ニュートン流体特性を有する電気粘性流体
【課題】ニュートン流体特性を有する電気粘性流体を提供する。
【解決手段】本発明の一態様による電気粘性流体は、分極性粒子と分散媒とを含む。分極性粒子は、シリカ粒子に基づいて形成される。分散媒は、シリコンオイルを含みうる。シリコンオイルは、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercaptogroup、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを含む変性シリコンオイルになりうる。
【解決手段】本発明の一態様による電気粘性流体は、分極性粒子と分散媒とを含む。分極性粒子は、シリカ粒子に基づいて形成される。分散媒は、シリコンオイルを含みうる。シリコンオイルは、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercaptogroup、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを含む変性シリコンオイルになりうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気粘性流体及び電気粘性流体の製造及び応用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気粘性流体(Electrorheological Fluid:ERF)は、絶縁性の流体に分極性が強い微粒子が分散された懸濁液(suspension)または流体を言う。この電気粘性流体は、電場が印加されると、その粘性力学的特性が変わる特徴を有している。
【0003】
電気粘性流体に電場が印加される場合、分散された粒子の相互引力によって分散された粒子が誘電分極(dielectric polarization)されることによって、印加された電場方向に分散された粒子が鎖構造に整列し、このような鎖構造が流体の流れや外部から加えられる力に抵抗を示すことで粘度が上昇する。
【0004】
このように、電気粘性流体は、追加的な運動装置なしでも単純な電場の印加によって機械力を制御することができる長所があって、自動車のダンパー(damper)システム、衝撃吸収器(shock absorber)、エンジンマウント(engine mount)、流量制御用弁システム及びその他の位置決め(positioning)、ロボット、アクチュエータ(actuator)など幅広い分野にまでその応用が可能である。
【0005】
しかし、電気粘性流体は、印加された電場の影響下で分散された粒子が電場方向に配列するために、粘度が急増するビンガム(Bingham)流体の挙動を表わし、そのメカニズムが非常に複雑で正確な数式的モデリングは確立されていない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による電気粘性流体は、シリカ粒子を含む分極性粒子と、分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含みうる。
【0008】
本発明の一態様による電気粘性流体の製造方法は、シリカ粒子を含む分極性粒子を形成する段階と、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを有する分散媒を形成する段階と、分極性粒子を分散媒に分散させる段階と、を含みうる。
【0009】
本発明の一態様による表示装置は、第1電極と、第1電極に対向する第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される電気粘性流体と、を含み、電気粘性流体は、シリカ粒子を含む分極性粒子及びこのような分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含み、分極性粒子の屈折率と分散媒の屈折率は、実質的に同一であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による電気粘性流体を示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2B】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2C】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2D】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3A】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3B】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3C】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3D】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3E】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3F】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図4】分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する方法に関する一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による電気粘性流体を含む表示装置を示す図である。
【図6A】本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。
【図6B】本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。
【図7A】本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【図7B】本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【図8】第1電気粘性流体と第2電気粘性流体とのレオロジー的特性の比較結果を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態による電気粘性流体のレオロジー的特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施のための具体例を詳しく説明する。後述する実施形態は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が特定の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による電気粘性流体を示す図である。
【0013】
