説明

ネイルエナメル用水性分散体および水性ネイルエナメル組成物

(HS−CH−CH−COO)−R0.1〜10.0重量部の存在下に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる単量体(A)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量部を水性媒体中で重合してなる、GPCによるポリスチレン換算での重量平均分子量が1×10〜4×10のネイルエナメル用共重合体(E)の水性分散体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルエナメル用の水性分散体および該水性分散体を含有する水性ネイルエナメル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネイルエナメルは爪先の化粧品として広く汎用されてきている。ネイルエナメルとしては、トルエンおよび酢酸エステル等の有機溶剤を含む溶剤系ネイルエナメルが主に使用されていた。
【0003】
しかし、近年の安全性嗜好の高まりに従い、有機溶剤を使用しない水性ネイルエナメルが検討されるようになってきた。
【0004】
水性ネイルエナメルの場合、従来の溶剤系ネイルエナメルに含まれる硝化綿(ニトロセルロース)のような、強固な塗膜を形成しかつ除光液のような溶剤類に容易に溶解するような材料を含めることができない。そのため、溶剤系ネイルエナメルで用いられてきた材料を用いずに溶剤系ネイルエナメルと同等の付着性、塗膜強度、光沢、除光性といった塗膜性能を有する水性ネイルエナメルの開発が必要とされてきた。ここで、除光性とは、ネイルリムーバーによるネイルエナメルの除去のし易さを意味する。
【0005】
このような塗膜性能を確保するために、これまでに様々な組成が検討されてきた。例えば、水溶性樹脂と樹脂分散体とを併用した樹脂組成物が提案されている。
【0006】
また、日本国特許公報特開平11−269041号には、重量平均分子量が50,000以上80,000以下であり、ガラス転移温度が50℃以上80℃以下であるアクリル系樹脂を主成分とするエマルジョンである水性ネイルエナメルが記載されている。
【0007】
さらには、日本国特許公報 特開平7−69833号には、重量平均分子量40,000以下のポリマー及び重量平均分子量50,000以上のポリマーを含み、これらのポリマーの固形分換算の合計量が5〜60重量%である水性ポリマーエマルションを含有する水性ネイルエナメルが記載されている。
【0008】
水溶性樹脂と樹脂分散体とからなる樹脂組成物を含むこれらの水性ネイルエナメルは、光沢、硬度等の機械物性が良好である。しかしながら、高い酸価を有する水溶性樹脂を含むため、アセトンなどの除光剤により除去されにくい。また、日常生活において想定される弱アルカリ性の環境下においては、水性ネイルエナメルにより形成された塗膜が溶解してしまう。そのため、その強度が極端に低下しネイルエナメルとしての実用性を損なうといった問題を有していた。
【0009】
また、特開平11−269041号に開示される水性ネイルエナメルは、先に説明した通り、分子量が比較的高くかつガラス転移温度も比較的高い。そのために塗膜の耐久性は優れている。しかしながら、重量平均分子量が高いために溶剤に対する溶解性が低く、有機溶剤含有率の低い除光液では塗膜を除去し難い。
【0010】
また、特開平7−69833号に開示される水性ネイルエナメルの場合は、先に説明した通り低分子量物と高分子量物を含むため、各々の性質が発現する。そのため、低分子量物の性質に起因する除光性と、高分子量物の性質に起因する機械物性をある程度両立することはできる。しかしながら、系中に高分子量物を含んでいるゆえ、溶剤に対する溶解性が低下する。そのため、有機溶剤含有率の低い除光液では塗膜を除去し難いという難点があった。
【0011】
ところで、一般に除光性を向上すべく、樹脂の重量平均分子量を低くして溶剤に対する溶解性を高めることが非常に効果的であることが知られている。
【0012】
しかし、分子量を下げると溶剤に対する溶解性が向上する反面、機械物性が著しく低下する。ネイルエナメルは、爪につけて塗膜とするので、日常生活レベルでの機械物性が必要とされる。ネイルエナメルの機械物性が低下すると、塗膜の持ちが低下してしまう。除光性向上と機械物性の向上とは全く相反する要求である。それゆえ、両者をバランスよく高度なレベルにおいて満足することは、従来はできなかった。
【発明の開示】
【0013】
本発明の一形態は、除光性と機械物性とをバランスよく高度なレベルにおいて満足し得る水性ネイルエナメルを提供することを目的とする。
【0014】
本発明者らが上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の単量体を必須成分とする共重合体は比較的低分子量でありながら、機械物性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の一形態は、下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)0.1〜10.0重量部の存在下に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)及び前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量部を水性媒体中で重合することにより得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(E)を含むネイルエナメル用水性分散体に関する。
【0016】
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【0017】
前記の重合は、ラジカル重合性不飽和基を1個以上有するアニオン系乳化剤(F)を用いた乳化重合であることが好ましい。
【0018】
単量体(A)は、単量体(A)及び前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量%中に1〜50重量%含有されることが好ましい。
【0019】
共重合体(E)のガラス転移温度(Tg)は、50〜80℃であることが好ましい。
【0020】
メルカプトプロピオン酸誘導体(C)は、メルカプトプロピオン酸オクチルであることが好ましい。
【0021】
共重合体(E)の平均粒子径は、30〜100nmであることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の一形態は、下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)0.1〜10.0重量部の存在下に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)及び前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量部を水性媒体中で重合してなることを特徴とする、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量(以下、単に重量平均分子量もしくはMwという)が10,000以上40,000以下の共重合体(E)のネイルエナメル用水性分散体の製造方法に関する。
【0023】
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【0024】
さらに、本発明の一形態は、上記発明のいずれかに記載の共重合体(E)を10〜60重量%含有する水性ネイルエナメル組成物に関する。
【0025】
水性ネイルエナメル組成物は、沸点100℃未満の低級アルコールを0.5〜15重量%含むことが好ましい。
【0026】
