説明

ニューロピリンアンタゴニスト

固有の構造的及び機能的特徴を有する新規な抗NRP1抗体及びその変異体が開示される。また、研究、診断用適用法及び治療的適用法における抗体の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、米国特許法119条(e)に基づき、本明細書中に出典明記によって援用される2005年11月8日出願の米国特許第60/734798号及び2006年7月27日出願の米国特許第60/820561号の優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、一般にニューロピリン(NRP)活性と関係する組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、ニューロピリン-1(NRP1)レセプターによって媒介される血管形成及び維持を調節するための組成物及び方法に関係する。さらに、本発明は、血管新生と関係する状態及び疾患を予防するか又は治療するための治療的に有用な物質のスクリーニング方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
脈管系の発達は、多くの生理学的及び病理学的なプロセスに基本的に必要である。胚及び腫瘍のような活発に発達する組織は十分な血液供給を必要とする。これは、血管新生と一般に呼ばれるプロセスにより新規な血管形成及び維持を促すプロ血管新生因子を生産することによってこの必要性が満たされる。血管性形成は、以下の工程のすべて又は多数を伴う複雑であるが、規則正しい生物学的現象である:a) 内皮細胞(EC)が既存のECから増殖するか又は始原細胞から分化する;b) ECが移動して合体し、索状構造を形成する;c) 次いで脈管性索が管形成をして中央に内腔を有する脈管を形成する、d) 既存の索又は脈管から出芽して二次脈管を形成する;e) 原始脈管叢がさらに再造形及び再構築する;そして、f) 周囲に内皮細胞が集まり、内皮管を覆い、脈管に維持及び調節的な機能を与える;このような細胞には、小毛細管のための周細胞、より大きな脈管のための平滑筋細胞及び心臓の心筋細胞が含まれる。Hanahan, D. Science 277:48-50 (1997);Hogan, B. L. & Kolodziej, P. A. Nature Reviews Genetics. 3:513-23 (2002);Lubarsky, B. & Krasnow, M. A. Cell. 112:19-28 (2003)。
【0004】
血管新生が様々な疾患の病因に関係することは、現在証明されている。これらには、固形腫瘍及び転移、アテローム性動脈硬化、水晶体後線維増殖、血管腫、慢性炎症、増殖性網膜症などの眼内新生血管性疾患、例えば糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性(AMD)、新血管性緑内障、移植した角膜組織及び他の組織の免疫拒絶反応、関節リウマチ及び乾癬が含まれる。Folkman等, J. Biol. Chem., 267:10931-10934 (1992);Klagsbrun等, Annu. Rev. Physiol. 53:217-239 (1991);及びGarner A., "Vascular diseases", In: Pathobiology of Ocular Disease. A Dynamic Approach, Garner A., Klintworth GK, eds., 2nd Edition (Marcel Dekker, NY, 1994), pp 1625-1710。
【0005】
腫瘍増殖の場合、血管新生は、過形成から腫瘍形成への変化に、そして、腫瘍の増殖及び転移のために栄養を提供するために重要であると思われる。Folkman等, Nature 339:58 (1989)。血管新生によって、腫瘍細胞は正常細胞よりも増殖優位性と増殖自立性を獲得しうる。通常、腫瘍は利用できる毛細管床から離れているため、数立方ミリメートルのサイズまでしか増殖できない単一の異常細胞として始まり、更なる増殖及び転移をせずに長期間「休止中の」ままで存在しうる。次いで、腫瘍細胞は血管新生の表現型に切り替わり、、内皮細胞を活性化し、その内皮細胞が増殖して、新規な毛細血管の血管に成熟する。これらの新しく形成された血管は原発性腫瘍の連続した増殖を促すだけでなく、転移性腫瘍細胞の転移及び再コロニー形成化を促す。したがって、腫瘍切片の微小血管の密度と乳癌並びに多様な他の腫瘍における患者生存との間に相関性が観察されている。Weidner等, N. Engl. J. Med 324:1-6 (1991);Horak等, Lancet 340:1120-1124 (1992);Macchiarini等, Lancet 340:145-146 (1992)。血管新生の切り替わりを制御する正確なメカニズムは十分にわかっていないが、腫瘍質量の血管新生は多数の血管新生刺激因子及びインヒビターの正味バランスから生じる(Folkman, 1995, Nat Med 1(1): 27-31)。
【0006】
血管性発達のプロセスは厳密に調節されている。今日まで、有意に多くの分子、主に周辺細胞によって産生される分泌因子が、索状構造におけるEC分化、増殖、移動及び合体を制御することが示されている。例えば、血管内皮性増殖因子(VEGF)は、血管新生を刺激する際及び、血管透過を誘導する際に伴う重要な因子として同定されている。Ferrara等, Endocr. Rev. 18: 4-25 (1997)。単一のVEGF対立遺伝子でさえ欠失すると胚性致死になるという発見は、この因子が血管系の発達及び分化において代替不可能な役割を果たしていることを示唆する。さらに、VEGFは、腫瘍及び眼内疾患と関係する血管新生の重要なメディエーターであることが示されている。上掲のFerrara等, Endocr. Rev. supra。VEGF mRNAは、調べた大多数のヒト腫瘍によって過剰発現される。Berkman等, J. Clin. Invest. 91:153-159 (1993);Brown等, Human Pathol. 26:86-91 (1995);Brown等, Cancer Res. 53: 4727-4735 (1993);Mattern等, Brit. J. Cancer 73:931-934 (1996);Dvorak等, Am. J. Pathol. 146:1029-1039 (1995)。
【0007】
また、眼体液中のVEGFの濃度レベルは、糖尿病患者及び他の虚血関連の網膜症患者における血管の活性な増殖の存在と非常に相関する。Aiello等, N. Engl. J. Med. 331: 1480-1487 (1994)。さらに、研究から、AMDに影響を受ける患者の脈絡叢新生血管膜中のVEGFの局在化が示された。Lopez等, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 37: 855-868 (1996)。
【0008】
抗VEGF中和抗体はヌードマウスの様々なヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し(Kim等, Nature 362:841-844 (1993);Warren等, J. Clin. Invest. 95:1789-1797 (1995);Borgstrom等, Cancer Res. 56: 4032-4039 (1996);Melnyk等, Cancer Res. 56: 921-924 (1996))、更に、虚血性網膜疾患のモデルの眼内血管新生も阻害する。Adamis等, Arch. Ophthalmol. 114:66-71 (1996)。したがって、VEGF作用の抗VEGFモノクローナル抗体又は他のインヒビターは、腫瘍及び様々な眼内新生血管性疾患の治療のための候補としての見込みがある。このような抗体は、例えば、1998年1月14日に発行の欧州特許第817648号;及び、1998年10月15日に公開の国際公開第98/45331号及び同第98/45332号に記載されている。抗VEGF抗体の一つであるベバシズマブは、転移性結腸直腸癌(CRC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)を治療するために、化学療法投薬計画との併用使用のためにFDAの承認を得ている。そして、ベバシズマブは、様々な癌の徴候を治療するための多くの継続臨床試験において調査されている。
【0009】
神経系の発達の間、ニューロンは、それらの標的に到達するように長距離にわたって移動するケーブル様軸索を放つ。Carmeliet and Tessier-Lavigne (2005) Nature 436:193-200による概要を参照。先導の際、発達する軸索の先端は、成長円錐と呼ばれる運動性に優れた感覚構造である。糸状仮足伸展の伸展及び収縮の動的なサイクルにより、成長円錐は絶えず感知してその空間環境における無数の誘導の手がかり(guidance cue)から評価して、正確にその最終的な標的へ向かって伸展するための正しい軌道を選択する。
【0010】
過去10年にわたって、軸索誘導機構においては多くの伸展がなされた。Dickson (2002) Science 298:1959-64による概要を参照。誘導手がかりは4つの多様性がある:誘引物質及び忌避物質;短い範囲(すなわち、細胞-関連又は基質-関連)及びより広い範囲(すなわち、拡散性)のいずれかで作用しうる。これまで、軸索手がかり分子の4つの主要なファミリー:ネトリン、セマフォリン、エフリン及びスリットが同定されている。Huber等 (2003) Annu Rev Neurosci 26:509-63による概要を参照。
【0011】
また、コラプシンとも称されるセマフォリン(Sema)は、系統学的に保存される分泌性及び膜結合性のタンパク質の大きなファミリーに属している。神経発達の間、セマフォリンファミリーのメンバーは反発的及び誘引的な軸索手がかりの現象を媒介することができる。Raper (2000) Curr Opin Neurobiol 10:88-94。現在までに同定された30より多いセマフォリンはすべて、およそ500アミノ酸の保存されたN末端Semaドメインを共有する。セマフォリンメンバーは、それらの構造的類似性及び起源の種に従い8つのサブファミリーに分類される。セマフォリンの統一命名法についての詳細は、Semaphorin Nomenclature Committee (1999) Cell 97:551-552を参照。
【0012】
ニューロピリン(NRP)ファミリーは、ニューロピリン-1(NRP1)及びニューロピリン-2(NRP2)といった2つの相同なタンパク質からなる。初めに、NRP1は、発達する軸索の成長円錐において発現されるタイプIの130kDaの膜貫通糖タンパク質として同定された。その後、NRP2は発現クローニングによって同定された。Fujisawa及びKitsukawa (1998) Curr Opin Neurobiol 8:587-592。NRPは、セマフォリンのサブセットであるクラス3セマフォリンのレセプターであることが明らかとされている。NRPは他のセマフォリンレセプターファミリーであるプレキシン(plexin)とともに非シグナル伝達補助レセプターとして機能することが示唆された。
【0013】
最初に軸索手がかりのメディエーターと記述されたが、NRPは、血管の発達において重要な役割を果たすことも明らかとされている。Carmeliet and Tessier-Lavigne (2005)。腫瘍及び内皮細胞上に発現されるアイソフォーム特異的VEGFレセプターとして同定され、これにより血管学及び腫瘍生物学におけるNRPの役割を理解するための多くの取り組みが加速される。Soker等 (1998) Cell 92:735-745;Klagsbrun等 (2002) Adv Exp Med Biol 515:33-48。遺伝的研究から、Nrp1が血管形態形成に必要であるという強力な所見が示された。Nrp1機能の欠損により血管再造形及び分岐欠損が生じ、この表現型はNrp2機能の欠損によってさらに促される。Kawasaki等 (1999) Development 126:4895-4902;Takashima等 (2002) Proc Natl Acad Sci USA 99:3657-3662。これらの結果から、発達の初期に、Nrp1及びNrp2が重なり合う機能を有しうることが示唆される。しかしながら、各々のNrpの発現は発達の後期に生じ、Nrp1は主に動脈に発現され、Nrp2は静脈及びリンパ管に発現される。Yuan等 (2002) Development 129:4797-4806;Herzog等 (2001) Mech Dev 109:115-119。特に、Nrp2機能のみの欠損は特にリンパの発達を阻害する。
【0014】
発達の間にNrp1が多くの他の細胞種において発現されるので、血管のNrp1の役割は、ヌル対立遺伝子で見られるものと同じ血管欠損が生じるEC-特異的ノックアウトの作製によって調査された。Gu等 (2003) Dev Cell 5:45-57。興味深いことに、この研究は、NRP1へのSema3A結合が血管の発達に必要でないことも示した。他の研究では、Nrp1 KO胚において後脳を発達する際の内皮端細胞の誘導(guidance)に、欠損が観察された。Gerhardt等 (2004) Dev Dyn 231:503-509。
【0015】
血管の発達におけるNRP1の役割の大規模な研究にもかかわらず、NRP1がVEGF-VEGFレセプター2(VEGFR2)経路だけを介してその血管性機能を発揮するか、VEGFR2へのVEGF結合とそれによるVEGFR2シグナル伝達のためのエンハンサーとしてその血管性機能を発揮するか、又は、VEGFR2から独立しているシグナル伝達経路又はその両方の組合せを介してその血管性機能を発揮するのかは不明のままである。
【0016】
組み換えDNA技術を用いてモノクローナル抗体を製造することができる。モノクローナル抗体、特に齧歯類由来のものは広く使用されているが、ヒトの治療用途では抗原性であることがよくある。ヒト以外の抗原結合ドメインをヒト定常ドメインに結合した「キメラ」抗体を構築することによってこの問題を解消することが試みられている(Cabilly等, 米国特許第4816567号)。ヒト定常ドメインのアイソタイプを選択して抗体依存性細胞性障害(ADCC)及び補体依存性細胞性障害に関与するキメラ抗体をあつらえることができる。抗体の抗原結合機能を分析するため及び、ヒト抗体中での異種性配列の使用を最小限にするために、様々な抗原に対して、実質的により少ない完全なヒト可変ドメインの領域を非ヒト種由来の一致する配列によって置換したヒト化抗体が生成されている。例えば、齧歯類の残基をヒト抗体の一致するセグメントと置換した。実際には、典型的にヒト化抗体はいくつかの相補性決定領域(CDR)の残基と可能であればいくつかのフレームワーク領域(FR)を齧歯類の抗体の類似部位由来の残基に置き換えるヒト抗体である。Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science 239:1534-1536 (1988)。
【0017】
ヒトに治療用抗体を投与する前に、一般的に抗体の効果及び/又は毒性を評価するために非ヒト哺乳動物で前臨床試験することが望ましい。これらの研究対象となる抗体が解明され、高い潜在能力を持ってマウスや非ヒト霊長類などの宿主動物に対して外因性の標的抗原に反応することが理想である。
【0018】
ファージディスプレイ技術は抗原などのリガンドに結合する新規のタンパク質を生成し、選別するための強力なツールである。ファージディスプレイの使用により、タンパク質変異体の大きなライブラリを作製し、高い親和性で標的抗原に結合する配列について迅速に分類することができる。変異体ポリペプチドをコードしている核酸をウイルスコートタンパク質、例えば遺伝子IIIタンパク質又は遺伝子VIIIタンパク質をコードしている核酸配列に融合する。タンパク質ないしポリペプチドをコードしている核酸配列を遺伝子IIIタンパク質の一部をコードする核酸配列に融合した一価ファージディスプレイ系が開発された。(Bass, S., Proteins, 8:309 (1990);Lowman and Wells, Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 3:205 (1991))。一価ファージディスプレイ系では、遺伝子融合が低レベルで発現し、野生型遺伝子IIIタンパク質も粒子の感染性が維持されるように発現している。ペプチドライブラリを作製してそのライブラリをスクリーニングする方法は多くの特許で開示されている(例として、米国特許第5723286号、米国特許第5432018号、米国特許第5580717号、米国特許第5427908号および米国特許第5498530号)。
【0019】
糸状ファージの表面上のペプチドの発現と大腸菌周辺質での機能的抗体断片の発現を証明することは、抗体ファージディスプレイライブラリの開発に重要であった(Smith等, Science (1985), 228:1315;Skerra及びPluckthun, Science (1988), 240:1038)。抗体又は抗原結合ポリペプチドのライブラリは、ランダムなDNA配列を挿入したり、関連遺伝子のファミリーをクローニングして単一遺伝子を変更することを含むいくつかの方法で調整していた。ファージディスプレイを用いた抗体又は抗原結合断片を表出させる方法は、米国特許第5750373号、同第5733743号、同第5837242号、同第5969108号、同第6172197号、同第5580717号、及び同第5658727号に記載されている。ついで、ライブラリは所望の特性を有する抗体又は抗原結合タンパク質の発現についてスクリーニングする。
【0020】
ファージディスプレイ技術は、所望の特徴を有する抗体を調製する従来のハイブリドーマおよび組換え体方法に勝るいくつかの効果がある。この技術により、より少ない時間で動物を用いることなく多様な配列を有する抗体の大きなライブラリを作製することができる。ハイブリドーマの調製又はヒト化抗体の調製には、きっと数か月で可能である。加えて、免疫化が必要ないので、ファージ抗体ライブラリは毒性のある抗原又は抗原性が低い抗原について作製することができる(Hogenboom, Immunotechniques (1988), 4:1-20)。また、ファージ抗体ライブラリは、新規の治療用抗体を生成して、同定するために用いることができる。
【0021】
ファージディスプレイライブラリは、免疫化されたヒト、免疫化されていないヒト、生殖細胞系配列又は未処理のB細胞Ig蓄積からヒト抗体を生成するために用いられた(Barbas & Burton, Trends Biotech (1996), 14:230;Griffiths等, EMBO J. (1994), 13:3245;Vaughan等, Nat. Biotech. (1996), 14:309;Winter EP 0368 684 B1)。未処置、または免疫化されていない、抗原結合ライブラリは種々のリンパ系組織を用いて作製されている。Cambridge Antibody Technology及びMorphosysにより開発されたものなど、いくつかのライブラリが市販されている (Vaughan等, Nature Biotech 14:309 (1996);Knappik等, J. Mol. Biol. 296:57 (1999))。しかしながら、これらのライブラリ多くは、多様性が制限されている。
【0022】
高親和性抗体をファージディスプレイライブラリから同定して、単離できることは、治療的用途のための新規の抗体を単離するために重要である。ライブラリからの高親和性抗体の単離は、ライブラリのサイズ、細菌細胞の産生の効率およびライブラリの多様性に依存している。例えば、Knappik等, J. Mol. Biol. (1999), 296:57を参照。ライブラリのサイズは、抗体又は抗原結合タンパク質の不適当な折畳み(ホールディング)および終止コドンの存在による効率的でない産生によって減少する。抗体又は抗原結合ドメインが適切に折り畳まれない場合、細菌細胞での発現は阻害されうる。発現は、可変/定常の境界面の表層、または、選択されたCDR残基で順に残基を変異させることによって改良することができる。(Deng等, J. Biol. Chem. (1994), 269:9533, Ulrich等, PNAS (1995), 92:11907-11911;Forsberg等, J. Biol. Chem. (1997), 272 : 12430)。抗体ファージライブラリを細菌細胞において作製するとき、フレームワーク領域の配列は適当な折畳みを提供する因子である。
