説明

ネジ締め装置及びその制御方法

【課題】従来のネジ締め装置は、回転角度に基づいてネジが着座する手前で回転速度を中速に切り替えるが、ネジの長さのばらつきや雄ネジ雌ネジのかみ合いタイミングのばらつき等を考慮して早めに中速に切り替えるので、ネジ締めに必要な時間が長くなっていた。
【解決手段】本発明によるネジ締め装置及びその制御方法では、検出トルク21aが着座トルク22dに達するまでは所定の回転速度を維持するとともに、検出トルク21aが着座トルク22dに達したと判定して場合に、モータ1の回転の減速を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ締め装置及びその制御方法に関し、特に、検出トルクが着座トルクに達したと判定した場合にモータの回転の減速を開始することで、ネジ締め完了時にネジに伝わる不必要なトルクを小さく抑えつつ、ネジ締め時間を短縮できる新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
社内技術であり特に特許出願を行っていないため文献名は挙げていないが、従来用いられていたこの種のネジ締め装置は図4〜図6に示すように構成されている。図4は、従来のネジ締め装置を示す構成図である。図において、ネジ締め装置は、ネジ締め駆動を行うモータ1と、このモータ1に接続されるとともに該モータ1の動作を制御する制御手段2とが設けられている。この制御手段2は、角度検出部20、トルク検出部21、設定値記憶部22、及び駆動制御部23を含んでおり、角度検出部20は例えばロータリエンコーダ等でありモータ1の回転角度を検出するものである。また、トルク検出部21は、例えばトルクトランスデューサ等であり、モータ1の出力トルクを検出するものである。
【0003】
設定値記憶部22は、ネジが着座する手前でモータ1の回転速度を切り替えるための減速角度22aと、ネジ締めの仕上げ前にモータ1の回転速度を切り替えるための減速トルク22bと、ネジ締めの目標トルク22cとを記憶している。駆動制御部23は、外部から駆動指令3、角度検出部20の検出角度20a、トルク検出部21の検出トルク21a、及び設定値記憶部22の減速角度22aと減速トルク22bと目標トルク22cとに基づいてモータ1の駆動制御を行う。尚、設定値記憶部22及び駆動制御部23は、プログラム等の情報を格納した格納部(RAM及びROM)と演算部(CPU)とを有するコンピュータ、又はアナログ回路で構成されている。
【0004】
次に、動作について説明する。図5は図4の駆動制御部23が行う駆動制御動作を示すフローチャートであり、図6は図5の駆動制御動作が行われたときのモータ1の回転速度と出力トルクとを示す説明図である。図において、外部から駆動指令3が入力されると、駆動制御部23の駆動制御によってモータ1が高速回転されるとともに(ステップS1)、前記検出角度20aが減速角度22aに達したか否かが判定され(ステップS2)、減速角度22aに達したと判定された場合、モータ1の回転が大きな減速率で中速回転に切り替えられる(ステップS3)。その次に、前記検出トルク21aが減速トルク22bに達したか否かが判定され(ステップS4)、減速トルク22bに達したと判定された場合、モータ1の回転が大きな減速率で低速回転に切り替えられる(ステップS5)。その次に、検出トルク21aが目標トルク22cに達したか否かが判定され(ステップS6)、目標トルク22cに達したと判定された場合、モータ1の回転がすぐさま停止される(ステップS7)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のネジ締め装置では、回転角度に基づいてネジが着座する手前で回転速度を中速に切り替えるが、ネジの長さのばらつきや雄ネジ雌ネジのかみ合いタイミングのばらつき等を考慮して早めに中速に切り替えるので、ネジ締めに必要な時間が長くなっていた。特に、ハンディー型ネジ締め装置では、ネジ締めに必要な時間が長くなると、手で支えている時間が長くなり、反力が大きいと感じてしまう問題があった。
また別の問題として、高速、中速、及び低速と段階的にモータの回転を切り替えるので、ネジ締めに必要な時間が長くなるとともに出力トルクが安定しない。このため、特にハンディー型ネジ締め装置において、手で支えている時間が長くなることで反力が大きいと感じてしまうとともに、出力トルクの乱れから手で支える力加減を細かく変える必要があり、操作感覚が悪化していた。
