説明

ニトロピリジン誘導体の調製方法

ハロゲン化アミノピリジン等の、化学式(I)のニトロピリジン誘導体、その塩およびその前駆体の調製方法を開示している。Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)‐Rから選択され、Rは、1から6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基、あるいは3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、Rは、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化アミノピリジン等の、化学式Iのニトロピリジン誘導体、その塩およびその前駆体の調製のための方法を提供する。
【化1】

式中、Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)‐Rから選択され、
は、1から6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基、あるいは3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、
は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基から選択される。
【背景技術】
【0002】
ニトロピリジン化合物は、高血圧および心筋虚血の治療に利用できるアデノシン化合物およびその類似化合物の合成に利用できる置換ピリジン中間体の調製に重要な中間物質である。さらに、ニトロピリジンは高い抗炎症、鎮痛および解熱活性を有することが発見されている化合物の調製にも利用できる。従ってこのような化合物は抗炎症薬剤に反応する関節炎および皮膚科疾患または類似症状の治療において有益である。
【0003】
ニトロピリジン化合物およびその前駆体の一部は一般的な化学式‐Iによって表わされる本発明に含まれる。
【化2】

式中、Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)‐Rから選択され、
は、1から6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基であるか、あるいは3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、
は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基から選択される。
【0004】
ニトロピリジン誘導体およびその前駆体、並びにハロゲン化アミノピリジンの調製方法は文献「R.Graf,Ber.,1931,vol.64,21−27」;「J.Lombardino,J.Med.Chem.,1961,vol.24,39−42」;「H.S.Mosher et al.,J.Org.Chem.,1955,vol.20(3),283−286」および「E.Malsumura et al.,Bull.Chem.Soc.Japan,1970,vol.43,3210−3214」において解説されている。従来方法の一つでは、前駆体4‐クロロ 2‐アミノピリジンが、先ず塩化チオニルと反応し、続いて水と反応するピコリン酸塩酸塩から調製され、4‐クロロ‐ピコリン酸が得られ、2‐アミノ‐4クロロピリジンに変換される。
【0005】
さらに別の方法は、文献「H.S.Mosher et al.,J.Org.Chem.,1955,vol.20(3),283−286」にて開示されており、ピコリン酸塩酸塩が塩化チオニルと亜硫酸ガスと先ず反応し、続いてメタノールと反応してエステル、メチル4‐クロロピコリン酸塩を生成する。エステルはその後ヒドラジン、亜硝酸ナトリウムおよび酢酸と水中で反応し、ジピリジン副産物の不純物と共に2‐アミノ‐4‐クロロピリジンを生成する。
【0006】
文献「DenHertog in Recl.Trav.Chim.Des Pays−Bas,1946,65,129−140」において開示されている方法では、ニトロピリジン誘導体は、トリエチルオルトホルメートとジエチル3‐オキソペンタンジオエートで合成を開始し、無水酢酸で処理される。続いて濃縮アンモニア溶液で処理され、2,4‐ジヒドロキシ‐5‐カルベトキシピリジンを生成する。ヒドロキシル化合物は文献「Kogl,F.,et al., in Recl.Trav.Chim.Des Pays−Bas, 1948,67,29−44」で開示されている方法によって硝酸と酢酸の存在下でニトロ化され、2,4−ジヒドロキシ‐3‐ニトロ‐5‐カルベトシキピリジンが得られる。このニトロ化合物はその後加水分解され、続いて脱カルボオキシル化されて2,4‐ジヒドロキシ‐3‐ニトロピリジンが得られる。
【0007】
さらに別の従来技術文献US6307054では、2,4‐ジヒドロキシ‐3‐ニトロピリジンを得るため、リン酸および硝酸の利用によるカルベトキシ基の同時的なその場での脱カルボオキシル化を伴うニトロ化を開示している。
【0008】
米国出願US20030225131A1は化合物2‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐4‐オールの調製方法を解説しており、2,4‐ジヒドロキシ‐3‐ニトロピリジンは、相間移動触媒である塩化ベンジルトリエチルアンモニウムと溶媒であるアセトニトリルの存在下でオキシ塩化リンと反応し、2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンが得られ、分離されて、80℃でN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)内で酢酸セシウムと反応する。その後に化合物2‐クロロ‐ニトロピリジン‐4‐オールが分離される。
【0009】
従来方法の主な欠点は以下である。
1.前駆体2‐アミノ‐4‐クロロピリジンの調製中のジピリジン不純物の形成。
2.有害で産業的に利用性が低い前駆体のエステル化合物の調製のための亜硫酸ガスの使用。
3.2,4‐ジクロロ化合物の調製のためのトリエチルオルトホルメート、アセトニトリル、相間触媒等の高価な試薬および溶媒の使用。
4.産業スケールでの使用を妨害する、吸湿性、不安定および高価な酢酸セシウムの使用。
5.ニトロピリジン化合物を調製するための多数の工程を伴う長時間の処理工程。
【0010】
このような従来技術の欠点から、不純物を含有せず、少数の工程でコスト効果が高く、産業的に利用可能なニトロピリジンの誘導体とその前駆体を調製するための改良された方法が求められている。
【0011】
本発明は、安定してコスト効果が高い試薬を使用し、少数の工程であり、産業的に利用性が高いニトロピリジン前駆体とその誘導体の新規な調製方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US6307054
【特許文献2】US20030225131A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】R.Graf,Ber.,1931,vol.64,21−27
【非特許文献2】J.Lombardino,J.Med.Chem.,1961,vol.24,39−42
【非特許文献3】H.S.Mosher et al.,J.Org.Chem.,1955,vol.20(3),283−286
【非特許文献4】E.Malsumura et al.,Bull.Chem.Soc.Japan,1970,vol.43,3210−3214
【非特許文献5】H.S.Mosher et al.,J.Org.Chem.,1955,vol.20(3),283−286
【非特許文献6】DenHertog in Recl.Trav.Chim.Des Pays−Bas,1946,65,129−140
【非特許文献7】Kogl,F.,et al., in Recl.Trav.Chim.Des Pays−Bas, 1948,67,29−44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の主な目的は、産業利用性の高い方法で前駆体4‐クロロ‐2‐アミノピリジンを調製することである。
【0015】
本発明のさらに別な目的は、医療化合物の合成に使用できる、置換ニトロピリジン誘導体の調製方法の提供である。
【0016】
本発明のさらに別な目的は、高純度で不純物のないニトロピリジン誘導体の調製である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的に従って、本発明は化学式Iのニトロピリジン誘導体、その前駆体およびその塩の調製方法を提供する。
【化3】