【0023】
また、抗体又は抗原結合タンパク質の多様なライブラリを作製することは、高親和性抗体の単離に重要である。限定したCDRに多様化を有するライブラリは種々の方法を用いて作製されている。例えば、Tomlinson, Nature Biotech. (2000), 18:989-994を参照。抗原結合に関与することが明らかなことが多いので、CDR3領域にいくらか関心がある。重鎖上のCDR3領域は、サイズ、配列および構造的立体配座が非常に変化する。
【0024】
また、各可変重鎖及び可変軽鎖位置の全20アミノ酸を用いて可変重鎖および可変軽鎖のCDR領域をランダム化することによって、多様性を生成したものもある。全20アミノ酸を用いることで変異型抗体の配列に大きな多様性をもたらし、新規な抗体を同定する可能性を増やすと思われた。(Barbas, PNAS 91:3809 (1994);Yelton, DE, J. Immunology, 155:1994 (1995);Jackson, J.R., J. Immunology, 154:3310 (1995)及びHawkins, RE, J. Mol. Biology, 226:889 (1992))。
【0025】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも一のニューロピリン媒介性の生物学的活性を調整することができる新規な抗NRP1抗体を提供する。好ましくは、抗NRP1抗体は、少なくとも一のニューロピリン媒介性の生物学的活性を阻害することができるアンタゴニスト抗体である。より具体的には、本発明は、設定されたヒトの合成抗体ファージライブラリから抗NRP1抗体を生成する方法、及びその生成された新規な機能遮断性の抗NRP1抗体を提供する。本発明の抗NRP1抗体は、NRP1上の結合する部位によって2つのクラスに分類される。抗NRP1抗体(YW64.3及びその変異体を含む)は、NRP1のCUBドメイン(a1a2)と結合するものであり、抗NRP1抗体(YW107.4及びその変異体を含む)は、NRP1の凝固因子V/VIIIドメイン(b1b2)と結合するものである。
【0026】
ある態様では、本発明の抗NRP1抗体は、同定された部分的なCDR配列とマウス及びヒトのNRP1に対する結合親和性を有する、表IIIに示す「YW64」抗体クローンから選択されうる。本発明の抗NRP1抗体は、以下のCDRアミノ酸配列:CDRL1(RASQSISSYLA;配列番号:123)、CDRL2(GASSRAS;配列番号:124)及びCDRL3(QQYMSVPIT;配列番号:125)を含む軽鎖可変ドメインを含んでなることが好ましい。例えば、抗NRP1抗体は、配列番号:3の軽鎖可変ドメイン配列を含んでなる。本発明の抗NRP1抗体は、以下のCDRアミノ酸配列:CDRH1(GFSFSSEPIS;配列番号:126)、CDRH2(SSITGKNGYTYYADSVKG;配列番号:127)及びCDRH3(WGKKVYGMDV;配列番号:128)を含む重鎖可変ドメインを含んでなることが好ましい。例えば、抗NRP1抗体は、配列番号:4の重鎖可変ドメイン配列を含んでなる。より好ましくは、本発明の抗NRP1抗体は、配列番号:3の軽鎖可変ドメイン配列と配列番号:4の重鎖可変ドメイン配列を含んでなるYW64.3抗体である。
【0027】
他の態様では、本発明の抗NRP1抗体は、同定された部分的なCDR配列とマウス及びヒトのNRP1に対する結合親和性を有する、表IVに示す「YW107.4」抗体クローンから選択されうる。本発明の抗NRP1抗体は、以下のCDRアミノ酸配列:CDRL1(RASQYFSSYLA;配列番号:129)、CDRL2(GASSRAS;配列番号:130)及びCDRL3(QQYLGSPPT;配列番号:131)を含む軽鎖可変ドメインを含んでなるのが好ましい。例えば、抗NRP1抗体は、配列番号:5の軽鎖可変ドメイン配列を含んでなる。本発明の抗NRP1抗体は、以下のCDRアミノ酸配列:CDRH1(GFTFSSYAMS;配列番号:132)、CDRH2(SQISPAGGYTNYADSVKG;配列番号:133)及びCDRH3(ELPYYRMSKVMDV;配列番号:134)を含む重鎖可変ドメインを含んでなるのが好ましい。例えば、抗NRP1抗体は、配列番号:6の重鎖可変ドメイン配列を含んでなる。より好ましくは、本発明の抗NRP1抗体は、配列番号:5の軽鎖可変ドメイン配列と配列番号:6の重鎖可変ドメイン配列を含んでなるYW107.4.87抗体である。
【0028】
また、癌などの血管新生関連の疾患を治療するための抗NRP1抗体の使用が本発明によって提供される。ある好適な実施態様では、本発明の抗NRP1抗体は抗VEGF抗体と組み合わせて用いられる。好ましくは、抗VEGF抗体は、抗体A4.6.1と同じVEGFエピトープに結合可能である。より好ましくは、抗VEGF抗体はベバシズマブ(bevacizumab)又はラニビズマブ(ranibizumab)である。
【0029】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明はNRPが媒介する生物学的活性を調節するための新規の組成物及び方法に関する。
【0030】
I.定義
Rossignol等 (2000) Genomics 70:211-222に記載のように、「ニューロピリン」又はNRPは、ひとまとめにしてニューロピリン-1(NRP1)、ニューロピリン-2(NRP2)及びそれらのアイソフォーム及び変異体を指す。ニューロピリンは120から130kDaの非チロシンキナーゼレセプターである。複数のNRP-1及びNRP-2のスプライス変異体及び可溶性アイソフォームがある。ニューロピリンの基本構成は5つのドメイン:3つの細胞外ドメイン(a1a2、b1b2及びc)、1つの膜貫通ドメイン及び1つの細胞質ドメインを含む。a1a2ドメインは補体成分C1r及びC1s(CUB)に相同であり、一般に、2つのジスルフィド架橋を形成する4つのシステイン残基を含有する。b1b2ドメインは凝固因子V及びVIIIに相同である。cドメインの中心部位は、A5及びレセプターチロシンホスファターゼμタンパク質であるメプリンに相同であることからMAMと称される。a1a2及びb1b2ドメインはリガンド結合に関与するのに対して、cドメインはホモ二量体化又はヘテロ二量体化に重要である。Gu等 (2002) J. Biol. Chem. 277:18069-76;He and Tessier-Lavigne (1997) Cell 90:739-51。
【0031】
「ニューロピリンが媒介する生物学的活性」とは、一般に、ニューロピリン-1及び/又はニューロピリン-2が実質的役割を演ずる生理学的又は病理学的現象を指す。このような活性の非限定的な例は、胚の神経系発達又はニューロン再生成、血管新生(血管造形を含む)、腫瘍形成及び腫瘍転移の間の軸索誘導(axon guidance)である。
【0032】
「抗体」なる用語は最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を包含する。
【0033】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾詞は、抗体の実質的に均一な集団から得た抗体の特性を表し、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明で用いられるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256, 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって、作ることができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)、及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0034】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0035】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0036】
「種依存性抗体」、例えば哺乳動物抗-ヒトIgE抗体は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有するものである。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1×10−7M以下、好ましくは約1×10−8M以下、最も好ましくは約1×10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0037】
ここで用いる「抗体変異体」又は「抗体変異体」は、種依存性の抗体のアミノ酸残基の一つ以上が変更された種依存性の抗体のアミノ酸配列変異体を指す。このような変異体は、必然的に種依存性の抗体と100%未満の配列同一性又は類似性がある。好ましい実施形態では、抗体変異体は、種依存性の抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインの何れかのアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性があるアミノ酸配列を有する。ここでは、最大のパーセント配列同一性を得るために、本配列に関する同一性又は類似性は、種依存性の抗体残基と同一(すなわち同じ残基)又は類似(すなわち共通の側鎖の性質に基づく同じ群由来のアミノ酸残基、以下を参照)である候補配列配列を整列し、必要であれば間隙(ギャップ)を入れて、候補配列中のアミノ酸残基の割合として測定したものである。配列同一性又は類似性に影響を及ぼすように、可変ドメインを除く抗体配列、N末端、C末端又は内部伸展のいずれにも、削除又は挿入はない。
【0038】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって定量して95重量%以上の、最も好ましくは99重量%以上の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0039】
本明細書で使われるように、「抗体可変ドメイン」は相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、抗体分子の軽鎖および重鎖の部分を指す。Vは重鎖の可変ドメインを指す。Vは軽鎖の可変ドメインを指す。本発明で使用される方法によると、CDRとFRに割り当てられるアミノ酸位置はカバットに従って規定される(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health, Bethesda, Md., 1987及び1991))。抗体または抗原結合断片のアミノ酸のナンバリングも、カバットのそれに準じる。
【0040】
本明細書で使われるように、用語「相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)は、抗原結合のために存在している必要がある抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、一般的にCDR1、CDR2およびCDR3と同定される3つのCDR領域を持つ。各相補性決定領域はカバットが記載しているような「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD.(1991))、および/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基約26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメインの26〜32(H1),53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia及びLesk, J.Mol.Biol.196:901-917頁(1987))を含んでもよい。いくつかの場合には、相補性決定領域はカバットの記載により定義されているCDR領域および超可変ループの両方からのアミノ酸を含むことができる。例えば、抗体4D5の重鎖のCDRH1は、アミノ酸26〜35を含む。
【0041】
「フレームワーク領域」(以下FRと称す)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、一般的にFR1、FR2、FR3およびFR4と同定される4つのFRを持つ。CDRがカバットの定義に従うならば、軽鎖FR残基は残基約1〜23(LCFR1)、35〜49(LCFR2)、57〜88(LCFR3)および98〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基約1〜30(HCFR1)、36〜49(HCFR2)、66〜94(HCFR3)および103〜113(HCFR4)に位置する。CDRが超可変ループからのアミノ酸残基を含むならば、軽鎖FR残基は軽鎖の残基約1〜25(LCFR1)、33〜49(LCFR2)、53〜90(LCFR3)および97〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基約1〜25(HCFR1)、33〜52(HCFR2)、56〜95(HCFR3)および102〜113(HCFR4)に位置する。いくつかの場合には、CDRがカバットの定義によるCDRと超可変ループのそれの両方からのアミノ酸を含む場合、FR残基はそれに応じて調節されるであろう。例えば、CDRH1がアミノ酸H26−H35を含むとき、重鎖FR1残基は位置1〜25にあり、FR2残基は位置36〜49にある。
【0042】
本明細書で使われるように、「コドンセット」は所望の変異体アミノ酸をコードするのに用いられる、一組の異なるヌクレオチドトリプレット配列を指す。一組のオリゴヌクレオチドは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの可能な組合せのすべてを表す配列であって所望のアミノ酸群をコードする配列を含み、例えば固相法によって合成することができる。標準的なコドン指定形式はIUBコードのそれであり、このコードは当技術分野で公知であり本明細書で記載されている。コドンセットは、一般的に3つのイタリック大文字、例えばNNK、NNS、XYZ、DVKなどで表される。ゆえに、本明細書中で用いられる「非ランダムコドンセット」とは、ここに記載のアミノ酸選別の基準を部分的、好ましくは完全に満たす選択アミノ酸をコードするコドンセットを意味する。ある位置の選択されたヌクレオチド「縮重(degeneracy)」を有するオリゴヌクレオチドの合成は当技術分野で公知であり、例えば、TRIM手法が知られている(Knappek等、J.Mol.Biol.(1999)、296:57-86);Garrard及びHenner, Gene(1993), 128:103)。そのようなある種のコドンセットを有しているオリゴヌクレオチドのセットは、市販の核酸シンセサイザー(Applied Biosystems, Foster City, CAなどから入手可能)を使って合成することができ、または市販品を入手することができる(例えば、Life Technologies, Rockville, MDから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成オリゴヌクレオチドセットは、一般的に異なる配列の複数のオリゴヌクレオチドを含み、この相違は配列全体の中のコドンセットによるものである。本発明で使用されるように、オリゴヌクレオチドは可変ドメイン核酸テンプレートへのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、また、そうするとは限らないが、例えばクローニングに役立つ制限酵素部位を含むこともできる。
【0043】
「Fv」断片は、完全な抗原認識および結合部位を含む抗体断片である。この領域は、堅く結合した重鎖可変ドメイン1つと軽鎖可変ドメイン1つの二量体から成り、その結合は自然界では例えばscFvにおけるように共有結合である。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面の抗原結合部位を確定するのはこの構成である。この6つのCDRまたはそのサブセットは、共同して抗体に抗原結合特異性を賦与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含んでいないFvの半分)でさえ、通常は結合部位全体より親和性は低いものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0044】
「Fab」断片は、軽鎖の可変および定常ドメインと重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(CH1)を含む。F(ab')抗体断片は一対のFab断片を含み、通常これらはその間にあるヒンジシステインによってそのカルボキシ末端の近くで共有結合により連結される。抗体断片の他の化学的結合も当技術分野で公知である。
【0045】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。通常、FvポリペプチドはVおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーはscFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成するのを可能にする。scFvのレビューに関しては、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol.113, RosenburgおよびMoore編, Springer-Verlag, New York, 269-315頁(1994)を参照。
【0046】
「ダイアボディ(diabody)」なる用語は、抗原結合部位を2つ備える小さな抗体断片を指し、この抗体断片は同じポリペプチド鎖(VおよびV)内で軽鎖可変ドメイン(V)に連結した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖の上の2つのドメインの間で対合させるにはあまりに短いリンカーを用いて、このドメインを他の鎖の相補性ドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位をつくる。ダイアボディについては、例えば欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger他, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:6444-6448(1993)でさらに詳しく記載されている。
【0047】
「線状抗体」なる表現はZapata等, Protein Eng., 8(10):1057-1062頁(1995)に記載されている抗体を指す。つまり、これらの抗体は相補性の軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。線状抗体は二重特異性または単一特異性であり得る。
【0048】
「ファージディスプレイ」は、変異体ポリペプチドをファージ、例えば繊維状ファージの粒子表面でコートタンパク質の少なくとも一部と融合したタンパク質として提示する手法である。ファージディスプレイの有用さは、ランダム化タンパク質変異体の大きなライブラリーから対象抗原と高親和性で結合する配列を迅速に、効率的に選別できることにある。ファージ上のペプチドおよびタンパク質ライブラリーの提示は、何百万ものポリペプチドを特異的結合特性に関してスクリーニングするために利用されてきた。多価ファージディスプレイ方法は、繊維状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIとの融合を通して小さなランダムペプチドおよび小タンパク質を提示するために利用されてきた。Wells及びLowman, Curr.Opin.Struct.Biol., 3:355-362(1992)とその中の引用文献。一価のファージディスプレイでは、タンパク質またはペプチドのライブラリーが遺伝子IIIまたはその一部に融合され、ファージ粒子が融合タンパク質の1個または0個のコピーを提示するように野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で低レベルで発現される。アビディティー効果は多価のファージと比較して低下しているので、選別は内在性のリガンド親和性に基づいておりファージミドベクターが使われるが、このベクターはDNA操作を単純化する。Lowman及びWells, Methods:A Companion to Methods in Enzymology, 3:205-216頁(1991)。
