説明

ネズミ用毒餌及びネズミ用毒餌の設置方法

【課題】 ゴキブリ等の害虫がネズミ用毒餌を齧ってしまうといった被害を防止させ、駆除対象であるネズミのみに喫食させて効果的なネズミ駆除ができるようにしたネズミ用毒餌及びネズミ用毒餌の設置方法の提供。
【解決手段】 害虫忌避剤20を含有しているネズミ用毒餌10である。又、害虫忌避剤を含有した害虫忌避体により形成された忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させるネズミ用毒餌の設置方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネズミを駆除するためのネズミ用毒餌、及びネズミを駆除するためのネズミ用毒餌を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネズミなどの駆除方法として、ネズミが好んで喫食する基材に殺鼠剤を混合してネズミ用毒餌を作り、このネズミ用毒餌をネズミの行動範囲と思われる場所に配置させておくネズミ駆除方法が一般的に知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のように、ネズミ用毒餌を適宜に配置させただけの駆除方法では、駆除対象であるネズミが喫食する前に、ゴキブリ等の害虫がネズミ用毒餌を齧って(かじって)しまうといった被害を受けてしまう。
【0004】
この害虫による齧り被害によって折角のネズミ用毒餌が減少したり、ばらばらに散らばったりしてしまい、このため、ネズミに十分な量を摂取させることができず、ネズミの駆除効果が低下してしまうという問題が生じるし、又、新たなネズミ用毒餌を補充する必要が生じるなど、コスト負担や作業負担が増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−212701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、ゴキブリ等の害虫がネズミ用毒餌を齧ってしまうといった被害を防止させ、駆除対象であるネズミのみに喫食させて効果的なネズミ駆除ができるようにしたネズミ用毒餌及びネズミ用毒餌の設置方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るネズミ用毒餌は、害虫忌避剤を含有している構成とした。
【0008】
本発明の請求項2に係るネズミ用毒餌は、害虫忌避剤が表面に塗布されている構成とした。
【0009】
本発明の請求項3に係るネズミ用毒餌は、害虫忌避剤が混合されている構成とした。
【0010】
本発明の請求項4に係るネズミ用毒餌の設置方法は、害虫忌避剤を含有した害虫忌避体により形成された忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させる構成とした。
【0011】
本発明で言う忌避エリアとは、忌避エリアとなる場所の全面に害虫忌避体(例えば、液体害虫忌避体、粉体害虫忌避体、粒体害虫忌避体、紐状害虫忌避体、塊状害虫忌避体、シート状害虫忌避体、板状害虫忌避体、害虫忌避容器)を配置して形成した領域を言う。
又、忌避エリアとなる場所の周囲を囲むように害虫忌避体(例えば、液体害虫忌避体、粉体害虫忌避体、粒体害虫忌避体、紐状害虫忌避体、塊状害虫忌避体、シート状害虫忌避体、板状害虫忌避体、害虫忌避容器)を配置した場合は、その害虫忌避体の表面及び害虫忌避体により囲まれた内側部分を含む領域を忌避エリアと言う。
【0012】
本発明の請求項5に係るネズミ用毒餌の設置方法は、前記請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記害虫忌避体が液体又は粉体又は粒体であり、この液体害虫忌避体又は粉体害虫忌避体又は粒体害虫忌避体を散布又は塗布して形成した忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させる構成とした。
尚、液体害虫忌避体としては、忌避エリアを形成させた後も液体状態や湿潤状態や流動体等の状態を維持するものでもよいし、液体を配置(例えば、スプレー塗布等)して忌避エリアを形成させた後は乾燥するものを含むのは勿論である。
