説明

ネコアレルゲンコンジュゲートとその使用

本発明は、医学、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野に関連する。本発明は、ウイルス様粒子(VLP)ないしウイルス粒子と、少なくとも一の抗原、特に少なくとも一のネコ抗原、より特別には少なくとも一のヒトアレルゲンであるネコ抗原を含有してなる組成物を提供する。ある実施態様では、前記抗原は、VLPと共有結合したFel d1抗原ないしはその断片である。また、本発明は、組成物を産生するための方法を提供する。本発明の組成物は、哺乳動物、特にヒトにおいて、効果的な免疫応答、特に抗体応答を誘導する。本発明の組成物及び方法は、特にネコ鱗屑及び他のネコ抗原とアレルゲンに対するアレルギーを治療及び/又は予防するためのワクチンの産生に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、医学、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野に関連する。本発明は、ウイルス様粒子(VLP)ないしウイルス粒子と、少なくとも一の抗原、特に少なくとも一のネコ抗原、より特別には少なくとも一のヒトアレルゲンであるネコ抗原を含有してなる組成物を提供する。ある実施態様では、前記抗原は、VLPと共有結合したFel d1抗原ないしはその断片である。また、本発明は、組成物を産生するための方法を提供する。本発明の組成物は、哺乳動物、特にヒトにおいて、効果的な免疫応答、特に抗体応答を誘導する。本発明の組成物及び方法は、特にネコ鱗屑及び他のネコ抗原とアレルゲンに対するアレルギーを治療及び/又は予防するためのワクチンの産生に有用である。
【0002】
関連技術
家ネコ(Felis domesticus)は室内アレルゲンの重大な供与源である(Lau, S., 等 (2000) Lancet 356, 1392-1397)。実際、ネコは西欧諸国のおよそ25%の家庭に見られ、ネコに対するアレルギーは多くの集団見られる。相対的に軽度な鼻炎及び結膜炎から致命的になりうる喘息悪化まで、症状の重症度は様々である。
患者はネコ鱗屑及び皮膚のいくつかの異なる分子に感受性が高いことが多いにもかかわらず、主要アレルゲンはFel d1(すなわちFelis domesticusアレルゲン1、以前はCat1、すなわちネコアレルゲン1)である。このアレルゲンの重大性は、多数の研究において強調されている。実際に、80%以上のネコアレルギー患者はこの強力なアレルゲンに対してIgE抗体を表す(van Ree, R., 等 (1999) J. Allergy Clin Immunol 104, 1223-1230)。
【0003】
Fel d1は、10〜20%のN結合炭水化物を含有してなる35〜39kDaの酸性糖タンパク質であって、ネコの皮膚、唾液及び涙腺に見られる。それは、2つの非共有結合で連結されたヘテロ二量体により形成される。各ヘテロ二量体は、異なる遺伝子によって、コードされる一つの70残基のペプチド(「鎖1」という)と一つの78、85、90又は92残基のペプチド(「鎖2」という)からなる(Duffort, O. A., 等 (1991) Mol Immunol 28, 301-309、Morgenstern, J. P., 等、 (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88, 9690-9694及びGriffith, I. J., 等 (1992) Gene 113, 263-268を参照)。
【0004】
現在のところ、ネコアレルギー患者の治療は、自然のネコ鱗屑抽出物ないしはFel d1由来の短いペプチドの何れかを漸増しながら繰り返し投与することを伴う脱感作療法によってなされる。Lilja 等 及び Hedlin 等は、自然のネコ鱗屑抽出物がネコアレルギー患者に与えられる過程における脱感作プログラムを開示している(Lilja, Q, 等 (1989) J Allergy Clin Immunol 83, 37-44及びHedlin, 等 (1991) J Allergy Clin Immunol 87, 955-964)。このプログラムには少なくとも2〜3年を要し、3年の治療の後の患者にはまだ全身性症状があった。脱感作のためにFel d1由来の短いペプチドを用いると、ペプチド群とプラセボ群の間で有意な差異が生じない(Oldfield, W. L., 等 (2002) Lancet 360, 47-53)。短いペプチドを大量(750μg)に患者に与えた場合に有用性が見られるだけであった(Norman, P. S., 等 (1996) Am J Respir Crit Care Med 154, 1623-1628)。
【0005】
遅発型喘息反応などのアレルギー性副作用は、自然のネコ鱗屑抽出物治療と短いペプチド治療の両方において報告されている。したがって、アレルゲンを注入したことによるアナフィラキシーショックは、任意の脱感作プログラムに関する大きな安全性懸念の一つである。しかしながら、アレルゲンの注射量を減量することによって、このような影響を回避すると、治療の有効性が減弱するか、治療が長引く。したがって、ネコアレルギー治療の分野において、代替的脱感作療法、及びこれによる特にアレルギー性症状を軽減できるがアレルギー性副作用を誘発しない脱感作療法が非常に求められている。
【0006】
(発明の概要)
我々は、驚くべきことに、本発明の少なくとも一のFel d1抗原ないしはその断片を含有してなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、Fel d1に対して免疫応答、それによる特に抗体応答を誘導することができるだけでなく、更には、ネコアレルギー患者を脱感作して、特に短期間以内に本発明の組成物及びワクチンそれぞれの高い有用性を示すことができることを発見した。さらに、我々は、驚くべきことに、本発明のFel d1が、本発明によるVLPに共有結合した場合に、高度の抗原性と免疫原性を維持しながら、VLPに共有結合していない本発明のFel d1と比較して、アナフィラキシー活性を劇的に低減したことを発見した。これは、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、免疫される動物及びヒトにおいてアナフィラキシーショックを生じるリスクを劇的に低減するので、従来分野におけるネコアレルギー治療よりも非常に有用である。さらに、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、従来のネコアレルギー治療と比較してより高用量で抗原を投与することを可能にする。これは言い換えると、有効性を改善し、及び/又は全体の脱感作プログラムを短縮しうる。したがって、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれは、強力な抗Fel d1免疫応答を誘導するが、アレルギー反応を引き起こさない。
【0007】
したがって、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であって、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子であるコア粒子;と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原;とを含んでなり、該少なくとも一の抗原がFel d1タンパク質ないしはFel d1断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して共有結合して、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。
他の態様では、本発明はワクチン組成物を提供する。さらに、本発明は、ワクチン組成物のヒト又はイヌなどの非ヒト動物への投与方法であって、該ヒト又は非ヒト動物がネコ、好ましくはネコのFel d1に対してアレルギー性である投与方法を提供する。ある好適な実施態様では、ワクチン組成物はさらに、少なくとも一のアジュバントを含有してなる。しかしながら、本発明のワクチン組成物は、少なくとも一のアジュバントの存在なしで、強力な免疫応答、特に抗体応答を誘導することができる。したがって、ある好適な実施態様では、ワクチンはアジュバントを欠いている。アジュバントの使用を回避すると、アジュバントの使用に関連する副作用の発生の可能性が低減しうる。
【0008】
ある好適な実施態様では、組成物及びワクチン組成物のそれぞれに含まれる本発明のVLPは、宿主内で組み換えて産生されるものであり、VLPは基本的に宿主のRNA、好ましくは宿主の核酸を含まない。これは、宿主の量を減らすか、好ましくは除去して宿主の核酸を無くして、望ましくないT細胞応答並びに発熱などの他の望ましくない副作用を避けるという利点がある。
ある好適な実施態様では、本発明の組成物はさらに、少なくとも一の免疫賦活性物質、好ましくは少なくとも一の免疫賦活性核酸を含有してなる。更なる好適な一実施態様では、免疫賦活性核酸は、本発明のVLP内にパッケージ化される。本発明の組成物内への免疫賦活性物質、好ましくは免疫賦活性核酸の封入は、Th1応答に対する免疫応答を作動して、それによってTh2応答を抑制してIgEの産生を抑制しうる。
【0009】
一態様では、本発明は、ネコアレルギー対象体、好ましくはヒトに本発明の組成物又はワクチンのそれぞれを投与することによるネコアレルギーの治療方法を提供する。
更なる態様では、本発明は、本発明の組成物及び受容可能な薬剤的な担体を含有してなる薬剤組成物を提供する。
更なる態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であって、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子であるコア粒子を供給する;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原であって、Fel d1タンパク質ないしはFel d1断片である抗原を供給する;そして(c) 該コア粒子と該少なくとも一の抗原を結合させて、該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して該少なくとも一の抗原と該コア粒子が結合している組成物を産生する
ことを含む、本発明の組成物の産生方法を提供する。
一態様では、本発明は、Fel d1の鎖1とアミノ酸スペーサーを介して融合したFel d1の鎖2を含んでなるFel d1融合タンパク質であって、該アミノ酸スペーサーは一方の鎖のN末端と他方の鎖のC末端とを結合させ、該アミノ酸スペーサーは10〜30のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列からなるものであり、該融合タンパク質が大腸菌で産生され、該融合タンパク質がグリコシル化されていない、Fel d1融合タンパクを提供する。
【0010】
(発明の詳細な説明)
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと、同じ意味を有する。
アジュバント:本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせると、より亢進した免疫応答を供給しうる、宿主内の貯蔵所となる物質ないしは免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。様々なアジュバントが用いられうる。例として、完全及び不完全なフロイントアジュバント、アルミニウム水酸化物及び修飾ムラミルジペプチドなどがある。更なるアジュバントは、ミネラルゲル、例えば酸化アルミニウム三水和物、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG (ウシ型弱毒結核菌ワクチン)及びコリネバクテリウムパルバムである。このようなアジュバントも当分野で公知である。本発明の組成物とともに投与されうる更なるアジュバントには、モノホスホリル脂質免疫修飾物質、AdjuVax 100a、QS-21、QS-18、CRL1005、アルミニウム塩類(ミョウバン)、MF-59、OM-174、OM-197、OM-294及びVirosomalアジュバント技術が含まれるが、これらに限定するものではない。また、アジュバントは、これらの物質の混合物を含んでもよい。
【0011】
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示された場合に、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するようにT細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、Bリンパ球及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(B及びTエピトープ)を有しうる。上記の特異的な反応とは、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な方式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発される可能性がある多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。
【0012】
抗原性部位:本明細書中において相互に交換可能に用いられる「抗原性部位」なる用語及び「抗原性エピトープ」なる用語は、MHC分子の環境におけるT細胞レセプター又は抗体によって免疫特異的に結合されるポリペプチドの連続的な又は非連続的な部位を意味する。免疫特異的な結合は、非特異的な結合が除外されるが必ずしも交差反応が除外されない。典型的に、抗原性部位は、抗原性部位に特有の空間的な立体構造内に5〜10のアミノ酸を含有する。
結合(以下、会合ともいう) (associated):本明細書中で用いられる「結合(会合) (associated)」なる用語は、2つの分子がともに結合するすべての可能な方法、好ましくは化学的な相互作用を指す。化学的な相互作用には共有的相互作用及び非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、又は水素結合であり、一方、共有的相互作用は、例として共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、炭素−イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースである。
【0013】
第一付着部位:ここで用いる「第一付着部位」なる用語は、VLPに天然に生じる又はVLPに人工的に付加される成分であり、第二付着部位が結合する部位を指す。第一付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、ペプチド、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第一付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、リジンなどのアミノ酸のアミノ基である。第一付着部位は、典型的にはVLPの表面上、好ましくはVLPの外表面上に位置する。多数の第一付着部位が、典型的には反復形状で、ウイルス様粒子の表面上、好ましくは外表面上に存在する。好適な実施態様では、第一付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介してVLPと会合(以下、結合ともいう)する。さらに好適な実施態様では、第一付着部位はVLPに天然に生じる。あるいは、好適な実施態様では、第一付着部位はVLPに人工的に付加されている。
【0014】
第二付着部位:ここで用いる「第二付着部位」なる用語は、本発明のFel d1に天然に生じる又は本発明のFel d1に人工的に付加される成分であり、第一付着部位が結合する部位を指す。本発明のFel d1の第二付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第二付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、好ましくはシステインなどのアミノ酸のスルフヒドリル基である。したがって、「少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のFel d1」なる用語は、本発明のFel d1と少なくとも一の第二付着部位を含むコンストラクトを指す。しかしながら、特に、本発明のFel d1に天然に生じない第二付着部位の場合、典型的かつ好ましくは、そのようなコンストラクトはさらに「リンカー」を含む。他の好適な実施態様では、第二付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介して本発明のFel d1と会合(結合)する。更なる実施態様では、第二付着部位は本発明のFel d1に天然に生じる。さらに他の好適な実施態様では、第二付着部位はリンカーを介して本発明のFel d1に人工的に付加され、該リンカーがシステインを含むかあるいはシステインからなるものである。好ましくは、リンカーはペプチド結合により本発明のFel d1に融合される。
【0015】
コートタンパク質:本出願において、「コートタンパク質」なる用語と交換可能に用いられる「キャプシドタンパク質」なる用語は、ウイルスタンパク質、好ましくはウイルス、好ましくはRNAファージの天然のキャプシドのサブユニットを指し、ウイルスキャプシド又はVLP内に内包されうるものである。
本発明のFel d1:本明細書中で用いる「本発明のFel d1」なる用語は、少なくとも一のFel d1タンパク質ないしは少なくとも一のFel d1断片を指す。