図1を参照すると、本実施形態による電気粘性流体100は、分極性粒子101と分散媒102とを含む。
【0014】
分極性粒子101は、分極性(polarizability)を有する微粒子でありうる。分極性粒子101は、シリカ(silica)粒子103またはシリカ粒子103に分極性を有する物質104をコーティングさせたものであってよい。
【0015】
シリカ粒子103は、約5nmないし20μmの大きさを有し、非晶質の気孔のない二酸化ケイ素を使うことができる。
【0016】
シリカ粒子103にコーティングされる分極性有機物質104は、シリカ粒子103と物理的/化学的に結合され、シリカ粒子103の分極性を高める。本実施形態によれば、分極性有機物質104としては、分子分極度の高い物質が使われうるが、このような物質としては、ウレア(urea)、チオウレア(Thiourea)、メラミン(Melamine)、アクリルアミド(Acrylamide)及び分子内にウレア、チオウレア、メラミン、アクリルアミドグループを含む分子などが挙げられる。
【0017】
分極性粒子101は、分散媒102に分散される。本実施形態によれば、分散媒102は、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含みうる。
【0018】
この際、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のような官能基は、他の有機基と共に、または他の有機基なしに単独でシリコンオイル分子の末端または側端に結合されうる。
【0019】
図2Aないし図2Dは、本発明の一実施形態による、分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【0020】
図2Aないし図2Dを参照すると、本実施形態による分散媒102(図1)は、純粋なシリコンオイル(例えば、ジメチルシリコンオイル)に水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つが結合されるシリコンオイルを含みうる。
【0021】
例えば、図2Aは、水酸基(hydroxyl group、−OH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Bは、アミノ基(amino group、−NH2 group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Cは、メルカプト基(mercapto group、−SH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Dは、カルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【0022】
図2Aないし図2Dで、R1及びR2は、有機基(organic group)を表わす。水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)などは、有機基と共に結合されるか、有機基なしに単独で結合されうる。
【0023】
例えば、水酸基(hydroxyl group、−OH group)の場合、有機基R1と共にカルビノール官能基(carbinol functional group)を形成するか、有機基R1なしにシラノール官能基(silanol functional group)を形成しうる。R1と(R1)は、それぞれ有機基R1が存在する時と存在しない時とを表わす。
【0024】
図3Aないし図3Fは、本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。これは、シリコンオイルが、水酸基(hydroxyl group、−OH group)を含む場合、水酸基(hydroxyl group、−OH group)の結合位置に関する一例になりうる。
【0025】
図3Aないし図3Fを参照すると、水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、純粋なシリコンオイルの分子構造の末端や側端に結合されうる。また、水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、所定の有機基と共に、または有機基なしに単独で結合されうる。図3Aないし図3Fで、R1ないしR6は、それぞれ有機基を意味し、R1ないしR6は、互いに同じか異なりうる。
【0026】
再び図1で、本発明の一実施形態によれば、分極性粒子101は、電気粘性流体の総含量に対して、約5体積(volume)%ないし70体積%で含まれうる。このような場合、初期粘度及び電場に対する降伏応力を適切に保持することができる。
【0027】
また、本発明の他の実施形態によれば、分極性粒子101の屈折率と分散媒102の屈折率は、類似するように形成される。例えば、分極性粒子101の屈折率と分散媒102の屈折率との差は、約0ないし0.06になりうる。分極性粒子101が白色を有する粒子であり、分極性粒子101と分散媒102の屈折率が類似しているか、実質的に同一である場合、電気粘性流体は、透明性を有する。このように、透明性が確保される電気粘性流体100は、所定の表示装置(Display device)に適用可能である。
【0028】
分極性粒子101の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒102は、多様なシリコンオイル及び/またはシリコンオイル以外の絶縁性流体を混合して作ることができる。例えば、水酸基を有するシリコンオイルと絶縁性流体とを混合して、分極性粒子101の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒102(例えば、分極性粒子との屈折率の差が、0.06以下である分散媒)を作ることができる。
【0029】
流体の混合による分散媒102の屈折率は、次のようなローレンツ−ローレンツの公式(Lorentz−Lorentz Equation)に基づいて計算されうる。
【0030】
【数1】
【0031】
図4は、分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する方法に関する一例を示す図である。
【0032】
図4を参照すると、厚さ約0.7mmの透明なガラス301の間に厚さ約300μmの両面テープ302を使って空間を作り、その空間に所定の屈折率を有する分散媒に適量の分極性粒子を分散させて作った透明度確認用懸濁液(例えば、候補電気粘性流体)を入れた後、透明度を肉眼でまたは所定の機器を用いて確認することが可能である。
【0033】