さらに、本発明の一形態は、水相中に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)および前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)を構成単位とした重量平均分子量が10,000以上40,000以下であって、下記式(I)で示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)が結合した共重合体(E)が分散したネイルエナメル用水性分散体に関する。
【0027】
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【0028】
共重合体(E)を重合する際に、連鎖反応移動剤としてメルカプトプロピオン酸誘導体(C)が使用されるため、共重合体(E)の末端にはメルカプトプロピオン酸誘導体(C)が結合する。
【0029】
本発明の一形態によると、除光性と機械物性とをバランスよく高度なレベルにおいて満足し得る水性ネイルエナメル組成物を提供することができる。本発明の一形態による水性分散体を水性ネイルエナメルに用いた場合に、従来に比して類なき高い除光性を発現しながら、かつ日常生活下において使用される際に重要な要求特性である、特に優れた化粧持ちを併せて発現することを可能とする。
【0030】
本明細書の開示は、日本国特許出願2003−343193号(2003年10月1日出願)に含まれる主題に関するものであって、この出願明細書を参照として本明細書に全体的に組み込むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の共重合体(E)の水性分散体は、特定の単量体、即ち、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)を必須成分として構成される。これら単量体(A)は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併せて用いても良い。
【0032】
従来は、温水下(温水中)はもとより室温下で共重合体の重量平均分子量が小さい場合には、機械的物性を到底満足し得るとは考えられていなかった。しかしながら、本発明の一形態によると、単量体(A)の側鎖置換基が何らかの作用を招致した結果、温水下においても十分強固な塗膜を形成することができるようになった。
【0033】
即ち、その特徴的な組成故に、室温下および温水下環境において良好な機械物性を発現しながら、除光性も従来比類し得ないレベルに向上できた。
【0034】
本発明の共重合体(E)の水性分散体は、上記単量体(A)と単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)とを以下に述べる特定の連鎖移動剤(C)の存在下に水性媒体中で乳化重合することによって得ることができる。
【0035】
単量体(B)としては、従来公知であるアクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステル又は誘導体及びビニル系単量体の中の1種又は2種以上から選択することができる。より具体的には、単量体(B)として以下に例示されるが、これに限定されるものではない。
【0036】
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などを例としてあげることができる。
【0037】
芳香族ビニル化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどを例としてあげることができる。
【0038】
エチレン系不飽和カルボン酸アルキルアミドとしては、アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド、アミノアルキルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどを例としてあげることができる。エチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステルとしては、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチルアクリレートなどを例としてあげることができる。
【0039】
シアン化ビニル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどを例としてあげることができる。不飽和脂肪族グリシジルエステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテルなどを例としてあげることができる。
【0040】
水酸基含有カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ハイドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ハイドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどを例としてあげることができる。
【0041】
カルボン酸ビニルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アルキル酸アルキレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニルなどを例としてあげることができる。
【0042】
これら単量体(B)は物性を損なわない範囲において一種以上多種を任意に用いてもよい。
【0043】
単量体(A)は、重合に供する単量体の合計、即ち単量体(A)及び単量体(B)の合計100重量%中に1〜50重量%であることが、塗膜の温水下における機械物性の点で好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。
【0044】
また、単量体(A)及び単量体(B)の共重合によって形成される共重合体(E)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、50〜80℃が好ましい。Tgが50℃より低い場合、室温における機械物性が低下する傾向にある。またTgが80℃を超える場合、除光性および塗膜が脆弱となる傾向がある。Tgが50〜80℃の範囲にあると、ネイルエナメルとして使用した場合の除光性および室温下の機械物性および温水下の機械物性に起因する化粧持ちがさらに向上するので好ましい。
【0045】
なお、本発明における共重合体(E)のガラス転移温度Tgは下記の式により算出されるものとする。
【0046】
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+・・・・(W/Tg)ただし、
:モノマー1の重量%、Tg:モノマー1のホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)、
:モノマー2の重量%、Tg:モノマー2のホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)、
:モノマーnの重量%、Tg:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)
尚、乳化重合の際に乳化剤(F)として、ラジカル重合性不飽和基を有するものを使用する場合であっても、単量体(A)の含有量及び共重合体(E)のTgの計算に際して、ラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤は単量体(B)には含めないものとする。
【0047】
次に本発明の共重合体(E)の水性分散体を得る際に用いられる連鎖移動剤について説明する。連鎖移動剤は、分子量調節のために用いるものである。
【0048】
一般に、連鎖移動剤のうちメルカプト基(チオール基)を有する連鎖移動剤は、極めて不快な特有の臭気がある。そのため、化粧品のような用途には到底使い得ないものである。
【0049】
しかし、下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)は、無臭であり、ネイルエナメルのような化粧品にも使用することができる。