Fel d1の鎖1:本明細書中で用いる「Fel d1の鎖1」なる用語は、配列番号:22のアミノ酸配列ないしはその相同配列を含む、あるいは好ましくはそれからなるポリペプチドを包含する。本明細書中で用いる「配列番号:22の相同配列」なる用語は、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上である配列番号:22に同一性を有するポリペプチドを指す。また、本明細書中で用いる「Fel d1の鎖1」なる用語は、限定するものではないが、本明細書中で定義するような、Fel d1の鎖1の少なくとも一のグリコシル化を含む、少なくとも一の翻訳後修飾を含むポリペプチドを指すであろう。好ましくは、本明細書中で定義するように、Fel d1の鎖1は、全部で最大130、さらにより好ましくは最大100のアミノ酸からなる。
【0016】
Fel d1の鎖2:本明細書中で用いる「Fel d1の鎖2」なる用語は、配列番号:23、配列番号:25又は配列番号:26のアミノ酸配列ないしはその相同配列を含む、あるいは好ましくはそれからなるポリペプチドを包含する。本明細書中で用いる「配列番号:23、配列番号:25又は配列番号:26の相同配列」なる用語は、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上である配列番号:23、配列番号:25又は配列番号:26に同一性を有するポリペプチドを指す。また、本明細書中で用いる「Fel d1の鎖2」なる用語は、限定するものではないが、本明細書中で定義するような、Fel d1の鎖2の少なくとも一のグリコシル化を含む、少なくとも一の翻訳後修飾を含むポリペプチドを指すであろう。好ましくは、本明細書中で定義するように、Fel d1の鎖2は、全部で最大150、さらにより好ましくは最大130、さらにより好ましくは最大100のアミノ酸からなる。
【0017】
Fel d1タンパク質:本明細書中で用いる「Fel d1タンパク質」なる用語は、Fel d1の鎖1とFel d1の鎖2を含有するか、あるいはこれらからなるタンパク質を指す。好ましくは、Fel d1の鎖1とFel d1の鎖2は共有結合している。ある好適な実施態様では、Fel d1の鎖1とFel d1の鎖2は少なくとも一のジスルフィド結合を介して結合している。他の好適な実施態様では、鎖1と鎖2は直接あるいはスペーサーを介して融合しており、このときの該Fel d1タンパク質はスペーサーを更に含有するかあるいはスペーサーからなるものである。好ましくは、本明細書中で定義されるFel d1タンパク質は、全部で最大300、さらにより好ましくは最大200のアミノ酸からなる。典型的かつ好ましくは、本発明のFel d1タンパク質は、本発明の実施例5にしたがって産生されるような組み換えFel d1又は天然に生じるFel d1の何れかに特異的に結合する抗体のインビボ産生を誘導することができる。
【0018】
Fel d1断片:本明細書中で用いる「Fel d1断片」なる用語は、Fel d1の少なくとも一の抗原性部位を含有するか、あるいはこれらからなるポリペプチドを指す。典型的かつ好ましくは、本明細書中で用いる「Fel d1断片」なる用語は、Fel d1の少なくとも2つの抗原性部位を含有するか、あるいはこれらからなるポリペプチドを指す。好ましくは、抗原性部位は共有結合しており、更に好ましくは、抗原性部位は少なくとも一のペプチド結合によって結合しており、この場合、抗原性部位間にスペーサーが必要とされうる。好ましくは、少なくとも2つの抗原性部位は、Fel d1の鎖1とFel d1の鎖2の療法に由来する。好ましくは、本明細書中で定義されるFel d1断片は、全部で最大130、さらにより好ましくは最大100、さらにより好ましくは60のアミノ酸からなる。典型的かつ好ましくは、Fel d1断片は、本発明の実施例5にしたがって産生されるような組み換えFel d1又は天然に生じるFel d1の何れかに特異的に結合する抗体のインビボ産生を誘導することができる。
【0019】
結合(linked):ここで用いられる「結合された(以下、連結されたともいう)(その名詞:結合)」なる用語は、可能であれば、好ましくは少なくとも第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位がともに連結する化学的な相互作用を意味する。化学的な相互作用には共有的相互作用や非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用又は水素結合であるのに対して、共有的相互作用は、共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素-リン結合、炭素-イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースのものである。ある好適な実施態様では、第一付着部位と第二付着部位は、少なくとも一の共有結合、好ましくは少なくとも一の非ペプチド結合、よりさらに好ましくは、非ペプチド結合のみを介して結合される。しかしながら、ここで用いられる「結合」なる用語は、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位の直接結合を包含するだけでなく、選択的に好ましくは、中間分子、及びこれによって典型的かつ好ましくは、少なくとも一の、好ましくは一のヘテロ二官能性架橋剤を介して、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位との間接的な結合も包含する。
【0020】
リンカー:本明細書で使用する「リンカー」は、第二付着部位と本発明のFel d1を結合させるか、あるいは第二付着部位を既に含むか、実質的に第二付着部位からなるか、第二付着部位からなる。好ましくは、本明細書中で用いる「リンカー」は第二付着部位を、典型的かつ好ましくは、限定するものではないが、一アミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として既に含む。また、本明細書中で用いる「リンカー」は、特に本発明のリンカーが少なくとも一のアミノ酸残基を含有する場合、「アミノ酸リンカー」と称する。したがって、「リンカー」と「アミノ酸リンカー」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。しかしながら、この用語は、アミノ酸残基からなるアミノ酸リンカーが本発明の好適な実施態様である場合でも、このようなアミノ酸リンカーがアミノ酸残基のみからなることを示すことを意味するものではない。リンカーのアミノ酸残基は、当分野で知られている天然に存在するアミノ酸又は非天然アミノ酸、すべてのL型又はすべてのD型、あるいはこれらの混合物から構成されることが好ましい。したがって、スルフヒドリル基又はシステイン残基を含有する分子は本発明のリンカーの好適な実施態様であり、このような分子も本発明内に含まれる。さらに、本発明に有用なリンカーは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、シクロアルケニル、アリール又はヘテロアリール分子を含有する分子である。さらに好ましくは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル(C5、C6)、アリール、又はヘテロアリール部分と付加的なアミノ酸を含んでなるリンカーも本発明のためのリンカーとして使用可能であり、本発明の範囲内である。本発明のFel d1とリンカーの間の会合(結合)は、少なくとも1つの共有結合によるものであることが好ましく、少なくとも1つのペプチド結合によるものであることがより好ましい。
【0021】
規則的で反復性の抗原アレイ:本明細書で用いる「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は、一般的に、それぞれウイルス様粒子との関係で抗原中に、典型的に好ましくは非常に規則的に均一に空間的に配置していることに特徴がある、抗原の反復パターンを指す。本発明の一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。RNAファージのVLPにカップリングされる抗原などの本発明の特定の実施態様では、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは2から8ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する、抗原の準結晶性の、厳密に反復的な順序配列を持つ、好適に規則的で反復性の抗原の典型的かつ好ましい例である。
パッケージ化(packaged)(以下、封入ともいう):本明細書で使用するように、「パッケージ化」という用語は、VLPとの関係でのポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質の状態を指す。本明細書中で用いる「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。また、この用語にはポリ陰イオン性高分子の封入ないしは部分的な封入が含まれる。したがって、ポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質を、実際に結合、特に共有結合しなくても、VLPによって封入することができる。好適な実施態様では、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質はVLP内に、最も好ましくは非共有的様式にてパッケージ化される。
【0022】
スペーサー:「スペーサー」なる用語並びに同等に用いられる「アミノ酸スペーサー」なる用語はアミノ酸配列の広がりを指し、30以下のアミノ酸であり、Fel d1の一方の鎖のN末端とFel d1の他方の鎖のC末端を結合するものである。
ウイルス粒子:本明細書中で用いられる「ウイルス粒子」なる用語は、ウイルスの形態学的形状を意味する。いくつかのウイルス型には、タンパク質キャプシドに囲まれるゲノムを含むものがあり、他のものは付加的な構造(例えばエンベロープ、テイルなど)を有する。
【0023】
ここで用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書中で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は化学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の相等物のすべて又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好適な実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指す。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有の反復して組織化される、ウイルスキャプシド又はウイルスキャプシド様構造が形成される。前記構造は典型的には球状又は管状である。例えば、RNAファージのキャプシド又はHBcAgは正二十面体の左右対称の球状形態を有する。本明細書中で用いる「キャプシド様構造」なる用語は、十分な程度の規則的かつ反復性を維持しながら、前述の定義した文脈におけるキャプシド形態に類似しているが典型的な左右対称の集合化から偏向しているウイルスタンパク質サブユニットからなる高分子集合体化を指す。
【0024】
ウイルス粒子とウイルス様粒子の一つの共通した特徴は、高度に規則的かつ反復性をもって配列したサブユニットである。
RNAファージのウイルス様粒子:本明細書中で用いる「RNAファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしは断片を含んでなる、好ましくは基本的にこれからなる、あるいはこれからなるウイルス様粒子を指す。さらに、RNAファージの構造に類似するRNAファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性であり、RNAファージの複製機構をコードする少なくとも一の遺伝子、好ましくは複数の遺伝子を欠損しており、及び典型的には、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子を欠損する。しかしながらまた、この定義には、前述の遺伝子又は遺伝子群が存在するが不活性であるため、RNAファージのウイルス様粒子が非複製性及び/又は非感染性となる、RNAファージのウイルス様粒子が包含される。RNAファージ由来の好適なVLPは正二十面体の左右対称性を示し、180のサブユニットからなる。本開示の範囲内で、「サブユニット」及び「単量体」なる用語は、この文脈において、相互に交換可能に、同等に用いられる。本出願では、「RNAファージ」なる用語及び「RNA-バクテリオファージ」なる用語は、相互に交換可能に使われる。RNAファージのウイルス様粒子に非複製性及び/又は非感染性を与える好適な方法は、物理的、化学不活性化、例えばUV照射、ホルムアルデヒド処理によるもの、典型的かつ好ましくは、遺伝子操作によるものである。
【0025】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも一」、又は「一又は複数」を意味する。
ポリペプチドのアミノ酸同一性は、ベストフィット(Bestfit)プログラムなどの公知のコンピュータプログラムを用いて常套的に測定することができる。ベストフィットないしは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、好ましくはベストフィットを用いて、特定の配列が例えば参照するアミノ酸配列に対して95%の同一性があるかどうかを決定するために、参照アミノ酸配列の完全長に対する同一性の割合が算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%以下の相同性にギャップが挿入されるようにパラメータを設定する。ポリペプチド間の同一性の割合を測定する前述の方法は、本発明に開示するすべてのタンパク質、ポリペプチドないしはその断片に適するものである。
この出願において、抗体は、10−1又はそれ以上、好ましくは10−1又はそれ以上、より好ましくは10−1又はそれ以上、最も好ましくは10−1又はそれ以上の結合親和性(Ka)で抗原と結合するならば、特異的に結合するものと定義される。抗体の親和性は、(例えばスキャッチャード分析により)通常の当業者によって容易に測定され得る。
【0026】
本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であり、このときウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子である該コア粒子;と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原であり、このとき該少なくとも一の抗原がFel d1タンパク質ないしはFel d1断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して共有結合しているものである。好ましくは、Fel d1タンパク質ないしはFel d1断片はコア粒子に結合しており、規則的で反復性の抗原-VLPアレイを形成する。本発明の好適な実施態様では、少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、さらにより好ましくは少なくとも120及びさらにより好ましくは少なくとも180のFel d1タンパク質ないしはFel d1断片がコア粒子に結合する。
規則的で反復性の構造を有する当分野で公知の任意のウイルスは、本発明のVLP又はコア粒子として選択してもよい。VLPの調整のために使用されうる具体的なDNAないしRNAウイルスのコート又はキャプシドタンパク質は、国際公開公報2004/009124の25頁の10-21行目、26頁の11-28行目及び28頁の4行目から31頁の4行目に開示されている。これらの開示内容は出典明記により本明細書中に援用される。
【0027】
ウイルスないしウイルス様粒子は産生され、ウイルス感染細胞培養物から精製することができる。ワクチンの目的のために、結果として生じるウイルスないしウイルス様粒子は非複製性又は非感染性であることが好ましい。UV照射、ホルムアルデヒドやクロロホルムなどによる化学的処理は、不活性化ウイルスへの当業者に公知の一般的な方法である。
好適な一実施態様では、コア粒子はウイルス粒子であり、好ましくは該ウイルス粒子はバクテリオファージのウイルス粒子であり、さらに好ましくは該バクテリオファージはRNAファージであり、さらにより好ましくは該RNAファージは、Qβ、fr、GA又はAP205から選択されるRNAファージである。
ある好適な実施態様では、コア粒子はVLPである。更に好適な実施態様では、VLPは組み換えVLPである。ほとんどすべての一般的に公知のウイルスは配列決定されており、公的に容易に入手可能である。コートタンパク質をコードする遺伝子は当業者に容易に同定されうる。宿主内でコートタンパク質を組み換え発現させることによるVLPの調製は、当業者の共通の知識の範囲内である。
【0028】
