤化された医薬組成物(例えば、錠剤又はカプセル剤)は、コーティングを施すか又は調合して、遅延放出又は長期にわたる放出の有利点をもたらす投与剤形とすることができる。該コーティングは、該活性薬物物質を予め定められたパターンで放出するように(例えば、制御放出製剤を達成するために)適合させることができるか、又は、例えば腸溶コーティング(例えば、pH感受性ポリマー(「pH制御放出(pH controlled release)」)、膨潤、溶解若しくは侵食の速度が遅いか又は膨潤、溶解若しくは侵食の速度がpH依存性であるポリマー(「時間制御放出(time-controlled release)」)、酵素によって分解されるポリマー(「酵素制御放出(enzyme-controlled release)」又は「生物分解性放出(biodegradable release)」)、及び、圧力が増大することにより破壊されるフィルム層を形成するポリマー(「圧力制御放出(pressure-controlled release)))を使用して、胃を通過し終えるまで活性薬物物質を放出しないように適合させることができる。本明細書中に記載されてる医薬組成物の中で使用することが可能な代表的な腸溶コーティングとしては、糖衣、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンに基づくフィルムコーティング)、又は、メタクリル酸コポリマー、フタル酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セラック及び/若しくはエチルセルロースに基づくコーティングなどがある。さらに、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの、時間遅延物質(time delay material)を使用することもできる。
【0058】
例えば、錠剤又はカプセル剤は、内部用量成分(inner dosage component)及び外部用量成分(outer dosage component)を含むことが可能であり、ここで、後者は、前者を包む外皮の形態にある。この2つの成分は、腸溶性層(ここで、該腸溶性層は、胃の内部において分解に対して絶える働きをして、該内部成分が完全な状態で十二指腸内に入ることを可能とするか、又は、該内部成分の放出の遅延を可能とする)によって分離され得る。
【0059】
腸溶コーティングが使用される場合、望ましくは、当該薬物の実質的な量は、下部消化管において放出される。
【0060】
遅延放出又は長期にわたる放出をもたらすコーティングに加えて、固体錠剤組成物は、望ましくない化学的変化(例えば、活性薬物物質を放出する前の化学的分解)から当該組成物を保護するように適合されたコーティングも含み得る。該コーティングは、「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, vols. 5 and 6, Eds. Swarbrick and Boyland, 2000」に記載されている方法と同様の方法で固体投与剤形に施すことができる。
【0061】
結腸において薬物を放出させるための製剤
一部の実施形態では、結腸を目標とする薬物送達システムを使用することが可能である。代表的なアプローチとしては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:
(a) 薬物を担体と共有結合させて、胃及び小腸の中では安定であり且つ大腸の中で腸内微生物叢(intestinal microflora)による酵素的変換を受けて薬物を放出するプロドラッグを形成させること;そのようなプロドラッグの例としては、アゾ-コンジュゲート、シクロデキストリン-コンジュゲート、グリコシド-コンジュゲート、グルクロネートコンジュゲート、デキストラン-コンジュゲート、ポリペプチド及びポリマーコンジュゲートなどを挙げることができる;
(b) そのままの分子を結腸まで送達するアプローチ、例えば、中性pH若しくはアルカリ性pHで薬物を放出するpH感受性ポリマーによるコーティング、又は、結腸内で細菌による分解を受けて薬物を放出する生物分解性ポリマーによるコーティング;
(c) pH又は生物分解に応答して薬物を放出する生物分解性マトリックス及びヒドロゲルの中に薬物を埋め込むこと;
(d) 時間放出システム(time released systems)〔該時間放出システムにおいては、多層コーティングされた製剤が胃を通過したあとで、3〜5時間(これは、小腸を通過する時間に相当する)の遅延時間(lag time)が経過した後、薬物が放出される〕;
(e) アゾポリマーとジスルフィドポリマーの組合せが結腸の酸化還元電位に応答して薬物を放出させる酸化還元感受性ポリマー(redox-sensitive polymers)の使用;
(f) 結腸粘膜に選択的に付着して薬物を徐々に放出する生体付着性ポリマー(bioadhesive polymers)の使用;及び、
(g) 浸透圧に起因して半透膜を通して薬物が放出される浸透性制御薬物送達(osmotic controlled drug delivery)。
【0062】
非経口投与
本発明の範囲内には、生物分解性ポリマーによる非経口デポーシステム(parenteral depot systems)もある。これらのシステムは、筋肉又は皮下組織の中に注入されるか又は埋め込まれてそのシステムの中に組み入れられている薬物を数日間から数ヶ月間に及ぶ長期間にわたって放出する。ポリマーの特徴と装置の構造は、両方とも、連続的又は拍動的であり得る放出動力学を制御することができる。ポリマーに基づく非経口デポーシステムは、インプラント又は微粒子として分類され得る。前者は、皮下組織の中に注入される円筒形の装置であり、後者は、10〜100μmの範囲内にある球形粒子として定義される。押出成形、圧縮成型又は射出成形を用いてインプラントを製造するのに対して、微粒子に関しては、多くの場合、相分離法、噴霧乾燥法及び水中油中水エマルション法が使用される。微粒子を形成させるために最も一般的に使用される生物分解性ポリマーは、乳酸及び/又はグリコール酸から得られるポリエステル類、即ち、ポリ(グリコール酸)及びポリ(L-乳酸)(PLG/PLAミクロスフィア)である。特に興味深いのは、その場で形成させるデポーシステム、例えば、固化させることにより若しくは冷却することにより若しくはゾルゲル転換により形成される熱可塑性ペースト及びゲル化システム、架橋システム並びに両親媒性脂質によって形成される有機ゲルである。上記システムの中で使用される熱感受性ポリマーの例としては、N-イソプロピルアクリルアミド、ポロキサマー類(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188及びポロキサマー407)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、ポリ(シロエチレングリコール)(poly(siloethylene glycol))、ポリホスファゼン誘導体及びPLGA-PEG-PLGAなどがある。
【0063】
投与計画
慢性組織虚血を治療するための本発明の方法は、虚血性組織の中で新生血管の成長をもたらすのに充分な期間にわたり充分な量の無機ニトライトを投与することによって、実施する。
【0064】