【0050】
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【0051】
なお、臭気が気にならない範囲で、メルカプトプロピオン酸誘導体(C)以外の連鎖移動剤を極少量使用することも考えられる。
【0052】
本発明においては、上記単量体(A)及び単量体(B)の合計100重量部に対して、メルカプトプロピオン酸誘導体(C)を0.1〜10.0重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部用いる。メルカプトプロピオン酸誘導体(C)が、0.1重量部未満だと共重合体(E)の重量平均分子量が40000を超えてしまい、塗膜の除光性が著しく悪くなる場合がある。一方、メルカプトプロピオン酸誘導体(C)が10.0重量部よりも多いと、共重合体(E)の重量平均分子量が10000未満になり、単量体(A)を必須成分として用いたとしても、塗膜の機械物性が極端に低下する場合がある。
【0053】
得られる共重合体(E)の重量平均分子量は、除光性と室温および温水下での機械物性を考慮すると、10000〜40000、好ましくは15000〜25000である。
【0054】
ところで、水性に限らずネイルエナメルには、着色用の顔料等が含有され、塗膜としての発色状態が鮮明であることが要求される。しかも、爪に塗布する前の色味や質感と、乾燥後の塗膜の色味や質感とに差異のないことが外観再現性として要求される。
【0055】
単量体100重量部に対して、メルカプトプロピオン酸誘導体(C)を0.1〜10重量部用いることによって、共重合体(E)の分子量を調節し、除光性と機械物性とのバランスをとることができるようになった。それだけでなく、塗布前後での色味に対する影響がほとんどなく、外観再現性に優れるネイルエナメルを提供することができるようになった。
【0056】
ネイルエナメルとしての外観再現性は、共重合体(E)の水性分散体の透明性が大きく関与し、水性分散体の透明性は共重合体(E)の分散状態が大きく関与する。即ち、共重合体(E)の体積平均粒子径は30〜100nmであることが好ましく、40〜90nmであることがより好ましい。また、200nmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると透明性が著しく損なわれる場合がある。そのため、200nmを超える粗大粒子は多くとも5体積%以下であることが好ましい。
【0057】
体積平均粒子径が100nmより大きいと、ネイルエナメルとして高度の外観再現性を求められる場合には、その再現性が若干低下する場合がある。しかしながら、求められる外観再現性の程度によっては使用することも当然可能である。
【0058】
また、体積平均粒子径が30nmより小さい場合は、分散体自体の粘度が上昇する。そのため、ネイルエナメルとしての保存安定性や使用の際の塗布しやすさに影響を与える場合がある。
【0059】
本発明において用いられるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)のうち、n=1のものとしては、以下の例には限定されないが、例えば、メルカプトプロピオン酸オクチル、n−ブチル−3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸トリデシル等のメルカプトプロピオン酸アルキルや、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。メルカプトプロピオン酸アルキルのアルキル基としては、直鎖型でも分岐型でもいずれでもよい。好ましいメルカプトプロピオン酸誘導体(C)としては、例えば、メルカプトプロピオン酸オクチルが挙げられ、メルカプトプロピオン酸−n−オクチルでもメルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシルのいずれでも良く、両者を併用してもよい。
【0060】
n=2〜4のものとしては、以下の例には限定されないが、例えば、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(β−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0061】
本発明においては、これら公知のものを1種以上もしくは多種を混合して使用することができる。これら誘導体(C)の中でも、特にメルカプトプロピオン酸オクチルの存在下に上記単量体(A)を必須とする単量体を重合せしめた場合、ネイルエナメルとして使用するのに問題となる臭気がない。また、分子量を好適に調製した共重合体(E)の水性分散体を提供することが可能となる。さらにはネイルエナメルとして使用する場合に外観に大きく影響を与える、共重合体(E)の分散粒子径を、結果として好適な範囲に調製することができるために特に好ましい。
【0062】
本発明の共重合体(E)の水性分散体は、従来既知の重合方法により合成される。特に乳化重合方法により合成した場合は、得られる共重合体(E)の分散粒径、分子量調製等が容易であるために特に好ましい。
【0063】
本発明において乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応性乳化剤およびまたは非反応性乳化剤など、従来公知のものを任意に使用することができる。
【0064】
ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応性乳化剤はさらに大別して、アニオン系、非イオン系のノニオン系のものが例示できる。特にラジカル重合性不飽和基を1個以上有するアニオン系反応性乳化剤(F)を単独で用いると、共重合体(E)の分散粒子径が微細となるとともに粒度分布が狭くなることから、ネイルエナメルとして使用した際に外観再現性をより飛躍的に向上するために好ましい。このラジカル重合性不飽和基を1個以上有するアニオン系反応性乳化剤は、1種を単独で使用しても、複数種を混合して用いても良い。
【0065】
アニオン系反応性乳化剤(F)の一例として、以下にその具体例を例示するが、本願発明において使用可能とするアニオン系反応性乳化剤は、以下に記載するもののみを限定するものではない。
【0066】
アルキルエーテル系(市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05,KH−10,KH−20,旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10,SR−20,花王株式会社製ラテムルPD−104等)やスルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば花王株式会社製ラテムルS−120,S−120A,S−180P,S−180A,三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等)がある。
【0067】
アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A,H−3855B,H−3855C,H−3856,HS−05,HS−10,HS−20,HS−30,旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222,SDX−223,SDX−232,SDX−233,SDX−259,SE−10N,SE−20N,SE−1025A等)がある。
【0068】
(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60,MS−2N,三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等)やリン酸エステル系(市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)がある。
【0069】