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、a) RNAファージ;b) バクテリオファージ;c) B型肝炎ウイルス、好ましくはそのキャプシドタンパク質(Ulrich, 等, Virus Res. 50: 141-182 (1998))又はその表面タンパク質(国際公開公報92/11291);d) はしかウイルス(Warnes, 等, Gene 160:173-178 (1995));e) シンドビスウイルス;f) ロタウイルス(米国特許第5,071,651号及び米国特許第5,374,426号);g) 口蹄疫ウイルス(Twomey, 等, Vaccine 13:1603 1610, (1995));h) ノーウォークウイルス(Jiang, X., 等, Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., 等, J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i) アルファウイルス属;j) レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(国際公開公報96/30523);k) レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l) ヒトパピローマウイルス(国際公開公報98/15631);m) ポリオーマウイルス;n) タバコモザイク病ウイルス;及びo) Flockハウスウイルスからなる群から選択されるウイルスの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、あるいはこれからなる。
好適な一実施態様では、VLPは、その組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、これらからなる。一以上のアミノ酸配列を含むかそれらからなるVLPを、本出願ではモザイクVLPと称する。
【0029】
ここで使用される「組み換えタンパク質の断片」なる用語又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%であり、好ましくはVLPを形成する能力を保持するポリペプチドとして定義される。好ましくは、該断片は、少なくとも一の内部欠失、少なくとも一の切断、又はそれらの少なくとも一の組合せから得られる。「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、上で定義した「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」のそれぞれと、少なくとも80%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはウイルス様粒子内に集合化(以下「アセンブリ」ともいう)することができるポリペプチドをさらに包含する。
【0030】
本発明で交換可能に使用される「変異組み換えタンパク質」なる用語又は「組み換えタンパク質の変異体」なる用語、本発明で交換可能に使用される「変異コートタンパク質」なる用語又は「コートタンパク質の変異体」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれに由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、該アミノ酸配列は野生型配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であり、好ましくはVLP内に集合化する能力を保持している。
好適な一実施態様では、本発明のウイルス様粒子はB型肝炎ウイルスである。B型肝炎ウイルス様粒子の調整は、特に国際公開公報00/32227、同01/85208及び同02/056905に開示されている。これら3つすべての文書は出典明記によって本明細書中に特別に援用される。本発明の実施における使用に好適なHBcAgの他の変異体は国際公開公報02/056905の34−39頁に開示されている。
【0031】
本発明の更なる好適な一実施態様では、リジン残基はHBcAgポリペプチドに導入され、本発明のFel d1のHBcAgのVLPへの結合を媒介する。好適な実施態様では、本発明の組成物及びVLPは、配列番号20のアミノ酸1−144又は1−149、1−185を含むか、あるいはこれからなる、HBcAgを用いて調製される。このHBcAgは修飾されており、79番目と80番目のアミノ酸がGly-Gly-Lys-Gly-Glyのアミノ酸配列を有するペプチドに置き換わっている。この修飾により配列番号20から配列番号21に変化する。更なる好適な実施態様では、配列番号21又はその対応する断片、好ましくは1−144又は1−149の48番目と110番目のシステイン残基がセリンに変異される。さらに、本発明は、上記の対応するアミノ酸変異を有するB型肝炎コアタンパク質変異を含有する組成物を包含する。さらに、本発明は、配列番号21に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなるHBcAgポリペプチドを含有する組成物及びワクチンのそれぞれを包含する。
【0032】
本発明のある好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-ファージの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。好ましくは、RNA-ファージは、a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7、及びm)バクテリオファージAP205からなる群から選択される。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有し、該コートタンパク質は、(a) 配列番号:1(Qβ CPを指す);(b) 配列番号:1と配列番号:2の混合物(Qβ A1タンパク質を指す);(c) 配列番号:3;(d) 配列番号:4;(e) 配列番号:5;(f) 配列番号:6、(g) 配列番号:6と配列番号:7の混合物;(h) 配列番号:8;(i) 配列番号:9;(j) 配列番号:10;(k) 配列番号:11;(l) 配列番号:12;(m) 配列番号:13;及び(n) 配列番号:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0033】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるモザイクVLPである。
とても好適な一実施態様では、VLPはRNAファージの2つの異なるコートタンパク質を含むか、あるいはそれらからなるものであり、該2つのコートタンパク質は配列番号:1と配列番号:2、又は配列番号:6と配列番号:7のアミノ酸配列を有する。
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-バクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。ある好適な実施態様では、VLPはRNAバクテリオファージ、好ましくはRNAバクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAのものである。
【0034】
好適な一実施態様では、本発明のVLPはRNAファージQβである。Qβのキャプシド又はウイルス様粒子は、直径25nmで、T=3の疑似対称体の、正二十面体ファージ様キャプシド構造を示す。キャプシドは、ジスルフィド架橋により共有結合性の五量体及び六量体で結合して(Golmohammadi, R等, Structure 4:543-5554(1996))、際だって安定したQβキャプシドとなる、コートタンパク質の180のコピーを含む。しかしながら、組み換えQβコートタンパク質から作製されるキャプシド又はVLPは、キャプシド内の他のサブユニットへ、ジスルフィド結合を介して結合していないか、又は不完全に結合するサブユニットを含んでいてもよい。Qβのキャプシド又はVLPは、有機溶媒及び変性剤に対し、普通ではない耐性を示す。驚くべきことに、我々は、1Mの高さの濃度のグアニジウム、30%の高さの濃度のアセトニトリル及びDMSOがキャプシドの安定性に影響しないことを発見した。Qβのキャプシド又はVLPの高い安定性は、本発明の哺乳動物及びヒトの免疫化及びワクチン接種における使用に特に有用な性質である。
【0035】
さらに好適な本発明のRNAファージ、特にQβ及びfrのウイルス様粒子は国際公開公報02/056905に開示されており、この開示内容は出典明記により本明細書中に援用される。特に、国際公開公報02/056905の実施例18にQβのVLP粒子の調製について詳しく記載されている。
他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、RNAファージAP205のVLPである。また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPのコンピテントアセンブリ変異体型を本発明の実施に使用してもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2には、AP205コートタンパク質を含有するVLPの入手方法、とりわけその発現と精製について記載されている。国際公開公報2004/007538は出典明記によって本明細書中に援用される。AP205 VLPは高い免疫原性があり、本発明のFel d1と結合して、典型的かつ好ましくは、反復様式で配位する本発明のFel d1を表出するワクチンコンストラクトを生成することができる。表出された本発明のFel d1に対して高い抗体力価が誘発されることから、結合した本発明のFel d1が抗体分子との相互作用のためにアクセス可能であり、免疫原性であることが示される。
【0036】
好適な一実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異コートタンパク質は置換及び/又は欠失によって少なくとも一のリジン残基が除去されて修飾されている。他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異コートタンパク質は置換及び/又は挿入によって少なくとも一のリジン残基が付加されて修飾されている。特にワクチンの必要性に合わせて調整するために、少なくとも一のリジン残基の欠失、置換又は付加によって、カップリングの程度、すなわち、ウイルス、好ましくはRNAファージのVLPのサブユニット当たりの本発明のFel d1の量を変えることができる。
好適な一実施態様では、本発明の組成物及びワクチンは、0.5〜4.0の抗原密度を有する。ここで使用される「抗原密度」なる用語は、サブユニット当たり、好ましくはVLPのコートタンパク質当たり、好ましくはRNAファージのVLPのコートタンパク質当たりに結合する本発明のFel d1の平均数を意味するものである。よって、この値は、本発明の組成物又はワクチン中での、VLP、好ましくはRNAファージのVLPの単量体又はサブユニット全体の平均として算出される。
【0037】
VLP又はQβコートタンパク質のキャプシドは決まった数のリジン残基をその表面上に表出して、キャプシドの内部に向かい、RNAを相互作用する3つのリジン残基と、キャプシドの外部に露出した4つの他のリジン残基を有する特徴のある形態となる。好ましくは、少なくとも一の第一付着部位がリジン残基であり、VLPの外部に向かってあるか又はVLPの外部上にある。
露出されたリジン残基がアルギニンで置き換えられたQβ変異体は、本発明のために使用することができる。よって、本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は変異Qβコートタンパク質を含む、本質的にこれからなる、あるいはこれからなるものである。好ましくは、これら変異コートタンパク質は、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含むかあるいはこれからなるものである:a) Qβ-240(配列番号:15、配列番号:1のLys13-Arg)、b) Qβ-243(配列番号:16、配列番号:1のAsn10-Lys)、c) Qβ-250(配列番号:17、配列番号:1のLys2-Arg)、d) Qβ-251(配列番号:18、配列番号:1のLys16-Arg);及びe) Qβ-259(配列番号:19、配列番号:1のLys2-Arg、Lys16-Arg)。上述したQβ変異コートタンパク質、変異Qβコートタンパク質VLP及びキャプシドの構築、発現及び精製は、それぞれ国際公開第02/056905に記載されている。特に上述した出願の実施例18が参照される。
【0038】
本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、Qβの変異コートタンパク質、又はその変異体ないしはその断片、及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、アミノ酸配列 配列番号15、16、17、18又は19を有する変異コートタンパク質及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
さらにまた、RNAファージコートタンパク質は、細菌宿主内で発現すると自己集合体化することが示されている(Kastelein, RA. 等, Gene 23:245-254 (1983)、Kozlovskaya, TM. 等, Dokl. Akad. Nauk SSSR 287:452-455 (1986)、Adhin, MR. 等, Virology 170:238-242 (1989)、Priano, C. 等, J. Mol. Biol. 249:283-297 (1995))。特に、GA (Ni, CZ., 等, Protein Sci. 5: 2485-2493 (1996)、Tars, K 等, J. Mol.Biol. 271:759-773(1997))及び、fr (Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993)、Liljas, L 等 J Mol. Biol. 244:279-290, (1994))の生物学的及び生化学的性質は開示されている。いくつかのRNAバクテリオファージの結晶構造が決定されている(Golmohammadi, R. 等, Structure 4:543-554 (1996))。そのような情報を用いて、表面に曝された残基を同定して、RNAファージコートタンパク質を修飾して、一又は複数の反応性のアミノ酸残基を挿入又は置換によって挿入することができる。RNAファージ由来のVLPの他の利点は、安価で大量の物質を産生することが可能となる細菌での発現回収率が高いことである。
【0039】
好適な一実施態様では、本発明の組成物は少なくとも一の抗原を含有するものであり、該少なくとも一の抗原はFel d1タンパク質である。
好適な実施態様では、Fel d1タンパク質は天然に生じるFel d1を含むか、あるいはこれからなる。鎖1の主要な構造は配列番号22の配列である。鎖1の報告された変異体は、Lys29-Arg又はAsn、Va133-Ser、Val60-Leuである。鎖2の主要な構造は配列番号23、25又は26の配列である。鎖2の報告された変異体は、配列番号23、25又は26のCys7-Phe、Phe15-Thr、Asn19-Ser、Gly20-Leu、Ile55-Val、Arg57-Lys、Val58-Pheである。さらに、鎖2の変異体は、配列番号:25のGlu69-Val、Tyr70-Asp、Met72-Thr、Gln77-Glu及びAsn86-Lys、配列番号:23のMet74-Thr、Gln79-Glu及びAsn88-Lysである。(Griffith I.J. 等, Gene 113:263-268 (1992)、Morgenstern J.P. 等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:9690-9694 (1991)。Duffort O.A., 等 Mol. Immunol. 28:301-309 (1991)、Leitermann K., 等, J. Allergy Clin. Immunol. 74:147-153 (1984)、Kristensen, A. K, 等 (1997) Biol Chem 378, 899-908)。天然に生じるFel d1は、例えばネコ唾液、ネコ鱗屑、ネコが生活する住宅のハウスダストなどから精製して得る。
【0040】
好適な実施態様では、本発明のFel d1は、組み換えFel d1タンパク質又は組み換えFel d1断片である。本明細書中で用いられる、組み換えFel d1タンパク質又は組み換えFel d1断片は、組み換えDNA技術の少なくとも一つの工程を含む方法によって得られるFel d1タンパク質又はFel d1断片を指す。「組み換えFel d1タンパク質又は組み換えFel d1断片」及び「組み換えて産生されるFel d1タンパク質又は組み換えて産生されるFel d1断片」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられ、同一の意味をもつであろう。組み換えFel d1タンパク質ないし断片は、例えば大腸菌(国際公開公報2004/094639)などの原核生物発現系、又は例えばバキュロウイルス(国際公開公報00/20032)などの真核生物発現系において産生できる。Seppala 等は、バキュロウイルス(J. Biol. Chem. Nov, 2004)の2シストロン性のプロモーターにるFel d1の鎖1とFel d1の鎖2の同時発現を開示した。組み換えタンパク質を生産するために使用する宿主細胞に応じて、組み換えて産生されるFel d1タンパク質ないし断片をグリコシル化するか、非グリコシル化することができる。
【0041】
一実施態様では、組み換えFel d1タンパク質は、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2を含むか、あるいはこれからなる。このとき、Fel d1の前記鎖1はもっぱら非共有結合、例えば疎水的相互作用によって、Fel d1の鎖2と結合している。