【0013】
本発明の請求項6に係るネズミ用毒餌の設置方法は、前記請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記害虫忌避体が紐状又は塊状の固形物であり、この紐状害虫忌避体又は塊状害虫忌避体を連続環状又は非連続環状に配置することで囲まれた忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させる構成とした。
【0014】
本発明の請求項7に係るネズミ用毒餌の設置方法は、前記請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記害虫忌避体がシート状又は板状の固形物であり、このシート状害虫忌避体又は板状害虫忌避体自体を忌避エリアとしてこのシート状害虫忌避体又は板状害虫忌避体の表面にネズミ用毒餌を配置させる構成とした。
【0015】
本発明の請求項8に係るネズミ用毒餌の設置方法は、前記請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記害虫忌避体がネズミの進入開口部を有する容器に形成され、この害虫忌避容器自体を忌避エリアとしてこの害虫忌避容器内にネズミ用毒餌を配置させる構成とした。
【0016】
本発明の請求項9に係るネズミ用毒餌の設置方法は、前記請求項4〜8のいずれかに記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記ネズミ用毒餌が害虫忌避剤を含有させたネズミ用毒餌である構成とした。
【0017】
本発明(請求項1、2,3)で言う「害虫忌避剤」とは、害虫忌避成分を含んだ物質であり、形態としては液体、粉体、粒体、を問わない。
又、本発明(請求項4、5、6、7、8、9、)で言う「害虫忌避体」とは、忌避エリアを形成させるためのもので、形態としては、液体、粉体、粒体(請求項5)、紐状又は塊状の固形物(請求項6)、シート状又は板状の固形物(請求項7)、進入開口部を有する容器(請求項8)がある。
【0018】
尚、本発明でいう害虫(忌避対象害虫)とは、ネズミ用毒餌を齧ってしまうような虫類を指し、例えば、ゴキブリ科(クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コワモンゴキブリ、イエゴキブリなど)、チャバネゴキブリ科(チャバネゴキブリ、キョウトゴキブリなど)、オオゴキブリ科(オガサワラゴキブリ、ハイイロゴキブリなど)に属するゴキブリ目。
【0019】
また、カツオブシムシ科(ハラジロカツオブシムシ、トビカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシなど)、ゴミムシダマシ科(コクヌストモドキ、ヒラタコクヌストモドキ、チャイロコメノゴミムシダマシなど)、シバンムシ科(ジンサンシバンムシ、タバコシバンムシ、フルホンシバンムシ、クシヒゲシバンムシ、マツザイシバンムシなど)、チャタテムシ目(コチャタテ、ヒラタチャタテ、ウスグロチャタテ、カツブシチャタテ、ソウメンチャタテなど)、オオゾウムシ科(コクゾウムシ、マメゾウムシ、ハナゾウムシなど)に属する貯穀害虫等が挙げられる。
【0020】
又、本発明による駆除対象となるネズミには、例えば、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ、等のネズミ科に属する小動物とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明(請求項1、2、3)のネズミ用毒餌は、害虫忌避剤を含有している構成に特徴がある。
したがって、その害虫忌避剤によって害虫がネズミ用毒餌に近づくのを忌避させることができる。
これにより、ネズミ用毒餌が害虫によって齧られてしまうといった被害を防止でき、本来の駆除対象であるネズミを効果的に駆除することができる。
【0022】
本発明(請求項4、5、6、7、8)のネズミ用毒餌の設置方法は、ネズミ用毒餌の周囲に、害虫忌避剤を含有した害虫忌避体により形成された忌避エリアを設ける構成に特徴がある。