式中、Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)‐Rから選択され、
は、1から6個の炭素原子を有する分鎖岐または直鎖アルキル基、あるいは3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、
は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基から選択される。
この方法は以下のステップを含んでいる。
a)ピコリン酸塩酸塩を塩化チオニルと反応させ、続いてアンモニアで処理して化学式IIIの化合物4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミドを得るステップ。
【化4】

b)化学式IIIの化合物をホフマン分解で処理し、化学式IVの化合物を得るステップ。
【化5】

c)化学式IVの化合物をニトロ化剤で処理し、化学式Vの化合物を得るステップ。
【化6】

d)化学式Vの化合物をジアゾ化処理し、続いて加水分解して化学式VIの化合物を得るステップ。
【化7】

e)化学式VIの化合物を塩基の存在下でオキシ塩化リンと反応させ、化学式VIIの化合物を得るステップ。
【化8】

f)化学式VIIの化合物を極性プロトン性溶媒および酢酸ナトリウム試薬または炭酸セシウムの存在下で酢酸とパラ位で選択的に置換し、化学式VIIIの化合物を得るステップ。
【化9】

【0018】
別形態では、本発明は化学式Vの化合物を、
【化10】

塩素化溶剤と塩基の存在下で塩化シクロプロパンカルボニルと反応させることで化学式Xの化合物N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドを得る、化学式Xの化合物の調製方法を提供する。
【化11】