本発明の共重合体(E)の水性分散体を乳化重合により作成する場合においては、必要に応じて前記したアニオン系反応性乳化剤と共に、若しくは単独でノニオン型反応性乳化剤を使用することができる。本発明において使用可能とするノニオン系反応性乳化剤は、以下に記載するもののみに限定するものではない。
【0070】
ノニオン系反応性乳化剤のアルキルエーテル系の市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10,ER−20,ER−30,ER−40,花王株式会社製ラテムルPD−420,PD−430,PD−450がある。
【0071】
アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系の市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10,RN−20,RN−30,RN−50,旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10,NE−20,NE−30,NE−40がある。
【0072】
(メタ)アクリレート硫酸エステル系の市販品としては、例えば日本乳化剤株式会社製RMA−564,RMA−568,RMA−1114がある。
【0073】
本発明の共重合体(E)の水性分散体を乳化重合により得るに際しては、得られる水性分散体の性能に悪影響を及ぼさない範囲において、前記したラジカル重合可能な基を有する反応性乳化剤とともに、必要に応じ非反応性乳化剤を併用することができる。
【0074】
非反応性乳化剤は、非反応性アニオン系及びノニオン系乳化剤に大別することができる。
【0075】
非反応性ノニオン系乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー等を例示することができる。または、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。
【0076】
また非反応性アニオン系乳化剤の例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類等を例示することができる。または、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類が挙げられる。
【0077】
本発明において用いられる乳化剤の使用量は、必ずしも限定されるものではない。共重合体(E)が最終的に水性ネイルエナメルとして使用される際に求められる物性に従って適宜選択できる。例えば、重合に供される単量体(A)及び(B)の合計100重量部に対して、乳化剤(F)は通常0.1〜30重量部であることが好ましく、0.3〜20重量部であることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0078】
本発明の共重合体(E)の乳化重合に際しては、得られる共重合体(E)の水性分散体の性能に悪影響を及ぼさない範囲において、水性媒体に対する親和性を増すために、水溶性保護コロイドを併用することもできる。
【0079】
上記の水溶性保護コロイドとしては、以下の例には限定されないが、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;及びグアガムなどの天然多糖類;などが挙げられ、これらは、単独でも複数種併用の態様でも利用できる。
【0080】
水溶性保護コロイドの使用量としては、全ラジカル重合性不飽和単量体の合計100重量部当り0.1〜5重量部程度が好ましく、さらに好ましくは0.5重量部〜2重量部である。
【0081】
本発明の共重合体(E)の乳化重合に際して用いられる水性媒体としては、水が挙げられる。親水性の有機溶剤も本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0082】
本発明の共重合体(E)の水性分散体を得るに際して用いられる重合開始剤としては、油溶性及び水溶性重合開始剤が挙げられるが、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はない。
【0083】
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニール)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾビス化合物等を挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、全ラジカル重合性不飽和単量体100重量部に対して、0.1〜10.0重量部程度の量を用いるのが好ましい。
【0084】
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。この様な重合開始剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−[2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジサルフェイトジハイドレイト、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレイトなど、従来既知のものを好適に使用することができる。また乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温における乳化重合をしたりすることが容易になる。このような還元剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。これら還元剤は、全ラジカル重合性不飽和単量体100重量部に対して、0.05〜5.0重量部程度の量を用いるのが好ましい。
【0085】
なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。
【0086】
重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
【0087】
次に本発明の水性ネイルエナメル組成物について説明する。
【0088】
本発明の水性ネイルエナメル組成物は、上記した共重合体(E)を10〜60重量%含有することが好ましく、20〜50重量%含有することがより好ましい。即ち、好ましくは、水性樹脂分散体(E)の水性分散体に種々の添加剤を配合して、共重合体(E)が固形分換算で10〜60重量%となるようにするのが好ましい。
【0089】
本発明の水性ネイルエナメル組成物は、ネイルエナメルトップコート、ネイルエナメルベースコートなど、一連のネイルエナメル用途に好適に用いることが可能である。
【0090】
本発明の水性ネイルエナメル組成物には、架橋剤、成膜助剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料、色素)、粘度調製剤(ゲル化剤)等の従来からネイルエナメルに使用されてきた各種配合剤を添加することができる。
【0091】
さらに本発明の水性ネイルエナメル組成物には必要に応じて、顔料分散用の乳化剤、高分子分散剤、前記以外の樹脂分散体、樹脂、水溶性高分子、防腐剤、消泡剤、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、美容成分、増粘剤、水平化剤、湿潤剤、分散剤、保存料、UVスクリーン剤、保湿剤、香料、中和剤、安定剤等を適宜配合することができる。
【0092】
本発明の水性ネイルエナメル組成物に配合される架橋剤としては、炭素数1〜14のアルコキシシラン基含有化合物が挙げられる。本発明の水性ネイルエナメル組成物は、上記アルコキシシラン基含有化合物を含有しない場合においても優れた性質を有している。しかしながら、上記アルコキシシラン基含有化合物を含むと、得られる塗膜に優れた耐水性、光沢保持性、耐温度変化性などをさらに付与することができる。
【0093】