好適な一実施態様では、組み換えFel d1タンパク質は、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2を含むか、あるいはこれからなる。このとき、Fel d1の前記鎖1は少なくとも一の非共有結合によって、Fel d1の鎖2と結合している。好適な一実施態様では、少なくとも一の共有結合は非ペプチド結合であり、このとき該非ペプチドがジスルフィド結合であるか又は、好ましくは該非ペプチドがジスルフィド結合である。例えば、リシャッフリング法のように、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2を別々に発現させ、適切なジスルフィド結合を形成させる条件下で結合させることができる。あるいは、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2は、例えば、一プラスミド中の2つのプロモーター下で、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2をそれぞれコードする遺伝子をクローニングすることによって、一宿主内で同時に発現させることができる。真核生物発現系において、Fel d1の鎖1及びFel d1の鎖2は、1のmRNAに転写されて、配列内リボソーム進入部位(IRES)によって、別々に翻訳されうる。
【0042】
好適な一実施態様では、Fel d1タンパク質は融合タンパク質を含むか、あるいはこれからなり、このとき該融合タンパク質がFel d1の鎖1及びFel d1の鎖2を含んでなる。好適な一実施態様では、Fel d1の前記鎖1及びFel d1の前記鎖2は一ペプチド結合を介して直接融合しており、このペプチド結合が一方の鎖のN末端を他方の鎖のC末端に連結する。他の好適な実施態様では、Fel d1の前記鎖1及びFel d1の前記鎖2はスペーサーを介して融合しており、このスペーサーは一方の鎖のN末端を他方の鎖のC末端に連結する。好ましくは前記スペーサーは、1〜30、好ましくは1〜25、好ましくは1〜20、好ましくは1〜15、好ましくは1〜9、好ましくは1〜5、好ましくは1〜3のアミノ酸を有する。あるいは、前記スペーサーは、10〜30、好ましくは10〜25、好ましくは10〜20、より好ましくは13〜20、より好ましくは15〜20、より好ましくは13〜17、より好ましくは15〜17のアミノ酸を有する。好ましくは前記スペーサーは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列から成る。好適な一実施態様ではでは、前記スペーサーは15のアミノ酸を有する。更なる好適な一実施態様では、前記スペーサーは(GGGGS)3である。
【0043】
好適な一実施態様では、融合タンパク質は、(a) 配列番号:24、(b) 配列番号:54、(c) 配列番号:55、(d) 配列番号:56、及び(e) 配列番号:57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。
好適な一実施態様では、Fel d1の前記鎖2のC末端は、直接又はスペーサーを介して、Fel d1の鎖1のN末端に融合する。更なる好適な一実施態様では、前記Fel d1タンパク質は、配列番号:24のアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなる。
国際公開公報2004/094639は、天然の相対物に類似した分子的かつ生物学的性質を有する折りたたまれた組み換えFel d1と、具体的にはFel d1鎖2のN末端と鎖1の直接融合体をコードする合成遺伝子を開示した。大腸菌発現により、サイズ排除クロマトグラフィにより決定された30kDaの見かけの分子量を有する非共有結合ホモダイマーとなり、各々の19177Daのサブユニットは天然のFel d1において見られるものと同一のジスルフィドパターンを表し、天然のFel d1及び組み換えFel d1の同一のフォールドを有する。組み換えFel d1は、ネコアレルギー性患者の血清からのIgEに対して天然のFel d1と同じように反応した。ゆえに、このFel d1融合タンパク質は天然のFel d1の抗原性を模倣する。
【0044】
好適な一実施態様では、Fel d1の組み換え鎖1のC末端は、直接又はスペーサーを介してFel d1の鎖2のN末端に融合する。
好適な一実施態様では、Fel d1の鎖1は、配列番号:22の配列又はそのホモログ配列を含むか、あるいはこれからなり、該ホモログ配列が80%以上、好ましくは90%以上又はさらに好ましくは95%以上の配列番号:22への同一性を有するものである。
好適な一実施態様では、Fel d1の前記鎖2は、配列番号:23、配列番号:25又は配列番号:26の配列又はそのホモログ配列を含むか、あるいはこれからなり、該ホモログ配列が80%以上、好ましくは90%以上又はさらに好ましくは95%以上の配列番号:23、配列番号:25又は配列番号:26への同一性を有するものである。
【0045】
好適な一実施態様では、Fel d1タンパク質は組み換えFel d1タンパク質であり、このとき少なくとも一のジスルフィド結合は、好ましくは突然変異によって、好ましくはCysからSerへなどの保存的置換により破壊されているものである。
天然のFel d1の2つのペプチドを連結している3つの鎖間ジスルフィド架橋は同定されており、すなわちCys3(1)-Cys73(2)、Cys44(1)-48Cys(2)及びCys70(1)-Cys7(2)であり、このことからFel d1ペプチドの逆平行の定位が示唆される。(Kristensen, A. K., 等 (1997) Biol Chem 378, 899-908)。好適な一実施態様では、Fel d1タンパク質のそのような一つのジスルフィド結合は破壊される。更なる好適な一実施態様では、Fel d1タンパク質のこのような2つのジスルフィド結合は破壊される。なお更なる好適な一実施態様では、Fel d1タンパク質のこのような3つすべてのジスルフィド結合は破壊される。好適な一実施態様では、鎖1のCys70は欠損させるか変異させる。他の好適な実施態様では、鎖のCys73は欠損させるか変異させる。好適な一実施態様では、前記Fel d1タンパク質は、直接又はスペーサーを介して融合したFel d1の鎖1とFel d1の鎖2を含んでなる融合タンパク質であり、このときの3つすべてのジスルフィド結合は破壊されているものである。更なる好適な一実施態様では、前記Fel d1タンパク質は、配列番号:24、55又は57のアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなり、このとき、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも5つのシステインが置換又は欠失により取り除かれているものである。
【0046】
好適な一実施態様では、本発明の抗原はFel d1断片を含むか、あるいはこれからなる。免疫原性の保持には通常タンパク質の完全長を必要としないことと、通常、タンパク質は複数の抗原エピトープ、すなわち抗原性部位を含有することとが知られている。断片又は短いペプチドは、抗体によって免疫特異的に結合されうるか、MHC分子との関係でT細胞レセプターに結合されうる、少なくとも一つの抗原性部位を含有するために十分であるかもしれない。抗原性部位又は複数の部位は、当分野の技術者に一般に公知の多くの技術で決定されうる。それは、配列アラインメントや構造予測によってなされうる。例えば、Rasmolなどのプログラムを用いて、可能性のあるα-ヘリックス、ターン、鎖間及び鎖内ジスルフィド結合などを予測することができる。さらに、分子の表面に露出する分子又は配列内に埋没される配列を予測することができる。分子の表面に露出する配列は、おそらく、天然の抗原性部位(一又は複数)を含んでなるため、治療的抗体を誘導する際に有用である。表面ペプチド配列を決定した後、例えば網羅的な突然変異誘発方法によって、この配列の範囲内の抗原性部位を更に決定してもよい(アラニンスキャニング突然変異誘発など、Cunningham BC, Wells JA. Science 1989 Jun 2、 244(4908): 1081-5)。一時的にこの配列内のアミノ酸を順次アラニンに変異し、そのアラニン突然変異が抗体に対する結合の低減(野生型配列に対して上昇)を示すアミノ酸ないしは全く結合を失うアミノ酸が、おそらく抗原性部位の成分である。抗原性部位(一又は複数)を決定する他の方法は、Fel d1(Geysen, PNAS Vol 81: 3998-4002, (1984) and Slootstra, J. W. 等, (1996) Mol. Divers. 1, 87-96)の完全長配列を包含するオーバーラッピングペプチドを生成することである。
【0047】
好適な一実施態様では、本発明の抗原は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのFel d1エピトープ、更に好ましくはFel d1の鎖1由来の少なくとも1つのエピトープとFel d1の鎖2由来の少なくとも1つのエピトープを含むか、あるいはこれからなる。
Fel d1のT細胞反応性エピトープはFel d1タンパク質全体にわたってマッピングされており、米国特許第6120769号、米国特許第6025162号の14列の第4段落、130と131列などの従来文献に開示されており、これらの開示内容は出典明記によって本明細書中に援用されるものである。好適な実施態様では、Fel d1のT細胞エピトープは配列番号:27〜32からなる群から選択される。
【0048】
本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給する、(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するFel d1タンパク質ないしはFel d1断片である、少なくとも一の抗原を供給する、そして(c) 該VLPと該少なくとも一の抗原を組み合わせて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して少なくとも一の抗原と該VLPが結合していることを含む本発明の組成物の産生方法を提供する。好適な実施態様では、少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原、すなわちFel d1タンパク質ないしFel d1断片の供給は、発現によるものであり、好ましくは細菌系、好ましくは大腸菌内での発現によるものである。通常、Hisタグ、Mycタグなどのタグは精製工程を容易にするために加えられる。他の方法では、特に50以下のアミノ酸を有するFel d1断片は化学的に合成できる。
【0049】
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPは、少なくとも一のペプチド結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のFel d1に結合する。本発明のFel d1、好ましくはFel d1断片、より好ましくは50アミノ酸以下、さらにより好ましくは30アミノ酸未満の断片をコードする遺伝子が、VLPのコートタンパク質をコードする遺伝子の内部に又は好ましくはN末端ないしC末端の何れかにインフレームでライゲーションされる。抗原タンパク質、その変異体ないしその断片をウイルスのコートタンパク質にコートするために本発明の抗原を使用する実施態様は、国際公開公報2004/009124の62頁の第20行目から68頁の第17行目に開示されており、出典明記によって本明細書中に援用される。
好適な一実施態様では、Fel d1断片を、RNAファージAP205のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片のN末端又はC末端に融合する。更なる好適な一実施態様では、融合タンパク質は、スペーサーをさらに含有するものであり、該スペーサーはAP205及びFel d1断片のコートタンパク質、その断片ないしはその変異体に融合されるものである。
【0050】
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、少なくとも一の共有結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の本発明のFel d1に結合した少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子を含有するか、あるいは本質的にこれらからなるものであり、好ましくは該共有結合は非ペプチド結合である。本発明の好適な実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
本発明の非常に好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基であり、少なくとも一の第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基である。
【0051】
本発明の好適な一実施態様では、本発明のFel d1は、典型的にかつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を使用して、化学的架橋によりVLPに結合している。好適な実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基(一又は複数)のアミノ基を有する好適な第一付着部位と反応可能な官能基と、好適な第二付着部位、すなわち本発明のFel d1に元もとあるかないしは人工的に付加され、場合によっては還元による反応に利用される、好ましくはシステイン(一又は複数)残基のスルフヒドリル基と反応可能なさらなる官能基を含む。いくつかのヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で知られている。これらには、好ましい架橋剤であるSMPH(Pierce)、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤が含まれ、アミノ基に対して反応可能な一官能基とスルフヒドリル基に対して反応可能な一官能基を有する。上述した全ての架橋剤により、アミノ基との反応後にアミド結合が、またスルフヒドリル基とチオエーテル結合が形成される。本発明の実施に適した他のクラスの架橋剤は、カップリング時に本発明のFel d1とVLPとの間にジスルフィド結合を導入することにより特徴付けられる。このクラスに属する好ましい架橋剤には、例えばSPDP及びスルホ-LC-SPDP(Pierce)が含まれる。
【0052】
好適な実施態様では、本発明の組成物はリンカーをさらに含有している。本発明のFel d1における第二の付着部位の操作は、この発明の開示に従い、好ましくは第二の付着部位として適切な少なくとも一のアミノ酸を含むリンカーとの結合により達成される。よって、本発明の好適な実施態様では、リンカーは少なくとも一の共有結合、好ましくは典型的には少なくとも一のペプチド結合により、本発明のFel d1に結合している。好ましくは、リンカーは、第二の付着部位を含むかあるいはそれからなる。さらに好適な実施態様では、リンカーは好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好適な実施態様では、リンカーはシステイン残基である。
【0053】
リンカーの選択は、本発明のFel d1の性質、その生化学的特性、例えばpI、電荷分布、及びグリコシル化に依存するであろう。一般的に、フレキシブルなアミノ酸リンカーが好まれる。本発明のさらに好適な実施態様では、リンカーはアミノ酸からなり、さらに好ましくは、リンカーは最大で25、好ましくは最大で20、より好ましくは最大で15のアミノ酸からなる。本発明のさらに好適な実施態様では、アミノ酸リンカーは10未満のアミノ酸を含有する。リンカーの好適な実施態様は:(a) CGG;(b) N-末端γ1-リンカー(例えばCGDKTHTSPP、配列番号58);(c) N-末端γ3-リンカー(例えばCGGPKPSTPPGSSGGAP、配列番号69);(d) Igヒンジ領域;(e) N-末端グリシンリンカー(例えばGCGGGG、配列番号59);(f) n=0-12、k=0-5である(G)kC(G)n;(g) N-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(GGGGS)n(例えば配列番号60、n=1の実施態様に相当));(h) n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2である(G)kC(G)m(S)l(GGGGS)n(例えば配列番号61、n=1、k=1、l=1及びm=1の実施態様に相当);(i) GGC;(k) GGC-NH2;(l) C-末端γ1-リンカー(例えばDKTHTSPPCG、配列番号62);(m) C-末端ガンマ3-リンカー(例えばPKPSTPPGSSGGAPGGCG、配列番号63);(n) C-末端グリシンリンカー(GGGGCG、配列番号64);(o) n=0-12及びk=0-5である(G)nC(G)k;(p) C-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(SGGGG)n(例えば配列番号65、n=1の実施態様に相当));(q) n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2及びo=0-8である(G)m(S)l(GGGGS)n(G)oC(G)k(例えば配列番号66、n=1、k=1、l=1、o=1及びm=1の実施態様に相当)からなる群から選択される。さらに好適な実施態様では、リンカーは本発明のFel d1のN-末端に付加している。本発明の他の好適な実施態様では、リンカーは本発明のFel d1のC-末端に付加している。
【0054】