従って、その忌避エリアに配置したネズミ用毒餌に近づこうとする害虫がいたとしても、これを忌避させることができる。
これにより、ネズミ用毒餌が害虫によって齧られてしまうといった被害を防止でき、本来の駆除対象であるネズミを効果的に駆除することができる。
【0023】
又、本発明のネズミ用毒餌の設置方法に使用するネズミ用毒餌として、害虫忌避剤を含有しているネズミ用毒餌を用いると(請求項9)、このネズミ用毒餌による害虫忌避効果と、忌避エリアとの両方の忌避作用で害虫を忌避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の請求項1、2に対応したネズミ用毒餌の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の請求項1、3に対応したネズミ用毒餌の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の請求項4、5に対応したネズミ用毒餌の設置方法の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明の請求項4、6に対応したネズミ用毒餌の設置方法の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明の請求項4、7に対応したネズミ用毒餌の設置方法の実施例を示す斜視図である。
【図6】本発明の請求項4、8に対応したネズミ用毒餌の設置方法の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明の請求項4に対応したネズミ用毒餌の設置方法の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すネズミ用毒餌10は本発明の請求項1、2に対応したもので、団子状に成形した毒餌母体1aの表面全面に害虫忌避剤20が塗布されたものになっている。
この場合の塗布方法としては、毒餌母体1aの表面に害虫忌避剤20をスプレー塗布したり、刷毛塗り塗布したり、浸漬塗布(どぶ漬け)したりするものを含む。
又、塗布形態としては、毒餌母体1aの表面に害虫忌避剤20によるコーティング膜を形成させてもよいし、毒餌母体1aの表面に害虫忌避剤20を含浸させてもよい。
又、害虫忌避剤20を毒餌母体1aの表面全面に塗布することに限らず、害虫忌避剤20を毒餌母体1aの表面に部分的(まばら状)に塗布させてもよい。
【0026】
図2に示すネズミ用毒餌11は本発明の請求項1、3に対応したもので、団子状に成形した毒餌母体1aに害虫忌避剤20が混合されたものになっている。
この場合の混合方法としては、毒餌母体1aに害虫忌避剤20を練り込んだり、混ぜ込んだり、交ぜ込んだりするものを含む。
【0027】
尚、前記図1、図2で示したネズミ用毒餌10、11に使用する害虫忌避剤20としては、液体害虫忌避体又は粉体害虫忌避体又は粒体害虫忌避体を単独又は組み合わせて使用できる。
【0028】
前記毒餌母体1aは、基材もしくはネズミの好む餌に殺鼠剤を混合させたもので、基材もしくはネズミの好む餌としては、例えば、穀類粉(玄米粉、白米粉、小麦粉、トウモロコシ粉、コメ粉、そば粉、大豆粉等)、芋類粉(ジャガイモ粉、サツマイモ粉、あるいはそれらのデンプン粉等)、その他魚の粉類、又、玄米、白米、小麦、大麦、大豆、落花生、トウモロコシ、その他の種子や木の実等の粒類、ジャガイモ、サツマイモ等の芋類、油揚、サツマ揚、ソーセージ、パン、バナナ、リンゴ、などの植物性又は動物性の食料及び飼料が挙げられる。
【0029】
さらには、喫食性を高めるために糖類や植物油を配合してもよい。好適な植物油としては、コーン油、米ヌカ油、大豆油、オリーブ油、綿実油等が挙げられる。また、好適な糖類としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、赤砂糖、三温糖、白糖等が挙げられる。
【0030】
殺鼠剤としては、ワルファリン、フマリン、クマテトラリル等のクマリン系化合物や、クロロファシノン、ジファシノン、ピンドン、バロン)等のインダンジオン系化合物や、リン化亜鉛、硫酸タリウム、液化窒素、亜ヒ酸、亜ヒ酸石灰等の無機系化合物等の従来から一般的に知られているものを使用することができる。