例えば、多様な屈折率を有する分散媒を準備し、各分散媒に適量の分極性粒子を分散させて透明度確認用懸濁液を複数個準備する。そして、準備された透明度確認用懸濁液をそれぞれ示された装置に充填し、Perkin Elmer社のLambda−900UV/Vis/NIR Spectrometerを用いて約550nmの波長を有する光に対して透明度を測定する。この際、約90%の透明度を示す透明度確認用懸濁液に含まれた分散媒が、分極性粒子と類似している屈折率を有するものと見なし、これを選択することが可能である。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態による電気粘性流体を含む表示装置を示す図である。
【0035】
図5を参照すると、本実施形態による表示装置400は、上部電極401、下部電極402及び電気粘性流体403を含む。上部電極401と下部電極402は、互いに対向し、電気粘性流体403は、上部電極401と下部電極402との間に介在される。
【0036】
図示されたように、電気粘性流体403は、分極性粒子404と分散媒405とを含み、分極性粒子404の屈折率と分散媒405の屈折率は、実質的に同一であり得る。したがって、上部電極401及び下部電極402を通じて電場が印加されれば、分極性粒子404が分散媒405内で電場方向に配列することによって、その粘度が急増することが可能である。また、分極性粒子404と分散媒405との屈折率が実質的に同一であるために、電気粘性流体403の透明性を保証することができる。
【0037】
また、分散媒405が、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含むために、電場の有無による粘度変化の程度が大きい。したがって、表示装置400を操作するユーザに粘度変化による高いタッチ感を与えることができる。
【0038】
さらに、本発明の一実施形態によって、表示装置400は、外部の接触または圧力を感知してセンシングする入出力装置、例えば、タッチパネル(touch panel)(図示せず)をさらに含むこともできる。
【0039】
図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。図6A及び図6Bを参照して、図5に示された表示装置400の動作原理を説明すれば、次の通りである。
【0040】
図6Aで、電場が印加されない場合、電気粘性流体403の分極性粒子404は、一定の方向性なしに分散媒405に無秩序に分散されている状態である。
【0041】
図6Bで、電場が印加されれば、電気粘性流体403の各分極性粒子404は、誘電分極され、隣り合う分極性粒子404は、相互引力によって上部電極401と下部電極402との間で電場方向に沿って鎖(chain)または柱(column)形状に整列される。このような鎖または柱形状に整列された分極性粒子404は、外部から加えられる力によって、その構造が破壊されながら、誘電分極された分極性粒子404が再び鎖または柱形状に整列されようとする復元力によって粘度が上昇する。
【0042】
図7A及び図7Bは、本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【0043】
図7A及び図7Bを参照すると、本実施形態による電気粘性流体600は、下部電極601、上部電極602、電気粘性流体603、下部基板607、及び上部基板608を含み、電気粘性流体603は、透明性を有することが可能である。例えば、電気粘性流体603は、分極性粒子604及び分極性粒子604と類似している屈折率を有する分散媒605を含みうる。
【0044】
図7Aで、下部電極601と上部電極602とに電圧が印加されれば、電気粘性流体603の分極性粒子604が鎖または柱形状に整列することによって、電気粘性流体603の粘度が増加することが可能である。この状態で、ユーザが身体の一部または器具を使って上部基板608上でタッチパネルを押せば、電気粘性流体603の高い粘度による反発力がユーザに伝達される。上部基板608の変位が一定のレベルに至れば、ユーザの入力が発生した位置情報が制御部(図示せず)に伝達され、制御部は印加された電圧を解除する。
【0045】
図7Bで、電圧が解除されれば、分極性粒子604の整列が壊れながら電気粘性流体603の粘度が減少し、ユーザが感じる反発力も減少しながらユーザにクリック感またはタッチ感を与える。
【0046】
次いで、本発明の一実施形態による、水酸基を有するシリコンオイルを含む分散媒に基づいた電気粘性流体と水酸基を有さないシリコンオイルを含む分散媒に基づいた電気粘性流体との間のレオロジー的特性を比較する。
【0047】
[分極性粒子の製造]
蒸留水にシリカ粒子(Sunsil−20、先進化学)を入れて約1時間機械的に撹拌して懸濁液を作る。そして、この懸濁液に4gのウレア(urea、Aldrich)を添加し、常温で16時間機械的に撹拌する。引き続き、遠心分離機を通じて懸濁液から蒸留水成分を分離し、80℃の真空オーブンで24時間乾燥して、白色の分極性粒子(例えば、図1の101)を得る。
【0048】
[第1電気粘性流体の製造]
作られた分極性粒子をシリコンオイル(X−22−170DX、Shinetsu)に13体積%で分散させて電気粘性流体を製造する。X−22−170DXシリコンオイルは、図2Aの分子構造を有するシリコンオイルに、水酸基を含むシリコンオイルを指称する。
【0049】
[第2電気粘性流体の製造]
作られた分極性粒子をシリコンオイル(KF−96、Shinetsu)に13体積%で分散させて電気粘性流体を製造する。KF−96シリコンオイルは、水酸基を有さない純粋なシリコンオイルを指称する。
【0050】
図8は、第1電気粘性流体と第2電気粘性流体とのレオロジー的特性の比較結果を示す図である。
【0051】
図8を参照すると、電場を印加していない場合、水酸基を有するシリコンオイルに基づく第1電気粘性流体は、せん断率(shear rate)1以上で粘度が実質的に同一のニュートン流体(Newtonian fluid)特性を示す一方、純粋なシリコンオイルに基づく第2電気粘性流体は、粘度がせん断率によって変わる非ニュートン流体(Non−Newtonian fluid)特性を示すことが分かる。
【0052】
電気粘性流体において、電場を印加していない場合の粘度と電場を印加した場合の粘度との間の比率が大きいものが良いが、電場の有無による粘度変化率を説明すれば、第1電気粘性流体の粘度変化率が、第2電気粘性流体のそれより大きいことが分かる。
【0053】
次いで、このような第1電気粘性流体を用いて透明な電気粘性流体を作る方法を説明する。
【0054】
[透明電気粘性流体の製造の実施例]
水酸基を一つ以上含んだシリコンオイルを2種以上混合するか、1種の水酸基を含んだシリコンオイルと2種以上の他の絶縁性流体またはオイルとを混合して分散媒を作る。例えば、数式1のようなローレンツ−ローレンツの公式を用いて相対的に低い屈折率を有する水酸基を含んだシリコンオイル(X−22−170DX、nD=1.406、Shinetsu)と相対的に高い屈折率を有するシリコンオイル(PDS−1615、nD=1.473、Gelest)とを適量混合して、多様な屈折率を有する分散媒を製造することが可能である。
【0055】