この発明に係る好ましいリンカーは、第2付着部位としてシステイン残基をさらに含むグリシンリンカー(G)n、例えばN-末端グリシンリンカー(GCGGGG)及びC-末端グリシンリンカー(GGGGCG)である。さらに好適な実施態様は、C-末端グリシン-リジンリンカー(GGKKGC、配列番号67)及びN-末端グリシン-リジンリンカー(CGKKGG、配列番号68)、ペプチドのC-末端のGGCG、GGC又はGGC-NH2(「NH2」はアミド化を表す)リンカー、又はそのN-末端のCGGのリンカーである。一般的に、グリシン残基は、第2付着部位として使用されるシステインと大きなアミノ酸との間に挿入されて、カップリング反応中での、より大きなアミノ酸の潜在的な立体障害が回避される。
好適な一実施態様では、リンカーはFel d1タンパク質ないしFel d1断片のN末端に融合している。更に好適な一実施態様では、リンカーはGCGGである。他の好適な実施態様では、リンカーはFel d1タンパク質ないしFel d1断片のC末端に融合している。更なる好適な一実施態様では、リンカーはGGCである。2つのポリペプチド鎖からなるFel d1タンパク質ないしFel d1断片の場合には、このようなFel d1タンパク質ないしFel d1断片は2つのN末端と2つのC末端を有する。リンカーは2つのN末端の両方又はC末端の両方に融合しうる。好ましくは、リンカーは2つのN末端の一方のみ又は2つのC末端の一方のみに融合する。
【0055】
上記の好適な方法によるヘテロ二官能性架橋剤を用いることによるVLPへの本発明のFel d1の結合により、正方向の様式でVLPに本発明のFel d1をカップリングさせることができる。VLPに本発明のFel d1を連結させるための他の方法には、カルボジイミドEDC、及びNHSを使用し、本発明のFel d1をVLPに架橋させる方法が含まれる。本発明のFel d1は、例えばSATA、SATP又はイミノチオランを用いた反応を介して、まずチオラート化されてもよい。次いで、必要であれば脱保護化した後に本発明のFel d1を以下のようにVLPにカップリングしてもよい。過剰なチオラート化剤を分離した後、本発明のFel d1を、システイン反応基を含有し、システイン残基に対して反応可能な少なくとも一又はいくつかの官能基を表出するヘテロ二官能性架橋剤にて予め活性化させた、VLPと反応させる。このとき本発明のチオラート化Fel d1は上記に記載のようにそのシステイン残基と反応させることができる。場合によっては、少量の還元剤が反応混合物中に含まれる。さらなる方法では、ホモ二官能性架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、DSG、BM[PEO]4、BS3、(Pierce)、又はVLPのアミノ基又はカルボキシル基に対して反応する官能基を有する他の既知のホモ二官能性架橋剤を使用して、本発明のFel d1をVLPに付着させる。
【0056】
本発明の他の実施態様では、組成物は、化学的な相互作用を介して本発明のFel d1に結合したウイルス様粒子を含むか、ないしは本質的にそれからなるものであり、このときこの相互作用の少なくとも一は共有結合ではないものである。例えば、VLPをビオチン化してストレプトアビジン-融合タンパク質として本発明のFel d1を発現することによって本発明のFel d1へのVLPの結合が起こる。
一又はいくつかの抗原分子、すなわち本発明のFel d1は、立体的に可能な場合には、好ましくはRNAファージ VLPのコートタンパク質の露出したリジン残基を介して、VLP、好ましくはRNAファージコートタンパク質の一サブユニットに付着させることができる。したがって、RNAファージのVLP、特にQβコートタンパク質VLPの特異的な特徴は、1サブユニットにつきいくつかの抗原をカップリングする可能性である。これにより高密度な抗原アレイの生成が可能となる。
【0057】
本発明のとても好適な実施態様では、本発明のFel d1は、本発明のFel d1のN末端又はC末端の何れかに付加されているシステイン残基、又は本発明のFel d1内の天然のシステイン残基を介して、RNAファージのVLPのコートタンパク質、特にQβのコートタンパク質のリジン残基に結合する。
上述の通り、4つのリジン残基はQβコートタンパク質のVLPの表面上に露出する。典型的かつ好ましくは、これらの残基は架橋剤分子との反応の際に誘導される。露出したリジン残基の全てが抗原にカップリングしていない場合、架橋剤と反応したリジン残基は、誘導工程の後にεアミノ基に付着した架橋分子とともに残る。これによって1又はいくつかの正電荷が消失し、VLPの溶解性および安定性に不利益となりうる。本発明者等は、開示されたQβコートタンパク質変異体のように、アルギニン残基が好適な架橋剤と反応しないので、いくつかのリジン残基をアルギニンへ置換することによって正電荷の過剰な消失を予防する。さらに、抗原との反応に利用可能な部位が少ないほど、アルギニン残基によるリジン残基の置換によりより多くの特徴的な抗原配列が生じる。
【0058】
したがって、露出したリジン残基は、以下のQβコートタンパク質変異体においてアルギニンによって置換された:Qβ-240(Lys13-Arg;配列番号:15)、Qβ-250(Lys2-Arg、Lys13-Arg;配列番号:17)、Qβ-259(Lys2-Arg、Lys16-Arg;配列番号:19)、及びQβ-251(Lys16-Arg;配列番号:18)。更なる実施態様では、本発明者等は、更に高密度の抗原アレイを得るために好適な、1つの付加的リジン残基Qβ-243を有するQβ変異コートタンパク質(Asn10-Lys;配列番号:16)を開示している。
本発明の好適な一実施態様では、本発明のVLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。更なる好適な一実施態様では、組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも一のポリ陰イオン性高分子を更に含有する。より更なる好適な実施態様では、ポリ陰イオン性高分子はポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸である。
【0059】
本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く:本明細書中で用いられる「本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く」なる用語は、VLPに含有される宿主RNA、好ましくは宿主の核酸の量を意味し、その量は典型的かつ好ましくは、VLPmg当たり30μgより少ない、好ましくは20μgより少ない、より好ましくは10μgより少ない、さらにより好ましくは8μgより少ない、さらにより好ましくは6μgより少ない、さらにより好ましくは4μgより少ない、最も好ましくは2μgより少ない。上記の範囲内で用いられる宿主は、VLPが組み換えて産生される宿主を意味する。RNA、好ましくは核酸の量を測定する従来の方法は当業者に周知である。本発明によって、RNA、好ましくは核酸の量を測定する典型的かつ好適な方法は、同じ指定代理人により2005年10月5日に出願したPCT/EP2005/055009の実施例17に記載される。典型的かつ好ましくは、Qβ以外のVLPを含んでなる本発明の組成物についてRNA、好ましくは核酸の量を測定するためには、同一、同種又は類似の条件を用いる。最終的に必要とされる条件の変更は当業者の知識の範囲内である。典型的かつ好ましくは、決定した量の数値は、示した数値の±10%の偏差、好ましくは±5%の偏差を有する値と比較して理解されるであろう。
【0060】
ポリ陰イオン性高分子:本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、陰性電荷の反復性基を含んでなる相対的に高い質量の分子を指すものであり、その構造は、実際のところ又は概念的には、相対的に低い質量の分子から得られるユニットの複数の繰り返しを基本的に含んでなる。ポリ陰イオン性高分子は、少なくとも2000のダルトン、好ましくは少なくとも3000のダルトン、そしてさらにより好ましくは少なくとも5000のダルトンの分子量を有するものである。本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくは、toll様レセプターを活性化することができない分子を指す。ゆえに、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくはToll様レセプターリガンドを除く、さらにより好ましくはさらに、免疫賦活性物質、例えばToll様レセプターリガンド、免疫賦活性核酸およびリポポリサッカリド(LPS)を除くものである。より好ましくは、本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、サイトカイン産生を誘導することができない分子を指す。さらにより好ましくは、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は免疫賦活性物質を除くものである。本明細書中で用いる「免疫賦活性物質」なる用語は、本発明中に含有される抗原に対して特異的な免疫応答を誘導及び/又は亢進することができる分子を指す。
【0061】
宿主RNA、好ましくは宿主の核酸:本明細書中で用いる「宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語、又は「二次構造を有する宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語は、宿主が本来合成するRNA又は好ましくは核酸を指す。しかしながら、RNA、好ましくは核酸は、典型的かつ好ましくは、本発明の方法による、RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去する工程の間に、化学的及び/又は物理的な変化が起こりうる。例えばRNA、好ましくは核酸の大きさが短くなったり、その二次構造が変化しうる。しかしながら、この結果として生じるRNA又は核酸でも、宿主RNA又は宿主核酸とみなす。
RNAの量を決定するための方法及びVLPによって包含されるRNAの量を減少する方法は、同じ指定代理人により2005年10月5日に出願したPCT/EP2005/055009に開示されており、その出願全体は出典明記によって本明細書中に援用される。RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去することにより、Fel d1に特異的な抗体応答が強いままで、炎症性T細胞応答及び障害性T細胞応答などの望ましくないT細胞応答や、発熱などの他の望ましくない副作用を最小限にするか、又は低減する。
【0062】
好適な一実施態様では、本発明は、a) 宿主により、少なくとも一の第一の付着部位を有するウイルス様粒子(VLP)を組み換えて産生し、このとき該VLPはRNA-バクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないし断片を含むものであり;b) 該ウイルス様粒子を、該RNA-バクテリオファージの該コートタンパク質、その変異体ないし断片に分解し;c) 該コートタンパク質、その変異体ないし断片を精製し;d) 該RNA-バクテリオファージの、該精製されたコートタンパク質、その変異体ないし断片を、ウイルス様粒子に再構築させ、このとき該ウイルス様粒子は、宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含有しないものであり;及びe) 工程(d)から得た該VLPに、少なくとも一の第二の付着部位を有する少なくとも一の抗原を結合させることを含む、本発明の組成物、及びRNA-バクテリオファージのVLP−Fel d1の調製方法であり、このとき該VLPは宿主によって組み換えて産生され、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸含まないものである方法を提供する。さらに好適な実施態様では、前記の精製されたコートタンパク質、その変異体ないし断片の再構築は、少なくとも一のポリアニオン系高分子の存在下で影響を受ける。
【0063】
好適な一実施態様では、本発明の組成物はさらに、免疫応答を誘導する及び/又は亢進することができる免疫賦活性物質を少なくとも一つ含有する。好ましくは、免疫賦活性物質はToll様レセプターリガンドであり、(a) 免疫賦活性核酸;(b) ペプチドグリカン;(c) リポポリサッカリド;(d) リポテイコ酸;(e) イミダゾキノリン化合物;(f) フラジェリン;(g) リポタンパク質;(h) 免疫賦活性有機分子;(i) 非メチル化CpG-含有オリゴヌクレオチド;及び(j) (a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の物質の混合物からなる群から選択されるのが好ましい。
更なる好適な実施態様では、免疫賦活性核酸は、(a) 細菌起源の核酸;(b) ウイルス起源の核酸;(c) 非メチル化CpGモチーフを含有する核酸;(d) 二本鎖RNA;(e) 一本鎖RNA;及び(g) 非メチル化CpGモチーフがない核酸、からなる群から選択されるのが好ましい。非メチル化CpGモチーフを含有しない免疫賦活性核酸は、例えば国際公開公報01/22972に開示されている。本明細書で用いられる「核酸」なる用語は、直線的に共有結合した単量体(ヌクレオチド)からなる分子を指す。これはヌクレオチドの分子鎖を表し、生成物の特定の長さを意味するものではない。したがって、オリゴヌクレオチドは核酸の定義の範囲内に包含される。ヌクレオチド間の結合は、典型的かつ好ましくはホスホジエステル結合である。結合の修飾を含有する核酸、例えばホスホロチオエート結合も本発明に包含されるものである。
【0064】
好適な一実施態様では、免疫賦活性物質は組み換えVLPと混合される。更なる他の好適な実施態様では、免疫賦活性物質は本発明のVLPに結合するか、好ましくはVLP内にパッケージ化される。
免疫賦活性物質、特に免疫賦活性核酸、より好ましくは非メチル化CpGを含有するオリゴヌクレオチドについては、国際公開公報03/024480、国際公開公報03/024481及びPCT/EP/04/003165に詳述されている。免疫賦活性物質とVLP-抗原を混合する方法は国際公開公報03/024480に開示されている。VLP内部に免疫賦活性物質をパッケージ化する方法は国際公開公報03/024481に開示されている。したがって、国際公開公報03/024480、国際公開公報03/024481及びPCT/EP/04/003165は出典明記によって本明細書中に援用される。一般的に、VLPは免疫系を誘導及び/又は亢進することができる。しかしながら、本明細書中の文脈で用いる「免疫賦活性物質」なる用語は、どちらかといえば前記VLPに加えて本発明の組成物に用いられるVLPでない免疫賦活性物質を指す。
【0065】
本発明の組成物内への免疫賦活性物質、好ましくは免疫賦活性核酸の包含は、Th1応答に対する免疫応答を制御して、それによってTh2応答を抑制しうる。
一態様では、本発明は本発明の組成物を含有してなるワクチンを提供する。一態様では、本発明は、本発明の組成物と好適なバッファを含有してなるワクチンを提供する。好適な一実施態様では、ワクチン組成物はさらに少なくとも一のアジュバントを含有する。少なくとも一のアジュバントの投与は、本発明の組成物の投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後であってもよい。本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、免疫応答の非特異的刺激因子、もしくは、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせるとより亢進した免疫応答を供給しうる、貯蔵物の宿主内での生成を可能にする物質を意味する。
【0066】
他の好適な実施態様では、ワクチン組成物はアジュバントを欠く。本発明の有利な特性は、アジュバントを含まない場合でさえ、組成物の免疫原性が高いことである。アジュバントを使用しないので、アジュバントの使用に関連する副作用の発生の頻度を減少しうる。よって、本発明のワクチンの患者への投与は、好ましくはワクチンの投与前、投与と同時、又は投与後に同じ患者に少なくとも一のアジュバントを投与することなく、なされるであろう。
さらに、本発明は、本発明のワクチンがヒト又はイヌやネコなどの非ヒト哺乳動物に投与されることを含む免疫化方法を開示する。理論的に本発明を限定することを意図するものではないが、本発明のワクチン組成物のネコへの投与はFel d1を中和して、それによってネコ唾液中のFel d1の量を減少しうる。
【0067】
ワクチンは、当分野で公知の様々な方法によって投与されてもよいが、通常、注射、注入、吸入、経口投与又は他の適切な理学的方法によって投与されうる。コンジュゲートは、選択的に、筋肉内、静脈内、粘膜経由、経皮、鼻腔内、腹膜内又は皮下投与されてもよい。投与のためのコンジュゲート成分は、滅菌水(例えば、生理食塩液)又は非水溶液及び懸濁液などである。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。担体又は密封包帯を、皮膚透過性を増やして、抗原吸収を上げるために用いてもよい。
【0068】
レシピエントの個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「薬剤的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。以下のメカニズムの説明によって本発明が限定されるものではなく、本発明のワクチンは、Fel d1に結合する抗体、おそらくIgGサブタイプを低減して、肥満細胞及び好塩基球へのIgE結合によって観察されるFel d1を阻害する。択一的又は同時に、本発明の組成物はTh1応答に対する免疫応答を制御して、Th2応答の発達とそれによるIgE抗体(アレルギー反応の主要な成分である)の産生を抑制する。