該組成物の投与量及び投与頻度は、例えば、投与されるもの、患者の状態及び投与方法などに応じて、さまざまであり得る。治療における適用において、組成物は、慢性組織虚血を患っている患者に、慢性組織虚血の症状及びその合併症を軽減するか又は少なくとも部分的に軽減するのに充分な量で投与され得る。その投与量は、慢性組織虚血の進行の型及び程度、慢性組織虚血の重症度、特定の患者の年齢、体重及び全般的な健康状態、選択された組成物の相対的な生物学的効力、賦形剤の製剤、投与経路並びに担当の臨床医による判断などのような変動要素に左右されると考えられる。効果的な投与量は、インビボ試験系又は動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定され得る。有効な用量は、例えば、慢性組織虚血の徴候若しくは症状を改善するか又はその進行を遅くすることなどによって、望ましい臨床転帰をもたらす用量である。
【0065】
用量当たりの無機ニトライトの量は、さまざまであり得る。例えば、対象は、約0.1μg/kg〜約10,000μg/kgを受け得る。一般に、該ニトライトは、ピーク血漿濃度が150nMから250μMまで及ぶ量で投与される。代表的な投与量は、0.1〜5000μg/kg、100〜1500μg/kg、100〜350μg/kg、340〜750μg/kg又は750〜1000μg/kgの間に入り得る。代表的な投与量は、0.25、0.5、0.75又は1mg/kgであり得る。代表的なピーク血漿濃度は、0.05〜10μM、0.1〜10μM、0.1〜5.0μM又は0.1〜1μMであり得る。そのピーク血漿濃度は、6〜14時間(例えば、6〜12時間又は6〜10時間)維持され得る。
【0066】
治療の頻度もさまざまであり得る。対象は、1日当たり1回以上(例えば、1回、2回、3回、4回又はそれより多い回数)治療され得るか、特定の時間毎に(例えば、約2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎又は24時間毎)治療され得る。好ましくは、該医薬組成物は、24時間当たり1〜2回投与される。治療の時間経過は、さまざまな継続期間、例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間又はそれより長い日数であり得る。例えば、該治療は、1日当たり2回で3日間、1日当たり2回で7日間、1日当たり2回で10日間であり得る。治療周期は、間をおいて、例えば、週1回、月2回又は月1回、反復することができ、そして、その治療周期は、治療が施されない期間によって分離される。該治療は、単回治療であり得るか、又は、当該対象の生涯の間(例えば、何年もの間)継続し得る。
【0067】
キット
本明細書中に記載されている本発明の医薬組成物は、いずれも、一式の使用説明書と一緒に使用され得る、即ち、キットを形成し得る。該キットは、本明細書中に記載されている治療として該医薬組成物を使用するための使用説明書を含有し得る。例えば、該使用説明書は、慢性組織虚血を軽減させるために本発明の化合物を使用するための投与計画及び治療計画を提供し得る。
【0068】
治療方法
栄養補給としてのニトライト
血漿ニトライト濃度は、最大数の危険因子を有し、血漿ニトライトの濃度が最も低い対象において、心臓血管の危険因子と逆相関性を有することが示されている(Kleinbongard et al., Free Radical Biology & Medicine 40: 295-302,2006)。正常の対象においては、運動することによって貯蔵されているニトライトが血漿中に放出され、血漿ニトライトの濃度が上昇する;しかしながら、糖尿病患者及びPAD患者おいては、運動は血漿ニトライトの濃度を上昇させず、実際には、循環ニトライト濃度がさらに低下する(Allen et al., Nitric Oxide 20: 231-237, 2009)。かくして、ニトライトの栄養補給は、心臓血管障害及び血管障害における血漿ニトライト濃度の不足、及び、ニトライトと一酸化窒素の関係を仮定すれば、上記疾患で認められる一酸化窒素の不足、又は、ニトライトの食餌性欠乏に起因する血漿ニトライト濃度の不足を克服する上で有効であると考えられる。
【0069】
本発明は、特に、心血管疾患、代謝性疾患、炎症性疾患又は血管疾患における、予防的及び治療的な栄養補給のための、ニトライト(例えば、無機ニトライト)又はその製薬上許容されるプロドラッグの栄養学的組成物を提供する。特定的には、本発明は、糖尿病、末梢性動脈疾患、慢性感染症、急性感染症、鬱血性心不全、アテローム動脈硬化性心血管疾患、間欠性跛行、重症下肢虚血性疾患(critical limb ischemic disease)、不完全な創傷治癒、卒中、心筋梗塞、炎症性腸疾患、骨折、骨感染症若しくは末梢神経障害、幹細胞疾患を患っている及び/又は食事制限をされている患者において観察される栄養不足を補足するために使用することが可能な、ニトライト(例えば、無機ニトライト)又はその製薬上許容されるプロドラッグの新規組成物に関する。さらに、該組成物は、血漿ニトライト濃度又は血漿一酸化窒素濃度を低下させる疾患状態を患っている患者の栄養不足を治療するためにも使用し得る。
【0070】
炎症性疾患
本明細書中に記載されている医薬組成物及び方法を使用して、先天性及び後天性の炎症性疾患を治療することができる。本発明の方法に包含される炎症性疾患は、炎症を引き起こす広範な医学的状態から生じ得る。本発明において記載されている組成物及び方法によって治療することが可能な炎症性疾患の1つのタイプは、免疫-炎症性疾患である。免疫-炎症性疾患の例としては、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、移植拒絶反応、敗血症、急性呼吸窮迫症候群、喘息及び癌などを挙げることができる。本発明において記載されている組成物及び方法によって治療することが可能な炎症性疾患の別のタイプは、自己免疫疾患である。自己免疫疾患の例としては、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、狼瘡、ブドウ膜炎及び慢性肝炎などのような状態を挙げることができる。別の炎症性疾患も本発明において記載されている組成物及び方法によって治療することが可能であり、ここで、そのような別の炎症性疾患としては、外傷、酸化的ストレス、細胞死、放射線による損傷、虚血、再潅流、癌、移植拒絶反応及びウイルス感染症に起因する状態などを挙げることができる。
【0071】
組織再生
例えば、外傷、瘢痕化、異常タンパク質沈着、アミロイド症、虚血若しくは糖尿病、感染症又は外科的処置のような状態又は組織に損傷を生じるヘルニア、心臓障害及び胃腸障害のような先天性奇型に起因して組織又は器官が損傷を受けた後で、本明細書中に記載されている医薬組成物及び方法を用いて組織の再生を刺激することができる。
【0072】
慢性組織虚血
慢性組織虚血は、体の一部分又は体の一部分を含む組織に対する血流の部分的な、実質的に全体的な又は全体的な低減をもたらす広範な医学的状態と関連していて、疾患、傷害又は未知の原因の結果であり得る。また、慢性組織虚血は、個人の遺伝子構成に影響され得る。慢性組織虚血へと至る医学的状態に関係なく、慢性組織虚血を患っている患者は、本明細書中に記載されている無機ニトライトを含む製薬上許容される組成物を用いた治療の対象である。治療は、慢性組織虚血の徴候及び症状の一部又は全てを完全に又は部分的に取り除くことが可能であり、その症状の重症度を低減させることが可能であり、それらの発症を遅延させることが可能であり、又は、その後で現れる症状の進行を遅くすること若しくは重症度を軽減させることが可能である。
【0073】
新生血管の成長