そして、分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する。例えば、作られたそれぞれの分散媒に適量の分極性粒子を分散させて懸濁液を作り、該作られた懸濁液の透明度を確認することによって、分散媒の屈折率を確認することが可能である。本実施形態において、所定の屈折率を有する多数の分散媒に適量の分極性粒子を分散させた懸濁液は、透明度確認用懸濁液または候補電気粘性流体と称することができる。言い換えれば、屈折率が異なる多数の分散媒に基づいて透明度確認用懸濁液を作り、この透明度確認用懸濁液の透明度を確認することによって、適切な分散媒を選択することが可能である。
【0056】
そして、分極性粒子を選択された分散媒、すなわち、分極性粒子と類似している屈折率を有する分散媒に分散させて透明性を有する電気粘性流体を作る。例えば、作られた分極性粒子約13体積%を、選択された分散媒に入れて、撹拌及びソニケーションを通じて分極性粒子を分散させることが可能である。
【0057】
ここでは、説明の便宜上、水酸基を例としたが、その他にもアミノ基、メルカプト基、またはカルボキシ基も利用できるということは、当業者に自明である。
【0058】
図9は、本発明の他の実施形態による電気粘性流体のレオロジー的特性を示す図である。図9で、電気粘性流体は、シリカ粒子(Sunsil−20、先進化学)をシリコンオイル(X−22−170BX、Shinetsu)に8体積%分散させて作われうる。X−22−170BXシリコンオイルは、図2Aの分子構造を有するシリコンオイルに、水酸基を含むシリコンオイルを指称する。
【0059】
図9を参照すると、電場を印加していない場合、水酸基を有するシリコンオイルに基づく第3電気粘性流体は、せん断率1以上で粘度が実質的に同一のニュートン流体特性を示すことが分かる。
【0060】
前述したように、開示された実施形態によれば、電気粘性流体を成す分散媒が、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含むために、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体が提供されうる。また、分散媒と分極性粒子との屈折率が実質的に同一であるために、表示装置に適用可能な電気粘性流体が提供されうる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体関連の技術分野に適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気粘性流体及び電気粘性流体の製造及び応用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気粘性流体(Electrorheological Fluid:ERF)は、絶縁性の流体に分極性が強い微粒子が分散された懸濁液(suspension)または流体を言う。この電気粘性流体は、電場が印加されると、その粘性力学的特性が変わる特徴を有している。
【0003】
電気粘性流体に電場が印加される場合、分散された粒子の相互引力によって分散された粒子が誘電分極(dielectric polarization)されることによって、印加された電場方向に分散された粒子が鎖構造に整列し、このような鎖構造が流体の流れや外部から加えられる力に抵抗を示すことで粘度が上昇する。
【0004】
このように、電気粘性流体は、追加的な運動装置なしでも単純な電場の印加によって機械力を制御することができる長所があって、自動車のダンパー(damper)システム、衝撃吸収器(shock absorber)、エンジンマウント(engine mount)、流量制御用弁システム及びその他の位置決め(positioning)、ロボット、アクチュエータ(actuator)など幅広い分野にまでその応用が可能である。
【0005】
しかし、電気粘性流体は、印加された電場の影響下で分散された粒子が電場方向に配列するために、粘度が急増するビンガム(Bingham)流体の挙動を表わし、そのメカニズムが非常に複雑で正確な数式的モデリングは確立されていない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による電気粘性流体は、シリカ粒子を含む分極性粒子と、分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含みうる。
【0008】
本発明の一態様による電気粘性流体の製造方法は、シリカ粒子を含む分極性粒子を形成する段階と、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを有する分散媒を形成する段階と、分極性粒子を分散媒に分散させる段階と、を含みうる。
【0009】
本発明の一態様による表示装置は、第1電極と、第1電極に対向する第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される電気粘性流体と、を含み、電気粘性流体は、シリカ粒子を含む分極性粒子及びこのような分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含み、分極性粒子の屈折率と分散媒の屈折率は、実質的に同一であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による電気粘性流体を示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2B】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2C】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図2D】本発明の一実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3A】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3B】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3C】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3D】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3E】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図3F】本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【図4】分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する方法に関する一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による電気粘性流体を含む表示装置を示す図である。
