説明

ニンジンエキス含有飲料

【課題】
ニンジンエキスを水溶液に溶解した際の苦みを改善することにより、日常的に無理なく多量に摂取することができる、服用感に優れたニンジンエキス配合飲料を提供すること、さらに、ニンジンエキス配合飲料に認められる保管時の沈殿生成を防止すること。
【解決手段】
ニンジンエキス及びシクロデキストリン誘導体を含有することを特徴とする飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンジンエキス及びシクロデキストリン誘導体を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
薬用のニンジンは滋養強壮剤や清涼飲料などに配合され、広く利用されてきた。ニンジンの主な薬効として、強壮、長生、鎮静、興奮及び利尿作用などが明らかにされており、また、各種漢方の構成生薬としても知られている。
【0003】
ニンジンを含有する飲料には、通常ニンジンエキスが使用されているが、水溶液に溶かした場合非常に苦いという問題があった。この問題を解決する方法として、シクロデキストリン類を配合する方法(特許文献1〜3参照)、ステビアなどを配合する方法(特許文献4参照)などが報告されているが、十分な苦みの改善は認められていない。また、ニンジンを含有する飲料を殺菌または長期保管すると沈殿を生じる場合がある。この問題を解決する方法として、ニンジンエキスにシクロデキストリン類を加えて、沈殿の生成を抑制する技術が開示されている(特許文献5参照)。しかしこれらの技術を使用しても、沈殿の抑制は十分とは言えない(特許文献1〜3及び5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−80463
【特許文献2】特開昭63−198959
【特許文献3】特開平11−290024
【特許文献4】特開平9−110708
【特許文献5】特開平3−95197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ニンジンエキスを水溶液に溶解した際の苦みを改善することにより、日常的に無理なく多量に摂取することができる、服用感に優れたニンジンエキス配合飲料を提供することにあり、さらに、ニンジンエキス配合飲料に認められる保管時の沈殿生成を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ニンジンエキスの水溶液中にシクロデキストリン誘導体を配合することにより、ニンジンエキスが溶解した際に生じる苦味が改善され、かつ、保管後の沈殿も生じない飲料が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ニンジンエキス及びシクロデキストリン誘導体を含有することを特徴とする飲料、
(2)シクロデキストリン誘導体が、ヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンである(1)記載の飲料、
(3)pHが2〜7である(1)又は(2)記載の飲料、
(4)ニンジンエキスを含有する飲料において、シクロデキストリン誘導体を配合することを特徴とする苦味の低減方法、又は
(5)ニンジンエキスを含有する飲料において、シクロデキストリン誘導体を配合することを特徴とする沈殿の防止方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ニンジンエキスの苦味が改善され、かつ、保管後の沈殿も生じない極めて服用しやすいニンジンエキス配合飲料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるニンジンはウコギ科のニンジンで、例えばオタネニンジン(Panax ginseng C.A. Meyer)、チクセツニンジン(Panax japonicus C.A. Meyer)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、三七ニンジン(Panax notoginseng (Burk) F.H. Chen)等を用いることができる。また、上記ニンジンを2種以上組み合わせることもできる。
【0010】
ニンジンエキスは、前記ニンジンを通常の方法を用いて抽出することにより得られる。抽出溶媒として、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール、水等、もしくはその混合物を用いることが出来る。
【0011】
シクロデキストリン誘導体とは、シクロデキストリンを化学修飾した化合物である。このシクロデキストリン誘導体は一般に市販されており、医薬品分野で使用されている。
【0012】
シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンに新たな官能基を導入した化合物であり、医薬品分野で広く利用されている。例えばヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンやスルフォブチルエーテル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリンなどが用いられる。特にヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンが好ましい。
【0013】
ヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンとはヒドロキシプロピル基を導入したβ-シクロデキストリンであり、β-シクロデキストリンよりも親水性が高いという特長を有している。
【0014】
本発明における飲料において、シクロデキストリン誘導体の配合量はニンジンエキス1重量部に対してシクロデキストリン誘導体を0.1〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部である。この配合量により、ニンジンの生じる苦味を効果的に低減し、沈殿を生じない飲料を提供することができる。
【0015】
本発明における飲料のpHは、特に限定されないが、好ましくは2.5〜7.0であり、より好ましくは3.0〜6.0である。かかる範囲のpHに設定することによって、より服用感が向上することが確認された。
【0016】
本発明の飲料のpHを上記範囲に保つために、必要に応じて有機酸などのpH調整剤を配合することができる。また、その他の成分として、ビタミン類、他のミネラル類、アミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。特に、シクロデキストリン誘導体は無味無臭であるため、別途適当な香料や矯味剤を利用することで、様々な香りや味の飲料を提供することが可能である。
【0017】
本発明の飲料は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理を行うことにより本発明の飲料を得ることができる。
【0018】
本発明の飲料は、ドリンク剤、シロップ等の医薬品及び医薬部外品の他、健康飲料、茶飲料、スポーツドリンク等の食品領域における各種飲料として提供することができる。
【0019】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
(1)沈殿の評価
精製水にニンジンエキス(松浦薬業(株))450mgを溶かし、その溶液にヒドキシプロピル-β-シクロデキストリン(東京化成(株))、α-シクロデキストリン(和光純薬(株))又はβ-シクロデキストリン(和光純薬(株))を各々1000mg添加・溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、塩酸でpH2.5〜4.5に調整した。各試験液をガラスビンに充填後殺菌し、表1に示す実施例1〜3及び比較例1〜9の飲料を得た。
【0021】
【表1】