一態様では、本発明は、本発明で述べられる組成物と受容可能な製薬的担体を含有する薬剤組成物を提供する。本発明のワクチンが個体に投与される場合、コンジュゲートの有効性を改善するために望ましい他の物質、アジュバント、バッファ又は塩類を含有する形態でありうる。薬剤組成物の調整における使用に好適な材料の例は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Osol, A, 編集, Mack Publishing Co., (1990))を含む多くの情報源に示される。
【0069】
本発明は、本発明の組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であり、このときウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子である該コア粒子を供給する;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原であり、このときFel d1タンパク質ないしはFel d1断片である該抗原を供給する;そして(c) 該コア粒子と該少なくとも一の抗原を結合させて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して少なくとも一の該抗原と該コア粒子が結合している組成物を産生する、工程を含む産生方法を教示する。
更なる好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子を提供する工程は、(a) 該コア粒子を該コア粒子のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に分解して;(b) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製して;(c) 該精製された該コア粒子のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を再集合体化させる工程をさらに含むものであり、このときの該コア粒子は宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである。より更なる好適な実施態様では、前記の精製したコートタンパク質の再集合体化は、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子又は少なくとも一の免疫賦活性核酸の存在下にて影響を受ける。
【0070】
一態様では、本発明は、哺乳動物のネコアレルギーを予防及び/又は治療するための本発明の組成物の使用方法であって、このとき好ましくは該哺乳動物はヒト又はイヌである方法を提供する。
一態様では、本発明は、医薬としての本発明の組成物の使用を教示する。他の態様では、本発明は、哺乳動物のネコアレルギーの治療のための医薬の製造における本発明の組成物の使用であって、このとき好ましくは該哺乳動物はヒト又はイヌである使用を提供する。
一態様では、本発明は、一方の鎖のN末端と他方の鎖のC末端を連結するアミノ酸スペーサーによって融合したFel d1の鎖1とFel d1の鎖2を含んでなるFel d1融合タンパク質であって、該アミノ酸スペーサーが10〜30、好ましくは10〜25、好ましくは10〜20、好ましくは13〜20、好ましくは15〜20、好ましくは13〜17、好ましくは15〜17のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列からなり、該融合タンパク質が、(GGGGS)3を経て配列番号:23、25又は26の鎖2のN末端に融合した配列番号:22の鎖1を含んでなる融合タンパク質を除くものであり、ここで除いた融合タンパク質がバキュロウイルス発現系において発現されたものであるFel d1融合タンパク質を提供する。
【0071】
国際公開公報2004094639は、炭素-窒素結合と短ペプチド、すなわち1〜9、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3のアミノ酸から選択されるリンカーにより鎖1と鎖2を連結することによるFel d1融合タンパク質を開示している。更に、驚くべきことに、結合又は短ペプチドは有意な束縛(constrain)又はアンフォールディングを誘導しないことが述べられている。しかしながら、国際公開公報2004094639は9アミノ酸より長いリンカーを開示していない。
国際公開公報00/20032は、連続して発現され、グリシン/セリンリンカー(GGGGS)3により一つに連結される鎖1と鎖2を含んでなるバキュロウイルス発現組み換えFel d1を開示している。また、国際公開公報00/20032は、IgGとIgE抗体に対するrFel d1の免疫応答性がバキュロウイルス内でアレルゲンを発現させることによって、大腸菌内で発現させたアレルゲンと比較して飛躍的に改善されたことを報告した。
【0072】
本発明のFel d1融合タンパク質は、原核細胞の発現系又は真核細胞の発現系の何れか、例えばバキュロウイルス系において産生することができる。好適な一実施態様では、本発明の前記Fel d1融合タンパク質は大腸菌から産生される。
好適な一実施態様では、本発明のFel d1融合タンパク質に含有されるスペーサーは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列からなる。
好適な一実施態様では、Fel d1融合タンパク質に含有されるスペーサーは、2、3又は4回のGGGGSリピートを有するアミノ酸配列からなる。
好適な一実施態様では、Fel d1の鎖2は本発明の融合タンパク質のN末端にある。
【0073】
他の好適な実施態様では、Fel d1の鎖1は本発明の融合タンパク質のN末端にある。更に好適な一実施態様では、融合タンパク質は大腸菌から産生される。
とても好適な一実施態様では、本発明のFel d1融合タンパク質は、(a) 配列番号:54;(b) 配列番号:55;及び(c) 配列番号:57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。更に、本発明は、本発明のFel d1融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。好適な一実施態様では、本発明は、(a) 配列番号:54;(b) 配列番号:55;及び(c) 配列番号:57からなる群から選択される本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。更に好適な実施態様では、本発明のFel d1融合タンパク質は大腸菌から産生される。更に好適な一実施態様では、本発明のFel d1融合タンパク質は、配列番号:57のアミノ酸配列を含むか、これからなり、本発明の該融合タンパク質が大腸菌から産生されるものである。
一態様では、本発明は、ネコアレルギーの診断と治療のための本発明のFel d1融合タンパク質の使用を提供する。
【実施例】
【0074】
実施例1 結果として再集合体化したQβ VLPが生じる、異なるポリ陰イオン性高分子の存在下における分解/再集合体化による本発明のQβ VLPの調製
(A) 従来のQβ VLPの分解
大腸菌溶解物から精製した、PBS(20mM リン酸塩、150mM NaCl、pH7.5)中の45mgの従来のQβ VLP(2.5mg/ml、Bradford分析によって測定)を10mM DTTにて還元して、撹拌しながら室温に15分間置いた。次いで、塩化マグネシウムを0.7Mの終濃度まで添加し、撹拌しながら室温でさらに15分間インキュベートを続け、カプセル化された宿主細胞RNAを沈殿させた。溶液を4000rpm、4℃で10分間遠心して(Eppendorf 5810 R、以下のすべての工程で固定角ローターA-4-62を用いた)、溶液から沈殿されたRNAを取り除いた。放出された二量体Qβコートタンパク質を含有する上清をクロマトグラフィの精製工程に用いた。
【0075】
(B) 陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィによるQβコートタンパク質の精製
二量体コートタンパク質、宿主細胞タンパク質及び残渣の宿主細胞RNAを含有する分解反応の上清を水で1:15に希釈して10mS/cm以下の伝導率に調整し、SP-セファロースFFカラム(xk16/20, 6 ml, Amersham Bioscience)に流した。カラムは、20mM リン酸ナトリウムバッファ pH7にて予め平衡化した。結合したコートタンパク質は、20mM リン酸ナトリウム/500mM 塩化ナトリウムの勾配法により溶出させ、タンパク質は約25mlの分画容量に回収した。室温で5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nm及び280nmの吸光度をモニターした。
第二工程では、単離したQβコートタンパク質(陽イオン交換カラムから溶出された分画)をセファクリルS-100HRカラム(xk26/60, 320 ml, Amersham Bioscience)に流し(2列)、20mM リン酸ナトリウム/250mm 塩化ナトリウム、pH6.5にて平衡化した。室温で2.5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nm及び280nmの吸光度をモニターした。5mlの分画を回収した。
【0076】
(C1) 透析によるQβ VLPの再集合体化
精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に2.2mg/ml)、1のポリ陰イオン性高分子(水中に2mg/ml)、尿素(水中に7.2M)及びDTT(水中に0.5M)を、終濃度、コートタンパク質 1.4mg/ml、各々のポリ陰イオン性高分子 0.14mg/ml、尿素 1M及びDTT 2.5mMに混合した。混合物(各々1ml)を、3.5kDaのカットオフのメンブランを用いて20mM トリスHCl、150mM NaCl pH8にて5℃で2日間透析した。ポリ陰イオン性高分子は以下の通りであった:ポリガラクツロン酸(25000-50000, Fluka)、硫酸デキストラン(MW 5000及び10000, Sigma)、ポリ-L-アスパラギン酸(MW 11000及び33400, Sigma)、ポリ-L-グルタミン酸(MW 3000、13600及び84600, Sigma)、及びパン酵母と小麦麦芽由来のtRNA。
【0077】
(C2) 透析濾過(ダイアフィルトレーション)によるQβ VLPの再集合体化
33mlの精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5、250mM NaCl中に1.5mg/ml)を、水及び尿素(水中に7.2M)、NaCl(水中に5M)及びポリ-L-グルタミン酸(水中に2mg/ml、MW: 84600)と混合した。混合物の容量は50mlであり、成分の終濃度はコートタンパク質 1mg/ml、NaCl 300mM、尿素 1.0M及びポリ-L-グルタミン酸 0.2mg/mlであった。次いで、混合物を室温で、500mlの20mM トリスHCl pH8、50mM NaClにて透析濾過した。この透析濾過は、10ml/分の交差流速と2.5ml/分の透過流速で、Pellicon XL薄膜カートリッジ(Biomax 5K, Millipore)を用いた正接流量濾過装置(tangential flow filtration apparatus)にて行った。
【0078】
実施例2 AP205 VLPのインビトロ集合体化(アセンブリ)
(A) AP205コートタンパク質の精製
分解:20mlのAP205 VLP溶液(PBS中に1.6mg/ml、大腸菌抽出物から精製)を、0.2mlの0.5M DTTと混合し、室温で30分間インキュベートした。5mlの5M NaClを添加して、次いで混合物を60℃で15分間インキュベートし、DTT還元コートタンパク質を沈殿させた。混濁した混合物を遠心分離し(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)、上清を廃棄し、ペレットを、20mlの1M 尿素/20mM クエン酸ナトリウム pH3.2に播種した。室温で30分間撹拌した後、1.5M NaHPOを加えることによって、pH6.5にばらつきを調整し、その後遠心分離して(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)、二量体コートタンパク質を含む上清を得た。
陽イオン交換クロマトグラフィ:上清(上記参照)を20mlの水で希釈して、約5mS/cmの伝導率を調整した。結果として生じた溶液を、20mM リン酸ナトリウム pH6.5バッファにて予め平衡化した6mlのSPセファロースFF (Amersham Bioscience)のカラムに流した。流した後、カラムを48mlの20mM リン酸ナトリウム pH6.5のバッファにて洗浄し、その後、20倍のカラム容量の1M NaClに対する直線的勾配法により結合したコートタンパク質の溶出を行った。メインピークの分画をプールし、SDS-PAGE及びUV分光法にて分析した。SDS-PAGEによると、単離したコートタンパク質は本質的に他のタンパク質混入がなく純粋であった。UV分光法によると、タンパク質濃度は0.6mg/ml(総量12mg)であり、1A280単位はAP205コートタンパク質の1.01mg/mlを表す。さらに、A260(0.291)の値に対してA280(0.5999)の値は2であることから、調製物は本質的に核酸を欠いていることが示唆される。
【0079】
(B) AP205 VLPの集合体化
任意のポリ陰イオン性高分子のない条件下における集合体化:上記で溶出されたタンパク質分画を透析濾過し、20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に1mg/mlのタンパク質濃度にまでTFFによって濃縮した。その溶液の500μlを、50μlの5M NaCl溶液と混合し、室温で48時間インキュベートした。混合物中での再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。20mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl pH7.2にて平衡化したTSKgel G5000 PWXLカラム(Tosoh Bioscience)をHPLC分析に用いた。
ポリグルタミン酸存在下における集合体化:375μlの精製したAP205コートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に1mg/ml)を、50μlのNaCl貯蔵溶液(水中に5M)、50μlのポリグルタミン酸貯蔵溶液(水中に2mg/ml、MW: 86400, Sigma)及び25μlの水と混合した。混合物を室温にて48時間インキュベートした。混合物中における再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。混合物中のコートタンパク質がVLP内にほぼ完全に組み込まれたことから、任意のポリ陰イオン性高分子がない条件下で集合体化したAP205コートタンパク質より効率よく、多く集合体化されたことが示された。
【0080】
実施例3 Fel d1融合タンパク質のクローニング
Fel d1の鎖1と鎖2のそれぞれをコードする遺伝子を、以下に示す重なり合うDNAプライマーを用いたPCR増幅によって作製した。フォワード(F)とリバース(R)プライマーを示す。pCRII-TOPOベクター(Invitrogen)に断片をライゲーションして、XL1-ブルー内に形質転換させた。Fel d1の鎖1と鎖2のインサートを配列確認した。
プライマー配列1F:配列番号34;
プライマー配列2R:配列番号35
プライマー配列3F:配列番号36
プライマー配列4R:配列番号37
プライマー配列5F:配列番号38
プライマー配列6R:配列番号39
プライマー配列7F:配列番号40
プライマー配列8R:配列番号41
プライマー配列9F:配列番号42
プライマー配列10R:配列番号43
【0081】
Fel d1融合コンストラクト:
FELD1は鎖2がN末端で鎖1に直接融合しているタンパク質を指す。FELD1をコードするヌクレオチド配列は、プライマー11リンカー(配列番号44)を用いたスプライシングオーバーラップ伸長(SOE)PCRによって作製した。
FD12は鎖1がN末端で鎖2に直接融合しているタンパク質を指す。FD12をコードするヌクレオチド配列は、プライマー12-1(配列番号45)、12-3(配列番号46)及び12-2-1(配列番号47)を用いたスプライシングオーバーラップ伸長(SOE)PCRによって作製した。
【0082】
FELD1-10aaとFELD1-15aaは、10(GGGGS)2又は15(GGGGS)3のアミノ酸スペーサーのそれぞれを介して鎖2のN末端が鎖1のC末端に融合しているタンパク質を指す。FELD1をコードするヌクレオチド配列を含有するプラスミドを鋳型として用いて、インバースPCR突然変異誘発(IPCRM)により10アミノ酸又は15アミノ酸スペーサーを作製した。1-15スペーサーのために、2つのプライマー(プライマー1-10aa、配列番号48とプライマー2-5aa、配列番号49)を用いた。1-10スペーサーのために、2つのプライマー(プライマー1-5aa、配列番号50とプライマー2-5aa)を用いた。結果として得られたPCR断片をライゲーションによって環状化した。これは、メチル化したアデニンを含有する配列しか認識しないDpnI消化に耐性があるのに対して、プラスミド鋳型はDpnIによって消化した。