【図6A】本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。
【図6B】本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。
【図7A】本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【図7B】本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【図8】第1電気粘性流体と第2電気粘性流体とのレオロジー的特性の比較結果を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態による電気粘性流体のレオロジー的特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施のための具体例を詳しく説明する。後述する実施形態は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が特定の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による電気粘性流体を示す図である。
【0013】
図1を参照すると、本実施形態による電気粘性流体100は、分極性粒子101と分散媒102とを含む。
【0014】
分極性粒子101は、分極性(polarizability)を有する微粒子でありうる。分極性粒子101は、シリカ(silica)粒子103またはシリカ粒子103に分極性を有する物質104をコーティングさせたものであってよい。
【0015】
シリカ粒子103は、約5nmないし20μmの大きさを有し、非晶質の気孔のない二酸化ケイ素を使うことができる。
【0016】
シリカ粒子103にコーティングされる分極性有機物質104は、シリカ粒子103と物理的/化学的に結合され、シリカ粒子103の分極性を高める。本実施形態によれば、分極性有機物質104としては、分子分極度の高い物質が使われうるが、このような物質としては、ウレア(urea)、チオウレア(Thiourea)、メラミン(Melamine)、アクリルアミド(Acrylamide)及び分子内にウレア、チオウレア、メラミン、アクリルアミドグループを含む分子などが挙げられる。
【0017】
分極性粒子101は、分散媒102に分散される。本実施形態によれば、分散媒102は、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含みうる。
【0018】
この際、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のような官能基は、他の有機基と共に、または他の有機基なしに単独でシリコンオイル分子の末端または側端に結合されうる。
【0019】
図2Aないし図2Dは、本発明の一実施形態による、分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【0020】
図2Aないし図2Dを参照すると、本実施形態による分散媒102(図1)は、純粋なシリコンオイル(例えば、ジメチルシリコンオイル)に水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つが結合されるシリコンオイルを含みうる。
【0021】
例えば、図2Aは、水酸基(hydroxyl group、−OH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Bは、アミノ基(amino group、−NH2 group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Cは、メルカプト基(mercapto group、−SH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。図2Dは、カルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)を有するシリコンオイルの分子構造を示す図である。
【0022】
図2Aないし図2Dで、R1及びR2は、有機基(organic group)を表わす。水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)などは、有機基と共に結合されるか、有機基なしに単独で結合されうる。
【0023】
例えば、水酸基(hydroxyl group、−OH group)の場合、有機基R1と共にカルビノール官能基(carbinol functional group)を形成するか、有機基R1なしにシラノール官能基(silanol functional group)を形成しうる。R1と(R1)は、それぞれ有機基R1が存在する時と存在しない時とを表わす。
【0024】
図3Aないし図3Fは、本発明の他の実施形態によって分散媒に含まれるシリコンオイルの分子構造を示す図である。これは、シリコンオイルが、水酸基(hydroxyl group、−OH group)を含む場合、水酸基(hydroxyl group、−OH group)の結合位置に関する一例になりうる。
【0025】
図3Aないし図3Fを参照すると、水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、純粋なシリコンオイルの分子構造の末端や側端に結合されうる。また、水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、所定の有機基と共に、または有機基なしに単独で結合されうる。図3Aないし図3Fで、R1ないしR6は、それぞれ有機基を意味し、R1ないしR6は、互いに同じか異なりうる。
【0026】
再び図1で、本発明の一実施形態によれば、分極性粒子101は、電気粘性流体の総含量に対して、約5体積(volume)%ないし70体積%で含まれうる。このような場合、初期粘度及び電場に対する降伏応力を適切に保持することができる。
【0027】
また、本発明の他の実施形態によれば、分極性粒子101の屈折率と分散媒102の屈折率は、類似するように形成される。例えば、分極性粒子101の屈折率と分散媒102の屈折率との差は、約0ないし0.06になりうる。分極性粒子101が白色を有する粒子であり、分極性粒子101と分散媒102の屈折率が類似しているか、実質的に同一である場合、電気粘性流体は、透明性を有する。このように、透明性が確保される電気粘性流体100は、所定の表示装置(Display device)に適用可能である。
【0028】
分極性粒子101の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒102は、多様なシリコンオイル及び/またはシリコンオイル以外の絶縁性流体を混合して作ることができる。例えば、水酸基を有するシリコンオイルと絶縁性流体とを混合して、分極性粒子101の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒102(例えば、分極性粒子との屈折率の差が、0.06以下である分散媒)を作ることができる。