以下においてさらに記載されているように、本発明の組成物は、虚血性組織の中で新生血管の成長をもたらすのに充分な期間にわたり充分な量で投与される。用語「新生血管の成長(new blood vessel growth)」、「新生血管の形成(new blood vessel formation)」及び「新生血管の発生(new blood vessel development)」は、互いに交換可能に使用することができる。新生血管の成長は、最初のシグナル伝達イベント、内皮細胞の細胞動員(cellular recruitment)、新生血管の形成及び拡大及び新生血管と既存の血管の結合を包含する、血管形成のプロセスの全ての相を意味する。新生血管の成長は、虚血性組織の血管再建又は新血管形成をもたらす任意のプロセス(例えば、血管形成、又は、動脈形成、又は、血管形成と動脈形成との組み合わせなど)から生じ得る。用語「血管形成」は、典型的には、血管芽細胞からの血管の胚発生を表現するために用いられる。血管形成は、一般的に、創傷治癒に必要な生後の生理学的プロセスであると理解される。血管形成には、一般的に、既存の毛細血管からの発芽、出芽及び挿入成長による新たな毛細血管又は毛細血管枝(capillary branch)の形成が包含される。動脈形成、即ち、既存の細動脈連結部の本来の側副動脈への成長は、一般的に、動脈閉塞後に、既存の相互連結させる細動脈から成熟動脈が形成されることを包含するものと理解される。それは血管形成といくつかの特徴を共有するが、それに至るまでの経路や、最終的な結果が異なり得る:動脈形成は、潜在的に、閉塞した動脈に完全に取って代わることができるのに対し、血管形成は一般的にそのように取って代わることはできない。虚血性領域内の毛細血管の数が増加しても、律速的構造(limiting structure)が新しい毛細血管の上流に存在している場合には、血流量は増大され得ない;閉塞部位の周辺の血流を迂回させる新しい側副血管の形成。加えて、血管形成によって形成される構造と動脈形成によって形成される構造は、それらの細胞組成の点で異なっている。毛細血管は、血管周皮細胞によって支持されている内皮細胞によって形成された管である。動脈及び静脈は、多層(即ち、内皮細胞、周皮細胞及び基底膜で構成される、内膜;主に平滑筋細胞及びその細胞外マトリックスで構成される、中膜;及び、最も大きな血管内において、主に線維芽細胞とその細胞外マトリックスで構成される、外膜)からなる管である。
【0074】
慢性組織虚血
本発明の方法は、基底にある特徴として、組織若しくは器官への血流が持続的に低減されているか、又は、組織若しくは器官への血流が部分的に若しくは完全に遮断されている、広範な医学的状態のいずれにも適用することが可能である。かくして、該方法は、疾患、外傷又は環境ストレスに関連する慢性組織虚血の治療に適用することができる。組織への血流の減少は、例えば、凝血塊の存在又はアテロームプラーク(atheromatous plaque)に起因する硬化及び/又は弾性損失による動脈の進行性閉塞の結果であり得る。組織への血流の減少は、さらにまた、環境による傷害(environmental insult)、例えば、組織又は器官への血流量を遮断する外傷性損傷又は外科手術などの結果でもあり得る。典型的には、創傷の酸素圧は急速に且つ進行的に低下し、創傷領域全体にわたってさまざまな程度の低酸素状態を発症する。低酸素症を引き起こす環境条件も本発明の範囲内にある。
【0075】
本発明に包含される疾患としては、例えば、心臓血管疾患、末梢性動脈疾患、動脈硬化症、アテローム動脈硬化性心血管疾患、心筋梗塞、重症下肢虚血性疾患、卒中、急性冠症候群、間欠性跛行、1型糖尿病及び2型糖尿病を包含する糖尿病、皮膚潰瘍、末梢神経障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸虚血及び慢性腸間膜虚血などがある。本発明の方法は、さらにまた、外傷(例えば、外傷性損傷、例えば、創傷、裂傷、火傷、打撲傷、骨折又は慢性感染症など)に関連する慢性組織虚血にも適用することが可能である。外科的処置の一部として受ける組織損傷(例えば、動脈内膜切除など)も、本発明に包含される。組織移植又は臓器移植を伴う処置も、本発明の範囲内に含まれる。例としては、血管バイパス移植、心臓移植、肝臓移植、肺移植、膵島細胞移植、及び、宿主に移植するために生体外で生成された組織の移植などを挙げることができる。本発明の方法は、環境による傷害(environmental insult)に晒されることによって引き起こされる慢性虚血状態、例えば、低酸素状態(例えば、高高度)に長期間晒されること又は持続的な有酸素運動などによって引き起こされる慢性虚血状態を治療するのにも有用である。
【0076】
本明細書において提供される方法は、例えば、筋肉、平滑筋、骨格筋、心筋、神経組織、皮膚、間葉組織(mesechymal tissue)、結合組織、胃腸組織又は骨などを包含する、広範なタイプの組織に適用することができる。軟組織、上皮組織、例えば、単層扁平上皮、重層扁平上皮、立方上皮又は円柱上皮、疎性結合組織(輪紋状結合組織としても知られている)、線維性結合組織、例えば、筋肉を骨に結合させる腱、及び、関節で骨同士をつなぐ靭帯。
【0077】
かくして、例えば、末梢性動脈疾患(PAD)(これは、動脈が部分的に又は完全に遮断されている末梢血管疾患の一形態であり、通常、脚又は腕へと至る血管のアテローム性動脈硬化に起因する)における慢性組織虚血の症状としては、間欠性跛行(即ち、疲労、筋痙攣、及び、安静にすると消失する運動時の股関節(hip)、臀部、大腿部、膝、すね又は足上部(upper foot)の痛み)、安静時跛行(claudication during rest)、知覚麻痺(numbness)、刺痛、肢下部(lower legs)若しくは足の冷感、神経障害、又は、組織創傷治癒不全(defective tissue wound healing)などを挙げることができる。肢下部(lower limb)におけるPADは、多くの場合、糖尿病(特に、2型糖尿病)に関連している。腕の動脈疾患は、通常、アテローム性動脈硬化に起因しているのではなく、自己免疫疾患、血餅、放射線療法、レイノー病、反復運動及び外傷などの別の状態に起因している。腕が動いているときの一般的な症状としては、不快感、重感、疲労感、筋痙攣及び手指の痛みなどがある。PADは、例えば、足関節上腕血圧比(ABI)試験、血管造影、超音波又はMRI分析などを包含する、1種類以上の診断テストを実施することによって、診断することができる。
【0078】
心筋虚血は、症状が殆ど又は全くないことがあり得るが、典型的には、狭心症、疼痛、疲労及び高血圧(fatigue elevated blood pressure)などの症状を伴っている。心筋虚血についての診断テストとしては、以下のものなどがある:血管造影、安静時心電図、運動負荷心電図又はホルター心電図(ambulatory electrocardiogram);シンチグラフィー試験(scintigraphic study)(放射性心臓スキャン(radioactive heart scans));心エコー検査;冠動脈造影;及び、まれに、陽電子放射型断層撮影。
【0079】
本発明の方法は、さらにまた、慢性組織虚血を治療するために使用される当技術分野で既知の別の療法(ここで、そのような療法としては、薬物療法、手術、抗炎症薬、抗体、運動又は生活様式の変化などがある)と組合せて使用することも可能である。特定の治療の選択は、さまざまであることができ、そして、その選択は、慢性組織虚血の重症度、対象の全般的な健康状態及び担当臨床医の判断に依存するであろう。
【0080】