【0049】
「ファジミド」は、細菌の複製起点、例えばCo1E1およびバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドはいかなる公知のバクテリオファージ、例えば繊維状バクテリオファージおよびラムドイドバクテリオファージでも使用できる。プラスミドは、通常、抗生物質耐性の選択マーカーも含む。これらのベクターにクローニングされたDNAセグメントは、プラスミドとして増殖することができる。これらのベクターを備える細胞がファージ粒子の生産のために必要なすべての遺伝子を備えているとき、プラスミドの複製様式はローリングサークル複製に変化し、プラスミドDNAの1つの鎖のコピーとパッケージファージ粒子を生成する。ファージミドは感染性または非感染性ファージ粒子を形成することができる。この用語は、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面で提示されるように遺伝子融合としてこの異種ポリペプチドの遺伝子と結合したファージコートタンパク質遺伝子、またはその断片を含むファージミドを含む。
【0050】
「ファージベクター」なる用語は、異種遺伝子を含んでいて複製ができるバクテリオファージの二本鎖複製型を意味する。ファージベクターは、ファージ複製およびファージ粒子形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは好ましくは繊維状バクテリオファージ、例えばM13、f1、fd、Pf3ファージもしくはその誘導体、またはラムドイドファージ、例えばラムダ、21、phi80、phi81、82、424、434、その他もしくはその誘導体である。
【0051】
本明細書で使われる「溶媒と接触しうる位置」は抗体源または抗原結合断片の重鎖および軽鎖の可変部のアミノ酸残基の位置を指し、それは、この抗体または抗原結合断片の構造、構造アンサンブルおよび/またはモデル化された構造に基づき、溶媒露出が可能かつ/または抗体特異性抗原などの分子との接触が可能と判断されるものである。これらの位置は一般的にはCDRで、またタンパク質の外側に見られる。本明細書で定められるように、抗体または抗原結合断片の溶媒と接触しうる位置は、当技術分野で公知のいくつかのアルゴリズムのいずれかを使って決定できる。好ましくは、溶媒と接触しうる位置は抗体の三次元モデルからの座標を使い、好ましくはInsightIIプログラム(Accelrys, San Diego, CA)のようなコンピュータプログラムを使って決定される。溶媒と接触しうる位置は、当技術分野で公知のアルゴリズム(例えば、LeeおよびRichards, J.Mol.Biol.55, 379(1971)、および、Connolly, J.Appl.Cryst.16, 548(1983))を使用しても決定することができる。溶媒と接触しうる位置の決定は、タンパク質モデリングに適したソフトウェアおよび抗体から得られる三次元構造情報を使って行うことができる。このような目的のために利用できるソフトウェアには、SYBYL生体高分子モジュールソフトウェア(Tripos Associates)が含まれる。一般に、また好ましくは、アルゴリズム(プログラム)がユーザーの入力サイズパラメータを必要とする場合は、計算において使われるプローブの「サイズ」は半径約1.4オングストローム以下に設定される。さらに、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用した溶媒と接触しうる領域の決定法が、Pacios, (1994)Comput.Chem.18(4):377-386に記載されている。
【0052】
「血管新生因子又は作用剤」は、血管の発達を刺激する、例えば、血管新生、血管内皮細胞成長、血管の安定化及び/又は脈管形成などを促進する成長因子である。例えば、血管形成因子には、限定するものではないが、例としてVEGFおよびVEGFファミリーのメンバー、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、Follistatin、顆粒性コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱係数(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、ニューロピリン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF-BB又はPDGFR-β、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)(PTN)、プログラヌリン(Progranulin)、プロリフェリン(Proliferin)、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGFβ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などが含まれる。また、創傷治癒を促進する因子、例として成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF、及び、そのファミリーメンバー及びTGF-α及びTGF-βが含まれる。Klagsbrun及びD'Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991);Streit及びDetmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003);Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12): 1359-1364 (1999);Tonini等, Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、公知の血管形成因子を挙げている表1);及び、Sato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)。
【0053】
「抗血管新生剤」又は「血管新生(血管形成)インヒビター」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する、小分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。抗血管形成剤には、結合して、血管形成因子又はそのレセプターの血管形成活性をブロックする作用剤が含まれることが理解されるであろう。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義したように血管形成剤に対する抗体又はアンタゴニスト、例えば、VEGF-Aに対する、または、VEGF―Aレセプター(例えばKDRレセプター又はFlt-1レセプター)に対する抗体、GleevecTM(イマチニブメシレート(Imatinib Mesylate))などの抗PDGFRインヒビターである。また、抗血管新生剤には、天然の血管新生インヒビター、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。Klagsbrun及びD'Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991);Streit及びDetmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003)(例えば、悪性黒色腫の抗血管形成治療を記載している表3);Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12): 1359-1364 (1999);Tonini等, Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、公知の抗血管新生因子を記載している表2);及び、Sato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)(例えば、臨床試験で用いられる抗血管形成剤を記載している表1)を参照。
【0054】
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)によって記載されているように、165アミノ酸のヒト血管内皮成長因子と、関連した121-、189-、及び206-アミノ酸のヒト血管内皮成長因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。また、「VEGF」なる用語は、非ヒト動物腫、マウス、ラット又は霊長類由来のVEGFも意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGFなどの用語で表されることが多い。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮成長因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含む切断型ポリペプチドを意味する。そのようなVEGF型を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」と表す。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1レセプター結合親和性を有する。
【0055】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性及び特異性を有してVEGFと結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は状態を標的として干渉する際の治療的薬剤として用いられうる。抗VEGF抗体は通常、VEGF-B又はVEGF-Cなどの他のVEGFホモログにも、PlGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないであろう。好適な抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗-VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープと結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体は、Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、限定するものではないがベバシズマブ(BV;AvastinTM)として知られる抗体を含む。
【0056】
抗VEGF抗体である、「rhuMAb VEGF」又は「AvastinR」としても知られる「ベバシズマブ(BV)」は、Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。それは、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合を遮断するマウスの抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1の抗原結合性相補性決定領域と変異したヒトのIgG1フレームワーク領域とを含んでなる。大部分のフレームワーク領域を含むベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%はヒトのIgG1に由来し、配列のおよそ7%はマウスの抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、およそ149000ダルトンの分子質量を有し、グリコシル化される。
【0057】
「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むVEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストには、抗VEGF抗体及びその抗原結合性断片、レセプター分子及び一又は複数のレセプターへの結合を隔離することによってVEGFに特異的に結合する誘導体、抗VEGFレセプター抗体及びVEGFレセプターアンタゴニスト、例えばVEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビターが含まれる。
【0058】
「治療」は治療的処置及び予防又は阻害的処置の両方を意味する。治療が必要なものには、既に疾患に罹患しているもの並びに予防すべき疾患あるものが含まれる。
【0059】
「疾患」は、抗体を用いて治療することによって利益を得る任意の症状である。例えば、異常な血管形成(過剰、不適切又は制御不能の血管形成)又は血管透過性に罹患しているか、又はそれらに対して予防する必要がある哺乳動物。これには、哺乳動物の問題とする疾患の素因となる病的状態を含む慢性及び急性の疾患又は疾病を包含する。限定するものでなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病およびリンパ系の悪性腫瘍;神経系、神経膠系、星状膠系、視床下部性及び他の腺性、マクロファージ系、上皮性、間質性、胞胚腔系の疾患;及び、炎症性、血管原性及び免疫性の疾患が包含される。
【0060】
異常な血管新生(血管形成)は、病的状態又は病的状態を引き起こす状態にあって、新しい血管が過剰に、不十分に又は不適切に(例えば、血管形成の医学的見地から見て望ましくない位置、時期又は発生)成長するときに生じるものである。病的状態又は病的状態を引き起こす状態、例えば、癌、特に血管化固形腫瘍および転移性腫瘍(大腸、肺癌(特に小細胞肺癌)又は前立腺癌を含む)、眼血管新生によって生じる疾患、特に糖尿病性盲目、網膜症、主に糖尿病性網膜症又は加齢性黄斑変性(AMD);乾癬、乾癬の関節炎、血管芽細胞腫、例えば血管腫;炎症性腎疾患、例えば糸球体腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症性症候群、糖尿病性ネフロパシ又は高血圧の腎硬化症;様々な炎症性疾患、例えば関節炎、特に慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬(psorsasis)、サルコイドーシス、動脈の血管硬化症及び、移植の後生じる疾患、子宮内膜症又は慢性喘息および70以上の他の症状を悪化させるのに関与する新しい血管成長がある場合、過剰な、不適切な又は制御できない血管新生が生じる。新しい血管は疾患組織に養分を与え、正常な組織を破壊する。癌の場合、新しい血管によって腫瘍細胞は他の器官の窪み(lodge)及び循環に逃げ得る(腫瘍転移)。病的状態、例えば、冠状動脈疾患、脳卒中および遅発性創傷治癒などの病気で悪化に関与する不適切な血管成長がある場合、不十分な血管新生が生じる。さらに、潰瘍、脳卒中および心臓発作は、天然の治癒に通常必要な血管新生が欠損することから生じうる。本発明は、上記の疾病の発症のリスクがある患者を治療することも包含する。
【0061】
本発明の抗体又はポリペプチドを投与する候補となる他の患者は、血管結合組織組織の異常な増殖、赤瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット病、血液由来の腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡叢血管新生、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズ過剰装着、角膜移植片拒絶、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、細菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹、過粘稠度症候群、カポシ肉腫、白血病、脂質退化、ライム病、重要でない表皮剥離、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染症、近視、眼性新生血管疾患、視覚穴、オスラー-ウェーバー症候群(オスラー-ウェーバー-ランデュ)、骨関節炎、パジェット病、部planitis(pars planitis)、類天ぽうそう、phylectenulosis、多発動脈炎、レーザー治療後合併症、原生動物の感染症、弾性線維性偽性黄色腫、鰭角膜炎シッカ、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児の網膜症、水晶体後繊維増殖、類肉腫、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、シュタルガルト(Stargarts)病、スティーブンジョンソン疾患、上部の辺縁角膜炎、梅毒、全身狼瘡、テリアンの周縁退化(Terrien's marginal degeneration)、トキソプラズマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞ビタミンA欠乏およびウェゲナーサルコイドーシス、糖尿病と関連している望ましくない血管新生、寄生虫病、異常な創傷治癒、手術、損傷又は外傷後肥大、体毛成長の抑制、排卵および黄体形成の抑制、移植の阻害及び子宮の胚の発達の阻害にあるもの又は、発症するリスクのあるものである。
【0062】
抗血管新生治療は、移植片拒絶、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、心嚢貯留液、例として、心外膜炎及び胸水が関連するもの、望ましくない血管透過によって特徴づけられる疾患及び疾患、例えば、脳腫瘍と関連している浮腫、悪性腫瘍と関連している腹水、メイグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心嚢浮腫、胸水、心血管疾患と関連している透過性例えば心筋梗塞および脳卒中などの後の症状の一般的な処置に有用である。
【0063】
本発明の他の血管新生依存性疾患には、血管線維腫(出血傾向がある異常な血管)、血管新生緑内障(目の血管成長)、動静脈奇形(動脈および静脈間の異常な連通)、結合しない骨折(治癒しない骨折)、アテローム動脈硬化性斑(動脈硬化)、化膿肉芽腫(血管から成る一般的な皮膚病変)、強皮症(結合織病の形)、血管腫(血管から成る腫瘍)、トラコーマ(発展途上国の盲目の主要な原因)、血友病関節、血管粘着力および肥大した瘢痕(異常な瘢痕形成)が含まれる。
【0064】
「癌」及び「癌性」なる用語は、典型的には制御されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);線毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関係しているもの)及びメイグス症候群と関係している異常な血管性増殖が含まれる。
【0065】
「抗腫瘍性組成物」なる用語は、少なくとも一つの活性治療的作用剤、例えば「抗癌剤」を含む、癌を治療する際に有効な組成物を指す。治療的作用剤(抗癌剤)の例には、制限するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害性作用剤、細胞障害性作用剤、放射線療法に用いられる作用剤、抗血管新生作用剤、アポトーシス作用剤、抗チュービュリン作用剤および癌を治療する他の作用剤、例えば、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、表皮の成長因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板由来成長因子インヒビター(例えばGleevecTM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプタの一つ以上と結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2および他の生理活性的で有機化学的作用材などが含まれる。また、その組合せは本発明に含まれる。
【0066】
ここで用いられる「細胞障害性剤」は、細胞の機能を阻害又は抑制し、及び/又は細胞破壊を起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素又はその断片を意味する。