【0029】
流体の混合による分散媒102の屈折率は、次のようなローレンツ−ローレンツの公式(Lorentz−Lorentz Equation)に基づいて計算されうる。
【0030】
【数1】
【0031】
図4は、分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する方法に関する一例を示す図である。
【0032】
図4を参照すると、厚さ約0.7mmの透明なガラス301の間に厚さ約300μmの両面テープ302を使って空間を作り、その空間に所定の屈折率を有する分散媒に適量の分極性粒子を分散させて作った透明度確認用懸濁液(例えば、候補電気粘性流体)を入れた後、透明度を肉眼でまたは所定の機器を用いて確認することが可能である。
【0033】
例えば、多様な屈折率を有する分散媒を準備し、各分散媒に適量の分極性粒子を分散させて透明度確認用懸濁液を複数個準備する。そして、準備された透明度確認用懸濁液をそれぞれ示された装置に充填し、Perkin Elmer社のLambda−900UV/Vis/NIR Spectrometerを用いて約550nmの波長を有する光に対して透明度を測定する。この際、約90%の透明度を示す透明度確認用懸濁液に含まれた分散媒が、分極性粒子と類似している屈折率を有するものと見なし、これを選択することが可能である。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態による電気粘性流体を含む表示装置を示す図である。
【0035】
図5を参照すると、本実施形態による表示装置400は、上部電極401、下部電極402及び電気粘性流体403を含む。上部電極401と下部電極402は、互いに対向し、電気粘性流体403は、上部電極401と下部電極402との間に介在される。
【0036】
図示されたように、電気粘性流体403は、分極性粒子404と分散媒405とを含み、分極性粒子404の屈折率と分散媒405の屈折率は、実質的に同一であり得る。したがって、上部電極401及び下部電極402を通じて電場が印加されれば、分極性粒子404が分散媒405内で電場方向に配列することによって、その粘度が急増することが可能である。また、分極性粒子404と分散媒405との屈折率が実質的に同一であるために、電気粘性流体403の透明性を保証することができる。
【0037】
また、分散媒405が、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含むために、電場の有無による粘度変化の程度が大きい。したがって、表示装置400を操作するユーザに粘度変化による高いタッチ感を与えることができる。
【0038】
さらに、本発明の一実施形態によって、表示装置400は、外部の接触または圧力を感知してセンシングする入出力装置、例えば、タッチパネル(touch panel)(図示せず)をさらに含むこともできる。
【0039】
図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態による表示装置の動作原理を示す図である。図6A及び図6Bを参照して、図5に示された表示装置400の動作原理を説明すれば、次の通りである。
【0040】
図6Aで、電場が印加されない場合、電気粘性流体403の分極性粒子404は、一定の方向性なしに分散媒405に無秩序に分散されている状態である。
【0041】
図6Bで、電場が印加されれば、電気粘性流体403の各分極性粒子404は、誘電分極され、隣り合う分極性粒子404は、相互引力によって上部電極401と下部電極402との間で電場方向に沿って鎖(chain)または柱(column)形状に整列される。このような鎖または柱形状に整列された分極性粒子404は、外部から加えられる力によって、その構造が破壊されながら、誘電分極された分極性粒子404が再び鎖または柱形状に整列されようとする復元力によって粘度が上昇する。
【0042】
図7A及び図7Bは、本発明の他の実施形態による電気粘性流体を含むタッチパネル及びその動作の例を示す図である。
【0043】
図7A及び図7Bを参照すると、本実施形態による電気粘性流体600は、下部電極601、上部電極602、電気粘性流体603、下部基板607、及び上部基板608を含み、電気粘性流体603は、透明性を有することが可能である。例えば、電気粘性流体603は、分極性粒子604及び分極性粒子604と類似している屈折率を有する分散媒605を含みうる。
【0044】
図7Aで、下部電極601と上部電極602とに電圧が印加されれば、電気粘性流体603の分極性粒子604が鎖または柱形状に整列することによって、電気粘性流体603の粘度が増加することが可能である。この状態で、ユーザが身体の一部または器具を使って上部基板608上でタッチパネルを押せば、電気粘性流体603の高い粘度による反発力がユーザに伝達される。上部基板608の変位が一定のレベルに至れば、ユーザの入力が発生した位置情報が制御部(図示せず)に伝達され、制御部は印加された電圧を解除する。
【0045】
図7Bで、電圧が解除されれば、分極性粒子604の整列が壊れながら電気粘性流体603の粘度が減少し、ユーザが感じる反発力も減少しながらユーザにクリック感またはタッチ感を与える。
【0046】
次いで、本発明の一実施形態による、水酸基を有するシリコンオイルを含む分散媒に基づいた電気粘性流体と水酸基を有さないシリコンオイルを含む分散媒に基づいた電気粘性流体との間のレオロジー的特性を比較する。
【0047】
[分極性粒子の製造]
蒸留水にシリカ粒子(Sunsil−20、先進化学)を入れて約1時間機械的に撹拌して懸濁液を作る。そして、この懸濁液に4gのウレア(urea、Aldrich)を添加し、常温で16時間機械的に撹拌する。引き続き、遠心分離機を通じて懸濁液から蒸留水成分を分離し、80℃の真空オーブンで24時間乾燥して、白色の分極性粒子(例えば、図1の101)を得る。
【0048】
[第1電気粘性流体の製造]
作られた分極性粒子をシリコンオイル(X−22−170DX、Shinetsu)に13体積%で分散させて電気粘性流体を製造する。X−22−170DXシリコンオイルは、図2Aの分子構造を有するシリコンオイルに、水酸基を含むシリコンオイルを指称する。
【0049】
[第2電気粘性流体の製造]
作られた分極性粒子をシリコンオイル(KF−96、Shinetsu)に13体積%で分散させて電気粘性流体を製造する。KF−96シリコンオイルは、水酸基を有さない純粋なシリコンオイルを指称する。
【0050】
図8は、第1電気粘性流体と第2電気粘性流体とのレオロジー的特性の比較結果を示す図である。
【0051】