本発明の組成物は、1種類以上の付加的な活性成分と組合せて製剤化することも可能であり、ここで、そのような付加的な活性成分としては、任意の薬剤、例えば、抗高血圧薬、抗糖尿病薬、スタチン類、抗血小板薬(クロピドグレル及びシロスタゾール)、抗体、免疫抑制薬、抗炎症薬、抗生物質、化学療法薬などを挙げることができる。一部の実施形態では、該組成物は無機ニトレートも含有する;別の実施形態では、該組成物は無機ニトレート類を含有しない。例えば、本発明の組成物は、無機ニトライトとニトレート類を、1-5〜1-100のニトライト:ニトレートの比率で、例えば、1-5、1-10、1-30、1-50、1-70又は1-100のニトライト:ニトレートの比率で、含有することができる。
【実施例】
【0081】
制御放出医薬製剤
経口投与用の代表的な製剤としては、錠剤製剤及びカプセル剤製剤などがある。例えば、錠剤製剤に関して記載されている粉末状成分を使用して、カプセル剤製剤を調製することが可能であり、カプセルの適切な寸法は、活性成分の用量及び充填密度に依存して、例えば、サイズ1カプセル、サイズ0カプセル又はサイズ00カプセルなどである。一部の実施形態では、錠剤又はカプセル剤には、腸溶コーティングを施さなくてもよい。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、亜硝酸イオンを制御放出するように製剤化することができる。カプセル剤がコーティングされていると記載されている場合、そのコーティングは、充填後にカプセル剤に施すことができる。カプセル剤製剤は、コーティングプロセスに際して取扱いを容易にするために、場合により、セルフロッキングカプセル殻(self-locking capsule shell)(例えば、「Coni-Snap(登録商標)」、「Posilok(登録商標)」又は「Snap-Fit(登録商標)」など)を使用することができる。
【0082】
代表的な組成物は、0.5〜4.0mmolの総亜硝酸イオン(特に、1.8〜3.6mmolのNaNO2)を含む。該組成物は、そのようなニトライトの任意のプロドラッグ、例えば、125〜250mgのNaNO2、154〜308mgのKNO2又は201〜402mgの亜硝酸アルギニンを含有することができる。該医薬組成物の中で使用される亜硝酸イオンの量は、本明細書中に記載されているように変えることができる。例えば、該製剤は、本明細書中に記載されている賦形剤、好ましくは、アルカリ化剤(alkanizing agent)(例えば、重炭酸ナトリウム又は炭酸カルシウム)、流動促進剤(例えば、ヒュームドシリカ)、滑沢剤(脂肪酸塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、純粋な固体脂肪酸又は固体ポリエチレングリコール)又は優れた流動性を有している増量剤(例えば、ケイ化微結晶性セルロース(Prosolv(登録商標) SMCC90))を含有することができる。該組成物は、さらにまた、腸内で放出するように製剤化されている組成物(例えば、腸溶性製剤)の中での使用に関して記載されている賦形剤も含有することができる。製剤は、放出速度制御性ポリマーコーティング(rate-controlling polymer coating)(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、三酢酸セルロースなどであり、これらは、PEG-4000と組み合わせることができる)も含有することができる。必要に応じて、使用するPEG-4000の量は、亜硝酸ナトリウムがその中を通って拡散できる水性細孔を当該コーティング中に生成させるために変えることができる。腸溶性ポリマーコーティングを使用することも可能であり、その代表的なポリマーとしては、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、「Eudragit(登録商標) L」又は「Eudragit(登録商標) S」などがある。ポリマーコーティングを使用する場合、該製剤は、さらに、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン又はアセチルモノグリセリド類など)も含有することができる。総合的な腸溶コーティング(ポリマー + 可塑剤)は、例えば10重量%となる量で、添加することができる。
【0083】
ニトレートを制御放出させるための数種類の錠剤製剤及びペレット剤製剤の製造及び試験について、以下に記載する。
【0084】
錠剤の調製方法
亜硝酸ナトリウムを包含する全ての固体成分を秤量して、成分の望ましい重量比の錠剤を製造した。4〜5の錠剤を調製するために、充分な量のパウダーブレンドを調製した。その粉末状成分を充分に混合させた後、圧縮して錠剤とした。蝋状成分(即ち Castorwax(登録商標))を含む錠剤のために、亜硝酸ナトリウムと他の成分を溶融蝋の中に分散させ、均質なブレンド状態を維持するために混合させながら、その混合物を固化させた。固化後、必要に応じて、さらに混合させるために、その混合物を粉砕して粉末とした。全ての粉末状成分の混合は、乳鉢と乳棒を用いて行った。
【0085】
錠剤は、1/2"(1.27cm)の穿孔及びダイを有する「Carver(登録商標) Press」の上で圧縮した。5000lbsの力を30秒間加えて、放出試験用の錠剤を得た。
【0086】
錠剤の寸法は、以下のとおりであった:
580mg錠剤: 1.27cm(直径)×0.38cm(厚さ)(1/2"×1/7");又は、
480mg錠剤: 1.27cm(直径)×0.32cm(厚さ)(1/2"×1/8")。
【0087】
錠剤の厚さは、粉末状成分の総重量及び使用する賦形剤の性質に依存した。かくして、開示されている厚さは、圧縮される混合物に応じて、10〜15%の範囲で変動した。
【0088】
該錠剤は、圧縮後、ダイから注意深く押し出して、溶解試験までデシケーターの中に貯蔵した。一部の錠剤は、制御放出コーティング材料又は腸溶コーティング材料でコーティングして、その放出プロフィールを変えた。
【0089】
ペレット剤の調製方法
動物試験(ウサギへの経口投与)用に、5mgの亜硝酸ナトリウムを含む小ペレット剤を以下の方法に準じて調製した。亜硝酸ナトリウムを包含する全ての固体成分を秤量して、成分の望ましい重量比のペレット剤を製造した。40〜50のペレット剤を調製するために、充分な量のパウダーブレンドを調製した。その粉末状成分を篩(150〜250ミクロン)にかけ、幾何学的希釈によって充分に混合させた後、圧縮してペレット剤とした。そのペレット剤は、3mm穿孔及びダイを有する「Parr Model 2811 pellet press」を用いて圧縮した。ペレット剤の圧縮は、手動式圧縮で行い、加えられる力を制御することはできなかったが、全ての製剤に関して粘性を有するペレットを製造した。ペレット剤の重さは、使用する製剤に応じて、23〜35mgであった。1つのペレットバッチは、当該ペレットの重量の11〜15%であるエチルセルロース/トリアセチンコーティング(4/1)を用いて手動でコーティングした。
【0090】
ペレット剤の寸法は以下のとおりであった:3mm(直径)×5〜7mm(厚さ)。ペレット剤の厚さは、粉末状成分の総重量及び使用する賦形剤の性質に依存した。かくして、開示されている厚さは、圧縮される混合物に応じて、約50%変動した。
【0091】
該ペレット剤は、圧縮後、ダイから注意深く押し出して、動物試験用に発送するまでデシケーターの中に貯蔵した。1つのペレットバッチは、制御放出コーティングでコーティングして、その放出プロフィールを変えた。コーティング方法は、独立して以下に記載されている。Castorwax ペレット剤を2回圧縮した。最初の圧縮は、周囲温度で実施し、2回目の圧縮は、オーブン内でダイを50〜60℃に加熱した後、3mmダイの中で実施した。その2回目の圧縮によって、亜硝酸ナトリウム粒子と酢酸ナトリウム粒子の周囲を覆っている Castorwax の良好な流動性が誘発された。