【0031】
ネズミ用毒餌10、11の形状は、固形(粉体、粒体、塊体)又は液体であってもよいが、喫食性からすると固形状のものが望ましい。
請求項2(図1)に記載のネズミ用毒餌10については、毒餌母体1aの表面に害虫忌避剤20を塗布するものであるため、液体の毒餌母体1aには適用できないが、請求項3(図2)に記載のネズミ用毒餌11については、毒餌母体1aに害虫忌避剤20を混合させるものであるため、液体の毒餌母体1aに適用することは可能である。
【0032】
次に、図3に示すネズミ用毒餌の設置方法は、本発明の請求項4、5に対応したもので、忌避エリア30にネズミ用毒餌1(実施例では前記ネズミ用毒餌10を使用)を配置させたものである。
この場合、ネズミ用毒餌1としては、害虫忌避剤を含有しているネズミ用毒餌又は害虫忌避剤を含有していないネズミ用毒餌を使用できる。
【0033】
前記忌避エリア30は、ネズミ用毒餌1の設置場所に所定の範囲で害虫忌避体2(実施例では液体害虫忌避体を使用)をスプレー塗布させたのち乾燥させることで形成されている。
この場合、忌避エリア30はネズミ用毒餌1を配置する前に形成してもよいし、ネズミ用毒餌1を配置した後に形成させてもよい。
又、害虫忌避体2としては、液体害虫忌避体又は粉体害虫忌避体又は粒体害虫忌避体を使用でき、これを忌避エリア30となる場所の全面、又は忌避エリア30となる場所の周囲を囲むように散布又は塗布して忌避エリア30を形成する。
尚、本実施例のように、忌避エリア30を形成させるために害虫忌避体2を散布又は塗布させるものについては、害虫忌避体2として害虫忌避剤20をそのまま使用できるのは勿論である。
【0034】
次に、図4に示すネズミ用毒餌の設置方法は、本発明の請求項4、6に対応したもので、害虫忌避体2が紐状固形物であり、この紐状害虫忌避体2aを連続環状に配置することで囲まれた忌避エリア30にネズミ用毒餌1(実施例では前記ネズミ用毒餌11を使用)を配置させている。
この場合、紐状害虫忌避体2aの表面30a、及び紐状害虫忌避体2aで囲まれた内側部分30bが忌避エリア30となる。
【0035】
尚、害虫忌避体2として塊状(例えば、豆状)に形成した塊状害虫忌避体を用い、この塊状害虫忌避体を隣同士が接触するように並べて連続環状で囲まれた忌避エリアに形成してもよいし、隣同士に隙間が生じるように並べて非連続環状で囲まれた忌避エリアに形成してもよい。
この場合のネズミ用毒餌の設置方法についても、忌避エリア30はネズミ用毒餌1を配置する前に形成してもよいし、配置した後に形成させてもよい。
【0036】
次に、図5に示すネズミ用毒餌の設置方法は、本発明の請求項4、7に対応したもので、害虫忌避体2がシート状の固形物であり、このシート状害虫忌避体2b自体を忌避エリア30としてこのシート状害虫忌避体2bの表面にネズミ用毒餌1(実施例では害虫忌避剤を含有していないネズミ用毒餌12を使用)を配置させている。
この場合、害虫忌避体2として板状に形成した板状害虫忌避体を用い、その表面にネズミ用毒餌を配置させてもよい。
【0037】
次に、図6に示すネズミ用毒餌の設置方法は、本発明の請求項4、8に対応したもので、害虫忌避体2がネズミの進入開口部22を有する容器2cに形成され、この害虫忌避容器2c自体を忌避エリア30としてこの害虫忌避容器2c内にネズミ用毒餌1(実施例では害虫忌避剤を含有していないネズミ用毒餌12を使用)を配置させている。
【0038】
実施例の害虫忌避容器2cは、上面がネズミの進入開口部22として開口したトレイ部材23を台座24の上に設置した構造に形成されているが、これに限られるものではなく、例えば、ボックス体の1箇所又は複数箇所にネズミの進入開口部を形成した構造に形成してもよい。
【0039】
次に、図7に示すネズミ用毒餌の設置方法は、本発明の請求項4に対応したもので、害虫忌避体2としてドーナツ状に形成したシート状害虫忌避体2dを用い、その内側部分30bにネズミ用毒餌1(実施例では前記ネズミ用毒餌10を使用)を配置させた例である。