図8を参照すると、電場を印加していない場合、水酸基を有するシリコンオイルに基づく第1電気粘性流体は、せん断率(shear rate)1以上で粘度が実質的に同一のニュートン流体(Newtonian fluid)特性を示す一方、純粋なシリコンオイルに基づく第2電気粘性流体は、粘度がせん断率によって変わる非ニュートン流体(Non−Newtonian fluid)特性を示すことが分かる。
【0052】
電気粘性流体において、電場を印加していない場合の粘度と電場を印加した場合の粘度との間の比率が大きいものが良いが、電場の有無による粘度変化率を説明すれば、第1電気粘性流体の粘度変化率が、第2電気粘性流体のそれより大きいことが分かる。
【0053】
次いで、このような第1電気粘性流体を用いて透明な電気粘性流体を作る方法を説明する。
【0054】
[透明電気粘性流体の製造の実施例]
水酸基を一つ以上含んだシリコンオイルを2種以上混合するか、1種の水酸基を含んだシリコンオイルと2種以上の他の絶縁性流体またはオイルとを混合して分散媒を作る。例えば、数式1のようなローレンツ−ローレンツの公式を用いて相対的に低い屈折率を有する水酸基を含んだシリコンオイル(X−22−170DX、nD=1.406、Shinetsu)と相対的に高い屈折率を有するシリコンオイル(PDS−1615、nD=1.473、Gelest)とを適量混合して、多様な屈折率を有する分散媒を製造することが可能である。
【0055】
そして、分極性粒子の屈折率と類似している屈折率を有する分散媒を選択する。例えば、作られたそれぞれの分散媒に適量の分極性粒子を分散させて懸濁液を作り、該作られた懸濁液の透明度を確認することによって、分散媒の屈折率を確認することが可能である。本実施形態において、所定の屈折率を有する多数の分散媒に適量の分極性粒子を分散させた懸濁液は、透明度確認用懸濁液または候補電気粘性流体と称することができる。言い換えれば、屈折率が異なる多数の分散媒に基づいて透明度確認用懸濁液を作り、この透明度確認用懸濁液の透明度を確認することによって、適切な分散媒を選択することが可能である。
【0056】
そして、分極性粒子を選択された分散媒、すなわち、分極性粒子と類似している屈折率を有する分散媒に分散させて透明性を有する電気粘性流体を作る。例えば、作られた分極性粒子約13体積%を、選択された分散媒に入れて、撹拌及びソニケーションを通じて分極性粒子を分散させることが可能である。
【0057】
ここでは、説明の便宜上、水酸基を例としたが、その他にもアミノ基、メルカプト基、またはカルボキシ基も利用できるということは、当業者に自明である。
【0058】
図9は、本発明の他の実施形態による電気粘性流体のレオロジー的特性を示す図である。図9で、電気粘性流体は、シリカ粒子(Sunsil−20、先進化学)をシリコンオイル(X−22−170BX、Shinetsu)に8体積%分散させて作われうる。X−22−170BXシリコンオイルは、図2Aの分子構造を有するシリコンオイルに、水酸基を含むシリコンオイルを指称する。
【0059】
図9を参照すると、電場を印加していない場合、水酸基を有するシリコンオイルに基づく第3電気粘性流体は、せん断率1以上で粘度が実質的に同一のニュートン流体特性を示すことが分かる。
【0060】
前述したように、開示された実施形態によれば、電気粘性流体を成す分散媒が、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含むために、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体が提供されうる。また、分散媒と分極性粒子との屈折率が実質的に同一であるために、表示装置に適用可能な電気粘性流体が提供されうる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ニュートン流体特性を有する電気粘性流体関連の技術分野に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子と、
前記分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、
を含むことを特徴とする電気粘性流体。
【請求項2】
前記分散媒は、
水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(aminogroup、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つが、有機基と共に、または有機基なしに純粋なシリコンオイル分子の末端または側端に結合されて形成されるシリコンオイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項3】
前記水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、
前記有機基と共にカルビノール官能基(carbinol functional group)を形成することを特徴とする請求項2に記載の電気粘性流体。
【請求項4】
前記水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、
前記有機基なしにシラノール官能基(silanol functional group)を形成することを特徴とする請求項2に記載の電気粘性流体。
【請求項5】
前記分極性粒子は、
前記シリカ粒子及び前記シリカ粒子に物理的または化学的に結合される分極性有機物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項6】
前記分極性有機物質は、
ウレア(Urea)、チオウレア(Thiourea)、メラミン(Melamine)、アクリルアミド(Acrylamide)及びこれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5に記載の電気粘性流体。
【請求項7】
前記分極性粒子の屈折率と前記分散媒の屈折率との差が、0.06以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項8】
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子を形成する段階と、
水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(aminogroup、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを有する分散媒を形成する段階と、
前記分極性粒子を前記分散媒に分散させる段階と、
を含むことを特徴とする電気粘性流体の製造方法。
【請求項9】
前記分極性粒子を形成する段階は、
蒸留水にシリカ粒子を入れて撹拌して、第1懸濁液を作る段階と、
前記第1懸濁液に分極性有機物質を入れて撹拌して、第2懸濁液を作る段階と、
前記第2懸濁液から前記蒸留水を分離する段階と、
前記蒸留水が分離された第2懸濁液を乾燥して、前記分極性粒子を得る段階と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項10】