【0092】
錠剤/ペレット剤のコーティング方法
測定された体積のコーティング溶液を錠剤の表面上に注意深く滴下し、その滴下されたコーティング溶液を錠剤の表面及び縁に注意深く拡げることによって、亜硝酸ナトリウム錠剤に手動でコーティングした。溶媒を蒸発させた後、充分な量のコーティングが塗布されるまで、上記方法を何度も繰り返した。ペレット剤及び一部の錠剤バッチについて、ペレット剤/錠剤をコーティング溶液に注意深く浸漬し、ピンセットで保持しながら風乾させることを含む浸漬コーティング法を用いた。充分な量のコーティングが塗布されるまで、上記浸漬法を繰り返した。
【0093】
使用するコーティングは、可塑剤としてのトリアセチンを含むエチルセルロース(EC)及び酢酸フタル酸セルロース(CAP, Cellacefate, NF)であった。ECとトリアセチンのさまざまな比率を用いて、種々の脆弱性及び水と亜硝酸ナトリウムに対する種々の浸透性を有するコーティングを得た。EC/トリアセチンは、クロロホルム、塩化メチレン又は95%エタノールを含む溶液から、錠剤又はペレット剤にコーティングした。CAPは、腸溶コーティング材料として使用し、ジオキサン溶液から錠剤にコーティングした。別のコーティング用溶媒で得られるCAPコーティング錠剤では、崩壊することなく2時間は模擬胃酸に耐えられなかった。
【0094】
錠剤の成分
・ 亜硝酸ナトリウム, Certified ACS Reagent, 結晶質, Fisher Scientific, Lot # 080939A;
・ Polyox(登録商標) Coagulant, Blend # C-289, 分子量 5百万, N.F. Grade, Union Carbide;
・ Polyox(登録商標) WSR 303, 分子量 7百万, N.F. Grade, Colorcon;
・ Avicel(登録商標) PH-302, 微結晶性セルロース, FMC Corporation, Lot # Q939C;
・ Ethocel(登録商標), エチルセルロース, Standard 100 premium, Colorcon;
・ Castorwax(登録商標), NF, 硬化ひまし油, CASCHEM, Lot # 00121431;
・ Methocel(登録商標) K100M, ヒドロキシプロピル メチルセルロース, premium CR grade, Colorcon;
・ Klucel(登録商標) HXAF Pharm., ヒドロキシプロピルセルロース, 分子量 1.15 百万, Aqualon Division, Hercules, Inc.;
・ Klucel(登録商標) MF Pharm., ヒドロキシプロピルセルロース, 分子量 850,000, Aqualon Division, Hercules, Inc.;
・ 塩化ナトリウム, Certified ACS Reagent, Fisher Scientific;
・ 酢酸ナトリウム三水和物, ACS Reagent, Fisher Scientific。
【0095】
錠剤に関する放出試験方法
全てのニトライト放出試験について、50RPMの撹拌で、USPパドル法を用いた。Vankel(登録商標) USP 6-ステーション溶解装置を使用した。体積500mLの37℃の蒸留水を各放出容器内の放出媒体として使用した。錠剤の放出試験は、各被験製剤に対して2反復又は3反復で実施した。
【0096】
各容器から、一定時間(典型的には、1/2時間、1時間、2時間、3時間、4時間、又は、それ以上)毎に、該放出媒体のサンプル(35mL)を取った。その採取された放出媒体に35mLの蒸留水をつぎ足した。
【0097】
放出試験の終わりに、錠剤を圧壊し、その溶解状態で含有されている亜硝酸ナトリウムを完全に放出させて、当該錠剤中の亜硝酸ナトリウムの総含有量を求めた。
【0098】
亜硝酸ナトリウム放出アッセイ
Hewlett-Packard(登録商標) 8453 ダイオードアレイ UV-可視分光光度計を用いて、10-cm 石英キュベット内で、各放出サンプルについて355nmでの紫外線吸光度を測定した。
【0099】
前もって準備しておいた較正プロットに基づいて、各サンプル中の亜硝酸ナトリウムの濃度を計算し、各錠剤に関する総量及び放出された割合(%)に変換した。同時に試験した2個又は3個の錠剤について、放出された平均割合(%)及び標準偏差を計算した。各製剤について、放出された平均割合(%)を時間プロフィールに対してプロットした。
【0100】
上記方法によって製造された錠剤及びペレット剤の処方及び放出プロフィールを、表1〜表7に示す。
【表1】

【0101】
製剤9Cは、エチルセルロース100/トリアセチン(1/10)の13%コーティングが95%エタノール溶液から錠剤に施された以外は、製剤9と同じである。
【表2】

【表3】

【0102】
製剤200Aは、2回圧縮した。最初の圧縮は、周囲温度で実施した。2回目の圧縮は、オーブン内でダイを50〜60℃に加熱した後、3mmダイの中で実施した。製剤300Aは、溶媒としての95%エタノールを有するエチルセルロース100/トリアセチン(4/1)コーティング溶液を用いて、浸漬コーティングした。
【表4】

【表5】

【0103】
製剤12Cは、エチルセルロース100/トリアセチン(1/10)の14.8%コーティングが95%エタノール溶液から錠剤に施された以外は、製剤12と同じである。製剤13、製剤15、製剤15C1及び製剤15C2は、亜硝酸ナトリウム及び他の成分を溶融 Castorwax の中に混入させることによって調製した。固化しつつある溶融塊を混合させ、次いで、乳鉢及び乳房を用いて粉砕して粉末とした後、圧縮して錠剤とした。製剤15C1及び製剤15C2は、エチルセルロース100/トリアセチン(4/1)の9.6%コーティング(15C1)又は4.15%コーティング(15C2)がクロロホルムから錠剤に施された以外は、製剤15と同じである。
【表6】

【表7】

【0104】
製剤10Cは、95%エタノール溶液から錠剤に施されたエチルセルロース100/トリアセチン(1/10)の15.8%コーティングを有する。製剤2は、亜硝酸ナトリウムを粉末状エチルセルロース(Ethocel(登録商標) 100)と混合させ、得られたブレンドを圧縮して錠剤とすることにより調製した。製剤5は、亜硝酸ナトリウムと粉末状エチルセルロース(Ethocel(登録商標) 100)と HPMC K100M を混合させ、得られたブレンドを圧縮して錠剤とすることにより調製した。製剤17Cは、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel MF)を含んでおり、クロロホルム溶液から施されたエチルセルロース100/トリアセチン(4/1)の8.65%コーティングを有する。
【0105】
制御放出製剤に由来するニトライト血漿濃度の模擬実験
上記製剤のうちの何種類かを、ニトライト血漿濃度の測定に関して、模擬実験に付した。該模擬実験によって、ミッドレンジ薬物動態学的定数(mid-range pharmacokinetic constant)及び80mg用量が推定される。NaNO2に関する推定されたPKパラメータは、以下のとおりである:半減期=45分;クリアランス=60.375L/時間;経口による生物学的利用能=100%(但し、製剤27(生物学的利用能=27%)は除く);投与から放出が起こり得るpHに達するまでの遅延時間=0.5時間。該模擬実験は、最初の2日間は、1日当たり2回投与する。69ng/mLの濃度は、1μMと同等であり、138ng/mLの濃度は、2μMと同等である。結果は、図1〜図10に示されている。