この場合、シート状害虫忌避体2dの表面30a及びこのシート状害虫忌避体2dによって囲まれた内側部分30bを含む領域が忌避エリア30となる。
尚、害虫忌避体としては、シート状害虫忌避体に限らず、液体害虫忌避体、粉体害虫忌避体、粒体害虫忌避体、紐状害虫忌避体、塊状害虫忌避体、板状害虫忌避体、害虫忌避容器を使用できる。
【0040】
本発明で使用できる害虫忌避剤としては、例えば、忌避効果を有するピレストロイド系の殺虫剤(アレスリン、dl・d−T80−アレスリン、dl・d−T−アレスリン,dl・d−T−アレスリン、d・d−T−アレスリン、d・d−T80−プラレトリン、d・d−T98−プラレトリン,フタルスリン、d−T80−フタルスリン、レスメトリン、d−T80−レスメトリン、フラメトリン、d−T80−フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、エンペントリン、テラレスリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス、トラロメスリン,トランスフルトリン、メトフルトリン、ピレトリン、除虫菊粉末)などを挙げることができる。
【0041】
その他、忌避効果を有する天然成分{N,N−ジエチル−m−トルアミド(DET)、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4−ジオール、1−メチルプロピル2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、カプリン酸ジエチルアミド、N−プロピルアセトアニリド、β−ナフトール、カンファー}などを使用できる。
【0042】
ただし、天然成分のうち、シトロネラオイル、タイムオイル、ペパーミントオイル、ラベンダーオイル、コリアンダーオイル、シダーウッドオイル、フエンネルオイル、カモミールオイル、シナモンオイル、ピメントオイル、ゼラニウムオイル、クミンオイル、ハッカオイル、クローブオイル、ヒバオイル、レモングラスオイル、などの天然精油は、ネズミも忌避するので使用できない。
【0043】
本発明に用いられる害虫忌避剤を含有する害虫忌避体2の作成に当たって、害虫忌避剤を保持する基材として好適に用いられる材料としては、種々のものを用いることができるが、熱可塑性樹脂、エラストマー、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン性不飽和結合を有する有機カルボン酸誘導体とエチレンとの共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体への塩化ビニルグラフト共重合体の様な塩化ビニル系の共重合体等が挙げられる。
【0045】
エラストマーとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、水添スチレン系、オレフィン系、特殊ポリオレフィン系、ウレタン系、エステル系、ポリアミド系、塩化ビニル系、塩化ビニル/ニトリルゴム系、塩化ビニル/ウレタン系等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0047】
本発明のネズミ用毒餌の設置方法に使用する害虫忌避剤を含有する害虫忌避体の成形方法としては、例えば、基材中に害虫忌避剤を通常の混練装置を用いて混練した後、粉体や粒体や塊体に形成してもよいし、基材を所定の形状(シート状、紐状、容器等)に成形したのち、その表面に害虫忌避剤を塗布させてもよい。
又、射出成型、押出成型、プレス成型等で紐状、シート状、板状、フィルム状、テープ状、網状、容器等に加工することができるし、必要により更に成型、裁断等の工程を経ることは任意である。
さらに、ナイロン樹脂とピレスロイド系化合物とが混合された株式会社ニックス社製のARINIX(商標)など市販品を加工して使用してもよい。
尚、シート、紐、板、容器等の材質は、紙でも樹脂でも布でも何でもよいが、水にぬれやすい場所へ設置する場合は形状が変わりにくい樹脂が望ましい。
【0048】