FD12-10aaとFD12-15aaは、10(GGGGS)2又は15(GGGGS)3のアミノ酸スペーサーのそれぞれを介して鎖1のN末端が鎖2のC末端に融合しているタンパク質を指す。FD12-10aaとFD12-15aaは上記と同様に作製した。15アミノ酸スペーサーのために、プライマーFD2-10aa(配列番号51)とプライマーFD1-5aa(配列番号52)を用いた。10アミノ酸スペーサーのために、プライマーFD1-5aaとプライマーFD2-5aa(配列番号53)を用いた。
【0083】
実施例4 Hisタグ付加Fel d1融合タンパク質の細菌性発現と精製
実施例3に記載の様々なFel d1融合コンストラクトをコードするヌクレオチド配列を、プラスミドpET-42a(+)(Novagen)から修飾したT7ベースの発現系pET-42T(+)にサブクローニングした。融合コンストラクトのC末端は、第二付着部位としてシステインを含有するアミノ酸リンカーであるGGCが続くHis-タグ配列に融合した。結果として得たコンストラクトは、終わりに「-HC」を付加して称した。
FELD1-HC、FELD1-10aa-HC及びFELD1-15aa-HC及びFD12-15aa-HCを以下のように発現させて、精製した。プラスミドをBL21(DE3)に形質転換した。1mMのIPTGをおよそ1のOD600の培養物に加えることによって発現を誘導した。培養物を、20℃で更に20時間生育して、回収して、未変性溶解バッファ(50mM NaHPO、300mM NaCl、10mM イミダゾール pH8.0)中での超音波処理によって溶解した。
澄んだ細菌溶解物を、未変性溶解バッファを含む50mlに移した。5mlのニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)アガロース(Qiagen)を加え、溶解物を4℃で1時間インバートすることによって、インキュベートした。
非特異的に結合したタンパク質は、未変性溶解バッファにて4回洗浄することによって、除去した。結合したタンパク質は、2mlの溶出バッファ(50mM NaHPO、300mM NaCl、250mM イミダゾール pH8.0)にNi-NTAアガロースを再懸濁することによって溶出した。
【0084】
実施例5 精製したFel d1融合タンパク質の酸化性フォールディングのジスルフィド結合
Ni2+-親和性精製したFELD1-HCは15kD〜20kDの様々な混合ジスルフィド架橋種からなる。1:1のモル比の酸化型グルタチオン(GSSG, Applichem)と還元型グルタチオン(GSH, Applichem)によるジスルフィド結合を分子内で改変することによって、FELD1-HCは自然に折りたたまれる。室温で、2.5mMのGSSGと2.5mMのGSHを加えることによって、溶離バッファにてFELD1の溶出をした後すぐに24時間反応させた。再び折りたたまれたFELD1-HCは、非還元条件下で15kDの分子量の単一バンドを示す(図1、第一パネル、レーン2)。FELD1-HCの潜在的な遊離スルフヒドリル基を、ヨードアセトアミド(Sigma)を用いてアルキル化した。プローブは、pH8.0の20mM 炭酸水素アンモニウム中の5mM ヨードアセトアミドにて、室温で15分間処理した。
再フォールディングしたFELD1-HCは、PBSにて平衡化したサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)(Superdex 75 pg, Amersham Pharmacia Biosciences)によって、均一になるまでさらに精製した。
【0085】
FELD1-10aa-HC及びFELD1-15aa-HCは、上記と実質的に同じ方法で再生させた(図1、2つの真ん中のパネル)。
10:1のモル比の酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンによるジスルフィド結合を改変することによって、FD12-15aa-HCは同様に自然にフォールディングされる。溶出の後、FD12-15aaは、FD12-15aa再フォールディングバッファ(50mM Tris-Cl pH8.5、240mM NaCl、10mM KCl、1mM EDTA、0.05% PEG3,550、1mM GSH、0.1mM GSSH)にて20倍に希釈して、4℃で24時間インキュベートした。再フォールディングしたFD12-15aaは、23kDで流れる還元型と比較して20kDの分子量の単一バンドを示す(図1、最後のパネル)。
【0086】
実施例6 エピトープ特異的モノクローナル抗体により認識されるFel d1融合タンパク質
エピトープ特異的モノクローナル抗体(mAB)に対する天然のFel d1(nFel d1)と比較したときのFel d1融合タンパク質の結合は、Indoor biotechnologies (Cardiff, UK)のFel d1 ELISAキット(6F9/3E4)を用いたサンドイッチELISAで測定した。
簡単に言うと、2mg/mlの原液として調整した抗Fel d1 mAB 6F9を、50mM 炭酸-炭酸水素バッファpH9.6にて1:1000に希釈した。マイクロタイターウェルを、1ウェル当たり100μlの希釈したmAB 6F9にてコートした。PBS-0.05%Tween20(PBS-T)にてプレートを3回洗浄して、100μlのブロッキングバッファ(PBS-T中に1%BSA(Sigma))にてブロックした。次いで、マイクロタイターウェルを、80〜0.16ng/mlの倍加希釈法を用いた100μlのFel d1融合タンパク質又はnFel d1標準物質(Indoors technologies、 UK)とともに1時間インキュベートした。nFel d1参照物質は、13.47U/mlのFel d1(1単位=4mgタンパク質)を含有するCBERネコ鱗屑参照物質E10からサブ標準化した。
【0087】
次いで、プレートを洗浄し、100μlの希釈して(1%BSA/PBS-Tにて1:1000)ビオチン化した抗Fel d1 mAB 3E4抗体を添加して、室温で1時間インキュベートした。プレートは、100μlの希釈した(1%BSA/PBS-Tにて1:1000)ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Sigma S5512、1mlの蒸留水にて再構成される0.25mg)を用いたPBS-Tにて3回洗浄した。室温で30分インキュベーションした後、ウェルをPBS-Tにて3回洗浄した。OPD基質溶液と停止溶液として5%のHSOを用いて検出を行った。吸光度は、450nmのELISA読み取り機(BioRad)を用いて測定し、相加平均と平均値の標準誤差(SEM)の計算のためにEXCELソフトウェア(MS Office、Microsoft)を用いた。結果を表1に示す。したがって、エピトープ特異的mABによるFel d1融合タンパク質及びnFel d1の認識は、両方のタンパク質の抗原性の高い類似性を表すものである。
表1

【0088】
実施例7 Qβ由来のVLPへのFel d1融合タンパク質のカップリング
HEPESバッファ(20mM HEPES、150mM NaCl pH7.2)中の143μMのQβ VLPの溶液を、5倍モル過剰(715μM)のSMPH(Pierce)と25℃で30分間、振とうしながら反応させた。SMPHは、ジメチルスルホキシドに溶解した50mMの貯蔵物から取り出した。反応生成物は、10,000のDa分子量カットオフ(Slide-A-Lyzer, Pierce)による透析ユニットを用いて2回交換したPBSに対して透析した。反応混合物に対して1000倍より多い過剰なバッファにて4℃又は室温で透析を行った。
SMPH誘導体化Qβ VLPへFel d1融合タンパク質をカップリングする前に、実施例5から得られたFELD1、FELD1-10aa、FELD1-15aa及びFD12-15aaのそれぞれを、等モル量のTCEP(Pierce, Perbio Science)とともに室温で30分間インキュベートした。
Fel d1融合タンパク質を、143μMのSMPH誘導体化Qβ VLPに5倍モル過剰で加えた。反応容量は650μlであり、複数の反応を平行して行った。反応は、振とうしながら室温で4時間インキュベートした。カップリングの後、一定量を16000×gで4℃で3分間遠心分離して、不溶性物質をペレット化した。上清を新鮮なチューブにプールした。Qβ VLPへのFel d1融合タンパク質のカップリングを、還元SDS-PAGEによって評価した。
再集合体化したQβ VLP(実施例1から得たもの)に対するFel d1融合タンパク質のカップリングは、上記と実質的に同様である。
【0089】
実施例8 HBcAg1-185-LysへのFELD1、FELD1-15aa及びFD12-15aaのカップリング
HBcAg1-185-Lysの構築、その発現及び精製は、国際公開公報03/040164の実施例2〜5に実質的に記載されている。20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中の120mMのHBcAg1-185-Lys VLPの溶液は、原液からDMSOで希釈した25倍モル過剰のSMPH(Pierce)と25℃で30分間、振とう器を揺らしながら反応させた。次いで、反応溶液を1Lの20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.2に対して4℃で2時間、2回透析した。
次いで、透析したHBcAg1-185-Lys反応混合物は、実施例5で得た組み換えFel d1と反応させた。カップリング反応において、FELD1、FELD1-15aa及びFD12-15aaは、それぞれ、誘導体化したHBcAg1-185-Lys VLPに対して2倍のモル過剰量とした。カップリング反応は25℃で4時間、振とう器を揺らしながら行った。
【0090】
実施例9 AP205由来のVLPへのFELD1、FELD1-15aa及びFD12-15aaのカップリング
AP205 VLPの調製は、国際公開公報2004/007538の実施例1及び2に記述された。AP205 VLPの誘導体化はQβ VLPについての実施例7の記載と実質的に同じである。SMPH誘導体化AP205VLPへFel d1融合タンパク質をカップリングする前に、実施例5から得られたFELD1、FELD1-15aa及びFD12-15aaのそれぞれを、等モル量のTCEP(Pierce, Perbio Science)とともに室温で30分間インキュベートした。
Fel d1融合タンパク質を、143μMのSMPH誘導体化AP205VLPに5倍モル過剰で加えた。反応は、振とうしながら室温で4時間インキュベートした。
再集合体化したAP205VLP(実施例2から得たもの)へのFel d1融合タンパク質のカップリングは、実質的に上記したものと同様である。
【0091】
実施例10 発明した組成物に基づくバクテリオファージQβの産生
大腸菌AB259(5×10細胞/ml)の601培養物を、強いエアレーション(1容量の空気/培養単位の容量)の下で、37℃で2〜3時間生育し、およそ2〜4×10細胞/mlの培養物を得た。澄んだQβファージ溶解物を5の感染の多様性で接種し、CaCl2を終濃度2.2mMにまで加えた。5分の接着段階の後、空気飽和を強めた(1.5容量の空気/培養単位の容量)。OD650nmが安定値に達し、培養物中に4〜6×1012のファージ粒子を産生するまで、細胞を3時間さらに生育した。これらは以下の通りに精製した。大腸菌は、1培養物につきCHCl 10ml、1培養物につきライソザイム 0.1mg及び終濃度20mMのEDTAを加えることによって溶解した。溶解物は冷やしたflow-through遠心機の遠心によってクリアにし、ファージ粒子を硫酸アンモニウム沈殿(500g/l、約66%の飽和を得る)によって溶解物から沈殿させた。懸濁液をまず別の容器へ移し、W.R.ローター6×500mlのJanetzki K26遠心機にて6000回転数/分、又は、JA-10ローターのBeckman J21 C遠心機にて30分間遠心して沈殿物を単離した。ペレットを、NTバッファ(0.15M NaCl、0.1%トリプトン)に再可溶化して、遠心によりクリアにした。上清を、硫酸アンモニウム(500g/l添加、約66%の飽和)によって沈殿した。遠心によって、沈殿物を単離して、NTバッファに再可溶化して、遠心によって再びクリアにした。Beckman type 35ローターを用いて、32000回転数/分で3.5時間超遠心分離して、結果として生じた上清からファージ粒子を単離した。沈殿したファージをNTバッファに再懸濁して、従来の連続的なCsCl勾配法にあたる超遠心分離によって精製した。Beckman Ti-70(8×38.5)ローターを用いて55000回転数/分で20時間遠心を行った。次いで、実施例7に記載のように、ファージ粒子を20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4バッファに対して透析して化学的架橋処置に用いた。
【0092】
実施例11 発明した組成物に基づくGAファージの調製
2%カゼイン加水分解物、0.5%酵母抽出物、0.2%グルコースを含有するM9培地中の12lの大腸菌Q13HfrRNASseI培養物を0.6〜0.7のOD540nmまで生育した。これはおよそ2×10細胞/mlに一致し、10〜20の感染の多重性でGAファージを感染させた。培養物を、全培養物中におよそ1011のファージ粒子が得られるように、37℃でさらに2.5〜3時間生育した。細胞は、1〜2v/v%のCHClを加えて、15分間培養物をインキュベートすることによって溶解した。溶解物は、Janetzi K26ローターにより5000回転数/分で30分間遠心することによって浄化した。硫酸アンモニウム(60%の飽和)によって、ファージ粒子を培養物から4℃で数日間かけて沈殿した。
【0093】
まず、懸濁液を別の容器へ移し、Janetzki K26ローターにて6000回転数/分で30分間遠心して、沈殿物を単離した。ペレットをNET (20mM Tris pH7.8、150mM NaCl、5mM EDTA)バッファに再懸濁して、数回の遠心によって粒子を抽出して、わずかなNETバッファに再懸濁した。キャプシドを含有する一部をプールして、60%の硫酸アンモニウムによって沈殿した。NETバッファに再懸濁した粒子をセファロース4Bカラムにて3回精製して、その後2のショ糖勾配にて精製した。簡単に言うと、遠心チューブにNETバッファ中に7mlの50w/w%、7mlの43w/w%、7mlの36w/w%、7mlの29w/w%及び7mlの22w/w%のショ糖によって勾配を調製した。ファージ溶液(NETバッファ中)を勾配の上に重ね、Beckman SW 28ローターを用いて25000回転数/分で17時間遠心分離した。キャプシドを含有する分画をプールして、セファロース4Bカラムによるゲル濾過によってショ糖から分離した。その後、ファージ粒子を水に対して透析して、更なる使用のために凍結乾燥した。
バクテリオファージQβ又はGAへのFel d1融合タンパク質のカップリングの条件は、実施例7で開示したように、QβのVLPへのカップリング条件と実質的に同じである。
【0094】
実施例12 マウスにおいて免疫原性の高いQβ-Fel d1融合タンパク質
BALB/cマウスを、50μgの実施例7から得たQβ-FELD1又は、50μgの組み換えFel d1(実施例5から得たもの)と混合したQβを0日目、14日目及び21日目に皮下投与して免疫化し、0日目、21日目及び28日目に血液を採取した。Fel d1特異的抗体は、コーティング(10μg/ml)にFELD1を用いたELISAで測定した。簡単に言えば、10μg/ml FELD1を含む0.1M NaHCO3 pH9.6にて4℃で終夜かけて予めコートした96ウェルF96を用いた。プレートをPBS-Tween20にて4回洗浄し、プレートをブロッキングバッファ(2%BSA(Sigma)を含むPBS-Tween20)中で37℃、2時間インキュベートすることによってバックグラウンドを減らした。血清を血清希釈バッファ(2%BSA、1%FCSを含むPBS-Tween20)にて希釈した。2倍の希釈工程を経て、ELISAプレート振とう器上で室温で2時間インキュベートした。プレートを5回洗浄して、1:1000に希釈した検出抗体(抗マウスIgG HRPOカップリング(Sigma))を室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tween20にて5回洗浄して、OPD基質溶液(25ml当たり8mlの30%H(Fluka)と10mgのOPD(Fluka)を含有する0.035M クエン酸pH5.0、0.066M NaHPO)と、停止溶液としてHO中の5%HSOを用いて検出を行った。吸光度は、450nmのELISA読み取り機を用いて測定し、相加平均と平均値の標準誤差(SEM)の計算のためにEXCELソフトウェア(Microsoft)を用いた。
Qβ-FELD1免疫マウスは、21日目及び28日目のそれぞれで120,000及び75,000の最大半減の吸光度を示した。交差結合しないQβ/FELD1混合物にて免疫化したマウスと比較すると、21日目及び28日目のそれぞれで7000及び6000の低力価を有した。
【0095】
実施例13 アジュバントとしてのミョウバンによるマウスの免疫化
7〜8週齢の雌Balb/cマウスに、50μgの従来のQβVLP-FELD1-HCにて3回(0日目、14日目及び28日目)ワクチン接種した。ワクチンはそれぞれ、200μlの滅菌PBS又は100μlのPBSと100μlのAluGel-S(Serva)に希釈して、左右の鼠径部に皮下注射した。
14日目、21日目、28日目、42日目、56日目、84日目及び112日目に血清を採取した。天然のFel d1、FELD-HC及びQβ VLPに対して特異的な抗体をELISAで測定した。