【0019】
さらに別な形態では、本発明は化学式Vの化合物を塩化シクロプロピルカルボニルと塩素化溶剤内にて塩基の存在下で反応させて化学式Xの化合物を調製する方法を開示している、塩化シクロプロピルカルボニルはその部位で調製される。
【0020】
さらに別な形態では、本発明はニトロピリジン誘導体の調製で使用できる化学式IVの化合物である前駆体の調製のための効率的な方法が提供され、以下のステップを含んでいる。
a.化学式IIの化合物ピコリン酸塩酸塩を塩化チオニルと反応させ、続いてアンモニアで処理し、化学式IIIの化合物4‐クロロピリジン‐2カルボキサミドを得るステップ。
【化12】

b.化学式IIIの化合物をホフマン分解で処理し、化学式IVの化合物4‐クロロ‐2アミノピリジンを得るステップ。
【化13】

【0021】
よって、本発明は化学式IVの化合物、化学式Vの化合物、化学式VIの化合物、化学式VIIの化合物、化学式VIIIの化合物および化学式Xの化合物等のニトロピリジン誘導体と前駆体の調製のための方法を包含している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ハロゲン化アミノニトロピリジン、ヒドロキシルアミノニトロピリジン、クロロヒドロキシルニトロピリジンおよびその塩等の化学式Iのニトロピリジン誘導体およびその前駆体のための調製工程を提供する。
【化14】

式中、Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキル基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)−Rから選択され、
は、1から6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基、または3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、
は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基から選択される。
【0023】
本発明は以下に例示するように、化学式IVの化合物、化学式Vの化合物、化学式VIの化合物、化学式VIIの化合物、化学式VIIIの化合物および化学式Xの化合物のニトロピリジン誘導体および前駆体の調製方法を包含する。
【0024】
従って、本発明の実施例の一つでは、化学式IIのピコリン酸またはその塩酸塩は塩化チオニルと20℃から40℃で1時間反応される。還流させるためゆっくりと水を入れ、温度を上げて維持する。反応後、塩化チオニルを減圧下で蒸留により完全に除去し、残留物にトルエンを入れ、撹拌して−5℃から10℃で冷却する。反応溶液にメタノールを入れて−5℃から10℃で撹拌し、固体物を濾過し、撹拌しながら湿性ケーキをDM水に入れる。25%から30%のアンモニア溶液をpHが強塩基性となるまで入れて、20℃から30℃で撹拌する。固体物を濾過し、水で洗浄して化学式IIIの4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミドを得る。この生成物を55℃から65℃で乾燥させる。
【0025】
本発明の別実施例では、この4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミドを、プレミックスされた水酸化ナトリウム溶液と液体臭素に−10℃から10℃で入れることによってホフマン分解する。還流させるため、反応混合物を撹拌し、温度を徐々に上げる。反応物を還流状態で3時間から6時間維持する。反応が完了した後、反応質量物を0℃に冷却し、0℃から5℃に1時間維持し、前駆体4‐クロロ‐2‐アミノピリジン(化学式IVの化合物)を分離するために濾過する。この化合物を冷却水で洗浄して生成物を50℃から60℃で乾燥させる。
【0026】
このようにして得られた前駆体化合物4‐クロロ‐2‐アミノピリジンを、ニトロ化混合物(硝酸および硫酸)を使用してニトロ化し、ニトロピリジン化合物である4‐クロロ‐2‐アミノ‐3ニトロピリジン(化学式Vの化合物)を生成する。
【0027】
この前駆体の反応順序を以下のスキームIに示す。
【化15】