又、忌避エリアは、ネズミ用毒餌の周囲に15mm幅程度のエリアを生じさせるように連続的もしくは非連続的に害虫忌避体を存在させるのが望ましい。そうすれば、忌避対象となる害虫のうち、体長の最も大きいクロゴキブリ(体長30mm前後)の体半分は、害虫忌避体に接触するため、十分な忌避効果が得られるし、材料コストも抑えられる。
ただし、忌避エリアは前記15mm幅程度に限られるものではなく、15mm幅以上であっても十分、忌避効果は得られるもので、施工手間やコストを考慮して50mm程度までが通常と思われる。
【0049】
以下に、本発明のネズミ用毒餌の効果を確認するための実験例を挙げる。
【0050】
<実験1>
実験名:ピレスロイド系殺虫剤を処理した殺鼠剤のゴキブリ食害抑制実験
1)目的
ピレスロイド系殺虫剤を固形タイプの殺鼠剤表面に処理し、ゴキブリの食害状況を確認した。
2)実験方法
(1)材料 殺鼠剤:ネズコロンS(商標)、固形防水型(有効剤ワルファリン0.1%)
殺虫剤:エヤローチA(商標)、スプレー剤(有効剤ペルメトリン1%以下)
(2)供試昆虫 クロゴキブリ:住化テクノサービス系(1容器に10匹使用)
(3)実験方法
イ)殺鼠剤5gの表面に殺虫剤を約1ml噴霧し室内にて1日間風乾。
ロ) 供試昆虫を容器(20×27×30cm)に10匹収容し1日間馴らした。なお、逃亡防止のため、内壁にワセリンを塗布した。
ハ) 隠れ場所として10cm角のベニヤ板3枚を1cm間隔で張り合わせたシェルターを実験容器の中央に設置した。
ニ)シャーレに脱脂綿に浸した水を入れて、容器内に配置した。
ホ)殺虫剤を処理した殺鼠剤を容器内に配置した。
ヘ)1週間毎に殺虫剤処理した殺鼠剤の喫食状況を確認した。
ト)対照として無処理殺鼠剤も容器内に併置した。
チ)試験は5回反復した。
3)実験結果 殺鼠剤の食害状況を表1に示す。
個別データを表2に示す。
4)考察
・ピレスロイド系殺虫剤を処理した殺鼠剤はゴキブリに齧られなかった。
・無処理の殺鼠剤はゴキブリに極端に齧られ、4週間目で全て食害された。
・ピレスロイド系殺虫剤処理した殺鼠剤はゴキブリの食害を抑制することを確認できた。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
<実験2>
実験名:ピレスロイド系殺虫剤を処理した殺鼠剤のネズミ喫食性
1)目的
ピレスロイド系殺虫剤を固形タイプの殺鼠剤表面に処理し、喫食性が低下しないか確認した。
2)実験方法
(1)材料 殺鼠剤:ネズコロンS(商標)、固形防水型(有効剤ワルファリン0.1%)
殺虫剤:エヤローチA(商標)、スプレータイプ(有効剤ペルメトリン1%以下)
(2)供試動物 ラット:ウイスター系の雄、成獣(1ゲージに1匹収容、計3匹使用)
(3)実験方法
イ)殺鼠剤15g表面に殺虫剤を約1ml噴霧し室内にて1日間風乾。
ロ)供試動物をゲージ(40×22×18cm)に1匹収容し1日間馴らした。
ハ)殺虫剤を処理した殺鼠剤をゲージ内に配置した。
ニ)11日間、殺虫剤処理した殺鼠剤を与え、喫食性を確認した。
ホ)実験期間中は、十分な餌(固形飼料CE−2)と水を与えた。
ヘ)試験は3回反復した。
3)実験結果 殺虫剤処理した殺鼠剤の喫食性および生存状況を表3に示す。
4)考察
・ピレスロイド系殺虫剤を処理した殺鼠剤を全てのラットでかなり齧っていた。
・生存状況ではラットAは生存、ラットBおよびCは死亡した。
・ピレスロイド系殺虫剤を処理した殺鼠剤はネズミに対して喫食性を低下させることなく、十分な毒性があることを確認できた。
【0054】
【表3】

【0055】
<実験3>
実験名:ピレスロイド系殺虫剤配合プラスチックケースによるゴキブリ食害抑制実験
1)目的
ピレスロイド系殺虫剤配合プラスチックケースに殺鼠剤を配置し、ゴキブリ食害状況を確認した。
2)実験方法
(1)材料 殺鼠剤:ネズコロンS(商標)、固形防水型(有効剤ワルファリン0.1%)
容器:ピレスロイド系殺虫剤配合プラスチック(商標:アリニックス:ニックス社製品)
(2)供試昆虫 クロゴキブリ:住化テクノサービス系(1容器に10匹使用)
(3)実験方法
イ)アリニックスを図6に示すようなケース状に加工し作成した。
ロ)対照として同サイズのベニヤ板製ケースも作成した。
ハ)供試昆虫を容器(20×27×30cm)に10匹収容し1日間馴らした。なお、逃亡防止のため、内壁にワセリンを塗布した。