マイクロタイタープレートを、1mg/mlの天然のFel d1(nFel d1、Indoors biotechnologies)、10mg/mlのFELD1-HC及び10mg/mlのQβ VLPそれぞれにて終夜をかけてコートした。洗浄して(0.05%Tween20/PBS)2%BSAを含有するPBSにてブロックした後、2%BSA/1%FCS/PBSで様々に希釈した血清を加えた。
その後、標準的な方法によって、ELISAを行った。Qβ VLP-FELD1-HCワクチンは、天然のFELD1及びFELD1に対して持続性のあるFeld1高特異的抗体応答を誘導した。抗体価は、ミョウバンがない場合よりもミョウバンがある場合により高かった(表2)。
【0096】
表2

【0097】
実施例14 インビトロでアレルギー誘発能を大幅に減弱するQβにカップリングしたFELD1
インビトロでのアレルギー性反応を誘発するQβ-FELD1-HCの能力を試験するために、3人のネコアレルギー性ドナーの血液から好塩基球を単離した。ネコアレルギー個体において、これらの好塩基球はFeld1特異的IgEにてコートされ、アレルギー刺激に対するCD63の上方制御に応答する。ゆえに、アレルギー性個体の好塩基球は段階的な量のQβ-FELD1-HC又はFELD1-HC単独にて刺激して、CD63の上方制御をフローサイトメトリによって評価した。FELD1-HC(実施例5から得たもの)が試験される最も低希釈のCD63(およそ0.2ng/ml)の上方制御を強く誘発したのに対して、Qβ-FELD1-HC(実施例7から得たもの)は大幅にアレルギー誘発能を減弱して、好塩基球が応答するために100〜1000倍の量(およそ70ng/ml)のFELD1-HCを必要とした。
同様に、融合タンパク質FELD-15aa-HC及びFD12-15aa-HCを単独又はQβとカップリングさせたものの何れかについてもこの試験を繰り返した。結果を図2に示す。Qβにカップリングさせた場合、これらのFel d1融合タンパク質はすべてアレルギー誘発能を大幅に減弱した。
【0098】
実施例15 アレルギー性個体において皮膚プリック反応を誘発しないQβにカップリングしたFELD1
アレルゲンによりアレルギー性個体の皮膚に印(プリック)が生じた場合、皮膚に存在するマスト細胞の活性化によりおよそ20分以内に局所の浮腫が生じる。ここで、皮膚テストを行って、Qβ-FELD1-HC(実施例7から得たもの)のアレルギー誘発能を決定した。段階的な量のQβ-FELD1-HC又は対応する量のFELD1-HC(実施例5から得たもの)をネコアレルギー性個体の皮膚に投与して、20分後の皮膚反応を評価した。FELD1-HCが100分の1以下の濃度で活性化したのに対して、Qβ-FELD1-HCは皮膚反応を誘発することができなかった(表3)。
表3 対応する量のFELD1-HCは両方の調製物に存在した。

【0099】
実施例16 皮膚プリック試験反応を減弱するQβ-FELD1-HCによるアレルギー性個体の免疫化
臨床症状を寛解するQβ-FELD-HCの能力を試験するために、ネコアレルギーを患っている患者を、0日目にQβ-FELD1-HC(実施例7から得たもの)17μg(2、5及び10μgの3回注射)、7日目に40μg(10、10及び20μgの3回注射)及び14日目に50μg(10及び40μgの2回注射)によってワクチン接種した。0、14及び21日目に標準化されたネコ抽出物によって皮膚プリック試験を行い、中心の腫脹反応の直径を定量化した(図3)。3週間以内に、皮膚プリック試験において、臨床症状を誘発するためには、プリックテストの症状を誘発するために十分な初期量より1000倍高いアレルゲン濃度が必要であった。
【0100】
実施例17 鼻吸入誘発試験におけるアレルギー症状を減弱するQβ-FELD1-HCによるアレルギー性個体の免疫化
臨床症状を寛解するQβ-FELD1-HCの能力を試験するために、ネコアレルギーを患っている患者を、0日目にQβ-FELD1-HC(実施例7から得たもの)17μg(2、5及び10μgの3回注射)、7日目に40μg(10、10及び20μgの3回注射)及び14日目に50μg(10及び40μgの2回注射)によって、ワクチン接種した。0、14及び21日目に標準化されたネコ抽出物によって鼻吸入誘発試験を行い、各漸増レベルでの臨床症状を評価し(図4A)、全体のアレルギー性評価を行った(図4B)。3週間以内に、臨床症状を誘発するためには100〜1000倍高いアレルゲン濃度が必要であり、全体のアレルギー評価は非常に減弱した。
【0101】
実施例18 Qβ VLPへの免疫賦活性核酸の封入
Qβの分解して精製したコートタンパク質は、実施例1(A)及び(B)に記載のように入手した。再集合化:β-メルカプトエタノールを終濃度10%で10mlの二量体分画に加え、12.3nmolのオリゴヌクレオチドを含有する300μlの(CpG)20OpAオリゴデオキシヌクレオチドの溶液を加えた。再集合化混合物は、まず、10%のβ-メルカプトエタノールを含有する30mlのNETバッファ(5mM EDTA及び150mM NaClを含む20mM Tris-HCl、pH7.8)に対して4℃で2時間透析し、次いで、8ml/時のNETバッファの流量で連続様式で4℃で4日間透析した。次いで、再集合化混合物は、6回のバッファ交換(4×100ml、2×1リットル)をしながら、透析によって水に対して脱塩した。
内部に封入したCpGを有するQβ VLPへのFel d1融合タンパク質のカップリングは、実施例7の記載と実質的に同様に行った。
【0102】
実施例19 インビトロで好塩基球の脱顆粒化を誘導するFel d1融合タンパク質のFel d1特異的血清による阻害
脱顆粒化を阻害する抗Fel d1特異的IgGの能力を試験するために、アレルギー性個体の好塩基球を、Qβ-FELD1-HC予防接種ウサギから単離した漸減量のIgGの段階希釈物とともに予めインキュベートした一定量のFELD1-HC又はFELD1-15aa-HCによって、刺激した。CD63の上方制御はフローサイトメトリによって評価した。抗Fel d1 IgGはすべての試験した濃度でFel d1誘導性の脱顆粒をブロックしたのに対して、コントロールIgGは全く作用を示さなかった(表4)。
表4

【0103】
実施例20 Qβ-FELD1-HCによるFel d1アレルギー性マウスの免疫化
マウスのアレルギー性気道炎症の実験的喘息モデルを用いて、BALB/cマウスの血清及びBAL(気管支肺胞洗浄)中のIgE抗体応答に対する天然のアレルゲンFel d1に対するワクチン接種の影響を評価する。1グループにつき5匹のマウスを、0日目に1μgの天然のFel d1を含むAlumGel-Sによって、経腹膜的に感作した。35日目及び49日目に50μgのQβ単独又は、50μgのQβ-FELD1-HCの何れかをマウスの皮下にワクチン接種して、63日目及び70日目に2回の鼻腔内抗原投与を行った。最後の鼻腔内抗原投与の5日後に、マウスを屠殺して、ELISAによる体液性免疫(IgEサブクラス力価)の分析のために血清及びBALF(気管支肺胞洗浄液)を採取した。
ELISAプレートは、炭酸バッファで希釈したラット抗IgE mAb(2ug/ml)にて4℃で終夜をかけてコートした。2時間のPBS/5%BSAによって、プレートをブロックした後に、プレートは、感作してワクチン接種して抗原投与したマウスの血清(第一ウェルでは1:100に予め希釈、次いで8工程にわたって1:3に希釈)又はBAL(第一ウェルは純粋なBAL、次いで8工程にわたって1:3に希釈)の何れかによって、さらに2時間インキュベートした。2時間の試料のインキュベーションの後、血清及びBAL-IgEが、基質OPDによる検出に先立って、ラット抗マウスIgE-HRP標識抗体により検出された。
【0104】
表5

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】クーマシー染色した精製して再生させたFel d1融合タンパク質をSDS-PAGE非還元ゲル上に表す。レーン1の試料は還元剤としてDTTを含む。レーン2の試料はDTTを含まない。
【図2】Fel d1融合タンパク質単独又はQβにカップリングしたFel d1融合タンパク質の何れかによる好塩基球の脱顆粒化を示す。X軸は対応するFel d1タンパク質の濃度を表す。Y軸は脱顆粒化している好塩基球の割合を表す。
【図3】0日目、7日目及び14日目にQβ-FELD1を投与したネコアレルギー被検者の皮膚プリック試験結果を示す。また、試験は0日目、14日目及び21日目に行った。
【図4】0日目、7日目及び14日目にQβ-FELD1を投与したネコアレルギー被検者の鼻用量漸増スコア(図4A)と鼻の全体的なスコア(図4B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であって、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子であるコア粒子;と
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原;
とを含んでなる組成物であって、該少なくとも一の抗原がFel d1タンパク質ないしはFel d1断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して共有結合している、組成物。
【請求項2】
前記Fel d1タンパク質がFel d1の鎖1とFel d1の鎖2とを含んでなり、少なくとも一の共有結合を介して該Fel d1の鎖1が該Fel d1の鎖2に結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Fel d1のタンパク質がFel d1の鎖1とFel d1の鎖2とを含んでなる融合タンパク質であり、該Fel d1の鎖1と該Fel d1の鎖2が一ペプチド結合を介して直接又はスペーサーを介して融合して、一方の鎖のN末端が他方の鎖のC末端と結合している、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Fel d1の鎖2がそのC末端を経由して、直接又はスペーサーを介してFel d1の鎖1のN末端に融合している、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Fel d1の鎖1がそのC末端を経由して、直接又はスペーサーを介してFel d1の鎖2のN末端に融合している、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記スペーサーが1〜20のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列からなる、請求項3ないし5の何れか一に記載の組成物。
【請求項7】
前記融合タンパク質が、
(a) 配列番号24;
(b) 配列番号54;
(c) 配列番号55;
(d) 配列番号56;及び
(e) 配列番号57
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項3ないし6の何れか一に記載の組成物。
【請求項8】
前記Fel d1の鎖1が、配列番号22の配列ないしはそのホモログ配列を含んでなり、該ホモログ配列が配列番号22に80%以上、好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上の同一性を有する、請求項3ないし6の何れか一に記載の組成物。
【請求項9】
前記Fel d1の鎖2が、配列番号23、配列番号25又は配列番号26の配列ないしはそのホモログ配列を含んでなり、該ホモログ配列が配列番号23、配列番号25又は配列番号26に80%以上、好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上の同一性を有する、請求項3ないし6の何れか一に記載の組成物。
【請求項10】
前記コア粒子がウイルス粒子であり、好ましくは該ウイルス粒子がRNAバクテリオファージのウイルス粒子である、請求項1ないし9の何れか一に記載の組成物。
【請求項11】
前記ウイルス粒子がウイルス様粒子であり、好ましくは該ウイルス様粒子がRNAバクテリオファージのウイルス様粒子である、請求項1ないし9の何れか一に記載の組成物。
【請求項12】
前記RNAバクテリオファージがQβ、fr、GA又はAP205である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第一付着部位が、アミノ基、好ましくはリジンのアミノ基を含有するか又は好ましくはそのものである、請求項1ないし12の何れか一に記載の組成物。
【請求項14】
前記第二付着部位が、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含有するか又は好ましくはそのものである、請求項1ないし13の何れか一に記載の組成物。
【請求項15】
さらにリンカーを含有する、請求項1ないし14の何れか一に記載の組成物。
【請求項16】
前記リンカーが、前記Fel d1タンパク質のC末端又は前記Fel d1断片のC末端に融合する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物を含有してなるワクチン。
【請求項18】
さらに少なくとも一のアジュバントを含有する、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
(a) 請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物、と
(b) 受容可能な薬剤的担体
とを含んでなる薬剤組成物。
【請求項20】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子であって、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子であるコア粒子を供給する、
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原であって、Fel d1タンパク質ないしはFel d1断片である抗原を供給する、
(c) 該コア粒子と該少なくとも一の抗原を結合させて、該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して該少なくとも一の抗原と該コア粒子が結合している組成物を産生する
ことを含む、請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物の産生方法。
【請求項21】
ネコアレルギーの治療のための医薬の製造方法のための、請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物の使用。
【請求項22】
請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物又は請求項17又は18に記載のワクチンがヒト又は非ヒト動物に投与されることを含み、好ましくは該非ヒト動物がイヌ又はネコである、ネコアレルギーの治療方法。
【請求項23】
請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物又は請求項17ないし18の何れか一に記載のワクチンがヒト又は非ヒト動物に投与されることを含み、好ましくは該非ヒト動物がイヌ又はネコである、ネコアレルギーの治療方法における使用のための、請求項1ないし16の何れか一に記載の組成物又は請求項17ないし18の何れか一に記載のワクチン。
【請求項24】
Fel d1の鎖1とアミノ酸スペーサーを介して融合したFel d1の鎖2を含んでなるFel d1融合タンパク質であって、該アミノ酸スペーサーは一方の鎖のN末端と他方の鎖のC末端とを結合させ、該アミノ酸スペーサーは10〜30のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列からなるものであり、該融合タンパク質は(GGGGS)3を介して配列番号23、25又は26の鎖2のN末端に融合した配列番号22の鎖1を含んでなる融合タンパク質を除くものであり、かつ除かれた融合タンパク質はバキュロウイルス発現系において発現されたものである、Fel d1融合タンパク質。
【請求項25】
前記スペーサーが2、3又は4回のGGGGSリピートを有するアミノ酸配列からなる、請求項24に記載のFel d1融合タンパク質。
【請求項26】
前記Fel d1融合タンパク質が大腸菌で産生される、請求項24又は25に記載のFel d1融合タンパク質。
【請求項27】
Fel d1の鎖2が融合タンパク質のN末端にある、請求項24ないし26の何れか一に記載のFel d1融合タンパク質。
【請求項28】
Fel d1の鎖1が融合タンパク質のN末端にある、請求項24ないし26の何れか一に記載のFel d1融合タンパク質。
【請求項29】
(a) 配列番号54
(b) 配列番号55、及び
(c) 配列番号57
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項24ないし28の何れか一に記載のFel d1融合タンパク質。
【請求項30】
大腸菌で産生され、配列番号57のアミノ酸配列を含んでなる、Fel d1融合タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535800(P2008−535800A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501331(P2008−501331)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060845
【国際公開番号】WO2006/097530
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】