スキームI
【0028】
本発明のさらに別な実施例では、化合物4‐クロロ‐2‐アミノ‐3ニトロピリジン(化学式Vの化合物)を硝酸ナトリウムと塩酸を使用して0℃から5℃でジアゾ化する。反応質量物を0℃から5℃で30分から1時間撹拌し、温度を上昇させて60℃から80℃で3時間維持して完全に加水分解する。反応質量物を25℃から30℃に冷却し、ジクロロメタンで抽出する。無水硫酸ナトリウムで有機層を分離および乾燥させ、減圧下で濃縮して化学式VIの4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オールを分離する。
【0029】
本発明のさらに別な実施例では、化合物4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オールを塩基の存在下でオキシ塩化リンで反応させ、化学式VIIの2,4‐ジクロロ‐3ニトロピリジンを分離する。
【0030】
化合物4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オールを20℃から30℃でオキシ塩化リンに入れて撹拌する。入れられる塩基は20℃から50℃の温度でトリエチルアミン、ジイソプロピル‐エチルアミン、ジメチルアミン、トリブチルアミンおよびピリジンから選択される。反応をさらに80℃から100℃で4時間から6時間維持する。
【0031】
反応の完了後、反応質量物を10℃に冷却して氷と水の混合物で急冷する。反応物を、撹拌して固体物を濾過し、化合物2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンを分離する。このようにして得られた化合物を冷却水で洗浄して乾燥させる。
【0032】
本発明のさらに別な実施例では、化学式VIIの化合物2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンは、極性プロトン性溶媒および芳香族炭化水素溶媒から選択される溶媒と、酢酸ナトリウムおよび炭酸セシウムから選択される試薬と酢酸の存在下でパラ位で選択的に置換され、化学式VIIIのニトロピリジン誘導体である2‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐4‐オールを分離する。反応に使用される好適な溶媒は、アセトニトリル、N,N‐ジメチルホルムアミド、およびN,N‐ジメチルアセトアミドから選択される極性プロトン性溶媒であり、反応に使用される最も好適な溶媒はN,N‐ジメチルホルムアミドである。ニトロピリジン誘導体の調製のための反応順序を以下のスキームIIに示す。
【化16】

スキームII
【0033】
本発明のさらに別な実施例では、化学式Xのニトロピリジン誘導体、N‐4(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドが化学式Vの化合物4‐クロロ‐2‐アミノ‐3ニトロピリジンを使用することで調製され、これを塩化シクロポロパンカルボニルと反応させる。オルト位のアミノ基は保護されているか、または遊離しており、塩素化溶媒と塩基の存在下で塩化シクロプロパンカルボニルと反応して化合物N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)を生成する。この塩素化溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンおよび1,1,2,2‐テトラクロロエタンから選択される。使用される好適な溶媒はジクロロメタンである。反応に使用される塩基は、トリエチルアミン、ジエチルアミンおよびピリジンから選択される。反応のための使用に好適な塩基はトリエチルアミンである。ニトロピリジン誘導体のための反応の順序を以下のスキームIIIに示す。
【化17】

スキームIII
【0034】
本発明のさらに別な実施例では、ニトロピリジン誘導体、N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミド(化学式Xの化合物)はその部位での塩化シクロプロピルカルボニルの生成によってシクロプロピルカルボキシ酸を直接的に使用することで調製される。シクロプロピルカルボキシ酸を塩素化溶媒に入れ、その混合物に触媒量の極性プロトン性溶媒と塩化オキサリルまたは塩化チオニルまたはオキシ塩化リンまたはペンタ塩化リンが−10℃から30℃で入れられる。この溶液は撹拌され、−10℃に維持される。
【0035】
化学式Vの4‐クロロ‐2‐アミノ‐3ニトロピリジンを塩素化溶媒に入れ、−15℃から−5℃に冷却する。冷却した溶液に直前に調製された塩化シクロプロピルカルボニルを入れて−15℃から−5℃で撹拌する。この反応質量物に塩素化溶媒に溶解されたトリエチルアミン、ジエチルアミンおよびピリジンから選択される塩基を入れ、その反応質量物を−15℃から−5℃で30分から2時間維持する。反応物の温度を0℃に上昇させ、さらに25℃から35℃の間に上昇させて、2時間から4時間維持する。反応完了後、水を反応質量物に加えて30分間撹拌する。有機層を分離し、水性層を反応に使用された塩素化溶液で抽出する。有機層を水で洗浄して分離させ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を減圧下で蒸留して除去し、残留固体を得る。エチルアセテートをその固体に入れて25℃から35℃で1時間撹拌する。反応質量物を0℃から5℃に冷却し、1時間維持し、固体物を濾過および乾燥させて純粋な化合物N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドを得る。
【0036】
前述の反応で使用された塩素化溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンおよび1,1,2,2、‐テトラクロロエタンから選択される。
【0037】
当業者には、本発明は前述の説明用の実施例の詳細に限定されず、本発明はその本質的な特質から逸脱することなく、その他の特定の態様に具現化できることは明らかであろう。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
実施例1:4‐クロロ‐2‐アミノ‐3‐ニトロピリジンの調製
ステップI:4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミドの調製
【化18】