前記分極性有機物質は、
ウレア、チオウレア、メラミン、アクリルアミド及びこれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項9に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項11】
前記分極性粒子をシリコンオイルに分散させる段階は、
相異なる屈折率を有する分散媒を多数個形成する段階と、
前記分極性粒子の屈折率に基づいて、前記分散媒のうちから前記分極性粒子との屈折率の差が、0.06以下である分散媒を選択する段階と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される電気粘性流体と、を含み、
前記電気粘性流体は、
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子と、
前記分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
前記分極性粒子の屈折率と前記分散媒の屈折率との差が、0.06以下であることを特徴とする請求項12に記載の表示装置。
【請求項1】
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子と、
前記分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、
を含むことを特徴とする電気粘性流体。
【請求項2】
前記分散媒は、
水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(aminogroup、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つが、有機基と共に、または有機基なしに純粋なシリコンオイル分子の末端または側端に結合されて形成されるシリコンオイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項3】
前記水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、
前記有機基と共にカルビノール官能基(carbinol functional group)を形成することを特徴とする請求項2に記載の電気粘性流体。
【請求項4】
前記水酸基(hydroxyl group、−OH group)は、
前記有機基なしにシラノール官能基(silanol functional group)を形成することを特徴とする請求項2に記載の電気粘性流体。
【請求項5】
前記分極性粒子は、
前記シリカ粒子及び前記シリカ粒子に物理的または化学的に結合される分極性有機物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項6】
前記分極性有機物質は、
ウレア(Urea)、チオウレア(Thiourea)、メラミン(Melamine)、アクリルアミド(Acrylamide)及びこれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5に記載の電気粘性流体。
【請求項7】
前記分極性粒子の屈折率と前記分散媒の屈折率との差が、0.06以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項8】
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子を形成する段階と、
水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(aminogroup、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxy group、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを有する分散媒を形成する段階と、
前記分極性粒子を前記分散媒に分散させる段階と、
を含むことを特徴とする電気粘性流体の製造方法。
【請求項9】
前記分極性粒子を形成する段階は、
蒸留水にシリカ粒子を入れて撹拌して、第1懸濁液を作る段階と、
前記第1懸濁液に分極性有機物質を入れて撹拌して、第2懸濁液を作る段階と、
前記第2懸濁液から前記蒸留水を分離する段階と、
前記蒸留水が分離された第2懸濁液を乾燥して、前記分極性粒子を得る段階と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項10】
前記分極性有機物質は、
ウレア、チオウレア、メラミン、アクリルアミド及びこれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項9に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項11】
前記分極性粒子をシリコンオイルに分散させる段階は、
相異なる屈折率を有する分散媒を多数個形成する段階と、
前記分極性粒子の屈折率に基づいて、前記分散媒のうちから前記分極性粒子との屈折率の差が、0.06以下である分散媒を選択する段階と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の電気粘性流体の製造方法。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される電気粘性流体と、を含み、
前記電気粘性流体は、
シリカ粒子に基づいて形成された分極性粒子と、
前記分極性粒子が分散され、水酸基(hydroxyl group、−OH group)、アミノ基(amino group、−NH2 group)、メルカプト基(mercapto group、−SH group)、及びカルボキシ基(carboxygroup、−COOH group)のうち少なくとも何れか一つを有するシリコンオイルを含む分散媒と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
前記分極性粒子の屈折率と前記分散媒の屈折率との差が、0.06以下であることを特徴とする請求項12に記載の表示装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−111932(P2012−111932A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190440(P2011−190440)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505009829)仁荷大學校 産學協力團 (2)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505009829)仁荷大學校 産學協力團 (2)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]