また、仮に高速回転のままネジ締めを最後まで行ったとすると、ネジ締め完了時に例えばモータイナーシャ等による不必要なトルクがネジに伝わってしまい、ネジに不具合が発生してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ネジ締め完了時にネジに伝わる不必要なトルクを小さく抑えつつ、ネジ締め時間を短縮できるネジ締め装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るネジ締め装置は、ネジのネジ締め駆動を行うモータと、前記モータのトルクを検出するトルク検出部と、ネジの着座トルクを記憶している設定値記憶部と、前記モータの制御を行う駆動制御部とを備え、前記駆動制御部は、外部から駆動指令が入力された場合に前記モータを所定の回転速度で回転させるとともに、前記トルク検出部の検出トルクが前記着座トルクに達したか否かを判定し、前記着座トルクに達したと判定した場合に、前記モータの回転の減速を開始する。
また、前記設定値記憶部は、ネジ締めの目標トルクをさらに記憶しており、前記駆動制御部は、前記検出トルクが前記着座トルクに達したと判定した場合に、前記モータの回転を所定の減速率で連続的に減速させながら前記検出トルクが前記目標トルクに達したか否かを判定し、前記目標トルクに達したと判定した場合に前記モータの回転を停止させる。
【0008】
また、本発明に係るネジ締め装置の制御方法は、駆動制御部の制御によりモータを所定の回転速度で回転させるとともに、トルク検出部によって前記モータから検出された検出トルクが設定値記憶部に記憶されているネジの着座トルクに達したか否かを前記駆動制御部によって判定し、前記着座トルクに達したと判定した場合に、前記駆動制御部の制御により前記モータの回転の減速を開始する。
また、前記駆動制御部によって前記検出トルクが前記着座トルクに達したと判定された場合に、前記駆動制御部により、前記モータの回転を所定の減速率で連続的に減速させながら前記検出トルクが前記設定値記憶部の目標トルクに達したか否かを判定し、前記目標トルクに達したと判定した場合に前記モータの回転を停止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のネジ締め装置及びその制御方法によれば、検出トルクが着座トルクに達したと判定した場合に、前記モータの回転の減速を開始するので、従来装置に比べて高速回転でのネジ締めをより長い期間行うことができ、ネジ締め完了時にネジに伝わる不必要なトルクを小さく抑えつつ、ネジ締めに要する時間を短縮できる。特に、ハンディー型ネジ締め装置では、手で支えている時間を短くでき、反力が大きいと感じてしまう可能性を低減できる。
また、前記検出トルクが前記着座トルクに達したと判定した場合に、前記検出トルクが前記着座トルクに達してから前記目標トルクに達するまで、前記モータの回転を所定の減速率で連続的に減速させるので、従来装置に比べてより速い回転でネジ締めを行うことでネジ締め時間を短縮でき、出力トルクをより安定させることで操作感覚を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるネジ締め装置を示す構成図である。なお、従来のネジ締め装置と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図において、ネジ締め装置は、ネジ締め駆動を行うモータ1と、このモータ1に接続されるとともに該モータ1の動作を制御する制御手段2とが設けられている。この制御手段2は、トルク検出部21、設定値記憶部22、及び駆動制御部23を含んでおり、トルク検出部21は例えばトルクトランスデューサ等であり、モータ1の出力トルクを検出するものである。
【0011】
設定値記憶部22は、ネジが着座した際にモータ1の回転速度を切り替えるための着座トルク22dと、ネジ締めの目標トルク22cとを記憶している。駆動制御部23は、外部から駆動指令3、トルク検出部21の検出トルク21a、及び設定値記憶部22の着座トルク22dと目標トルク22cに基づいて、モータ1の駆動制御を行う。尚、設定値記憶部22及び駆動制御部23は、プログラム等の情報を格納した格納部(RAM及びROM)と演算部(CPU)とを有するコンピュータ、又はアナログ回路で構成されている。
【0012】