【0106】
製剤1、製剤2、製剤5、製剤9、製剤10C、製剤12及び製剤12Cに関し、それらのプロフィールにフィットする式は、y切片がゼロではなかった。即ち、t=0において、放出された割合(%)は、正の数(フィットする多項式における定数)であった。模擬実験の目的のために、これは、即時放出成分として処理し、そのフラクションは、該遅延時間が経過した後の最初の10分間にわたって均一に放出されると推定された。従って、放出速度プロフィールは10分間にわたる放出の「スパイク(spike)」を示し、「放出割合(%)」プロフィールは、最初の10分間と残りの8時間の放出の間で勾配が著しく異なっている。
【0107】
腸溶コーティングされたカプセル製剤
一部の実施形態では、該医薬組成物は、腸溶コーティングされたカプセル剤として製剤化することができる。表8及び表9は、腸溶コーティングされたカプセル剤製剤の処方を提供する。
【表8】

【表9】

【0108】
この方法において、カプセル剤は、粉末のための標準的な混合方法を用いて亜硝酸ナトリウムと微結晶性セルロースと青色食用色素を混合させることにより調製した。その混合された成分を、小規模カプセル充填装置を用いて、サイズ #1 カプセル殻の中に手動で充填した。完成したカプセル剤を、カプセル剤に関する公定書に記載されている要件(compendia requirements)を満たすために、重量偏差及び含量均一性について試験した。
【0109】
その充填したカプセル剤を、各カプセル剤のキャップ側が上になるように、「Procoater holder」の中に配置した。コーティングトレイを、上端から1mmの範囲内になるまでコーティング溶液で満たした。各浸漬コーティング段階の後で、必要に応じて、そのトレイに追加のコーティング溶液を添加した。
【0110】
カプセル剤のキャップ側をコーティング溶液の中に浸漬し、コーティング溶液からゆっくりと取り出した。乾燥したコーティングがコーティングキャップ上で対称になるように、余分なコーティング溶液をカプセル剤の底から注意深く拭き取った。カプセル剤は、乾燥トレイ上のホルダーの中に1時間置いた。コーティング段階は、合計で5回のコーティングとなるようにさらに4回繰り返した。
【0111】
コーティングが乾燥した後、カプセル剤を含むホルダーを、反転スタンド上に、キャップ側を下にして(ボディー側を上にして)配置し、コーティングトレイカバーを用いてカプセル剤を最も低い位置に押し込んだ。カプセル剤のボディー側をコーティング溶液の中に浸漬し、コーティング溶液からゆっくりと取り出した。乾燥したコーティングがコーティングボディー上で対称になるように、余分なコーティング溶液をカプセル剤の底から注意深く拭き取った。次いで、カプセル剤及びホルダーを乾燥トレイ上に1時間置いた。コーティング段階は、合計で5回のコーティングとなるようにさらに4回繰り返した。
【0112】
腸溶コーティングされたカプセル剤を、硝酸ナトリウムの放出について試験した。コーティングされなかったカプセル剤は、50rpmでUSPパドル法を用いて、37℃で60分間で0.1N HCl(1L)に75%を超える量が溶解した。750mLの0.1N HClの中で、腸溶コーティングされたカプセル剤は、50rpmでUSPパドル法を用いて、37℃で120分間で、1%未満の亜硝酸ナトリウムしか放出しなかった。750mLの0.1N HCl溶液に250mLの0.2M 三塩基性リン酸ナトリウムを添加して当該溶液のpHを6.8まで上昇させた後では、腸溶コーティングされたカプセル剤は、50rpmでUSPパドル法を用いて、37℃で15-16 パンクレアチンを添加して60分間で、75%を超える量の亜硝酸ナトリウムを放出した。
【0113】
ウサギにおける薬物動態学的研究
持続放出亜硝酸ナトリウム製剤を薬物動態学的分析に付すために、体重3.0〜3.2kgのニュージーランドウサギを使用した。6時間にわたって、14時点において、1mLの血液を採取した。
【0114】
最初に、各ウサギに、無菌正常食塩水i.m.で希釈された2mg/kgのキシラジンと一緒に31mg/kgのケタミンを与えた。このとき、0.5mg/kgのアセプロマジンの2番目のi.m.注射も行った。ウサギが意識を失ったとき、クリッパーで一方の耳の毛を剃った。カテーテルが挿入される部分をアルコールで拭いて消毒し、22ゲージ iv カテーテルを、中耳動脈の中に挿入した。真っ直ぐな注入ポートを加えて、カテーテルの末端を密封した。22ゲージ注射針を用いて採血し、その直後、当該カテーテルの中に1単位/mLのヘパリン溶液(500μL)を流した。このヘパリンを流す処置は、毎回採血後に使用した。
【0115】
最初の採血後、18 Fr 胃管栄養チューブ(長さ36cm)をウサギの食道の中に挿入した。その胃管栄養チューブの末端において、ニトライトカプセル剤を挿入し、15mLの空気を用いて素早く胃の中に押し入れた。3種類の製剤(製剤100A、製剤200A及び製剤300A)について試験した。次いで、胃管栄養チューブを取り除き、残りの血液は、次の6時間にわたって採取した。
【0116】
採血された血液は、等分して、1.5mL容マイクロ遠心分離管の中に入れた。一方のアリコートには、100μLの血漿ニトライト保存溶液を直ちに添加し、もう一方のアリコートは、5,000rpmで2分間遠心して血漿を分離させ、次いで、その血漿を200μLの血漿ニトライト保存溶液と合した。全てのサンプルは、処理に付すまで、液体窒素の中で貯蔵した。
【0117】
血漿ニトライト保存溶液は、以下のものを含んでいた:
7.85gのKFeCN + 25mLのPBS =1;
66mgのNEM + 3mLのPBS =2;
1.5mLのノニデット P40 =3;
1(21mL) + 2(2.5mL) + 3=ニトライト保存溶液。
【0118】
血漿中の総NOxは、以下に記載されているようにして計算した。3種類の被験製剤のそれぞれについての時間経過は、図11に示されている。さらに、遊離ニトライトの量は、サンプルを1N HClの中の580mMのスルファニルアミドで15分間処理することによって計算した。この処理は、ニトレート、ニトロソチオール類、ニトロソヘム及びニトロソアミン類を残して、遊離ニトライトを捕捉する。これらの残留成分の量は以下に記載されている方法で測定したが、それらの量は、図12に示されている。この量を総NOxの量から減じた場合、結果として得られた数字は遊離ニトライトの量を示している(図13)。製剤200A及び製剤300Aについてのデータは5匹のウサギの平均値を表し、製剤100Aについてのデータは4匹のウサギの平均値を表している。それは、製剤100Aを投与された1匹のウサギが当該試験中に動脈カテーテルの目詰まりを経験したからである。
【0119】
一酸化窒素化学発光検出
「Sievers 280i Nitric oxide analyzer (NOA)」を使用して、ニトライト/NO濃度の標準曲線を構築し、及び、総NOxの試料、ニトロソチオール類(SNO)+ニトロソヘム+ニトレートの試料及び遊離ニトライトの試料を測定した。ニトライトを測定するために、パージ容器に還元剤(7mLの氷酢酸の中の2mLのヨウ化ナトリウム)を含ませて、ニトライト化合物、ニトレート化合物及びニトロソ化合物を遊離一酸化窒素に還元した。次いで、NOガスを、オゾンとの反応(これは、化学発光検出器で検出される光のフォトンを放射する)を通して、NOAで検出する。存在しているNOの量は、長時間にわたって放射シグナルを積分することにより決定し、NOに関するソース標準(source standard)としての亜硝酸ナトリウムの既知量(0μM、0.1μM、0.5μM、1μM、10μM及び100μM)に対して較正した。血漿ニトライトは、血漿のアリコートを1N HClの中の580nMのスルファニルアミドと15分間反応させて遊離ニトライトを捕捉することによって測定した。遊離ニトライトの総量は、総NOx値からスルファニルアミド値を減じることによって決定した。