上記アルコキシシラン基含有化合物は、炭素数1〜14のアルコキシル基を有するアルコキシシラン基を含有する化合物であれば特に限定されず、上記炭素数1〜14のアルコキシル基は直鎖状又は分枝状であってもよい。また、上記アルコキシル基は上記アルコキシシラン基を構成する珪素原子に1〜4個結合していてもよい。
【0094】
上記アルコキシシラン基含有化合物としては特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。これらのうち、テトラメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0095】
上記アルコキシシラン基含有化合物は、本発明のネイルエナメル100重量部中に0.1〜10重量%含有することができる。上記アルコキシシラン基含有化合物が0.1重量%未満であると、シロキサン結合に基づく架橋ないし高分子量化が不充分となって添加効果に乏しくなる場合があり、10重量%を超えると重合時の安定性が困難となる場合がある。好ましくは、0.5〜8重量%であり、より好ましくは1〜7重量%である。
【0096】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中に配合される成膜助剤は、塗膜の形成を助け、塗膜が形成された後においては比較的速やかに蒸発揮散して塗膜の強度を向上させる一時的な可塑化機能を担うものである。この様な製膜助剤としては、沸点が110〜220℃の溶媒が好適に用いられる。
【0097】
具体的には、以下の例には限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルは少量で高い成膜助剤効果を有するため、乾燥速度、耐水性といった製品機能への影響が少ないので特に好ましい。これら成膜助剤は、水性ネイルエナメル100重量部中に0.5〜15重量%含まれることが望ましい。
【0098】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中には、成膜性、除光性、塗膜の機械物性を向上する目的で、従来既知の可塑剤を配合することができる。
【0099】
該可塑剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、アジピン酸ジイソブチル、tert−ブチル酸と2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールのエステル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチオル、フタル酸ブチル−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルおよびそれら混合物の中から選択することができる。
【0100】
また、これらの可塑剤は、好ましくは常圧で測定した沸点が285℃以下、好ましくは270℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
【0101】
なお、本発明においては、沸点の値は、測定誤差等も考慮すると±2℃の範囲を有する。
【0102】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中には、その凍結、凝固を防止するために凍結防止剤を配合することができる。凍結防止剤としては、塗膜が形成された後比較的速やかに蒸発揮散して塗膜物性に影響を与えない物がよく、沸点が100℃未満の低級アルコールが好ましい。
【0103】
このような低級アルコールとしては、以下の例には限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、人体や爪に対する影響を考慮するとエタノールが好ましい。これらの凍結防止剤は、水性ネイルエナメル組成物100重量%中に0.5〜15重量%含まれることが好ましい。
【0104】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中には、分離や沈降防止の目的で、従来既知の粘度調製剤(ゲル化剤)を配合することができる。粘度調製剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、スメクタイト、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸ナトイウムマグネシウム、シリカおよびそれらの混合物の中から選択することができる。
【0105】
以下、実施例によって本願発明の効果をさらに詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
実施例1〜12、比較例1〜6で共重合体の水性分散体を得、次いで得られた各水性分散体を用い、ネイルエナメルを調製し、下記評価項目の試験を行った。その結果を表に示す。
【実施例1】
【0107】
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水265.0重量部とアニオン系反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部とを仕込んだ。
【0108】
単量体(A)としてtert−ブチルメタクリレート39.3重量部、その他のラジカル重合性不飽和単量体(B)としてメチルメタクリレート235.6重量部、スチレン39.3重量部、アクリル酸3.9重量部、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.9重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸誘導体(C)である2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部、イオン交換水263.7重量部、及びアニオン系反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部をあらかじめ混合してプレエマルジョンを準備した。得られたプレエマルジョンの5%を、前記の反応容器に加えた。
【0109】
反応容器の内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、水溶性重合開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液6.0重量部と還元剤としてメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部を添加し重合を開始した。
【0110】
反応容器の内温を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液9.8重量部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液24.6重量部を3時間かけて滴下し、更に3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.5重量%の水性分散体を得た。なお、不揮発分濃度は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
【0111】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。水性分散体中の共重合体は、濾過により取り出し乾燥させテトラヒドロフランに溶解させ測定した。
【0112】
また、得られた水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。
【0113】
得られた水性分散体の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置により測定した。
【0114】