【0067】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、癌の治療に有用な化学的化合物が含まれる。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);ミトキサントン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);イリノテカン(カンプトサル(Camptosar)、CPT-11)(5−FU及びリューコボリンとのイリノテカンの治療処方を含む);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);コンブレタスタチン(combretastatin);リューコボリン(leucovorin)(LV);オキサリプラチン(oxaliplatin)、オキサリプラチン治療処方(FOLFOX)を含む;PKC−αのインヒビター、Raf、H−Ras、EGFR(例として、エルロチニブ(erlotinib)(TarcevaTM))及び細胞増殖を減少させるVEGF−A、並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0068】
また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON*トレミフェン(Fareston);アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、それらは副腎でのエストロゲン産生を調節するものであり、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ゾロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC−alpha、ラルフおよびH−Ras;リボザイム、例えばVEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現インヒビター;遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン)などのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン(Vinorelbine)及びエスペラミシン(Esperamicins)(米国特許第4675187号を参照)並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0069】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
【0070】
「単離された」核酸分子は、同定され、抗体核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にある抗体を通常発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0071】
「制御配列」なる表現は、特定の宿主生物で作用可能に連結したコード配列の発現のために必要なDNA配列を意味する。例えば原核生物に好適な制御配列は、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及び、リボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが公知である。
【0072】
核酸が他の核酸配列と機能的な関係にある場合、核酸は「作用可能に連結して」いる。例えば、プレシーケンス(presequence)または分泌リーダーのDNAは、あるポリペプチドの分泌に関わっている前駆体タンパク質として発現する場合は、そのポリペプチドのDNAと作動可能的に結合している。プロモーターまたはエンハンサーは、それがあるコード配列の転写に影響する場合はその配列と作用可能に連結している。または、リボソーム結合部は、それが翻訳を容易にする位置にある場合は作用可能にコード配列と連結している。通常、「作用可能に連結した」は、結合したDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合は連続して読み枠内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続する必要はない。連結は都合のよい制限部位でライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣行に従って使用される。
【0073】
ここで用いる、「細胞」、「細胞系」および「細胞培養」なる表現は、本明細書では同義で使われ、すべてのそのような呼称は後代を含む。このように、「形質転換体」および「形質転換細胞」なる用語は、継代数に関係なくそれらに由来する一次対象細胞および培養物を含む。また、故意または偶発的な突然変異により、すべての後代においてDNAの内容が正確に同一であるというわけではないことが理解される。当初の形質転換細胞でスクリーニングされたような、同じ機能または生物学的活性を有する変異体後代が含まれる。異なった呼称を意図する場合は、前後関係から明白となろう。
【0074】
発明の実施の形態
抗NRP1抗体の産生
本明細書中の発明は新規な抗NRP1抗体を提供する。例示的な抗体産生方法は次のセクションにおいて更に詳細に記載される。
【0075】
新規な抗NRP1抗体は哺乳動物種由来のNRP1抗原を使用して選択される。好ましくは、抗原はヒトNRP1(hNRP1)である。しかしながら、他の種由来のNRP、例えばマウスNRP1(mNRP1)をまた標的抗原として使用することもできる。様々な哺乳動物種由来のNRP抗原は天然源から単離することができる。他の実施態様では、抗原は組換え的に又は当該分野で既知の他の合成法を使用して作成される。
【0076】
選択される抗体は通常はNRP1抗原に対して十分に強い結合親和性を有するであろう。例えば、抗体は約5nM以下、好ましくは約2nM以下、より好ましくは約500pM以下のK値でhNRP1に結合しうる。抗体親和性は例えば表面プラズモン共鳴ベースアッセイ(例えば実施例に記載したようなBIAコアアッセイ);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えばRIA)によって測定することができる。
【0077】
また、抗体は、例えば治療剤としてのその効能を評価するために、他の生物学的活性アッセイにかけることができる。このようなアッセイは当該分野において既知であり、標的抗原と抗体の意図される用途に依存する。その例には、HUVEC阻害アッセイ(以下の実施例に記載);腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、国際公開第89/06692号に記載されている);抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及び補体媒介傷害性(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号);及びアゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号参照)が含まれる。
【0078】
対象の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane (1988)に記載されたもののような常套的な交差ブロックアッセイを実施することができる。別法として、例えばChampe等, J. Biol. Chem. 270:1388-1394 (1995)に記載されているようなエピトープマッピングを実施して抗体が対象のエピトープに結合するかどうかを決定することができる。
【0079】
合成抗体ファージライブラリからの新規な抗NRP1抗体の産生
ある好適な実施態様では、本発明は特有のファージディスプレイアプローチ法を使用して新規な抗NRP1抗体を産生し選択する方法を提供する。該アプローチ法は、単一フレームワーク鋳型に基づく合成抗体ファージライブラリの産生、可変ドメイン内の十分な多様性の設計、多様化した可変ドメインを有するポリペプチドのディスプレイ、NRP1抗原を標的とする高親和性を持つ候補抗体の選択、及び選択された抗体の単離を含む。
ファージディスプレイ法の詳細は例えば2003年12月11日公開の国際公開第03/102157号に見出すことができる。
【0080】
一態様では、本発明において使用される抗体ライブラリは抗体可変ドメインの少なくとも一のCDRにおいて溶媒接近可能な及び/又は高度に多様性の位置を変異させることによってつくることができる。CDRの幾らか又は全てをここに提供した方法を使用して変異させることができる。ある実施態様では、CDRH1、CDRH2及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成するか、又はCDRL3及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成するか、又はCDRL3及びCDRH1、CDRH2及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成することにより、多様な抗体ライブラリをつくることが好ましい。
【0081】
例えばCDRH1、CDRH2及びCDRH3の溶媒接近可能な及び/又は高度に多様性の位置に変異を有する抗体可変ドメインのライブラリをつくることができる。CDRL1、CDRL2及びCDRL3に変異を有する他のライブラリをつくることができる。これらのライブラリは所望の親和性の結合体をつくるために互いに関連させて使用することもできる。例えば、標的抗原への結合についての重鎖ライブラリの一又は複数回の選択後に、軽鎖ライブラリを結合体の親和性を増加させるために更なる選択回数に対して重鎖結合体の集団中に置き換えることができる。
【0082】
好ましくは、ライブラリは重鎖配列の可変領域のCDRH3領域における変異アミノ酸での元のアミノ酸の置換によりつくられる。得られたライブラリは複数の抗体配列を含み得、ここで配列多様性は主として重鎖配列のCDRH3領域にある。
【0083】
一態様では、ライブラリはヒト化抗体4D5配列、又はヒト化抗体4D5配列のフレームワークアミノ酸の配列の態様でつくり出す。好ましくは、ライブラリはDVKコドンセットによってコードされるアミノ酸で重鎖の少なくとも残基95−100aを置換することによりつくられ、ここでDVKコドンセットはこれらの位置の各一に対して変異アミノ酸セットをコードするために使用される。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの一例は配列(DVK)を含む。ある実施態様では、ライブラリはDVKとNNKの双方のコドンセットによってコードされるアミノ酸で残基95−100aを置換することによりつくられる。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの例は配列(DVK)(NNK)を含む。他の実施態様では、ライブラリはDVKとNNKの双方のコドンセットによってコードされるアミノ酸で少なくとも残基95−100aを置換することによりつくられる。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの例は配列(DVK)(NNK)を含む。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの他の例は配列(NNK)を含む。好適なオリゴヌクレオチド配列の他の例はここに記載された基準に従って当業者によって決定することができる。
【0084】
他の実施態様では、異なったCDRH3設計を使用して高親和性結合体を単離し様々なエピトープに対して結合体を単離する。このライブラリにおいて産生されたCDRH3の長さの範囲は11から13アミノ酸であるが、これとは異なった長さも産生することができる。H3多様性はNNK、DVK及びNVKコドンセットを使用し、並びにN及び/又はC末端での多様性をより制限して、拡張することができる。
【0085】
多様性をCDRH1及びCDRH2においてまた生じさせることができる。CDR-H1及びH2多様性の設計は、過去の設計よりも天然の多様性により密に適合する多様性に焦点を当てる変更をした上で、上述の天然抗体レパートリーを模倣するターゲティング方策に従う。
【0086】
CDRH3での多様性に対しては、複数のライブラリを、異なった長さのH3と別個に構築し、ついで、標的抗原に対する結合体を選択するために組み合わせる。複数のライブラリをプールし、過去に記載され以下に記載されたような固体支持体選別及び溶液選別方法を使用して選別することができる。複数の選別方策を用いることができる。例えば、一つの変異は固体に結合した標的での選別を含み、融合ポリペプチド上に存在しうるタグ(例えば抗gDタグ)の選別が続く。別法として、ライブラリは固体表面に結合した標的で先ず選別することができ、溶出した結合体がついで標的抗原の濃度を減少させた溶液相結合を使用して選別される。異なった選別法を併用することにより高度に発現した配列のみの選択の最小化がもたらされ、多くの異なった高親和性クローンの選択をもたらす。
【0087】
標的NRP1抗原に対する高親和性結合体はライブラリから単離することができる。H1/H2領域における多様性の制限は約10から10倍縮重を減少させ、より多くのH3多様性を許容することによりより多くの高親和性結合体をもたらす。CDRH3において異なったタイプの多様性を持つライブラリを利用することにより(例えばDVK又はNVTを利用して)標的抗原の異なったエピトープに結合しうる結合体の単離をもたらす。
【0088】
上述のプールされたライブラリから単離された結合体において、軽鎖において制限された多様性を提供することによって親和性を更に改善することができることが発見された。軽鎖多様性はこの実施態様では、CDRL1において次のようにして生じさせられる:アミノ酸位置28がRDTによってコードされる;アミノ酸位置29がRKTによってコードされる;アミノ酸位置30がRVWによってコードされる;アミノ酸位置31がANWによってコードされる;アミノ酸位置32がTHTによってコードされる;場合によっては、アミノ酸位置33がCTGによってコードされる;CDRL2においては:アミノ酸位置50がKBGによってコードされる;アミノ酸位置53がAVCによってコードされる;場合によっては、アミノ酸位置55がGMAによってコードされる;CDRL3においては:アミノ酸位置91がRVTによってコードされる;アミノ酸位置92がDMCによってコードされる;アミノ酸位置93がRVTによってコードされる;アミノ酸位置94がNHTによってコードされる;アミノ酸位置93がRVTによってコードされる;アミノ酸位置94がNHTによってコードされる;アミノ酸位置96がTWT又はYKG又は両方によってコードされる。
【0089】
他の実施態様では、CDRH1、CDRH2及びCDRH3領域に多様性を持つライブラリ又はライブラリ群が作成される。この実施態様では、CDRH3における多様性は様々な長さのH3領域を用い、主にコドンセットXYZ及びNNK又はNNSを用いてつくり出される。ライブラリは個々のオリゴヌクレオチドを使用して形成しプールすることができ、又はオリゴヌクレオチドをプールしてライブラリのサブセットを形成することができる。この実施態様のライブラリは固体に結合した標的に対して選別することができる。多重選別から単離されたクローンをELISAアッセイを使用して特異性及び親和性についてスクリーニングすることができる。特異性については、クローンを所望の標的抗原並びに他の非標的抗原に対してスクリーニングすることができる。標的NRP1抗原に対する結合体をついで溶液結合競合ELISAアッセイ又はスポット競合アッセイでの親和性についてスクリーニングすることができる。高親和性結合体は上に記載したようにして調製されたXYZコドンセットを使用してライブラリから単離することができる。これらの結合体は抗体又は抗原結合断片として細胞培養物中に高収量で直ぐに産生されうる。
【0090】
ある実施態様では、CDRH3領域の長さに大なる多様性を持つライブラリを作成することが望まれる場合がある。例えば、約7から19アミノ酸の範囲のCDRH3領域を持つライブラリを作成することが望ましい場合がある。
【0091】
これらの実施態様のライブラリから単離された高親和性結合体は細菌及び真核生物細胞培養で高収量で直ぐに産生される。ベクターはgDタグ、ウイルスコートタンパク質成分配列のような配列を直ぐに除去し、及び/又は定常領域配列に加えて完全長抗体又は抗原結合断片を高収量で生産するように設計することができる。
【0092】
CDRH3での変異を持つライブラリを、例えばCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1及び/又はCDRH2のような他のCDRの変異型を含むライブラリと組み合わせることができる。よって、例えば、一実施態様では、CDRH3ライブラリは予め定まったコドンセットを使用して位置28、29、30、31、及び/又は32に変異アミノ酸を持つヒト化4D5抗体配列の形態において作りだしたCDRL3ライブラリと組み合わせられる。他の実施態様では、CDRH3に対する変異のライブラリは変異CDRH1及び/又はCDRH2重鎖可変ドメインを含むライブラリと組み合わせることができる。一実施態様では、CDRH1ライブラリは位置28、30、31、32及び33に変異アミノ酸を持つヒト化抗体4D5配列を用いてつくり出される。CDRH2ライブラリは予め定まったコドンセットを使用して位置50、52、53、54、56及び58に変異アミノ酸を持つヒト化抗体4D5の配列を用いてつくり出すことができる。
【0093】
抗NRP1抗体変異体
ファージライブラリから生成される新規の抗NRP1抗体は、さらに修飾して、親抗体よりも改善した物理学的、化学的及び/又は生物学的特性を有する抗体変異体を生成することができる。使用するアッセイが生物学的活性アッセイである場合、抗体変異体は、選択したアッセイにおいて、該アッセイにおける親抗体の生物学的活性よりも少なくともおよそ10倍良好な、好ましくは少なくともおよそ20倍良好な、より好ましくは少なくともおよそ50倍良好な、時には少なくともおよそ100倍又は200倍良好な生物学的活性を有する。例えば、抗NRP1抗体変異体は、親抗NRP1抗体の結合親和性より、少なくともおよそ10倍強力な、好ましくは少なくともおよそ20倍強力な、より好ましくは少なくともおよそ50倍強力な、時には少なくともおよそ100倍又は200倍強力な、NRP1に対する結合親和性を有することが好ましい。
【0094】
抗体変異体を産生するためには、親抗体の高頻度可変領域の一又は複数中に一又は複数のアミノ酸修飾(例えば置換)が導入される。別法として、又は加えて、フレームワーク領域残基の一又は複数の修飾(例えば置換)を親抗体に導入することができ、これらにより第二の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体変異体の結合親和性が改善される。修飾するためのフレームワーク領域残基の例には、抗原に非共有的に結合するもの(Amit等, Science 233:747-753 (1986));CDRと相互作用し/そのコンホメーションに影響を及ぼすもの(Chothia等 J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));及び/又はV−V界面に関与するもの(欧州特許第239400B1号)が含まれる。ある実施態様では、そのようなフレームワーク領域残基の一又は複数の修飾により第二の哺乳動物種由来の抗原に対する抗原の結合親和性が向上する。例えば、約1から約5のフレームワーク残基を本発明のこの実施態様において修飾することができる。しばしば、これは、高頻度可変領域が何ら改変されていない場合でさえ、前臨床試験に使用するのに適した抗体変異体を生じるのに十分でありうる。しかしながら、通常は、抗体は更なる高頻度可変領域の改変を含む。
【0095】
改変される高頻度可変領域残基は、特に親抗体の出発結合親和性が、無作為に生産された抗体変異体を直ぐにスクリーニングすることができるものである場合には、無作為に変化させることができる。
【0096】
そのような抗体変異体を産生するための一つの有用な方法は、「アラニンスキャンニング突然変異誘発法」(Cunningham及びWells Science 244:1081-1085 (1989))と呼ばれる。ここで、高頻度可変領域残基の一又は複数が、第二の哺乳動物種由来の抗原とのアミノ酸の相互作用に影響を及ぼすためにアラニン又はポリアラニンによって置換される。ついで置換に対する機能的感受性を示す高頻度可変領域残基は、置換部位において又はそれに対して更なる又は他の置換を導入することにより洗練される。従って、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異の種類自体は予め決める必要はない。このようにして産生されるala変異体をここに記載したその生物活性についてスクリーニングされる。