【0120】
別の実施形態
本発明の特定の実施形態に関連して本発明について記述してきたが、さらなる変更が可能であるということ、及び、本出願が本発明の原理に概して従う本発明の全ての変形、使用又は適応(ここで、そのような変形、使用又は適応には、本発明が関連する技術の範囲内で知られているか又は慣習的に実施されていて上記で説明した本質的特徴に応用され得るような、本開示に含まれていないことも包含される)を包含することが意図されているということは理解されるであろう。
【0121】
全ての参考文献、特許、特許出願公開及びそれらの中で引用されている特許出願は、あたかもそれらの参考文献、特許、特許出願公開及び特許出願のそれぞれが参照により独立して本明細書に組み入れられるように、参照により同程度にまで本明細書に組み入れられる。
【0122】
「特許請求の範囲」は、以下のとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ及び製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、該医薬組成物をヒトに投与することにより、最大で14時間にわたって、亜硝酸イオンの血漿濃度が0.05μM〜10μMに維持される、前記組成物。
【請求項2】
前記血漿濃度が0.1μM〜10μMに維持される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記血漿濃度が0.5μM〜5μMに維持される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記血漿濃度が0.1μM〜3μMに維持される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記血漿濃度が0.1μM〜1μMに維持される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記血漿濃度が4〜14時間維持される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記血漿濃度が6〜12時間維持される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記血漿濃度が6〜10時間維持される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
血漿濃度が維持される期間が血漿濃度がピークにある時間の後に起こる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記亜硝酸イオンの30〜50%が最初の1時間に放出され、前記硝酸イオンの残部はその後の2〜14時間で放出される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記無機ニトライトがヒトの体重1kg当たり0.05mg〜10mgの用量で投与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記用量が0.1mg〜5mg/kgである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記用量が0.5〜5mg/kgである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記用量が0.5〜3mg/kgである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記用量が0.1〜1.5mg/kgである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記用量が0.1〜0.35mg/kg、0.35〜0.75mg/kg又は0.75〜1mg/kgである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記用量が0.25mg/kg、0.5mg/kg又は1mg/kgである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が0.5〜5.0mmolの亜硝酸イオン(NO2-)を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物が1.0〜4.0mmolの亜硝酸イオンを含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記亜硝酸イオンがNaNO2、KNO2又は亜硝酸アルギニンとして提供される、請求項18又は19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記亜硝酸イオンがNaNO2として提供される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が経口投与用に製剤化される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が錠剤又はカプセル剤である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
該医薬組成物が、アルカリ化剤、流動促進剤、滑沢剤、増量剤、セルロース含有ポリマー又はポリエチレングリコール又はそれらの任意の組合せを含む、請求項22又は23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、ヒト対象に経口投与されたときに、前記無機ニトライトが当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されないように、該無機ニトライトを遅延放出させるための製薬上許容される賦形剤を含む、請求項22〜24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記製薬上許容される賦形剤がpH感受性ポリマー又は生物分解性ポリマーである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
腸溶コーティングが前記製薬上許容される賦形剤を含む、請求項25又は26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記製薬上許容される賦形剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はEudragit(登録商標) L若しくはEudragit(登録商標) Sである、請求項25〜27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記医薬組成物が、ポリエチレングリコール及び/又は可塑剤をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物が多粒子投与剤形である、請求項22〜29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記多粒子投与剤形がペレット剤又は顆粒剤を含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ペレット剤又は顆粒剤が、生物分解性ポリマーを含むコーティング層でコーティングされている、