【0022】
各飲料の5℃3ヶ月及び65℃1週間保管後の沈殿について目視で評価した結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
ヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンを添加した実施例1〜3の飲料では、いずれの条件でも沈殿の生成は認められなかった。一方、比較例1〜9の飲料では、いずれかの条件で沈殿の生成が認められた。
【0025】
(2)苦味の評価
精製水にニンジンエキス(松浦薬業(株))450mgを溶かし、その溶液にヒドキシプロピル-β-シクロデキストリン(東京化成(株))1000mgを添加、溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、塩酸でpH4.5に調整した。各試験液をガラスビンに充填後殺菌し、表3に示す実施例3及び比較例3の飲料を得た。
【0026】
【表3】

【0027】
各飲料約10mLを5秒間口に含んだ時に感じる苦味の最大値について、成人男女計5名からなるパネラーにより以下のスタンダードに対する相対評価を行った。スタンダードには、0.006、0.012、 0.020、 0.03及び0.050mM 硫酸キニーネを用意し、これらを苦味強度1〜5として設定した。0.006mMよりも苦味が弱い場合を苦味強度0とし、0.050mMよりも苦味が強い場合を苦味強度6に設定とした。
評価結果の平均値を表4に示す。
【0028】
【表4】

このように、ヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンを添加することで、比較例3で認められている苦味が改善されることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、ニンジンエキスを水溶液に溶解した際の苦みを改善することができ、日常的に無理なく多量に摂取することができる、服用感に優れたニンジンエキス配合飲料を提供することが可能となった。また、保管時の沈殿生成を防止することにより飲料の安定した品質管理が可能となった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンジンエキス及びシクロデキストリン誘導体を含有することを特徴とする飲料。
【請求項2】
シクロデキストリン誘導体が、ヒドキシプロピル-β-シクロデキストリンである請求項1記載の飲料。
【請求項3】
pHが2〜7である請求項1又は2記載の飲料。
【請求項4】
ニンジンエキスを含有する飲料において、シクロデキストリン誘導体を配合することを特徴とする苦味の低減方法。
【請求項5】
ニンジンエキスを含有する飲料において、シクロデキストリン誘導体を配合することを特徴とする沈殿の防止方法。



【公開番号】特開2009−219435(P2009−219435A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67552(P2008−67552)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】