次に、動作について説明する。図2は図1の駆動制御部23が行う駆動制御動作を示すフローチャートであり、図3は図2の駆動制御動作が行われたときのモータ1の回転速度と出力トルクとを示す説明図である。図において、外部から駆動指令3が入力されると、駆動制御部23の駆動制御によってモータ1が高速回転される(ステップS1)。その次に、前記検出トルク21aが前記着座トルク22dに達したか否かが判定され(ステップS10)、前記着座トルク22dに達したと判定された場合、前記モータ1の回転が所定の減速率で連続的に減速される(ステップS11)。この減速中に、前記検出トルク21aが前記目標トルク22cに達したか否かが判定され(ステップS6)、前記目標トルク22cに達したと判定された合に前記モータ1の回転が停止される(ステップS7)。
【0013】
尚、前記検出トルク21aが前記着座トルク22dに達した後の回転の減速率は、ネジ締め完了時に一定の速度を保ちつつ、ネジに伝わる不必要なトルクを小さく抑えることができる程度に設定される。すなわち、この実施の形態の減速率は、従来装置での回転速度切り替えの際の減速率よりも小さく設定され、従来装置に比べてより速い回転でネジ締めを行う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1によるネジ締め装置を示す構成図である。
【図2】図1の駆動制御部が行う駆動制御動作を示すフローチャートである。
【図3】図2の駆動制御動作が行われたときのモータの回転速度と出力トルクとを示す説明図である。
【図4】従来のネジ締め装置を示す構成図である。
【図5】図4の駆動制御部が行う駆動制御動作を示すフローチャートである。
【図6】図5の駆動制御動作が行われたときのモータの回転速度と出力トルクとを示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 モータ、3 駆動指令、21 トルク検出部、21a 検出トルク、22 設定値記憶部、22c 目標トルク、22d 着座トルク、23 駆動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジのネジ締め駆動を行うモータ(1)と、
前記モータ(1)の出力トルクを検出するトルク検出部(21)と、
前記ネジの着座トルク(22d)を記憶している設定値記憶部(22)と、
前記モータの制御を行う駆動制御部(23)と
を備え、
前記駆動制御部(23)は、外部から駆動指令(3)が入力された場合に前記モータ(1)を所定の回転速度で回転させるとともに、前記トルク検出部(21)の検出トルク(21a)が前記着座トルク(22d)に達したか否かを判定し、前記着座トルク(22d)に達したと判定した場合に、前記モータ(1)の回転の減速を開始することを特徴とするネジ締め装置。
【請求項2】
前記設定値記憶部(22)は、ネジ締めの目標トルク(22c)をさらに記憶しており、
前記駆動制御部(23)は、前記検出トルク(21a)が前記着座トルク(22d)に達したと判定した場合に、前記モータ(1)の回転を所定の減速率で連続的に減速させながら前記検出トルク(21a)が前記目標トルク(22c)に達したか否かを判定し、前記目標トルク(22c)に達したと判定した場合に前記モータ(1)の回転を停止させることを特徴とする請求項1記載のネジ締め装置。
【請求項3】
駆動制御部(23)の制御によりモータ(1)を所定の回転速度で回転させるとともに、トルク検出部(21)によって前記モータ(1)から検出された検出トルク(21a)が設定値記憶部(22)に記憶されているネジの着座トルク(22d)に達したか否かを前記駆動制御部(23)によって判定し、前記着座トルク(22d)に達したと判定した場合に、前記駆動制御部(23)の制御により前記モータ(1)の回転の減速を開始することを特徴とするネジ締め装置の制御方法。
【請求項4】
前記駆動制御部(23)によって前記検出トルク(21a)が前記着座トルク(22d)に達したと判定された場合に、前記駆動制御部(23)により、前記モータ(1)の回転を所定の減速率で連続的に減速させながら前記検出トルク(21a)が前記設定値記憶部(22)の目標トルク(22c)に達したか否かを判定し、前記目標トルク(22c)に達したと判定した場合に前記モータ(1)の回転を停止させることを特徴とする請求項3記載のネジ締め装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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