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記生物分解性ポリマーが多糖である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記多糖が、アルギン酸塩、ペクチン、カラギーナン、キトサン、デキストラン、セラック又はキサンタンガム又はそれらの任意の混合物である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記多糖がペクチンである、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ及び該無機ニトライトを遅延放出させるための製薬上許容される賦形剤を含み、それによって、ヒト対象に経口投与されたときに、該無機ニトライトは当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されない、経口投与用に製剤化された医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物が錠剤又はカプセル剤である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒトにおける慢性組織虚血を治療又は予防する方法であって、請求項1〜37のいずれか1項に記載の医薬組成物をヒトに投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
前記投与が経口である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
経口投与に適した医薬組成物であって、
(a) 有効量の無機ニトライト又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ;及び、
(b) 腸溶コーティング層;
を含んでおり、ここで、前記医薬組成物は、ヒト対象に投与されたときに、該無機ニトライトが当該ヒト対象の胃内では実質的に放出されないように、製剤化されている、前記医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物をヒトに投与することにより、亜硝酸イオンの血漿濃度が、最大で14時間にわたり、0.05μM〜10μMに維持される、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記血漿濃度が0.1μM〜10μMに維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記血漿濃度が0.5μM〜5μMに維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記血漿濃度が0.1μM〜3μMに維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記血漿濃度が0.1μM〜1μMに維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記血漿濃度が6〜12時間維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記血漿濃度が6〜10時間維持される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項48】
血漿濃度が維持される期間が血漿濃度がピークにある時間の後に起こる、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記亜硝酸イオンの30〜50%が最初の1時間に放出され、前記硝酸イオンの残部がその後の2〜14時間で放出される、請求項41〜48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記無機ニトライトがヒトの体重1kg当たり0.05mg〜10mgの用量で投与される、請求項40〜49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記用量が0.1mg〜5mg/kgである、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記用量が0.5〜5mg/kgである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記用量が0.5〜3mg/kgである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記用量が0.1〜1.5mg/kgである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記用量が、0.1〜0.35mg/kg、0.35〜0.75mg/kg又は0.75〜1mg/kgである、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記用量が、0.25mg/kg、0.5mg/kg又は1mg/kgである、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記医薬組成物が0.5〜5.0mmolの亜硝酸イオン(NO2-)を含む、請求項40〜56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記医薬組成物が1.0〜4.0mmolの亜硝酸イオンを含む、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記亜硝酸イオンがNaNO2、KNO2又は亜硝酸アルギニンとして提供される、請求項57又は58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記亜硝酸イオンがNaNO2として提供される、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記腸溶コーティング層が製薬上許容される賦形剤を含んでおり、その製薬上許容される賦形剤がpH感受性ポリマー又は生物分解性ポリマーである、請求項40〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記医薬組成物が錠剤又はカプセル剤である、請求項40〜61のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
ヒトにおける慢性組織虚血を治療又は予防する方法であって、請求項40〜62のいずれか1項に記載の医薬組成物を該ヒトに投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
ヒトの体内において見いだされる循環ニトライトの不足を補う方法であって、請求項1〜37及び40〜62のいずれか1項に記載の医薬組成物を該ヒトに投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−508289(P2013−508289A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534359(P2012−534359)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052683
【国際公開番号】WO2011/047161
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512096090)セラバスク インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】