【0097】
通常は、「好ましい置換」の項目名で以下に示されているもののような保存的置換で始める。そのような置換が生物活性(例えば結合親和性)の変化を生じるならば、次の表において「例示的置換」と命名され、又はアミノ酸クラスを参照して以下に更に記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされる。
【0098】
好適な置換:

【0099】
抗体の生物学的性質の更により実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋コンホメーション、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持して、それらの効果において有意に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro;及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
【0100】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを他のクラスと交換することを必要とする。
他の実施態様では、修飾のために選択された部位がファージディスプレイを使用して亜親和性成熟される(上を参照)。
【0101】
アミノ酸配列変異体をコードしている核酸分子は当該分野で知られている様々な方法により調製される。これらの方法は、限定されるものではないが、親抗体の先に調製された変異体又は非変異体型のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発を含む。変異体を作製するための好ましい方法は部位特異的突然変異誘発(例えばKunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488 (1985)を参照)である。
【0102】
ある実施態様では、抗体変異体は単一の高頻度可変領域残基が置換されたものである。他の実施態様では、親抗体の高頻度可変領域残基の2又はそれ以上が置換され、例えば約2から約10の高頻度可変領域置換である。
【0103】
通常、改善された生物学的性質を有する抗体変異体は親抗体の重鎖又は軽鎖の何れかの可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に対する同一性又は類似性は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入し最大の配列同一性パーセントを達成した後に親抗体残基と同一(つまり同じ残基)又は類似(つまり共通の側鎖特性に基づく同じグループのアミノ酸残基、上を参照)である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとしてここで定義される。可変ドメインの外側の抗体配列中へのN末端、C末端、又は内部の伸展、欠失、又は挿入は何れも配列同一性又は類似性に影響を及ぼすものとはみなされない。
【0104】
抗体変異体の産生後に、親抗体に対するその分子の生物活性が決定される。上に述べたように、これは抗体の結合親和性及び/又は他の生物活性を決定することを含みうる。本発明の好適な実施態様では、抗体変異体のパネルを調製し、NRP1又はその断片などの抗原に対する結合親和性についてスクリーニングする。この最初のスクリーニングから選択される抗体変異体の一又は複数は場合によっては一又は複数の更なる生物活性アッセイにかけて、結合親和性が向上した抗体変異体が例えば前臨床研究に確かに有用であることが確認される。
【0105】
このように選択された抗体変異体は、しばしば抗体の意図される用途に応じて更なる修飾を受けることができる。そのような修飾は以下に詳細を記載したもののようなアミノ酸配列の更なる改変、異種ポリペプチドに対する融合及び/又は共有的修飾を含む。アミノ酸配列改変については例示的な修飾を上に詳細に説明した。例えば、抗体変異体の正しいコンホメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基はまた一般にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し異常な架橋を防止することができる。逆に、システイン結合を抗体に加えてその安定性をかいぜんすることができる(特に抗体がFv断片のような抗体断片である場合)。他のタイプのアミノ酸変異体は改変されたグリコシル化パターンを有する。これは抗体に見出される一又は複数の糖鎖部分を欠失させ、及び/又は抗体中に存在していない一又は複数のグリコシル化部位を加えることによって達成することができる。抗体のグリコシル化は典型的にはN結合又はO結合の何れかである。N結合とはアスパラギン残基の側鎖への糖鎖部分の付着を意味する。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)がアスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的付着に対する認識配列である。よって、ポリペプチドにおいてこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合グリコシル化はヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニン(但し5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた使用できる)への糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つの付着を意味する。抗体へのグリコシル化部位の付加は、それが上述のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位に対する)の一又は複数を含むようにアミノ酸配列を改変することにより簡便に達成される。改変はまた元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加又は置換によって行うこともできる(O結合グリコシル化部位の場合)。
【0106】
ベクター、宿主細胞及び組換え方法
本発明の抗NRP1抗体は技術とすぐに入手可能な材料を用いて組み換えて生成することができる。
抗NRP1抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは直ぐに単離されるか合成されて、従来の手法を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードするDNAに特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが公的に入手可能である。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である。
【0107】
(i) シグナル配列成分
この発明の抗体は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対して、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母での分泌に対して、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、好ましくは、抗体をコードするDNAに読み枠を一致させて結合される。
【0108】
(ii) 複製起点成分
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる)。
【0109】
(iii) 選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0110】
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0111】
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
【0112】
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である。
【0113】
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0114】
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、ついでトリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
【0115】
更に、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え仔ウシのキモシンの大規模生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株による、組換え体成熟ヒト血清アルブミンの分泌のための安定した複数コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
【0116】
(iv) プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
【0117】
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0118】
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0119】
他の酵母プロモーターは、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域である。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許73657に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
【0120】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体の転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターにょって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
【0121】
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0122】
(v) エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0123】
(vi) 転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0124】
(vii) 宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
【0125】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用できる、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
【0126】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
【0127】
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587); ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2); イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34); バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065); マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
【0128】
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0129】
(viii) 宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0130】
(ix) 抗体精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔に生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体の単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0131】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
【0132】
予備的精製工程に続いて、目的の抗体および混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
【0133】
薬学的製剤
抗体の治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. 編 (1980))、水溶液製剤又は凍結乾燥の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0134】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。例えば、免疫抑制剤をさらに提供することが好ましい。そのような分子は、好適には、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
【0135】
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0136】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
【0137】
治療的使用
本発明の抗体を哺乳動物を治療するために用いることを考慮する。一実施態様において、抗体を、例えば、臨床前データを得るために、ヒト以外の哺乳動物に投与する。治療される人間以外の哺乳動物の例には、前臨床研究が行われる人間以外の霊長類、イヌ、ネコ、齧歯動物および他の哺乳動物が含まれる。このような哺乳動物は、抗体で治療される疾患の構築された動物モデルであるか、または対象とする抗体の毒性を研究するために用いてもよい。各々の実施態様において、用量段階的増量研究を哺乳動物で行いうる。抗体が抗NRP1抗体である場合、例えば、固形腫瘍モデルの宿主齧歯動物に投与してもよい。
【0138】
加えて、または、択一的に、抗体を、ヒト、例えば抗体の投与によって利益を得る疾患又は疾病に罹患している患者を治療するために用いる。
【0139】
本発明は、腫瘍増殖を指示するために栄養分を供給するために必要な腫瘍血管の発達を阻害することを目的とする新規の癌治療方策である、抗血管新生性癌治療を包含する。血管新生は原発性腫瘍増殖及び転移の両方に関与するので、本発明によって提供される抗血管新生性治療は、二次部位での腫瘍の新生物性増殖を阻害することができるだけでなく、二次部位での腫瘍の転移を予防することができ、それによって他の治療法による腫瘍の攻撃を可能にする。本明細書中で治療される癌の例には、限定するものではないが、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);線毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関係しているもの)及びメイグス症候群と関係している異常な血管性増殖が含まれる。より具体的には、本発明の抗体による治療に反応する癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド上皮癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫、及び多発性骨髄腫が含まれる。より好ましくは、本発明の方法は、ヒト患者の結腸直腸癌を治療するために用いられる。
【0140】
腫瘍などの様々な疾患を治療するために用いる場合、本発明の抗体は同じ又は類似の疾患に適する他の治療的薬剤と組み合わせされうることを考慮する。癌を治療するために用いる場合、本発明の抗体は、従来の癌治療法、例えば手術、放射線療法、化学療法又はその組み合わせと組み合わせて用いてもよい。
【0141】
ある態様では、本発明の抗体との組み合わせ癌療法に有用な他の治療薬には他の抗血管新生剤が含まれる。多くの抗血管新生剤が同定されており、公知であり、Carmeliet and Jain (2000)に挙げられるものが含まれる。
【0142】
ある態様では、本発明の抗体は、VEGFアンタゴニスト又はVEGFレセプターアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、VEGF変異体、可溶性VEGFレセプター断片、VEGF又はVEGFRを遮断することができるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼのインヒビター、及びそのいずれかの組み合わせと組み合わせて用いられる。あるいは又は加えて、2以上の抗NRP1抗体が患者に同時投与されてもよい。より好適な実施態様では、本発明の抗NRP1抗体又は抗NRP抗体は、相加的な又は相乗的な効果を生じさせるために、抗VEGF抗体と組み合わせて用いられる。好適な抗VEGF抗体には、抗hVEGF抗体A4.6.1と同じエピトープと結合するものが含まれる。より好ましくは、抗VEGF抗体はベバシズマブ(bevacizumab)又はラニビズマブ(ranibizumab)である。
【0143】
いくつかの他の態様では、本発明の抗体との組み合わせ腫瘍治療法に有用な他の治療薬には、腫瘍増殖に関与する他の因子のアンタゴニスト、例えばEGFR、ErbB2(別名Her2)、ErbB3、ErbB4又はTNFが含まれる。好ましくは、本発明の抗NRP1抗体は、VEGFレセプター、FGFレセプター、EGFレセプター及びPDGFレセプターなどの一又は複数のチロシンキナーゼレセプターを標的とする小分子レセプターチロシンキナーゼインヒビター(RTKI)と組み合わせて用いられうる。多くの治療的小分子RTKIは当分野で公知であり、限定するものではないが、バタラニブ(vatalanib)(PTK787)、エルロチニブ(erlotinib)(TARCEVA(登録商標))、OSI-7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(sunitinib)(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(semaxanib)(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(Imatinib)(GLEEVEC(登録商標))、MLN-518、CEP-701、PKC-412、ラパチニブ(Lapatinib)(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(sorafenib)(NEXAVAR(登録商標))、XL880及びCHIR-265が含まれる。
【0144】
単独又は第二治療薬(例えば抗VEGF抗体)と組み合わせた本発明の抗NRP1抗体は、一又は複数の化学療法剤とさらに組み合わせて用いられうる。様々な化学療法剤を本発明の併用治療方法に用いてもよい。考慮される化学療法剤の例示的かつ非限定的な例は、本明細書中の「定義」の項目に示される。
【0145】
抗NRP1抗体が第二治療薬と同時に投与される場合、第二治療薬がまず投与されて、その後に抗NRP1抗体が投与されてもよい。しかしながら、抗NRP1抗体の同時投与又は初めの投与もまた考慮される。第二治療薬に適切な用量は現在用いられるものであって、薬剤と抗NRP1抗体の組み合わせ作用(相乗効果)のために下げてもよい。
【0146】
疾患の予防又は治療のために、本抗体の好適な用量は、治療する疾患のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体を予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体への応答性、及び担当医師の判断に依存するであろう。抗体は一時的又は一連の治療にわたって好適に患者に投与される。
【0147】
疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg〜50mg/kg(例えば0.1〜20mg/kg)の抗体が、例えば一以上の分割投与又は連続注入による患者投与の初期候補用量である。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜約100mg/kg以上の範囲であろう。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与は、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。しかしながら他の用量処方が有用であるかもしれない。好適な態様では、本発明の抗体は、およそ5mg/kgからおよそ15mg/kgの範囲の用量で、2〜3週間ごとに投与される。より好ましくは、このような用量投薬計画は、転移性結腸直腸癌を治療するための第一線療法として、化学療法投薬計画と組み合わせて使われる。ある態様では、化学療法投薬計画は、従来の高用量間欠投与が含まれる。いくつかの他の態様では、化学療法剤は、定期的に中断することなく、よりわずかでより頻繁な用量を用いて投与される(「メトロノーム的化学療法」)。本発明の治療法の経過は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0148】
本発明の抗体組成物は、医学的実用性に合わせた様式で調製し、1回分に分けて、投与する。ここで考慮する要因には、治療する特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々患者の臨床症状、疾患の原因、作用剤の運搬の部位、投与の方法、投与の日程計画および医師が知りうる他の因子が含まれる。投与される抗体の「治療上の有効量」は、このような考慮によって調整されて、疾患又は疾病を予防するか、改善するかまたは、治療するのに必要な最小限度の量である。必要ではないが場合によっては、問題の疾患を予防するかまたは治療するために用いられる一つ以上の作用剤と抗体とを調製する。そのような他の作用剤の有効量は、製剤中の本抗体の量、疾患の型又は治療、及び上記の他の因子に依存する。一般的に、以前用いたのと同じ用量及び投与経路で、又は前回用いた用量の1〜99%で用いる。通常、疾患又は疾病の寛解又は治療は、疾患又は疾病と関連する一つ以上の症状又は医学的な問題を少なくすることを伴う。癌の場合、薬剤の治療上の有効量により、以下の一つ以上を達成することができる:癌細胞の数を減少する;腫瘍サイズを減少する;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度減退させるおよび/または停止する);腫瘍転移を阻害する;ある程度腫瘍成長を阻害する;および/または、ある程度癌と関連する一以上の症状を取り除く。薬剤が、既存の癌細胞の成長を予防したり、および/または殺すのであれば、細胞増殖抑止剤および/または細胞障害能がありうる。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、対象体又は哺乳動物の疾患又は疾病の発症又は再発を予防するために用いることができる。
【0149】
非治療的な使用
本発明の抗体を親和性精製作用剤として用いてもよい。この過程において、当分野で公知の方法を用いて抗体をセファデックス樹脂又は濾紙などの固相に固定する。固定された抗体は抗原を含む試料に接触させて精製し、その後、精製され、固定した抗体に結合する抗原以外の試料中の実質的に全ての材料を除去するような適切な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、支持体を、他の適切な溶媒、例えば、抗原を抗体から放出させるグリシン緩衝液、pH5.0によって洗浄する。
また、本発明の抗体は、例えば、特異的な細胞、組織又は血清中の対象とする抗原の発現を検出するための診断検査法に有用であるかもしれない。
【0150】
診断用の使用のために、一般的に抗体を検出可能な成分で標識するであろう。多くの標識が利用可能であり、通常、以下のカテゴリに分類することができる:
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、Hおよび131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen等, Ed. Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)又はフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、Lissamine、フィコエリトリンおよびテキサス赤のような蛍光性の標識が利用できる。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(c)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えばchemiluminometerを用いて)か、またはエネルギーを蛍光受容基に与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸酵素、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivan等, Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0151】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i) 基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii) 色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii) 色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼを有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4275149号および同第4318980号を参照。
【0152】
標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな3つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテン(例えばジゴキシン)とコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体(例えば抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0153】
本発明の他の実施態様において、抗体は標識する必要がなく、その存在を抗体と結合する標識した抗体を用いて検出することができる。
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイに用いられうる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。
【0154】
競合的結合アッセイは、試験サンプルと競争する標識した標準物質の能力に依存して、限定量の抗体の結合について分析するものである。試験サンプル中の抗原の量は、抗体に結合する標準物質の量に反比例する。結合する標準物質の量の測定を容易にするために、一般的に、抗体を競合の前か後に不溶化して、標準物質と抗体に結合する分析物質が、標準物質と結合しないで残っている分析物質から都合よく分離するようにする。
【0155】
サンドイッチアッセイは、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープに結合することができる、2つの抗体を使用する。サンドイッチアッセイにおいて、分析する試験サンプルは固体支持体に固定される第一の抗体に結合し、その後、第二の抗体が分析物質に結合し、したがって不溶性の3部分からなる複合体を形成する。例として米国特許第4376110号を参照。第二の抗体は、それ自体検出可能な成分で標識するか(直接的サンドイッチアッセイ)、検出可能な成分で標識した抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つのタイプはELISAアッセイであり、その場合には、検出可能な成分は酵素である。
【0156】
免疫組織化学において、腫瘍サンプルは新鮮なものでも、凍結されたものでも、パラフィン包埋されていても、防腐剤、例えばホルマリンなどで固定されていてもよい。
また、抗体は、インビボ診断検査法に用いられてもよい。通常、腫瘍がイムノシンチグラフィを用いて局所化されるように、抗体を放射性核種(例えば111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32P又は35S)又は染料で標識する。
【0157】
一実施態様において、生物学的サンプル(例えば組織、血液、血清、脊髄液)又は調製された生物学的サンプル中のNRP1を検出する方法は、試料を本発明の抗体と接触させて、試料中のNRP1に結合した抗NRP1抗体を観察するかまたは試料中のNRP1に結合した抗NRP1抗体の量を測定する工程を含みうる。他の実施態様では、対象体(例えばヒト、マウス、ウサギ、ラットなど)中のNRP1を検出する方法には、対象体に本発明の抗体を投与して、対象体中のNRP1に結合した抗NRP1抗体を観察するかまたは対象体中のNRP1に結合した抗NRP1抗体の量を測定する工程が含まれる。
【0158】
診断用キット
便宜上、本発明の抗体は、キット、すなわち診断検査法を実行するための指示書とともに予め定められた総計でパッケージされ組み合わされた試薬で提供することができる。抗体を酵素で標識する場合、キットには、基質と、酵素に必要な補助因子(例えば検出可能な発色基又は蛍光体を提供する基質前駆)が含まれるであろう。加えて、安定剤、緩衝液(例えばブロックバッファ又は溶解緩衝液)などの他の添加物が含まれうる。様々な試薬の相対量は、実質的にアッセイの感受性を最適化する試薬の溶液濃度が得られるように、広範囲に変化していてもよい。特に、溶解して好適な濃度の試薬溶液が得られる賦形剤を含む乾燥粉末、通常は凍結乾燥として試薬が提供されうる。
【0159】
製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の治療に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器とラベルを具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、試験管等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療するのに有効な組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の活性剤は本抗体である。容器のラベル又は付属物は、組成物が選択した症状の治療に使用されることを示す。製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用のための指示が明記されるパッケージ挿入物を含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0160】
以下の実施例は本発明の実施を単に例証するためのもので限定するものではない。ここで引用した全ての特許と科学文献の開示は出典明示によりその全体が取り込まれる。
【実施例】
【0161】
実施例1 抗NRP1抗体の生成
A.抗体ファージライブラリの作製
ファージにディスプレイされるか又は他の技術を使用してディスプレイされた抗体ライブラリを生成するためには、様々な方法が当分野で公知である。これらのライブラリの利点のうちの1つは、従来のハイブリドーマ技術と比較して、免疫寛容を導入することなくインビトロでの選別及びスクリーニングが可能であるので、異種間の機能的抗体を生成するために非常に適することである。Smith (1985) Science 228:1315-1317;Bradbury and Marks (2004) J Immunol Methods 290:29-49。
【0162】
一般的に、2つのタイプの組合せ抗体ライブラリが開発され、元となるレパートリーによって分類された。現在までの大部分のライブラリは、その多様性の供給源として天然のレパートリ(repertoire)を用いた「天然の」抗体ライブラリであり、ナイーブないしは免疫化の動物ないしはヒトの免疫細胞のメッセージRNAとしての遺伝子を増幅し、ファージディスプレイ又は他のディスプレイ技術(例えばリボソーム又は酵母ディスプレイ)のためにベクターにクローニングしたものである。天然抗体は通常多数のフレームワークを有しており、可変CDR配列とともに軽鎖ないし重鎖の組換えによってライブラリの多様性を形成したものである。レパートリがライブラリサイズより全体的に大きいので、ライブラリの性能はライブラリの大きさで決まる。一方、合成ライブラリは、多様性が合成DNAによってライブラリ内に設定及び作製されたライブラリの新規の一技術である。単一又は多数のフレームワークが用いられている。単一のフレームワークライブラリでは、多様性は、多様なCDRループを作製するように設定した合成DNAの縮重に単に依存する。ライブラリの多様性設定およびサイズは、ライブラリ性能に重要であり、その性能はライブラリにみられる抗体の親和性によって測定することができる。Knappik等 (2000) J Mol Biol 296:57-86;Sheets等 (1998) Proc Natl Acad Sci U S A 95: 6157-6162;de Haard等 (1999) J Biol Chem 274:18218-18230。
【0163】
可変重鎖相補性決定領域(CDR)内の溶媒に露出された位置に合成多様性を導入することによって、Lee等は、単一のヒトフレームワーク(VLκI、VHサブグループIII)に構築されるファージディスプレイ合成抗体ライブラリを開発した。Sidhu等 (2004) J Mol Biol 338:299-310;Lee等 (2004) J Mol Biol 340:1073-1093;Carter等 (1992) Proc Natl Acad Sci U S A 89:4285-4289。この「VHライブラリ」は、二価の抗原結合性フラグメント(Fab'2)としてディスプレイされ、あつらえた(tailored)コドンを用いてヒト免疫グロブリンに観察される天然の多様性を模倣する。Lee等 (2004) J Immunol Methods 284:119-132。由来する抗体の親和性及び機能から測定されるようにVHライブラリは十分に機能するが、対象の抗原標的の機能的抗体を生成する際にはライブラリ設定を更に修飾するのが望ましい。オリゴヌクレオチド合成のためのトリヌクレオチドの新しい有効性により、DNA多様性を増やすことなくアミノ酸多様性を増やすことができる。したがって、本明細書中に記述されるように、CDR-H3及びCDR-L3は抗原結合部位の内球を形成するので、CDR-L3内の非常に可変な部位をさらに多様化した新規な「VH/VLライブラリ」が生成される。Mian等 (1991) J Mol Biol 217:133-151。
【0164】
物質及び方法
コンセンサスCDR-L1、-L2、-L3、-H1及び-H2を有するVH/VLナイーブライブラリ鋳型を、CDR-H3に停止コドンを有するファジミドpV0350-4へのオリゴヌクレオチド誘導性突然変異誘発を用いて、M13バクテリオファージ粒子の表面に二価でディスプレイして生成される。Lee等 (2004) J Mol Biol 340:1073-1093。CDR-L3、H1、H2及びH3内の設定した部位に突然変異を導入してCDR-H3停止コドンを修復するように設定した変異原性オリゴヌクレオチドの混合により、既に記載のあるように(Kunkel等 (1991) Methods Enzymol 204:125-139)、キュンケル突然変異誘発法を用いてファージディスプレイライブラリを構築した。記載のあるように(Sidhu等 (2004))、突然変異誘発反応物(〜10μgDNA)を大腸菌SS320細胞(〜1011細胞)に電気穿孔した。
【0165】
結果
本明細書中に記載のVH/VLライブラリは、ハーセプチン(登録商標)由来のVLκI及びVHサブグループIIIフレームワークをVHライブラリに用いられるように利用した。このライブラリは、バクテリオファージ上に十分にディスプレイされ、大腸菌内で十分に発現され、哺乳動物細胞で十分に発現する完全長IgGに迅速に変換されうることが示されている。Lee等 (2004) J Mol Biol 340:1073-1093;Carter等 (1992) Proc Natl Acad Sci U S A 89:4285-4289。ファージコートタンパク質P3に融合させることによって、ライブラリが二価のFab(Fab'2)としてファージ表面にディスプレイされる。この二価のディスプレイは、固定した抗原に対する見かけの結合親和性を増し、ほとんどない又は低い親和性ファージ抗体クローンの回復の改善を促すためのものであった。
【0166】
VHライブラリの軽鎖に維持されるハーセプチン(登録商標)由来のCDR配列から受け継がれる潜在的バイアスを回避するために、コンセンサスκI CDR配列を、VH/VLライブラリの鋳型に導入した。天然のヒト抗体に存在する最も一般的なアミノ酸を選択することによって、コンセンサスCDR残基を決定する。3つすべてのCDR内での突然変異誘発を確認するためにVHライブラリの重鎖に既に用いた停止コドンを、CDR-H1及びCDR-H2のコンセンサスサブグループIII配列と同様に置換した。コンセンサスCDR配列は、各位置での最も一般的なアミノ酸を表す。CDR-H3は抗原認識において顕著な役割を果たすので、いくつかの停止コドンをH3に配置して、ライブラリからの機能的抗体クローンが互いに異なることを確認した。Xu等 (2000) Immunity 13: 37-45。ヒトのコンセンサスCDR配列の存在により、部分的に変異した変異体(対象とするCDRのすべてが変化しているわけではない)のディスプレイと潜在的な結合での機能の維持が可能になることが予測された。この方法では、VH/VL設定は、ライブラリの機能的ファージ抗体クローンの比率を増やすという利点がある。表Iに示すように、使用するCDR配列は、CDR-L1ではSISSYL(位置28−33)、CDR-L2ではGASSRA(位置50−55)、CDR-L3ではYYSSPL(位置91−96)、CDR-H1ではFTFSSYAMS(位置27−35)、及びCDR-H2ではRISPSGGSTY(位置50−58)、及びCDR-H3ではWXXXRPXXMDY(位置95−102、Xは停止コドンである)である。また、ヒト抗体における各々の位置の保持率も表Iに示す。
【0167】
VH/VLライブラリの多様性は、天然の抗体配列の中での溶媒曝露の高さ及び/又は特に高い変異性に基づいてCDR位置のサブセットに導入した。導入された突然変異誘発及び多様性のために選択される位置を表IIに示す。例えば、CDR-H1では、位置27、28、30、31、32、33及び34を選択して多様化した。VH/VLライブラリ設定のために、最も一般的なアミノ酸が表されるように、変性オリゴコドン又はトリヌクレオチドを用いて各々の位置に多様性を導いた。例えばCDR-H1(位置30)では、セリンはおよそ50%の天然の多様性を表すので、およそ52%のセリン及び2.5%のシステイン以外の他のアミノ酸を有するトリヌクレオチド(X1)の混合物を用いた。
【0168】
CDR-H3及びCDR-L3は抗原結合部位の中心を形成するので、構造的に公知の抗体-抗原複合体において最も高い頻度で抗原接触を示す。Chothia等 (1989) Nature 342:877-883。最も高い変異性を有するCDR-L3の5つの残基(表II)をランダム化した。全体のCDR-H3は、長さ、配列及び構造に関して最も多様で、天然の抗体の多様性の重要な成分である。Xu and Davis (2000) Immunity 13:37-45;Wu等 (1993) Proteins 16:1-7。したがって、12のサブライブラリは、9から20のアミノ酸範囲の異なる長さのCDR-H3により構築した。加えて、これらのサブライブラリは、天然の抗体のおよそ90%のCDR-H3長変化を含む。CDR-H3をコードするオリゴヌクレオチドは、トリヌクレオチドコドンを用いて合成した。これにより、我々は容易に、システイン(CDR-H3においてまれな)を欠失させて、CDR-H3の最も多い残基であるグリシン、チロシン及びセリンのレベルを上げることができる。Mian等 (1991) J Mol Biol 217:133-151。それぞれおよそ15.6%のセリン、チロシン及びグリシンのトリヌクレオチド混合物であるコドンX7は、それぞれ3.1%のシステイン以外の残りのアミノ酸とともに、CDR-H3内のそれぞれの位置に用いた(すべてのトリヌクレオチド混合物については理論上の計算値)。また、トリヌクレオチドの異なる組み合わせを、CDR-H1、H2、H3及びL3の選択された位置に用いた。表II及び補足の表Iに示すように、コドンX1からX6には、高い割合でセリン、チロシン又はグリシンが存在する。X1は52.5%のセリンを有し、X2は52.5%のチロシンを有し、X3は10%のチロシン、グリシン又はセリンを有し、X4は28.8%のグリシンを有し、X5は19.2%のチロシン、グリシン又はセリンを有し、X6は20%のチロシン又はセリンを有する。VH/VL抗体ファージライブラリはおよそ1010の変異体をディスプレイしたと推定される。