ニ) 隠れ場所として10cm角のベニヤ板3枚を1cm間隔で張り合わせたシェルターを実験容器の中央に設置した。
ホ)シャーレに脱脂綿に浸した水を入れて、容器内に配置した。
ヘ)両ケース内に殺鼠剤5gを配置し容器内に併置した。
ト)1週間毎に4週間目まで殺鼠剤の食害状況を確認した。
(4)検体名 アリニックスケース(殺虫剤配合品)
ベニヤ板ケース(殺虫剤無配合品)
3)実験結果 食害量を表4に、食害率を表5に示す。
4)考察
・ベニヤ板ケースは1週間目で26%の食害率を示し、3週間目では半分量かじられるほど、食害が急速に進んでいた。
・一方、アリニックスケースは少しかじられる状況であった。4週間目では20%の食害率を示した。
・ベニヤ板ケースと比較してみると、アリニックスケースはピレスロイド系殺虫剤を配合していることから、ゴキブリが寄り難くなり、殺鼠剤の食害を抑制していたことを確認できた。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【符号の説明】
【0058】
1 ネズミ用毒餌
10 ネズミ用毒餌(害虫忌避剤を含有したネズミ用毒餌)
11 ネズミ用毒餌(害虫忌避剤を含有したネズミ用毒餌)
12 ネズミ用毒餌(害虫忌避剤を含有していないネズミ用毒餌)
1a 毒餌母体
2 害虫忌避体
2a 紐状害虫忌避体
2b シート状害虫忌避体
2c 害虫忌避容器
20 害虫忌避剤
22 進入開口部
23 トレイ部材
24 台座
30 忌避エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫忌避剤を含有していることを特徴とするネズミ用毒餌。
【請求項2】
害虫忌避剤が表面に塗布されている請求項1記載のネズミ用毒餌。
【請求項3】
害虫忌避剤が混合されている請求項1記載のネズミ用毒餌。
【請求項4】
害虫忌避剤を含有した害虫忌避体により形成された忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させることを特徴とするネズミ用毒餌の設置方法。
【請求項5】
前記害虫忌避体が液体又は粉体又は粒体であり、この液体害虫忌避体又は粉体害虫忌避体又は粒体害虫忌避体を散布又は塗布して形成した忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させる請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法。
【請求項6】
前記害虫忌避体が紐状又は塊状の固形物であり、この紐状害虫忌避体又は塊状害虫忌避体を連続環状又は非連続環状に配置することで囲まれた忌避エリアにネズミ用毒餌を配置させる請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法。
【請求項7】
前記害虫忌避体がシート状又は板状の固形物であり、このシート状害虫忌避体又は板状害虫忌避体自体を忌避エリアとしてこのシート状害虫忌避体又は板状害虫忌避体の表面にネズミ用毒餌を配置させる請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法。
【請求項8】
前記害虫忌避体がネズミの進入開口部を有する容器に形成され、この害虫忌避容器自体を忌避エリアとしてこの害虫忌避容器内にネズミ用毒餌を配置させる請求項4記載のネズミ用毒餌の設置方法。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれかに記載のネズミ用毒餌の設置方法において、前記ネズミ用毒餌が害虫忌避剤を含有させたネズミ用毒餌であるネズミ用毒餌の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−244699(P2011−244699A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117875(P2010−117875)
【出願日】平成22年5月23日(2010.5.23)
【出願人】(591089431)株式会社サニックス (29)
【Fターム(参考)】