ピコリン酸塩酸塩(100g)を塩化チオニル(250ml)に入れて25℃から30℃で1時間撹拌した。水滴(14ml)を加えて、その後に、反応物を還流させ加熱し、その還流物を3日間維持した。
【0039】
塩化チオニルを蒸留して完全に除去し、100mlのトルエンを加えてトルエンを蒸留で完全に除去した。再びトルエン(100ml)を加え、反応物を0℃に冷却した。メタノール(40ml)を0℃でゆっくりと加えて1時間撹拌した。固体質量物を濾過して冷却したトルエンで洗浄した。湿性ケーキを100mlDM水に入れて15分間撹拌し、アンモニア溶液(250ml)を滴下して室温で1時間で撹拌した。固体物を濾過し、水で洗浄し、55℃から60℃で乾燥させた。
【0040】
ステップII:4‐クロロ‐2‐アミノピリジンの調製
【化19】

水酸化ナトリウムを水(120g、900ml)中に溶解させて0℃から5℃に冷却した。0℃で臭素(45ml)をゆっくりと入れて30分間撹拌した。0℃の4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミド(60g)を入れて5分間撹拌した。反応物を100℃に加熱し、還流状態に維持して透明な溶液を得た。反応の進行をTLCでモニターした。反応の完了後、反応質量物を0℃から5℃に1時間で冷却し、沈殿固体物を濾過し、冷却水で洗浄して50℃から55℃で3時間から4時間乾燥させた。
乾燥重量:28g(ステージII)
【0041】
ステップIII:4‐クロロ‐2‐アミノ‐3‐ニトロリジンの調製
【化20】