次に、顔料分散ペーストを調整した。顔料分散ペーストは、アクリル系高分子共重合体(高分子分散体、商品名“ジョンクリルJ−68”ジョンソンポリマー(株)社製、スチレン−アクリル酸系、重量平均分子量10000、不揮発分100重量%)2.0重量部、イオン交換水77.5重量部、25%アンモニア水(中和剤)0.5重量部を混合攪拌し、得られた水溶液に、酸化チタン(顔料)20.0重量部を加え、粗分散を行った後、ガラスビーズ(直径0.5mm)を100重量部添加し、ビーズミル分散器を用いて1時間湿式粉砕処理及び分散処理を行った。この分散液を5μmのメンブレンフィルタで粗大粒子及び塵を除去して顔料分散ペーストを得た。
【0115】
得られた顔料分散ペースト3重量部、得られた水性分散体87.5重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチル3重量部及びプロピレングリコールモノブチルエーテル6重量部、マイカ2重量部を混合して、水性ネイルエナメル組成物を調製し、後述する方法及び基準に従って基本物性及び実用物性を評価した。
【実施例2】
【0116】
連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸誘導体(C)を、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部から、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル5.0重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。水性分散体の不揮発分濃度は40.1重量%であった。
【0117】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は30,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒子径は110nmであった。
【0118】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例3】
【0119】
メチルメタクリレートを235.6重量部から196.3重量部に、2−エチルヘキシルアクリレートを70.7重量部から110.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.4重量%であった。
【0120】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は23,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は40℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0121】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例4】
【0122】
アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部を、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)3.0重量部とノニオン系反応性乳化剤であるアデカリアソープER−20(旭電化工業製)2.9重量部とに、2回とも変更した以外、実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.6重量%であった。
【0123】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は55℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0124】
以下、実施例1と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例5】
【0125】
tert−ブチルメタクリレート39.3重量部を117.8重量部に、メチルメタクリレート235.6重量部を164.9重量部に、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部を62.8重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。水性分散体の不揮発分濃度は40.5重量%であった。
【0126】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は65℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0127】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例6】
【0128】
tert−ブチルメタクリレート39.3重量部を、tert−ブチルメタクリレート19.7重量部及びシクロヘキシルメタクリレート19.6重量部に、メチルメタクリレート235.6重量部を238.4重量部に、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部を67.9重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.5重量%であった。
【0129】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0130】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例7】
【0131】
tert−ブチルメタクリレート39.3重量部をベンジルメタクリレート39.3重量部に、メチルメタクリレート235.6重量部を244.3重量部に、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部を62.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を得た。得られた水性分散体の不揮発分濃度は、40.3重量%であった。
【0132】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0133】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例8】
【0134】
tert−ブチルメタアクリレート39.3重量部をシクロヘキシルメタクリレート39.3重量部に、メチルメタクリレート235.6重量部を242.3重量部に、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部を64.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は、40.2重量%であった。
【0135】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0136】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例9】
【0137】
イオン交換水265.0重量部から276.7重量部に、イオン交換水263.7重量部から283.4重量部に、反応容器の内温を60℃から70℃に、過硫酸カリウムの5%水溶液6.0重量部から9.0重量部に、メタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部から0に変更した以外は実施例1と同様に重合を開始した。
【0138】
その後、反応容器の内温を80℃で5分間保持した後、内温を80℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液14.7重量部とを3時間かけて滴下し、更に3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.2重量%の水性分散体を得た。
【0139】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0140】
以下、実施例1と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【実施例10】
【0141】