【0169】
表I.VH/VLライブラリの鋳型におけるCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1及びCDR-H2のコンセンサス配列。コンセンサスCDR残基は、天然のヒト抗体に存在する最も一般的なアミノ酸を選択することによって決定する。所定の位置のヒト抗体における各残基の保持率(%)を、およそ1600のヒト軽鎖配列のアラインメントとカバットデータベース(Kabat等 (1977) J Biol Chem 252:6609-6616)における3500のヒト重鎖配列から算出される。

【0170】
表II.VH/VLライブラリのためのCDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3の設定された多様性。CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3のランダム化のために選択されるCDR位置を、ライブラリ鋳型中のコンセンサス残基とともに挙げる。それぞれの位置でコードされるアミノ酸の種類の割合がデータベースで見られるアミノ酸の種類に近いか50%より高くなるように、設定した多様性は、トリヌクレオチドコドン(太字)の混合によってコードされるシステイン以外の19アミノ酸コドンであるか、又はあつらえた縮重コドン(斜体)によってコードされる残基群である。特定の位置について、システイン以外の19アミノ酸のすべては、Tyr(Y)、Gly(G)及びSer(S)に対して異なるバイアスを有するトリヌクレオチドコドン混合物を用いて導入される。

【0171】
B.ファージ由来のモノクローナル抗-NRP1抗体の生成
材料及び方法
抗NRP1抗体を同定するためのライブラリ分類及びスクリーニング−ヒト及びマウスのNRP1コンストラクト(1−641aa)を、哺乳類の発現ベクターにクローニングして、CHO細胞において発現させた。NRP-1の切断型であるa1a2及びb1b2ドメインをバキュロウイルスにおいて発現させた。NUNC96ウェルMaxisorpイムノプレートを標的抗原(10ug/ml)にて4℃で終夜コートして、ファージ遮断(ブロック)バッファPBST(PBS及び1%BSA及び0.05%ツイーン20)にて室温で1時間かけて遮断した。抗体ファージライブラリを抗原プレートに加え、RTで終夜インキュベートした。翌日、抗原コートプレートをPBT(0.05%T-20を含むPBS)にて10回洗浄し、結合したファージを50mM HCl及び500mM NaClにて30分間かけて溶出し、等量の1Mトリス塩基pH7.5にて中和した。回収したファージを大腸菌XL-1ブルー細胞中で増幅させた。その後の選別ラウンドの間、抗原コートプレートとの抗体ファージのインキュベートを2〜3時間に短縮し、プレート洗浄のストリンジェンシーを徐々に上げた。
【0172】
抗NRP1抗体結合親和性、特異性及びフローサイトメトリー分析−記述されるように競合的ファージ-結合ELISAを用いて、ファージ抗体IC50値を決定した。Lee等 (2004) J Mol Biol 340:1073-1093。競合曲線を4-パラメータ非線形回帰曲線フィッティングプログラム(Kaleidagraph、Synergyソフトウェア)にあてはめて、ファージディスプレイ抗体の固定抗原への結合が50%阻害される溶液結合段階での抗原の濃度として算出されるIC50値を決定した。
【0173】
次いで、個々のクローンのV領域及びV領域をそれぞれLPG3ベクター及びLPG4ベクターにクローニングすることによって対象とするクローンをIgGに再形成させ(Carter等 (1992) Proc Natl Acad Sci U S A 89:4285-4289)、過渡的に哺乳動物細胞中で発現させ、プロテインAカラムにて精製した。抗NRP1 IgGの結合親和性決定のために、BIAcoreTM-3000計測器による表面プラズモン共鳴(SPR)測定値を用いた。抗NRP1 IgGを、およそ500反応単位(RU)に達成するように活性化したCM5バイオセンサーチップにカップリングして、その後1M エタノールアミンにて反応していない基を遮断した。動態学的測定値のために、ニューロピリンの2倍階段希釈液(0.7〜500nM)を、30μl/分の流速で25℃のPBSTバッファに注入した。会合(結合)速度(kon)と解離速度(koff)は、単一の1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて算出した。平衡解離定数(Kd)を比率koff/konとして算出した。
【0174】
結合特異性試験のために、10μg/mlのIgGを含むPBSTバッファを2μg/mlの抗原コート96ウェルMaxisorpプレートとともに少なくとも1時間インキュベートして、プレートをPBTバッファにて洗浄した。結合した抗体を抗ヒト抗体HRPコンジュゲートにて検出し、およそ5分間、TMB基質にて反応させ、1M HPOにて反応を止め、450nmを分光測定で読み取った。
【0175】
フローサイトメトリー分析のために、HUVEC細胞を、細胞解離バッファにて組織培養フラスコから分離した。解離した細胞をPBSで洗浄して、2%胎仔ウシ血清を含有するPBS(FACSバッファ)に再懸濁した。細胞を、10μg/mlの抗NRP1抗体又はコントロール抗体(抗IgE)を含むFACSバッファにて氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSにて2回洗浄して、Fc特異的抗体であるPE-Fab'2ヤギ抗ヒトIgGを含むFACSバッファにて氷上で30分間かけて染色した。2回のPBS洗浄後、細胞を200μlのFACSバッファに再懸濁して、Cell-Questソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS口径、Benton Dickenson, Mountain View, CA)にて分析した。
【0176】
結果
第1ラウンドの選別では、固定したCHO細胞発現のhNRP1(a1a2b1b2)-Fcタンパク質に対して、12のVH/VLサブライブラリを個々にパンした。各々のサブライブラリから溶出されたファージを増幅させて、第2ラウンドの選別のために組み合わせた。hNRP1-Fcを抗原として用いたので、抗Fcファージ抗体の回復を最小限にするために、第1ラウンドのパニングの後に、プールしたファージを過剰な無関係なFc融合タンパク質にて吸収した。第4ラウンドのパニングの後、95のランダムに選択したファージクローンを、NRP1に特異的に結合する能力について評価した。90%のクローンはhNRP1結合についてポジティブであり、40%のポジティブクローンはヒトとマウス両方のNRP1を結合した。
【0177】
これらのファージクローンを配列決定し、10の異なるクローンを更なる特徴付けのために選択した。すべてが、ファージELISAにおいて70nM未満のIC50でヒト及びマウス両方のNRP1を結合した。クローンYW64.3はそれぞれ0.5及び3.4nMのIC50でヒト及びマウスのNRP1を結合した(表III)。10のクローンの配列は、長さが異なるCDR-H3とCDR-H1、H2及びL3の全体にわたって分散する様々な変異を有するが、ライブラリ鋳型のいくつかのコンセンサスCDR配列が保持されているVH/VLライブラリデザインであることを表す。クローン64.3及び64.29は、4つすべてのCDRに変異を有し、また、ヒト及びマウス両方のNRP1に対して最も良い結合親和性を有する(表III)。
【0178】
表III.部分的なCDR配列と抗NRP1抗体に対する結合親和性(ファージIC50)。VH/VLライブラリから初めに同定された11の異なるファージクローンのランダム化した位置のCDRアミノ酸配列のみを示す。hNRP1及びmNRP1に対するIC50値としての親和性を競合的ファージELISAにより測定した。


【0179】
hNRP1のドメイン切断型変異体を用いて、クローンのための結合エピトープを同定し、すべてをhNRP1のa1a2ドメインにマップした。NRP1のb1b2ドメインに結合して潜在的にVEGFの結合を遮断するファージ抗体を選択するために、V発明者等は、固定された抗原としてバキュロウイルス発現hNRP1(b1b2)-Hisを用いた新規なパニング方法を開発した。4ラウンドの選別の後、ヒト及びマウス両方のNRP1を結合した唯一の特有クローンであったYW107.4が同定された。ファージELISA(表III)において、YW107.4は6及び38nMのIC50でヒト及びマウスのNRP1に結合した。
【0180】
選択された抗NRP1 IgGの特徴づけ−表IIIから選択した抗NRP1クローンを、完全長ヒトIgG1に再フォーマットし、CHO細胞において発現させ、更なる特徴付けのために精製した。抗NRP1ファージ抗体であるYW64.3及びYW107.4はヒト及びマウスのNRP1に特異的に結合したが、ヒト又はマウスのNRP-2、ErbB2-ECD又はBSAには結合しなかった。図1A。他の8つのファージ抗体それぞれは類似の特異性を示した。表面プラスモン共鳴によって、固定されたYW64.3及びYW107.4 IgGは、500nMまでの濃度ではこれらの抗原と相互作用しなかった。しかしながら、YW64.3及びYW107.4はそれぞれ、0.9及び5nMのKdでヒトNRP1を結合すると同時に、7.8及び11nMのKdでマウスNRP1を結合した。これらの抗体はプレート固定の抗原を用いて選択されたが、FACS分析により、すべての精製したIgGが内生的にhNRP1を発現するHUVEC細胞(例えば図1Bに示されるYW64.3及びYW107.4)にも結合したことが示された。
【0181】
C.抗NRP1抗体の親和性成熟
YW107.4はそれぞれ6及び38nMのファージIC50でヒト及びマウスのNRP1のb1b2ドメインに結合した。インビボの力価を向上させるために、このクローンをヒトのNRP1-Hisを用いて親和性成熟した。
【0182】
物質及び方法
クローンYW107.4の親和性成熟のためのライブラリ鋳型を生成するために、まず親のファジミドのGCN4ロイシンジッパーをキュンケル突然変異誘発を用いて取り除き、一価性ディスプレイFab形式を提供した。停止コドンはCDR-L3に組み込んだ。親和性成熟にソフトランダム化(soft randomization)を用いた。これにより、野生型ヌクレオチドを成す塩基の70-10-10-10混合物による変異原性DNA合成によって選択した位置におよそ50%の変異率がもたらされる。Gallop等 (1994) J Med Chem 37:1233-1251。CDRループの組み合わせである、L1/L2/L3、L3/H1/H2及びL3/H3ランダム化を有する3つの異なるライブラリは、CDR-L1の位置28-32、CDR-L2の位置50及び53-55、CDR-L3の位置91、92、93、94及び96、CDR-H1の位置28-35、CDR-H2の位置50-58及びCDR-H3の位置95-100の選択された残基をソフトランダム化することによって生成された。
【0183】
親和性成熟されたクローンを選択するために、記述されるように、ファージライブラリは第1ラウンドでプレート分類を行い、その後溶液段階分類を4ラウンド行った。Lee等 (2004) J Mol Biol 340:1073-1093。プレート分類の第1ラウンドで、hNRP1コートプレートに3つのライブラリを別々に加えて37℃に1時間おいた。その後、4ラウンドの溶液相分類を行い、以下のようにストリンジェンシーを上げながら親和性ベースの選別の効率を上げた:ラウンド2(5nM ビオチン化hNRP1)、ラウンド3(1nM ビオチン化hNRP1)、ラウンド4(0.5nM ビオチン化hNRP1及び250nM 非ビオチン化hNRP1競合物質、37℃で1時間)、及びラウンド5(0.5nM ビオチン化hNRP1及び500nM 非ビオチン化hNRP1競合物質、37℃で3時間)。選択工程の間、ビオチン化hNRP1を含まない反応を含め、各ラウンドのパニングの濃縮を算出するためのバックグラウンドファージ結合とした。
【0184】
5ラウンドのパニングの後、記述されるように、ハイスループット単一ポイント競合的ファージELISAを用いて高親和性クローンを迅速にスクリーニングした。Sidhu等 (2004) J Mol Biol 338:299-310。hNRP1の非存在下での吸光度に対して5nM hNRP1の存在下での450nmの吸光度の比率が低いクローンを更なる特徴付けのために選択した。
【0185】
結果
3つの異なるCDRの組合せであるL1/L2/L3、L3/H1/H2及びL3/H3を、選択した位置が回数の50パーセントだけ変異するように、野生型配列バイアスを維持する「ソフトランダム化」方策を用いたランダム化のターゲットとした。Gallop等 (1994) J Med Chem 37:1233-1251。親和性成熟のために、二価性Fabよりむしろ一価性Fabをファージ上にディスプレイさせて、選別の間、結合活性を低減した。各サブライブラリのCDR-L3に停止コドンを導入した。既に相対的に高い会合速度定数(2.2×10)を有するが、解離速度定数は相対的に早い(1.1×10−3)(表V)ので、解離速度選別方策(方法を参照)を行って、YW107.4の親和性を改善した。
【0186】
選別の第1ラウンドでは、3つすべてのCDRソフトランダム化ライブラリを固定したhNRP1に対してパンした後に、溶液相分類方策によるラウンドを行い、標的濃度を限定して親和性ベースの選別を高めた。ビオチン化hNRP1の濃度は、5nMから0.5nMまで徐々に下げ、500倍の過剰な非ビオチン化hNRP1を加えて早い解離速度の結合体と競合させた。また、混合物を37℃で最高2時間インキュベートした。
【0187】
L1/L2/L3ライブラリはラウンド5の後に有意な濃縮を示した。96のクローンをランダムに選別し、配列決定して親和性分類した。23の異なるファージクローンを選別して、更なる特徴付けのために精製した。ファージ競合ELISAによって決定されるように、ほとんどのクローンはhNRP1に対する親和性を向上させた。驚くべきことに、選択工程を省いたのにもかかわらずmNRP1に対する親和性も改善された。これは、クローンが保存されたエピトープに結合したことを示唆する。選択されたクローンには、3つの軽鎖CDRに4〜7つの変化があった。CDR-L1の位置28及び30はそれぞれ、チロシン及びヒスチジンに置換される傾向があるのに対して、CDR-L3の位置92、93及び96はより多様であった(表IV)。
【0188】
ヒト及びマウスのNRP1に対して最も高い親和性を有するクローン(YW107.4.18、YW107.4.38、YW107.4.52、YW107.4.63、YW107.4.76a及びYW107.4.87)を再フォーマットして、完全長抗体として発現させた。6つすべてのIgGは、hNRP1に対する親和性を向上し、VEGF-A結合の完全な遮断を維持した。ヒト及びマウスのNRP1に対する親和性は0.4から1.8nM(表V)まで変動した。YW107.4.87の解離速度定数を改善すると、ヒト及びマウスのNRP1に対する親和性が最終的におよそ10倍改善したのに対して、ヒト又はマウスのNRP2に対する結合は観察されなかった(図2A)。また、YW107.4.87も細胞表面NRP1への結合の改善を示した(図2B)。
【0189】
表IV.CDR配列と親和性改善されたYW107.4クローンに対する結合親和性(ファージIC50)。ランダム化された軽鎖CDR位置の親和性成熟されたYW107.4クローンの推定されるアミノ酸配列を示す。競合ファージELISAのhNRP1及びmNRP1に対する個々のクローンのFab-ファージIC50値を用いて、親和性改善をYW107.4と比較した。

【0190】
表V.25℃の抗NRP1 IgGの結合動力学解析。抗NRP1 IgGの結合親和性を、hNRP1又はmNRP1の希釈物を25℃で流し通すIgG-固定バイオセンサーチップを用いたBIAcore-3000測定器にて測定した(材料及び方法を参照のこと)。各測定値はKdおよそ±25%の誤差を有する。

【0191】
実施例2 抗-NRP1抗体の生物学的活性
YW64.3及びYW107.4.87の抗体配列を図3に示す。本出願では、抗NRP1抗体活性の以下の記載において、「YW64.3」と「抗NRPA」は交換可能に用いられ、「YW107.4.87」と「抗NRPB」は交換可能に用いられる。
【0192】
物質及び方法
細胞培養
HUVEC、HUAEC、及びHMVECはCambrexから購入し、EGM-2培地(Cambrex)にて培養した。細胞及び組織培養物を5%CO2、95%の湿度恒温器中で37℃で維持した。
【0193】
DRG及び海馬崩壊アッセイ(collapse assay)
マウスE12.5 DRGからの軸索上の崩壊アッセイは、He and Tessier-Lavigne (1997) Cell 90:739-751に記載されるように行った。簡単に言うと、DRG外植片を、ラミニンコート8-チャンバスライド(Nunc)に播き、50ng/mlのNGFを含むN3-F12培地中で5%CO2、95%の湿度恒温器にて37℃で培養した。ヒトのセマフォリン-3A(Met-1からVal-771)を、C末端ヘキサヒスチジン融合タグを有する真核生物発現ベクターpRK5にクローニングした。タンパク質をCHO細胞中で過渡的に発現させ、NiNTA親和性クロマトグラフィにて精製した。N末端配列決定を用いて、クーマシー染色したSDS-PAGEゲル上で90kDaのバンドとしてタンパク質を可視にて確認した。インヒビターの存在下及び非存在下において8ng/ml以下の精製したSema3Aを加え、外植片を37℃で30分間インキュベートして崩壊を誘導した。視覚化のために、成長円錐を、4%PFA及び15%スクロースに固定して、1:40のローダミン-ファロイジン(Molecular Probes)を含むPBSにて30分間染色して、その後洗浄してFluoromount G(Fisher)にてマウントした。海馬崩壊アッセイを行うために、E17マウス脳を、冷却PBSにて解剖し、組織チョッパー(Mcllwain)を用いて250μm厚に水平方向にスライスした。細いタングステン針を用いて海馬の選択した切片から、さらに歯状回を切り出した。外植片を、ラミニンコート8-チャンバスライド(Nunc)に播き、B27を添加した神経基礎培地(Gibco Life Technologies)中で37℃で終夜培養した。崩壊を誘導するために、外植片を、mock形質移入COS細胞又はSema3F形質移入COS細胞調製培地の存在下にて、コントロール又は抗NRP1抗体(10μg/ml)とともに37℃で30分間インキュベートした。
【0194】
細胞移動アッセイ
細胞移動アッセイは、8μm孔径ファルコン24−マルチウェル挿入システム(BD Biosciences)を有する変更ボイデンチャンバアッセイを用いて行った。プレートは、上下両方のチャンバ中で、37℃で16時間かけて8μg/mlのラミニン(Invitrogen)にて予めコートした。HUVEC(80〜90%の集密度)は、トリプシンにて回収し、計数して、遠心分離して、5×10細胞個/mlの濃度で、0.1%BSAを含むEBM-2に再懸濁した。100μl細胞をトランスウェルシステムの上部チャンバに加えた。インヒビターを細胞を含む上部チャンバに加えた直後に、0.1%BSAを含む500μlのEBM-2を含む下部チャンバ(ほとんどの場合、10ng/mlのVEGF)に刺激を加えた。次いでプレートを37℃に終夜置いた。アッセイを止めるために、膜の上部面上の細胞はスポンジ綿を用いて取り除き、下部面上の細胞はメタノールにて固定して、Cytoxグリーン(Molecular Probes)にて染色した。膜の下部面上に移動した細胞の数はAxiPhot蛍光顕微鏡を用いて計数し、結果を、ImageJプログラム(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)にて分析した。
【0195】
ビーズ成長アッセイ