4‐クロロ‐2‐アミノ‐ピリジン(28g)を濃硫酸(224ml)に撹拌しながら溶解させた。ニトロ化混合物[8.4ml 発煙硝酸+17ml濃HSO]を前述の溶液にゆっくりと加え25℃から30℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。反応の完了後、反応溶液を氷(1120g)で冷却して15分間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(420ml)で抽出した。反応質量物のpHを30%炭酸ナトリウム溶液でpH6に調整した。
【0042】
その後前述の質量物を4×420ml酢酸エチルで抽出した。その層を分離し、有機層を200ml飽和重炭酸ナトリウム溶液で中和した。それらの層を再び分離した。その後、減圧下で無水硫酸ナトリウムで乾燥させて蒸留し、粗4‐クロロ‐2‐アミノ‐3‐ニトロピリジンを得た。
【0043】
粗化合物を210mlのMDC内で1時間RTにて撹拌し濾過した。不溶性不純物を再び2×105mlのMDCで洗浄した。両方のMDC層を回収し、完全に蒸留して除去し、黄色固体物を得た。この固体物に105mlメタノールを加え、50℃で1時間加熱した。その後この混合物を0℃から−5℃に冷却し、30分間この温度で撹拌した。沈殿した固体物を濾過し、乾燥させてHPLC純度95%以上の純粋ステージIIIを生成した。
乾燥重量‐8.4gm。
【0044】
[実施例2]
実施例2:2‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐4‐オールの合成
ステップI:4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オールの調製
2‐アミノ‐4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン(50.0g)をD.M.水(1.0リットル)に25℃から30℃で撹拌しながら入れた。濃塩酸(450ml)を1ロットで入れた。反応物を0℃から5℃に冷却し、温度を0℃から5℃に維持しながら硝酸ナトリウム溶液(500mlmpD.M.水中に23g)の追加を開始した。反応混合物を0℃から5℃で30分間撹拌し、反応質量物の温度をゆっくりと25℃から30℃に上昇させ、その後60℃から70℃に上昇させて2時間維持した。2時間後、その反応物を25℃から30℃に冷却し、反応質量物をジクロロメタン(4×250ml)で抽出した。全ての有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下でその溶媒を濃縮して所望の生成物を得た。
乾燥重量=30g(60%)
【0045】
ステップII:4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オールからの2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンの合成:
R.B.フラスコのオキシ塩化リン(81.0ml)と4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐オール(79g)を1ロットで撹拌しながら25℃から30℃で入れた。25℃から30℃のジイソプロピルエチルアミン(11.5ml)を滴下した。反応質量物を撹拌し、温度を90℃から100℃に上昇させて4時間から6時間維持した。反応質量物を10℃から15℃に冷却し、氷と水の混合物内で急冷した。反応質量物を15℃から20℃で60分間撹拌した。固体生成物を濾過し、冷水で洗浄し、よく乾燥させて2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンを得た。
乾燥重量=50g(57.5%)
【0046】
ステップIII:2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジンからの2‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐4‐オールの合成:
R.B.フラスコにジメチルホルムアミド(500ml)、2,4‐ジクロロ‐3‐ニトロピリジン(100g)および酢酸ナトリウム(102.4g)を20℃から30℃で入れた。反応物を120℃から125℃に加熱し、2時間維持した。加熱を停止し、反応質量物を30℃から35℃に徐々に冷却した。飽和塩化アンモニウム溶液(800ml)を入れ、10分から15分間撹拌した。真空下で反応質量物を65℃から70℃で濃縮し、粗固体生成物を得た。その残留物に飽和塩化アンモニウム溶液(1600ml)、DM水(800ml)およびジクロロメタン(1000ml)を入れ、15分間撹拌した。有機層を分離し、さらにジクロロメタン(4×500ml)で水性層を抽出した。有機層を組み合わせ、真空下で濃縮して濃厚な固体質量物を得た。トルエン(1200ml)を残留物に入れ、25℃から30℃で30分から45分間撹拌した。生成物を濾過し、冷却したトルエン(400ml)で洗浄し、真空下で40℃から45℃で乾燥させて2‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐4‐オールを得た。
乾燥重量=45g(50%)
【0047】
[実施例4]
実施例4:N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドの調製
【化21】

4‐クロロ‐2‐アミノ‐3ニトロピリジン(5.0gm)をジクロロメタン(150ml)に撹拌しながら入れ、−10℃に冷却した。これに塩化シクロプロパンカルボニル溶液(15g)を入れ、ジクロロメタン(75ml)を−10℃で溶解させて30分間撹拌した。この反応質量物に塩基性トリエチルアミン溶液(4ml)を入れ、ジクロロメタン(75ml)内で溶解させて−10℃で30分間撹拌し続けた。温度を徐々に0℃に上昇させ、続いて25℃から35℃に上昇させた。反応物を25℃から30℃で撹拌しながら5時間から6時間維持した。反応の完了後、水(100ml)を入れて15分間撹拌した。有機層を分離し、水(100ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸留で除去し残存固体質量物を得た。この固体物にエチルアセテート(15ml)を加えて25℃から35℃で30分間撹拌した。反応物を0℃から5℃に徐々に冷却した。その後この固体物を濾過し、乾燥させて純粋なN‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドを生成した。
【0048】
[実施例5]
実施例5:N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドの調製:
ジクロロメタン(100ml)にシクロプロパンカルボキシル酸(12.5g)を溶解させた。ジメチルホルムアミド(0.12ml)を入れ、10分間撹拌した。この溶液に塩化オキサリル(22.5g)をゆっくりと入れ、ジクロロメタン(25ml)に25℃から35℃で溶解させ、2時間撹拌し続けた。冷却処理し、前述の溶液を−10℃に冷却した。
【0049】
別なフラスコの、4‐クロロ‐2‐アミノ‐3‐ニトロピリジンをジクロロメタン(150ml)に入れ、撹拌しながら−10℃まで冷却した。これに前述の塩化シクロプロパンカルボニル溶液を加えて温度を−15℃から−5℃に1ロット内で維持し、この温度で30分間撹拌した。さらにトリエチルアミン(13ml)を加えてジクロロメタン(25ml)内で溶解させて反応溶液にし、−15℃から−5℃で30分間撹拌し続けた。徐々に温度を0℃に上昇させ、さらに25℃から35℃に上昇させて2時間から3時間維持した。反応完了後、水(100ml)を入れて15分間撹拌した。有機層を分離し、水(100ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸留により除去し、残存固体質量物を得た。この固体物に酢酸エチル(15ml)を加えて25℃から35℃で30分間撹拌した。反応物を0℃から5℃に徐々に冷却した。この固体物を濾過し、乾燥させて純粋なN‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドを生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iのニトロピリジン誘導体、その前駆体およびその塩の調製方法であって、
【化1】