実施例1で得られた顔料分散ペースト3重量部、得られた水性分散体87.5重量部、可塑剤としてセバシン酸ジイソプロピル4重量部およびジプロピレングリコールモノプロピルエーテル6重量部、マイカ2重量部、およびエタノール5重量部を混合して、水性ネイルエナメル組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。
【実施例11】
【0142】
実施例1で得られた顔料分散ペースト3重量部、得られた水性分散体87.5重量部、可塑剤としてセバシン酸ジイソプロピル4重量部およびジプロプレングリコールモノプロピルエーテル6重量部、マイカ2重量部、およびベントナイト1重量部を混合して、水性ネイルエナメル組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。
【実施例12】
【0143】
実施例1で得られた顔料分散ペースト3重量部、得られた水性分散体87.5重量部、可塑剤としてセバシン酸ジイソプロピル4重量部およびジプロプレングリコールモノプロピルエーテル6重量部、マイカ2重量部、エタノール5重量部、およびベントナイト1重量部を混合して、水性ネイルエナメル組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。
【0144】
(比較例1)
イオン交換水265.0重量部から260.0重量部に、連鎖移動剤を7.8重量部から0に、イオン交換水263.7重量部から258.7重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.6重量%であった。
【0145】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィは測定溶媒のテトラヒドロフランに溶解しなかったため測定不可能であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0146】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0147】
(比較例2)
イオン交換水265.0重量部から269.0重量部に、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部から12.0重量部に、イオン交換水263.7重量部から267.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.0重量%であった。
【0148】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は5,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は90nmであった。
【0149】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0150】
(比較例3)
メルカプトプロピオン酸誘導体(C)として、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部からドデシルメルカプタン5.0重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.5重量%であった。
【0151】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0152】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0153】
(比較例4)
メルカプトプロピオン酸誘導体(C)として、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部からドデシルメルカプタン0.2重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.5重量%であった。
【0154】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は70,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0155】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0156】
(比較例5)
tert−ブチルメタクリレート39.3重量部から0に、メチルメタクリレート235.6重量部から274.9重量部に変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.5重量%であった。
【0157】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0158】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0159】
(比較例6)
tert−ブチルメタクリレート39.3重量部から0に、メチルメタクリレート235.6重量部から251.3重量部に、2−エチルヘキシルアクリレート70.7重量部から55.0重量部に変更した以外は実施例1と同様に水性分散体を作成した。得られた水性分散体の不揮発分濃度は40.4重量%であった。
【0160】
得られた水性分散体中の共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。なお、水性分散体中の共重合体のガラス転移温度(計算値)は60℃であった。水性分散体中の分散粒子の平均粒子径は70nmであった。
【0161】
以下、実施例と同様にしてネイルエナメル組成物を調製し、評価した。
【0162】
〔基本物性評価〕
成膜方法:各実施例及び比較例で調製した水性ネイルエナメル組成物を乾燥膜厚で120μmになるように各基材に塗布し、25℃にて3日間乾燥して塗膜を形成した。評価は以下の方法によって行った。
【0163】
1.除光性:ガラス板上に成膜させた各水性ネイルエナメル組成物塗膜に対し、化粧用のコットンにアセトン60重量%、水40重量%の除光液を含ませ、塗膜をラビングして、塗膜の溶解するまでの往復回数にて下記5段階評価を行った。尚、市販される一般的な除光液はアセトンを約90重量%含有している。
5:非常によくおちる(3往復以下)
4:よくおちる(10往復未満)
3:おちる(15往復以上)
2:落ちにくい(25往復以上)
1:全く落ちない(50往復以上)
2.耐温水性:ガラス板上に各水性ネイルエナメル組成物を成膜し、該ガラス板を40℃の温水に30分浸漬した後、試験板を温水から取り出して、塗膜の白化具合を目視にて評価した。
5:塗膜の白化なし
4:塗膜白化するが、経時で回復する(15分を要する)
3:塗膜白化するが、経時で回復する(30分を要する)
2:塗膜白化するが、経時で回復する(60分を要する)
1:塗膜白化し、経時で回復しない
3.屈曲性:厚さ500ミクロンのナイロン板に各水性ネイルエナメル組成物を成膜させた後、ナイロン板を屈曲し、塗膜が割れるまでの日数を評価した。
5:14日以上塗膜割れなし
4:7日で塗膜割れる
3:5日で塗膜割れる
2:3日で塗膜割れる
1:1日で塗膜割れる
4.鉛筆硬度:ガラス板上に各水性ネイルエナメル組成物を成膜し、25℃環境下において、鉛筆硬度を測定した。塗膜に傷が付かない最高硬度を示す。
【0164】
5.湯中鉛筆硬度:ガラス板上に各水性ネイルエナメル組成物を成膜し、40℃の湯中にパネルを15分間浸漬し、湯中での鉛筆硬度を測定した。塗膜に傷が付かない最高硬度を示す。
【0165】
6.凍結融解安定性:得られたネイルエナメル組成物を70ml硝子製の密封容器に50g取り、−5℃で24時間および50℃で24時間を1サイクルとし、20サイクル後にネイルエナメル組成物を試験前後の状態から5段階評価した。
【0166】
5:変化なし
4:−5℃での冷却直後に部分的な凍結が見られたが常温では融解した。常温での組成物の状態は変化なし。実用上必要な基準である。
【0167】
3:ごく僅かにゲルが確認された。