デキストランコートCytodex3マイクロキャリアビーズ(Amersham Pharmacia)を、1mlのEGM-2培地中でビーズ当たり400細胞の濃度のサブ集密的なHUVECとともに、20分ごとにゆっくりと撹拌しながら5%CO恒温器にて37℃で4時間インキュベートした。次いで、ビーズを25-cm組織培養フラスコ(BD Biosciences)に移し、5mlのEGM-2中で37℃で12〜16時間インキュベートした。次いで、HUVECコートビーズを1mlのEGM-2にて3回洗浄し、200ビーズ/mlの密度で、2.5μg/mlのフィブリノーゲン(Sigma)を含むPBSに再懸濁した。0.5mlのフィブリノーゲン/ビーズ溶液を、0.625単位のトロンビン(Sigma)を含有する24ウェル組織培養プレートの1ウェルに移して、凝固を誘導した。フィブリノーゲン/ビーズ溶液は、室温で5分間インキュベートした後、5%CO恒温器にて37℃で20分間インキュベートした。凝固が完了した後、1mlのEGM-2を各ウェルに加え、凝血塊を37℃で30分間かけて平衡化した。培地を取り除き、EGM-2培地中に2000/mlの濃度の皮膚線維芽細胞(デトロイト551)1mlを凝固塊の上に播いた。次いで、異なる抗体を各ウェルに加え、2〜3日ごとに培地を交換しながら8日間アッセイをモニターした。ビーズの10×分解画像は倒立顕微鏡にてキャプチャーし、100、200及び300μmの間隔の同心円を各画像のビーズ周辺でデジタル的に描画した。各々の線を越えている脈管の数を計数し、各距離と条件の平均を得た。
【0196】
FACS分析
集密的なHUVECを、5%CO恒温器において10μg/mlのコントロール又は抗NRP1抗体とともに37℃で、5分、2時間又は20時間インキュベートした。細胞を、酵素を含まない細胞解離バッファ(Gibco)にて回収して、等量のFACSバッファ(1×PBS、2%FBS、2mM EDTA、0.1%アジ化ナトリウム)にて中和して、ウェル当たりの500000細胞でプロ-結合U底96ウェルアッセイプレート(Falcon)に移した。細胞ペレットを2k回転数/分で遠心分離して回収し、好適なビオチン化抗体を1:100で含有する25μlの染色バッファ(5%正常マウス血清、2%正常ラット血清及び10%の10μg/mlヒトのIgGを有するFACSバッファ)に再懸濁して、4℃で2時間インキュベートした。抗体は、FluoReporter mini-biotin-xxタンパク質標識キット(Molecular Probes)を用いてビオチン化した。次いで、細胞をFACSバッファにて2回洗浄して、1:1000のストレプトアビジン-PE (BD Biosciences)を含有する25μlのFACSバッファにてインキュベートした。最後に、細胞を洗浄して、FACSバッファに再懸濁して、FacsCaliburシステム(BD Biosciences)にて分析した。
【0197】
細胞接着アッセイ
サブ集密的なHUVECを、コントロール又は抗NRP1抗体を含む100μlのメディウム199にて37℃で30分間かけて予めインキュベートし、次いで、1μg/mlのフイブロネクチン(Roche)にてコートしたNUNC maxisorp平底96ウェルプレート(eBioscience)に1ウェル当たり10000細胞を播いた。プレートを、140gで1分間遠心して基質と細胞の萎縮を同期させ、37℃で30分間インキュベートした。次いで、プレートをPBSにて3回洗浄し、−80℃で2時間かけて凍結した。細胞密度はCyQuantキット(Molecular Probes)により決定した。
【0198】
マウス新生仔網膜血管アッセイ
新生仔CD1マウス(同腹仔)に、10mg/kgの濃度の異なる抗体を腹腔内投与した。出生後5日(P5)に試験するために出生後1日目及び3日目に、P8に試験するために1、3及び5日目に注射した。眼を採取し、4%PFAのPBSにて4℃で16時間かけて固定し、その後PBS洗浄を行った。 切開した網膜は10%マウス血清を含むPBSt(PBS、1%トリトンX-100)にて3時間かけてブロックし、次いでビオチン化したイソレクチンB4(Bandeiraea simplicifolia;Sigma)25μg/mlを含むPBLEC(1%トリトンX-100、0.1mM CaCl、0.1mM MgCl、0.1mM MnClを含むPBS pH6.8)とともに4℃で終夜インキュベートした。次いで、網膜をPBStにて4回洗浄し、Alexa488ストレプトアビジン(1:200;Molecular Probes)とともに4℃で終夜インキュベートした。染色が完了したあと、網膜をPBStにて4回洗浄し、その後4%PFAのPBSにて固定して、PBSにてさらに4回洗浄した。平らにマウントした網膜の画像は、共焦点蛍光顕微鏡法によってキャプチャーした。
【0199】
マウス皮膚脈管透過性アッセイ
5〜7週齢のC57BL6J雌マウスに、150μlの0.5%エヴァンブルー溶液を静脈内注入した。動物の背部及び脇側の領域を剃り、首から下と臀部より上の体毛を取り除き、剃った領域を4つの注射領域に分割した。エヴァンブルー注射の1時間後に、抗体(0.5mg/ml)を含む場合又は含まない場合のBSA(7.5μg/ml)又はhVEGF(7.5μg/ml)を含有する20μlのPBSを4つの領域のうちのいずれか1つに皮下注射した(各領域には1回の注射)。皮下注射の1時間後に、動物を屠殺し、4つの領域を含む皮膚を切り出した。皮膚のデジタル画像を得た。8mmの皮膚生検穿孔を用いて注射部位上の同じ領域の皮膚試料を切り出し、皮膚試料をホルムアミド溶液中で55℃で48時間インキュベートし、エヴァンブルー染色を組織から抽出した。次いで、分光計によって605nmの溶液の吸光度を測定した。
【0200】
細胞増殖アッセイ
細胞増殖ELISAキット(Roche)にて細胞増殖を分析した。一時的に、90%の集密的なHUVECを回収して、アッセイ培地(DMEM:F12 50:50、1.5%のFBS)に再懸濁し、1%のゼラチンでプレコートした黒色96ウェル組織培養プレート(ViewPlate-96、Perkin Elmer)に1ウェルにつき3000の細胞で播いた。細胞は、16時間、37℃でインキュベートし、新鮮なアッセイ培地と交換して、さらに8時間インキュベートした。VEGF(20ng/ml)及び異なる抗体を培養物に加え、細胞20時間インキュベートした。BrdU標識溶液は10mMの終濃度で加え、細胞は37℃でさらに24時間インキュベートした。BrdU取込みを、化学ルミネセンス免疫検定で測定した。
【0201】
VEGFR2リン酸化アッセイ
総VEGFR2及びホスホ-VEGFR2は、DuoSet集積回路ELISAキット(R&D)で決定した。簡単に言うと、サブ集密的なHUVECをPBSにてすすぎ、提供された溶解緩衝液に溶解した。細胞溶解物は4℃で5分間の14kgで遠心分離し、上清をきれいなチューブへ移した。その後ELISAアッセイを行った。
【0202】
イムノブロッティング
集密的なHUVECを0.2%のFBS及び0.1%のBSAを有するEBM-2にて16時間飢餓状態にし、0.1%のBSAを有するEMB-2に交換し、その後37℃で90分のインキュベートした。コントロール及び抗NRP1抗体を50μg/mlで加え、細胞を37℃で30分間インキュベートした。細胞は、37℃で10分間かけてVEGF(20 ng/ml)にて刺激し、氷冷PBSにて2回洗浄し、溶解緩衝液を含有している20 mMのトリス7.5、150mM NaCl、1%トリトンX-100、ホスファターゼインヒビター反応混液I及びII(Sigma)及び完全なプロテアーゼインヒビター錠剤(Roche)に溶解した。溶解物の一定量を4−20%Novexトリス-Glycine SDSゲル(Invitrogen)にて電気泳動し、Invitrolon PVDF膜(Invitrogen)に電気的に移した。この試験で用いた一次抗体は抗Erk、抗リン酸-Erk、抗Akt、抗リン酸-Akt、抗p38、抗リン酸-p38、抗Src及び抗リン酸-Src(Tyr416)(すべてCell Signaling Technologyから購入)であった。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】抗NRP1抗体の結合特異性を示す。(1A) 抗-NRP1抗体はヒト及びマウスのNRP1に特異的に結合する。抗NRP1抗体YW64.3及びYW107.4 IgG(10ug/ml)の結合特異性は、hNRP1-、mNRP1、hNRP2-、mNRP2、ErbB2-ECD-、又はBSA-コートウェルへの結合を試験することによって評価し、結合したIgGは抗ヒトIgG HRPコンジュゲートによって検出した。(1B) 細胞表面NRP1タンパク質(HUVEC)への抗体結合能を示す抗NRP1抗体YW64.3及びYW107.4 IgGのFACS分析。
【図2】抗NRP1抗体YW107.4と、その親和性成熟した変異体YW107.4.87(抗NRP1B)の結合性質を示す。(2A) 親和性成熟されたYW107.4.87変異体のBIAcore動力学的解析。(2B) 親和性成熟された変異体YW107.4.87による細胞表面NRP1タンパク質(HUVEC)への結合の改善を示すYW107.4及びYW107.4.87 IgGのFACS分析。
【図3A】h4D5の配列を参照として挙げた場合の、YW64.3(抗NRP1A)及びYW107.4.87(抗NRP1B)の可変領域配列を示す。番号付けはカバットデータベースに基づく。CDR配列は囲みの領域で示す。(3A) h4D5(配列番号:1)、YW64.3(配列番号:3)及びYW107.4.87(配列番号:5)の軽鎖可変領域配列。
【図3B】h4D5の配列を参照として挙げた場合の、YW64.3(抗NRP1A)及びYW107.4.87(抗NRP1B)の可変領域配列を示す。番号付けはカバットデータベースに基づく。CDR配列は囲みの領域で示す。(3B) h4D5(配列番号:2)、YW64.3(配列番号:4)及びYW107.4.87(配列番号:6)の重鎖可変領域配列。
【図4】抗NRP1抗体によるNRP1へのVEGF165結合の遮断を示す。
【図5】Sema3A誘導性のDRG崩壊(5A)及びSema3F誘導性の海馬崩壊アッセイ(5B)の定量化を表す。抗NRP1は、海馬ニューロンのSema3F誘導性の成長円錐崩壊でなく、DRGニューロンのSema3A誘導性の成長円錐崩壊を特異的に遮断することが示される。
【図6】抗NRP1抗体がインビトロでのVEGF誘導性のHUVEC移動及び出芽を阻害することが可能であることを示す。(6A) 移動アッセイの定量化(各々の状態についてn=6)。*p=0.00003;**p=9.9×10−11;スチューデントt検定。(6B) 1状態に付きn=12〜14ビーズのビーズ出芽アッセイの定量化。
【図7】マウス網膜の発達際の血管性再造形に対する抗NRP1抗体のインビボ阻害作用を示す。(7A) 出生後5日(P5)からP8の血管の発達を示す。脈管は網膜端に対して同心パターンで伸展する。視神経頭部(ONH)は網膜の中央に位置する;(7B) ONH近くの血管再造形はP5とP8の間に起こる;(7C) 網膜のより深い層への血管の出芽を示す。脈管は出芽を外網状層(OPL)まで伸ばし、叢を形成する。後の出芽はNFLとOPLの層の間で生じ、最終的に内網状層(IPL)が生じる;(7D) 血管密度の定量化;4つの治療した網膜の各々の状態からの12の代表的な画像からの総ピクセルカウント。*p=0.006;**p<0.0001;スチューデントt検定;(7E) ONHから網膜カップの端までの距離に対する、ONHから血管構造の端までの距離の比率で測定される血管伸展の定量化。12の代表的な測定値は4つの治療された網膜から得た。
【図8】VEGF誘導性の血管透過性、HUVEC増殖、VEGFR2リン酸化及びVEGFR2下流のシグナル伝達に対する抗NRP1抗体の効果を表す。(8A) マウス皮膚血管透過性アッセイの定量化。示した値は6つの独立した実験の平均である(抗NRP1はp=0.69、抗NRP1はp=0.989);(8B) VEGFの有無におけるHUVEC増殖の定量化(各々の状態についてn=5);(8C) 総VEGFR2又はチロシンリン酸化VEGFR2を認識した抗体を用いたELISAアッセイによって検出される、HUVECのVEGFR2リン酸化レベル。抗NRP1処理細胞におけるVEGFR2リン酸化レベルは、コントロール群(p=0.133)と有意な相違がなかった。*p=0.00017;スチューデントt検定;(8D) HUVEC溶解物のイムノブロット分析。細胞を示した抗体で処理してその後VEGFとともにインキュベートした。
【図9】様々な異種移植片腫瘍モデルにおける抗NRP1抗体(単独又は抗VEGFとの組み合わせ)による腫瘍増殖阻害効果を示す。(9A−C) SK-MES-1、H1299及びFo5それぞれの腫瘍モデルの平均腫瘍容量グラフ。(9D) SK-MES-1腫瘍モデルのカプラン-マイヤープロット。
【図10】Fo5腫瘍モデルにおける抗NRP1抗体(単独又は抗VEGFとの組み合わせ)による血管の効果を示す。(10A) 平均血管密度(レクチン灌流により測定される);3〜4の処理した腫瘍の各々の状態からの総ピクセルカウント。(10B) 平均周皮細胞密度(PDGFRb染色により測定される)。(10C) 相対的な周皮細胞範囲を測定している周皮細胞/脈管比。
【図11】血管再造形に対するNRP1及びVEGF阻害の付加的効果を示す。11Aは、新しく形成された脈管における遮断性NRP1機能が脈管の再造形とその後の成熟を阻害し、生存のために脈管をVEGFに依存させるモデルを表す。11Bは、抗NRP1B、抗VEGF又はその組み合わせが存在する場合の、新生仔マウス網膜の平均血管密度変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一のニューロピリン(NRP)媒介性の生物学的活性を阻害することができる抗ニューロピリン-1(NRP1)抗体。
【請求項2】
NRP1のセマフォリンとの相互作用を阻害することができる、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
NRP1の血管性内皮細胞増殖因子(VEGF)との相互作用を阻害することができる、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
a1a2ドメイン内のNRP1に結合し、NRP1のVEGFへの結合を遮断することなく、NRP1のセマフォリンへの結合を遮断する、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
NRP1媒介性の血管新生を阻害することができる、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:CDRL1(RASQSISSYLA;配列番号:123)、CDRL2(GASSRAS;配列番号:124)及びCDRL3(QQYMSVPIT;配列番号:125)を含む軽鎖可変ドメインを含んでなる、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号:3の軽鎖可変ドメイン配列を含んでなる、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
CDRアミノ酸配列:CDRH1(GFSFSSEPIS;配列番号:126)、CDRH2(SSITGKNGYTYYADSVKG;配列番号:127)及びCDRH3(WGKKVYGMDV;配列番号:128)を含む重鎖可変ドメインを含んでなる、請求項4に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号:4の重鎖可変ドメイン配列を含んでなる、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号:3の軽鎖可変ドメイン配列と配列番号:4の重鎖可変ドメイン配列を含んでなるYW64.3抗体である、請求項4に記載の抗体。
【請求項11】
b1b2ドメイン内のNRP1に結合し、NRP1のセマフォリンへの結合を遮断することなく、NRP1のVEGFへの結合を遮断する、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
CDRアミノ酸配列:CDRL1(RASQYFSSYLA;配列番号:129)、CDRL2(GASSRAS;配列番号:130)及びCDRL3(QQYLGSPPT;配列番号:131)を含む軽鎖可変ドメインを含んでなる、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号:5の軽鎖可変ドメイン配列を含んでなる、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
CDRアミノ酸配列:CDRH1(GFTFSSYAMS;配列番号:132)、CDRH2(SQISPAGGYTNYADSVKG;配列番号:133)及びCDRH3(ELPYYRMSKVMDV;配列番号:134)を含む重鎖可変ドメインを含んでなる、請求項11に記載の抗体。
【請求項15】
配列番号:6の重鎖可変ドメイン配列を含んでなる、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
配列番号:5の軽鎖可変ドメイン配列と配列番号:6の重鎖可変ドメイン配列を含んでなるYW107.4.87抗体である、請求項11に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体がマウスのNRP1とヒトのNRP1の両方に結合することができる、請求項1に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体が二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が合成抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項21】
哺乳動物の病理学的血管新生と関係する疾患の治療又は予防のための医薬の製造における請求項1に記載の抗NRP1抗体の使用。
【請求項22】
前記疾患が癌である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記癌が乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓癌、前立腺癌、肝癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記治療が第二治療薬剤を更に含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記第二治療薬剤が抗血管新生剤、抗腫瘍性組成物、化学療法剤及び細胞障害性剤からなる群から選択される薬剤である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記抗血管新生剤がVEGFアンタゴニストである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記VEGFアンタゴニストが抗hVEGF抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗hVEGF抗体が抗体A4.6.1と同じVEGFエピトープに結合可能である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗hVEGF抗体がベバシズマブ又はラニビズマブである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第二治療薬剤が、バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、OSI-7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、MLN-518、CEP-701、PKC-412、ラパチニブ(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、XL880及びCHIR-265からなる群から選択されるレセプターチロシンキナーゼ阻害薬である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−514972(P2009−514972A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540169(P2008−540169)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/043516
【国際公開番号】WO2007/056470
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】