式中、Rは、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、‐NH‐C(O)‐Rから選択され、
は、1から6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基、あるいは3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、
は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基から選択され、
本方法は、
a)ピコリン酸塩酸塩を塩化チオニルと反応させ、続いてアンモニアで処理して化学式IIIの化合物4‐クロロピリジン‐2‐カルボキサミドを得るステップと、
【化2】

b)化学式IIIの化合物をホフマン分解で処理し、化学式IVの化合物を得るステップと、
【化3】

c)化学式IVの化合物をニトロ化剤で処理し、化学式Vの化合物を得るステップと、
【化4】

d)化学式Vの化合物をジアゾ化処理し、続いて加水分解して化学式VIの化合物を得るステップと、
【化5】

e)化学式VIの化合物を塩基の存在下でオキシ塩化リンと反応させ、化学式VIIの化合物を得るステップと、
【化6】

f)化学式VIIの化合物を極性プロトン性溶媒および酢酸ナトリウムまたは炭酸セシウムの試薬の存在下で酢酸とパラ位で選択的に置換し、化学式VIIIの化合物を得るステップと、
【化7】

を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップe)で使用した塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミン、トリブチルアミンおよびピリジンから選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップe)は80℃から100℃の範囲の温度で実行されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ステップf)にて選択的置換に使用される前記試薬が酢酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ステップf)で使用される前記極性プロトン性溶媒は、アセトニトリル、N,N‐ジメチルホルムアミド、およびN,N‐ジメチルアセトアミドから選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化学式Vの化合物4‐クロロ‐2‐アミノ‐3‐ニトロピリジンを、塩素化溶剤と塩基の存在下で塩化シクロプロパンカルボニルと反応させることで、化学式Xの化合物N‐(4‐クロロ‐3‐ニトロピリジン‐2‐イル)シクロプロパンカルボキサミドを得るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【化8】

【請求項7】
塩化シクロプロピルカルボニルは、シクロプロパンカルボキシル酸を塩素化剤と混合することによりその場で調製されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記塩素化剤は、塩化オキサリル、塩化チオニル、オキシ塩化リンまたは五塩化リンから選択されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記塩素化溶剤はジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンおよび1,1,2,2‐テトラクロロエタンから選択されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記塩基は、トリエチルアミン、ジエチルアミンおよびピリジンから選択されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項11】
ニトロピリジン誘導体の調製に使用できる化学式IVの化合物である前駆体の調製方法であって、
a.化学式IIの化合物ピコリン酸塩酸塩を塩化チオニルと反応させ、続いてアンモニアで処理し、化学式IIIの化合物を得るステップと、
【化9】

b.化学式IIIの化合物をホフマン分解で処理し、化学式IVの化合物4‐クロロ‐2‐アミノピリジンを得るステップと、
【化10】

を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
化学式IVの化合物、化学式Vの化合物、化学式VIの化合物、化学式VIIの化合物、化学式VIIIの化合物および化学式Xの化合物の調製を包含する、請求項1から11のいずれか一項に記載のニトロピリジン誘導体および前駆体の調製方法。

【公表番号】特表2012−516843(P2012−516843A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547064(P2011−547064)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000055
【国際公開番号】WO2010/089773
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511187052)インドコ レメディーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】