【0168】
2:部分的にゲルが確認された。
【0169】
1:全体がゲル化した。
【0170】
〔実用性評価〕
各ネイルエナメル組成物について、専門パネラー20名による日常生活環境下での使用テストを行った。各パネラー各々通常使用する厚みにネイルエナメル組成物を塗布し、3日間通常の日常生活を送った後、下記評価項目について5点満点で採点した。なお、結果はパネラー20名の採点値の平均値とした。
【0171】
1.入浴時の温水下における塗膜耐久性
試験期間中1日1回(計3回)の入浴を行い、試験開始直後の塗膜状態と試験終了時の塗膜状態とを比較し、その劣化状態を以下の基準で採点した。すなわち、目視により塗膜の劣化の程度を5段階で評価した。本評価は温水及び日常生活において想定される弱アルカリ性環境下での、塗膜の傷つき程度と剥離具合を総合的に評価するものである。
5:塗膜の劣化殆ど無し
4:塗膜の劣化が僅かに見られる
3:塗膜が少程度に劣化
2:塗膜が中程度に劣化
1:塗膜がかなり劣化
2.除光性:試験終了時に、化粧用のコットンにアセトン90重量%、水10重量%の除光液を含ませ、各パネラーが通常行う方法での塗膜の落ち具合を下記の基準で評価した。
5:非常によく落ちる
4:よく落ちる(実用上最低必要である基準)
3:落ちる
2:落ちにくい
1:全く落ちない
3.光沢保持性
試験開始直後の塗膜の光沢状態と試験終了時の状態とを比較し、その低下度合を目視にて5段階評価した。
5:光沢の低下殆ど無し
4:光沢が僅かに低下する
3:光沢が小程度に低下
2:光沢が中程度に低下
1:失沢
4.臭気:ネイルエナメル組成物の臭気を、ネイルエナメル組成物を塗布する際に下記基準で5段階にて官能評価した。
5:悪臭気は全く感じられず
4:悪臭気を僅かに感じる(実用上最低必要である基準)
3:悪臭気を小程度に感じる
2:悪臭気を中程度に感じる
1:悪臭気を強く感じ、使用するに耐えない
5.外観再現性
塗布前のネイルエナメル組成物色味の程度と塗布後の塗膜とした状態の色彩の差違を、目視にて5段階で再現性(%)を評価した。
5:殆ど差違なし
4:僅かに差違有り
3:小程度に差違あり
2:中程度に差違あり
1:大きく差違あり
【表1】

【表2】

【表3】

【0172】
*1:全単量体を100重量部とした場合の連鎖移動剤量
t−BMA:tert−ブチルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
BMPA−2EH:2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート
BMPA−MB:メルカプトプロピオン酸メトキシブチル
DDME:ドデシルメルカプタン
表1および2によると、実施例の水性ネイルエナメル組成物は除光性およびその他の特性に優れている。
【0173】
一方、表3によると、比較例の水性ネイルエナメル組成物は、基本物性をはじめとして、除光性、臭気、外観再現性、光沢保持性、入浴時の温水下における塗膜耐久性等をバランス良くすべて満足することはできない。これらは、水性ネイルエナメル組成物としては実用上満足できるものではなかった。
【0174】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲にそむくことなく実行できることは当業者によって理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)0.1〜10.0重量部の存在下に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)及び前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量部を水性媒体中で重合して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(E)のネイルエナメル用水性分散体:
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、式中、n=1〜4の整数であり、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【請求項2】
ラジカル重合性不飽和基を1個以上有するアニオン系乳化剤(F)を用いて乳化重合してなることを特徴とする請求項1記載のネイルエナメル用水性分散体。
【請求項3】
単量体(A)が、単量体(A)及び単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量%中に1〜50重量%含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載のネイルエナメル用水性分散体。
【請求項4】
共重合体(E)のガラス転移温度(Tg)が、50〜80℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のネイルエナメル用水性分散体。
【請求項5】
メルカプトプロピオン酸誘導体(C)が、メルカプトプロピオン酸オクチルであることを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載のネイルエナメル用水性分散体。
【請求項6】
共重合体(E)の平均粒子径が30〜100nmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のネイルエナメル用水性分散体。
【請求項7】
下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体(C)0.1〜10.0重量部の存在下に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)及び前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)の合計100重量部を水性媒体中で重合することを特徴とする、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(E)のネイルエナメル用水性分散体の製造方法。
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の共重合体(E)を10〜60重量%含有することを特徴とする水性ネイルエナメル組成物。
【請求項9】
さらに、沸点100℃未満の低級アルコールを0.5〜15重量%含有することを特徴とする請求項8の水性ネイルエナメル組成物。
【請求項10】
水相中に、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体(A)および前記単量体(A)以外のその他のラジカル重合性不飽和単量体(B)を構成単位とした重量平均分子量が10,000以上40,000以下であって、末端に下記式(I)で示されるメルカプトプロピオン酸誘導体が結合した共重合体(E)が分散したネイルエナメル用水性分散体:
一般式(1) (HS−CH−CH−COO)−R
但し、n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。

【国際公開番号】WO2005/032500
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514461(P2005−514461)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014481
【国際出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【特許番号】特許第3889430号(P3889430)
【特許公報発行日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(500470840)アサヌマ コーポレーション株式会社 (18)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】